(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リフト電磁石の巻線は、前記極間の少なくとも1つのコアウェブ上に、内側極端上に、または、前記少なくとも1つのコアウェブ及び前記内側極端上に位置する、請求項1に記載の陽極組立体。
前記軸受組立体は、少なくとも1つのレースを有する玉軸受組立体、回転要素軸受、平軸受、スリーブ軸受、ジャーナル軸受、または液体金属軸受を含む、請求項1に記載の陽極組立体。
前記強磁性シャフトにかかる磁力を検出する手段を更に備え、前記制御モジュールは、センサ値に基づいて前記リフト電磁石に供給される電流を変化させるように構成されている、請求項6に記載の陽極組立体。
前記磁力を検出する手段は、前記リフト電磁石の巻線に結合された電流計または電圧計、前記リフト電磁石の極端に極接近するホールセンサ、超音波センサ、または変位センサの測定値に基づき検出する、請求項7に記載の陽極組立体。
前記陽極に結合された回転子スリーブを部分的に囲むセクタ固定子を更に備え、前記回転子スリーブは、前記セクタ固定子に対する印加電磁界に応答して回転するように構成されており、前記リフト電磁石は、前記強磁性シャフトの前記回転軸を基準にして前記セクタ固定子と同一平面上にある、請求項1に記載の陽極組立体。
前記リフト電磁石は、前記強磁性シャフトの前記回転軸を基準にして前記固定子と同一平面上にあり、前記固定子は、前記真空排気済み外囲器の外に位置決めされている、請求項13に記載のX線管。
前記強磁性シャフトにかかる前記磁力を検出するセンサを更に備え、前記管制御ユニットは、センサ値に基づいて前記リフト電磁石に供給される電流を変化させるように構成されている、請求項15に記載のX線管。
前記管制御ユニットは、前記加速度計からの加速度計値に基づいて、前記軸受組立体にかかるガントリ力またはガントリ回転速度を計算するように構成されている、請求項18に記載のX線システム。
回転可能ガントリフレームを回転させることを更に含み、前記陽極組立体は、X線管に結合され、前記X線管は、前記回転可能ガントリフレームに結合されており、前記回転可能ガントリフレームの回転は、ガントリからの遠心力を前記負荷力に付加する、請求項20に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本発明が、以下の説明で述べられ、また以下の図面で示される構成要素の構造及び配置の詳細にその適用が限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、種々の方法で実践または実施されることが可能である。フローチャート及びプロセスに設けられる数字は、ステップ及び動作を示すときの明確さのために設けられ、必ずしも、特定の順序またはシーケンスを示さない。別途規定されない限り、用語「or」は、代替物の選択(例えば、論理和演算子または排他的or)または代替物の組合せ(例えば、論理積演算子、及び/または、論理またはブールOR)を指し得る。
【0010】
本発明は、一般に、磁気学を使用してX線管の陽極組立体の軸受組立体にかかる負荷を低減することに関し、より詳細には、CT、コンピュータ断層撮影(CT)システムにおいてガントリ回転及び重力による力を平衡させるように陽極組立体のシャフトを持上げるための電磁石に関する。例示的な実施形態は、陽極及び軸受組立体に対する種々の位置におけるリフト電磁石(または磁気アクチュエータまたはリフト磁石)と、陽極組立体内の軸受組立体上に磁気リフトを支持するための、リフト電磁石及び構成要素の種々の変形とを示す。磁気リフトを、同様に、ハイブリッド軸受と呼んでもよい。
【0011】
ここで、本発明の例示的な実施形態の種々の態様を述べるため、図面に対して参照が行われることになる。図面は、こうした例示的な実施形態の図式的かつ概略的な表現であり、本発明を限定しないし、一定比例尺に従って描かれてもいないことが理解される。
例示的なX線管
【0012】
