(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0021]なお、当然のことながら本説明は典型的な態様を単に説明するに過ぎず、本開示のより広い側面を限定する意図はないことが当業者には自明である。
【0012】
[0022]本開示は全般的に、優れた強度特性および可塑性ならびに炭化水素に対する耐吸収性を示す熱可塑性組成物に向けられている。より詳しくは、熱可塑性組成物はポリアリーレンスルフィドおよび少なくとも2種の耐衝撃性改良剤(そのうち一方が動的に架橋されたもの)を含む。その熱可塑性組成物は、加熱した炭化水素溶液に約4日間接触させた後の重量変化を約6%以下、約4%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、または約0.3%以下にすることができる。約6日間の接触後は、熱可塑性組成物の重量変化を約8%以下、約7%以下、約6%以下、約1%以下、約0.5%以下、または約0.3%以下にすることができ;また、約14日間の接触後は、熱可塑性組成物の重量変化を約7%以下、約6%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、または約0.3%以下にすることができる。
【0013】
[0023]単一の耐衝撃性改良剤のみを含む同様の熱可塑性組成物に比べて、開示された組成物は炭化水素の吸収を低くすることができる。例えば、耐衝撃性改良剤の2種併用方式を用いた熱可塑性組成物は、第2耐衝撃性改良剤が含まれない点だけが2種併用の耐衝撃性改良組成物と異なる熱可塑性組成物の重量変化の約80%以下、約75%以下、約50%以下、約15%以下、約10%以下、または約9%以下を示すことができる。
【0014】
[0024]本熱可塑性組成物は炭化水素吸収が低いため、その組成物の密度および体積は時間が経っても殆ど変化しない。例えば、本熱可塑性組成物は加熱した炭化水素溶液に約6日間接触させた後の密度保持率を約95%以上、例えば、約96%以上、または約97%以上にすることができる。
【0015】
[0025]本熱可塑性組成物は加熱した炭化水素溶液に約6日間接触させた後の体積変化を約10.5%以下、態様によっては約10.0%以下、および態様によっては約9.8%以下にすることができる。
【0016】
[0026]有益なことに、本熱可塑性組成物は種々の異なる用途で接することのある炭化水素に長期間曝されても所望の特性を維持することができる。一例として、本熱可塑性組成物は特に石油およびガスの用途(その典型的な態様を本明細書に更に記載する)において有用である。更に、本熱可塑性組成物は既知の耐衝撃性改良組成物に比べて総濃度がより低い耐衝撃性改良剤で生成することができ、これにより大幅な経費削減が可能になる。
【0017】
[0027]本熱可塑性組成物は溶融加工法で生成することができ、その方法はポリアリーレンスルフィドを少なくとも2種の耐衝撃性改良剤と組み合わせて混合物を生成することを含む。より詳しくは、ポリアリーレンスルフィドを第1および第2耐衝撃性改良剤と混合し、その混合物を剪断して耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィド全体に十分に分配されるようにする。混合物の生成後、多官能性架橋剤を添加して、その組成物を動的に加硫することができる。多官能性架橋剤は混合物の耐衝撃性改良剤の少なくとも1種と反応して組成物において、例えば、耐衝撃性改良剤うちの1種の高分子鎖内または高分子鎖間に、また必要に応じて第2耐衝撃性改良剤の高分子鎖内および高分子鎖間に架橋を形成することができる。架橋はまた組成物の種々の成分間、例えば、2種の耐衝撃性改良剤間で、および/またはポリアリーレンスルフィドの、および/または耐衝撃性改良剤とポリアリーレンスルフィドのうちの一方または双方間の、高分子鎖内および高分子鎖間で形成できる。
【0018】
[0028]生成プロセスはポリアリーレンスルフィドの官能化(官能基の導入)を含む。これにより、ポリアリーレンスルフィドと組成物の他の成分との間の結合部位を増やすことができ、ポリアリーレンスルフィド全体にわたる添加剤の分配が向上し、更に相分離を防止できる。また、ポリアリーレンスルフィドの官能化はポリアリーレンスルフィド鎖の切断を含み、これにより組成物の溶融粘度を低下させ、加工性を向上させることができる。これはまた低ハロゲンの熱可塑性組成物、例えば、優れた物性および高い耐劣化性を示す低塩素組成物を提供できる。
【0019】
[0029]本熱可塑性組成物を更に改善するため、標準的な慣行に従って組成物にその他の従来の添加剤(例えば、充填剤、滑剤、着色剤など)を含めて生成できる。
【0020】
[0030]本熱可塑性組成物の高い強度特性および可塑性は材料の引張特性、曲げ特性および/または耐衝撃性を調べることで明らかにできる。例えば、本熱可塑性組成物はノッチ付きシャルピー衝撃強さを23℃で1平方メートル当たり約6キロジュール(kJ/m
2)超、または約7kJ/m
2超にできる。動的に架橋された場合、本熱可塑性組成物のノッチ付きシャルピー衝撃強さはより高く、例えば、23℃で約40kJ/m
2超、約45kJ/m
2超、または約50kJ/m
2超にできる。シャルピーノッチ付き衝撃強さは国際標準化機構(ISO)試験No.179−1(ASTM・D256、方法Bと技術的に等価)に準拠して測定できる。
【0021】
[0031]有益なことに、本熱可塑性組成物は極端な温度(高温と低温の両方を含む)でも優れた物性を維持できる。例えば、本熱可塑性組成物はノッチ付きシャルピー衝撃強さを−30℃の温度で約6kJ/m
2以上、または約7kJ/m
2以上にすることができる。動的に架橋すると、本熱可塑性組成物の低温ノッチ付きシャルピー衝撃強さはより高く、例えば、−30℃の温度で約10kJ/m
2以上、または約12kJ/m
2以上にすることができる。低温ノッチ付きシャルピー衝撃強さはISO試験No.179−1に準拠して測定できる。
【0022】
[0032]本熱可塑性組成物は非常に優れた引張特性を示すことができる。引張特性は温度23℃および試験速度5mm/分または50mm/分でISO試験No.527(23℃でのASTM・D623と技術的に等価)に準拠して測定できる。例えば、本組成物の引張弾性率は相対的に低くできる。例えば、本熱可塑性組成物の引張弾性率は約2,400メガパスカル(MPa)未満、約2,200MPa未満、または約2,100MPa未満にすることができる。動的に架橋すると、本熱可塑性組成物の引張弾性率は更に低く、例えば、約2,000MPa未満にすることができる。
【0023】
引張破断応力は通常、約40MPa超、約42MPa超、または約43MPa超になる。例えば、動的に架橋された熱可塑性組成物の引張破断応力は約44MPa超にすることができる。
【0024】
引張破断歪みは通常、約25%以上または約35%以上になる。動的に架橋すると、本熱可塑性組成物の引張破断歪みはより高く、例えば、約40%以上、約45%以上、約50%以上、または約90%以上にすることができる。
【0025】
本熱可塑性組成物の降伏歪みは通常、約5%超または約6%超になる。動的に架橋された熱可塑性組成物は約8%超または約9%超の降伏歪みを示すことができる。
【0026】
[0033]本組成物の曲げ特性は温度23℃および試験速度2mm/分でISO試験No.178(ASTM・D790と技術的に等価)に準拠して測定できる。例えば、本組成物は曲げ弾性率を約2,400MPa未満、約2,300MPa未満、約2,200MPa未満、または約2,100MPa未満にすることができる。一態様では、動的に架橋された熱可塑性組成物の曲げ弾性率はより低く、例えば、約2,000MPa未満または約1,975MPa未満にすることができる。
【0027】
[0034]本熱可塑性組成物の荷重撓み温度は相対的に高くできる。例えば、本組成物の荷重撓み温度は、1.8MPaでISO試験No.75−2(ASTM・D790と技術的に等価)に準拠した測定で、約98℃超、約99℃超、または約100℃超にすることができる。
【0028】
[0035]本熱可塑性組成物はまた、例えば、組成物の溶融粘度が示すように優れた加工特性も示すことができる。例えば、本熱可塑性組成物は溶融粘度を約3,000ポアズ未満、約2,500ポアズ未満、または約2,000ポアズ未満にすることができ、その粘度は316℃および1,200秒
−1で毛細管レオメーターにて5分間の一定のせん断後に測定したものである。更に、本熱可塑性組成物は時間が経っても向上した溶融安定性を示すことができる。
【0029】
[0036]
図1は熱可塑性組成物の生成に使用できるプロセスの概略図を示す。図に示すように、押出機100などの溶融加工装置で本組成物の成分を溶融混練してもよい。押出機100は当技術分野で周知のものであればよく、これには単軸、二軸、または多軸スクリュー押出機、同方向回転または異方向回転押出機、噛合または非噛合押出機などが含まれるが、これらに限定するものではない。一態様において、本組成物は複数の区域つまりバレルを含む押出機100で溶融加工してもよい。図示された態様では、押出機100は、図のように押出機100の長手方向に沿って21〜30の番号がつけられた10個のバレルを含む。バレル21〜30はそれぞれ、単独操作が可能な供給ライン14、15、16、ベント12、温度制御装置などを含むことができる。汎用スクリューの設計品を用いて、ポリアリーレン組成物を溶融加工することができる。一例として、熱可塑性組成物はCoperion社製の完全噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機などの二軸スクリュー押出機を用いて溶融混合してもよい。
【0030】
[0037]本熱可塑性組成物の生成において、ポリアリーレンスルフィドは主供給口14から押出機100に供給できる。例えば、ポリアリーレンスルフィドは定量供給装置で第1バレル21の主供給口14に供給してもよい。ポリアリーレンスルフィドは押出機100内を進んでいく際に本組成物の他の成分と溶融混合させることができる。耐衝撃性改良剤および架橋剤は、所望により主供給口14で、または主供給口の下流で本熱可塑性組成物と共に本組成物に添加することができる。また、耐衝撃性改良剤および架橋剤(複数可)は同時にまたは別々に添加してもよい。
【0031】
[0038]ポリアリーレンスルフィドは、式(I):
−[(Ar
1)
n−X]
m−[(Ar
2)
i−Y]
j−[(Ar
3)
k−Z]
l−[(Ar
4)]
o−W]
p− (I)
[式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4は同一または異なり、炭素数6〜18のアリーレン単位であり;W、X、Y、およびZは同一または異なり、−SO
2−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−もしくは炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキリデン基から選択される二価の連結基で、その連結基の少なくとも1つは−S−であり;およびn、m、i、j、k、l、o、およびpは独立して0もしくは1、2、3、または4であり、但し、それらの合計は2以上である]の繰り返し単位を含むポリアリーレンチオエーテルであってよい。アリーレン単位のAr
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4は選択的に置換されるか、または非置換でもよい。好都合なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセンおよびフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは通常、約30モル%超、約50モル%超、または約70モル%超のアリーレンスルフィド(−S−)単位を含む。一態様では、ポリアリーレンスルフィドは2個の芳香族環に直接結合したスルフィド結合を少なくとも85モル%含む。
【0032】
[0039]一態様では、ポリアリーレンスルフィドはその構成要素として、フェニレンスルフィド構造の−(C
6H
4−S)
n−[nは1以上の整数である]を含むものとして本明細書に定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0033】
[0040]ポリアリーレンスルフィドは、プロセスの必須要件ではないが、熱可塑性組成物の生成前に合成してもよく、またポリアリーレンスルフィドは周知の供給業者から購入することができる。例えば、米国ケンタッキー州フローレンスのTicona社から入手可能なFortron(登録商標)ポリフェニレンスルフィドを購入してポリアリーレンスルフィドとして利用できる。
【0034】
[0041]ポリアリーレンスルフィドの製造に用いてもよい合成法は当技術分野で一般に周知のものである。一例として、ポリアリーレンスルフィドの製造プロセスは、水硫化物イオンを生成する物質(例えば、アルカリ金属硫化物)を有機アミド溶媒中でジハロ芳香族化合物と反応させることを含むことができる。
【0035】
[0042]アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムまたはそれらの混合物であることができる。アルカリ金属硫化物が水和物または水性混合物である場合、アルカリ金属硫化物は、重合反応前に脱水操作により処理することができる。アルカリ金属硫化物はまた現場生成することもできる。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を反応に含めて、アルカリ金属硫化物と共にごく少量存在する可能性のある不純物(例えば、アルカリ金属多硫化物またはアルカリ金属チオ硫酸塩)を除去または反応させる(例えば、そのような不純物を無害な物質に変える)ことができる。
【0036】
[0043]ジハロ芳香族化合物は、これらに限定するものではないが、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンであることができる。ジハロ芳香族化合物は単独でまたはこれらを任意に組み合わせて用いてもよい。ジハロ芳香族化合物の具体例としては、これらに限定するものではないが、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、および4,4’−ジクロロジフェニルケトンを挙げることができる。
【0037】
[0044]ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であることができ、同じジハロ−芳香族化合物中の2個のハロゲン原子は同じでも互いに異なっていてもよい。一態様では、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、またはこれらの2種以上の化合物の混合物をジハロ−芳香族化合物として用いる。
【0038】
[0045]当技術分野で周知のように、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて用いて、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成、またはポリアリーレンスルフィドの重合反応および/または分子量を調節することもできる。
【0039】
[0046]ポリアリーレンスルフィドは単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。ジハロ芳香族化合物の好適な選択的組み合わせにより、ポリアリーレンスルフィド共重合体は2つ以上の異なる単位を含んで形成することができる。例えば、p−ジクロロベンゼンをm−ジクロロベンゼンまたは4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて用いる場合、ポリアリーレンスルフィド共重合体は式(II):
【0041】
の構造を有するセグメント、および式(III):
【0043】
の構造を有するセグメント、または式(IV):
【0045】
の構造を有するセグメントを含んで形成することができる。
【0046】
[0047]一般に、仕込みアルカリ金属硫化物の有効量1モル当たりのジハロ芳香族化合物(複数種可)の量は、通常、1.0〜2.0モル、1.05〜2.0モル、または1.1〜1.7モルにすることができる。従って、ポリアリーレンスルフィドはハロゲン化アルキル(一般にはアルキル塩化物)の末端基を含むことができる。
【0047】
