特許 6714495 ガス発生器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6714495

(24)【登録日】2020年6月9日

(45)【発行日】2020年6月24日

(54)【発明の名称】ガス発生器

(51)【国際特許分類】

   B60R 21/264 20060101AFI20200615BHJP

   F42B 3/12 20060101ALI20200615BHJP

【ＦＩ】

   B60R21/264

   F42B3/12

【請求項の数】3

【全頁数】9

(21)【出願番号】特願2016-219328(P2016-219328)

(22)【出願日】2016年11月10日

(65)【公開番号】特開2018-75985(P2018-75985A)

(43)【公開日】2018年5月17日

【審査請求日】2019年9月4日

(73)【特許権者】

【識別番号】000002901

【氏名又は名称】株式会社ダイセル

(74)【代理人】

【識別番号】100087642

【弁理士】

【氏名又は名称】古谷 聡

(74)【代理人】

【識別番号】100098408

【弁理士】

【氏名又は名称】義経 和昌

(72)【発明者】

【氏名】福井 勇貴

(72)【発明者】

【氏名】小林 睦治

【審査官】 瀬戸 康平

(56)【参考文献】

【文献】 国際公開第０３／０６６３９０（ＷＯ，Ａ１）

【文献】 特開２００９−１３７４７８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 国際公開第２０１２／１５３４２７（ＷＯ，Ａ１）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ６０Ｒ ２１／２６４

Ｆ４２Ｂ ３／１２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

天板と、前記天板と軸方向に対向する位置にある底板と、前記天板と前記底板の間にあるガス排出口が形成された周壁部からなるハウジンングを有しており、
前記ハウジンング内が、一つの接続孔と第２連通孔を有する、半径方向に配置された隔壁によって、第１ガス発生剤が収容された前記天板側の第１燃焼室と、第２ガス発生剤が収容された前記底板側の第２燃焼室に分離されており、
前記底板には、前記第１燃焼室内の第１ガス発生剤を燃焼させる第１点火器と、前記第２燃焼室内の第２ガス発生剤を燃焼させる第２点火器が配置されており、
前記ハウジンング内には、第１点火器を包囲して内筒部材が配置されており、
前記内筒部材が、
第１端開口部側が前記底板側に位置し、第２端開口部側が前記隔壁の接続孔を通されて、前記第２端開口部が前記隔壁よりも前記天板の側に位置して前記天板と間隔をおいて前記第１燃焼室内に位置するように前記第１点火器を包囲して配置され、
前記第２端開口部が第１閉塞部材で閉塞され、前記第２連通孔が第２閉塞部材で閉塞されているものであり、
前記第１閉塞部材で閉塞された第２端開口部と前記天板の間にも前記ガス発生剤が存在しているものである、ガス発生器。

【請求項2】

前記内筒部材が、第２端開口部に半径方向内側に伸ばされた内側環状面部を有しており、
前記第２端開口部が、前記内側環状面部に前記第１閉塞部材が配置されることにより閉塞されているものである、請求項１記載のガス発生器。

【請求項3】

前記隔壁の内側面から前記天板の内側面までの距離Ｌ１と前記内筒部材の第２端開口部から前記天板の内側面までの距離Ｌ２が、Ｌ２／Ｌ１＝０．５〜０．９の関係を満たしているものである、請求項１または２記載のガス発生器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、自動車のエアバッグ装置で使用できるガス発生器に関する。

【背景技術】

【0002】

ガス発生器のハウジンング内には、ガス発生剤が収容された燃焼室が配置されており、前記ガス発生剤は、ハウジンングに固定された点火器で着火燃焼されるようになっている。
点火器とガス発生剤が接触した状態のものもあるが、点火器とガス発生剤の間が筒部材（チューブ部材）で仕切られているものも知られている。

