特許第6714511号(P6714511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6714511締付具を締付けるための動力工具及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6714511
(24)【登録日】2020年6月9日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】締付具を締付けるための動力工具及び方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20200615BHJP
【FI】
   B25B23/14 610H
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-541519(P2016-541519)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-501896(P2017-501896A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014078810
(87)【国際公開番号】WO2015091987
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】1351567-1
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー,エーリック イェーオリ
(72)【発明者】
【氏名】ペルソン,エリク ヴイルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ワッヅマン,クリストフェル フェリクス
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−164568(JP,A)
【文献】 特表2010−533075(JP,A)
【文献】 特開昭51−075299(JP,A)
【文献】 米国特許第04344216(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0090224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14,21/00,
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーを締付けるための動力工具(100)が、
締付け中、ファスナーの回転角度(α)を測定するための角度測定手段(101)と、
ファスナーに供給されるトルク(T)を測定するためのトルク測定手段(102)と、
ファスナーの締付けを駆動するために動力工具の回転可能な部分に接続されたモーター(104)と、
必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E)を提供するためモーターの回転速度(ω)を調整するようモーターに接続された調整装置(105)とを備え、
そこで、動力工具は測定された回転角度(α)から所定の目標角度(α)までファスナーの締付けを完成するために必要とされる締付エネルギー(E)を計算するプロセッサー(103)に接続されているか又は該プロセッサー(103)を備えていて、
また、測定された回転角度(α)、目標角度(α)、及び継手の剛性(k)に基づいて締付エネルギーが計算され、
さらに、動力工具はファスナーの回転の所定の目標角度(α)で締付けを中断するよう構成され、目標角度(α)はスナッグ角度(α)で、スナッグから画定されることを特徴とする動力工具。
【請求項2】
継手の剛性(k)が、測定されたトルク(T)及び回転角度(α)からファスナーの回転角度当たりのトルク率k=ΔT/Δαとして計算されることを特徴とする請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
調整装置が、締付け中、モーターの回転速度(ω)を連続的又は断続的に調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の動力工具。
【請求項4】
必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性(J)の形で回転エネルギー(E)を提供するのに必要な回転速度(ω)が、次のように計算されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の動力工具。
ω=SQRT(k(α−α)/J)
【請求項5】
必要とされる締付エネルギーが、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で提供された回転エネルギー(E)よりも小さくなるまで、回転速度を高いレベルで維持することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の動力工具。
【請求項6】
ファスナーの締付け方法(300)が、
−ファスナーの回転の角度(α)を測定するステップ(301)、
−ファスナーに供給されるトルク(T)を測定するステップ(302)、
−測定された回転角度(α)から所定の目標角度(α)までのファスナーの締付けを完成するのに必要とされる締付エネルギー(E)を計算するために、締付けエネルギーを測定された回転角度(α)及び継手の剛性(k)に基づいて計算するステップ(303)、
−必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性(J)の形で回転エネルギー(E)を提供するためモーターの回転速度(ω)を調整するステップ(304)、
−提供された回転エネルギーでファスナーを締付けるステップ(305)、
−さらに、ファスナーの回転の所定の目標角度(α)で締付けを中断するステップ(306)を備え、
目標角度がスナッグ角度(α)で、スナッグから画定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