[0048]ポリアリーレンスルフィドの製造プロセスは有機アミド溶媒中で重合反応を行うことを含むことができる。重合反応で用いられる典型的な有機アミド溶媒は、これらに限定するものではないが、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびこれらの混合物を挙げることができる。反応に用いられる有機アミド溶媒の量は、例えば、アルカリ金属硫化物の有効量1モル当たり0.2〜5キログラム(kg/mol)にすることができる。
【0048】
[0049]重合は段階的な重合プロセスで行うことができる。第1の重合工程は、反応器にジハロ芳香族化合物を導入すること、およびジハロ芳香族化合物を水の存在下、約180℃〜約235℃または約200℃〜約230℃の温度で重合反応させること、およびジハロ芳香族化合物の転換率が理論的必要量の約50モル%以上になるまで重合を継続することを含むことができる。
【0049】
[0050]第2の重合工程において、水を反応スラリーに添加して重合系における水の総量を仕込みアルカリ金属硫化物の有効量1モル当たり、約7モル、または約5モルに増加させる。次いで、重合系の反応混合物を約250℃〜約290℃、約255℃〜約280℃、または約260℃〜約270℃の温度に加熱することができ、このように生成された高分子化合物の溶融粘度がポリアリーレンスルフィドの所望の最終レベルに上昇するまで重合を継続することができる。第2の重合工程の継続時間は、例えば、約0.5〜約20時間、または約1〜約10時間にすることができる。
【0050】
[0051]ポリアリーレンスルフィドは、直鎖状、半直鎖状、分岐鎖状または架橋されていてもよい。直鎖状ポリアリーレンスルフィドは主構成単位として、−(Ar−S)−の繰り返し単位を含む。通常、直鎖状ポリアリーレンスルフィドはこの繰り返し単位を約80モル%以上含んでもよい。直鎖状ポリアリーレンスルフィドは少量の分岐鎖状単位または架橋単位を含んでいてもよいが、分岐鎖状または架橋単位の量はポリアリーレンスルフィドの全単量体単位の約1モル%未満であってよい。直鎖状ポリアリーレンスルフィド高分子化合物は上記の繰り返し単位を含むランダム共重合体またはブロック共重合体であってよい。
【0051】
[0052]半直鎖状ポリアリーレンスルフィドを利用してもよく、それは3個以上の反応性官能基を有する1種以上の単量体を少量、高分子化合物中に導入することによって生じる架橋構造または分岐鎖状構造を有してもよい。例えば、約1モル%〜約10モル%の高分子化合物は3個以上の反応性官能基を有する単量体から生成してもよい。半直鎖状ポリアリーレンスルフィドの製造に用いてもよい方法は当技術分野で一般に周知のものである。一例として、半直鎖状ポリアリーレンスルフィドの生成に用いられる単量体成分は、1分子当たり2個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を分岐鎖状高分子化合物の調製に利用できる量含むことができる。そのような単量体は、式:R’X
n[式中、Xはそれぞれ、塩素、臭素、およびヨウ素から選択され、nは3〜6の整数であり、R’は約4個以下のメチル置換基を有することができる価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の総数が6〜約16の範囲内である]で表すことができる。半直鎖状ポリアリーレンスルフィドの生成に用いることができる、1分子当たり2個超の置換ハロゲンを有するポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、1,2,3,5−テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’−テトラ−ヨードビフェニル、2,2’,6,6’−テトラブロモ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、1,2,4−トリブロモ−6−メチルナフタレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
[0053]重合後、ポリアリーレンスルフィドは液体媒体で洗浄してもよい。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、混合物生成中、他の成分と結合する前に水および/または有機溶媒で洗浄してもよく、その有機溶媒はポリアリーレンスルフィドを分解しないもので、これらに限定するものではないが、例えば、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、塩溶液、および/または酢酸や塩酸などの酸性媒体が挙げられる。ポリアリーレンスルフィドは一般に当業者に周知の連続式で洗浄することができる。酸性溶液または塩溶液による洗浄でナトリウム、リチウムまたはカルシウム金属イオン末端基濃度を約2,000ppmから約100ppmに低減させることができる。
【0053】
[0054]ポリアリーレンスルフィドは熱湯洗浄処理を施すことができる。熱湯洗浄の温度は約100℃に、または約100℃超、例えば、約120℃超、約150℃超、または約170℃超にすることができる。
【0054】
[0055]ポリアリーレンスルフィドを生成するための重合反応装置は、通常、高粘度流体の生成に一般的に用いられる装置を使用するのが望ましいが、特に限定するものではない。そのような反応装置の例としては、様々な形状の攪拌翼(例えば、アンカー型、多段型、螺旋リボン型、スクリューシャフト型など、またはそれらを変形した型)を有する攪拌装置を備えた攪拌槽型重合反応装置を挙げることができる。そのような反応装置の更なる例としては、混練に一般的に用いられる混合装置、例えば、混練機、ロールミル、バンバリーミキサーなどが挙げられる。重合後、溶融したポリアリーレンスルフィドは、通常、所望の形状のダイを装着した押出口を通して反応器から排出、冷却、および回収してもよい。一般に、ポリアリーレンスルフィドは穿孔ダイを通し排出して紐(ストランド)状にし、それを水浴中に取り、ペレット状にして乾燥させてもよい。ポリアリーレンスルフィドはまた、紐状、顆粒状、または粉末状であってもよい。
【0055】
[0056]本熱可塑性組成物はポリアリーレンスルフィド成分(ポリアリーレンスルフィドの混合物も含む)を組成物の重量の約10重量%〜約99重量%、例えば、組成物の重量の約20重量%〜約90重量%の量含んでいてもよい。
【0056】
[0057]ポリアリーレンスルフィドは、通常、本熱可塑性樹脂組成物に向けた最終用途に応じた好適な分子量および溶融粘度のものであればよい。例えば、ポリアリーレンスルフィドは溶融粘度が、1,200秒
−1の剪断速度および310℃の温度でISO試験No.11443に準拠した測定で、約500ポアズ未満の低粘度のポリアリーレンスルフィド、溶融粘度が約500ポアズ〜約1,500ポアズの中粘度のポリアリーレンスルフィド、または溶融粘度が約1,500ポアズ超の高溶融粘度のポリアリーレンスルフィドであってよい。
【0057】
[0058]一態様によれば、ポリアリーレンスルフィドは官能化して熱可塑性組成物中の結合形成を促進することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドは生成後に、カルボキシル、酸無水物、アミン、イソシアネートまたはその他の官能基を含む改質化合物で更に処理して、ポリアリーレンスルフィドに官能末端基を生じさせることができる。一例として、ポリアリーレンスルフィドは、メルカプト基またはジスルフィド基を含む、および反応性官能基も含む改質化合物と反応させることができる。一態様では、ポリアリーレンスルフィドは有機溶媒中で改質化合物と反応させることができる。別の態様では、ポリアリーレンスルフィドは溶融状態の改質化合物と反応させることができる。
【0058】
[0059]一態様では、所望の官能基を含むジスルフィド化合物は本熱可塑性組成物の生成プロセスに取り入れることができ、ポリアリーレンスルフィドは本組成物の生成と共に官能化することができる。例えば、所望の反応性官能基(複数可)を含むジスルフィド化合物はポリアリーレンスルフィドと共に溶融押出機に添加できる。
【0059】
[0060]ポリアリーレンスルフィド高分子化合物と反応により官能化したジスルフィド化合物との反応は、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度を低下させることができるポリアリーレンスルフィド高分子鎖の切断を含むことができる。一態様では、より高い溶融粘度のポリアリーレンスルフィドで低ハロゲン含有量のものは出発高分子化合物として利用できる。官能性ジスルフィド化合物を用いてポリアリーレンスルフィド高分子化合物を反応により官能化した後、相対的に低い溶融粘度のポリアリーレンスルフィドで低ハロゲン含有量のものを生成することができる。この鎖切断を受けて、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は特定の種類の加工に更に適応できるものになり、その低溶融粘度ポリアリーレンスルフィドの総ハロゲン含有量は、一般的な低溶融粘度ポリアリーレンスルフィドに比べて極めて低くすることができる。環境問題により低ハロゲン含有量の高分子材料が益々求められるようになってきているので、低ハロゲン含有量に加えて、優れた耐吸収性を示す熱可塑性組成物は好都合である。一態様では、本熱可塑性組成物は、パールボム(Parr Bomb)燃焼法後にイオンクロマトグラフ法を用いる元素分析に準拠した測定で、約1,000ppm未満、約900ppm未満、約600ppmの未満、または約400ppm未満のハロゲンを含有することができる。
【0060】
[0061]ジスルフィド化合物は一般に、式:
R
1−S−S−R
2
[式中、R
1およびR
2は同一でも異なっていてもよく、独立して1〜約20個の炭素を含む炭化水素基である]の構造を有することができる。例えば、R
1およびR
2は、アルキル、シクロアルキル、アリール、または複素環基であってよい。R
1およびR
1はジスルフィド化合物の片末端または両末端に反応性官能基を含んでもよい。例えば、R
1およびR
2の少なくとも一方は末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換のアミノ基、ニトロ基などを含んでもよい。一態様において、反応性官能基は、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドが耐衝撃性改良剤と反応することができるように選択することができる。例えば、エポキシ末端耐衝撃性改良剤を検討すると、ジスルフィド化合物はカルボキシルおよび/またはアミン官能基を含むことができる。
【0061】
[0062]本明細書に含めてもよい、反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、これらに限定するものではないが、2,2’−ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸、ジチオグリコール酸、α,α’−ジチオジ乳酸、β,β’−ジチオジ乳酸、3,3’−ジチオジピリジン、4,4’−ジチオモルホリン、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンズイミダゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンゾオキサゾール)、および2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールが挙げられる。
【0062】
[0063]一態様では、ジスルフィド化合物は末端に非反応性の官能基を含んでいてもよい。本態様では、ジスルフィド化合物は熱可塑性組成物の溶融粘度を低下させ、ポリアリーレンスルフィドとの結合を増加させることなく低ハロゲン含有組成物をもたらす働きができる。例えば、R
1およびR
2は同一でも異なっていてもよく、独立して、1〜約20個の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アリール、および複素環基の群から選択された非反応性基であってもよい。ジスルフィド溶液に含まれてもよいような非反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、これらに限定するものではないが、ジフェニルジスルフィド、ナフチルジスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジ(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィドなどが挙げられる。
【0063】
[0064]ポリアリーレンスルフィドの量のジスルフィド化合物の量に対する比率は約1,000:1〜約10:1、約500:1〜約20:1、または約400:1〜約30:1にすることができる。
【0064】
[0065]本組成物は少なくとも2種の耐衝撃性改良剤も含むことができる。一態様では、耐衝撃性改良剤の1種はエチレンの単独重合体またはエチレンの共重合体にすることができる。例えば、耐衝撃性改良剤の1つはエチレンと比較的少量(例えば、約20重量%以下、約10重量%以下、または約5重量%以下)の、エチレンと共重合性のオレフィンとの共重合体にすることができる。典型的な共重合体としては、これらに限定するものではないが、鎖中に3〜約8個の炭素原子を有するα−アルケン、例えば、プロピレン、ブテン、2−メチル−1−プロペン、4−メチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテンなどと共重合したエチレンを挙げることができる。
【0065】
[0066]一態様では、ポリエチレン耐衝撃性改良剤は高分子量ポリエチレン単独重合体または共重合体、もしくは超高分子量ポリエチレン単独重合体または共重合体とすることができる。本明細書で用いられるように、高分子量ポリエチレンは一般に、数平均分子量(マーゴリーズ(Margolies)の式を用いて算出できる)が約200,000〜約500,000のポリエチレン高分子化合物を指す。超高分子量ポリエチレンという用語は一般に、ASTM4020に準拠した測定で、数平均分子量が約500,000超、例えば、約500,000〜約3,000,000のポリエチレン高分子化合物を指す。
【0066】
[0067]高分子量および/または超高分子量ポリエチレン単独重合体または共重合体は粒子状の本組成物に含めることができる。例えば、本組成物に用いるポリエチレン粒子の平均粒径D
50は約5μm〜約1,000μmの範囲内にすることができる。一態様では、ポリエチレン粒子の平均粒径は約500ミクロン以下で、例えば、約400ミクロン以下または約300ミクロン以下である。一態様では、例えば、平均粒径は約20ミクロン〜約300ミクロン、例えば、約50ミクロン〜約250ミクロンにすることができる。粒径はISO試験法13320に準拠するレーザー回折法により測定できる。
【0067】
[0068]高分子量および/または超高分子量ポリエチレン粒子は球状または不定形状にすることができる。本明細書で用いるように、不定形状とは、非球状であり、丸い突出部および/または起伏を含んでいてもよい粒子を指す。例えば、粒子はポップコーンのような形状でもよい。一態様では、不定形状粒子は本熱可塑性組成物に取り込まれる。いかなる特定の理論に拘束されることも望まないが、不定形状粒子を用いた場合に、組成物内の架橋密度がより高くなる可能性があると考えられる。
【0068】
[0069]ポリエチレンの嵩密度は、ISO試験法1872−1に準拠した測定で、1立方センチメートル当たり約0.1〜約1.5グラム(g/cc)にすることができる。一態様では、ポリエチレンの嵩密度は約0.15g/cc〜約1.0g/cc、または約0.2g/cc〜約0.95g/ccにすることができる。ポリエチレンの溶融流量は、190℃、21.6キログラムの圧力下のASTM・D1238に準拠した測定で、10分当たり約0.1グラム(g/10分)〜約5g/10分、約0.5g/10分〜約4.5g/10分、または約1g/10分〜約4g/10分とすることができる。ポリエチレンの粘度は一般に、1グラム当たり約50立方センチメートル(cm
3/g)〜約1,000cm
3/g、例えば、約100cm
3/g〜約800cm
3/g、または約200cm
3/g〜約500cm
3/gにすることができる。溶融粘度は、350℃および剪断速度400秒
−1および1,000秒
−1で、ISO試験法11443に準拠して測定できる。
【0069】
