特許第6714503号(P6714503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェルルブリカンツジャパン株式会社の特許一覧

特許6714503電子制御機器を配した油圧作動機用潤滑油組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6714503
(24)【登録日】2020年6月9日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】電子制御機器を配した油圧作動機用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 165/00 20060101AFI20200615BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20200615BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20200615BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20200615BHJP
   C10M 105/04 20060101ALN20200615BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20200615BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20200615BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20200615BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20200615BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20200615BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20200615BHJP
【FI】
   C10M165/00
   C10M169/04
   !C10M159/22
   !C10M145/14
   !C10M105/04
   C10N10:04
   C10N20:00 A
   C10N20:00 Z
   C10N20:02
   C10N20:04
   C10N30:00 D
   C10N40:08
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-255016(P2016-255016)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-104621(P2018-104621A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】517436615
【氏名又は名称】シェルルブリカンツジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】田崎 博之
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘
(72)【発明者】
【氏名】北川 舞
(72)【発明者】
【氏名】永仮 光洋
【審査官】 三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−234187(JP,A)
【文献】 特開2014−218625(JP,A)
【文献】 特表2002−542378(JP,A)
【文献】 特開2014−125570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系基油と、過塩基性マグネシウムサリシレートをマグネシウム含有量として組成物全量に対して30〜250ppmと、重量平均分子量が5千〜20万である非分散型ポリメタクリレートを正味量として組成物全量に対して0.07〜5.0質量%含有してなる組成物であって、該組成物の25℃における導電性が200pS/m以上、引火点が240℃以上、流動点が−40℃以下、140℃での摩擦係数(マイクロクラッチ試験法)が0.08以上であることを特徴とする電子制御機器を配した油圧作動機用潤滑油組成物。
【請求項2】
上記炭化水素系基油が、ガストゥリキッド(GTL)基油を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子制御機器を配した油圧作動機用潤滑油組成物。
【請求項3】
上記炭化水素系基油が、ガストゥリキッド(GTL)基油を40質量%以上含むことを特徴とする請求項2に記載の電子制御機器を配した油圧作動機用潤滑油組成物。
【請求項4】