図1は、回転可能円板状陽極122を有する例示的なロータリまたは回転陽極型X線管100のブロック図である。X線管100は、ハウジング102及びハウジング102内のX線インサート110を含む。ハウジング102はインサート110を閉囲する。冷媒または空気は、ハウジング102とインサート110との間の空間またはキャビティを充填してもよい。陰極112及び陽極組立体120は、インサート110とも呼ばれる真空排気済み外囲器内に位置決めされる。陽極組立体120は、陽極122、軸受組立体130、及び軸受組立体130に機械的に結合された回転子128を含む。陽極122は、陰極112から離間し、かつ陰極112に対向して配設される。陽極122及び陰極112は、陽極122と陰極112との間での高電圧電位の印加を可能にする電気回路に接続される。陰極112は、適切な電力源(図示せず)に接続される電子エミッタ116を含む。
【0013】
図1に開示されるように、例示的なX線管100の動作に先立って、インサート110は、真空を生成するため排気される。インサート110は真空を閉囲する。その後、例示的なX線管100の動作中に、電流が、陰極112の電子エミッタ116を通して流されて、熱電子放出によって陰極112から電子「e」を放出させる。陽極122と陰極112との間の高電圧差の印加は、その後、電子「e」を、陰極電子エミッタから、陽極122上に位置決めされる焦点軌道124上の焦点上に加速させる。焦点軌道124は、例えば、タングステン(W)及びレニウム(Re)または高原子(「高Z(high Z)」)番号を有する他の材料で構成されてもよい。電子「e」は、加速するにつれて、相当量の運動エネルギーを獲得し、回転する焦点軌道124に当たると、この運動エネルギーの一部が、X線「x」に変換される。
【0014】
焦点軌道124は、放出されるX線「x」がX線管窓104に見えるように配向される。X線管窓104は、ベリリウム(Be)等のX線透過性材料を含むため、焦点軌道124から放出されるX線「x」は、X線管窓104を通過して、意図される対象(図示せず)、その後、検出器に当たり、それにより、X線画像(図示せず)を生成する。
図1は、ハウジング102上の単一窓104(例えば、ガラスインサートであって、放射線がインサートのガラスを通過することを可能にする、ガラスインサートを備える)を示す。他の例において、別個の窓が、インサート110(例えば、金属インサート)とハウジング102との両方の上に含まれてもよい、または、窓は、インサート110だけの上に含まれてもよい。
【0015】
電子「e」が焦点軌道124に当たると、電子「e」の相当の量の運動エネルギーが、熱として焦点軌道124に移される。焦点軌道124上の特定の焦点における熱を低減するため、円板状陽極ターゲットを、通常、回転子128及び固定子106を含む誘導モータを使用して高速で回転させる。誘導モータは、交流(AC)電気モータであり得、トルクを生成するために必要とされる回転子128内の電流は、固定子巻線の磁界からの電磁誘導によって得られる。その後、回転子128は、陽極122に機械的に結合された軸受組立体130のハブを回転させ、ハブは陽極122を回転させる。別の例(図示せず)において、モータは、直流(DC)モータであり得る。
【0016】
X線「x」は、陰極112からの高速電子「e」が、陽極122上の焦点軌道124に当たることによって突然減速されるときに生成される。電子「e」によって陽極122を過熱することを排除するため、回転子128及びスリーブ(図示せず)は、中央シャフト(図示せず)の中心線の周りに高い速度レート(例えば、80〜300Hz)で陽極122及び他の回転可能構成要素を回転させる。X線管100は、同様に、他の冷却機構を含んで、陽極122及び陰極112が発生する熱を低減し得る。
例示的なガントリ
【0017】
X線管及び放射線検出器は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ等の回転X線システムに含まれ得る。コンピュータ断層撮影(CT)は、単一スキャン動作(「スキャン(scan)」)で幾つかの投影画像(「X線撮影投影(radiographic projection)」)を収集することによる対象の内部構造の撮像を含み、人体の選択された部分の内部構造を観察するため、医療分野で広く使用されている。通常、幾つかの2次元投影は、対象から作られ、対象の3次元表現は、種々の断層撮影再構成法を使用して投影から構築される。3次元画像から、対象を貫通する従来のCTスライスが生成され得る。2次元投影は、通常、「点源(point source)」(例えば、X線管)からの放射線を、対象であって、そのサイズ、密度、及び原子組成に基づいて放射線の一部を吸収することになる、対象を透過させ、未吸収放射線を、ピクセル検出器(単に「ピクセル(pixel)」と呼ぶ)のアレイを含む、2次元撮像デバイス(すなわち、放射線検出器)またはイメージャ上に収集することによって生成される。こうしたCTシステムは
