【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、締付中、締付具の回転角度(α)を測定するための角度測定手段と、締付具に伝達されるトルク(T)を測定するためのトルク測定手段とを備えた、締付具を締付けるための動力工具に関する。モーターは、締付具の締付けを駆動するために動力工具の回転可能な部分に接続されている。さらに工具は、測定された回転角度から所定の目標角度までの締付具の締付けを完成するために、必要とされる締付エネルギー(E
t)を計算するための手段に接続されているか又はそれを備えている。締付エネルギーは、測定された回転角度(α)、目標角度、及び継手の剛性(k)に基づいて計算される。調整装置は、必要とされる締付エネルギー(E
t)を満たすために、動力工具の可動部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E
r)を提供するためモーターの回転速度(ω)を調整するようモーターに接続されている。
【0010】
よって、迅速且つ人間工学的に良好な締付具の締付けは、クランプ力に及ぶ摩擦の影響を低減し、また高い精度を維持しながら達成することができる。高い締付け速度は、締付中、より長い周期で使用することができ、またスナッグを超えて維持することができる。
【0011】
継手の剛性(k)は、締付具の回転角度当たりのトルク率k=ΔT/Δαとして定義することができる。
【0012】
調整装置は、締付中、モーターの回転速度(ω)を連続的又は断続的に調整するよう構成することができる。
【0013】
よって、回転速度の調整は、例えば直線的な動作からの変動及び偏向を考慮して、締付中、動的に更新することができる。
【0014】
モーターの回転速度(ω)を調整するためにモーターに接続された調整装置は、回転速度を調整するために、例えばモーターへの駆動電流を調整する電流調整装置に接続される速度調整用速度調整装置を備えるカスケード調整装置であることができる。
【0015】
締付具の締付けを完成させるのに必要とされる締付エネルギー(E
t)は、次のように推定することができる。
E
t=k(α
t2−α
2)/2
ここで、kはトルク率(継手の剛性)であり、α
tは目標角度で、αは実際に測定された角度である。
【0016】
よって、必要な締付エネルギーを計算するために、線形近似が使用される。
【0017】
モーターに接続された工具の回転部分の回転エネルギー(E
r)は、次のように記載することができる。
E
r=Jω
2/2
ここで、ωは回転速度であり、Jは動力工具の回転部分の慣性モーメントである。
【0018】
従って、必要な締付エネルギー(E
t)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E
r)を提供するのに必要な回転速度(ω)は、次のように計算することができる。
ω=SQRT(k(α
t2−α
2)/J)
ここで、ωは回転速度であり、SQRTは平方根、kはトルク率(継手の剛性)、α
tは目標角度、αは実際の測定された角度であり、Jは動力工具の回転部品の慣性モーメントである。動力工具の回転部分の慣性モーメントは、特定の動力工具用に測定又は計算されてもよい。
【0019】
必要な締付エネルギーが、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で提供された回転エネルギー(E
r)よりも小さくなるまで、回転速度を高いレベルで維持することができる。よって、迅速且つ人間工学的に良好な締付具の締付けを達成できる。
【0020】
動力工具は、締付具の回転の所定の目標角度で、締付けを中断するよう構成することができる。
【0021】
目標角度及び測定された角度は、スナッグ角度α
0、つまりゼロ角を画定するスナッグから定義することができる。
【0022】
よって、継手の剛性は、スナッグからの線形のトルク率で推定することができ、締付エネルギーの計算はこのトルク率に基づいてなされてもよい。
【0023】
用語「スナッグ前」は、スナッグ角度を下回る角度として定義され得、また用語「スナッグ後」は、スナッグ角度より大きい角度として定義され得る。
【0024】
スナッグ角度を画定する幾つかの代替的な方法がある。例えば、スナッグはトルク閾値として画定してもよい。選択肢として、トルクと角度との関係における、膝部分によって画定されてもよい。スナッグ角度は、トルクと角度との関係におけるゼロトルクに一致するスナッグを超えた、トルクと角度との関係線に沿う線形予測角度α
1として画定することができる。別の選択肢として、スナッグ角度は、スナッグ前後にトルクと角度との関係を示す線形近似値の交点の角度α
2として画定することができる。
【0025】
目標角度は、予め、特定の締付具及び継手の条件に関って決定される。
【0026】
目標角度は、1つ又は複数の締付具の回転の回転数及び/又は回転数の一部であることができる。目標角度は、スナッグから、少なくとも10、30、50、70、90、120度であることができ、及び/又は150、180、210、270、360、720度若しくはそれ以上の角度より小さい。
【0027】
本発明はさらに、動力工具、締付エネルギー(E
t)を計算するための手段、及びここに開示されるような調整装置からなる動力工具のアセンブリに関する。
【0028】
本発明はさらに、締付具を締付ける方法にも関する。かかる方法は、次のステップを備える。
− 締付具の回転角度を測定するステップ、
− 締付具に供給されたトルクを測定するステップ、
− 測定された回転角度から所定の目標角度までの締付具の締付けを完成するために必要とされる締付エネルギー(E
t)を計算するために、締付エネルギーを測定された回転角度α及び継手の剛性(k)に基づいて計算するステップ、
− 必要とされる締付エネルギー(E
t)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E
r)を提供するようモーターの回転速度(ω)を調整するステップ、
− 提供された回転エネルギーを用いて締付具を締付けるステップ。
【0029】
上記方法のステップは、締付けの間、連続的に又は断続的に繰り返すことができる。
【0030】
従って、締付具の迅速且つ人間工学的に良好な締付けは、クランプ力に対する摩擦の影響を弱めて、高い精度を維持しながら達成することができる。
【0031】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面及び示された実施形態の詳細な説明から明らかにされる。