上記組成物の粘度グレードがVG46〜68であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子制御機器を配した油圧作動機用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子制御バルブシステムなどの電子制御機器に誤作動や故障を起こさせないような導電性を有する油圧作動機用の潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な潤滑油などの石油は主成分が炭化水素である絶縁性の良い液体である。このような液体がパイプ等を通して送油されると、静電気が発生する(流動帯電と言われている)ことはかなり以前より知られている(非特許文献1)。
この時発生した電荷は、液体と共に貯蔵タンクに運ばれ、タンク容器内部やその周辺で帯電、放電することで火花を生じ、この液体に引火する場合がある。このような現象に対して、静電気の蓄積を抑えて火花が出るのを防止するために、例えば、電気伝導度(導電率、電動率)を高めるジノニルナフチルスルホン酸を活性成分とするSTADIS−450(デュポン社製)等を添加することが知られている。
【0003】
更に、近年では、油圧装置の高性能化により、より高速で送油されることによって静電気が発生するリスクが高まっている。こうした貯留槽などの固体と油の界面で生じる電気現象によって発生する火花がノイズとなり、電子部品を含む制御装置に対して誤作動や故障を発生させるという問題を起こしている。
【0004】
特に、油圧作動油は、油圧機器や装置などの油圧システムにおける動力伝達,力の制御,緩衝などの作動に用いられる動力伝達流体であり、また、摺動部分を潤滑する機能も果たしている。
最近の油圧機器は小型化と高出力化が進んでおり、それに伴い作動圧力が、例えば、従来14〜20MPa程度であったものが、現在では30MPa以上へと一段と高圧となり、送油速度も速くなることから流動帯電の発生する可能性が一層高くなっている。
これらの油圧システムには、通常、電子制御のバルブシステムが装備されていることから、火花ノイズを起こさせない対策を講じると共に、保管しておく場合の安全面から引火点の高い油が望まれる。また、湿式ブレーキの潤滑に供する場合には制動不良がないように適度の摩擦係数を有するものであることが求められる。
【0005】
潤滑油組成物の導電性を向上させるために、有機金属系化合物、コハク酸誘導体又はアミン誘導体などの分子内に強い極性基と適当な大きさの親油基を持つものと、芳香族系アゾ化合物を組合わせて、基油に含有させたものが知られている。このものでは、体積抵抗率が1×1010 Ω・cm以下を合格と判定しているが、これはSジーメンス表記では10pS/m以上に相当する程度のもので、流動帯電による火花発生を確実に防止するには未だ不十分であった。また、芳香族系アゾ化合物を必須成分としているために潤滑油が赤色を呈しており、現場での目視による潤滑油の劣化判定が困難となっているし、制動特性に配慮したものでもない。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−234187
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】愛知工業大学研究報告 B 専門関係論文集 14,1−6、「液体の細管流動帯電」1979年3月31日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、バルブシステムを電子制御したりするような電子制御機器に対して悪影響を与えるノイズ発生を防止するため導電性を付与し、電子制御される湿式ブレーキの制動特性にも優れ、かつ安全性に優れた油圧作動機用の潤滑油組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基油として炭化水素系基油を使用し、この基油に過塩基性マグネシウムサリシレートをマグネシウム含有量として組成物全量に対して30〜250ppmと、重量平均分子量が5千〜20万である非分散型ポリメタクリレートを正味量として組成物全量に対して0.07〜5.0質量%を含有させた組成物である。この組成物の25℃における導電性は200pS/m以上(Sジーメンス表記)であり、引火点は240℃以上であり、流動点は−40℃以下であり、かつ140℃におけるマイクロクラッチ試験法での摩擦係数が0.08以上であるようにした電子制御機器を配した油圧作動の機械に用いる潤滑油組成物としたものである。
【0010】
また、上記基油には、GTL(ガストゥリキッド)基油を含有させるとよく、好ましくは40質量%以上を含有させるようにする。
この潤滑油組成物の40℃における動粘度を10〜100mm/sであるようにするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の潤滑油組成物は、導電性を高くすることができるようになり、流動点も低く、流動帯電が少なくて静電気の帯電に伴う発火を防止することができ、また、引火点も高くて安全に使用することができるものであり、バルブシステムを電子制御するような電子制御機器に対して悪影響を与えるノイズ発生を防止し、電子制御される湿式ブレーキの制動特性にも優れた油圧作動機用の潤滑油組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、基油として炭化水素系基油を使用する。
この炭化水素系基油とは、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4及びグループ5のナフテン油などの炭化水素基油に属する基油であって、これらを単独で又は適宜に混合したものである。
