【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の思想は、特に、以下説明する思想及び認識に基づくとみなすことができる。
【0009】
本発明の一側面は距離センサに関する。距離センサは、真っ直ぐな測定経路に沿って2つの部品の相対位置を求めることができるリニア距離センサとすることができる。距離センサは、回転軸まわりの2つの部品相互間の相対回転を測定可能な回転角度センサとすることもできる。
【0010】
本発明の一実施形態においては、距離センサは、測定経路に沿って延在する導電性の少なくとも1つの測定トラック素子を備えた誘導素子と、少なくとも1つの測定トラック素子に沿って誘導素子に対して相対移動可能なセンサ素子とを備えており、センサ素子は少なくとも1つの測定コイルを備えており、測定コイルは少なくとも1つの測定トラック素子と重畳するように配置されており、少なくとも1つの測定コイルの誘導が、測定経路上における当該測定コイルの位置に依存するように、少なくとも1つの測定コイルと少なくとも1つの測定トラック素子との重畳が当該測定経路に沿って変化する。
【0011】
さらに、誘導素子は2つの導電性の補正トラック素子を備えており、補正トラック素子は測定経路を基準として相並んで配置されており、センサ素子は2つの補正コイルを備えており、補正コイルは測定経路を基準として相並んで、両方の補正トラック素子のうちそれぞれ1つの補正トラック素子と重畳するように配置されており、補正コイルと補正トラック素子との重畳は、測定経路に沿って一定である。
【0012】
誘導素子は、例えば、(例えばフレキシブル)プリント配線板とすることができ、このプリント配線板上に測定トラック素子及び補正トラック素子が1つ又は複数の導体路として設けられている。このプリント配線板は、移動を測定する対象である部品に配置することができる。また、測定対象の部品が導電性である場合には、誘導素子をこの測定対象の部品によって直接実現することもできる。測定トラック素子は、例えば、かかる部品の凸部とすることができる。さらに、補正トラック素子をこの部品によって直接実現することができる。
【0013】
1つ又は複数の測定トラック素子及び補正トラック素子はそれぞれ、複数の互いに分離されている導電性のトラックによって構成することができる。また、測定トラック素子及び/又は補正トラック素子のうち1つ又は複数を1つの導電性のトラックのみによって実現することもできる。1つ又は2つの測定トラック素子を、例えば1つの導電性のトラックの縁辺によって実現することができる。補正トラックを導電性のトラックの中央によって実現することができる。
【0014】
コイルごと(測定コイル及び/又は補正コイルごと)にそれぞれ1つの導電性のトラックを誘導素子と重畳するように設け、各導電性のトラックが各測定トラック素子を実現することができる。また、複数のトラック素子(測定トラック素子及び/又は補正トラック素子)を1つの導電性のトラックのみによって実現することもできる。
【0015】
センサ素子は、測定コイル及び/又は補正コイルを平面コイルとして設けたプリント配線板とすることができる。センサ素子は、他の部品を備えることもでき、例えば、コイルに交流電流を誘導することができ、及び/又は、コイル内の交流電圧の周波数を測定することができる制御部等を備えることもできる。
【0016】
補正コイルの基礎面は、測定コイルの基礎面と実質的に一致することができる。また、補正コイルの面積を、(1つ又は複数の)測定コイルの面積より小さくすることもできる。
【0017】
誘導素子とセンサ素子とは相互に相対移動可能である。例えば、センサ素子に対して相対回転可能な軸に誘導素子を配置することができる。また、測定経路の方向において相互に可動の複数の部品にセンサ素子と誘導素子とを固定することもできる。
【0018】
補正コイルによって、センサ素子に対する誘導素子の相対的な傾きを補償することができ、また、距離センサの両方の素子の相対的な距離変化を補償することもできる。
【0019】
(1つ又は複数の)測定コイルと補正コイルとに交流電圧が印加され、この交流電圧が、各対応する(1つ又は複数の)測定トラック素子と補正トラック素子とに渦電流を誘導して、各コイル(測定コイル又は補正コイル)のインダクタンスを変化させる。これらの各コイルをそれぞれ1つの振動回路に接続することができ、各振動回路の周波数は、各インダクタンスによって変化する。この周波数を各コイルの測定信号として処理することができる。
【0020】
