特許第6714419号(P6714419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6714419
(24)【登録日】2020年6月9日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】流量制御チップ及び輸液セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20200615BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   A61M5/168 506
   A61M5/14 500
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-79296(P2016-79296)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-189277(P2017-189277A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸二
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−515898(JP,A)
【文献】 特開昭53−139393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00−9/00、31/00、39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸注液が収容された輸液ボトルに接続されるチューブの途中に配置され、前記チューブを流動する前記輸注液の流動速度を一定に保持する減圧流路が内部に設けられると共に、前記輸注液を溜めることができる輸注液溜まりが内部に設けられた流量制御チップにおいて、
前記減圧流路は、前記輸注液の流動方向に沿った下流端が前記輸注液溜まりに接続され、
前記輸注液溜まりは、メッシュフィルタによって第1室と第2室とに分けられ、
前記第1室には、前記減圧流路の下流端が接続され、
前記第2室には、前記メッシュフィルタを通過した前記輸注液を前記輸注液の流動方向下流側へ供給する輸注液供給路が接続された、
ことを特徴とする流量制御チップ。
【請求項2】
輸注液が収容された輸液ボトルに接続されるチューブの途中に配置され、前記チューブを流動する前記輸注液の流動速度を一定に保持する減圧流路が内部に設けられると共に、前記輸注液を溜めることができる輸注液溜まりが内部に設けられた流量制御チップにおいて、
前記減圧流路は、前記輸注液の流動方向に沿った下流端が前記輸注液溜まりに接続され、
前記減圧流路と前記輸注液溜まりとの間に輸液速度監視用輸注液溜まりが設けられ、
前記輸液速度監視用輸注液溜まりは、前記減圧流路から滴下する輸注液を溜めることができるようになっており、前記減圧流路から滴下する前記輸注液を外部から視認できるように開口する観察窓を有し、前記観察窓が弾性変形可能で且つ透明な合成樹脂材料製フィルムで塞がれ、前記フィルムが揉むように複数回操作されることにより、輸液ボトル側の輸注液を導き入れることができるようになっている、
ことを特徴とする流量制御チップ。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の流量制御チップと、
前記流量制御チップよりも前記輸注液の流動方向下流側の前記チューブに配置され、前記チューブの流路を開閉する開閉弁と、
を有することを特徴とする輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、輸液(点滴)等に使用されて、輸注液等の流体を所定量だけ流動させることを可能にする流量制御チップ、及びこの流量制御チップを備えた輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者への薬剤等の投与には、輸液セット(点滴セット)を使用した輸液(点滴)が行われている。この輸液セットを使用した輸液は、単位時間当たりの薬剤等の投与量(輸液速度)が医師によって決定され、看護師が医師の決定通りの輸液速度になるように輸液セットを操作している。
【0003】
