(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送受信部(14,14a)から探査波を送信し、周囲の物体からの反射波を含む受信波を前記送受信部で取得して前記物体を検知する物体検知装置(10,10a,31〜34,41〜44,51,52,61,62)を複数備え、車両に搭載される物体検知システムであって、
複数の前記物体検知装置は、互いに、前記送受信部の共振周波数及び共振周期の少なくとも一方を示す共振特性が共通しており、
前記送受信部は、周波数及び周期の少なくとも一方を示す送信特性が前記共振特性を含む所定範囲内である前記探査波を送信可能であり、且つ、周波数及び周期の少なくとも一方を示す受信特性が前記共振特性を含む所定範囲内である前記受信波を受信可能であり、
前記所定範囲内において互いに前記送信特性が異なる複数の探査波のうち、いずれかの探査波を前記送受信部から送信させる送信制御部(12,12a)と、
前記受信波の前記受信特性を取得する特性取得部(18〜20,18a〜20a)と、を備え、
前記車両の前端部には、左側から順に前記物体検知装置である第1〜第4前方センサ(31〜34)が互いに間隔を開けて設けられており、
前記車両の後端部には、左側から順に前記物体検知装置である第1〜第4後方センサ(41〜44)が互いに間隔を開けて設けられており、
前記車両の左側方には、前側から順に前記物体検知装置である第1,第2左側方センサ(51,52)が間隔を開けて設けられており、
前記車両の右側方には、前側から順に前記物体検知装置である第1,第2右側方センサ(61,62)が間隔を開けて設けられており、
前記物体検知装置は、前記送信特性を第1設定と第2設定とに所定期間ごとに切り替え、
前記第1設定では、前記第1〜第4前方センサ(31〜34)及び前記第1〜第4後方センサ(41〜44)は、前記送信特性である第1送信特性で前記探査を送信し、前記第1,第2左側方センサ(51,52)及び前記第1,第2右側方センサ(61,62)は、前記第1送信特性と異なる前記送信特性である第2送信特性で前記探査を送信し、
前記第2設定では、前記第1〜第4前方センサ(31〜34)及び前記第1〜第4後方センサ(41〜44)は、前記第2送信特性で前記探査を送信し、前記第1,第2左側方センサ(51,52)及び前記第1,第2右側方センサ(61,62)は、前記第1送信特性で前記探査を送信し、
取得した前記受信特性に基づいて、その受信波がいずれの送信特性の探査波の反射波であるかを判定する判定部(103)を備える、物体検知システム。
送受信部(14,14a)から探査波を送信し、周囲の物体からの反射波を含む受信波を前記送受信部で取得して前記物体を検知する物体検知装置(10,10a,31〜34,41〜44,51,52,61,62)を複数備え、車両に搭載される物体検知システムであって、
複数の前記物体検知装置は、互いに、前記送受信部が送信可能な探査波の周波数に共通範囲を有しており、
前記共通範囲内の周波数の前記探査波に基づいて、送信特性が異なる複数の探査波のうち、いずれかの探査波を前記送受信部から送信させる送信制御部(12,12a)と、
前記受信波の受信特性を取得する特性取得部(18〜20,18a〜20a)と、を備え、
前記車両の前端部には、左側から順に前記物体検知装置である第1〜第4前方センサ(31〜34)が互いに間隔を開けて設けられており、
前記車両の後端部には、左側から順に前記物体検知装置である第1〜第4後方センサ(41〜44)が互いに間隔を開けて設けられており、
前記車両の左側方には、前側から順に前記物体検知装置である第1,第2左側方センサ(51,52)が間隔を開けて設けられており、
前記車両の右側方には、前側から順に前記物体検知装置である第1,第2右側方センサ(61,62)が間隔を開けて設けられており、
前記物体検知装置は、前記送信特性を第1設定と第2設定とに所定期間ごとに切り替え、
前記第1設定では、前記第1〜第4前方センサ(31〜34)及び前記第1〜第4後方センサ(41〜44)は、前記送信特性である第1送信特性で前記探査を送信し、前記第1,第2左側方センサ(51,52)及び前記第1,第2右側方センサ(61,62)は、前記第1送信特性と異なる前記送信特性である第2送信特性で前記探査を送信し、
前記第2設定では、前記第1〜第4前方センサ(31〜34)及び前記第1〜第4後方センサ(41〜44)は、前記第2送信特性で前記探査を送信し、前記第1,第2左側方センサ(51,52)及び前記第1,第2右側方センサ(61,62)は、前記第1送信特性で前記探査を送信し、
取得した前記受信特性に基づいて、その受信波がいずれの送信特性の探査波の反射波であるかを判定する判定部(103)を備える、物体検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
本実施形態に係る物体検知システムは、車両に搭載されるものである。物体検知システムは、所定の送受信機会ごとに超音波である探査波を送信し、車両の周囲に存在する物体により反射された反射波を受信波として受信し、探査波の送信から受信波の受信までの時間を測定することにより、車両と物体との距離を求める。そして、車両と物体との距離が所定距離よりも近い場合に、車両の運転者に対して物体との接近を報知したり、車両が備える制動装置を作動させたりする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る物体検知システムの構成図である。物体検知システムは、物体検知装置である超音波センサ10,10aと、その超音波センサ10,10aと通信可能に接続されたECU100とを含んで構成されている。超音波センサ10,10aは、共通の構造となっている。すなわち、超音波センサ10,10aは、共振周波数(共振周期)が共通している。この共振周波数は、共振特性と称することができる。なお、共振周波数が共通するという文言は、共振周波数が全く等しくなっていることのみならず、共振周波数を等しくなる設計のもとで製造されたものであれば、共振周波数が等しいと定義する。すなわち、超音波センサ10,10aの製造過程で共振周波数に誤差が生じていたとしても、共振周波数が等しいということができる。
【0016】
これら超音波センサ10,10aは、間隔を開けて配置されており、且つ、一方の超音波センサ10から探査波が送信され、周囲の物体によりその探査波が反射された場合、反射波はいずれの超音波センサ10,10aにおいても受信可能とされている。すなわち、超音波センサ10,10aは、自己が送信した探査波の反射波である直接波と、他のセンサが送信した探査波の反射波である間接波のいずれも受信可能である。なお、以下の説明において、一方の超音波センサ10についての説明を行う。他方の超音波センサ10aの各構成には、一方の超音波センサ10の各構成を示す符号に「a」の符号を追加して図示している。
【0017】
超音波センサ10は、ECU100との通信を行う通信部11、その通信部11から探査波の送信制御の開始信号を受け取り、探査波の送信制御を行う送信制御部12、及び、その送信制御部12により駆動される送信回路13を備えている。送信回路13は、送信制御部12からの駆動信号により駆動させられ、所定周波数の駆動電力が送受信部14へと供給される。
【0018】
送受信部14は、圧電素子を備える有底筒状の筐体の内側に圧電素子が取り付けられたものである。この送受信部14の具体的構造について、
図2を参照して説明する。
【0019】
送受信部14は、筐体141、圧電素子142と、スペーサ143、ベース144および接続ピン145を有して構成されている。
【0020】
筐体141は、導電性材料で構成され、有底円筒状とされることで筐体141の内部に内部空間146が形成されている。筐体141の底部141aの内面に圧電素子142が貼着されており、この底部141aの外側表面が送受信面となっている。本実施形態では、導電性材料としてアルミニウムを用いており、送受信面を円形状としている。
