(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンナノチューブアレイシートの前記焼結体と接合する端部は、前記焼結体に埋め込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ接合シート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のカーボンナノチューブ接合シート(以下、CNT接合シートとする。)は、無機物の焼結体から形成される固定シートと、固定シートの焼結体と接合しているカーボンナノチューブアレイシートと、を備えている。カーボンナノチューブアレイシートは、固定シートに接合されていればよく、例えば、固定シートの表面および裏面の少なくともいずれか一方に接合されている。
【0035】
以下に、本発明のCNT接合シートの第1実施形態としての熱伝導性シート1について説明する。
1.第1実施形態
(1)熱伝導性シートの構成
熱伝導性シート1(CNT接合シートの一例)は、
図1Aに示すように、固定シート2と、2つのカーボンナノチューブアレイシート3(以下、CNTアレイシート3とする。)とを備えている。
【0036】
固定シート2は、シート形状(平板形状)を有しており、具体的には、固定シート2は、所定の厚みを有し、その厚み方向と直交する面方向(縦方向および横方向)に延びており、平坦な表面2A(厚み方向一方面)および平坦な裏面2B(厚み方向他方面)を有している。
【0037】
固定シート2の厚みは、例えば、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、例えば、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0038】
固定シート2は、無機物の焼結体から形成されている。具体的には、固定シート2は、無機物の粒子が、焼結により互いに接合して形成されるセラミックスシートである。なお、
図1Aでは、無機物の焼結体を焼結体4として示す。
【0039】
無機物としては、例えば、金属(例えば、チタン、ケイ素、タングステンなど)、無機酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなど)、無機窒化物(例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素など)、無機炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステンなど)が挙げられる。このような無機物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
このような無機物は、熱伝導性シート1の用途に応じて適宜選択される。なお、第1実施形態では、無機物が無機炭化物である場合について詳述する。無機炭化物として、好ましくは、ケイ素および/またはチタンを含む無機炭化物、つまり、炭化ケイ素および炭化チタンが挙げられる。
【0041】
固定シート2は、電気絶縁性を有しており、固定シート2の厚み方向の電気抵抗(導電抵抗)は、25℃において、例えば、10
3Ω以上であることが好ましく、10
4Ω以上であることがより好ましく、例えば、10
8Ω以下であることが好ましい。
【0042】
また、固定シート2の熱伝導率は、厚み方向において、例えば、2W/(m・K)以上であることが好ましく、5W/(m・K)以上であることがより好ましい。
【0043】
CNTアレイシート3は、
図3Cに示すように、成長基板15(後述;
図3B参照)から剥離されており、複数のカーボンナノチューブ6(以下、CNT6とする。)からシート形状に形成されるカーボンナノチューブ集合体である。
【0044】
より詳しくは、CNTアレイシート3において、複数のCNT6は、CNTアレイシート3の厚み方向に配向されており、厚み方向に互いに連続することなく、面方向(縦方向および横方向)に互いに連続してシート形状となるように配列されている。
【0045】
つまり、カーボンナノチューブアレイシート3(CNTアレイシート3)は、所定方向に配向される複数のカーボンナノチューブ6(CNT6)が、カーボンナノチューブ6の配向方向と直交する方向に互いに連続してシート形状となるように形成されている。
【0046】
これによって、CNTアレイシート3は、成長基板15(後述)から剥離された状態で、複数のCNT6が面方向に互いに接触するように、形状を保持している。また、CNTアレイシート3は、可撓性を有している。なお、複数のCNT6のうち、互いに隣接するCNT6間には、ファンデルワールス力が作用している。
【0047】
CNT6は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。複数のCNT6は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれか1種のみを含んでいてもよく、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれか2種以上を含んでいてもよい。
【0048】
CNT6の平均外径は、例えば、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、例えば、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがとりわけ好ましい。
【0049】
CNT6の平均長さ(平均配向方向の寸法)は、例えば、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、例えば、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがとりわけ好ましい。なお、CNTの平均外径および平均長さは、例えば、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
【0050】
CNTアレイシート3において、複数のCNT6の平均嵩密度は、例えば、10mg/cm
3以上であることが好ましく、50mg/cm
3以上であることがより好ましく、100mg/cm
3以上であることがとりわけ好ましく、例えば、500mg/cm
3以下であることが好ましく、300mg/cm
3以下であることがより好ましく、200mg/cm
3以下であることがとりわけ好ましい。なお、CNT6の平均嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm
2)と、カーボンナノチューブの平均長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
【0051】