例えば、1つ又は複数の測定トラック素子の幅が測定経路に沿って変化し得るので、対応する測定コイルのインダクタンスが変化し、これによって、その周波数も変化する。よって、この周波数から測定経路における測定コイルの位置を推定することができる。
【0021】
しかし、測定信号は、さらに測定コイルから測定トラック素子までの距離(即ち、z方向における距離)にも依存するので、傾き又は距離変化によって測定信号が変化し得るが、これは補正コイルを用いて補正することができる。
【0022】
補正コイルは、測定経路を基準として相並んで配置されている。即ち、測定経路がy方向に延在する場合、補正コイルは、x方向において相並んで配置されている。補正コイルと、対応する補正トラック素子との重畳は、測定経路上における位置には依存しないので、補正コイルから補正トラック素子までの距離を、補正コイルの測定信号(即ち、補正コイルのインダクタンスによって生成された交流電圧の周波数)から推定することができる。各補正コイルについて求められた距離と、距離センサの既知の幾何学的形態(例えば、補正コイル相互間の距離、及び、補正コイルから1つ又は複数の測定コイルまでの距離等)とに基づいて、(1つ又は複数の)測定コイルから各測定トラック素子までの距離を推定することができる。この距離を用いて、例えば、測定コイルの周波数を補正することができる。全体的に、公差が測定結果に及ぼす影響をほぼ相殺することができる。
【0023】
かかる距離センサによって測定精度を向上することができる。というのも、距離補正及び傾き補正を行うことができるからである。さらに、組付公差を大きくすることができるので、距離センサを低コストで製造することができる。
【0024】
本発明の一実施形態においては、測定トラック素子は、測定経路に沿って可変の幅を有する。例えば、測定トラック素子は、測定経路を基準として正弦波形の測定信号が得られるように幅を変化することができる。経路に正弦波形で依存する周波数は、(例えば、逆三角関数を適用することによって)特に簡単に処理することができる。
【0025】
本発明の一実施形態においては、両方の補正トラック素子は、測定経路に沿って一定の幅を有する。補正トラック素子の幅は、対応する補正コイルの幅より大きくすることができる。例えば、測定経路に沿って常において補正コイルを補正トラック素子が完全に覆うことができる。
【0026】
本発明の一実施形態においては、少なくとも1つの測定トラック素子は、両方の補正トラック素子の間に配置されている。補正トラック素子がx方向において(即ち、y方向の測定経路に対して直交する方向において)測定トラック素子の外側に配置されると、x方向における補正コイル間の距離が大きくなり、これによって、補正精度が向上する。
【0027】
本発明の一実施形態においては、少なくとも1つの測定コイルは、両方の補正コイルの間に配置されている。補正コイルをx方向において1つ又は複数の測定コイルの隣に配置すると、y方向において、即ち、測定経路の方向において、センサ素子を、特に短く抑制することができる。全体として、可能な限り最小の構造によってx方向の距離を最大にすることができる。
【0028】
本発明の一実施形態においては、誘導素子は、2つの導電性の測定トラック素子を備えており、これら2つの測定トラック素子は、測定経路を基準として測定経路に沿って相並んで配置されており、かつ、センサ素子は2つの測定コイルを備えており、これら2つの測定コイルは、測定経路を基準として相並んで両方の導電性のトラックと重畳するように配置されている。換言すると、距離センサは、x方向に相並んで設けられた2つの測定コイルを備えることができる。
【0029】
本発明の一実施形態においては、両方の測定トラック素子が、部分的に同形に成形されており、測定経路位置を基準として相互にシフトした信号が各測定コイルに誘導されるように、測定トラック素子が相互にずらして配置されている。例えば、両方の測定トラック素子の形状を、一方の測定コイルが測定経路に沿って正弦波形の測定信号を生成し、かつ、他方の測定コイルが余弦波形の信号(即ち、正弦信号を90°シフトしたもの)を生成する形状とすることができる。その商から、逆正接関数を用いて変位位置を計算することができる。
【0030】
本発明の一実施形態においては、補正トラック素子と測定トラック素子とは、相並んで延在し、かつ、1つの導電性のトラックから形成されている。測定トラック素子と補正トラック素子とを同一の導電パターン部によって誘導素子上に実現することができる。その際には、対応する測定コイルと、対応する補正コイルとを、測定経路に沿って互いに連続して配置することができる。かかる場合には、補正コイルの面積を測定コイルの面積より小さくすることができる。例えば、補正コイルが、導電性のトラックのうち、可変の幅を有しない部分のみを覆うことが可能である。