【0021】
圧電素子142は、圧電セラミックス、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスで構成され、その表裏両面に電極を備えている。圧電素子142の一方の電極は、リード147aによって一対の接続ピン145の一方に電気的に接続されている。圧電素子142の他方の電極は、筐体141の底部141aに例えば導電性接着剤により貼着され、導電性材料で構成された筐体141を介してリード147bに接続されたのち、一対の接続ピン145の他方に電気的に接続されている。
【0022】
スペーサ143は、筐体141の開口部とベース144との間に配置されている。スペーサ143は、筐体141の底部141aの振動に伴って筐体141に生じる不要振動が、ベース144に伝達されるのを抑制するための弾性体であり、例えばシリコーンゴムから構成されている。
【0023】
ベース144は、筐体141の開口部側の外周面にスペーサ143を介して嵌め込まれることで、筐体141に固定されている。ベース144は絶縁材料、例えばABS樹脂等の合成樹脂で構成されている。ベース144には、接続ピン145を被覆するための保護部148が回路基板162側に突出するように設けられ、接続ピン145が保護部148を貫通するように配置されている。
【0024】
そして、筐体141、スペーサ143、ベース144が、それぞれ接着されることで、一体構造とされた送受信部14が構成されている。このように構成された送受信部14は、円筒形状の弾性部材150に側面、及び底面の一部が覆われて、合成樹脂からなる中空の本体部160内に組み付けられる。
【0025】
本体部160は、中空状の略長方体で構成されている。本体部160の一面には、上端が開口した円筒形の側壁部161が設けられており、その側壁部161の内部に、送受信部14及び弾性部材150が収容される。送受信部14は、外周面に弾性部材150が当接させられると共に、下側に振動を抑制する弾性体となる発泡弾性体164が配置されて本体部160に組み付けられている。
【0026】
本体部160には、回路基板162の接続位置に対して接続ピン145を位置決めするためのガイド部163が設けられている。このガイド部163は、本体部160の内部空間を送受信部14の配置空間と回路基板162の配置空間とに区画する板状部によって構成されている。
【0027】
このように送受信部14を本体部160に組み付けた状態において、接続ピン145の先端部が回路基板162に挿入されている。この回路基板162には、
図1における送受信部14を除く各部の機能に相当する電子部品等が、実装されている。
【0028】
また、ガイド部163により区画された本体部160のうち回路基板162が配置される中空部には、防湿性部材165が充填されている。回路基板162には外部に出力するための外部出力端子167が備えられ、本体部160の一面に形成されたコネクタ166から外部出力端子167の一端側が露出させられた構成とされている。超音波センサ10とECU100との接続は、この外部出力端子167により行われる。
【0029】
図1の説明に戻り、送信回路13から所定周波数の駆動電力が圧電素子へと供給され、圧電素子がその駆動電力により発振することで超音波を探査波として送信する。この探査波の周波数である送信周波数について、
図3を参照して説明する。この送信周波数は、送信波の特性であるため、送信特性と称することができる。送信周波数としては、共振周波数f0よりも小さい第1周波数f1と、共振周波数f0よりも大きい第2周波数f2との一方が、送信制御部12により選択される。具体的には、共振周波数f0が66.7kHzとなっており、第1周波数f1は共振周波数f0よりも2kHz(第2所定値)小さい64.7kHzであり、第2周波数f2は共振周波数f0よりも2kHz(第1所定値)大きい68.7kHzである。すなわち、第1周波数f1は共振周波数f0よりも、共振周波数f0の3%だけ小さく、第2周波数f2は共振周波数f0よりも、共振周波数f0の3%だけ大きい。なお、第1周波数f1は第1特性ということができ、第2周波数f2は第2特性ということができる。
【0030】
探査波の送信後に周囲の物体により探査波が反射された場合、反射された超音波である反射波が送受信部14へ入射する。また、上述した通り、他方の超音波センサ10aの送受信部14aから探査波が送信されて物体に反射された場合においても、送受信部14へ反射波が入射する。
【0031】
送受信部14が備える圧電素子は、受信波によって振動し、受信波の周波数と等しい周波数を有し、且つ、受信波の振幅に比例する電圧を有する電気信号を発生させる。圧電素子が発生させた電気信号は、受信回路15へ入力される。受信回路15は、公知のバンドパスフィルタ回路を備え、探査波の周波数から乖離した周波数の受信波を除去する。
【0032】
受信回路15から出力される電気信号は、閾値判定部16へ入力される。閾値判定部16は、受信波の振幅に対応する電圧が、予め定められた閾値よりも大きくなったか否かを判定する。すなわち、振幅が十分に大きく、反射波である可能性がある受信波を受信したか否かを判定する。閾値判定部16は、電気信号の電圧が閾値よりも大きくなった時刻である受信時刻を、距離算出部17へ送信する。
【0033】
距離算出部17は、送信制御部12から取得した探査波の送信時刻と、閾値から取得した受信波の受信時刻とに基づいて、物体との距離を算出する。具体的には、受信時刻から送信時刻を減算した値に音速を乗算し、その値の半分を物体との距離をする。
【0034】
超音波センサ10は、さらに、受信波の位相を算出する位相算出部18を備える。この位相算出部18は、受信波の位相を直交検波により算出する。位相算出部18は、送信制御部12から探査波の送信周波数を取得し、受信回路15から受信波の周波数に等しい周波数を有する電気信号を取得する。この位相算出部18で行われる具体的処理について、
図4を参照して説明する。
【0035】
正弦波発生部181は、送信制御部12から共振周波数f0を取得し、その共振周波数f0の4倍の周波数の正弦波を発生させる。この正弦波は、第1乗算器182へ入力される。第1乗算器182は、受信信号に対して正弦波を乗算する。一方、正弦波発生部181により発生させられた正弦波は、余弦波変換部183に入力される。余弦波変換部183では、正弦波の周期を−π/2遅らせた余弦波を発生させる。この余弦波は、第2乗算器184へ入力される。第2乗算器184は、受信信号に対して余弦波を乗算する。
【0036】
第1乗算器182の出力値、第2乗算器184の出力値は、それぞれローパスフィルタ185,186を経て、受信波の同相成分I、直交位相成分Qとして、演算部187へ入力される。演算部187は、同相成分I及び直交位相成分Qに基づいて受信波の位相を算出する。
【0037】
位相算出部18の演算部187により算出された受信波の位相は、位相回転量算出部19へ入力される。上述した通り、受信波の位相を直交検波により算出するうえで、共振周波数f0を用いている。したがって、位相回転量算出部19は、受信波の位相を位相回転量とし、その位相回転量を周波数算出部20へ入力する。
【0038】
周波数算出部20は、取得した位相回転量に基づいて、受信波の周波数である受信周波数を求める。具体的には、図示しないメモリに位相回転量と受信波の周波数の関係とを示すテーブル又は関数が記憶されており、そのテーブル又は関数に基づいて、位相回転量から受信周波数を特定する。この位相回転量と受信周波数との関係について、