[0070]ポリエチレンの溶融温度は高分子化合物の特性、例えば、分子量や分岐度などに依る。高分子量ポリエチレンの溶融温度は、通常、約100℃〜約145℃の範囲になる。超高分子量ポリエチレンは融点そのものがないが、高分子化合物の結晶溶融温度と見なすことができ、これは示差走査熱量測定(DSC)の走査におけるピーク温度として当業者に周知である。超高分子量ポリエチレン単独重合体または共重合体の結晶溶融温度は、通常、約100℃〜約145℃の範囲にすることができる。ポリエチレンの他の熱的特性に関して、ポリエチレンのビカット軟化点は、ISO試験法11357−1,2,3に準拠した測定で、約50℃〜約100℃に、ポリエチレンの比熱容量は1グラム・1℃当たり約1.5ジュール(J/g・℃)〜約2.0J/g・℃に、およびUL94燃焼性の規格はHB(呼び厚さ1.6mm)にすることができる。
【0070】
[0071]ポリエチレンの引張特性は試験温度23℃および試験速度50mm/分でのISO試験方法527−2/1Aに準拠して測定できる。例えば、降伏点引張応力は約10メガパスカル(MPa)〜約30MPa、例えば、約12MPa〜約20MPaにすることができる。降伏点引張歪みは約3%〜約50%、例えば、約5%〜約40%、または約8%〜約20%にすることができ、破断点引張歪みは約50%超にすることができる。
【0071】
[0072]高分子量および/または超高分子量ポリエチレンは当技術分野で一般に周知の方法に従って調製することができ、または購入してもよい。例えば、好適なポリエチレン材料はケンタッキー州フローレンスのTicona Engineering Polymers社から入手可能である。例えば、Ticona社のGUR(登録商標)高分子量および/または超高分子量ポリエチレンはTicona社のGUR(登録商標)GHRポリエチレンとして利用できる。
【0072】
[0073]一態様では、ポリエチレンは、不均一系触媒および共触媒を含む混合触媒を用いるエチレン(必要に応じて、上記のように1種以上の他のα−オレフィン共単量体と合わせて)の触媒重合によって生成することができる。不均一系触媒はチーグラー・ナッタ型触媒にすることができ、それは通常、周期表の第IV族〜第VIII族の遷移金属のハロゲン化物を第I族〜第III族の金属または水素化物のアルキル誘導体と反応させたものである。
【0073】
[0074]例えば、不均一系触媒はチタン(IV)化合物をアルキルアルミニウム化合物と反応させることで生成でき、チタン(III)不均一系触媒が生成される。チタン(IV)化合物は、一般式:
Ti(OR
3)
4−aX
a
[式中、aは1〜4の整数であり、
R
3はそれぞれ独立して炭素数1〜約18個の炭化水素基であり、および
Xはハロゲンである]を有する化合物を含むことができる。
【0074】
[0075]チタン(IV)化合物の例として、これらに限定するものではないが、TiCl
4、TiBr
4、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(OC
5H
7)Cl
3、およびTi(O−i−C
4H
9)Cl
3を挙げることができる。
【0075】
[0076]チタン(IV)化合物と反応させてもよいアルキルアルミニウム化合物は、一般式:
AlR
43−bX
b
[式中、bは0、1または2であり、
R
4はそれぞれ独立して炭素数1〜約12個のアルキル基であり、および
Xはハロゲンである]の化合物を含むことができる。
【0076】
[0077]アルキルアルミニウム化合物の例としては、これらに限定するものではないが、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、および二塩化エチルアルミニウムを挙げることができる。水素化アルミニウムリチウム、トリアルキルアルミニウム、または水素化ジアルキルアルミニウム、炭素数がそれぞれ1〜16個のアルキル基と炭素数が約4〜約20個のジオレフィンとの反応から得られる高分子アルミニウム化合物を利用することもできる。一態様では、Al(i−C
4H
9)
3またはAl(i−C
4H
9)
2Hとイソプレンとの反応生成物を用いることができる。単一のアルキルアルミニウム化合物は単独で用いてもよく、または2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。
【0077】
[0078]チタン化合物(IV)とアルキルアルミニウム化合物との反応は不活性溶媒中、約−40℃〜約140℃、例えば、約−20℃〜約120℃の温度で行うことができる。反応物の濃度は、溶媒1リットル当たりチタン(IV)化合物約0.1〜約9.1モルおよび溶媒1リットル当たりアルキルアルミニウム化合物約0.05〜約1.0モルにすることができる。溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素またはその混合物、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ノナン、デカン、または高級同族体およびこれらの混合物にすることができる。
【0078】
[0079]不均一系触媒は、懸濁液から濾過して溶媒または懸濁媒体で洗浄し、不活性有機溶媒中に再懸濁させてから共触媒と共に用いることができる。あるいは、反応生成物の不均一系触媒を含む懸濁液を直接用いることもできる。不均一系触媒は非担持にすることができ、またはシリカ、塩化マグネシウムおよびその他の多孔性微粒子材料に担持させることもできる。一態様では、不均一系触媒の粒径、D
50は、約10mm〜約60mm、例えば、約15mm〜約40mmにすることができる。
【0079】
[0080]不均一系触媒をアルキルアルミニウム共触媒と合わせて混合触媒を生成することができ、例えば、不均一系触媒を有機溶媒中に懸濁させ、次いで、不均一系触媒をアルキルアルミニウム共触媒と接触させることで生成できる。アルキルアルミニウム共触媒としては、単核または多核のハロゲン化モノアルキルアルミニウムまたはハロゲン化ジアルキルアルミニウム、およびトリアルキルアルミニウム化合物、例えば、これらに限定するものではないが、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、イソプレニルアルミニウム、アルミノキサン類、およびハロゲン化物含有種およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0080】
[0081]一般的に、混合触媒中のアルミニウムのチタンに対する原子比率は約0.001:1〜約200:1、約1:1〜約15:1、または約2:1〜約10:1にすることができる。
【0081】
[0082]重合は無溶媒の気相で行ってもよく、あるいは有機希釈剤の存在下のスラリー相で行ってもよい。好適な希釈剤として、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ノナン、デカン、または高級同族体およびこれらの混合物が挙げられる。重合反応は懸濁液中、1以上の段階で、連続式またはバッチ式で行うことができる。例えば、分子量分布が二峰性の高分子化合物の生成では、より高い分子量画分を第1工程で生成後、第2工程で、個々のより高い分子量の重合体粒子中により低い分子量画分を生成することができる。
【0082】
[0083]重合は一般に、約30℃〜約130℃、例えば、約50℃〜約100℃、または約50℃〜約90℃の温度、および約0.05〜約50MPa、例えば、約0.05〜約10MPa、一般的には、約0.05〜約2MPaの範囲内のエチレン圧で行うことができる。
【0083】
[0084]ポリエチレンの分子量は重合反応器に水素を供給することで制御してもよい。例えば、水素は、反応器供給物中の水素のエチレンに対する比率が、エチレン1MPa当たり水素約0.5体積%〜約100体積%、例えば、エチレン1MPa当たり水素約2体積%〜約20体積%となるような量を単一工程の反応では添加することができる。
【0084】
[0085]重合時間は一般に、約1時間〜約12時間、例えば、約2時間〜約9時間である。重合における触媒の総消費量は、高分子化合物1キログラム当たり約0.01ミリモルのチタン(mmol・Ti/kg)〜約1mmol・Ti/kg、例えば、約0.02mmol・Ti/kg〜約0.6mmol・Ti/kgにすることができる。
【0085】
[0086]重合後、エチレン重合体を単離し、例えば、窒素下の流動層乾燥機で乾燥させることができる。残存するどのような高沸点溶媒も水蒸気蒸留で除去できる。添加剤は周知のようにポリエチレンに含めてもよい。例えば、長鎖脂肪酸塩は安定剤としてポリエチレンに添加してもよい。長鎖脂肪酸塩の非限定的な例としては、カルシウム、マグネシウム、およびステアリン酸亜鉛を挙げることができる。更なる添加剤、例えば、滑剤、染料、顔料、酸化防止剤、充填剤、加工助剤、光安定剤、中和剤、粘着防止剤などをポリエチレンに含めてもよい。
【0086】
[0087]一態様では、ポリエチレンは未修飾のままでもよい。一態様では、ポリエチレンは修飾されていてもよく、例えば、ポリエチレン粒子の表面を処理して粒子表面に官能基を含めてもよい。粒子を表面処理することで、ポリエチレンの架橋を熱可塑性組成物全体に生じさせてもよい。表面処理法の一例はプラズマ処理法で、その処理法を用い、必要に応じて他の材料の存在下で、ポリエチレン粒子の表面を酸化させて、ポリエチレン粒子表面に特定の官能性を生じさせることができる。ポリエチレン粒子表面に生成できる官能基は、これらに限定するものではないが、−OH(水酸基)、−OOH(ヒドロペルオキソ)、−NH
2(アミノ)、−COOH(カルボキシル)、−COOOH(過酸)、−CHO(アルデヒド)などが挙げられる。ポリエチレン粒子表面の官能化度は、周知のように、処理時間および条件、並びにポリエチレン粒子の粒径により調整することができる。
【0087】
[0088]溶液官能化法を用いることができる。例えば、ポリエチレン粒子の表面を1〜99.9重量%の少なくとも1種の水溶性湿潤剤および0.1〜99重量%の少なくとも1種の非水溶性湿潤剤を含む溶液で処理することができる。水溶性湿潤剤は、例えば、水溶性界面活性剤または水溶性ポリアルキレングリコールにすることができ、これらには、例えば、限定するものではないが、アニオン性、カチオン性、および非イオン性界面活性剤(カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、または硫酸基を含むアニオン性界面活性剤を含む)が含まれる。非水溶性湿潤剤は、これらに限定するものではないが、非水溶性ポリアルキレングリコールおよびそれに相当する非水溶性のモノアルキルまたはジアルキル、分岐鎖状または非分岐鎖状で、炭素数1〜13個のエーテルを挙げることができる。一例として、ポリプロピレングリコールおよび/またはそれに相当する、4〜44個のプロピレングリコール繰り返し単位を主重合体鎖中に有するモノエーテルまたはジエーテルを用いることができる。表面処理したポリエチレンは前処理された高分子化合物に比べて改善された親水性を示すことができる。
【0088】
[0089]別の態様では、ポリエチレン粒子の表面は、表面と反応でき、表面に単量体を付着できる不飽和基を含む単量体化合物と粒子の表面を反応させることで官能化することができる。単量体化合物は照射、即ち、電子線で表面と反応させることができる。
【0089】
[0090]官能化ポリエチレンは、その酸価をASTM・D1386に準拠した測定で、約0.5mgKOH/g超、例えば、約1.0mgKOH/g超、または約1.5mgKOH/g〜約20mgKOH/gとすることで特徴づけてもよい。酸価はポリエチレン粒子の親水化度または酸化度の尺度としてもよい。
【0090】
[0091]ポリエチレン耐衝撃性改良剤が含まれる場合は、本熱可塑性組成物中に約2重量%超の量、約3重量%超の量、または約4重量%超の量を含めることができる。例えば、ポリエチレンは本組成物中に約30重量%未満の量、約28重量%未満の量、約25重量%未満の量、または約20重量%未満の量を含めることができる。
【0091】
[0092]再度、
図1を参照すると、ポリエチレンは溶融加工装置の主供給口14でポリアリーレンスルフィドと共に本組成物に添加することができる。しかし、これは本組成物の生成プロセスの必須要件ではなく、他の態様では、ポリエチレンはポリアリーレンスルフィドの下流に添加することができる。例えば、ポリエチレンは、ポリアリーレンスルフィドが溶融加工装置に供給される箇所より下流で、但し溶融部(即ち、溶融加工装置でポリアリーレンスルフィドが溶融される区間)より前の位置で添加してもよい。別の態様では、ポリエチレンは、ポリアリーレンスルフィドが溶融される箇所より下流の位置で添加してもよい。
【0092】
[0093]本熱可塑性組成物に取り込むことができる別の耐衝撃性改良剤はオレフィン系共重合体または三元重合体である。オレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤は、炭素数約4〜約10個のエチレン性不飽和単量体単位を含むことができる。
【0093】
[0094]用いてもよいオレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤の非限定的な一覧として、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル−無水マレイン酸三元重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル−(メタ)アクリル酸グリシジル三元重合体、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元重合体、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸アルカリ金属塩(アイオノマー)三元重合体等の化合物が挙げられる。一態様では、例えば、耐衝撃性改良剤は、エチレン、アクリル酸メチル、およびメタクリル酸グリシジルのランダム三元重合体を含むことができる。三元重合体は、約5%〜約20%、例えば、約6%〜約10%のメタクリル酸グリシジルを含むことができる。三元重合体は、約20%〜約30%、例えば、約24%のアクリル酸メチルを含んでもよい。
【0094】
[0095]この耐衝撃性改良剤は直鎖状または分岐鎖状であってよく、単独重合体または共重合体(例えば、ランダム、グラフト、ブロックなど)であってもよく、および/またはエポキシ官能化、例えば、末端エポキシ基、骨格オキシラン単位、および/または懸垂エポキシ基を含んでいてもよい。例えば、この耐衝撃性改良剤はエポキシ官能化を含む少なくとも1種の単量体成分を含む共重合体であってもよい。耐衝撃性改良剤の単量体単位は様々であってよい。一態様では、例えば、この耐衝撃性改良剤はエポキシ官能性メタクリル系単量体単位を含むことができる。本明細書で用いるメタクリル系という用語は一般に、アクリル系単量体およびメタクリル系単量体の双方、並びにそれらの塩およびエステル、例えば、アクリル酸単量体およびメタクリル酸単量体を指す。耐衝撃性改良剤に取り込んでもよいエポキシ官能性メタクリル系単量体としては、これらに限定するものではないが、1,2−エポキシ基を含有するもの、例えば、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルが挙げられる。その他の好適なエポキシ官能性単量体は、アリルグリシジルエーテル、エタクリル酸グリシジル、およびイタコン酸グリシジルを含む。
【0095】
[0096]その他の単量体単位は、追加でまたは代替としてオレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤の成分であってもよい。その他の単量体の例として、例えば、エステル単量体、オレフィン単量体、アミド単量体などを含めてもよい。一態様では、耐衝撃性改良剤は少なくとも1種の直鎖状または分岐鎖状α−オレフィン単量体、例えば、炭素数2〜20個のもの、または炭素数2〜8個のものを含むことができる。具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン、1種以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ペンテン、1種以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ヘキセン、1種以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ヘプテン、1種以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−オクテン、1種以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ノネン、エチル、メチルまたはジメチル置換1−デセン、1−ドデセン、およびスチレンが挙げられる。
【0096】