【0003】

特許文献１の図５には、底部１とカバー部材２からなるガス発生器の中に管状部材１４が配置され、第１チャンバー６と第２チャンバー９が半径方向に区画されたガス発生器が示されている。
管状部材１４は、下端が点火器の周りにはめ込まれており、上端１５はカバー部材２と接触しておらず、カバー部材２との間に隙間１６が形成されている。上端１５には、フィルム１７が配設され、管状部材１４内部の薬剤７がチャンバー９に漏れないようにシールされている。

【0004】

作動時には、点火器から発生した火炎などがフィルム１７を破ったあとで隙間１６からカバー部材２に沿うようにして燃焼室内に入り、ガス発生剤を着火燃焼させる。
しかし、そのような場合には、ガス発生剤は図５の上から下に順に燃焼して行くため、ガス発生剤全体の燃焼性が悪くなる。
また、図５に示されているように大きなディスク型のガス発生剤が収容されているのであれば、ガス発生剤間にも大きな隙間が残っているので燃焼性は良いが、小さなガス発生剤が収容されている場合には隙間も小さくなるため、燃焼性が悪くなる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特表２０１０−５４０３３１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本発明は、第１燃焼室に収容されている第１ガス発生剤全体の着火性および燃焼性が改良されたガス発生器を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、天板と、前記天板と軸方向に対向する位置にある底板と、前記天板と前記底板の間にあるガス排出口が形成された周壁部からなるハウジンングを有しており、
前記ハウジンング内が、一つの接続孔と第２連通孔を有する、半径方向に配置された隔壁によって、第１ガス発生剤が収容された前記天板側の第１燃焼室と、第２ガス発生剤が収容された前記底板側の第２燃焼室に分離されており、
前記底板には、前記第１燃焼室内の第１ガス発生剤を燃焼させる第１点火器と、前記第２燃焼室内の第２ガス発生剤を燃焼させる第２点火器が配置されており、
前記ハウジンング内には、第１点火器を包囲して内筒部材が配置されており、
前記内筒部材が、
第１端開口部側が前記底板側に位置し、第２端開口部側が前記隔壁の接続孔を通されて、前記第２端開口部が前記隔壁よりも前記天板の側に位置して前記天板と間隔をおいて前記第１燃焼室内に位置するように前記第１点火器を包囲して配置され、
前記第２端開口部が第１閉塞部材で閉塞され、前記第２連通孔が第２閉塞部材で閉塞されているものであり、
前記第１閉塞部材で閉塞された第２端開口部と前記天板の間にも前記ガス発生剤が存在しているものである、ガス発生器を提供する。

【0008】

ハウジンング内は、底板を下、天板を上にしたとき、二つの燃焼室が隔壁により上下に分離されている。
第１点火器と第２点火器は、いずれも底板側に配置されている。

【0009】

第１点火器と第１燃焼室は、内筒部材を介して接続されており、第１点火器と第１ガス発生剤は接触していない。
内筒部材の内部空間には、底板側に第１点火器が配置されており、残部空間には何もない状態でもよいし、公知の伝火薬、公知の伝火薬として機能できるガス発生剤が収容されていてもよい。
第２点火器は第２燃焼室内に配置されており、第２ガス発生剤と接触していてもよい。

【0010】

第１燃焼室と第２燃焼室は、隔壁に形成された第２連通孔により連通されるようになっている。第２連通孔は１つの孔でもよいし、複数の孔から形成されていてもよい。
内筒部材の第２端開口部を閉塞する第１閉塞部材は、ステンレスやアルミニウムなどの基材上に粘着剤層が形成されたシールテープなどを使用することができる。その他、伝火薬を使用するときは、伝火薬を充填したアルミニウム製容器の面により第２端開口部が閉塞されるようにすることもできる。
第２連通孔は、前記のシールテープなどからなる第２閉塞部材で閉塞されている。