図5を参照して説明する。この位相回転量と受信周波数との関係については、演算により求められるものであるが、その関係は周知であるため、具体的な説明は省略する。なお、受信周波数は、受信特性ということができる。
【0039】
図示のとおり、位相回転量と受信周波数との相関関係は、直線的な負の相関関係である。すなわち、位相回転量が大きくなるほど周波数は小さくなり、位相回転量が小さくなるほど周波数は大きくなる。また、上述した通り、共振周波数f0を用いて直交検波の処理を行っているため、位相回転量がゼロである場合の受信周波数は共振周波数f0である。
【0040】
第1周波数f1は共振周波数f0よりも小さく、第2周波数f2は共振周波数f0よりも大きく、且つ、第1周波数f1と共振周波数f0との差の絶対値と、第2周波数f2と共振周波数f0との差の絶対値とは等しい。したがって、位相回転量が正の値であるdである場合が第1周波数f1に対応しているとすれば、位相回転量が負の値である−dである場合に第2周波数f2に対応している。
【0041】
以上のようにして、距離算出部17が算出した距離、及び、周波数算出部20が算出した受信周波数は、通信部11からECU100へと送信される。
【0042】
ECU100は、通信部101、制御部102、及び判定部103を備えている。通信部101は、各超音波センサ10,10aの通信部11,11aと接続されており、ECU100と各超音波センサ10,10aとの情報の送受信は、この通信部101を介して行われる。制御部102は、通信部101を介して物体との距離を取得する。判定部103は、通信部101を介して受信周波数を取得する。
【0043】
判定部103は、受信波がいずれの超音波センサ10,10aの探査波の反射波であるかを判定する。具体的には、第1周波数f1に対して、周波数の範囲を示す第1範囲が設定されており、第1範囲の上限は、共振周波数f0よりも小さく第1周波数f1よりも大きい値であり、第1範囲の下限は、第1周波数f1よりも小さい値である。同様に、第2周波数f2に対して、周波数の範囲を示す第2範囲が設定されており、第2範囲の下限は、共振周波数f0よりも大きく第2周波数f2よりも小さい値であり、第2範囲の上限は、第2周波数f2よりも大きい値である。すなわち、第1範囲の上限は、第2範囲の下限よりも小さく設定されている。
【0044】
そして、受信周波数が第1範囲内である場合、その受信波が、第1周波数f1で送信された探査波の反射波であると判定する。同様に、受信周波数が第2範囲内である場合、その受信波が、第2周波数f2で送信された探査波の反射波であると判定する。また、受信周波数が第1範囲内でなく第2範囲内でもない場合、受信波を混信波と判定する。すなわち、受信周波数が第1範囲の上限よりも大きく且つ第2範囲の下限よりも小さい場合においても、混信波であると判定する。なお、受信周波数が第1範囲の上限よりも大きく且つ第2範囲の下限よりも小さい場合には、受信周波数は共振周波数f0により近い値を取る。この場合には、判定部103による1度の判定のみで混信波であると確定せず、複数回混信波であるとの判定結果を得ることで、混信波であると確定してもよい。すなわち、受信周波数が第1範囲の上限よりも大きく且つ第2範囲の下限よりも小さい場合には、判定を制限するものとしてもよい。
【0045】
この判定結果は、制御部102へ入力される。制御部102では、受信波がいずれかの超音波センサ10,10aの探査波の反射波であるとの判定結果を受信すれば、その受信波に対応する距離を用いた各種処理、すなわち、物体との衝突を回避する制御等を行う。この処理は周知の処理であるため、具体的な説明を省略する。また、受信波が混信波であると判定すれば、その受信波に基づく距離は、破棄する。
【0046】
以上のように構成される物体検知システムにおいて実行される一連の処理について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず、ステップS101にて、送信周波数を決定する。すなわち、第1周波数f1の探査波を送信するか第2周波数f2の探査波を送信するかを決定する。ステップS101にて送信周波数が決定されれば、続くステップS102にて、決定された送信周波数の探査波が送信される。
【0048】
探査波が送信されれば、続くステップS103にて受信波を取得したか否かを判定する。すなわち、受信波の振幅を示す電圧が閾値よりも大きくなったか否かを判定する。ステップS103にて否定判定すれば、すなわち、受信波の振幅を示す電圧が閾値以下であれば、ステップS103の判定を繰り返す。一方、ステップS103にて肯定判定すれば、ステップS104に進み、受信波の位相回転量を算出する。位相回転量が算出されれば、ステップS105に進み、位相回転量から受信周波数を算出する。
【0049】
続くステップS106にて、受信周波数が送信周波数を含む所定範囲内であるか否かを判定する。すなわち、超音波センサ10において、受信波が自己の探査波の反射波であるか否かを判定する場合には、送信周波数が第1周波数f1であれば、受信周波数が第1周波数f1を含む第1範囲内であるか否かを判定し、送信周波数が第2周波数f2であれば、受信周波数が第2周波数f2を含む第2範囲内であるか否かを判定する。超音波センサ10において、受信波が他の超音波センサ10aの探査波の反射波であるか否かの判定についても、同様に行われる。
【0050】
ステップS106にて肯定判定すれば、すなわち受信周波数が送信周波数を含む所定範囲内であれば、ステップS107へ進み、受信波が反射波であると判定する。ステップS107の判定がなされれば、受信波に基づく距離を用いて各種制御を行う。
【0051】
一方、ステップS106にて否定判定すれば、すなわち受信周波数が送信周波数を含む所定範囲外であれば、ステップS108へ進み、受信波が混信波であると判定する。この場合には、その受信波に基づく距離に関する情報等を破棄し、一連の処理を終了する。
【0052】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、以下の効果を有する。
【0053】
・複数の超音波センサ10,10aを備える物体検知システムにおいて、各超音波センサ10,10aの共振特性を共通化させているため、システム全体のコストの低減が可能である。このような物体検知システムにおいて、超音波センサ10,10aから探査波を送信する場合、一般的には共振周波数f0と一致する送信周波数の探査波のみを送信する。ところが、共振特性を共通化した場合、受信周波数を取得したとしても、受信波がいずれの超音波センサ10,10aから送信された反射波に基づくものであるかの判定が困難である。この点、本実施形態では、互いに送信周波数が異なる複数の探査波のうち、いずれかの探査波を送信するものとしているため、受信周波数を取得することで、その受信波がいずれの超音波センサ10,10aから送信された探査波の反射波であるかを判定することができる。したがって、超音波センサ10,10aの構造の共通化によるコストの低減を実現しつつ、反射波がいずれの超音波センサ10,10aから送信された探査波に基づくものであるかを適切に判定することができる。
【0054】
・各超音波センサ10,10aにおいて、共振周波数f0と共通する送信周波数の探査波を送信する場合、いずれの超音波センサ10,10aから送信された探査波の反射波であるかを判定するためには、いずれかの超音波センサ10,10aから探査波が送信されてから所定の受信待機期間を経たあとに、他の超音波センサ10,10aから探査波を送信する。この場合には、送受信周期が長くなり、物体の検知精度が低下する。この点、本実施形態では、送信周波数が互いに異なる探査波を送信しているため、複数の送受信部14,14aから同時に探査波を送信したとしても、受信波の周波数を取得することで、その受信波がいずれの探査波の反射波であるかを判定することができる。したがって、送受信周期を短くすることができ、物体の検知精度を向上させることができる。