【0013】
上記グループ1基油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろう等の精製手段を適宜に組合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油を挙げることができる。
ここで使用するグループ1基油は、100℃動粘度(ASTM D445、JIS K2283にて測定したもの。以下同じ。)が2〜15mm/s、好ましくは4〜15mm/s、より好ましくは6〜11mm/sのものであり、粘度指数(ASTM D2270、JIS K2283にて計測したもの。以下同じ。)は90〜120、好ましくは95〜120、より好ましくは95〜110である。また、硫黄分は0.03〜0.7質量%、好ましくは0.3〜0.7質量%、より好ましくは0.4〜0.7質量%である。また、ASTM D3238による%CAは5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3.4以下であり、また、%CPが60以上、好ましくは63以上、より好ましくは66以上のものである。
【0014】
グループ2基油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろう等の精製手段を適宜に組合せて適用することにより得られたパラフィン系鉱油を挙げることができる。ガルフ社法等の水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、好適に使用することができるものである。
この基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は100〜120がよい。100℃における動粘度は2〜15mm/s、好ましくは4〜15mm/s、より好ましくは6〜11mm/sである。また全硫黄分は0.03質量%(300ppm)未満、好ましくは0.02質量%(200ppm)未満、更に好ましくは0.001質量%(10ppm)未満である。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満であるとよい。更にアニリン点(ASTM D611、JIS K2256にて測定したもの)は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するとよい。
【0015】
また、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油も好適に用いることができる。
これらの基油はAPIグループ2またはグループ3基油に該当するものである。粘度は特に制限されないが、粘度指数は100〜160、好ましくは100〜145がよい。100℃における動粘度は、好ましくは2〜15mm/s、より好ましくは4〜15mm/s、更に好ましくは6〜11mm/sである。また全硫黄分は、0〜0.03質量%(0〜300ppm)、好ましくは0.01質量%(100ppm)未満である。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満であり、更にアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するとよい。
【0016】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)基油は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明における基油として好適に用いることができる。
このGTL基油の粘度性状は特に制限されないが、通例、粘度指数は100〜180、より好ましくは100〜150であり、また100℃における動粘度は2〜12mm/s、より好ましくは2〜9mm/sのものである。
また、通常、全硫黄分は0.03質量%(300ppm)未満、より好ましくは10ppm未満、全窒素分は1ppm未満である。そのようなGTL基油はAPIグループ3基油に該当するものであり、商品の一例として、SHELL XHVI(登録商標)を挙げることができる。
【0017】
このGTL基油は、基油全量の全部とすることもできるし、基油全量の一部として使用することもできる。一部として使用する場合には、基油全量の30質量%を超えるものとし、好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上となるように使用すると、潤滑油組成物の性能を一層好ましいものとすることができる。
【0018】
炭化水素系合成油としては、例えば、100℃の動粘度が2〜12mm/sのポリオレフィン、エチレンとアルファオレフィンのオリゴマー(グループ4)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルアルカン(グループ5)などや、これらの混合物などを挙げることができる。
【0019】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィン等が挙げられる。ポリオレフィンの製造に当っては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