図2に示される。
【0018】
図2は、回転X線システムの回転組立体(またはガントリ組立体)200またはガントリを示す。ガントリは、回転可能ガントリフレーム202を支持する固定ガントリフレーム204を含む。回転ガントリは、X線管210と放射線検出器またはイメージャ(図示せず)とを支持し得る。ガントリは、さらに、回転構成要素及びフレームをユーザからシールドすると共に美的カバリングを提供するためのガントリカバー206を含む。回転ガントリフレームは、回転ガントリフレームのガントリアパーチャ208内の軸中心の周りに高速で回転する環状形状(すなわち、リング形状)を含み得る。回転ガントリフレーム上に配設される構成要素にかかる遠心力260(またはガントリ力)は、重力(g力、G、g、またはG負荷)、または、g力の倍数(例えば、g力の20倍)を超え得る大きな力を受け得る。例えば、X線X線管が軸中心から0.7メートルの半径にある回転ガントリフレーム上に搭載される軸受組立体等のX線管上の構成要素は、回転ガントリフレームが0.275秒/回転(sec/rot)で回転する場合、37gsの力を受け得る。
【0019】
CTスキャニングにおける改善は、より高いガントリ回転速度を使用する。結果として、従来の軸受のX線管軸受寿命は悪い影響を受けている。より高いガントリ速度は、軸受組立体の許容可能な寿命を下げ得る。液体金属軸受(LMB:liquid metal bearing)は、より高いG負荷を効果的に扱い得る技術であるが、LMBを実装することは、大幅にコストを増加させ、システム設計に対する大幅な変更を必要とし得る。本明細書で述べる磁気リフトデバイスは、既存のシステムに対する修正を可能にし得る、または、非常に費用効果的である上位互換性のある寿命改善を提供し得る。論じるように、ガントリ力260は、
図3に示すように、X線管210内の陽極組立体(
図6の240)の軸受組立体(
図6の250)等の構成要素に対して更なる応力及び摩耗を付加し得る。
【0020】
図3は、回転可能ガントリフレーム202に取付けられたX線管210を示す。X線管は、管ハウジング211、陰極(
図1の112)によって放出される電子を受取り得る陽極242、陽極のシャフトに結合された回転子234、回転子を囲む固定子232、回転子に結合された強磁性リフトシャフト(またはリフトシャフト)226、及び、リフト電磁石222(または、リフト多極電磁石または電磁石)を含み、リフト電磁石222は、リフト電磁石にリフト260を提供し、それにより、実質的に同様の中心線または回転軸に沿って回転子及び陽極のシャフトを持上げる。本明細書で使用するとき、持上げは、軸(例えば、強磁性リフトシャフトの単一軸または実質的な半径方向)に沿う力を指す。持上げまたはリフト力は、2つの構成要素(例えば、強磁性リフトシャフト及びリフト電磁石)を共に引っぱる引力または2つの構成要素(例えば、強磁性リフトシャフト及びリフト電磁石)を押して離す反発力であり得る。引力としての持上げまたはリフト力にしばしば言及するが、持上げまたはリフト力が、半径方向軸に沿う(正または負の)任意の大きさを有する力であり得ることが理解される。説明のため、
図3は、垂直方向にy軸、水平方向にx軸、及びx−y平面に直交するz軸を有するデカルト座標系を提供する。ガントリの回転は、x−y平面内で起こり、陽極のシャフトの中心線または陽極の回転軸は、z軸に沿って生じる。回転中、X線管がガントリの回転軸に対して垂直であると、ガントリ力は、垂直方向(すなわち、y軸)に力を加える。リフト電磁石222は、反対方向に磁気リフト力262(例えば、磁力、反作用力、または平衡力)を加え得る。磁力は、軸受組立体または陽極組立体にかかる力(ガントリの遠心力を含む)を、相殺、減衰、減少、または平衡させ得る。リフト力は、振動またはノイズを低減し、軸受寿命を増加させ、軸受負荷能力を増加させ、熱接触を制御し、回転組立体の芯出し及び精度を改善し、回転型X線管(例えば、回転陽極型X線管)におけるより小さな軸受(例えば、玉軸受または他の回転軸受)の使用または他の軸受型の使用を可能にし得る。振動及びノイズを低減することは、同様に、スキャニングプロセスを患者にとってより快適にし得る。例は、回転陽極に関して示されている。他の例(図示せず)において、陽極が固定されたまま、陰極が回転する(すなわち、回転陰極型X線管)。本明細書で述べる原理は、同様に、回転陰極型X線管に当てはまり得る。