CNTアレイシート3のG/D比は、例えば、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、5以上であることがとりわけ好ましく、10以上であることが特に好ましく、例えば、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
【0052】
G/D比とは、カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて、1350cm
−1付近に観測されるDバンドと呼ばれるピークのスペクトル強度に対する、1590cm
−1付近に観測されるGバンドと呼ばれるピークのスペクトル強度の比である。
【0053】
なお、Dバンドのスペクトルは、カーボンナノチューブの欠陥に由来し、Gバンドのスペクトルは、炭素の六員環の面内振動に由来する。
【0054】
CNTアレイシート3の厚み方向の電気抵抗(導電抵抗)は、25℃において、例えば、1Ω以下であることが好ましく、0.1Ω以下であることがより好ましい。
【0055】
CNTアレイシート3の熱伝導率は、厚み方向において、例えば、1W/(m・K)以上であることが好ましく、2W/(m・K)以上であることがより好ましく、10W/(m・K)以上であることがとりわけ好ましく、30W/(m・K)以上であることが特に好ましく、例えば、60W/(m・K)以下であることが好ましく、40W/(m・K)以下であることがより好ましい。
【0056】
そして、CNTアレイシート3は、
図1Aに示すように、固定シート2の表面2Aおよび裏面2Bの両面において、無機物の焼結体4と接合することにより、固定シート2に支持されている。
【0057】
つまり、2つのCNTアレイシート3は、固定シート2の表面2Aおよび裏面2Bのそれぞれに1つずつ接合されており、固定シート2を厚み方向に挟むように配置されている。
【0058】
なお、2つのCNTアレイシート3を互いに区別する場合、固定シート2の表面2Aに接合されるCNTアレイシート3を第1CNTアレイシート3Aとし、固定シート2の裏面2Bに接合されるCNTアレイシート3を第2CNTアレイシート3Bとする。
【0059】
また、CNTアレイシート3における固定シート2側の端部は、固定シート2の焼結体4に埋め込まれるとともに接合されており、CNTアレイシート3における固定シート2と反対側の端部が自由端となっている。つまり、CNTアレイシート3の焼結体4と接合する端部は、固定シート2の焼結体4に埋め込まれている。
【0060】
より詳しくは、第1CNTアレイシート3Aにおける他方側端部が、固定シート2の表面2Aにおいて、焼結体4に埋め込まれるとともに接合され、第1CNTアレイシート3Aにおける一方側端部が自由端となっている。また、第2CNTアレイシート3Bにおける一方側端部が、固定シート2の裏面2Bにおいて、焼結体4に埋め込まれるとともに接合され、第2CNTアレイシート3Bにおける他方側端部が自由端となっている。なお、CNTアレイシート3の厚み方向と、固定シート2の厚み方向とは互いに一致しており、各CNTアレイシート3のCNT6は、固定シート2の厚み方向に沿って延びている。
【0061】
このような熱伝導性シート1の厚み方向の電気抵抗(導電抵抗)は、例えば、10
3Ω以上であることが好ましく、10
4Ω以上であることがより好ましく、例えば、10
7Ω以下であることが好ましく、10
6Ω以下であることがより好ましい。
【0062】
熱伝導性シート1の熱伝導率は、厚み方向において、例えば、1W/(m・K)以上であることが好ましく、2W/(m・K)以上であることがより好ましく、10W/(m・K)以上であることがさらに好ましく、25W/(m・K)以上であることがとりわけ好ましく、50W/(m・K)以上であることが特に好ましく、例えば、300W/(m・K)以下であることが好ましく、100W/(m・K)以下であることがより好ましい。
【0063】
(2)CNT接合シートの製造方法
次に、熱伝導性シート1(CNT接合シートの一例)の製造方法の一実施形態について説明する。
【0064】
熱伝導性シート1を製造するには、
図4Cに示すように、まず、無機炭化物の焼結体から形成される固定シート2を準備する(準備工程)。
【0065】
また、固定シート2とは別途、CNTアレイシート3を準備する。
【0066】
CNTアレイシート3を準備するには、
図2A〜
図2Cに示すように、例えば、化学気相成長法(CVD法)により、成長基板15上に垂直配向カーボンナノチューブ19(Vertically Aligned carbon nanotubes;以下、VACNTs19とする。)を成長させる(CNT成長工程)。
【0067】
詳しくは、
図2Aに示すように、まず、成長基板15を準備する。成長基板15は、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0068】
成長基板15としては、例えば、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜17が積層されるステンレス基板16などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜17が積層されるステンレス基板16が挙げられる。なお、
図2A〜
図3Cでは、成長基板15が、二酸化ケイ素膜17が積層されるステンレス基板16である場合を示す。
【0069】
そして、
図2Aに示すように、成長基板15上、好ましくは、二酸化ケイ素膜17上に触媒層18を形成する。成長基板15上に触媒層18を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、成長基板15(好ましくは、二酸化ケイ素膜17)上に成膜する。
【0070】
金属触媒としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。このような金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。成膜方法としては、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
【0071】
これによって、成長基板15上に触媒層18が配置される。なお、成長基板15が、二酸化ケイ素膜17が積層されるステンレス基板16である場合、二酸化ケイ素膜17および触媒層18は、例えば、特開2014−94856号公報に記載されるように、二酸化ケイ素前駆体溶液と金属触媒前駆体溶液とが混合される混合溶液を、ステンレス基板16に塗布した後、その混合液を相分離させ、次いで、乾燥することにより、同時に形成することもできる。
【0072】
次いで、触媒層18が配置される成長基板15を、
図2Bに示すように、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層18が、凝集して、複数の粒状体18Aとなる。