特にポリアルファオレフィン(PAO)と呼ばれている、100℃の動粘度が2〜12mm/sのポリオレフィンやポリブデン等が好適であり、これはグループ4に属する基油である。このポリアルファオレフィンは、2種類以上の合成油を混合させたものであってもよい。
【0020】
グループ5基油には、含酸素系のエステル、エーテル基油等の合成油があるが、これらのものは密度が高いために潤滑油組成物としたときの絶体粘度が上昇し、油圧作動油として使用するときに圧力損失の原因になるし、また省エネルギーの観点から見ても、含酸素系のグループ5基油は本発明の基油として使用することを避けるようにするとよい。
【0021】
上記炭化水素系基油において、100℃の動粘度が2mm/s以下の基油は、分子量が小さいために、一般的に基油の引火点(JIS K2265−4 COC法にて測定したもの)が150℃以下で低く、またNOACK(ASTM D5800にて測定したもの)が高くて蒸発損失が大きくなるため、長期にわたっての軸受けや油圧作動の潤滑には好ましくない。
100℃の動粘度が15mm/s以上では、潤滑油組成物の低温粘度(ASTM D5293、ASTM D4684により測定したもの)が高くなり、高速回転の軸受けや油圧作動油には好ましくない。
また%CAが5より大きいか、又は%CPが60より小さい場合には、基油の溶解性、極性は向上するが、熱・酸化安定性が低下して好ましくないことがある。そして硫黄分が0.7質量%より多いと、最終組成物である軸受油や油圧作動油の熱・酸化安定性が低下するし、非鉄金属などの銅やアルミ合金に対する腐食性において好ましくない現象が見られるようになる。
【0022】
本潤滑油組成物における上記基油の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で50〜99質量%、好ましくは60〜99質量%、より好ましくは70〜99質量%の範囲で使用するとよい。
【0023】
上記基油には、過塩基性金属サリシレートが加えられる。この過塩基性金属サリシレートは、金属系清浄分散剤として知られているものであり、金属元素の含有率が重量比で1%以上であって、10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下である。
過塩基性金属サリシレートの金属として、アルカリ金属ではナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属ではカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。中でもマグネシウムが好ましく、場合によってはマグネシウムとカルシウムのものを併用することができる。
【0024】
この過塩基性サリシレートの含有量は組成物全量基準において、マグネシウム量で30ppm以上が好ましく、より好ましくは50ppm以上であり、更に好ましくは70ppm以上である。一方、上限は250ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、150ppm以下が更に好ましい。
マグネシウムとカルシウムの併用の場合は、マグネシウムとカルシウムの総量を組成物全量基準において、30ppm以上とすることが好ましく、上限は300ppm以下とすることが好ましい。上記含有量が30ppm未満の場合は、必要とする電気伝導率が得られないことがあり、300ppmを超えると摩擦係数特性が悪化するようになり、湿式ブレーキの場合には制動不良を生じるおそれがある。
【0025】
上記過塩基性金属サリシレートとしては、その構造に特に制限はないが、炭素数1〜30のアルキル基を有するサリチル酸の金属塩が好ましく用いられる。中でもアルキル基の炭素数が10〜25のものが好ましく、より好ましくは10〜20であることが導電性向上及び摩擦係数の点で好ましい。
【0026】
上記した過塩基性塩とは金属サリシレートの塩基価が150mgKOH/g以上であるものをいう。この塩基価は、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の7.電位差滴定法に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味している。
【0027】
上記基油には、ポリ(メタ)クリレートが加えられる。このポリ(メタ)クリレートは粘度指数向上剤として知られているものであり、例えば、各種(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体若しくは共重合体又はその水添物などのいわゆる非分散型ポリ(メタ)クリレートが挙げられる。
【0028】
このポリ(メタ)クリレートの分子量は、せん断安定性を考慮して選定するようにする。具体的には、その重量平均分子量は、例えば非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜200,000であり、好ましくは8,000〜100,000、更に好ましくは10,000〜50,000である。上記ポリ(メタ)クリレートは、任意に選ばれた1種あるいは2種以上の分子量の異なったものを任意の量で含有させることができる。