例示的なリフト電磁石
【0021】
図4は、X線管210の覆いまたはインサート212を示す。インサートは、真空排気済みチャンバまたは外囲器内に陰極及び陽極を閉囲する壁(すなわち、インサート壁または覆い壁)を含む。インサート壁は、陰極領域(図示せず)、ドリフト領域213、陽極領域216、回転子領域(
図6の215)、及びリフト領域214を閉囲し得る。
【0022】
図5〜6は、X線管210のインサート212及びリフト電磁石222の種々の図を示す。X線管は、陽極組立体240、軸受組立体250、モータ組立体230、及びリフト組立体220を含む。陽極組立体、軸受組立体、モータ組立体、及びリフト組立体は、陽極組立体中心線(または軸受中心線)248の周りに回転するように設計される。陽極領域内の陽極組立体240は、陽極242と、陽極を支持する陽極外側シャフト244と、外側シャフトに結合され、軸受組立体内の軸受(例えば、玉軸受252及び254)に回転可能に結合された陽極内側シャフト246とを含む。内側シャフトは、少なくとも1つの軸受レース(例えば、玉軸受レース)を含み得る。軸受組立体250は、外側玉軸受及びレース252、内側玉軸受及びレース254、及び軸受スリーブ246を含む。外側は、陽極組立体の縁に近いか、陽極に近いか、またはモータ組立体230から更に遠い、相対的位置を指す。内側は、陽極組立体の中央に近いか、陽極から更に遠いか、モータ組立体に近い位置を指す。ローラ要素軸受型(例えば、ツールスチール玉軸受またはツールスチールレースウェイ)が示されるが、他の実施形態において、他の軸受型、例えば、
図7に示す平軸受(例えば、スリーブ軸受またはジャーナル軸受)または液体金属軸受(LMB)等の流体力学軸受が使用され得る。参照によりその全体が組込まれる、「Antiwetting Coating for Liquid Metal」と題する、2015年12月14日に出願された米国特許出願第14/968,078号は、液体金属軸受の例を開示する。
図7において、陽極241は、軸受組立体用の回転スリーブとして働く陽極シャフトまたはスリーブ247に結合される。リフトシャフトまたはスリーブ229は、陽極スリーブに結合され得、回転子235は、リフトスリーブに結合され得る。軸受シャフト257は固定構成要素であり、陽極スリーブ247はスリーブ軸受の回転構成要素である。
【0023】
戻って
図5〜6を参照すると、モータ組立体230は、固体子232及び回転子234を含む。回転子234は、円筒ボイドであり得る回転子ボイド236または開口を一端に含む。回転子ボイドを有する回転子は、回転子スリーブを形成し得る。回転子ボイドは、回転子が、陽極シャフト(例えば、陽極内側シャフト246)に取付けられる、または、軸受中心線248に整列されることを可能にする。構成要素(例えば、陽極シャフト及び固定子(または固定子シャフト))は、ボルト、ナット、ねじ、他のねじ山付き締結具、リベット、ピン、クリップ、クラスプ、ラッチ、クランプ、ろう付け、または溶接等の、永久的または半永久的な締結または取付け機構を使用して互いに取付けられ得る。構成要素は、ねじ、ボルト、半永久的取付け機構、または永久的取付け機構を使用して互いに結合され得る。半永久的取付け機構は、ねじ、ボルト、または、取付け機構の構成要素を操作することによって取付けまたは取外しされ得る他の機構を含む。永久的取付けは、溶接、接着剤、2つの構成要素を共に結合する熱または化学処理を含み、それは、構成要素に対する損傷なしで構成要素を互いから取外すための、構成要素の操作以上のことを必要とする。別途述べない限り、構成要素の取付けは、半永久的取付け機構または永久的取付けによって提供され得る。別の例(図示せず)において、回転子は、陽極シャフトに一体化され得るまたは永久的に取付けられ得る(例えば、溶接され得る、またはろう付けされ得る)。回転子領域215の周りのインサート壁は、回転子と固定子との間に配設され得る。固定子巻線の磁界からの電磁誘導は、インサート壁を通して回転子に伝わり得る。インサート壁と回転子との間の小さなギャップは、回転子が機械的抵抗なしで回転することを可能にする。