【0073】
そして、加熱された成長基板15に、
図2Cに示すように、原料ガスを供給する。原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1〜4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。
【0074】
また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0075】
原料ガスの供給時間としては、例えば、1分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましく、例えば、60分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましい。
【0076】
これによって、複数の粒状体18Aのそれぞれを起点として、複数のCNT6が成長する。なお、
図2Cでは、便宜上、1つの粒状体18Aから、1つのCNT6が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体18Aから、複数のCNT6が成長してもよい。
【0077】
このような複数のCNT6は、成長基板15上において、互いに略平行となるように、成長基板15の厚み方向(上下方向)に延びている。つまり、複数のCNT6は、成長基板15に対して直交するように配向(垂直に配向)されている。
【0078】
これによって、VACNTs19が成長基板15上に成長する。
【0079】
VACNTs19は、
図3Cが参照されるように、複数のCNT6が縦方向に直線的に並ぶ列19Aを、横方向に複数備えている。VACNTs19において、複数のCNT6は、面方向(縦方向および横方向)に密集している。
【0080】
次いで、
図3Aおよび
図3Bに示すように、成長基板15からVACNTs19を剥離する(剥離工程)。
【0081】
VACNTs19を成長基板15から剥離するには、例えば、切断刃20を成長基板15の上面に沿ってスライド移動させて、複数のCNT6の基端部(成長基板15側端部)を一括して切断する。これによって、VACNTs19が成長基板15から分離される。
【0082】
切断刃20としては、例えば、カッター刃、剃刀などの公知の金属刃が挙げられ、好ましくは、カッター刃が挙げられる。
【0083】
次いで、分離されたVACNTs19を、
図3Bに示すように、成長基板15から引き上げる。これにより、VACNTs19が、成長基板15から剥離されて、CNTアレイシート3とされる。また、上記の工程を繰り返すことにより、2つのCNTアレイシート3、具体的には、第1CNTアレイシート3Aおよび第2CNTアレイシート3Bが準備される。
【0084】
このようなCNTアレイシート3は、そのまま熱伝導性シート1に利用することができるが、平均嵩密度が相対的に低いため、熱伝導率の向上の観点から好ましくは、高密度化処理される(高密度化工程)。
【0085】
高密度化処理として、例えば、CNTアレイシート3を加熱処理する方法(
図4Aおよび
図4B参照)や、CNTアレイシート3に揮発性の液体を供給する方法が挙げられる。
【0086】
CNTアレイシート3を加熱処理するには、例えば、
図4Aに示すように、CNTアレイシート3を耐熱容器45に収容して、加熱炉内に配置する。
【0087】
耐熱容器45は、耐熱温度が2600℃を超過する耐熱容器であって、例えば、炭素から形成される炭素容器、セラミックスから形成されるセラミックス容器などの公知の耐熱容器が挙げられる。このような耐熱容器のなかでは、好ましくは、炭素容器が挙げられる。
【0088】
加熱炉としては、例えば、抵抗加熱炉、誘導加熱炉、直通電型電気炉などが挙げられ、好ましくは、抵抗加熱炉が挙げられる。また、加熱炉は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
【0089】
次いで、加熱炉内に不活性ガスを流入して、加熱炉内を不活性ガス雰囲気に置換する。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどが挙げられ、好ましくは、アルゴンが挙げられる。
【0090】
次いで、加熱炉内の温度を、所定の昇温速度で加熱温度まで上昇させた後、温度を維持したまま、所定時間放置する。
【0091】
昇温速度としては、例えば、1℃/分以上であることが好ましく、5℃/分以上であることがより好ましく、例えば、40℃/分以下であることが好ましく、20℃/分以下であることがより好ましい。
【0092】
加熱温度としては、例えば、2600℃以上であることが好ましく、2700℃以上であることがより好ましく、2800℃以上であることがとりわけ好ましい。加熱温度が上記下限以上であれば、CNTアレイシート3において、複数のCNT6を確実に密集させることができる。
【0093】
また、加熱温度としては、CNT6の昇華温度未満であればよく、3000℃以下であることが好ましい。加熱温度が上記上限以下であれば、CNT6が昇華することを抑制できる。
【0094】
所定時間としては、例えば、10分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、例えば、5時間以下であることが好ましく、3時間以下であることがより好ましい。
【0095】
また、CNTアレイシート3は、好ましくは、無負荷の状態(CNTアレイシート3に荷重がかけられていない状態、つまり、大気圧下)で加熱処理される。CNTアレイシート3を無負荷の状態で加熱処理するには、
図4Aに示すように、CNTアレイシート3を、耐熱容器45の蓋部および側壁に対して間隔を空けるように、耐熱容器45内に収容する。
【0096】
以上によって、CNTアレイシート3が加熱処理される。CNTアレイシート3が加熱処理されると、CNTアレイシート3において、複数のCNT6を構成するグラフェンの結晶性が向上し、CNT6の配向性(直線性)が向上する。すると、CNTアレイシート3において、互いに隣接するCNT6は、それらの間に作用するファンデルワールス力などにより、配向性(直線性)を維持したまま、束状となるように密集する。
【0097】
これによって、CNTアレイシート3の全体が均一に密集され、CNTアレイシート3が高密度化する。その後、CNTアレイシート3を必要により冷却(例えば、自然冷却)する。
【0098】
加熱処理後のCNTアレイシート3の厚みは、複数のCNT6が配向性(直線性)を維持したまま密集するため、加熱処理前のCNTアレイシート3の厚みと略同じである。より具体的には、加熱処理後のCNTアレイシート3の厚みは、加熱処理前のCNTアレイシート3の厚みに対して、例えば、95%以上105%以下であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
【0099】