【0011】

第１燃焼室内にある内筒部材の第１閉塞部材で閉塞されている第２端開口部と天板の間には、ガス発生剤が収容できる程度の空間が形成されており、ガス発生剤が存在している。

【0012】

第１点火器が作動すると火炎などの燃焼生成物が発生する。内筒部材内に伝火薬を収容したときは、火炎や燃焼ガスなどの燃焼生成物が発生する。
発生した燃焼生成物は、内筒部材の作用により狭い範囲に集束された状態で直進して、第１閉塞部材を破り、第１燃焼室内の第２端開口部と天板の間にある第１ガス発生剤を着火燃焼させた後、天板に衝突する。
燃焼生成物は天板に衝突した後で跳ね返って拡散され、第１燃焼室内の残余の第１ガス発生剤を着火燃焼させる。
二つの燃焼室があるとき、通常は第１燃焼室の方が多量の燃焼ガスを発生するように設計されているため、第１燃焼室の第１ガス発生剤の着火性が向上される効果は大きい。
このように本発明のガス発生器は、点火器の作動により発生した燃焼生成物が拡散されるため、第１点火器の出力を増強することなく、第１燃焼室内にある第１ガス発生剤全体の着火性と燃焼性が向上される。特に隔壁を配置してハウジングを上下に分離したことによって、第１燃焼室の底部となる隔壁と天板との距離が短く、天板で反射した燃焼生成物が隔壁周辺まで届きやすくなるので、第１ガス発生剤全体の燃焼性が向上する。好ましくは第１点火器の点火薬を収容する着火部よりも、隔壁が天板側に位置するようにする。

【0013】

本発明のガス発生器の好ましい実施形態は、前記内筒部材が、第２端開口部に半径方向内側に伸ばされた内側環状面部を有しており、
前記第２端開口部が、前記内側環状面部に前記第１閉塞部材が配置されることにより閉塞されているものである。

【0014】

内筒部材の第２端開口部に形成された内側環状面部は、閉塞部材を配置できるようにすると共に、第２端開口部を小さくして、燃焼生成物を集束させるようにも作用することができる。
また第２端開口部（内側環状面部）に第１閉塞部材を配置することで、作動時には、内筒部材内部の圧力が十分に高まった時点で閉塞部材が破れるようにすることができる。
そのようにすることで燃焼生成物がより勢いよく噴出されるようになり、天板に衝突した後の拡散範囲および拡散速度も高められるため、ガス発生剤全体の燃焼性を高める上で好ましい。
閉塞部材は、ステンレスやアルミニウムなどの基材上に粘着剤層が形成されたシールテープを使用することができるほか、伝火薬を使用するときは、伝火薬を充填したアルミニウム製容器の面により第２端開口部が閉塞されるようにすることもできる。

【0015】

本発明のガス発生器の他の好ましい実施形態は、前記隔壁の内側面から前記天板の内側面までの距離Ｌ１と前記内筒部材の第２端開口部から前記天板の内側面までの距離Ｌ２が、Ｌ２／Ｌ１＝０．５〜０．９の関係を満たしているものである。

【0016】

Ｌ２／Ｌ１は０．５〜０．９が好ましく、０．６〜０．８がより好ましい。
前記Ｌ２／Ｌ１を満たしていると、第２端開口部から噴出した燃焼生成物が天板に衝突したときの拡散範囲が広くなり、第１燃焼室内の第１ガス発生剤全体の着火燃焼性が向上される。

【発明の効果】

【0017】

本発明のガス発生器は、第１燃焼室に収容されている第１ガス発生剤全体の着火性および燃焼性が改良されている。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】本発明のガス発生器の一実施形態の軸方向断面図。

【図2】図１のガス発生器のハウジンングの部分断面図。

【図3】図１とは別実施形態のガス発生器の軸方向断面図。

【図4】図１、図３とは別実施形態のガス発生器の軸方向断面図。

【発明を実施するための形態】

【0019】

（１）図１のガス発生器
本発明のガス発生器の一実施形態を図１により説明する。
ガス発生器１は、ディフューザシェル１１とクロージャシェル２１からなるハウジンング１０を有している。ディフューザシェル１１とクロージャシェル２１は、いずれも鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
ディフューザシェル１１は、天板１２と上部周壁部１３を有しており、上部周壁部１３には周方向に均等間隔をおいて複数のガス排出口１４が形成されている。上部周壁部１３は開口部にフランジ部１５を有している。
複数のガス排出口１４は、内側から金属製のシールテープで閉塞されている。