【0055】
・第1周波数f1及び第2周波数f2が共振周波数f0に近づくほど、受信波を検出するうえでの感度は向上する。ところが、探査波を反射した物体が移動しているものである場合等には、ドップラ効果により、反射波の周波数は探査波の周波数と異なるものとなる。これにより、第1周波数f1及び第2周波数f2が共振周波数f0に近づくほど、受信波の周波数を検出した際に、いずれの周波数の探査波が反射されたものであるかの判定が困難となる。この点、本実施形態では、第1周波数f1を共振周波数f0よりも小さい値とし、第2周波数f2を共振周波数f0よりも大きい値としているため、第1周波数f1及び第2周波数f2と共振周波数f0との差を小さくすることと、第1周波数f1と第2周波数f2との差を大きくすることとを両立することができる。これにより、受信波を検出する上での感度を向上させつつ、その受信波がいずれの周波数の探査波が反射されたものであるかの判定を精度よく行うことができる。
【0056】
・第1周波数f1及び第2周波数f2が共振周波数f0に近づくほど、受信波を検出するうえでの感度は向上する。ところが、探査波を反射した物体が移動しているものである場合等には、ドップラ効果により、反射波の周波数は探査波の周波数と異なるものとなる。これにより、第1周波数f1及び第2周波数f2が共振周波数f0に近づくほど、受信波の周波数を検出した際に、いずれの周波数の探査波が反射されたものであるかの判定が困難となる。本実施形態では、第1周波数f1と共振周波数f0との差、及び、第2周波数f2と共振周波数f0との差を、いずれも、3%としている。これにより、受信波の検出するうえでの感度を担保しつつ、いずれの周波数の探査波の反射波であるかの判定を適切に行うことが可能となる。
【0057】
・第1周波数f1及び第2周波数f2について、それぞれ、共振周波数f0との差を約3%としているため、第1周波数f1及び第2周波数f2を区別するうえで、周波数を精度よく検出する必要が生ずる。したがって、受信波のゼロクロス点間の時間の計測により周波数を求める場合、及び、高速フーリエ変換(FFT)により周波数を求める場合のいずれにおいても、サンプリング周期をより短くする必要がある。具体的には、周波数の10倍以上の周波数でサンプリングを行う必要がある。すなわち、サンプリング周期を短くして周波数の検出精度を向上させるうえで、装置の大型化、高コスト化が生じる。この点、受信波の位相回転量から周波数を求める場合、サンプリング周波数は、想定される受信波の周波数の2〜4倍程度でよい。したがって、本実施形態では受信波の位相回転量から周波数を求めているため、装置の大型化、高コスト化を抑制しつつ、周波数の検出精度を向上させることができる。
【0058】
・受信波の周波数は、ドップラ効果により、探査波の周波数からのずれが生ずる場合がある。すなわち、探査波の送信周波数が第1周波数f1であっても、反射波の周波数が第1周波数f1よりも大きくなる場合もあるし、探査波の送信周波数が第2周波数f2であっても、反射波の周波数が第2周波数f2よりも小さくなる場合もある。これは、受信波の周波数が第1周波数f1と第2周波数f2との間の所定範囲である場合に、受信波の周波数がいずれの周波数の探査波に基づく反射波であるかの判定が困難であることを意味する。本実施形態では、受信波の周波数が第1周波数f1よりも大きく且つ第2周波数f2よりも小さい所定範囲内である場合に、周波数に基づく判定を制限しているため、受信波の誤判定に起因する物体の位置の誤検知を抑制することができる。
【0059】
<第2実施形態>
本実施形態では、物体検知システムに含まれる超音波センサの配置について具体化している。
図7を参照して、物体検知システムに含まれる超音波センサの配置について説明する。
【0060】
図7に示すように、車両の前方には、左側から順に、物体検知装置である第1〜第4前方センサ31〜34が互いに間隔を開けて(隣り合って)設けられている。車両の後方には、左側から順に、物体検知装置である第1〜第4後方センサ41〜44が互いに間隔を開けて(隣り合って)設けられている。車両の左側方には、前側から順に、物体検知装置である第1、2左側方センサ51,52が間隔を開けて(隣り合って)設けられており、車両の右側方には、前側から順に、物体検知装置である第1、2右側方センサ61,62が間隔を開けて(隣り合って)設けられている。また、第1前方センサ31と第1左側方センサ51とは隣り合って設けられている。第4前方センサ34と第1右側方センサ61とは隣り合って設けられている。第1後方センサ41と第2左側方センサ52とは隣り合って設けられている。第4後方センサ44と第2右側方センサ62とは隣り合って設けられている。
【0061】
第1〜第4前方センサ31〜34、第1左側方センサ51、及び第1右側方センサ61は、車両のフロントバンパに取り付けられており、第1〜第4後方センサ41〜44、第2左側方センサ52、及び第2右側方センサ62は、車両のリアバンパに取り付けられている。これら第1〜第4前方センサ31〜34、第1〜第4後方センサ41〜44、第1、2左側方センサ51,52、第1、2右側方センサ61,62の具体的な構成は、第1実施形態における超音波センサ10,10aと同じ構成である。すなわち、各センサ31〜34,41〜44,51,52,61,62は、共通の構成である。
【0062】
図7では、第1周波数f1で探査波を送信するセンサを三角で図示しており、第2周波数f2で探査波を送信するセンサを丸で図示している。すなわち、第1〜第4前方センサ31〜34及び第1〜第4後方センサ41〜44は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第1、2左側方センサ51,52、及び第1、2右側方センサ61,62は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。
【0063】
以上の構成の物体検知システムにおいて、間隔を開けて隣り合うセンサどうしでは、自己で送信した探査波の反射波に加えて、他のセンサが送信した探査波の反射波も受信可能である。
【0064】
以下の説明において、車両の左前方のセンサ群、すなわち、第1前方センサ31、第2前方センサ32、及び第1左側方センサ51について説明する。車両の右前方のセンサ群、左後方のセンサ群、及び、右後方のセンサ群については、車両の左前方のセンサ群と同等の機能を有するもので、具体的な説明は省略する。
【0065】
車両の左前方のセンサ群において、第1前方センサ31は、自己が送信した探査波の反射波に加えて、第2前方センサ32の探査波に基づく反射波を受信可能であり、且つ、第1左側方センサ51の探査波に基づく反射波を受信可能である。また、第1左側方センサ51は、自己が送信した探査波の反射波に加えて、第1前方センサ31の探査波の反射波を受信可能である。
【0066】
上述した通り、第1前方センサ31及び第2前方センサ32は、第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第1左側方センサ51は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。すなわち、車両において隣り合って設けられた第1前方センサ31と第1左側方センサ51とは、互いに周波数(送信特性)が異なる探査波を送信する。
【0067】
このように探査波の送信周波数が設定されているため、第2前方センサ32、及び第1左側方センサ51が探査波を送信した場合には、第1前方センサ31に入射した反射波がいずれのセンサから送信された探査波に基づくものであるのか判定することができる。
【0068】