また、加熱処理後のCNTアレイシート3の体積は、加熱処理前のCNTアレイシート3の体積に対して、例えば、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、例えば、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
【0100】
また、加熱処理後のCNTアレイシート3のG/D比は、例えば、2以上であることが好ましい。
【0101】
CNTアレイシート3に揮発性の液体を供給するには、例えば、CNTアレイシート3に揮発性の液体をスプレーするか、CNTアレイシート3を揮発性の液体に浸漬させる。
【0102】
揮発性の液体としては、例えば、水、有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒としては、例えば、低級(C1〜3)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(例えば、アセトンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸エチルなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなど)、極性非プロトン類(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。
【0103】
このような揮発性の液体のなかでは、好ましくは、水が挙げられる。このような揮発性の液体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0104】
CNTアレイシート3に揮発性の液体が供給されると、揮発性の液体が気化することにより、複数のCNT6が互いに密集し、CNTアレイシート3の密度が向上する。
【0105】
なお、このような高密度化処理は、少なくとも1回実施され、複数回繰り返すこともできる。同一の高密度化処理を複数回繰り返してもよく、複数種類の高密度化処理を組み合わせて実施してもよい。例えば、上記の加熱処理のみを複数回繰り返すこともでき、上記の加熱処理と上記の液体供給処理と組み合わせて実施することもできる。
【0106】
高密度化処理後のCNTアレイシート3において、複数のCNT6の平均嵩密度は、例えば、50mg/cm
3以上であることが好ましく、厚み方向の電気抵抗(導電抵抗)は、25℃において、例えば、1Ω以上であることが好ましく、熱伝導率は、厚み方向において、例えば、10W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0107】
以上によって、無機炭化物の焼結体から形成される固定シート2と、2つのCNTアレイシート3とが準備される。
【0108】
次いで、
図4Cに示すように、固定シート2とCNTアレイシート3との間に金属薄膜30を配置する(薄膜配置工程)。固定シート2とCNTアレイシート3との間に金属薄膜30を配置するには、まず、2つのCNTアレイシート3のそれぞれに、金属薄膜30を形成する(薄膜形成工程)。
【0109】
より具体的には、第1CNTアレイシート3Aの厚み方向他方面に、金属薄膜30を形成し、第2CNTアレイシート3Bの厚み方向一方面に、金属薄膜30を形成する。
【0110】
CNTアレイシート3に金属薄膜30を形成するには、例えば、CNTアレイシート3に金属を蒸着する。金属としては、上記の金属が挙げられる。このような金属のなかでは、親和性の観点から好ましくは、固定シート2の無機炭化物が含有する金属元素と同一の金属が挙げられる。例えば、固定シート2の無機炭化物が炭化チタンである場合、金属薄膜30の金属として好ましくは、チタンが挙げられ、固定シート2の無機炭化物が炭化ケイ素である場合、金属薄膜30の金属として好ましくは、ケイ素が挙げられる。
【0111】
つまり、固定シート2の無機炭化物と、金属薄膜30の金属との組み合わせとして、好ましくは、炭化チタンとチタンとの組み合わせ、および、炭化ケイ素とケイ素との組み合わせが挙げられる。
【0112】
次いで、金属薄膜30が固定シート2と接触するように、CNTアレイシート3を固定シート2の表面2Aおよび裏面2Bの両面に配置する。
【0113】
より具体的には、固定シート2の表面2Aに、第1CNTアレイシート3Aの金属薄膜30が接触するように、第1CNTアレイシート3Aを配置し、固定シート2の裏面2Bに、第2CNTアレイシート3Bの金属薄膜30が接触するように、第2CNTアレイシート3Bを配置する。これにより、第1CNTアレイシート3Aおよび第2CNTアレイシート3Bが、固定シート2を厚み方向に挟むように配置され、金属薄膜30が、CNTアレイシート3と固定シート2との間に配置される。なお、金属薄膜30の厚みは、例えば、5nm以上1μm以下であることが好ましい。
【0114】
次いで、CNTアレイシート3が配置された固定シート2(金属薄膜30が配置されたCNTアレイシート3および固定シート2)を、真空下または不活性雰囲気下で焼成する(焼成工程)。
【0115】
そのような固定シート2を焼成するには、例えば、CNTアレイシート3が配置された固定シート2を、上記の加熱炉内に配置する。そして、加熱炉内を、公知の方法(例えば、真空ポンプなど)により真空状態とするか、上記の不活性ガス雰囲気に置換する。
【0116】
真空状態の圧力は、例えば、100Pa以下であることが好ましく、10Pa以下であることがより好ましい。不活性ガスして、好ましくは、アルゴンが挙げられる。
【0117】
次いで、加熱炉内の温度を焼成温度まで上昇させた後、温度を維持したまま、所定時間放置する。
【0118】
焼成温度は、金属薄膜30が溶融する温度以上、CNT6の昇華温度未満であって、例えば、1000℃以上であることが好ましく、1500℃以上であることがより好ましく、例えば、2500℃以下であることが好ましく、2000℃以下であることがより好ましい。焼成時間としては、例えば、1分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましく、例えば、1時間以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましい。
【0119】
これによって、CNTアレイシート3に蒸着された金属薄膜30の金属が、CNTアレイシート3のCNT6の炭素と反応して、無機炭化物が生成する。
【0120】
より具体的には、固定シート2の無機炭化物が炭化ケイ素であり、金属薄膜30の金属がケイ素である場合、CNTアレイシート3のCNT6の炭素とケイ素とが反応して炭化ケイ素(無機炭化物)が生成し、その炭化ケイ素(無機炭化物)が、
図1Aに示すように、固定シート2の炭化ケイ素(無機炭化物)の焼結体4と一体となるように焼結して、CNT6と固定シート2とを接合する。
【0121】