【0020】

クロージャシェル２１は、底板２２と下部周壁部２３を有している。
底板２２には間隔をおいて二つの穴が形成されており、前記二つの穴に第１点火器３２と第２点火器４２が取り付けられている。第１点火器３２と第２点火器４２はともに中心軸Xから偏心した位置に配置されている。
第１点火器３２は、ハウジンング１０の中心軸Ｘに近い位置に配置され、第２点火器４２は、第１点火器３２と比べるとハウジンング１０の中心軸Ｘから遠い位置に配置されている。
図１の実施形態では、第１点火器３２は、第１点火器３２の中心軸が中心軸Ｘから下部周壁部２３までの距離の２０〜３０％の範囲に位置するように配置されている。
また図１の実施形態では、第２点火器３２は、第２点火器３２の中心軸が中心軸Ｘから下部周壁部２３までの距離の４０〜６０％の範囲に位置するように配置されている。

【0021】

ハウジンング１０は、図２に示すとおり、ディフューザシェル１１の上部周壁部１３の開口部近傍の内側面１３ａとクロージャシェル２１の下部周壁部２３の開口部近傍の外側面２３ａが接触した状態で、前記接触部分において溶接固定されている。
ハウジンング１０は、ディフューザシェル１１内にクロージャシェル２１が入り込んだ状態になっているため、図２に示すとおり、上部周壁部１３と下部周壁部２３の環状端面の間で環状段差面２４が形成されている。

【0022】

ハウジンング１０内は、半径方向に配置された隔壁５０よって、天板１２側の第１燃焼室３０と底板２２側の第２燃焼室４０に分離されている。
第１燃焼室３０内には第１ガス発生剤３１が収容され、第２燃焼室４０内には第２ガス発生剤４１が収容されている。

【0023】

隔壁５０は、ハウジンング１０の中心軸Ｘからは周壁部（上部周壁部１３と下部周壁部２３）側に偏心した位置に形成された一つの接続孔５１と、複数の貫通孔からなる第２連通孔４５を有している。
隔壁５０は、平面部５２、平面部５２の外周縁部から天板１２側に伸ばされた外側環状壁部５３、外側環状壁部５３から半径方向の外側に突き出された外側環状面部５４を有している。
さらに隔壁５０は、平面部５２の接続孔５１に沿った内周縁部から天板１２側に伸ばされた内側環状壁部５５を有している。
隔壁５０は、外側環状面部５４が環状段差面２４に当接され、外側環状壁部５３が下部周壁部２３に当接され、内側環状壁部５５が内筒部材６０に当接されている。

【0024】

ハウジンング１０内には、第１点火器３２を包囲して内筒部材６０が配置されている。内筒部材６０は、ハウジンング１０と同じ材質からなるものが好ましい。
内筒部材６０は、第１端開口部６１側が第１点火器３２のカラーを包囲した状態で底板２２に当接され、第２端開口部６２側が隔壁５０の貫通孔５１を通って第１燃焼室３０側に位置するように配置されている。

【0025】

内筒部材６０は、底板２２側の第１端開口部６１、天板１２側の第２端開口部６２を有しており、第２端開口部６２には、半径方向の内側に突き出された内側環状面部６３が形成されている。
図１に示す内筒部材６０は、第１端開口部６１から第２端開口部６２に向かって外径が変化しており、第１端開口部６１側の大径部６４、第２端開口部６２側の小径部６６、大径部６４と小径部６６の間の傾斜面部６５からなっている。
大径部６４の外径と小径部６６の外径は、大径部６４の外径＞小径部６６の外径の関係を満たしている。
大径部６４は、第１点火器３２のカラーに接触した状態で嵌め込まれており、小径部６６の先端部分が内側環状壁部５５の上端よりも上（第１燃焼室３０側）に突き出され、隔壁５０の平面部５２よりも天板１２に近くなる位置に配置されている。