【0024】
リフト組立体220は、軸受中心線248に(例えば、回転子によって)結合した強磁性リフトシャフト(またはリフトシャフト)226、及び、リフトシャフトに磁力を印加し得るリフト多極磁石222を含む。リフトシャフトは、円筒ボイドであり得るリフトシャフトボイド227または開口を含み得る。リフトシャフトボイドを有するリフトシャフトは、リフトスリーブを形成し得る。リフトシャフトボイドは、回転子が回転子に取付けられることを可能にする、または、回転子スリーブまたは軸受中心線248に整列され得る。シャフト内の渦電流を低減するため、リフトシャフトは、中心線の方向(z軸)にスロット270を、また中心線に垂直な方向(x−y平面)に積層体272を含む。
図22は、スロット付き強磁性シャフト226Aを示す。
図23は、積層式強磁性シャフト226Bを示す。
図5〜6は、回転子をリフトシャフトに結合するために使用される回転子・リフトシャフトアダプタ238を示す。回転子・リフトシャフトアダプタは、動作のために共に磁界を使用する回転子組立体とリフト組立体との間の磁気分離を改善するための非強磁性材料を含み得る。別の例(図示せず)において、リフトシャフトは、回転子と一体化され得る、または、回転子に永久的に取付けられ得る(例えば、溶接され得る、またはろう付けされ得る)。
【0025】
リフト多極磁石は、強磁性シャフトのほうに向けられた少なくとも2つの極端を含む。
図2〜6に示すリフト多極磁石は222、「M」または「W」形状に形成された3つの極端を有するリフト電磁石コア(またはコア)225を含み、巻線224は極間でコア(またはコアウェブ)に巻付けられる。
図2〜6に示す3極磁石設計は、レンツの法則の結果として起こり得る渦電流を相殺する利益を有し、加熱を低減し、磁気リフト力を増加させる。3極構成における最大持上げ力のために、外側極は、内側極と反対の極性を有するように(例えば、巻線の電流方向によって)構成され得る(例えば、外側極上のS極及び内側極上のN極;または、外側極上のN極及び内側極上のS極)。3極電磁石の「M」構成は、同様に、リフト電磁石の磁気コア内の渦電流を低減し得る。他の例(図示せず)において、4極、5極、またはそれより多い極等の更なる極が使用され得る。複数の極の場合、強磁性シャフトのほうに向けられた極端は、中心線軸の方向(すなわち、z軸)にN極とS極との間で交番する。
【0026】
フーコー電流とも呼ばれる渦電流は、ファラデーの誘導法則によって、導体内で磁界を変化させることによって導体(例えば、金属)内で誘導される円電流である。ファラデーの誘導法則は、磁界が、どのように電気回路と相互作用して、起電力(EMF:electromotive force)を生成するか―電磁誘導と呼ばれる現象―を予測する電磁気学の法則である。渦電流は、磁界(Bフィールド)に垂直な平面内で、電気導体内で閉ループで流れる。渦電流は、例えば交流(AC)電磁石によって、または、磁石と近傍導体との間の相対的運動によって生成される時間変動磁界によって、近傍の静止導体内に誘導され得る。所与のループ内の渦電流の大きさは、磁界(B)の強度、ループの面積、及び磁束(Φ)の変化レート(すなわち、周波数)に比例し、材料の抵抗率(ρ)に逆比例する。
【0027】
材料選択は、リフト磁石または強磁性シャフト等の磁気デバイスの性能に影響を及ぼし得る。冷間引抜きカーボン磁鉄(CMI−C:cold drawn carbon magnetic iron)等の磁気材料は、真空中で、かつ処理後に磁化されたままであり、真空対応である必要がある。
【0028】
リフト磁石または強磁性シャフトは、強磁性材料及びフェリ磁性材料を含む。強磁性材料及びフェリ磁性材料は自発磁化を示し得る材料である。より具体的には、材料は、その磁鉄の全てが、正味磁化に積極的な寄与を付加する場合、「強磁性(ferromagnetic)」である。磁鉄の一部が、正味磁化から減じる場合(磁鉄が部分的に反整列する場合)、材料は「フェリ磁性(ferrimagnetic)」である。フェリ磁性材料は、反強磁性の場合と同様に、反対方向の磁気モーメントを有する原子の集合体を有する材料である。しかし、フェリ磁性材料において、反対方向のモーメントは、不等であり、自発磁化が残っている。強磁性は、少数の物質、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、それらの合金、及び、希土類金属の幾つかの合金において生じる。例えば、強磁性化合物または材料は、マンガンビスマス(MnBi)、マンガンアンチモン(MnSb)、二酸化クロムまたは酸化クロム(IV)(CrO