そのため、CNTアレイシート3のCNT6が、反応により生成した炭化ケイ素(無機炭化物)により、焼結体4に強固に接合される。
【0122】
これにより、CNTアレイシート3(CNT6)の端部が焼結体4に埋め込まれるとともに接合される。そして、CNTアレイシート3が、固定シート2に支持される。
【0123】
より具体的には、第1CNTアレイシート3AにおけるCNT6の他方側端部が、固定シート2の表面2Aにおいて、焼結体4に埋め込まれるとともに接合され、第2CNTアレイシート3BにおけるCNT6の一方側端部が、固定シート2の裏面2Bにおいて、焼結体4に埋め込まれるとともに接合される。
【0124】
その後、冷却することにより、熱伝導性シート1が製造される。
【0125】
このように、金属薄膜30がケイ素から形成される場合、CNTアレイシート3は、焼成工程において、CNT6の炭素とケイ素との反応を伴なう反応焼結により、焼結体4に接合される。この場合、焼結体4は、CNTアレイシート3が有する炭素と、ケイ素との反応生成物としての炭化ケイ素(無機炭化物)を含んでいる。つまり、焼結体4は、CNTアレイシート3が有する炭素と、固定シート2に含まれるケイ素との焼結体を含んでいる。
【0126】
また、固定シート2の無機炭化物が炭化チタンであり、金属薄膜30がチタンから形成される場合、上記の焼成工程において、CNTアレイシート3のCNT6の炭素と、金属薄膜30のチタンとが反応して炭化チタンが生成し、その炭化チタンは、固定シート2の炭化チタンの焼結体4と一体となるように焼結し、CNT6と固定シート2と接合する。
【0127】
つまり、金属薄膜30がチタンから形成される場合においても、CNT6の炭素とチタンとの反応を伴なう反応焼結により、CNTアレイシート3が焼結体4に接合される。この場合、焼結体4は、CNTアレイシート3が有する炭素と、チタンとの反応生成物としての炭化チタン(無機炭化物)を含んでいる。つまり、焼結体4は、CNTアレイシート3が有する炭素と、固定シート2に含まれるチタンとの焼結体を含んでいる。
【0128】
(3)熱伝導性シートの使用態様
このような熱伝導性シート1は、TIMとして、
図1Bに示すように、例えば、電子部品11(対象物)と、放熱部材10(対象物)との間に、厚み方向に挟まれるように配置されて使用される。
【0129】
電子部品11としては、例えば、半導体素子(IC(集積回路)チップなど)、発光ダイオード(LED)、高出力レーザ発振素子、高出力ランプ、パワー半導体素子などが挙げられる。
【0130】
放熱部材10としては、例えば、ヒートシンク、ヒートスプレッダーなどが挙げられる。
【0131】
また、電子部品11の表面11B、および、放熱部材10の表面10Aには、微細な凹凸(表面粗さ)が形成されている。それらの表面粗さRz(JIS B0601−2013に準拠する十点平均粗さ)は、例えば、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0132】
そして、熱伝導性シート1において、第1CNTアレイシート3Aの複数のCNT6は、放熱部材10の表面10Aの微細な凹凸に追従して、放熱部材10の表面10Aと安定して接触している。また、第2CNTアレイシート3Bの複数のCNT6は、電子部品11の表面11Bの微細な凹凸に追従して、電子部品11の表面11Bと安定して接触している。
【0133】
そのため、電子部品11が発熱すると、電子部品11からの熱が、第2CNTアレイシート3B、固定シート2および第1CNTアレイシート3Aを順次介して、放熱部材10に伝達される。
【0134】
(4)作用効果
熱伝導性シート1は、
図1Bに示すように、CNTアレイシート3を備えている。そのため、熱伝導性シート1を対象物(例えば、放熱部材10および電子部品11)に接触させたときに、CNTアレイシート3の複数のCNT6を対象物表面の微細な凹凸に追従させることができる。
【0135】
また、CNTアレイシート3は、
図1Aに示すように、固定シート2の焼結体4と接合している。そのため、CNTアレイシート3が有するCNT6が、固定シート2から脱落することを抑制できる。
【0136】
焼結体4は、CNTアレイシート3が有する炭素と、固定シート2に含まれるケイ素および/またはチタンとの焼結体を含んでいる。そのため、CNTアレイシート3と焼結体4との親和性の向上を図ることができ、CNTアレイシート3を焼結体4と確実に接合することができる。その結果、CNTアレイシート3が有するCNT6が、固定シート2から脱落することを確実に抑制できる。
【0137】
CNTアレイシート3の端部は、焼結体4に埋め込まれている。そのため、CNTアレイシート3が有するCNT6が、固定シート2から脱落することをより一層確実に抑制できる。
【0138】
CNTアレイシート3の平均嵩密度は、50mg/cm
3以上である。そのため、CNTアレイシート3の熱伝導率の向上を図ることができ、ひいては、熱伝導性シート1の熱伝導率の向上を図ることができる。
【0139】
また、成長基板15から剥離されたCNTアレイシート3が、固定シート2の焼結体4と接合しているので、CNTアレイシート3を、成長基板15から剥離した後、高密度化処理することができる。そのため、CNTアレイシート3の平均嵩密度を上記下限以上とすることができる。
【0140】
また、成長基板15から剥離したCNTアレイシート3に金属薄膜30を形成した後、そのCNTアレイシート3を無機物の焼結体4から形成される固定シート2上に配置した後、焼成することにより、CNTアレイシート3を固定シート2と強固に接合させることができる。
【0141】
そのため、簡易な方法でありながら、固定シート2の焼結体4と接合するCNTアレイシート3を備える熱伝導性シート1を効率良く製造することができる。
【0142】
なお、上記の熱伝導性シートの製造方法では、薄膜配置工程において、CNTアレイシート3に金属薄膜30を形成し、そのCNTアレイシート3を固定シート2に配置したが、これに限定されず、固定シート2に金属薄膜30を形成した後、その金属薄膜30上にCNTアレイシート3を配置することもできる。これによっても、金属薄膜30を、CNTアレイシート3と固定シート2との間に配置できる。
【0143】
2.第2実施形態
第1実施形態では、
図4Cに示すように、無機物の焼結体4から形成される固定シート2を準備し、その固定シート2にCNTアレイシート3を配置した後、焼成して熱伝導性シート1を製造するが、本発明は、そのような熱伝導性シートの製造方法に限定されない。
【0144】
第2実施形態では、
図5Aに示すように、無機粒子8を含有する樹脂シート7を準備し、その樹脂シート7にCNTアレイシート3を配置した後、焼成して熱伝導性シート1を製造する。なお、第2実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0145】