【0029】
上記非分散型ポリ(メタ)クリレートとしては、下記一般式(1)で表される化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体、共重合体,あるいはその水素化物が例示できる。
【0030】
【化1】
【0031】
上記一般式(1)において、R11は水素原子又はメチル基を示し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を示す。R12を示す炭素数1〜18のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が例示でき、これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状であってもよい。
【0032】
上記一般式(1)成分のモノマーの好ましい例としては、具体的には、炭素数1〜18のアルキルアクリレート、炭素数1〜18のアルキルメタクリレート、炭素数2〜20のオレフィン、スチレン、メチルスチレン、無水マレイン酸エステル及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0033】
上記ポリ(メタ)クリレートは通常、溶液状にするために希釈されて提供されており、その状態で潤滑油組成物中の含有量は、一般的には、組成物の全量基準で0.1質量%以上であり、上限は10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。含有量が組成物全量基準で0.1質量%未満の場合は、導電性を向上させる効果が得られ難く、一方、10質量%を超える場合はせん断安定性に劣る可能性がある。
上記の含有量は、ポリ(メタ)クリレートの正味量として0.07〜5.0質量%である。
【0034】
本潤滑油組成物に対しては、更に、リン化合物を添加することができ、これによって耐摩耗性を一層向上させることができる。こうしたリン化合物としては、ジチオリン酸亜鉛、リン酸亜鉛などが挙げられる。
これらのリン化合物は、基油100質量部に対して0.01〜0.10質量%(100〜1000ppm)程度を配合するもので、潤滑油全量基準としてリン量として、好ましくは質量で0.01%(100ppm)〜0.08%(800ppm)、より好ましくは0.01〜0.04質量%の範囲で単独又は複数組合わせて使用できる。
【0035】
本発明の潤滑油組成物には、上記した成分のほかに更に性能を向上させるため、必要に応じて種々の添加剤を適宜使用することができる。こうした添加剤としては、無灰系摩擦調整剤(例えばモノグリセリド)、流動点降下剤、酸化防止剤、極圧剤、油性向上剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、消泡剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、防錆剤、消泡剤等や、その他の公知の潤滑油添加剤を挙げることができる。
【0036】
本潤滑油組成物は、上記したように25℃(室温)における導電性(導電率)が200pS/m以上となるようにする。この場合、200pS/m未満では流動帯電によって発生した静電気の蓄積をアースする能力が低くなり、静電気による生ずるトラブルを有効に防止することができなくなる。
また、この潤滑油組成物の引火点は上記したように240℃以上、より好ましくは250℃以上にすることで消防法上の可燃性液体類として安全に取り扱うことができるし、流動点も−40℃以下としているので、寒冷地における使用にも充分に耐えることができる。
【0037】
本潤滑油組成物の粘度は特に制限されないが、100℃における動粘度は、好ましくは2〜15mm/s、好ましくは4〜15mm/s、更に好ましくは6〜11mm/sである。また、40℃における動粘度は、10〜100mm/s、好ましくは15〜100mm/s、より好ましくは22〜100mm/s、更に好ましくは41〜75mm/sである。
また、この潤滑油組成物の粘度グレードは、VG46〜VG68にするとよく、特に油圧作動油として用いる場合に好都合である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
実施例、比較例を作製するために、下記する材料を用意した。
【0039】
基油1:GTL(動粘度40℃が44.0mm/s、粘度指数が143)と、API分類によるグループ1基油(動粘度40℃が49.5mm/s、粘度指数が103)を50質量%ずつ混合した炭化水素系基油ブレンド品
基油2:GTL(動粘度40℃が44.0mm/s、粘度指数が143)を40質量%と、API分類によるグループ1基油(動粘度40℃が49.5mm/s、粘度指数が103)を60質量%で混合した炭化水素系基油ブレンド品
基油3:GTL(動粘度40℃が44.0mm/s、粘度指数が143)を30質量%と、API分類によるグループ1基油(動粘度40℃が49.5mm/s、粘度指数が103)を70質量%で混合した炭化水素系基油ブレンド品
【0040】
過塩基性Mgサリシレート:C9012(インフィニアム社製)(性状;塩基価が336mgKOH/g,Mg量が7.2%)