[0097]エポキシ官能化を含む耐衝撃性改良剤に含まれる単量体は、高分子化合物の単量体単位の少なくとも一部がエポキシ官能化されてさえいれば、エポキシ官能化を含まない単量体を含むことができる。
【0097】
[0098]一態様では、オレフィン系耐衝撃性改良剤はエポキシ官能化を含む三元重合体とすることができる。例えば、耐衝撃性改良剤はエポキシ官能化を含むメタクリル酸成分、α−オレフィン成分、およびエポキシ官能化を含まないメタクリル酸成分を含むことができる。例えば、耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0099】
[式中、a、bおよびcは1以上である]を有するポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸グリシジル)であってもよい。
【0100】
[0099]別の態様では、耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0102】
[式中、x、yおよびzは1以上である]を有するエチレン、アクリル酸エチル、および無水マレイン酸のランダム共重合体とすることができる。
【0103】
[0100]オレフィン系共重合体耐衝撃性改良剤の様々な単量体成分の相対的な割合は特に限定されない。例えば、一態様では、エポキシ官能性メタクリル系単量体成分は共重合体耐衝撃性改良剤の約1重量%〜約25重量%、または約2重量%〜約20重量%を形成することができる。α−オレフィン単量体単位はオレフィン系共重合体耐衝撃性改良剤の約55重量%〜約95重量%、または約60重量%〜約90重量%を形成することができる。他の単量体成分(例えば、非エポキシ官能性メタクリル系単量体)が用いられる場合は、オレフィン系共重合体耐衝撃性改良剤の約5重量%〜約35重量%、または約8重量%〜約30重量%を構成してもよい。
【0104】
[0101]オレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤は当技術分野で一般に周知の標準的な重合方法に従って生成することができる。例えば、極性官能基を含む単量体を重合体骨格上にグラフトさせてグラフト共重合体を生成してもよい。あるいは、周知のフリーラジカル重合法、例えば、高圧反応、チーグラー・ナッタ触媒反応系、シングルサイト触媒(例えば、メタロセン)反応系などを用いて、官能基を含む単量体を単量体と共重合させてブロックまたはランダム共重合体を生成してもよい。
【0105】
[0102]あるいは、オレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤は市販のものを入手してもよい。一例として、耐衝撃性改良剤として用いるのに好適な化合物はLotader(登録商標)という商品名でArkema社から入手できる。
【0106】
[0103]耐衝撃性改良剤の分子量は幅広く様々にすることができる。例えば、耐衝撃性改良剤の数平均分子量は、多分散性指数を一般的な2.5〜7の範囲にして、モル当たり約7,500〜約250,000グラム、態様によっては、モル当たり約15,000〜約150,000グラム、また態様によっては、モル当たり約20,000〜100,000グラムにすることができる。
【0107】
[0104]一態様では、オレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤は官能化を含むよう修飾することができる。例えば、耐衝撃性改良剤はモル分率が約0.01〜約0.5の下記の1種以上で修飾することができる:炭素数約3〜約8個のα,β−不飽和ジカルボン酸またはその塩、炭素数約3〜約8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその塩、炭素数約3〜約8個の無水物またはその塩、炭素数約3〜約8個のモノエステルまたはその塩、スルホン酸またはその塩、および炭素数約4〜約11個の不飽和エポキシ化合物。そのような修飾官能基の例としては、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸、およびメタクリル酸グリシジルが挙げられる。金属酸塩の例としては、アルカリ金属塩および遷移金属塩、例えば、ナトリウム塩、亜鉛塩、およびアルミニウム塩が挙げられる。
【0108】
[0105]一般に、オレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤は本組成物中に、約0.05重量%〜約40重量%、約0.05重量%〜約37重量%、または約0.1重量%〜約35重量%の量で含めてもよい。例えば、本熱可塑性組成物は約30重量%未満、約25重量%未満、または約20重量%未満の量のオレフィン系共重合体または三元重合体耐衝撃性改良剤を含むことができる。
【0109】
[0106]シロキサン重合体は耐衝撃性改良剤の1種として本熱可塑性組成物中に含めてもよい。シロキサン重合体には、骨格中に以下の式:
【0111】
[式中、R
5およびR
6は互いに独立して、炭素数20個までの水素、アルキル、アルケニル、アシル、アルカリール、またはアラルキルである]のシロキサン単位を含むものであれば、どのような重合体、共重合体またはオリゴマーも含めることができる。一態様では、シロキサン重合体は、その重合体のシロキサン単量体単位の少なくとも一部に反応性官能基を含む。シロキサン重合体の骨格はアルキル置換基、フェニル置換基などの当技術分野で周知の置換基を含むことができる。
【0112】
[0107]好適なシロキサン重合体のいくつかの例としては、これらに限定するものではないが、ポリジメチルシロキサン類、例えば、ジメチルビニルシロキシ末端基でキャップされたポリジメチルシロキサン、メチルジビニルシロキシ末端基でキャップされたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端基でキャップされたジメチルシロキサン、(80モル%)/メチルフェニルシロキサン(20モル%)共重合体、ジメチルビニルシロキシ末端基でキャップされたジメチルシロキサン(80モル%)/ジフェニルシロキサン(20モル%)共重合体、ジメチルビニルシロキシ末端基でキャップされたジメチルシロキサン(90モル%)/ジフェニルシロキサン(10モル%)共重合体、およびトリメチルシロキシ末端基でキャップされたジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン共重合体が挙げられる。上記重合体に加えて、他の重合体を用いることもできる。例えば、幾つかの好適なビニル変性シリコーンとしては、これらに限定するものではないが、ビニルジメチル終端ポリジメチルシロキサン、ビニルメチル/ジメチルポリシロキサン共重合体、ビニルジメチル終端ビニルメチル、ジメチルポリシロキサン共重合体、ジビニルメチル終端ポリジメチルシロキサン、モノビニル及びモノn−ブチルジメチル終端ポリジメチルシロキサン、およびビニルフェニルメチル終端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。さらに、用いることができる幾つかのメチル変性シリコーンとしては、ジメチルヒドロ終端ポリジメチルシロキサン、メチルヒドロ/ジメチルポリシロキサン共重合体、メチルヒドロ終端メチルオクチルシロキサン共重合体、およびメチルヒドロ、フェニルメチルシロキサン共重合体が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0113】
[0108]シロキサン重合体が反応性官能基を含む場合、その反応性官能基として、これらに限定するものではないが、ビニル基、ヒドロキシル基、水素化物、イソシアネート基、エポキシ基、酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシおよびプロポキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシおよびオクタノイルオキシ)、ケトオキシメート基(例えば、ジメチルケトオキシム、メチルケトオキシムおよびメチルエチルケトオキシム)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびブチルアミノ)、アミド基(例えば、N−メチルアセトアミドおよびN−エチルアセトアミド)、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシ、および1−エチル−2−メチルビニルオキシ)、アルコキシアルコキシ基(例えば、メトキシエトキシ、エトキシエトキシおよびメトキシプロポキシ)、アミノオキシ基(例えば、ジメチルアミノオキシおよびジエチルアミノオキシ)、メルカプト基などのうちの1種以上を含むことができる。
【0114】
[0109]シロキサン重合体は任意の所望の分子量にすることができる。例えば、一態様では、シロキサン重合体の分子量は約5,000超にすることができる。一態様では、高分子量シロキサン重合体(例えば、骨格に沿って約200超の繰り返し単位―(CH
3)
2SiO―を有することができる高分子量ポリジメチルシロキサン)を本熱可塑性組成物に取り込むことができる。別の態様では、超高分子量シロキサン重合体、例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサンを本熱可塑性組成物中に取り込むことができ、その数平均分子量はモル当たり約10
6グラム以上にすることができる。
【0115】
[0110]一態様では、シロキサン重合体はエポキシ官能化することができ、シロキサン重合体に組み込まれたエポキシ基が以下の式:
【0117】
[式中、R
7は、2価脂肪族(C
1〜C
10)、シクロアルキル(C
5〜C
20)、複素環式(C
4〜C
9)、置換または非置換芳香族(C
6〜C
9)の炭化水素基、もしくは直接結合である]を有するものを含むことができる。
【0118】
[0111]エポキシ基はアミン官能化またはアミノ末端化シロキサンに組み込むことができる。例えば、General Electric社製の「Gシリーズ」シロキサン樹脂などの市販のアミン末端化シロキサン重合体をエポキシで反応により官能化することができる。エポキシ官能化は、周知のようにエポキシクロロトリアジンなどのエポキシ含有化合物と反応させることで行ってもよい。用いてもよい好適なエポキシクロロトリアジンの一例はトリメチルグリシジル塩化シアヌルである。
【0119】
[0112]エポキシクロロトリアジンとシロキサンとの反応は有機溶媒(例えば、トルエン、塩化メチレン、または同様の極性のその他の有機液体)中で行ってよい。反応温度は約20℃〜約100℃の範囲であってよい。エポキシクロロトリアジンは、通常、シロキサン重合体の重量の約1%〜約6%または約2%〜約6%の範囲で超過する量を用いる。
【0120】
[0113]シロキサン重合体はメルカプト官能化することができ、シロキサン重合体に組み込まれたメルカプト基が以下の式:
【0122】
[式中、R
7は上記の通りである]を有するものを含むことができる。例えば、シロキサン重合体は以下の一般式:
【0124】
を有するメルカプト官能化ポリジメチルシロキサンであることができる。
【0125】
[0114]本熱可塑性組成物に取り込む場合、本組成物は本熱可塑性組成物の約40重量%以下の量のシロキサン重合体を含むことができる。例えば、本熱可塑性組成物は約0.05重量%〜約35重量%、または約0.1重量%〜約30重量%の量のシロキサン重合体を含むことができる。シロキサン重合体は生成プロセス中の任意の箇所、例えば、ポリアリーレンスルフィドと共に主供給口で、または下流で、本熱可塑性組成物に取り込むことができる。
【0126】
[0115]シロキサン重合体耐衝撃性改良剤との組み合わせでは、本熱可塑性組成物はヒュームドシリカを含むことができる。ヒュームドシリカの粒径は、一般に、約5ナノメートル〜約50ナノメートルとすることができる。その粒子は非多孔質であり、表面積は1グラム当たり約50平方メートル(m
2/g)〜約600m
2/g、および密度は1立方メートル当たり約160キログラム(kg/m
3)〜約190kg/m
3にすることができる。本熱可塑性組成物に取り込む場合、本組成物は約25重量%未満、例えば、約0.05重量%〜約20重量%の量のヒュームドシリカを含むことができる。一態様では、ヒュームドシリカはシロキサン重合体と合わせてから、その混合物を本熱可塑性組成物に添加することができる。例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサンとヒュームドシリカを含む予め生成された混合物を本熱可塑性組成物に取り込むことができる。そのような予め生成された混合物はGenioplast(登録商標)としてWacker Chemie社から入手できる。
【0127】
[0116]本熱可塑性組成物は耐衝撃性改良剤の1種として熱可塑性エラストマーを取り込むことができる。熱可塑性エラストマーはゴムの幾つかの物性、例えば、軟性、可塑性、および弾性を有するが、熱可塑性樹脂と同様に加工してよい。冷却すると、溶融物から固形ゴム状組成物への遷移がかなり急速に生じる。これは加熱すると徐々に硬化する従来のエラストマーとは対照的である。熱可塑性エラストマーは射出成形機および押出機で加工してもよいため、本熱可塑性組成物に都合よく取り込むことができる。
【0128】
[0117]熱可塑性エラストマー耐衝撃性改良剤はブロック共重合体とすることができ、その化合物の少なくとも1相は室温では硬質であるが、加熱すると流体になる材料でできている。別の相は室温ではゴム状の軟質な材料である。熱可塑性エラストマー耐衝撃性改良剤はA−B−A(Aは硬質セグメントおよびBは軟質セグメントを表す)のブロック共重合体構造にすることができる。別の態様では、熱可塑性エラストマーは(A−B)
n(上記のようにAは硬質セグメントおよびBは軟質セグメントを表す)で表される繰り返し構造にすることができる。
【0129】
[0118](A−B)
nの繰り返し構造を有する熱可塑性エラストマーの非限定的な例としては、ポリアミド/ポリエーテル、ポリスルホン/ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン/ポリエステル、ポリウレタン/ポリエーテル、ポリエステル/ポリエーテル、ポリカーボネート/ポリジメチルシロキサン、およびポリカーボネート/ポリエーテルが挙げられる。ポリスチレンを硬質セグメントとし、ポリブタジエン、ポリイソプレン、またはポリエチレン−コ−ブチレンのいずれかを軟質セグメントとするトリブロックエラストマーを用いることができる。同様に、スチレン/ブタジエンの繰り返し共重合体、ならびにポリスチレン/ポリイソプレンの繰り返し重合体を用いることができる。
【0130】
[0119]特定の一態様では、ポリアミドとポリエーテルの交互ブロックを有する熱可塑性エラストマーを耐衝撃性改良剤の1種として用いることができる。そのような材料としては、例えば、Pebax(登録商標)という商品名でAtofina社から市販されている。ポリアミドブロックは二塩基酸成分とジアミン成分との共重合体から誘導してもよく、または環状ラクタムの単独重合により調製してもよい。ポリエーテルブロックは一般に、環状エーテル(例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、およびテトラヒドロフラン)の単独重合体または共重合体から誘導される。
【0131】
[0120]熱可塑性エラストマー耐衝撃性改良剤が含まれる場合、本熱可塑性組成物は、本熱可塑性組成物の約40重量%以下の量を含むことができる。例えば、本熱可塑性組成物は約0.05重量%〜約35重量%、または約0.1重量%〜約30重量%の量の熱可塑性エラストマー耐衝撃性改良剤を含むことができる。
【0132】
[0121]有益なことに、少なくとも2種の耐衝撃性改良剤を本熱可塑性組成物に含めることは、1種のみの耐衝撃性改良剤を含む同様の熱可塑性組成物に比べて各耐衝撃性改良剤の濃度を低くすることができる一手段となる。
【0133】
[0122]再度、
図1を参照すると、耐衝撃性改良剤は溶融加工装置の主供給口14でポリアリーレンスルフィドと共に本組成物に添加することができる。しかし、これは本組成物の生成プロセスの必須要件ではなく、他の態様では、耐衝撃性改良剤の少なくとも1種は、
図1に入力ライン16で示したように、主供給口の下流で添加することができる。複数の耐衝撃性改良剤を下流で添加する場合、耐衝撃性改良剤は別々にまたは一緒に添加することができる。例えば、耐衝撃性改良剤の少なくとも1種は、ポリアリーレンスルフィドが溶融加工装置に供給される箇所より下流で、但し溶融部(即ち、溶融加工装置でポリアリーレンスルフィドが溶融される区間)より前の位置で添加してもよい。別の態様では、耐衝撃性改良剤の少なくとも1種は、ポリアリーレンスルフィドが溶融される箇所より下流の位置で添加してもよい。