また、第1前方センサ31及び第1左側方センサ51が探査波を送信した場合には、第1前方センサ31に入射した反射波がいずれのセンサから送信された探査波に基づくものであるのか判定することができ、且つ、第1左側方センサ51に入射した反射波がいずれのセンサから送信された探査波に基づくものであるのか判定することができる。
【0069】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0070】
<第3実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、各センサにおける送信周波数の一部を第2実施形態と異ならせている。
図8を参照して、本実施形態に係る物体検知システムについて説明する。
【0071】
図8では、第2実施形態と同様に、第1周波数f1で探査波を送信するセンサを三角で図示しており、第2周波数f2で探査波を送信するセンサを丸で図示している。すなわち、第1〜第4前方センサ31〜34、第2左側方センサ52、及び第2右側方センサ62は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第1〜第4後方センサ41〜44、第1左側方センサ51、及び第1右側方センサ61は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。
【0072】
以上のように構成される物体検知システムにおいて、第1左側方センサ51は隣り合う第2左側方センサ52が送信した探査波の反射波を受信可能であり、第2左側方センサ52は隣り合う第1左側方センサ51が送信した探査波の反射波を受信可能である。第1右側方センサ61は隣り合う第2右側方センサ62が送信した探査波の反射波を受信可能であり、第2右側方センサ62は隣り合う第1右側方センサ61が送信した探査波の反射波を受信可能である。この点、第1左側方センサ51の送信周波数と第2左側方センサ52の送信周波数とを異ならせているため、第1左側方センサ51、及び第2左側方センサ52のそれぞれにおいて、受信波がいずれのセンサの探査波の反射波であるかを判定することができる。同様に、第1右側方センサ61の送信周波数と第2右側方センサ62の送信周波数とを異ならせているため、第1右側方センサ61、及び第2右側方センサ62のそれぞれにおいて、受信波がいずれのセンサの探査波の反射波であるかを判定することができる。
【0073】
なお、車両の左前方のセンサ群、右前方のセンサ群、左後方のセンサ群、及び、右後方のセンサ群のそれぞれにおいては、第2実施形態と同等の機能であるため、具体的な説明を省略する。
【0074】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0075】
また、左側方センサが3つ以上設けられており、それらにおいて隣り合う探査波の周波数(送信特性)が互いに異なっていてもよい。すなわち、車両の左側方に少なくとも2つのセンサ(物体検知装置)が隣り合って設けられており、前記少なくとも2つのセンサにおいて隣り合うセンサの送信特性が互いに異なっていてもよい。右側方センサについても同様である。
【0076】
<第4実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、各センサにおける送信周波数の一部を第2実施形態と異ならせている。
図9を参照して、本実施形態に係る物体検知システムについて説明する。
【0077】
図9では、第2実施形態と同様に、第1周波数f1で探査波を送信するセンサを三角で図示しており、第2周波数f2で探査波を送信するセンサを丸で図示している。すなわち、第1、2前方センサ31,32、第3、4後方センサ43,44、第2左側方センサ52、及び第1右側方センサ61は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第3、4前方センサ33,34、第1、2後方センサ41,42、第1左側方センサ51、及び第2右側方センサ62は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。
【0078】
以下の説明において、車両の前方のセンサ群、すなわち、第1〜4前方センサ31〜34について説明する。車両の後方のセンサ群、すなわち第1〜4後方センサ41〜44については、車両の前方のセンサ群と同等の機能を有するもので、具体的な説明は省略する。
【0079】
以上のように構成される物体検知システムにおいて、第2前方センサ32は、自己が送信した探査波の反射波に加えて、隣り合う第1前方センサ31の探査波に基づく反射波を受信可能であり、且つ、隣り合う第3前方センサ33の探査波に基づく反射波を受信可能である。また、第3前方センサ33は、自己が送信した探査波の反射波に加えて、隣り合う第2前方センサ32の探査波の反射波を受信可能であり、且つ、隣り合う第4前方センサ34の探査波の反射波を受信可能である。
【0080】
上述した通り、第1、2前方センサ31,32は、第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第3、4前方センサ33,34は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。
【0081】
このように探査波の送信周波数が設定されているため、第1前方センサ31、及び第3前方センサ33が探査波を送信した場合には、第2前方センサ32に入射した反射波がいずれのセンサから送信された探査波に基づくものであるのか判定することができる。同様に、第2前方センサ32、及び第4前方センサ34が探査波を送信した場合には、第3前方センサ33に入射した反射波がいずれのセンサから送信された探査波に基づくものであるのか判定することができる。
【0082】
また、第2前方センサ32及び第3前方センサ33が探査波を送信した場合には、第2前方センサ32、第3前方センサ33のそれぞれにおいて、入射した反射波がいずれのセンサから送信された探査波に基づくものであるのか判定することができる。
【0083】
なお、車両の左前方のセンサ群、右前方のセンサ群、左後方のセンサ群、及び、右後方のセンサ群のそれぞれにおいては、第2実施形態と同等の機能であるため、具体的な説明を省略する。
【0084】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0085】
また、第1〜4前方センサ31〜34の全てにおいて、隣り合う探査波の周波数(送信特性)が互いに異なっていもよい。すなわち、車両の前端部に少なくとも2つのセンサ(物体検知装置)が隣り合って設けられており、前記少なくとも2つのセンサにおいて隣り合うセンサの送信特性が互いに異なっていてもよい。車両の後端部に設けられるセンサについても同様である。
【0086】
<第5実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、処理の一部を第2実施形態と異ならせている。本実施形態における処理について、
図10を参照して説明する。
【0087】
本実施形態では、送信周波数を第2実施形態と同様に設定した第1設定(
図10(a)に図示)と、送信周波数を第2実施形態と異ならせた第2設定(
図10(b)に図示)とを切り替えて用いる。
【0088】
第2設定では、
図10(b)に図示するように、第1設定において第1周波数f1で探査波を送信するセンサについては、第2周波数f2で探査波を送信するものとし、第1設定において第2周波数f2で探査波を送信するセンサについては、第1周波数f1で探査波を送信するものとしている。すなわち、第1〜第4前方センサ31〜34及び第1〜第4後方センサ41〜44は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されており、第1、2左側方センサ51,52、及び第1、2右側方センサ61,62は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されている。