【0026】

内筒部材６０の内部は第１点火器３２の収容空間となっており、伝火薬を収容したときは、第１点火器３２を除いた残部空間が伝火薬室６８となっている。
第２端開口部６２は、第１燃焼室３０側から環状面部６３に貼り付けられたシールテープからなる第１閉塞部材５７により閉塞されており、作動時には伝火薬室６８と第１燃焼室３０を連通する第１連通孔になる。

【0027】

本発明のガス発生器１は、図１に示す内筒部材６０に替えて、図３に示す内筒部材８０を使用したガス発生器１Ａにすることもできる。
図３に示す内筒部材８０は、第１端開口部８１と第２端開口部８２を有しており、第２端開口部８２は内側に突き出された内側環状面部８３を有している。
内筒部材８０は、第１端開口部８１から第２端開口部８２に向かって段階的に外径および内径が小さくなっており、第１端開口部８１側の大径部８４、第２端開口部８２側の小径部８８、大径部８４と小径部８８の間の中径部８６、大径部８４と中径部８６の間の第１傾斜面部８５，中径部８６と小径部８８の間の第２傾斜面部８７を有している。
大径部８４は、第１点火器３２のカラーに接触した状態で嵌め込まれており、小径部８８の先端が内側環状壁部５５の上端よりも上（第１燃焼室３０側）に突き出され、隔壁５０の平面部５２よりも天板１２に近くなる位置に配置されている。
内筒部材８０は、第２端開口部８２側に向かって先細り形状となっているため、第２端開口部８２において、伝火薬室８９で発生した燃焼生成物の噴出速度と集束効果がより高められるので好ましい。

【0028】

また本発明のガス発生器１は、図１に示す内筒部材６０に替えて、図４に示す内筒部材９０を使用したガス発生器１Ｂにすることもできる。
図４に示す内筒部材９０は、第１端開口部９１と第２端開口部９２を有しており、第２端開口部９２は内側に突き出された内側環状面部９３を有している。
内筒部材９０は、第１端開口部９１から第２端開口部９２に向かって外径および内径が小さくなっており、第１端開口部９１側の大径部９４、大径部９４に続く第１傾斜面部９５、第１傾斜面部９５から第２端開口部９２までの第２傾斜面部９６を有している。第２傾斜面部９６は、第１傾斜面部９５との境界部分から第２端開口部９２にかけて連続的に外径、および内径が小さくなっている。
大径部９４は、第１点火器３２のカラーに接触した状態で嵌め込まれており、第２傾斜面部９６の半分程度が内側環状壁部５５よりも上（第１燃焼室３０側）に突き出され、内側環状面部９３が、隔壁５０の平面部５２よりも天板１２に近くなるように配置されている。
内筒部材９０は、第１端開口部９１の外径および内径よりも第２端開口部９２の外径および内径が小さくなった先細り形状となっているため、第２端開口部９２において、伝火薬室９７で発生した燃焼生成物の噴出速度と集束効果がより高められるので好ましい。

【0029】

複数の第２連通孔４５は、作動時に第２燃焼室４０と第１燃焼室３０を連通させるものである。
図１、３，４のガス発生器では、隔壁５０のうち第２点火器４２と軸方向に対向する位置および軸方向に対向していない位置のいずれにも第２連通孔４５が形成されているが、前記の軸方向に対向していない位置にのみ第２連通孔４５が形成されていてもよい。
前記の軸方向に対向していない位置にのみ第２連通孔４５が形成されていると、第２燃焼室４０全体の圧力が高まった状態で第２閉塞部材６７が開裂するので、第２ガス発生剤４１全体の燃焼性が高くなる点で好ましい。
複数の第２連通孔４５は、金属製の粘着テープからなる第２閉塞部材６７で第１燃焼室３０側から閉塞されている。