2)、マンガンヒ素(MnAs)、ガドリニウム(Gd)、「ジスプロシウム(Dy)、及び酸化ユーロピウム(EuO)を含む。フェリ磁性化合物または材料は、酸化鉄(III)(Fe
2O
3)または酸化第二鉄、酸化鉄(II,III)(FeOFe
2O
3またはFe
3O
4)、酸化ニッケル−酸化鉄(III)(NiOFe
2O
3)、酸化銅−酸化鉄(III)(CuOFe
2O
3)、酸化マグネシウム−酸化鉄(III)(MgOFe
2O
3)、酸化マンガン−酸化鉄(III)(MnOFe
2O
3)、及びイットリウム鉄ガーネット(Y
3Fe
5O
12)を含む。本明細書で使用するとき、また、技術を説明するときに簡略化するため、「強磁性」材料は、自発磁化を示し得る材料(すなわち、強磁性材料またはフェリ磁性材料)を指す。
【0029】
リフト磁石または強磁性シャフトは、固体金属コア(例えば、シリコン鋼コア)、粉末化金属コア(例えば、カルボニル鉄コア)、及びフェライトまたはセラミックコアを含み得る。固体金属コアは、「軟(soft)」(アニール済み)鉄、「硬(hard)」鉄、積層式シリコン鋼、特殊合金(ミューメタル、パーマロイ、及びスーパーマロイ等の磁気コア用途用の特殊合金)、及びガラス体金属(例えば、非結晶性またはガラス状であるアモルファス金属合金(例えば、Metgla))を含み得る。
【0030】
電気鋼、積層鋼、シリコン電気鋼、シリコン鋼、リレー鋼、または変圧器鋼とも呼ばれる積層式シリコン鋼は、小さなヒステリシス面積(すなわち、1サイクル当たりの小さなエネルギー散逸または低コア損失)及び高い透磁率等の或る磁気特性を生成するように調節された特殊鋼である。積層式シリコン鋼材料は、通常、2mm厚未満の冷間圧延ストリップの形態で製造される。これらのストリップは、コアを形成するように積重ね合わせられると積層体と呼ばれる。
【0031】
積層式シリコン鋼内の鉄は、比較的良好な導体であるため、磁界が急速に変化する状態で、バルク形態で使用できない。その理由は、強い渦電流が、磁界によって現れ、多大な損失(例えば、誘導加熱)をもたらすことになるからである。
【0032】
鉄の抵抗を増加させる、したがって、渦電流を低減させるために一般に併せて使用される2つの技法は、シリコンを加えた鉄の積層化及び合金化である。
【0033】
積層式磁気コアは、磁束線に出来る限り平行に存在する薄い絶縁鉄シートで作られる。この技法を使用すると、磁気コアは、多くの個々の磁気回路と同等であり、それぞれの磁気回路は、(そのセクションが全コアセクションの一部分であるため)磁束のほんのわずかの部分を受取る。渦電流が磁束線の周りに流れるため、積層体は、渦電流の大部分を流れないように減らし、ずっと小さく薄い、したがって高抵抗の領域にいずれの流れをも制限する。そのため、より薄い積層体は、より低い渦電流をもたらす。
【0034】
シリコン(Si)合金化が同様に使用されて、鉄(Fe)の抵抗を増加させる。鉄に対するシリコンのわずかな(例えば、約3%)添加は、鉄だけを使用するのに比べて最大4倍の抵抗率の劇的な増加をもたらす。シリコン濃度の更なる増加は、鋼の機械的特性を損ない、脆性によって圧延の困難さを生じる。
【0035】
2つのタイプ、粒子配向(GO:grain−oriented)及び粒子非配向(GNO:grain non−oriented)のシリコン鋼の中で、GOは、磁気コアにとってより望ましい。粒子配向シリコン鋼(GOSS:grain−oriented silicon steel)コアまたは冷間圧延粒子配向(CRGO:cold−rolled grain−oriented)シリコン鋼は、異方性であり、一方向においてGNOに比べて良好な磁気特性を提供する。インダクタ及びコア内の磁界が同じ方向に沿うため、粒子配向鋼を好ましい配向で使用することが有利である。磁界の方向が変化し得る回転機械は、粒子配向鋼から利益を獲得せず、したがって、GNOシリコン鋼が使用され得る。
【0036】