図6は、従来の輸液セット100の使用状態を示す図である。この図6に示すように、輸液セット100は、輸液スタンド(図示せず)に吊された輸液ボトル101に差し込まれるボトル針102と、ボトル針102が一端に取り付けられたチューブ103と、このチューブ103の他端に取り付けられて患者の体に差し込まれる留置針104と、ボトル針102と留置針104との間に配置される点滴筒105と、点滴筒105と留置針104との間に配置されるクレンメ106と、を備えている。この図6に示す輸液セット100において、クレンメ106は、輸液速度を調整する機能を有している。また、点滴筒105は、輸液に使用する輸注液(薬剤、栄養剤、血液等)の滴下数を観察する部分であり、看護師等が輸注液の滴下数を観察することにより輸液速度を知ることができるようになっている。
【0004】
図7に示すように、クレンメ106は、チューブ103がクランプ本体107の内部空間に挿通され、ローラ108の回転軸110がクランプ本体107の内部側壁111に形成された案内溝112にスライド可能に係合され、ローラ108が案内溝112に沿ってスライド移動させられることにより、ローラ108の外周面とクランプ本体107のチューブ支持壁113との間隔が変化し、ローラ108の外周面とチューブ支持壁113との間に位置するチューブ103の潰し量が変化して、チューブ103内を流動する輸注液の絞り量が変えられ、輸液速度が調整される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−336351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の輸液セット100は、クレンメ106のローラ108が人為的に操作されることにより、輸液速度が調整されるようになっているため、輸液速度の調整にミスが生じやすい。また、従来の輸液セット100は、患者等の第3者(医師、看護師等の医療従事者以外の者)によってクレンメ106のローラ108が不正操作され易く、輸液速度が適正な速度からずらされて、医療事故を生じやすくなる。
【0007】
そこで、本発明は、人為的操作に起因する輸液速度の調整ミスを防止でき、患者等の第3者による輸液セットの不正操作を防止できる流量制御チップ及びこれを備えた輸液セットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流量制御チップ1,31は、輸注液が収容された輸液ボトル3に接続されるチューブ5の途中に配置され、前記チューブ5を流動する前記輸注液の流動速度を一定に保持する減圧流路20,44が内部に設けられると共に、前記輸注液を溜めることができる輸注液溜まり21,43が内部に設けられている。そして、前記減圧流路20,44は、前記輸注液の流動方向に沿った下流端が前記輸注液溜まり21,43に接続されている。また、前記輸注液溜まり21,43は、メッシュフィルタ24,45によって第1室25,46と第2室26,47とに分けられている。また、前記第1室24,45には、前記減圧流路20,44の下流端が接続されている。また、前記第2室26,47には、前記メッシュフィルタ24,45を通過した前記輸注液を前記輸注液の流動方向下流側へ供給する輸注液供給路28,50が接続されている。
【0009】
また、本発明に係る輸液セット2,32は、流量制御チップ1,31と、前記流量制御チップ1,31よりも輸注液の流動方向下流側のチューブ5に配置され、前記チューブ5の流路を開閉する開閉弁7と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減圧流路によって所定の輸液速度に保持されるため、人為的操作による輸液速度調整が不要になり、人為的操作に起因する輸液速度の調整ミスを防止でき、患者等の第3者による輸液セットの不正操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例に係る流量制御チップ及びこの流量制御チップを備えた輸液セットの使用状態を示す図である。
図2】流量制御チップの詳細を示す図であり、図2(a)は流量制御チップの正面図、図2(b)は図2(a)のA1−A1線に沿って切断して示す流量制御チップの断面図、図2(c)は流量制御チップの背面図、図2(d)は図2(a)の矢印B1方向から見た流量制御チップの平面図である。
図3】流量制御チップの詳細を示す図であり、図3(a)は輸注液の流動状態を示す流量制御チップの正面図(図2(a)に対応する図)、図3(b)は輸注液の流動状態を示す流量制御チップの断面図(図2(b)に対応する図)、図3(c)は輸注液の流動状態を示す流量制御チップの背面図である。
図4】本発明の第2実施例に係る流量制御チップ及びこの流量制御チップを備えた輸液セットの使用状態を示す図である。