【0134】
[0123]1種以上の耐衝撃性改良剤を、ポリアリーレンスルフィドの主供給の下流で溶融加工装置に添加する態様では、本組成物に加える前に、耐衝撃性改良剤を少量のポリアリーレンスルフィド(主供給口で添加されるポリアリーレンスルフィドと同一または別のもの)と混合してもよい。例えば、約90重量%以上のポリアリーレンスルフィドを最初の位置で添加して、残りのポリアリーレンスルフィドを耐衝撃性改良剤の1種と、または両方と混合して溶融加工装置に添加してもよい。
【0135】
[0124]所望であれば、1種以上の分配および/または分散混合部材を溶融加工装置の混合部内で使用してもよい。単軸スクリュー押出機に好適な分配混合機としては、例えば、Saxon混合機、ダルメージ型(Dulmage)混合機、空洞移動式(Cavity Transfer)混合機などが挙げられるが、これらに限定するものではない。同様に、好適な分散混合機としては、Blister ring混合機、Leroy/Maddock混合機、CRD混合機などが挙げられるが、これらに限定するものではない。当技術分野でよく知られているように、混合を更に促進するために、重合体溶融物を折り畳みおよび方向転換させるピン(例えば、往復式混練(Buss Kneader)押出機、空洞移動式混合機、および螺旋状噛合(Vortex Intermeshing)ピン混合機で使用されるもの)をバレル内で用いてもよい。
【0136】
[00100]一態様では、ポリアリーレンスルフィドおよび少なくとも2種の耐衝撃性改良剤に加えて、本熱可塑性組成物は1種以上の架橋剤(各架橋剤が耐衝撃性改良剤の少なくとも1種を架橋することができる)を含むことができる。一態様では、架橋剤は耐衝撃性改良剤の添加位置の下流で本組成物に添加することができる。いかなる特定の理論に拘束されることも望まないが、耐衝撃性改良剤をポリアリーレンスルフィド全体に分配させてから本組成物に架橋剤を添加することで、溶融加工装置内でのポリアリーレンスルフィド、架橋剤、およびその架橋剤で架橋することができる耐衝撃性改良剤間の相互反応を向上させることができ、その結果、本組成物の様々な添加剤間および添加剤中での架橋の分散性が向上すると考えられる。本組成物全体にわたる架橋の分散性が向上すると、本組成物の強度特性および可塑性、例えば、変形下で強度を維持する本組成物の能力を向上させることができる。
【0137】
[0125]架橋剤は、本組成物の成分の官能基と反応できる多官能性化合物として、添加剤内および添加剤間で架橋を形成させることができる。また、複数の耐衝撃性改良剤の反応性官能基の有無と化学作用によっては、単一の架橋剤を用いてもよいし、もしくは本熱可塑性組成物で複数の耐衝撃性改良剤が架橋されるべきである複数の態様では架橋剤を組み合わせて用いても良い。通常、架橋剤は非重合体、即ち、結合または非重合体(非繰り返し)結合成分によって連結された反応性官能性末端部分を2つ以上含む分子化合物とすることができる。一例として、架橋剤は、ジエポキシド、多官能性エポキシド、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、多価アルコール、水溶性カルボジイミド、ジアミン、ジアミノアルカン、多官能性カルボン酸、二塩基酸ハロゲン化物などが挙げられるが、これらに限定するものではない。例えば、熱可塑性組成物がエポキシ官能化耐衝撃性改良剤およびポリエチレン単独重合体または共重合体耐衝撃性改良剤を含むとすると、非重合体多官能性カルボン酸またはアミンを両方の耐衝撃性改良剤を架橋することができる単一の架橋剤として用いることができる。
【0138】
[0126]多官能性カルボン酸架橋剤の具体的な例としては、これらに限定するものではないが、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−二安息香酸、1,4−または1,5−ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シスおよびトランスの両方)、1,4−ヘキシレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシルドデカン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸が挙げられる。これらに相当するジカルボン酸誘導体、例えば、アルコール基の炭素数が1〜4個のカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸ハロゲン化物を用いてもよい。
【0139】
[0127]架橋剤として有用なジオールの例としては、これらに限定するものではないが、脂肪族ジオール類、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブト−2−エンジオール、1,3−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。芳香族ジオール類、例えば、これらに限定するものではないが、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、フェノールフタレインなどを利用することもできる。用いてもよい脂環式ジオールの例として、脂環式部分を含んでもよく、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール(そのシスおよびトランス異性体を含む)、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。
【0140】
[0128]架橋剤として用いてもよいジアミンの例として、これらに限定するものではないが、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、および芳香族ジアミン、例えば、2,4−および2,6−トリレン−ジアミン、3,5−ジエチル−2,4−および/または−2,6−トリレン−ジアミン、および1級オルト−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−アルキル置換4,4’−ジアミノジフェニル−メタン、(環状)脂肪族ジアミン、例えば、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−1,3−プロピレンジアミン、N、N’−ジメチルエチレンジアミン、および芳香族ジアミン、例えば、2,4−、および/または2,6−トリレン−ジアミン、3,5−ジエチル−2,4−および/または−2,6−トリレン−ジアミン、および1級オルト−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−アルキル置換4,4’−ジアミノジフェニル−メタンが挙げられる。
【0141】
[0129]一態様では、本熱可塑性組成物はジスルフィドを含まない架橋剤を含むことができる。例えば、架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと反応する可能性のあるジスルフィド基の無いカルボキシルおよび/またはアミン官能基を含むことができる。本組成物の生成中に架橋剤によってポリアリーレンスルフィドの鎖が過剰に切断されないようジスルフィドを含まない架橋剤を用いることができる。ただし、ジスルフィドを含まない架橋剤を用いてもポリアリーレンスルフィドを官能化する反応性官能化ジスルフィド化合物の使用は決して制限されるものではない。例えば、一態様では、ポリアリーレンスルフィドを反応により官能化できる、反応性官能化ジスルフィド化合物の溶融加工装置への添加を含むプロセスに従って本組成物を生成することができる。よって、本態様で用いられる架橋剤はジスルフィドを含まない架橋剤にすることができ、その架橋剤が含むことができる官能基は、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤ならびに反応性官能化ポリアリーレンスルフィドと反応するものである。従って、ポリアリーレンスルフィド重合体鎖を過剰に切断することなく本組成物を十分に架橋することができる。
【0142】
[0130]別の態様では、架橋剤およびポリアリーレンスルフィドの官能化に用いるジスルフィド化合物(使用する場合)の双方を選択して、ポリアリーレンスルフィドの鎖切断を促進させることができる。これは、例えば、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度を低減させるために鎖切断を要する態様において有用となる。
【0143】
[0131]架橋剤を含む場合、本熱可塑性組成物は、通常、本熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約2重量%、本熱可塑性組成物の約0.07重量%〜約1.5重量%、または約0.1重量%〜約1.3重量%の量で架橋剤を含んでよい。
【0144】
[0132]架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドおよび耐衝撃性改良剤を混合した後に溶融処理装置に添加することができる。例えば、
図1に示すように、溶融加工装置にポリアリーレンスルフィドおよび耐衝撃性改良剤を(一緒にまたは別々に)添加した後に下流の位置15で架橋剤を本組成物に添加することができる。これで、架橋剤の添加前に耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィド全体に分散されるのを確実にすることができる。
【0145】
[0133]架橋剤の添加前に耐衝撃性改良剤が溶融物全体に分配されるのを促進させるために、様々な異なるパラメータを選択して制御してもよい。例えば、溶融加工装置のスクリューの長さ(L)の直径(D)に対する比率を選択して、処理量と添加剤分配との間の最適なバランスを得てもよい。例えば、耐衝撃性改良剤が供給される箇所(複数可)より後のL/D比を制御して、添加剤の分配を促進させることができる。より詳しくは、スクリューには混合距離(L
B)があり、それは耐衝撃性改良剤およびポリアリーレンスルフィドのすべてが装置に供給される箇所(即ち、それらが互いに一緒に全て供給される所か、または最後の成分が供給される箇所のいずれか)から架橋剤が供給される箇所までと定義され、その混合距離は大抵の場合、スクリューの全長よりも短い。例えば、全L/Dが40の溶融加工装置を考慮すると、スクリューのL
B/D比は、約1〜約36、態様によっては約4〜約20、および態様によっては約5〜約15にすることができる。一態様では、L/L
B比は、約40〜約1.1、約20〜約2、または約10〜約5にすることができる。
【0146】
[0134]本組成物は当技術分野で一般的に周知の添加剤を1種以上含むこともできる。例えば、1種以上の充填剤を本熱可塑性組成物に含めることができる。1種以上の充填剤は、通常、本熱可塑性組成物の約5重量%〜約70重量%、または約20重量%〜約65重量%の量で本熱可塑性組成物に含めてもよい。
【0147】
[0135]充填剤は標準的な慣行に従って本熱可塑性組成物に添加することができる。例えば、充填剤は溶融加工装置の下流側の位置で本組成物に添加することができる。例えば、充填剤は他の添加剤の添加と一緒に本組成物に添加してもよい。しかし、これは生成プロセスの必須要件ではなく、充填剤はその他の全ての添加剤とは別にして、他の添加剤を添加する箇所の上流または下流のいずれかで添加することができる。また、充填剤は単一の供給位置で添加することができ、あるいは溶融加工装置に沿った複数の供給位置で分割して添加してもよい。
【0148】
[0136]一態様では、繊維状充填剤を本熱可塑性組成物に含めることができる。繊維状充填剤は、繊維の種類(重合体繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、玄武岩繊維などが挙げられるが、これらに限定するものではない)を1種以上、つまり繊維の種類を組み合わせて含んでもよい。一態様では、繊維は短繊維、連続繊維、または繊維ロービング(トウ=繊維束)であってよい。
【0149】
[0137]繊維は当技術分野で周知の様々なサイズにすることができる。一態様では、繊維は約3mm〜約5mmの初期長さにすることができる。別の態様では、例えば、引抜成形プロセスを考慮すると、繊維は連続繊維にすることができる。繊維径は使用される特定の繊維に応じて様々にすることができる。繊維径は、例えば、約100μm未満、例えば、約50μm未満とすることができる。例えば、繊維は短繊維または連続繊維にすることができ、その繊維径は、例えば、約5μm〜約50μm、例えば、約5μm〜約15μmとすることができる。繊維は一般的に周知のサイズ剤で前処理してもよい。一態様では、繊維はイールド(yield)を高くまたはフィラメント数(K numbers)を少なくしてもよい。トウはイールドまたはフィラメント数で表示される。例えば、ガラス繊維トウは50イールド以上、例えば、約115イールド〜約1,200イールドにしてもよい。
【0150】
[0138]その他の充填剤を代わりに用いることができ、または繊維状充填剤と併用してもよい。例えば、粒状充填剤を本熱可塑性組成物に取り込むことができる。一般に、粒状充填剤は中央粒径が約750μm以下、例えば、約500μm以下、または約100μm以下の粒状物質を含むことができる。一態様では、粒状充填剤の中央粒径を約3μm〜約20μmの範囲にすることができる。また、粒状充填剤は周知のような中実または中空にすることができる。粒状充填剤はまた当技術分野で周知の表面処理を含むこともできる。
【0151】
[0139]粒状充填剤は1種以上の無機充填剤を含むことができる。例えば、本熱可塑性組成物は、本組成物の約1重量%〜約60重量%の量で1種以上の無機充填剤を含むことができる。無機充填剤としては、これらに限定するものではないが、シリカ、石英粉末、ケイ酸塩類、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、マイカ、クレー、珪藻土、珪灰石、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0152】
[0140]複数の充填剤、例えば、粒状充填剤および繊維状充填剤を組み込む場合、充填剤は溶融加工装置に一緒にまたは別々に添加してもよい。例えば、粒状充填剤はポリアリーレンスルフィドと共に主供給に、または下流で繊維状充填剤添加前に添加することができ、繊維状充填剤は粒状充填剤の添加箇所の更に下流で添加することができる。通常、繊維状充填剤は粒状充填剤などの他の充填剤の下流に添加することができるが、これは必須要件ではない。
【0153】
[0141]一態様では、本熱可塑性組成物は添加剤として紫外線(UV)安定剤を含むことができる。例えば、本熱可塑性組成物はUV安定剤を、約0.5重量%〜約15重量%、約1重量%〜約8重量%、または約1.5重量%〜約7重量%の量で含むことができる。用いてもよいUV安定剤の特に好適なものの一つは立体障害アミンUV安定剤である。好適な立体障害アミンUV安定剤化合物は、置換ピペリジン、例えば、アルキル置換ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから誘導してもよい。例えば、立体障害アミンは2,2,6,6−テトラアルキルピペリジニルから誘導してよい。立体障害アミンは、例えば、数平均分子量が約1,000以上、態様によっては約1,000〜約20,000、態様によっては約1,500〜約15,000、および態様によっては、約2,000〜約5,000のオリゴマーまたは重合体であってよい。そのような化合物は、通常、重合体繰り返し単位当たり少なくとも1個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジニル基(例えば、1〜4個)を含む。特に好適な高分子量立体障害アミンの一つはClariant社からHostavin(登録商標)N30(数平均分子量1,200)という名称で市販されている。別の好適な高分子量立体障害アミンはAdeka Palmarole社からADK STAB(登録商標)LA-63およびADK STAB(登録商標)LA-68という名称で市販されている。
【0154】
[0142]高分子量立体障害アミンに加えて、低分子量立体障害アミンを用いてもよい。そのような立体障害アミンは一般に、本質的に単量体であり、その分子量は約1,000以下、態様によっては約155〜約800、および態様によっては、約300〜約800である。
【0155】
[0143]その他の好適なUV安定剤にはUV吸収剤、例えば、ベンゾトリアゾール類またはベンゾフェノン類を含めてもよく、これらは紫外線を吸収することができる。