継手の剛性(k)が、ファスナーの回転角度当たりのトルク率k=ΔT/Δαであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
締付け中の回転速度が、連続的又は断続的に調整されることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性(J)の形で回転エネルギー(E)を提供するのに必要な回転速度(ω)が、次 のように計算されることを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の方法。
ω=SQRT(k(α−α)/J)
【請求項10】
必要とされる締付エネルギーが、動力工具の回転可能な部分に回転慣性(J)の形で提供された回転エネルギー(E)よりも小さくなるまで、回転速度を高いレベルで維持することを特徴とする請求項7から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
締付けを完成するために必要とされる締付エネルギー(Et)が、スナッグ後の継手の剛性(k)に基づいて計算されることを特徴とする請求項6から10の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、締付具を締付けるための動力工具、及び締付具を締付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
締付具は、例えば様々な組立工程で継手を形成するために使用され、動力工具はそのような締付具を締付けるために使用することができる。一般に、締付具を締付ける速度と精度を高めることは望ましいことである。別の重要な側面は、動力工具が作動する間の人間工学を改善することである。
【0003】
従来、締付具は、通常、締付工程中に使用されるエネルギーを考慮せず、所定のトルクまで締付けられてきた。締付精度を向上させるために、スナッグ後、最終段階で減速させる必要があった。そのために、オペレータに加わる反動力は比較的高い場合がある。
【0004】
この問題点を減らすために、国際公開WO2009/011633号では、継手の締付具が、所定の目標トルクまで締付けられる動力工具用の調整装置を開示している。調整装置は、所定の目標トルクに達するのに必要なエネルギー量を計算するために配置されている。従って、緊締中高速で使用することができ、よって工具のオペレータに及ぶ反動力を低減する。
【0005】
しかしながら、締付具を締付ける間に、継手の締付けに必要とされるトルクに影響を与え得る摩擦に、異なる継手間で差異がある場合がある。従って、目標トルクに基づいて締付けを調整する場合、これらの摩擦変化でクランプ力にばらつきが生じてしまう。
【0006】
さらに、人間工学的に有利な締付具の締付けに必要な回転エネルギーを提供するために、高い回転速度を使用する場合、継手の回転部材及び固定部材のインターフェースで発熱する場合がある。これにより、インターフェースの摩擦係数が影響を受ける可能性がある。従って、所定の目標トルクに到達するようトルクを調整する場合、上記摩擦差異と組み合わされた継手の幾何学的要因によって、最終角度にばらつきが生じることがある。このように得られたクランプ力は、継手の非常に重要な品質要因であり、これらの要因に基づいて変化することが有り得る。
【0007】
インターフェースの摩擦のばらつきは、例えば締付中の回転速度を低下させることによって減少するが、締付け速度を低下させることで、オペレータがより高い反動力を被ることになる可能性があるので、これは不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、クランプ力の摩擦の影響を低減し、クランプ力の高い精度を維持しつつ、締付具の迅速且つ人間工学的に良好な締付けを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、締付中、締付具の回転角度(α)を測定するための角度測定手段と、締付具に伝達されるトルク(T)を測定するためのトルク測定手段とを備えた、締付具を締付けるための動力工具に関する。モーターは、締付具の締付けを駆動するために動力工具の回転可能な部分に接続されている。さらに工具は、測定された回転角度から所定の目標角度までの締付具の締付けを完成するために、必要とされる締付エネルギー(E)を計算するための手段に接続されているか又はそれを備えている。締付エネルギーは、測定された回転角度(α)、目標角度、及び継手の剛性(k)に基づいて計算される。調整装置は、必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の可動部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E)を提供するためモーターの回転速度(ω)を調整するようモーターに接続されている。
【0010】
よって、迅速且つ人間工学的に良好な締付具の締付けは、クランプ力に及ぶ摩擦の影響を低減し、また高い精度を維持しながら達成することができる。高い締付け速度は、締付中、より長い周期で使用することができ、またスナッグを超えて維持することができる。
【0011】
継手の剛性(k)は、締付具の回転角度当たりのトルク率k=ΔT/Δαとして定義することができる。
【0012】
調整装置は、締付中、モーターの回転速度(ω)を連続的又は断続的に調整するよう構成することができる。
【0013】
よって、回転速度の調整は、例えば直線的な動作からの変動及び偏向を考慮して、締付中、動的に更新することができる。
【0014】
モーターの回転速度(ω)を調整するためにモーターに接続された調整装置は、回転速度を調整するために、例えばモーターへの駆動電流を調整する電流調整装置に接続される速度調整用速度調整装置を備えるカスケード調整装置であることができる。
【0015】
締付具の締付けを完成させるのに必要とされる締付エネルギー(E)は、次のように推定することができる。
=k(α−α)/2