図5】流量制御チップの詳細を示す図であり、図5(a)は流量制御チップの正面図、図5(b)は図5(a)のA2−A2線に沿って切断して示す流量制御チップの断面図、図5(c)は図5(a)の矢印B2方向から見た流量制御チップの平面図である。
図6】従来の輸液セットの使用状態を示す図である。
図7】従来の輸液セットを構成するクレンメの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳述する。
【0013】
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例に係る流量制御チップ1及びこの流量制御チップ1を備えた輸液セット2の使用状態を示す図である。この図1に示すように、輸液セット2は、輸液スタンド(図示せず)に吊された輸液ボトル3に差し込まれるボトル針4と、ボトル針4が一端に取り付けられたチューブ5と、チューブ5の他端に取り付けられて患者の体に差し込まれる留置針6と、ボトル針4と留置針6とを接続するチューブ5の途中に配置される流量制御チップ1と、流量制御チップ1と留置針6との間のチューブ5に配置される開閉弁7と、を備えている。この図1に示す輸液セット2は、図6に示した従来の輸液セット100と比較して、従来の輸液セット100の点滴筒105とクレンメ106を流量制御チップ1と開閉弁7に置き換えた構成になっている。
【0014】
図2乃至図3は、流量制御チップ1の詳細を示す図である。なお、図2(a)は流量制御チップ1の正面図、図2(b)は図2(a)のA1−A1線に沿って切断して示す流量制御チップ1の断面図、図2(c)は流量制御チップ1の背面図、図2(d)は図2(a)の矢印B1方向から見た流量制御チップ1の平面図である。また、図3(a)は輸注液の流動状態を示す流量制御チップ1の正面図(図2(a)に対応する図)、図3(b)は輸注液の流動状態を示す流量制御チップ1の断面図(図2(b)に対応する図)、図3(c)は輸注液の流動状態を示す流量制御チップ1の背面図である。
【0015】
これらの図に示す流量制御チップ1は、合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))で形作られたチップ本体8と、チップ本体8の正面側を覆うように固定された弾性変形可能で且つ透明な合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))製の第1フィルム10と、チップ本体8の裏面側を覆うように固定された弾性変形可能で且つ透明な合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))製の第2フィルム11と、を備えている。
【0016】
チップ本体8は、正面形状が略矩形形状の板状体である輸注液流路形成部12と、輸注液流路形成部12の長手方向(Y軸方向)一端側に一体に形成されたパイプ状の輸注液導入路形成部13と、輸注液流路形成部12の長手方向(Y軸方向)他端側に一体に形成されたパイプ状の輸注液供給路形成部14と、を有している。
【0017】
輸注液導入路形成部13は、ボトル針4から延びるチューブ5の端部が嵌合され、輸液ボトル3内の輸注液をチューブ5を介して輸注液流路形成部12の内部空間(第1輸注液溜まり15)に導入する輸注液導入路16が形成されている。また、輸注液導入路形成部13は、嵌合されたチューブ5が抜けるのを防止するためのリング状の第1抜け止め突起17が外周面に形成されている。この第1抜け止め突起17は、外表面が円弧形状であり、チューブ5を弾性変形させた状態で円滑に嵌合できるようになっている。
【0018】
輸注液流路形成部12は、輸注液導入路16に連通する第1輸注液溜まり15が一端側に形成されている。この第1輸注液溜まり15は、輸注液流路形成部12の表裏に開口する矩形形状の穴であり、輸注液流路形成部12の表裏の開口部分が第1フィルム10及び第2フィルム11で塞がれている。また、輸注液流路形成部12は、第1輸注液溜まり15と第2輸注液溜まり18とを接続するラビリンス状の減圧流路20が形成されている。この減圧流路20は、表面側と裏面側の2層構造であり、第1輸注液溜まり15から表面側の第1減圧流路部20aに流れ込んだ輸注液が第1接続路20bを介して裏面側の第2減圧流路部20cに案内され、第2減圧流路部20cを流れた輸注液が第2接続路20dを介して裏面側の第3減圧流路部20eに案内され、第3減圧流路部20eを流れた輸注液が第3接続路20fを介して表面側の第4減圧流路部20gに案内され、第4減圧流路部20gを流れた輸注液が第4接続路20hを介して表面側の第5減圧流路部20iに案内され、第5減圧流路部20iを流れた輸注液が第5接続路20jを介して第2輸注液溜まり18に滴下するようになっている。