【0156】
[0144]熱可塑性組成物に含めてもよい添加剤は当技術分野で一般に周知の1種以上の着色剤である。例えば、本熱可塑性組成物は約0.1重量%〜約10重量%、または約0.2重量%〜約5重量%の1種以上の着色剤を含むことができる。本明細書で用いられるように、「着色剤」という用語は一般に、材料に着色することができる任意の物質を指す。従って、「着色剤」という用語は、染料(水溶液に可溶性)および顔料(水溶液に殆どまたは全く可溶性でない)の双方を含む。
【0157】
[0145]用いてもよい染料の例としては、分散染料が挙げられるが、これに限定するものではない。好適な分散染料としては、The Color Index、第3版の「分散染料」に記載のものが挙げられる。そのような染料としては、例えば、カルボン酸基を含まないおよび/またはスルホン酸基を含まないニトロ、アミノ、アミノケトン、ケトンイミン、メチン、ポリメチン、ジフェニルアミン、キノリン、ベンゾイミダゾール、キサンテン、オキサジン、およびクマリン染料、アントラキノンおよびアゾ染料、例えば、モノ−またはジ−アゾ染料などが挙げられる。分散染料としてはまた、赤原色分散染料、青原色分散染料、および黄原色染料も挙げられる。
【0158】
[0146]熱可塑性組成物に取り込むことができる顔料としては、有機顔料、無機顔料、金属顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、フォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、虹彩顔料、および真珠光沢顔料が挙げられるが、これらに限定するものではない。顔料の特定量は製品の最終的な所望の色によって決めることができる。パステル色は一般に、二酸化チタン白色または同様の白色顔料を有色顔料に加えることで得られる。
【0159】
[0147]本熱可塑性組成物に含めることができる他の添加剤としては、限定するものではないが、抗菌剤、滑剤、抗酸化剤、安定剤(例えば、有機亜リン酸化合物(organophosphites)を含む熱安定剤、Dover Chemical社製のDoverphos(登録商標)など)、界面活性剤、流動促進剤、固体溶媒、難燃剤、核剤、および特性や加工性を向上させるために添加するその他の材料が挙げられる。そのような任意選択の材料は従来の量および従来の加工法(例えば、主供給口で本熱可塑性組成物に添加)に従って本熱可塑性組成物に用いてもよい。有益なことに、本熱可塑性組成物は可塑剤を添加しなくても所望の特性を発揮することができる。例えば、本組成物は可塑剤、例えば、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸塩、アジピン酸塩、グルタル酸塩、アゼライン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩などを含めなくてよい。
【0160】
[0148]本熱可塑性組成物に全ての成分を添加した後、本組成物は押出機の残りの区域で十分に混合(この間に、組成物の架橋が生じる)され、ダイから押し出される。最終押出成形物はペレット状に、またはその他の必要に応じた形状にすることができ、例えば、最終押出成形物は引抜成形テープまたはリボンの形状にすることができる。
【0161】
[0149]本熱可塑性組成物から物品を形成するのに用いることができる従来の成形プロセスとしては、これらに限定するものではないが、押出成形、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形、圧縮成形、ホットスタンピング、繊維紡糸などが挙げられる。形成することができる成形品としては構造用および非構造用成形部品が挙げられる。
【0162】
[0150]液体または気体の運搬に、および炭化水素の運搬用の特定の一態様で利用してもよい管状部材は本熱可塑性組成物から形成されてもよい。例えば、ホース、パイプ、導管などを含む管状部材は本熱可塑性組成物から形成することができる。管状部材は単層または多層であってもよい。典型的な従来の押出または成形プロセスを管状部材の形成に用いてもよい。例えば、単軸または多軸スクリュー押出機のいずれも管材料の押出成形に用いてよい。別の態様では、ブロー成形プロセスを管状中空部材の形成に用いてよい。
【0163】
[0151]構成部品は、構成部品全体または一部のみに本熱可塑性組成物を含むことができる。例えば、管状部材などのアスペクト比が大きい(L/D>1)構成部品を考慮すると、その構成部品は、本熱可塑性組成物が管状部材の一区分にわたって延伸し、隣接する区分が別の組成物、例えば、別の熱可塑性組成物で作られるように形成することができる。そのような構成部品は、例えば、形成プロセス中に成形装置に供給される材料を変更することで形成することができる。構成部品は2種の材料が混合する領域を含むことができ、それが異なる材料で形成された第1区分と第2区分との境界部を表す。構成部品は本熱可塑性組成物で作られた単一の区分、または必要に応じて、複数の区分を含むことができる。また、構成部品の他の区分を複数の異なる材料で作ることができる。
【0164】
[0152]
図2を参照すると、本熱可塑性組成物から形成された管状部材110の一態様が示されている。示されるように、管状部材110は多方向に延伸して相対的に複雑な形状になっている。例えば、本熱可塑性組成物が固化する前に、
図2に示すような曲げ部分を形成することができる。管状部材110は112、114、および116に曲げ部分を含む。
【0165】
[0153]一態様によると、
図2に示された管状部材110のような管状部材は、ブロー成形プロセスにより形成された単一層の管状部材とすることができる。
【0166】
[0154]ブロー成形時に、本熱可塑性組成物を先ず加熱し、押出装置に取り付けられたダイを用いて押し出しパリソンにする。パリソンを形成する際、重力によりパリソンの一部が不必要に引き伸ばされて、不均一な肉厚およびその他の欠陥が形成されないよう、本組成物には十分な溶融強度がなければならない。パリソンは成形装置(通常、合わせて三次元の金型キャビティを形成する複数の部分品で形成される)に受け取られる。例えば、ロボットアームを用いてパリソンを操作し成形装置に入れることができる。
【0167】
[0155]理解されるように、パリソンが形成されてからパリソンを移動して成形装置に係合されるまでに一定時間が経過する。プロセスのこの段階では、パリソンの移動中にその形状が維持されるのに十分なほど本熱可塑性組成物の溶融強度を高くすることができる。本熱可塑性組成物はまた半流体状態のままにして、ブロー成形の開始前に急速に固化しないようにすることもできる。
【0168】
[0156]成形装置が閉じられると、不活性ガスなどのガスがガス供給源からパリソンに供給される。ガスがパリソンの内部表面に十分な圧力を供給して、パリソンを金型キャビティの形状に嵌める。ブロー成形後、部分品を開くことができ、仕上げ成形品が取り出される。一態様では、成形装置から取り出す前に、本熱可塑性組成物を固化するため成形部に冷気を注入することができる。
【0169】
[0157]パイプやチューブなどの管状部材は押出プロセスによって成形することができる。例えば、簡易またはバリア型スクリューを用いる押出成形プロセスを用いることができ、一態様では、そのプロセスでミキシングチップを使用する必要はない。押出プロセスの圧縮比は約2.5:1〜約4:1とすることができる。例えば、圧縮比は供給部約25%、移行部約25%、および計量部約50%とすることができる。バレルの長さのバレル径に対する比率(L/D)は約16〜約24とすることができる。押出プロセスは、当技術分野で周知のその他の標準的な部品、例えば、ブレーカープレート、スクリーンパック、アダプター、ダイ、および真空タンクを利用することもできる。真空タンクは、通常、サイジングスリーブ/較正リング、タンクシールなどを含むことができる。
【0170】
[0158]押出プロセスによって管状部材などの製品を成形する場合、本熱可塑性組成物は先ず、例えば、約90℃〜約100℃の温度で約3時間、乾燥させることができる。本組成物を変色させないよう長時間の乾燥は避けるのが有益である。押出機は周知のように、異なる区域では異なる温度にすることができる。例えば、一態様では、押出機は少なくとも4つの区域を含むことができ、その第1区域の温度は約276℃〜約288℃、第2区域の温度は約282℃〜約299℃、第3区域の温度は約282℃〜約299℃、および第4区域の温度は約540℃〜約580℃にすることができる。一方、ダイの温度は約293℃〜約310℃にすることができ、真空タンクの水は約20℃〜約50℃にすることができる。
【0171】
[0159]通常、ヘッド圧は1平方インチ当たり約100ポンド(psi)(約690kPa)〜約1,000psi(約6,900kPa)にすることができ、周知のように、ヘッド圧を調整して溶融流を安定させることができる。例えば、押出機の各域の温度を上昇させる、押出機スクリューの毎分回転数を増加させる、スクリーンパックのメッシュサイズを小さくする、および/またはスクリーンの数を減らす等によって、ヘッド圧を低減させることができる。一般に、ライン速度は毎分約4メートル〜毎分約15メートルにすることができる。もちろん、実際のライン速度は最終製品の最終寸法、最終製品の美観およびプロセス安定性によって決めることができる。
【0172】
[0160]押出プロセス中のダイスウェル(押し出しスウェル)は、通常、無視できるほどのものである。約1.2〜約1.7のドローダウン(垂れ下がり)が一般に用いられるが、これはドローダウンが高いと、他の加工条件によっては、製品の最終特性に悪影響を及ぼす可能性があるからである。メヤニ(die drool)は通常、押出成形前に樹脂を適度に乾燥させることによって、ならびに溶融温度を約304℃未満に維持することによって防ぐことができる。
【0173】
[0161]一態様では、本熱可塑性組成物から押出成形された管状部材の肉厚は約0.5ミリメートル〜約5ミリメートルにすることができるが、必要に応じてより厚い肉厚の管状部材を本組成物から形成することができる。周知のように、較正リングの内径で管状部材の外径が決められ、通常、ダイの外径よりも小さくなる。周知のように、管状部材の内径でマンドレルの所望の外径およびライン速度を判断することができる。
【0174】
[0162]本熱可塑性組成物を取り込む管状部材は多層管状部材にすることができる。
図3は多層管状部材210を示し、その管状部材の1層以上に本熱可塑性組成物を取り込んでよい。例えば、少なくとも内層212は炭化水素に対し高い耐吸収性を示す本熱可塑性組成物を含むことができ、管状部材210内で運搬される物質に対して実質的に不活性である。
【0175】
[0163]外層214および中間層216は、本明細書に記載の熱可塑性組成物と同じまたは異なる熱可塑性組成物を含むことができる。あるいは、多層管状部材の他の層は全て共に異なる材料から形成されていてもよい。例えば、一態様では、中間層216は圧力および機械的影響に対して高い耐性を示すことができる。一例として、層216は、単独ポリアミド、共重合体ポリアミド、これらの配合物、つまり相互の混合物または他の重合体との混合物の群のポリアミドで形成することができる。あるいは、層216は繊維強化樹脂複合材料などの繊維強化材料で形成することができる。例えば、ポリアラミド(Kevlar(登録商標)など)で織ったマットを用いて中間層216を形成することができ、その層は機械的攻撃に対して高い耐性がある。中間層は、繊維品またはワイヤーを螺旋状にした、編んだ、または編み組んだ層などを含むことができる。螺旋状構造では、例えば、螺旋状層は2層であってもよく、その各層は管状部材210の長手方向軸に対して、いわゆるロック角度または中立角度の約54°で、またはその近傍で、反対方向に螺旋を描くものであってよい。但し、管状部材210は螺旋状構造に限定されるものではない。中間層216は編地、編組布、巻きつけ(wrapped)布、織布、または不織布であってもよい。
【0176】
[0164]外層214は外部攻撃から保護するだけでなく、管状部材に絶縁性または他の望ましい特性を与えることができる。例えば、多層ホースは、高度の耐欠損性、耐候性、耐燃性および耐寒性のある好適な種類のゴム材料で形成された外層214を含むことができる。そのような材料の例としては、熱可塑性エラストマー、例えば、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、およびスチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。外層214の好適な材料としては、これらに限定するものではないが、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの混合物、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴムとの混合物、および塩素化ポリエチレンゴムが挙げられる。
【0177】
[0165]あるいは、外層214は、より強固で、より可撓性の低い材料(ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、または高密度ポリエチレンなど)、繊維強化複合材料(ガラス繊維複合材料または炭素繊維複合材料など)、または金属材料(スチールジャケットなど)で形成することもできる。
【0178】
[0166]もちろん、多層管状部材は3層に限定されるものではなく、2層、または4層以上の別個の層を含んでもよい。多層管状部材は更に、接着材料、例えば、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルエラストマー、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエーテルポリイミド、官能化ポリオレフィンなどから形成された1層以上の接着層を含んでいてもよい。
【0179】
[0167]多層管状部材は従来のプロセス、例えば、共押出、ドライラミネート、サンドイッチラミネート、共押出コーティング、ブロー成形、連続ブロー成形などで製造してもよい。一例として、
図3に示すような3層構造の管状部材210を成形する場合、本熱可塑性組成物、ポリアミド組成物、および熱可塑性エラストマー組成物は別々に3台の異なる押出機に供給することができる。それら3台の押出機から押出される別々の溶融物は、次に、加圧下で1個のダイに導入することができる。3本の異なる管状の溶融流を生成しながら、それらの溶融流をダイ内で、本熱可塑性組成物の溶融流が内層212を、ポリアミド組成物の溶融流が中間層216を、および熱可塑性エラストマー組成物の溶融流が外層214を形成するように組み合わせることができ、そのように組み合わせた溶融流をダイから共押出して、3層の管状部材を製造する。
【0180】
[0168]もちろん、上記のようなブロー成形法を含む周知の任意の管成形法を用いることができる。例えば、一態様では、多層管状部材の1層以上を連続テープ(例えば、引抜成形法で成形した繊維強化テープまたはリボン)で成形することができる。テープを当技術分野で一般に周知の慣行に従って巻きつけ、管状部材または多層管状部材の層を成形することができる。
【0181】
[0169]本熱可塑性組成物から形成されてもよい管状部材としては、石油およびガス用の管路が挙げられ、それらは、例えば、沖合や沿岸の油田およびガス田、ならびに輸送に用いてもよい。本熱可塑性組成物を取り込んだ管路は単層または多層であってもよい。多層管路を考慮すると、本熱可塑性組成物は管路の内側障壁層を形成するのに用いることができるが、但し、多層管路の熱可塑性組成物層は障壁層に制限されるものでは決してなく、多層管路の1層以上の他の層に本熱可塑性組成物を取り込むことができる。
【0182】
[0170]管路は当技術分野で一般に周知の任意のガスおよび石油施設で周知の慣行に従って用いることができる。一例として、
図4は典型的な沖合施設を示し、それには生産流体を海中施設から浮体船舶(floating vessel)620に送る可塑性ライザー610が含まれている。海底640の水域上に浮く浮体船舶620を図示する。可塑性ライザー610は生産流体を海底パイプライン端部連結管(manifold)680から懸垂式係留ブイ650を通し、ヨーク660を通して浮体船舶620に運搬するためのものである。懸垂式係留ブイ650は係留索630によって海底640に設けられたアンカー672に固定される。パイプライン端部連結管680は複数の管路667で井戸690に接続される。
【0183】
[0171]