ここで、kはトルク率(継手の剛性)であり、αは目標角度で、αは実際に測定された角度である。
【0016】
よって、必要な締付エネルギーを計算するために、線形近似が使用される。
【0017】
モーターに接続された工具の回転部分の回転エネルギー(E)は、次のように記載することができる。
=Jω/2
ここで、ωは回転速度であり、Jは動力工具の回転部分の慣性モーメントである。
【0018】
従って、必要な締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E)を提供するのに必要な回転速度(ω)は、次のように計算することができる。
ω=SQRT(k(α−α)/J)
ここで、ωは回転速度であり、SQRTは平方根、kはトルク率(継手の剛性)、αは目標角度、αは実際の測定された角度であり、Jは動力工具の回転部品の慣性モーメントである。動力工具の回転部分の慣性モーメントは、特定の動力工具用に測定又は計算されてもよい。
【0019】
必要な締付エネルギーが、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で提供された回転エネルギー(E)よりも小さくなるまで、回転速度を高いレベルで維持することができる。よって、迅速且つ人間工学的に良好な締付具の締付けを達成できる。
【0020】
動力工具は、締付具の回転の所定の目標角度で、締付けを中断するよう構成することができる。
【0021】
目標角度及び測定された角度は、スナッグ角度α、つまりゼロ角を画定するスナッグから定義することができる。
【0022】
よって、継手の剛性は、スナッグからの線形のトルク率で推定することができ、締付エネルギーの計算はこのトルク率に基づいてなされてもよい。
【0023】
用語「スナッグ前」は、スナッグ角度を下回る角度として定義され得、また用語「スナッグ後」は、スナッグ角度より大きい角度として定義され得る。
【0024】
スナッグ角度を画定する幾つかの代替的な方法がある。例えば、スナッグはトルク閾値として画定してもよい。選択肢として、トルクと角度との関係における、膝部分によって画定されてもよい。スナッグ角度は、トルクと角度との関係におけるゼロトルクに一致するスナッグを超えた、トルクと角度との関係線に沿う線形予測角度αとして画定することができる。別の選択肢として、スナッグ角度は、スナッグ前後にトルクと角度との関係を示す線形近似値の交点の角度αとして画定することができる。
【0025】
目標角度は、予め、特定の締付具及び継手の条件に関って決定される。
【0026】
目標角度は、1つ又は複数の締付具の回転の回転数及び/又は回転数の一部であることができる。目標角度は、スナッグから、少なくとも10、30、50、70、90、120度であることができ、及び/又は150、180、210、270、360、720度若しくはそれ以上の角度より小さい。
【0027】
本発明はさらに、動力工具、締付エネルギー(E)を計算するための手段、及びここに開示されるような調整装置からなる動力工具のアセンブリに関する。
【0028】
本発明はさらに、締付具を締付ける方法にも関する。かかる方法は、次のステップを備える。
− 締付具の回転角度を測定するステップ、
− 締付具に供給されたトルクを測定するステップ、
− 測定された回転角度から所定の目標角度までの締付具の締付けを完成するために必要とされる締付エネルギー(E)を計算するために、締付エネルギーを測定された回転角度α及び継手の剛性(k)に基づいて計算するステップ、
− 必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で回転エネルギー(E)を提供するようモーターの回転速度(ω)を調整するステップ、
− 提供された回転エネルギーを用いて締付具を締付けるステップ。
【0029】
上記方法のステップは、締付けの間、連続的に又は断続的に繰り返すことができる。
【0030】
従って、締付具の迅速且つ人間工学的に良好な締付けは、クランプ力に対する摩擦の影響を弱めて、高い精度を維持しながら達成することができる。
【0031】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面及び示された実施形態の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下の詳細な説明において、添付図面が参照される。
【0033】
図1】動力工具の実施例を示す概略図。
図2】トルクと角度との関係及び回転と角度との関係を示すグラフ。
図3】締付具を締付ける方法を示す実施例のシ−ケンス。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、締付具を締付けるための動力工具100を示している。示された実施形態では、動力工具は、角度付きテンショナーである。しかし、本発明はさらにピストル型のテンショナー又はストレート型のテンショナーにも関する。工具は、オペレータ又は固定具で保持される本体106を備えている。本体に接続された工具ヘッド107は、工具で締付ける締付具を受けるように構成されている。モーター103は、工具ヘッドを駆動するために、従って締付具を締付けるために、動力工具の回転可能な部分に接続されている。回転可能な部分は、モーター自体、軸体、ギヤなどの回転可能な部分、つまり締付けの間、動力工具で回転する複合集合体を備えることができる。これらの回転可能な部分は、複合回転慣性Jを有し、それは特定の工具用に測定又は計算することができる。
【0035】
工具は、締付具の回転角度を測定するために角度測定手段101を備えている。角度測定手段は、角度エンコーダーであることができる。
【0036】
さらに、トルク測定手段102、例えばトルク検知器は、締付けの間、締付具に与えられるトルクTを測定するために配置される。図示実施形態では、トルク測定手段は、モーター103と動力工具の工具ヘッド107との間に配置されている。しかし、それは、駆動系に沿った場所のどこに配置されても良いし、工具の反動トルクを測定するために配置されても良い。