この減圧流路20は、第1乃至第5減圧流路部20a,20c,20e,20g,20iが規則的に複数折れ曲がりながら延びる狭い流路になっている。そして、この減圧流路20は、第1輸注液溜まり15内の輸注液が所定の時間内に所定数(所定量)だけ第2輸注液溜まり18に滴下するように(所定の輸液速度になるように)、流路幅、流路深さ、及び流路長さが設定されている。なお、図3において、輸注液の流動方向を太い線の矢印で示してある。
【0019】
また、輸注液流路形成部12は、第2輸注液溜まり18と第3輸注液溜まり21とを第6接続路22を介して接続している。第2輸注液溜まり18は、輸注液流路形成部12の表裏に開口する矩形形状の穴であり、輸注液流路形成部12の表裏の開口部分が第1フィルム10及び第2フィルム11によって塞がれている。この第2輸注液溜まり18は、外部から内部の輸注液23の滴下状態を観察できるようになっており、看護師等が輸注液23の滴下状態を視覚的に確認することができる(図3参照)。第3輸注液溜まり21は、輸注液流路形成部12の表裏に開口する丸穴であり、輸注液流路形成部12の他端側に形成され、輸注液流路形成部12の表裏の開口部分が第1フィルム10及び第2フィルム11によって塞がれている。また、第3輸注液溜まり21は、内部がメッシュフィルタ24によって2室に分けられている。メッシュフィルタ24によって分けられた第3輸注液溜まり21の第1室25は、第6接続路22が開口するようになっている。また、メッシュフィルタ24によって分けられた第3輸注液溜まり21の第2室26は、第6接続路22を介して第1室25に流れ込んだ輸注液がメッシュフィルタ24を通過した後に流れ込むようになっている。
【0020】
メッシュフィルタ24は、第3輸注液溜まり21に形成されたフィルタ設置段部27に嵌合固定され、第1室25内に流れ込んだ輸注液内の気泡及び異物を除去し、気泡及び異物が除去された輸注液を第2室26内に流入させるようになっている。このメッシュフィルタ24は、円筒状の外筒24aの内側にフィルタ部24bが形成され、フィルタ部24bに四角形状の開口部が多数形成されている。このような形状及び機能を有するメッシュフィルタ24は、合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))で形作されており、射出成形によって高精度に形成されている。なお、メッシュフィルタ24は、開口部の一辺の長さが、例えば、0.1〜1.0mmに形成されている。
【0021】
輸注液供給路形成部14は、開閉弁7から延びるチューブ5の端部が嵌合され、第3輸注液溜まり21の第2室26とチューブ5とを接続する輸注液供給路28が形成されている。また、輸注液供給路形成部14は、嵌合されたチューブ5が抜けるのを防止するためのリング状の第2抜け止め突起30が外周面に形成されている。この輸注液供給路形成部14の第2抜け止め突起30は、輸注液導入路形成部13の第1抜け止め突起17と同様に、外表面が円弧形状であり、チューブ5を弾性変形させた状態で円滑に嵌合できるようになっている。
【0022】
第1フィルム10及び第2フィルム11は、輸注液流路形成部12の正面形状と同一の形状(略矩形形状)であり、同一の合成樹脂材料で同一の肉厚に形成されている。したがって、本実施例の流量制御チップ1は、輸注液流路形成部12の正面側に第1フィルム10を固定し、輸注液流路形成部12の裏面側に第2フィルム11を固定する場合に限定されず、輸注液流路形成部12の正面側に第2フィルム11を固定し、輸注液流路形成部12の裏面側に第1フィルム10を固定するようにしてもよい。
【0023】
このような構成の流量制御チップ1を備えた輸液セット2は、開閉弁7でチューブ5の流路を閉じた状態でボトル針4を輸液ボトル3に差し込み、流量制御チップ1の第1フィルム10及び第2フィルム11を第2輸注液溜まり18の内方へ押し込むように複数回揉むことにより、輸注液が第5接続路20jから第2輸注液溜まり18に滴下して溜まる。そして、この流量制御チップ1を備えた輸液セット2は、輸注液が第2輸注液溜まり18の空間に1/3〜1/2程度溜まると、開閉弁7でチューブ5の流路を開き、輸注液を留置針6の先端まで満たした後、留置針6を患者の体(腕等)に差し込み、輸液が開始されるようになっている。
【0024】