図4に例示される可撓性ライザーは任意の好適な構成にすることができる。一例として、接合または非接合ライザーを設計することができ、当技術分野で周知のような、鋭角なS字または緩やかなS字、あるいは鋭角な波型または緩やかな波型の構成にすることができる。
図4に例示される標準的な浮力モジュール670は可撓性ライザーと共に用いて、周知の所望の構成にしてもよい。ライザー610は浮力モジュール670(例えば、クレードルやブイを含むことができる)上を通過する。浮力モジュール670は係留索630に取り付けてライザー610を支持することもでき、また係留索630およびライザー610の長さで決まる所望の位置に保持することもできる。
【0184】
[0172]
図5は、種類の異なる管路(その1つ以上が本熱可塑性組成物で形成された障壁層を少なくとも含んでよい)を採り入れることができる典型的な作業現場を示す。図から分かるように、作業現場には、海底92からプラットフォーム95に生産流体を運搬することができる固定されたライザー91を含めることができる。作業現場内に、生産流体、支持流体(supporting fluids)、アンビリカル(複合ケーブル)などを運搬することができる作業現場内管路93を含めることができる。更に、ライザー91および作業現場内管路93の双方は上述のように束ねたラインにすることができる。その系はまた複数の連結部(tie-ins)94も含み、そこで別個の管路を纏めて、例えば、束ねたライザーにする、および/または個々の管路を改変してもよい場合は、例えば、増設をして纏めることができる。その系にはまた炭化水素生産流体が得られる複数の付随井戸98および連結管が含まれる。搬出パイプライン97は生産流体をプラットフォーム95から沿岸、貯蔵施設、または輸送船舶に運搬することができる。搬出パイプライン97はまたその他の管路、例えば、別のパイプライン99を避けるために1つ以上の交差部96を含むことができる。
【0185】
[0173]
図6を参照すると、本熱可塑性組成物を取り込むことができる可撓性ライザー800の一態様を示す。示されるように、ライザー800は幾つかの同心円層を含む。最内層は一般にカーカス(carcass)802と呼ばれ、螺旋状に巻いたステンレス鋼条片で形成して、外部圧力に対する耐性を持たせることができる。カーカス802は、通常、金属(例えば、ステンレス鋼)管で、その管で隣接する障壁層806を支持し、操作中に掛かる圧力または負荷によるライザーの破裂を防ぐ。可撓性ライザー800の内径面はライザーで運ばれる流体に依って様々にすることができる。例えば、ライザー800は、注入流体(例えば、水および/またはメタノール)などの支持流体の運搬に利用する場合は平滑な内径面に、生産流体(例えば、油およびガス)の運搬に利用する場合は粗い内径面にすることができる。カーカス(が有る場合)の厚さは一般に約5〜約10ミリメートルにすることができる。一態様によれば、カーカスは螺旋状に巻いたステンレス鋼条片を相互に噛み合わせて形成することで、強く、内部接合したカーカスを形成することができる。
【0186】
[0174]障壁層806は直接、カーカス802に隣接する。上述のように、カーカス層は無くてもよく、その場合、障壁層806はライザーの最内層であってよい。障壁層は本熱可塑性組成物で形成され、ライザーによって運ばれる炭化水素がライザーの壁面を通して吸収される、および浸透するのを防ぐ一方で、強度および柔軟性を持たせる。更に、本熱可塑性組成物で形成された障壁層806は、ライザーで運搬される流体(例えば、生産流体)、並びにライザーが使用される温度条件の双方による劣化に耐えることができる。障壁層806は一般に、厚さを約3〜約10ミリメートルにすることができ、カーカス802上に溶融物を押出成形する、または引抜成形テープをカーカス802に巻いて成形することができる。
【0187】
[0175]ライザー800はまた外層822を含み、その層が外部スリーブおよび外部流体障壁となり、並びに外部損傷(例えば、周辺物質との摩擦や接触に起因するもの)からライザーを保護する。外層822は高分子材料、例えば、本熱可塑性組成物または高密度ポリエチレンで形成することができ、その材料は機械的損傷とライザーの内層への海水侵入の双方に耐えることができる。一態様によると、外層822は、高分子材料を強化材料(例えば、炭素繊維、炭素鋼繊維、またはガラス繊維)と共に含む複合材料にすることができる。
【0188】
[0176]帯状強化層(hoop strength layer)804は障壁層の外側に配置して、圧力差でライザーの壁面に加わる力によって生じる円周応力に対するライザーの耐性能力を高めることができる。帯状強化層は一般に金属層で、例えば、螺旋状に巻いたステンレス鋼条片で形成することができ、厚さ約3〜約7ミリメートルの層を形成することができる。帯状強化層はライザーの内圧と屈曲の双方に耐えることができる。一態様では、帯状強化層804を形成する炭素鋼条片は噛み合わせた断面、例えば、隣接する巻きが相互に噛み合うようなS字−またはZ字−断面形状にして、より強固な層を形成することができる。一態様では、帯状強化層は更に強度を与えるために複数の材料を含むことができる。例えば、設計と圧力要件がより高い破裂強度を求める態様では、第2の平坦な金属条片を帯状強化層の噛み合った金属条片の上に螺旋状に巻きつけて、その層に付加的な強度を与えることができる。耐摩耗層などの中間高分子層を必要に応じて2層の帯状強化層の間に更に配置することもできる。
【0189】
[0177]補強層818および820は螺旋状に巻いた金属(一般的には炭素鋼)条片で形成することができる。補強層818および820は、高分子の耐摩耗層817および819によって帯状強化層804から分離され、かつこれらの補強層はお互いに分離されることができる。補強層818および820はライザーにさらなる周方向強度と軸方向の強度を与えることができる。ライザー800は2層の補強層818、820を含んでいるが、ライザーは補強層を好適な任意の数だけ、例えば、補強層無し、1層、2層、3層またはそれ以上の補強層を含んでもよい。一般的には、補強層818および820の螺旋状に巻かれた金属条片は重なるが、噛み合わせる必要はない。そのため、補強層818、820は幅を約1ミリメートル〜約5ミリメートルにしてよい。
【0190】
[0178]中間耐摩耗層817、819は本熱可塑性組成物から形成することができ、あるいは他の重合体、例えば、ポリアミド、高密度ポリエチレンなどから形成することができる。一態様では、耐摩耗層817、819は、一方向繊維、例えば、炭素やガラス繊維を含む複合材料にすることができる。例えば、耐摩耗層817、819は重合体テープまたは繊維強化重合体テープ、例えば、引抜成形重合体テープまたはリボンを各補強層の上に螺旋状に巻いて形成することができる。耐摩耗層817、819は、層を形成する条片の動きにより生じる、隣接する補強層の摩耗を防ぐことができる。耐摩耗層817、819はまた隣接する層の格子型変形(birdcaging)を防ぐこともできる。ライザー800の補強層818、820と同様に、耐摩耗層の数は特に限定されず、ライザーが用いられる深度および局所環境、ライザーによって運搬される流体などに応じて、ライザーは耐摩耗層無し、1層の耐摩耗層、または複数の耐摩耗層を含むことができる。耐摩耗層817、819は相対的に薄く、例えば、約0.2〜約1.5ミリメートルにすることができる。
【0191】
[0179]ライザーは当技術分野で一般に周知の追加の層を含んでもよい。例えば、ライザーは絶縁層を、例えば、外層822の直ぐ内側に含んでもよい。絶縁層(が有る場合)は発泡体、繊維マット、またはその他の周知の絶縁材料で形成することができる。一例として、絶縁テープの単層または複数層は、外側の補強層820に巻きつけて、外側の補強層820と外層822との間に絶縁層を形成することができる。
【0192】
[00010]上記の説明は非接合可撓性ライザーのものであるが、但し、本熱可塑性組成物は同様に接合管路を形成するのに用いてもよい。例えば、本熱可塑性組成物を障壁層および必要に応じて、沖合の石油およびガス施設で用いる接合管路の1層以上の追加の層を形成するのに用いてもよい。接合管路を考慮すると、本熱可塑性材料で形成された障壁層は隣接する層と接合し、一体化してもよい。層の接合は、形成後の層を接合温度まで加熱することを含んでもよい。加熱はダイ、ヒーターで、または別の方法で行ってもよい。好適な加熱源は、例えば、赤外線、高温ガス、レーザー、またはその他のものでもよい。接合温度は障壁層と隣接する層が接合できる温度である。例えば、本熱可塑性組成物の圧密化温度は、融点温度、または融点温度より低い約20℃、15℃、10℃、または5℃と融点温度との間の温度であってよい。接合管路の形成には、層を合わせて一体化することを更に含んでもよい。一体化は、例えば、層を合わせて圧搾、または単に何層かを加熱した後に層間を接したままにすることを含んでもよい。接合は更に、一体化後に得られるパイプ部分を冷却することを含んでもよい。
【0193】
[0180]石油およびガス施設で用いるその他の管路、例えば、ジャンパー、パイプライン、流体供給路などは、
図6に示すライザー800と同様の一般的な構造にすることができ、または多層管路に含まれる特定の層に関しては多少異なっていてもよい。例えば、注入流体供給路(メタノール、グリコール、および/または水などの注入流体を井戸の先端(ウェルヘッド)へ供給する)は生産ライザーと同様の性能仕様を満たす必要はない。従って、この管路の少なくとも一部は上記のライザーのように種々の補強層を全て含む必要はない。例えば、本明細書に記載の管路は、管路の仕様が上記のライザーのように内側のカーカス層を必要としない態様では、本熱可塑性樹脂組成物で形成された障壁層を最内層として含むことができる。
【0194】
[0181]当技術分野で周知のように、管路径も幅広く様々にすることができる。例えば、生産流体ライザーは一般に、比較的大きな内径、約5センチメートル(約2インチ)〜約60センチメートル(約24インチ)、または態様によっては、それ以上にすることができるが、支持流体を井戸の先端、連結管、貯蔵施設などへ/から運搬する管路は生産流体管路より大きくも、または小さくすることもできる。例えば、注入流体管路は生産流体管路よりも小さい内径、例えば、約5センチメートル(2インチ)〜約15センチメートル(6インチ)にすることができる。
【0195】
[0182]管路の設計は管路の全長にわたって様々にすることができる。例えば、沖合の管路はより深くまで達し、より遠い沖合まで延伸され、かつより高い圧力で操作されるので、井戸、連結管などに支持流体を供給する管路(直接または間接的に炭化水素産物抽出を支持する)は複雑さが増す可能性がある。従って、支持流体は、例えば、低圧操作用に設計された管路から、より極端な環境で用いるため更に強化層を含む管路まで、その全長にわたって様々な管路を用いて装置に供給してもよい。系の作動圧力が増加すると、供給圧力および注入圧力も増加する。この供給圧力の増加で管路の組立部品もまた、系のそれらの箇所の高圧な周辺で、強化および再設計が必要となる可能性がある。従って、管路はその全長にわたって設計が様々であってよい。いずれの場合でも、管路の少なくとも一部は本熱可塑性組成物から形成された障壁層を含むことができる。
【0196】
[0183]管路は束ねることもできる。一例として、
図7は束ねたライザー129を示す。外部保護管(ケーシング)128は、例えば、複数の高分子層および/または金属層を含む鋼製保護管または複合材保護管にすることができる。束ねたライザー129は、海底から海上施設に炭化水素生産流体を運搬できる2本の生産流体ライザー130を含む。生産流体ライザー130は上記のような多層ライザーおよび本熱可塑性組成物から形成された障壁層を含む多層ライザーにすることができる。束ねたライザー129はまた、海底に設置された操作装置に油圧油を供給する油圧供給管路132、および注入流体管路133を含む。束ねたライザー129は環状管路131を含み、その管路を束ねたライザー129内の隙間127と連通させ、生産管路および隙間(または環状部)中を循環させるのに用いてもよい。例えば、環状管路131の下端を隙間127と連通させるための流通口、例えば、側方流通口に接続させてもよい。環状管路131の下端と隙間127の間に1つ以上のバルブを取り付けて環状管路131と隙間との間の流体流を制御することができる。束ねたライザー129はまた制御ケーブル134を含むこともでき、そのケーブルを用いて当技術分野で周知の標準的な慣行に従って、任意の井戸の先端上に設置した装置の操作を制御することができる。
【0197】
[0184]束ねたライザーは
図7に示すような生産流体ライザー130を2本含むことができる、あるいは単一の生産流体ライザーまたは2本を超える生産流体ライザーを保持することができる。例えば、
図8は外部保護管4と8本の生産流体ライザー2を含む束ねたライザー1を示す。8本の生産流体ライザー2は中央に伸びる導管または管3の周囲に配置され、外部保護管4で囲まれる。この構成では、生産流体ライザー2は相互に隣接して環を形成し、かつ外部保護管4の内側および内側導管3の外側を支え、これによって柔軟性に影響を与えることなく、束ねたライザー1の安定性を向上させることができる。内管3は、必要に応じて、油圧管路、注入流体管路などの追加の管路を保持することができる。別の態様では、内管3は浮力ラインとして機能し、ライザー1に更に浮力を与えることができる。また別の態様では、追加の管路は、生産流体ライザー2と内管3の外側との隙間8に配置してもよい。
【0198】
[0185]
図9Aおよび
図9Bはパイプ内にパイプを重ねる構成140の側面図(
図9A)および断面図(
図9B)を示し、管路の壁148、141、および142のうちの1つまたは全てに本熱可塑性組成物から形成された障壁層を含むことができる。この特定の態様では、パイプ内にパイプを重ねる管路は絶縁管路で、外部保護管148に入れた内側生産流体管路142を含む。内側生産流体管路142はまたジャケット141に入れる。この特定の態様では、内側生産流体管路142とジャケット141との間の環状部143は、当技術分野で周知の連続気泡発泡体などの絶縁材144で充填される。ジャケット141の外側で外部保護管140の内側の空間145は、水、メタノールなどの支持流体を運ぶことができ、または高圧ガスを充填することができ、例えば、高圧ガスを運ぶ空間145から絶縁材144への接続箇所(access points)146を設けることで、パイプ内にパイプを重ねる管路の絶縁性を更に向上させることができる。パイプ内にパイプを重ねる構成にスペーサ147を含めて、生産流体管路142、ジャケット142、および外部保護管148の間に所望の間隔を保つこともできる。その他の組み合わせの管路、例えば、ピギーバック式(パイプ上にパイプを重ねる)管路もまた本明細書に含まれる。
【0199】
[0186]管路系の他の構成要素、例えば、管継手、コネクタ、アンカーなどもポリアリーレンスルフィド組成物で構成されていてもよい。例えば、上述のような管路が端部管継手で固定され、かつ封止されるように管路の端部を支える端部管継手はポリアリーレンスルフィド組成物から形成することができる。一例として、
図10はポリアリーレンスルフィド組成物から形成することができる、管路用の端部管継手301を示す。開口領域303は端部管継手の開口周縁部400で形成される。この周縁部は円形開口にし、そこを通して管路を導入することができる。内側面401は、管路が端部管継手に設置されている際に、障壁層封止環を支えるよう設けられた第1段差領域402および管路の層の端部を封止する更なる封止環を支えるよう配置された更なる段差領域403を含む。内側面401の残りの部分は実質的に平滑な内径面にして、使用時には、そこに沿って輸送流体が流れる。端部管継手301はまた本体の腰部から外向きに延びる締付領域404を含み、管路を端部管継手で終端させる工程中、その領域に管継手の追加部品を固定してもよい。
【0200】
[0187]本熱可塑性組成物は、流体取扱設備に採り入れてもよい種々の構成部品、上述のものに加えて、例えば、フランジ、バルブ、バルブシート、シール、センサハウジング、サーモスタット、サーモスタットハウジング、分流加減器(diverters)、ライニング、プロペラなどを形成するのに用いてもよいが、これらに限定するものではない。一態様では、本熱可塑性組成物は、使用時に極端な温度ならびに大きな温度変動に曝される可能性のある自動車用途、例えば、ホース、ベルトなどに用いてもよい。
【実施例】
【0201】
[0188]本開示の態様を以下の実施例により例示するが、それは単に態様を例示するだけのものであり、本発明の範囲または実施されてもよい方法を限定するものと見なされるべきではない。特に断りがない限り、部および百分率は重量基準である。
【0202】
成形方法および試験方法