【0030】

隔壁５０の内側面（第１燃焼室３０側の面）から天板１２の内側面１２ａまでの距離Ｌ１と、内筒部材６０の第２端開口部６２（環状面部６３の第１燃焼室３０側の面）から天板１２の内側面１２ａまでの距離Ｌ２は、Ｌ２／Ｌ１が約０．７に設定されている。
内筒部材６０の第２端開口部（第１連通孔）６２は第１燃焼室３０内に位置しており、天板１２と第２端開口部６２の間にも第１ガス発生剤３１が存在している。

【0031】

図１の実施形態では、第１燃焼室３０内に筒状フィルタ７０が配置されている。筒状フィルタ７０は、第１端面７１が天板１２に当接され、第２端面７２が隔壁５０の平面部５２に当接され、外側周面７３の下部（底板２２側）が外側環状壁部５３に当接されている。筒状フィルタ７０とガス排出口１４を有する上部周壁部１３の間には、筒状間隙が形成されている。

【0032】

図１のガス発生器１をエアバッグ装置に取り付けたときの動作を説明する。本発明のガス発生器１は、第１点火器３２が先に作動して、第２点火器４２が遅れて作動する形態だけでなく、第１点火器３２と第２点火器４２が同時に作動する場合や第１点火器３２のみが作動する場合においても効果があるものである。以下においては、第１点火器３２が先に作動する形態により説明する。

【0033】

第１点火器３２が先に作動したとき、第１点火器３２から生じた火炎などにより伝火薬室６８内の伝火薬が着火燃焼して、燃焼生成物を生じさせる。
伝火薬室６８内に発生した燃焼生成物は、内筒部材６０の内側環状面部６３の作用により集束されて直進して、第１閉塞部材５７を破り、第２端開口部６２と天板１２の間にある第１ガス発生剤３１を着火燃焼させたあと、天板１２に衝突する。
天板１２に衝突した燃焼生成物は跳ね返った後で拡散して、第１燃焼室３０内の第１ガス発生剤３１全体の着火燃焼を促進させる。
図１の実施形態では、Ｌ１／Ｌ２＝０．７に設定されているため、第２端開口部６２から噴出した燃焼生成物が天板１２に衝突したときの拡散範囲が広く、隔壁５０まで燃焼生成物が到達しやすくなる。また第２端開口部６２から天板１２の間に存在する第１ガス発生剤３１の燃焼によって発生する燃焼生成物も加わって天板１２に反射することから、隔壁５０近くに位置する未燃焼のガス発生剤に対する着火性能が向上する。
第１ガス発生剤３１の燃焼により発生した燃焼ガスは、筒状フィルタ７０を通過したあと、シールテープを破ってガス排出口１４から排出されてエアバッグを膨張させる。
第２点火器４２が作動すると第２ガス発生剤４１が着火燃焼され、燃焼ガスが発生する。発生した燃焼ガスは、第２閉塞部材６７を破って第２連通孔４５から第１燃焼室３０内に流入し、筒状フィルタ７０を通過してガス排出口１４から排出され、さらにエアバッグを膨張させる。
図３のガス発生器１Ａおよび図４のガス発生器１Ｂを使用した場合も、図１のガス発生器１と同様に動作する。図３のガス発生器１Ａの内筒部材８０および図４のガス発生器１Ｂの内筒部材９０は、図１の内筒部材６０と比べるとより先細り形状になっているため、燃焼生成物の集束効果がより高められることになり、天板１２に衝突した後の拡散効果や、隔壁５０までの到達効果もより高められることになる。

【産業上の利用可能性】

【0034】

本発明のガス発生器は、自動車に搭載するエアバッグ装置用のガス発生器として利用することができる。

【符号の説明】

【0035】

１ ガス発生器
１０ ハウジンング
１１ ディフューザシェル
１２ 天板
１４ ガス排出口
２１ クロージャシェル
２２ 底板
３０ 第１燃焼室
３１ 第１ガス発生剤
３２ 第１点火器
４０ 第２燃焼室
４１ 第２ガス発生剤
４２ 第２点火器
４５ 第２連通孔
５０ 隔壁
５７ 第１閉塞部材
６０ 内筒部材
６２ 第２端開口部（第１連通孔）
６７ 第２閉塞部材
７０ フィルタ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】