このような本実施例に係る流量制御チップ1は、輸注液を減圧流路20で減圧して第2輸注液溜まり18内に所定の速度で滴下することが可能となり、輸液速度を一定速度に保持できるため、人為的操作による輸液速度調整が不要になり、人為的操作に起因する輸液速度の調整ミスを防止でき、患者等の第3者による輸液セット2の不正操作を防止できる。なお、流量制御チップ1は、輸液速度毎に用意されており、医師の指示に従った輸液速度のものが選択されて使用される。
【0025】
また、本実施例に係る流量制御チップ1は、第3輸注液溜まり21にメッシュフィルタ24を設置してあるため、患者に供給される輸注液中の気泡及び異物をメッシュフィルタ24で除去することが可能である。
【0026】
[第2実施例]
図4は、本発明の第2実施例に係る流量制御チップ31及びこの流量制御チップ31を備えた輸液セット32の使用状態を示す図である。この図4に示すように、輸液セット32は、輸液スタンド(図示せず)に吊された輸液ボトル3に差し込まれるボトル針4と、ボトル針4が一端に取り付けられたチューブ5と、チューブ5の他端に取り付けられて患者の体に差し込まれる留置針6と、ボトル針4と留置針6とを接続するチューブ5の途中に配置された点滴筒33と、点滴筒33にチューブ5を介して接続された流量制御チップ31と、流量制御チップ31と留置針6との間のチューブ5に配置される開閉弁7と、を備えている。この図4に示す輸液セット32は、図6に示した従来の輸液セット100と比較して、従来の輸液セット100のクレンメ106を流量制御チップ31と開閉弁7に置き換えた構成になっている。
【0027】
図5は、流量制御チップ31の詳細を示す図である。なお、図5(a)は流量制御チップ31の正面図、図5(b)は図5(a)のA2−A2線に沿って切断して示す流量制御チップ31の断面図、図5(c)は図5(a)の矢印B2方向から見た流量制御チップ31の平面図である。
【0028】
図5に示す流量制御チップ31は、合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))で形作られたチップ本体34と、チップ本体34の正面側を覆うように固定された弾性変形可能で且つ透明な合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))製のフィルム35と、を備えている。
【0029】
チップ本体34は、正面形状が略矩形形状の板状体である輸注液流路形成部36と、輸注液流路形成部36の長手方向(Y軸方向)一端側に一体に形成されたパイプ状の輸注液導入路形成部37と、輸注液流路形成部36の長手方向(Y軸方向)他端側に一体に形成されたパイプ状の輸注液供給路形成部38と、を有している。
【0030】
輸注液導入路形成部37は、ボトル針4から延びるチューブ5の端部が嵌合され、輸液ボトル3内の輸注液をチューブ5を介して輸注液流路形成部36の内部空間(第1輸注液溜まり40)に導入する輸注液導入路41が形成されている。また、輸注液導入路形成部37は、嵌合されたチューブ5が抜けるのを防止するためのリング状の第1抜け止め突起42が外周面に形成されている。この第1抜け止め突起42は、外表面が円弧形状であり、チューブ5を弾性変形させた状態で円滑に嵌合できるようになっている。
【0031】
輸注液流路形成部36は、輸注液導入路41に連通する第1輸注液溜まり40が長手方向(Y軸方向)の一端側に形成されている。この第1輸注液溜まり40は、輸注液流路形成部36の表面側に開口する有底の矩形形状の穴であり、輸注液流路形成部36の表面側の開口部分がフィルム35で塞がれている。また、輸注液流路形成部36は、第1輸注液溜まり40と第2輸注液溜まり43とを接続するラビリンス状の減圧流路44が形成されている。この減圧流路44は、表面側にのみ形成され、第1輸注液溜まり40から第1減圧流路部44aに流れ込んだ輸注液が第1接続路44bを介して第2減圧流路部44cに案内され、第2減圧流路部44cを流れた輸注液が第2接続路44dを介して第3減圧流路部44eに案内され、第3減圧流路部44eを流れた輸注液が第3接続路44fを介して第2輸注液溜まり43に滴下するようになっている。この減圧流路44は、第1乃至第3減圧流路部44a,44c,44eが規則的に複数折れ曲がりながら延びる狭い流路になっている。そして、この減圧流路44は、第1輸注液溜まり40内の輸注液が所定の時間内に所定数(所定量)だけ第2輸注液溜まり43に滴下するように(所定の輸液速度になるように)、流路幅、流路深さ、及び流路長さが設定されている。