より詳しくは、
図5Aに示すように、まず、無機粒子8を含有する樹脂シート7を準備する。
【0146】
樹脂シート7は、シート形状(平板形状)を有しており、平坦な表面7A(厚み方向一方面)および平坦な裏面7B(厚み方向他方面)を有している。樹脂シート7は、樹脂材料から形成されている。つまり、樹脂シート7は、樹脂材料と、無機粒子8とを含有している。樹脂材料としては、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂とが挙げられる。
【0147】
熱硬化性樹脂は、硬化体(硬化後の熱硬化性樹脂)であって、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性エラストマー(例えば、加硫ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴムなど)などが挙げられる。
【0148】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなど)、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマーなど)などが挙げられる。
【0149】
このような樹脂材料のなかでは、好ましくは、熱可塑性樹脂、さらに好ましくは、PVAおよびフッ素系ポリマー、とりわけ好ましくは、PVAが挙げられる。このような樹脂材料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0150】
樹脂シート7の厚みは、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、例えば、300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0151】
無機粒子8は、上記の無機物から形成される粒子である。無機粒子8は、1種類の無機物の粒子から構成されてもよく、2種以上の無機物の粒子から構成されてもよい。
【0152】
無機粒子8の平均一次粒子径は、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、例えば、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0153】
また、無機粒子8の含有割合は、樹脂シート7の全量に対して、例えば、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、例えば、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0154】
次いで、第1実施形態と同様にして準備されたCNTアレイシート3を、樹脂シート7の表面7Aおよび裏面7Bの両面に配置する。そして、CNTアレイシート3が配置された樹脂シート7を、第1実施形態と同様に、真空下または不活性雰囲気下で焼成する(焼成工程)。
【0155】
すると、樹脂シート7の樹脂材料が焼失して、無機粒子8が互いに接触するとともに、CNTアレイシート3における樹脂シート7側の端部が、無機粒子8と接触する。
【0156】
そして、互いに接触する無機粒子8が焼結するとともに、CNTアレイシート3のCNT6と無機粒子8とが焼結する。これにより、無機粒子8が焼結体4となり、固定シート2を形成し、CNTアレイシート3(CNT6)の端部が焼結体4に接合される。
【0157】
より詳しくは、無機粒子8が金属および/または無機炭化物から形成されている場合、CNTアレイシート3のCNT6は、第1実施形態と同様に、CNT6の炭素と金属および/または無機炭化物との反応を伴なう反応焼結により、焼結体4に埋め込まれ接合される。この場合、焼結体4は、金属および無機炭化物の焼結体を含有するか、無機炭化物の焼結体のみを含有している。
【0158】
また、無機粒子8が無機酸化物および/または無機窒化物から形成されている場合、CNTアレイシート3のCNT6は、無機粒子8の焼結に伴なって、無機粒子8と反応することなく、焼結体4に物理的に埋め込まれ接合される。この場合、焼結体4は、無機炭化物の焼結体を含有しておらず、無機酸化物および/または無機窒化物の焼結体を含有している。
【0159】
これによって、2つのCNTアレイシート3は、第1実施形態と同様に、固定シート2の表面2Aおよび裏面2Bの両面において、無機物の焼結体4に埋め込まれ接合されて、固定シート2に支持される。
【0160】
このような第2実施形態にかかる熱伝導性シート1において、厚み方向の電気抵抗(導電抵抗)の範囲は、上記の熱伝導性シート1の厚み方向の電気抵抗の範囲と同一であり、熱伝導率の範囲は、上記の熱伝導性シート1の熱伝導率の範囲と同一である。
【0161】
このような第2実施形態によれば、成長基板15から剥離したCNTアレイシート3を、
図5Aに示すように、無機粒子8を含有する樹脂シート7上に配置した後、焼成して、無機粒子8を焼結体4に形成する。これによって、
図1Aに示すように、固定シート2を形成でき、CNTアレイシート3を固定シート2の焼結体4と接合させることができる。
【0162】
そのため、簡易な方法でありながら、固定シート2の焼結体4と接合するCNTアレイシート3を備える熱伝導性シート1を効率良く製造することができる。
【0163】
このような第2実施形態によっても、上記の第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0164】
3.第3実施形態
次に、
図5Bおよび
図5Cを参照して、第3実施形態について説明する。なお、上記した第1実施形態および第2実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0165】
上記した第2実施形態では、無機粒子8を含有する樹脂シート7が準備され、CNTアレイシート3が樹脂シート7の両面に配置された後、その樹脂シート7を加熱して、無機粒子8を焼結することにより、熱伝導性シート1が製造されるが、本発明は、そのような熱伝導性シートの製造方法に限定されない。
【0166】
第3実施形態では、まず、
図5Bに示すように、無機粒子8を含有するペーストを準備する(ペースト準備工程)。
【0167】
詳しくは、ペーストは、上記の樹脂材料と、無機粒子8とを含有している。このようなペーストを準備するには、無機粒子8を樹脂溶液に分散させる。
【0168】
無機粒子8の含有割合は、ペースト全量に対して、例えば、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、例えば、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0169】
樹脂溶液は、上記の樹脂材料が溶媒(例えば、水、有機溶媒など)に溶解された溶液である。樹脂材料としては、好ましくは、熱可塑性樹脂、さらに好ましくは、PVAが挙げられる。