【0037】
工具は、処理装置104を備えている。選択肢として、処理装置は、工具を駆動するよう構成され動力工具に接続された別の駆動装置に包含されている。駆動装置は、有線で工具に電気接続されても良いし、無線通信で工具に接続されてもよい。処理装置は、回転角の測定結果を受信するための角度測定手段101と、トルクの測定結果を受信するためのトルク測定手段102とに接続されている。処理装置104は、測定された回転角度から所定の目標角度まで締付具の締付けを完成するために必要とされる締付エネルギーEを計算するように構成されている。締付エネルギーEは、次のように計算される。
=k(α−α)/2
ここで、kは角度毎のトルク率(継手の剛性、k=ΔT/Δα)で、αは目標角度であり、αは実際測定された角度である。従って、締付けエネルギーは、測定された回転角度α、目標角度、及び継手の剛性kに基づいて計算される。
【0038】
処理装置104は、さらに、必要とされる締付けエネルギーEを満たすために、工具の回転可能な部分における回転慣性の形で動力工具に回転エネルギーEを提供するために、モーターの回転速度ωを計算するよう構成されている。モーターに接続された工具の回転部分の回転エネルギーEは、次のように計算される。
=Jω/2
ここで、ωは回転速度であり、Jは動力工具の回転部分の慣性モーメントである。従って、回転エネルギーEと締付けエネルギーEとを同一視することによって、必要とされる回転速度ωは、次のように計算され得る。
ω=SQRT(k(α−α)/J)
【0039】
締付エネルギーEを満たすために必要とされる回転速度が、工具の最大回転速度ωよりも高い場合、モーターの回転速度ωを最大の回転速度ωに制限することができる。
【0040】
さらに動力工具は、モーター103の回転速度を調整するために、調整装置105を備えている。調整装置は、最大回転速度ωによって制限を受ける速度を、計算された回転速度ωに調整するよう配置されている。別の選択肢として、調整装置は、工具に接続され工具を調整するよう構成された駆動装置に包含される。よって、トルク及び回転角度の測定結果を駆動装置に送信することができ、本明細書に開示されるように、回転速度ωを算出して、モーターを調整するための調整信号を動力工具のモーターに返送する。
【0041】
動力工具の動作は、締付け中のトルクと角度との関係をグラフで示し、回転速度を含む図2に示されている。
【0042】
最初に、低い回転角度では、トルク測定手段で測定されたトルクTは低く、閾値Tを下回る。これは運転が停止している段階であって、締付具の実際の締付けはまだ始まっていない。停止段階の最後でトルクは増え始め、これは、トルクと角度の関係において、膝部分として見ることができる。これは、角度ゼロで「スナッグ」として画定される(計算中ゼロ角を画定する)。スナッグ角度は、トルクの閾値レベルTで検知することができる。選択肢として、スナッグは、トルクと角度との関係における膝部分を検知すること、つまりトルクと角度との関係の勾配をモニターすることによって画定してもよい。
【0043】
トルクは、締付具を回転させながらスナッグレベルを上回って増加し、トルク率k=Δt/Δαで示される。kは、締付けの間に計算されても良いし、特定の状態で特定の締付具のための知られたものであってもよい。この段階で、回転速度は、上記のように、回転エネルギーEと締付けエネルギーEを同一視することによって計算される。最初に(図2に示されたように)、回転速度は最大回転速度ωによって制限され得る、しかし、工具の回転エネルギーは、締付けが進むにつれて、角度αで、目標角度αまでの締付けを完成することができると推測される。その後、締付具を締めるために使用される回転エネルギーによって、回転速度は連続的に減少する。例えば、4kHzの周波数で締付けが進むにつれて、締付けシステムの非線形の影響を考慮して、回転速度を動的に調整するために、計算は頻繁に更新される。
【0044】
締付具が目標角度αに向けて回転すると、理想的には目標角度αでゼロに達するために回転速度は連続的に減少する。その後、締付けは、停止される。よって、工具の回転エネルギーが、目標角度αまでの締付けを完了するのに十分になるまで、締付け中の回転速度を最大レベルで維持することができる。従って、工具の人間工学を改善しつつ、締付けは高速であり且つ動力工具の反動力の影響が低減される。さらに、締付け結果に対する摩擦の影響を弱めることによって締付けの品質も改善される。従って、クランプ力の正確さも改善される。
【0045】
さらに、動力工具の動作は図3に関連して説明され、図3は締付具を締付ける方法のシーケンス300を示している。かかる方法は、締付具の回転角度を測定するステップ301と、締付具に与えられるトルクを測定するステップ302とを備えている。ステップ303で、測定された回転角度から所定の目標角度まで締付具の締付けを完成するために必要とされる締付エネルギーEが計算される。締付けエネルギーは、測定された回転角度α及び継手の剛性kに基づいて、上述のように計算される。ステップ304で、モーターの回転速度ωは、必要とされる締付エネルギー(E)を満たすために、回転エネルギー(E)を動力工具の回転可能な部分に回転慣性の形で提供するために調整される。ステップ305で、提供された回転エネルギーによって締付具の締付けを完了する。これまでのプロセスは、締付具の締付け中、連続的に繰り返される。そして、ステップ306で、締付具の回転の所定の目標角度で、締付けを中断する。
【符号の説明】
【0046】
100 動力工具
101 角度測定手段
102 トルク測定手段
103 モーター
104 調整装置
105 調整装置
106 本体
107 工具ヘッド
300 方法の一連のシーケンス
301 方法のステップ
302 方法のステップ
303 方法のステップ
304 方法のステップ
305 方法のステップ
306 方法のステップ
α 実際に計測した角度
α目標角度
締付エネルギー
回転エネルギー
J 慣性のモーメント
k トルク率(継手の剛性)
T トルク
ω 回転速度
ω 最大回転速度
図1
図2
図3