【0032】
また、輸注液流路形成部36の第2輸注液溜まり43は、輸注液流路形成部36の表面側に開口する有底の丸穴であり、輸注液流路形成部36の長手方向(Y軸方向)の他端側に形成され、輸注液流路形成部36の表面側の開口部分がフィルム35によって塞がれている。また、第2輸注液溜まり43は、内部がメッシュフィルタ45によって2室に分けられている。メッシュフィルタ45によって分けられた第2輸注液溜まり43の第1室46は、第3接続路44fが開口するようになっている。また、メッシュフィルタ45によって分けられた第2輸注液溜まり43の第2室47は、第3接続路44fを介して第1室46に流れ込んだ輸注液がメッシュフィルタ45を通過した後に流れ込むようになっている。
【0033】
メッシュフィルタ45は、第2輸注液溜まり43に形成されたフィルタ設置段部48に嵌合固定され、第1室46内に流れ込んだ輸注液内の気泡及び異物を除去し、気泡及び異物が除去された輸注液を第2室47内に流入させるようになっている。このメッシュフィルタ45は、円筒状の外筒45aの内側にフィルタ部45bが形成され、フィルタ部45bに四角形状の開口部が多数形成されている。このような形状及び機能を有するメッシュフィルタ45は、合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))で形作されており、射出成形によって高精度に形成されている。なお、メッシュフィルタ45は、開口部の一辺の長さが、例えば、0.1〜1.0mmに形成されている。
【0034】
輸注液供給路形成部38は、開閉弁7から延びるチューブ5の端部が嵌合され、第2輸注液溜まり43の第2室47とチューブ5とを接続する輸注液供給路50が形成されている。また、輸注液供給路形成部38は、嵌合されたチューブ5が抜けるのを防止するためのリング状の第2抜け止め突起51が外周面に形成されている。この輸注液供給路形成部38の第2抜け止め突起51は、輸注液導入路形成部37の第1抜け止め突起42と同様に、外表面が円弧形状であり、チューブ5を弾性変形させた状態で円滑に嵌合できるようになっている。
【0035】
このような構成の流量制御チップ31を備えた輸液セット32は、開閉弁7でチューブ5の流路を閉じた状態でボトル針4を輸液ボトル3に差し込み、点滴筒33を複数回揉むことにより、輸注液が点滴筒33内に滴下して溜まる。そして、この流量制御チップ31を備えた輸液セット32は、輸注液が点滴筒33の空間に1/3〜1/2程度溜まると、開閉弁7でチューブ5の流路を開き、輸注液を流量制御チップ31を介して留置針6の先端まで満たした後、留置針6を患者の体(腕等)に差し込むことにより、輸液が開始されるようになっている。輸液速度は、流量制御チップ31によって一定速度に制御されるが、点滴筒33への輸注液の滴下速度を観察することによって、看護師等が目視で確認することができる。
【0036】
このような本実施例に係る流量制御チップ31は、輸注液を減圧流路44で減圧して第2輸注液溜まり43内に所定の速度で滴下することが可能になり、輸液速度を一定速度に保持できるため、人為的操作による輸液速度調整が不要になり、人為的操作に起因する輸液速度の調整ミスを防止でき、患者等の第3者による輸液セット32の不正操作を防止することができる。なお、流量制御チップ31は、輸液速度毎に用意されており、医師の指示に従った輸液速度のものが選択されて使用される。
【0037】
また、本実施例に係る流量制御チップ31は、第2輸注液溜まり43にメッシュフィルタ45を設置してあるため、患者に供給される輸注液中の気泡及び異物をメッシュフィルタ45で除去することが可能である。
【0038】
なお、本発明に係る流量制御チップ1,31は、輸液の対象が人間である上記各実施例に限定されるものでなく、輸液の対象が動物である場合にも同様に適用できる。また、本発明に係る流量制御チップ1,31は、肥料、水等を植物に供給する場合にも適用できる。
【0039】
また、本発明に係る流量制御チップ1,31は、輸液速度毎に色を変えて着色及び/又は輸液速度毎に番号を付し、輸液速度毎に適切に選択できるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1,31……流量制御チップ、2,32……輸液セット、3……輸液ボトル、5……チューブ、7……開閉弁、20,44……減圧流路
図1
図2
図3
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図5
図6
図7