中性Baスルフォネート:NaSuBSN(キングインダストリー社製)(性状;塩基価が1mgKOH/g以下,Ba量が6.6%)
過塩基性Baスルフォネート:NaSuBSB(キングインダストリー社製)(性状;塩基価が45mgKOH/g,Ba量が12.0%)
中性Naスルフォネート:NaSuSS(キングインダストリー社製)(性状;塩基価が1mgKOH/g以下,Na量が2.4%)
中性Znスルフォネート:NaSuZs(キングインダストリー社製)(性状;塩基価が1mgKOH/g以下,Zn量が2.8%)
【0041】
PMA1:非分散型ポリメタクリレート;Viscoplex8−200(エボニック社製)(性状;ポリマー濃度が72.5%,重量平均分子量が3.3万)
PMA2:非分散型ポリメタクリレート;Aclube V815(三洋化成工業社製)(性状;ポリマー濃度が60〜70%,重量平均分子量が2万)
PMA3:非分散型ポリメタクリレート;Aclube 504(三洋化成工業社製)(性状;ポリマー濃度が35〜45%,重量平均分子量が18万)
【0042】
PMA1〜PMA3の重量平均分子量は下記の測定条件により測定したものである。
・測定法:GPC(ゲルパーミッションクロマト)
JIS K7252−1 「プラスチック−サイズ排除クロマトグ
ラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第1
部:通則」を用いて重量平均分子量を計算した。
・測定装置:島津製作所製 SIL20AHT
・使用カラム:Shodex LF604×2本
・測定温度:40℃
【0043】
下記する実施例及び比較例を作製した。
(実施例1)
上記基油1の99.75質量%に、過塩基性Mgサリシレート0.05質量%と、PMA1の0.20質量%とを加えて良く混合し、実施例1の潤滑油組成物を得た。
(実施例2〜13)
表1〜表3に記載の組成により、他は実施例1に準じて実施例2〜13の潤滑油組成物を得た。
【0044】
(比較例1〜27)
表4〜表8に記載の組成により、他は実施例1に準じて比較例1〜27の潤滑油組成物を得た。
【0045】
〔試験等〕
上記実施例及び比較例の性状及び性能について知るために適宜に以下の試験等を行った。
(油中の金属元素量)
石油学会規格 JPI−5S−38-03 潤滑油-添加元素試験方法-誘導結合プラズマ発光分光分析法により潤滑油組成物中に含まれるMg,Ba,Na,Zn量を測定し、質量ppmで表示した。
(動粘度:40℃動粘度)
JIS K2283に基づいて40℃動粘度(mm/s)を測定した。
実施例及び比較例のものでは、いずれも(46±10%)mm/sの範囲内に入るものとした。
(ポリマー量)
潤滑油組成物中に含まれるPMAによるポリマー量について計算し、質量%で表示した。
【0046】
(電気伝導度試験)
電気伝導度はJIS K2276 石油製品−航空燃料油試験方法 の18に記載される導電率試験方法により測定した。
試料温度が安定していないと測定値に影響を及ぼすため、25℃に保った恒温室に12h以上静置したのち、米国Emcee Electronics Inc.社製の電気伝導度計 Model 1152を用いて計測した。
測定値はSジーメンス表記で表した。
評価基準:200pS/m以上のもの・・・合 格(○)
200pS/m未満のもの・・・不合格(×)
【0047】
(マイクロクラッチ試験)
マイクロクラッチ試験はJCMAS(一般社団法人日本建設機械施工協会規格)P047 建設機械用油圧作動油−摩擦特性試験法に記載のマイクロクラッチ試験機による摩擦試験法を用いて140℃の摩擦係数の値を計測した。
評価基準:摩擦係数が0.08以上のもの・・・合 格(○)
摩擦係数が0.08未満のもの・・・不合格(×)
【0048】
(引火点の測定)
引火点は、JIS K2265−4によるCOC法・クリーブランド開放式自動引火点測定装置によって実施例と比較例の各1試料について3回の繰り返し測定を行い、平均値を小数点以下1桁の四捨五入により求めた。
評価基準:引火点が240℃以上のもの・・・合 格(○)
引火点が240℃未満のもの・・・不合格(×)
(流動点の測定)
JIS K2269に基づいて流動点を測定した。
評価基準:流動点が−40℃以下のもの・・・・合 格(○)
流動点が−40℃より高いもの・・・不合格(×)
【0049】
(結果)
上記各試験の結果を表1〜表8に示す。
【0050】
(考察)
実施例1〜5のものは、基油1に過塩基性Mgサリシレート及びPMA1を含有させてなるもので、電気伝導度、マイクロクラッチの摩擦係数、引火点、流動点においていずれも合格していて良好な結果が得られている。
実施例2のものは実施例1に対してPMA1の添加量を10倍にしたもので、電気伝導度が実施例1より更に良化している。実施例3は、実施例1に対して過塩基性Mgサリシレートの添加量を2倍にしたもので、実施例1に比べて電気伝導度が向上しており、実施例4,5のものは、実施例3に対してPMA1の添加量を5倍,10倍にしたもので、電気伝導度が更に良化している。
【0051】
実施例6,7のものは、基油1に過塩基性Mgサリシレート及びPMA2を含有させてなるもので、電気伝導度、マイクロクラッチの摩擦係数、引火点、流動点においていずれも合格していて良好な結果が得られている。実施例6,7は、使用PMAが実施例3,4と相違しているが、実施例6は実施例3とほぼ同程度の、実施例7は実施例4とほぼ同程度の好ましい結果が得られている。