【0089】
第1設定と第2設定との切り替えは、所定期間ごとに行われる。この場合には、各センサでそれぞれ1回ずつ送受信制御が行われることを所定期間として設定してもよいし、各センサでそれぞれ複数回の送受信制御が行われることを所定期間として設定してもよい。
【0090】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、以下の効果を奏する。
【0091】
・物体検知システムの近傍に、同じ送信周波数で探査波を送信する他の超音波センサが存在する場合、他の超音波センサから送信された探査波を受信し、自己の探査波の反射波であると誤認識する可能性がある。この点、本実施形態では、送信周波数を所定期間ごとに切り替えるものとしているため、探査波の送信周波数を、他の超音波センサの探査波の送信周波数と異なるものとすることができ、混信を抑制することができる。
【0092】
なお、自車が第1周波数f1で送信し、他車も第1周波数f1で送信するような場合には、自車の送信周波数を第2周波数f2に切り替えたら、混信が生じていることを認識できる。この場合には、変更後の送信周波数から変更前の送信周波数へと戻さず、変更後の送信周波数での物体検知を継続するものとしてもよい。こうすることで、他車から送信された探査波及び反射波を混信波として除外しつつ、物体の検知を行うことができる。
【0093】
<第6実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、各センサにおける送信周波数の一部を第2実施形態と異ならせている。
図11を参照して、本実施形態に係る物体検知システムについて説明する。
【0094】
本実施形態では、第1〜5実施形態と同様に、第1周波数f1、第2周波数f2を用いるとともに、さらに第3周波数f3も用いるものとしている。この第3周波数f3は、第1周波数f1よりも小さくてもよいし、第2周波数f2よりも大きくてもよい。また、第1周波数f1よりも大きく且つ第2周波数f2よりも小さくてもよく、この場合には、第3周波数f3を共振周波数f0と等しくしてもよい。
【0095】
図11では、第1周波数f1で探査波を送信するセンサを三角で図示しており、第2周波数f2で探査波を送信するセンサを丸で図示しており、第3周波数f3で探査波を送信するセンサを四角で図示している。すなわち、第1〜第4前方センサ31〜34及び第1〜第4後方センサ41〜44は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第1、2左側方センサ51,52は第3周波数f3で探査波を送信するものとして設定されており、第1、2右側方センサ61,62は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。
【0096】
このように送信周波数を設定することで、本実施形態に係る物体検知システムは、第2実施形態に係る物体検知システムが奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0097】
・本実施形態と同等の構成の物体検知システムを備える車両が並走する場合、一方の車両の左側方と他方の車両の右側方とが近接することとなる。このとき、車両どうしの距離が近いほど、他の車両のセンサから送信される探査波を受信しやすくなる。本実施形態では、第1、2左側方センサ51,52の送信周波数と、第1、2右側方センサ61,62の送信周波数を異なるものとしているため、車両が横並びとなり、他の車両に設けられた物体検知システムの探査波を受信した場合に、判定部103は、受信波が、他の物体検知システムの探査波等に起因するものであると判定し、自己の距離計測には用いないものとすることができる。したがって、本実施形態と同等の構成の物体検知システムを備える車両が横並びになった場合における混信を、抑制することができる。
【0098】
また、第1〜第4前方センサ31〜34を省略したり、第1〜第4後方センサ41〜44を省略したり、第1〜第4前方センサ31〜34及び第1〜第4後方センサ41〜44を省略したりしてもよい。
【0099】
<第7実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、各センサにおける送信周波数の一部を第2実施形態と異ならせている。
図12を参照して、本実施形態に係る物体検知システムについて説明する。
【0100】
本実施形態では、第6実施形態と同様に、第1周波数f1、第2周波数f2及び第3周波数f3を用いるものとしている。
【0101】
図12では、第1周波数f1で探査波を送信するセンサを三角で図示しており、第2周波数f2で探査波を送信するセンサを丸で図示しており、第3周波数f3で探査波を送信するセンサを四角で図示している。すなわち、第1〜第4前方センサ31〜34は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されており、第1〜第4後方センサ41〜44は第3周波数f3で探査波を送信するものとして設定されており、第1、2左側方センサ51,52及び第1、2右側方センサ61,62は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されている。
【0102】
このように送信周波数を設定することで、本実施形態に係る物体検知システムは、第2実施形態に係る物体検知システムが奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0103】
・本実施形態と同等の構成の物体検知システムを備える車両が縦並びになった場合、例えば、渋滞している道路を走行している場合、一方の車両の前端部と他方の車両の後端部とが近接することとなる。このとき、車両どうしの距離が近いほど、他の車両の物体検知システムから送信される探査波を受信しやすくなる。本実施形態では、前方センサ31〜34の送信周波数と、後方センサ41〜44の送信周波数を異なるものとしているため、車両が縦並びとなり、他の車両に設けられた物体検知システムの探査波を受信した場合に、判定部103は、受信波が、他の物体検知システムの探査波等に起因するものであると判定し、自己の距離計測には用いないものとすることができる。したがって、本実施形態と同等の構成の物体検知システムを備える車両が縦並びになった場合における混信を、抑制することができる。
【0104】
<第8実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、各センサにおける送信周波数の一部を第2実施形態と異ならせている。
図13を参照して、本実施形態に係る物体検知システムについて説明する。
【0105】
本実施形態では、第6、7実施形態と同様に、第1周波数f1、第2周波数f2及び第3周波数f3を用いるものとしている。
【0106】
図13では、第1周波数f1で探査波を送信するセンサを三角で図示しており、第2周波数f2で探査波を送信するセンサを丸で図示しており、第3周波数f3で探査波を送信するセンサを四角で図示している。すなわち、第1前方センサ31、第4前方センサ34、第1後方センサ41、第4後方センサ44は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第3前方センサ33、第2後方センサ42、第1左側方センサ51、第2右側方センサ62は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されており、第2前方センサ32、第3後方センサ43、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61は第3周波数f3で探査波を送信するものとしている。