[0189]射出成形プロセス:引張試験片はISO規格の条件に準拠してISO527−1仕様に射出成形される。炭化水素体積取り込み試験用の引張試験片はASTM規格の条件に準拠してASTM・D630仕様に射出成形される。
【0203】
[0190]溶融粘度:全ての材料は試験前に真空下、150℃で1.5時間乾燥させる。溶融粘度は310℃および1,200秒
−1で毛細管レオメーターにて、5分間の一定のせん断後の粘度測定で測定する。
【0204】
[0191]引張特性:引張弾性率、降伏応力、降伏歪み、破断点強度、降伏点伸び、破断点伸びなどの引張特性はISO試験No.527(ASTM・D638と技術的に等価)に準拠して試験する。弾性率、歪み、および強度の測定は、長さ80mm×厚さ10mm×幅4mmの同様の試験片試料で行う。試験温度は23℃で、試験速度は5または50mm/分である。
【0205】
[0192]曲げ特性:曲げ強度および曲げ弾性率などの曲げ特性はISO試験No.178(ASTM・D790と技術的に等価)に準拠して試験する。この試験は支持間隔64mmで行う。試験は未切断のISO3167多目的試験片の中央部で行う。試験温度は23℃で、試験速度は2mm/分である。
【0206】
[0193]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度はISO試験No.75−2(ASTM・D648−07と技術的に等価)に準拠して測定した。より詳しくは、長さ80mm×厚さ10mm×幅4mmの試験片試料にエッジワイズ(刃を先に向けた)の三点曲げ試験を、規定荷重(最外繊維応力)1.8メガパスカルで行った。試験片をシリコーン油浴に入れ、その温度を試験片が0.25mm(ISO試験No.75−2では0.32mm)に撓むまで毎分2℃で昇温した。
【0207】
[0194]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性はISO試験No.ISO179−1(ASTM・D256、方法Bと技術的に等価)に準拠して試験する。この試験は、A形ノッチ(ベース半径0.25mm)および1形の試験片寸法(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)を用いて行う。試験片は、一枚刃フライス盤を用いて多目的試験片の中心部分を切り出す。試験温度は以下に述べるように、23℃、−30°F、または−40°Fである。
【0208】
[0195]炭化水素体積取り込み:吸収および拡散試験はASTM・D638の4形引張試験片を用いて行った。各材料を、ブレント原油、炭化水素/水混合物(および1度だけの試験(one-off test)では炭化水素のみ)に浸漬した。液体が吸収された速度および量を測定した。炭化水素液体混合物の組成は以下の通りであった。
【0209】
【表1】
【0210】
[0196]暴露試験は加熱したガラス反応器または密封したステンレス鋼反応器を用いて60℃および130℃で行い、窒素でパージして空気を試験容器から除去した。試験は蒸気圧で行った。
【0211】
実施例1
[0197]本組成物を生成するのに用いた材料には以下が含まれた。
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214、直鎖状ポリフェニレンスルフィド、ケンタッキー州フローレンスのTicona Engineering Polymers社製
第1耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとメタクリル酸グリシジルとのランダム共重合体、Arkema社製
第2耐衝撃性改良剤:GUR(登録商標)GHR 8020、ケンタッキー州フローレンスのTicona Engineering Polymers社製
架橋剤:テレフタル酸
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group社製
[0198]材料は、全L/Dが40のCoperion社製完全噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機および10の温度制御区域(ダイの位置の1つの域を含む)を用いて溶融混合した。高剪断スクリュー設計品で添加剤を混合して樹脂マトリックスにした。ポリアリーレンスルフィド、第1耐衝撃性改良剤、第2耐衝撃性改良剤および滑剤を重量計測供給機で第1バレルの主供給口に供給した。材料を溶融混合した上で、架橋剤を重量計測供給機でバレル6に供給した。材料を更に混合し、次いで紐状ダイを通して押出成形した。紐状物を水浴中で急冷し固化させて、造粒機で造粒した。
【0212】
[0199]試料の組成を以下の表に示す。量は試料の重量に基づく重量百分率で示す。
【0213】
【表2】
【0214】
[0200]生成後、試料は様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表に示す。
【0215】
【表3】
【0216】
[0201]試料はまた炭化水素に対する耐吸収性に関しても試験した。炭化水素の取り込み試験は60℃で密封したガラス反応器中で行った。結果を以下の表に示す。
【0217】
【表4】
【0218】
[0202]見て分かるように、組成物に第2耐衝撃性改良剤を添加すると、対照(試料1)に比べて材料(試料2,3)の耐炭化水素性が大幅に向上する。更に、組成物(試料4)を動的に架橋すると、対照(試料1)と同様の耐衝撃性および引張特性の生成物が生じるが、遥かに低い添加量の第1耐衝撃性改良剤でこれを行うことができる。
【0219】
実施例2
[0203]本組成物を生成するのに用いた材料には以下が含まれた。
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214、直鎖状ポリフェニレンスルフィド、ケンタッキー州フローレンスのTicona Engineering Polymers社製
第1耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとメタクリル酸グリシジルとのランダム共重合体、Arkema社製
第2耐衝撃性改良剤:Pebax(登録商標)2533 SA 01、Arkema社製
架橋剤:テレフタル酸
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group社製
[0204]材料は、全L/Dが40のCoperion社製完全噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機および10の温度制御域(ダイの位置の1つの域を含む)を用いて溶融混合した。高剪断スクリュー設計品で添加剤を混合して樹脂マトリックスにした。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤、および滑剤を重量計測供給機で第1バレルの主供給口に供給した。上記材料を溶融混合した上で、架橋剤を重量計測供給機でバレル6に供給した。材料を更に混合し、次いで紐状ダイを通して押出成形した。紐状物を水浴中で急冷し固化させて、造粒機で造粒した。
【0220】
[0205]試料の組成を以下の表に示す。量は試料の重量に基づく重量百分率で示す。
【0221】
【表5】
【0222】
[0206]生成後、試料は様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表に示す。
【0223】
【表6】
【0224】
[0207]炭化水素への144時間の暴露後、試料はまた炭化水素に対する耐吸収性に関しても試験した。炭化水素の取り込み試験は130℃で密封したステンレス鋼反応器中で行った。結果を以下の表に示す。量は試料の重量に基づく百分率で示す。
【0225】
【表7】
【0226】
[0208]見て分かるように、部分的に第1耐衝撃性改良剤を第2耐衝撃性改良剤に置き換えると、引張特性をなお維持したままで、耐炭化水素性が向上する(試料5対試料6)。また、組成物に第2耐衝撃性改良剤を添加すると、材料の可塑性および耐炭化水素性の双方が向上した(試料5対試料7)。
【0227】
実施例3
[0209]本組成物を生成するのに用いた材料には以下が含まれた。
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214、直鎖状ポリフェニレンスルフィド、ケンタッキー州フローレンスのTicona Engineering Polymers社製
第1耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとメタクリル酸グリシジルとのランダム共重合体、Arkema社製
第2耐衝撃性改良剤:GENIOPLAST(登録商標)Pellet S、Wacker社製
架橋剤:テレフタル酸
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group社製
[0210]材料は、全L/Dが40のCoperion社製完全噛合型同方向回転二軸スクリュー押出機および10の温度制御域(ダイの位置の1つの域を含む)を用いて溶融混合した。高剪断スクリュー設計品で添加剤を混合して樹脂マトリックスにした。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤、および滑剤を重量計測供給機で第1バレルの主供給口に供給した。上記材料を溶融混合した上で、架橋剤を重量計測供給機でバレル6に供給した。材料を更に混合し、次いで紐状ダイを通して押出成形した。紐状物を水浴中で急冷し固化させて、造粒機で造粒した。
【0228】
[0211]試料の組成を以下の表に示す。量は試料の重量に基づく重量百分率で示す。
【0229】
【表8】
【0230】
生成後、試料は様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表に示す。
【0231】
【表9】
【0232】
[0212]炭化水素への144時間の暴露後、試料はまた炭化水素に対する耐吸収性に関しても試験した。炭化水素の取り込み試験は130℃で密封したステンレス鋼反応器中で行った。結果を以下の表に示す。
【0233】
【表10】
【0234】
[0213]見て分かるように、部分的に第1耐衝撃性改良剤を第2耐衝撃性改良剤に置き換えると、引張特性をなお維持したままで、耐炭化水素性が向上する(試料8対試料10)。組成物に第2耐衝撃性改良剤を添加すると、衝撃強さをなお維持したままで、材料の可塑性および耐炭化水素性の双方が向上した(試料8対試料10)。
【0235】
[0214]当業者は本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示に対するこれら
のおよび他の修正や変更を実施してもよい。尚、様々な態様の側面は、その全体または一
部が交換可能である。更に、前述の説明は単なる例示に過ぎず、本開示を限定するもので
はないことは当業者に自明である。
以下に、本願出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
ポリアリーレンスルフィド、第1耐衝撃性改良剤、および第2耐衝撃性改良剤を含み、
前記第1耐衝撃性改良剤が架橋された衝撃性改良剤である熱可塑性組成物。
[請求項2]
前記第1耐衝撃性改良剤および前記第2耐衝撃性改良剤の両方が架橋されている、請求
項1に記載の熱可塑性組成物。
[請求項3]
前記第1耐衝撃性改良剤がオレフィン系共重合体または三元重合体であり、例えば、前
記架橋された第1耐衝撃性改良剤が前記第1耐衝撃性改良剤のエポキシ官能基と架橋剤の
反応生成物を含む、または前記第1耐衝撃性改良剤の無水マレイン酸官能基と架橋剤の反
応生成物を含む、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性組成物。
[請求項4]
前記ポリアリーレンスルフィドが架橋されている、および/または前記ポリアリーレン
スルフィドがポリプロピレンスルフィドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱
可塑性組成物。
[請求項5]
前記第2耐衝撃性改良剤がエチレンの単独重合体または共重合体であり、例えば、前記
第2耐衝撃性改良剤がエチレンの高分子量単独重合体または共重合体、もしくはエチレン
の超高分子量単独重合体または共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱
可塑性組成物。
[請求項6]
前記第2耐衝撃性改良剤がシロキサン重合体であり、例えば、前記第2耐衝撃性改良剤
がポリジメチルシロキサンであり、そして前記第2耐衝撃性改良剤がヒュームドシリカと
合わされてもよい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
[請求項7]
前記第2耐衝撃性改良剤が熱可塑性エラストマーであり、例えば、前記熱可塑性エラス
トマーがポリアミドとポリエーテルのブロック共重合体などのブロック共重合体である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
[請求項8]
前記第2耐衝撃性改良剤が粒子の形状であり、例えば、前記粒子の平均粒径D
50が約
5マイクロメートル〜約1,000マイクロメートルの範囲内である、請求項1〜7のい
ずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
[請求項9]
1種以上の添加剤を更に含み、例えば、前記1種以上の添加剤が充填剤、UV安定剤、
熱安定剤、滑剤、難燃剤、核剤、または着色剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記
載の熱可塑性組成物。
[請求項10]
前記熱可塑性組成物が
加熱した炭化水素溶液との4日間の接触後の重量変化が約6%以下;
加熱した炭化水素溶液との6日間の接触後の密度保持が約95%以上;
加熱した炭化水素溶液との6日間の接触後の体積変化が約10.5%以下
のうちの1つ以上の特性を示す、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物。
[請求項11]
請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性組成物を含む成形品、例えば、押出成
形品、射出成形品、ブロー成形品、引抜成形品、熱成形品、または圧縮成形品。
[請求項12]
前記成形品が単層または多層管状部材であり、例えば、内層を含む多層管状部材であり
、前記内層が前記熱可塑性組成物を含む、請求項11に記載の成形品。
[請求項13]
前記成形品が石油および/またはガス生産用途の管路であり、例えば、接合または非接
合ライザー、束ねた管路、支持流体管路、またはパイプ内にパイプを重ねる管路であり、
前記ライザーが好ましくは前記熱可塑性組成物から形成された障壁層を含む、請求項11
または請求項12に記載の成形品。
[請求項14]
熱可塑性組成物の生成方法であって、
ポリアリーレンスルフィドを溶融加工装置に供給し;
第1耐衝撃性改良剤を前記溶融加工装置に供給し、前記ポリアリーレンスルフィド全体に
前記耐衝撃性改良剤が分配されるよう前記ポリアリーレンスルフィドおよび前記耐衝撃性
改良剤を前記溶融加工装置中で混合し;および
第2耐衝撃性改良剤を前記溶融加工装置に供給し、前記ポリアリーレンスルフィド全体に
前記第2耐衝撃性改良剤が分配されるよう前記ポリアリーレンスルフィドおよび前記第2
耐衝撃性改良剤を前記溶融加工装置中で混合し;および
前記第1および第2耐衝撃性改良剤の少なくとも1種を架橋することを含む生成方法。
[請求項15]
架橋剤を前記溶融加工装置に供給することを更に含み、前記ポリアリーレンスルフィド
全体に第1および第2耐衝撃性改良剤が分配された後に前記架橋剤を前記溶融加工装置に
供給し、前記架橋剤が第1耐衝撃性改良剤および第2耐衝撃性改良剤のうちの少なくとも
1種の反応性官能基に反応する反応性官能基を含む、請求項14に記載の方法。
[請求項16]
ジスルフィド化合物を前記溶融加工装置に供給することを更に含み、前記ジスルフィド
化合物が前記ジスルフィド化合物の1つ以上の末端に反応性官能基を含んでもよい、請求
項14または請求項15に記載の方法。
[請求項17]
前記熱可塑性組成物が、押出成形、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形、圧縮成
形、ホットスタンピング、繊維紡糸、および引抜成形の1つ以上を含む方法に従って成形
されることを更に含み、例えば、前記熱可塑性組成物の成形工程が管路のカーカス上に前
記熱可塑性組成物を押出成形することを含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の
方法。