【0170】
次いで、上記の第1実施形態と同様にして準備された第2CNTアレイシート3B(CNTアレイシート3)の厚み方向の一方面に、ペーストを塗布して、ペースト層40を形成する(塗布工程)。そのため、ペースト層40は、樹脂材料および無機粒子8を含有している。
【0171】
ペースト層40の厚みは、例えば、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、例えば、3mm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがとりわけ好ましい。
【0172】
そして、
図5Cに示すように、第1CNTアレイシート3A(CNTアレイシート3)を、ペースト層40の表面40A(厚み方向一方側面)に配置する。
【0173】
これにより、ペースト層40が、第1CNTアレイシート3Aと第2CNTアレイシート3Bとの間に挟まれる。換言すれば、CNTアレイシート3(第1CNTアレイシート3Aおよび第2CNTアレイシート3B)が、ペースト層40の表面40Aおよび裏面40Bの両面に配置される。
【0174】
そして、CNTアレイシート3が配置されたペースト層40(ペーストが塗布されたCNTアレイシート3)を、真空下または不活性雰囲気下で加熱して、無機粒子8を焼成する(焼成工程)。なお、焼成温度および焼成時間の範囲は、上記の第1実施形態と同一である。
【0175】
これによっても、樹脂シート7の樹脂材料が焼失して、無機粒子8が互いに接触するとともに、CNTアレイシート3における樹脂シート7側の端部が、無機粒子8と接触する。そして、互いに接触する無機粒子8が焼結するとともに、CNTアレイシート3のCNT6が、焼結体4に埋め込まれて接合される。
【0176】
つまり、成長基板15から剥離したCNTアレイシート3に、無機粒子8を含有するペーストを塗布した後、焼成することで、無機粒子8を焼結体4に形成する。これによって、固定シート2を形成でき、CNTアレイシート3を固定シート2の焼結体4と接合させることができる。
【0177】
そのため、簡易な方法でありながら、固定シート2の焼結体4と接合するCNTアレイシート3を備える熱伝導性シート1を効率良く製造することができる。
【0178】
また、これよっても、上記の第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0179】
4.変形例
第1実施形態および第2実施形態では、熱伝導性シート1は、固定シート2の表面2Aおよび裏面2Bの両面に接合されるCNTアレイシート3を備えているが、これに限定されない。
図6に示すように、熱伝導性シート1は、固定シート2の表面2Aおよび裏面2Bの少なくともいずれか一方において、固定シート2の焼結体4と接合するCNTアレイシート3を備えていればよい。
【0180】
第1実施形態および第2実施形態では、高密度化処理後のCNTアレイシート3が、熱伝導性シート1の製造に用いられるが、これに限定されず、CNTアレイシート3は、成長基板15から剥離後、高密度化処理されることなく、熱伝導性シート1の製造に用いられてもよい。
【0181】
この場合、CNTアレイシート3は、焼成工程において、固定シート2の焼結体4に接合されるとともに、高密度化される。CNTアレイシート3における複数のCNT6の平均嵩密度は、例えば、50mg/cm
3以上となる。
【0182】
第1実施形態および第2実施形態では、CNTアレイシート3の高密度化処理として、加熱処理および液体供給処理が挙げられるが、CNTアレイシート3の高密度化処理は、これに限定されず、機械的な圧縮により、CNTアレイシート3を高密度化することもできる。
【0183】
例えば、
図7Aおよび
図7Bに示すように、成長基板15上のVACNTs19を2枚の押圧板46により圧縮して、高密度化されたCNTアレイシート3を調製する。
【0184】
より詳しくは、2枚の押圧板46を、VACNTs19を挟むように配置した後、互いに近づくようにスライドさせて、VACNTs19を圧縮する。すると、VACNTs19の複数のCNT6は、対応する粒状体18Aから離脱され、互いに接触するように圧縮される。
【0185】
これによっても、VACNTs19を成長基板15から分離でき、高密度化されたCNTアレイシート3を準備できる。
【0186】
また、固定シート2は、焼成工程において、上記の樹脂材料が黒鉛化されることにより生成する黒鉛(グラファイト)を含有してもよい。この場合、黒鉛の含有割合は、固定シート2の全量に対して、例えば、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0187】
第1実施形態〜第3実施形態では、固定シート2が電気絶縁性を有しており、熱伝導性シート1が電気絶縁性シートとして構成されているが、これに限定されず、固定シート2を電気伝導性となるように形成して、熱伝導性シート1を電気伝導性シートとして構成してもよい。
【0188】
また、熱伝導性シート1が電気伝導性シートである場合、CNTアレイシート3の高密度化処理において供給される揮発性の液体には、無機微粒子を分散してもよい。
【0189】
無機微粒子としては、炭素微粒子(例えば、カーボンブラック、アモルファスカーボンなど)、金属微粒子、電気伝導性を有するセラミックス微粒子などが挙げられる。このような無機微粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0190】
この場合、CNTアレイシート3には、無機微粒子が均一に付着する。これによって、CNTアレイシート3に、熱伝導性シート1の用途により、適宜要求される特性を付与することができる。
【0191】
第1実施形態〜第3実施形態では、CNT接合シートが熱伝導性シート1である場合について詳述するが、CNT接合シートの用途は、熱伝導性シートに限定されない。CNT接合シートの用途としては、例えば、接着シート、防振材、断熱材などが挙げられる。
【0192】
これら変形例によっても、上記の第1実施形態〜第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、これら第1実施形態〜第3実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0193】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0194】
(実施例1)
ステンレス製の成長基板(ステンレス基板)の表面に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
【0195】
次いで、成長基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、成長基板上において、平面視略矩形形状のVACNTsを形成した。