【0107】
このように送信周波数を設定することで、いずれのセンサにおいても、自己の送信周波数及び両隣の送信周波数がいずれも異なるものとなる。したがって、いずれかのセンサ及びその両隣のセンサから探査波を送信した場合においても、受信波がいずれのセンサの探査波の反射波であるかを判定することができる。これは、仮にすべてのセンサから探査波をほぼ同時に送信したとしても、各センサにおいて受信波がいずれのセンサの探査波の反射波であるかを判定できることを意味している。
【0108】
なお、
図14に示すように、第1前方センサ31、第3前方センサ33、第1右側方センサ61、第2後方センサ42、第4後方センサ44、第2左側方センサ52は第1周波数f1(送信特性)で探査波を送信するものとして設定されており、第2前方センサ32、第4前方センサ34、第1後方センサ41、第3後方センサ43、第1左側方センサ51、第2右側方センサ62は第2周波数f2(送信特性)で探査波を送信するものとして設定されていてもよい。その構成において、第2前方センサ32、第3前方センサ33、第2後方センサ42、第3後方センサ43を省略したり、第1左側方センサ51、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61、第2右側方センサ62を省略したりしてもよい。すなわち、車両の外周縁部に少なくとも8つのセンサ(物体検知装置)が隣り合って設けられており、前記少なくとも8つのセンサにおいて隣り合うセンサの送信特性が互いに異なっていてもよい。
【0109】
<第9実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、処理の一部を第2実施形態と異ならせている。本実施形態における処理について、
図15を参照して説明する。
【0110】
本実施形態では、第1設定(
図15(a)に図示)と、第2設定(
図15(b)に図示)とを切り替えて用いる。
【0111】
第1設定では、
図15(a)に図示するように、第2前方センサ32、第3後方センサ43、第2左側方センサ52、及び第1右側方センサ61は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第3前方センサ33、第2後方センサ42、第1左側方センサ51、及び第2右側方センサ62は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。破線で示した第1前方センサ31、第4前方センサ34、第1後方センサ41、第4後方センサ44は探査波を送信しない。
【0112】
第2設定では、
図15(b)に図示するように、第1設定において探査波を送信するセンサについては探査波を送信しないものとし、第1設定において探査波を送信しないセンサについては探査波を送信するものとしている。すなわち、第4前方センサ34及び第1後方センサ41は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第1前方センサ31及び第4後方センサ44は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。破線で示した第2前方センサ32、第3前方センサ33、第2後方センサ42、第3後方センサ43、第1左側方センサ51、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61、及び第2右側方センサ62は探査波を送信しない。
【0113】
第1設定と第2設定との切り替えは、所定期間ごとに行われる。この場合には、各センサでそれぞれ1回ずつ送受信制御が行われることを所定期間として設定してもよいし、各センサでそれぞれ複数回の送受信制御が行われることを所定期間として設定してもよい。
【0114】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、以下の効果を奏する。
【0115】
・例えば、車両の左前方のセンサ群では、互いに送信特性が異なる第2前方センサ32及び第1左側方センサ51が間隔を開けて設けられている。このため、第1前方センサ31が取得した受信特性に基づいて、その受信波が第2前方センサ32及び第1左側方センサ51のうちいずれの送信特性の探査波の反射波であるかを判定することができる。なお、車両の右前方のセンサ群、左後方のセンサ群、及び右後方のセンサ群でも同様である。
【0116】
・送信周波数を所定期間ごとに切り替えるものとしているため、探査波の送信周波数を、他の超音波センサの探査波の送信周波数と異なるものとすることができ、混信を抑制することができる。
【0117】
・第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0118】
<第10実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、処理の一部を第2実施形態と異ならせている。本実施形態における処理について、
図16を参照して説明する。
【0119】
本実施形態では、第1設定(
図16(a)に図示)と、第2設定(
図16(b)に図示)とを切り替えて用いる。
【0120】
第1設定では、
図16(a)に図示するように、第9実施形態の
図15(a)と同様の設定にしている。
【0121】
第2設定では、
図16(b)に図示するように、第9実施形態の
図15(b)と同様の設定に加えて、第1右側方センサ61は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されており、第2右側方センサ62は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されている。すなわち、第1左側方センサ51、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61、及び第2右側方センサ62は、常に探査を送信している。
【0122】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、第9実施形態に準ずる効果を奏する。さらに、第1左側方センサ51、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61、及び第2右側方センサ62は、常に探査を送信しているため、側方の物体を常に検知することができる。
【0123】
<第11実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、処理の一部を第2実施形態と異ならせている。本実施形態における処理について、
図17を参照して説明する。
【0124】
本実施形態では、第1設定(
図17(a)に図示)と、第2設定(
図17(b)に図示)とを切り替えて用いる。
【0125】
第1設定では、
図17(a)に図示するように、第1前方センサ31、第4後方センサ44、第2左側方センサ52、及び第1右側方センサ61は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第3前方センサ33、第2後方センサ42は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。破線で示した第2前方センサ32、第4前方センサ34、第1後方センサ41、第3後方センサ43、第1左側方センサ51、及び第2右側方センサ62は探査波を送信しない。
【0126】
第2設定では、