【0031】
本発明の一実施形態においては、1つの測定コイルは、測定経路を基準として相並んで離隔して配置された2つの部分コイルから形成されており、これら2つの部分コイルは、2つの測定トラック素子と重畳するように配置されている。補正コイルは、測定経路を基準として(即ち、x方向を基準として)両方の部分コイルの間に配置することができる。その際には、補正コイルを、y方向即ち測定経路に沿って両方の部分コイルから離隔することができる。この補正コイルは、両方の測定トラック素子の間に配置された補正トラック素子と重畳するように配置することができる。
【0032】
相並んで配置された2つの測定コイルを、上述のようにしてそれぞれ2つの部分コイルに分割することができる。さらに、この測定コイルごとに1つの補正コイルを設け、x方向を基準として補正コイルを両方の部分コイルの間に配置することもできる。かかる構成により、例えば、特にコンパクトな誘導素子を実現することができる。というのも、測定コイルと補正コイルとの各組み合わせに対して設けなければならない導電性のトラックは1つずつのみとなるからである(この1つの導電性のトラックは、縁辺において2つの測定トラック素子を実現し、かつ、中央において補正トラック素子を実現する)。
【0033】
かかる場合、補正コイルの面積及び/又はx方向における寸法は、測定コイルの面積及び/又はx方向における寸法より小さくなる。というのも、測定コイルは、導電性のトラックの全幅(両方の測定トラック素子及び補正トラック素子)を覆うからである。補正コイルは、省スペースでセンサ素子に統合することができる。
【0034】
本発明の一実施形態においては、補正トラック素子の両側面に2つの測定トラック素子が設けられており、補正トラック素子と測定トラック素子とは、1つの導電性のトラックから形成されている。
【0035】
両方の測定トラック素子(導電性のトラックの縁辺)と補正トラック素子(導電性のトラックの中央)とから構成された導電性のトラックは、補正トラック素子の幅と等しい最小幅を有することができる。例えば、この最小幅は、補正コイルの幅より約30%大きくすることができる。
【0036】
本発明の一実施形態においては、距離センサは、リニア距離センサである。例えば、誘導素子を、線形の測定経路に沿って配置することができる。かかるリニア距離センサによって、例えば、2輪車の上下方向弾性たわみを測定することができる。さらに、かかるリニア距離センサをブレーキシステムにおいて使用することもできる。また、かかるリニア距離センサを用いて、オートマチックトランスミッションのギア位置を測定することもできる。
【0037】
本発明の一実施形態においては、距離センサは、回転角度センサである。例えば、回転軸を中心とするシャフトに誘導素子を配置することができる。かかる回転角度センサは、カムシャフト位置を測定するために使用することができる。また、かかる回転角度センサを用いて、可変バルブ位置調整機構用の偏心軸の角度を求めることもできる。また、かかる回転角度センサを電動自動車用の電気モータ用のロータ位置センサとして使用することもできる。
【0038】
本発明の他の一側面は、上記又は下記の構成の距離センサのセンサ素子と誘導素子との相対位置を求めるための方法に関する。例えば、本方法は、制御部によって実施することができ、この制御部は、センサ素子上に配置することもできる。
【0039】
本発明の一実施形態においては、本方法は、両方の補正コイルの2つの補正周波数信号を測定するステップと、各補正コイルから誘導素子までの距離を、各補正周波数信号から求めるステップと、少なくとも1つの測定コイルから誘導素子までの距離を、両方の補正コイルの前記距離から求めるステップと、少なくとも1つの測定コイルの少なくとも1つの測定周波数信号を測定するステップと、少なくとも1つの測定周波数信号を、各測定コイルの求められた距離に基づいて補正するステップと、補正された少なくとも1つの測定周波数信号から相対位置を求めるステップと、を有する。
【0040】
本方法を実施するアルゴリズムであって、制御部にコンピュータプログラムとして実装可能なアルゴリズムが必要とする計算能力は小さくなり、標準的なマイクロコントローラを用いて実現することができる。
【0041】
図面の簡単な説明
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面及び明細書は、双方ともに、本発明を限定するものと解釈してはならない。