実施例8,9はPMA3を使用したもので、実施例8は使用PMAの異なる実施例3,6とほぼ同程度の、実施例9は実施例4,7とほぼ同程度の良好な結果である。
【0052】
実施例10のものは実施例1に対して,過塩基性Mgサリシレートの量を2.4倍に増やしたもので、2倍に増やした実施例3よりも更に電気伝導度が向上している。
実施例11は、実施例1に対して過塩基性Mgサリシレートの量を3倍に増やしたもので、実施例3,10よりも電気伝導度が更に良化している。実施例12は、実施例2に対して過塩基性Mgサリシレートの量を3倍に増やしたもので、実施例2,5よりも更に電気伝導度が向上している。実施例13は、基油2を使用したもので、実施例4の基油1をしたものよりも引火点が低いが、電気伝導度において好ましい結果が得られていることが判る。
【0053】
これに対して、比較例1は基油1に中性Baスルフォネートを0.10質量%加えたもので、電気伝導度が殆どなく、流動点も高くなっており好ましくない。比較例2は、比較例1にPMA1を1.00質量%加えたものであり、流動点は合格に変わったが電気伝導度が未だ極端に低い値となっている。
なお、比較例1〜20においては、マイクロクラッチの測定価が記載されていないが、これは他の測定項目の結果が不合格であるために、測定を省略したものである。
比較例3は比較例1に対して、比較例4は比較例2に対して、各々中性Baスルフォネートの使用量を10%増やしたものであるが、結果は殆ど変っていない。
比較例5は、比較例2のPMA1の代りにPMA3を使用したものであるが、結果は殆ど変っていない。
【0054】
比較例6は、基油1に過塩基性Baスルフォネートを加えたもので、電気伝導度は低いし、流動点は高くて好ましくない。比較例7は、比較例6にPMA1を加えたもので、流動点は合格に変わったが、電気伝導度が合格点に達していない。比較例8は比較例6に対して、過塩基性Baスルフォネートの使用量を増やしたものであるが、電気伝導度がやや良化しているものの合格点には遥かに及ばず、流動点でも合格していない。比較例9は比較例7に対して、過塩基性Baスルフォネートの使用量を増やしたものであるが、電気伝導度がやや良化しているものの合格点には遥かに及ばず合格していない。
比較例10は、比較例8にPMA3を加えたものであり、流動点は合格に変わったが、電気伝導度は殆ど変っていない。
【0055】
比較例11は、基油1に中性Naスルフォネートを0.10質量%加えたもので、電気伝導度が悪く、流動点も高くなっており好ましくない。比較例12は、比較例11にPMA1を1.00質量%加えたものであり、流動点は合格になったが電気伝導度は殆ど変らず未だ低い値となっている。
比較例13は比較例11に対して、比較例14は比較例12に対して中性Naスルフォネートの使用量を3倍に増やしたものであるが、電気伝導度の数値が良くなっているものの、未だ合格には遠く及ばない状態である。
比較例15は比較例11にPMA3を加えたものであり、流動点は合格になったが、電気伝導度は殆ど変化がなく、好ましい結果が得られていない。
【0056】
比較例16は基油1に中性Znスルフォネートを0.10質量%加えたもので、電気伝導度が悪く、流動点も高くなっており好ましくない。比較例17は、比較例16にPMA1を1.00質量%加えたものであり、流動点は合格に変わったが電気伝導度はほぼ同じ低い値となっている。
比較例18は比較例16に対して、比較例19は比較例17に対して中性Znスルフォネートの使用量を2.6倍に増やしたものであり、流動点に変わりがないし、電気伝導度の数値がやや向上しているが合格点には達していない。
比較例20は比較例16にPMA3を加えたものであり、流動点は合格になったが、電気伝導度には殆ど変化がなく好ましい結果ではない。
【0057】
比較例21は、基油1に過塩基性Baスルフォネートを0.05質量%加えたもので、電気伝導度において合格しているが、流動点が高くなっており好ましくない。比較例22は、比較例21に対して過塩基性Baスルフォネートの使用量を2倍にしたものであり、電気伝導度が向上しているが、流動点は変わっておらず未だ合格となっていない。
比較例23は比較例21に対して、過塩基性Baスルフォネートの使用量を2.4倍にしたものであり、電気伝導度が更に向上しているが、流動点に変化はなく未だ好ましいものではない。
比較例24は比較例21に対して、過塩基性Baスルフォネートの使用量を3倍にしたものであり、電気伝導度が一層向上しているが、流動点は変わらず未だ合格していない。
【0058】
比較例25は比較例22に対し基油1を基油2に替えたもので、電気伝導度においてほぼ同様の数値で合格しているが、流動点が更に高くなっており好ましくない。比較例26は比較例22に対し基油1を基油3に替えたもので、流動点が更に高くなっているし、引火点も低くなっており合格していない。比較例27は、比較例26にPMA1を加えたものであり、流動点は改善されて合格点に達したが、引火点が低いままであり未だ好ましいものではないことが判る。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】