図17(b)に図示するように、第1設定において探査波を送信するセンサについては探査波を送信しないものとし、第1設定において探査波を送信しないセンサについては探査波を送信するものとしている。すなわち、第2前方センサ32及び第2右側方センサ62は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されており、第4前方センサ34及び第1左側方センサ51は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。破線で示した第1前方センサ31、第3前方センサ33、第2後方センサ42、第4後方センサ44、第2左側方センサ52、及び第1右側方センサ61は探査波を送信しない。
【0127】
第1設定と第2設定との切り替えは、所定期間ごとに行われる。この場合には、各センサでそれぞれ1回ずつ送受信制御が行われることを所定期間として設定してもよいし、各センサでそれぞれ複数回の送受信制御が行われることを所定期間として設定してもよい。
【0128】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、以下の効果を奏する。
【0129】
・例えば、車両の前側のセンサ群では、互いに送信特性が異なる第2前方センサ32及び第1左側方センサ51が間隔を開けて設けられている。このため、第1前方センサ31が取得した受信特性に基づいて、その受信波が第2前方センサ32及び第1左側方センサ51のうちいずれの送信特性の探査波の反射波であるかを判定することができる。第3前方センサ33が取得した受信特性に基づいて、その受信波が第2前方センサ32及び第4前方センサ34のうちいずれの送信特性の探査波の反射波であるかを判定することができる。なお、車両の後側のセンサ群でも同様である。
【0130】
・送信周波数を所定期間ごとに切り替えるものとしているため、探査波の送信周波数を、他の超音波センサの探査波の送信周波数と異なるものとすることができ、混信を抑制することができる。
【0131】
・第1実施形態に準ずる効果を奏する。
【0132】
<第12実施形態>
本実施形態では、物体検知システム全体の構成は第2実施形態と共通しており、処理の一部を第2実施形態と異ならせている。本実施形態における処理について、
図18を参照して説明する。
【0133】
本実施形態では、第1設定(
図18(a)に図示)と、第2設定(
図18(b)に図示)とを切り替えて用いる。
【0134】
第1設定では、
図18(a)に図示するように、第11実施形態の
図17(a)と同様の設定に加えて、第1左側方センサ51及び第2右側方センサ62は第2周波数f2で探査波を送信するものとして設定されている。
【0135】
第2設定では、
図18(b)に図示するように、第11実施形態の
図17(b)と同様の設定に加えて、第2左側方センサ52及び第1右側方センサ61は第1周波数f1で探査波を送信するものとして設定されている。すなわち、第1左側方センサ51、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61、及び第2右側方センサ62は、常に探査を送信している。
【0136】
上記構成により、本実施形態に係る物体検知システムは、第11実施形態に準ずる効果を奏する。さらに、第1左側方センサ51、第2左側方センサ52、第1右側方センサ61、及び第2右側方センサ62は、常に探査を送信しているため、側方の物体を常に検知することができる。
【0137】
<変形例>
・各実施形態では、受信波の周波数によっては位相が360°以上回転することもあるため位相回転量という文言を用いているが、位相差と称してもよい。
【0138】
・実施形態では、位相回転量を求めるうえで共振周波数f0を用いて直交検波を行うものとしたが、第1周波数f1又は第2周波数f2を用いて直交検波を行うものとしてもよい。若しくは、第1周波数f1を用いた直交検波、及び第2周波数f2を用いた直交検波を共に行うものとしてもよい。
【0139】
・第1実施形態において、第1周波数f1及び第2周波数f2と共振周波数f0との差を、共振周波数f0の3%としたが、第1周波数f1及び第2周波数f2と共振周波数f0との差をこれよりも大きくしてもよいし小さくしてもよい。ただし、第1周波数f1及び第2周波数f2を共振周波数f0に近づけるほど、第1周波数f1と第2周波数f2との差が小さくなるため、ドップラ効果で反射波の周波数が変化した場合には、いずれの周波数で送信された探査波の反射波であるかの判定が困難となる。また、第1周波数f1及び第2周波数f2を共振周波数f0から遠ざけるほど、反射波の取得が困難になる。したがって、第1周波数f1及び第2周波数f2と共振周波数f0との差は、共振周波数f0の2〜5%であることが好ましい。
【0140】
・第1周波数f1と共振周波数f0との差、及び、第2周波数f2と共振周波数f0との差は、等しくなくてもよい。
【0141】
・第1周波数f1及び第2周波数f2が、共に、共振周波数f0よりも大きくてもよい。また、第1周波数f1及び第2周波数f2が、共に、共振周波数f0よりも小さくてもよい。
【0142】
・第1周波数f1及び第2周波数f2の一方が共振周波数f0であってもよい。
【0143】
・実施形態では、送信周波数として第1周波数f1及び第2周波数f2を用いるもの、及び、第1〜3周波数f1〜f3を用いるものを例示したが、4種類以上の送信周波数を用いるものとしてもよい。
【0144】
・実施形態では、判定部103をECU100に設けるものとしたが、判定部103を超音波センサ10,10aに設けてもよい。また、超音波センサ10,10aの機能の一部をECU100に設けるものとしてもよい。
【0145】
・送受信部14の具体的な構造及び形状については、
図2で示したものに限られず、他の構造及び形状としてもよい。
【0146】
・実施形態では、共振特性として共振周波数f0を用いており、第1特性として第1周波数f1を用いており、第2特性として第2周波数f2を用いているが、周波数の代わりに周波数の逆数である周期を用いるものとしてもよい。同様に、送信特性として送信周波数を用いる代わりに周期を用いるものとしてもよいし、受信特性として受信周波数を用いる代わりに、周期を用いるものとしてもよい。
【0147】
また、探査波の送信特性として、周波数及び周期に限らず、位相や振幅を異ならせることもできる。例えば、変調部が、複数のパルスからなるパルス列を信号生成部から取得し、複数の符号の組合せで構成される符号系列に従って、パルス信号のパルス列ごとに位相を変更する。位相算出部は、復調部から受信波の復調に用いる信号を取得し、受信波の復調を行って受信波の位相を算出する。そして、判定部は、取得した位相と探査波の位相とを比較し、取得した位相と探査波の位相との差が予め定められた所定値以内である場合に、受信波が探査波の反射波であると判定する。また、探査波の位相を切り替えることに代えて、オフ期間を設けるものとしてもよい。この場合には、オフ期間を設けることで、振幅の包絡線のピークが複数生ずることとなる。振幅の包絡線のピークが複数生ずれば、反射波の振幅の包絡線についても複数のピークが生ずることとなるため、受信波が探査波の反射波であるか否かを判定することができる。要するに、複数のセンサ(物体検知装置)は、互いに、送受信部14、14aが送信可能な探査波の周波数に共通範囲を有しており、共通範囲内の周波数の探査波に基づいて、周波数、周期、位相、及び振幅等の送信特性が異なる複数の探査波のうち、いずれかの探査波を送受信部14、14aから送信させる送信制御部12,12aを備えていればよい。
【0148】
・第5実施形態において、送信周波数を切り替える処理を行ううえで、切替前と切替後の周波数は第5実施形態で示したものに限られない。
【0149】
・実施形態では、物体検知システムを車両に搭載するものとしたが、搭載対象は車両に限られない。