【0196】
VACNTsにおいて、複数のCNTは、互いに略平行となるように延び、成長基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。CNTは、多層カーボンナノチューブであり、CNTの平均外径は、約12nm、CNTの平均長さは、約80μm、VACNTsの嵩密度は、約50mg/cm
3であった。
【0197】
次いで、カッター刃(切断刃)を成長基板に沿って移動させて、VACNTsを成長基板から切り離して、CNTアレイシートを準備した。
【0198】
次いで、CNTアレイシートを、耐熱容器である炭素容器に収容して、その炭素容器を抵抗加熱炉(高温加熱炉)内に配置した。
【0199】
次いで、抵抗加熱炉内を、アルゴン雰囲気に置換した後、10℃/分で2800℃まで昇温し、2800℃で2時間保持した。これにより、CNTアレイシートが高密度化され、その後、自然冷却により室温まで冷却した。
【0200】
高密度化されたCNTアレイシートの嵩密度は、約100mg/cm
3であり、そのCNTアレイシートの厚み方向の電気抵抗(導電抵抗)は、25℃において、0.1Ωであり、そのCNTアレイシートの熱伝導率は、厚み方向において、約30W/(m・K)であった。
【0201】
そして、上記と同様にして、高密度化されたCNTアレイシートを2つ準備した。
【0202】
次いで、2つのCNTアレイシートのそれぞれの一方面に、蒸着により、厚みが20nmのケイ素薄膜(金属薄膜)を形成した。
【0203】
次いで、厚みが100μmであり、炭化ケイ素の焼結体から形成されるセラミックスシート(固定シート)を準備した。
【0204】
そして、ケイ素薄膜がセラミックスシートと接触するように、CNTアレイシートを固定シートの表面および裏面の両面に配置した。
【0205】
続いて、CNTアレイシートが配置されたセラミックスシートを、抵抗加熱炉(高温加熱炉)内に配置して、不活性ガス雰囲気中において、1700℃で15分間加熱した。
【0206】
これにより、CNTの炭素と蒸着されたケイ素とが反応して、炭化ケイ素を生成するとともに、その炭化ケイ素とセラミックスシートとが焼結により接合した。その後、冷却して、熱伝導性シートを得た。
【0207】
(実施例2)
PVAから形成され、ケイ素粒子(無機粒子)が分散されている樹脂シートを準備した。なお、ケイ素粒子の平均一次粒子径は、2μmであり、ケイ素粒子の含有割合は、樹脂シート全量に対して、20質量%であった。また、PVAの含有割合は、樹脂シート全量に対して、80質量%であった。
【0208】
次いで、実施例1と同様にして準備されたCNTアレイシートを樹脂シートの表面および裏面の両面に配置した。続いて、CNTアレイシートが配置された樹脂シートを、抵抗加熱炉(高温加熱炉)内に配置して、不活性ガス雰囲気中において、1700℃で15分間加熱した。
【0209】
これにより、樹脂シートのPVAが焼失するとともに、CNTの炭素と、樹脂シートのケイ素粒子とが反応して炭化ケイ素を生成し、その炭化ケイ素とケイ素粒子とが焼結体を形成して、固定シートを形成した。つまり、固定シートは、炭化ケイ素とケイ素との焼結体を含有していた。固定シートの厚みは、100μmであった。
【0210】
その後、冷却して、熱伝導性シートを得た。
【0211】
(実施例3)
PVAが水(溶媒)に溶解されたPVA溶液(樹脂溶液、PVA濃度:10質量%)に、ケイ素粒子(無機粒子)を分散させて、ペーストを準備した。
【0212】
なお、ケイ素粒子の平均一次粒子径は、2μmであり、ケイ素粒子の含有割合は、ペースト全量に対して、20質量%であった。また、PVAの含有割合は、ペースト全量に対して、80質量%であった。
【0213】
次いで、実施例1と同様にして準備された2つのCNTアレイシートのうち、一方のCNTアレイシートに、ペーストを塗布して、厚み約2mmのペースト層を形成した。そして、他方のCNTアレイシートを、ペースト層が2つのCNTアレイシートの間に挟まれるように、ペースト層上に配置した。
【0214】
その後、CNTアレイシートが配置されたペースト層を、抵抗加熱炉(高温加熱炉)内に配置して、不活性ガス雰囲気中において、1700℃で15分間加熱した。その後、冷却して、熱伝導性シートを得た。なお、固定シートの厚みは、100μmであった。
【0215】
(実施例4)
PVAから形成され、窒化ケイ素粒子(無機粒子)が分散されている樹脂シートを準備したこと以外は、実施例2と同様にして、熱伝導性シートを得た。なお、熱伝導性シートの固定シートの厚みは、100μmであった。
【0216】
(比較例1)
ステンレス製の成長基板の表面および裏面の両面に、二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
【0217】
次いで、成長基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板の表面および裏面の両面に、平面視略矩形形状のVACNTsを形成した。各VACNTsにおいて、CNTの平均外径、CNTの平均長さ、および、嵩密度は、実施例1と同様であった。
【0218】
そして、両面にVACNTsが配置される成長基板を、熱伝導性シートとした。
【0219】
<評価>
(1)熱伝導率
各実施例および比較例で得られた熱伝導性シートについて、熱抵抗を熱抵抗測定装置(商品名:T3Ster DynTIM Tester、メンターグラフィックス社製)により測定した。そして、熱伝導性シートの厚みを変更して、熱抵抗を複数点(例えば、3点)測定し、熱伝導性シートの厚みおよび測定された熱抵抗をプロットした。そのプロット結果から、熱伝導性シートの熱伝導率を算出した。その結果を表1に示す。
(2)電気抵抗
各実施例および比較例で得られた熱伝導性シートについて、厚み方向の電気抵抗を電気抵抗測定装置(商品名:レジスティビティ・チェンバ、エーディーシー社製)により測定した。その結果を、表1に示す。
(3)接着強度試験
各実施例で得られた熱伝導性シートについて、粘着テープを、CNTアレイシートに対して、固定シートと反対側から貼着した後、粘着テープを剥離した。
【0220】
また、比較例で得られた熱伝導性シートについて、粘着テープを、VACNTsに対して、成長基板と反対側から貼着した後、粘着テープを剥離した。
【0221】
そして、接着強度を、以下の基準により評価した。その結果を表1に示す。
【0222】
○:CNTアレイシート(VACNTs)の固定シート(成長基板)からの顕著な剥離がみられなかった。
×:CNTアレイシート(VACNTs)の固定シート(成長基板)からの顕著な剥離がみられた。
【0223】
【表1】
【0224】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。