フェライトは、リフト磁石または強磁性シャフトに使用され得る別のタイプのフェリ磁性磁気材料である。フェライトは、1つまたは複数の更なる金属元素(Me)と化学的に結合された酸化鉄(III)(Fe
2O
3)または酸化鉄 (II,III)(Fe
3O
4)で通常構成される一種のセラミック化合物である。別の例において、フェライトは、鉄で構成されない材料を含む。強磁性は、鉄に最も一般的に関連付けられる一般的なクラスの磁気挙動であるが、同様に、他の材料に関連付けられ得る。フェライトは、電気的非伝導性であると共にフェリ磁性であり、フェライトが磁化され得るまたは磁石に引寄せられ得ることを意味する。フェライトは、通常、ヘマタイト(Fe
2O
3)またはマグネタイト(Fe
3O
4)等の酸化鉄及び他の金属の酸化物から得られる非伝導性のフェリ磁性セラミック化合物である。フェライトは、他のセラミックのほとんどと同様に、硬質かつ脆性である。
【0037】
フェライトは、磁気保磁力が低いまたは高いフェライトを指す、「軟質(soft)」または「硬質(hard)」として分類され得る。磁気保磁力、保磁場、または保磁力は、消磁されることなく、外部磁界に耐える強磁性材料の能力の尺度である。同様の特性、抗電力は、脱分極することなく、外部電界に耐える強誘電体材料の能力である。
【0038】
軟質フェライトは、低保磁力を有し、電磁コアにおいて使用され得る、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び/またはマンガン(Mn)化合物を含む。低保磁力は、材料の磁化が多くのエネルギーを散逸する(ヒステリシス損失)ことなく方向を容易に反転させ得、一方、材料の高抵抗率が、コア内の渦電流を防止し、それが、別のエネルギー損失源になることを意味する。軟質フェライトの幾つかの例は、マンガン−亜鉛フェライト(式Mn
aZn
(1-a)Fe
2O
4を有するMnZn)及びニッケル−亜鉛フェライト(式Ni
aZn
(1-a)Fe
2O
4を有するNiZn)を含む。
【0039】
軟質フェライトと対照的に、永久フェライト磁石は、磁化後に高い保磁力及び高い残留磁気を有する硬質フェライトで作られる。酸化鉄及び炭酸バリウムまたは炭酸ストロンチウムは、硬質フェライト磁石を製造するときに使用される。高保磁力は、材料が、永久磁石についての本質的な特性である、消磁されることに対して非常に抵抗性があることを意味する。それら材料は、同様に、高い透磁率を有する。硬質フェライトの例は、ストロンチウムフェライト(SrFe
12O
19またはSrO・6(Fe
2O
3))、バリウムフェライトBaFe
12O
19(BaO・6(Fe
2O
3))、及びコバルトフェライトCoFe
2O
4(CoO・Fe
2O
3)を含む。
【0040】
戻って
図5〜6を参照すると、コア225の周りの巻線(またはコイルまたはワイヤ)224は、エナメル磁石ワイヤ(すなわち、変圧器ワイヤ)等の、電気絶縁シースを有する導電性材料(例えば、銅またはアルミニウム)を含み得る。
【0041】
リフトギャップ228は、リフトシャフト226とリフト電磁石222との間の間隔である。リフトギャップは、リフト領域214内のインサート壁を、インサート壁とリフトシャフトとの間の真空と共に含み得る。幾つかの例において、リフト電磁石及びインサート壁が異なる電位を有するとき等、リフト電磁石がインサート壁に接触しないときに、リフトギャップは、インサート壁とリフト電磁石との間に空間を含む。真空を含むリフトギャップは、リフトシャフトが、機械的抵抗(例えば、インサート壁またはリフト電磁石に接触することによる摩擦)なしで回転するための隙間及び公差を与える。真空及び空気は、低透磁率(μで表す)を有し、リフトシャフトに作用するリフト電磁石からの磁力を低減し得る。透磁率は、それ自身の中での磁界の形成を支持する材料の能力の尺度である。リフトギャップを減少させることは、リフトシャフトに作用する磁力を増強し得る。リフトシャフトにかかるリフト磁石の力は、リフトギャップの2乗に逆比例し、力Fは、
によって近似され得る。ここで、リフトギャップはgapで表される。一例において、リフトギャップは2ミリメートル(mm)未満であり得る。別の例において、リフトギャップは1mm未満であり得る。磁界の磁束が、極間にではなく、リフトシャフトに主に作用するため、極端間の距離は、リフトギャップに比べて少なくとも10倍大きくてもよい。一例において、リフト領域内のインサート壁は1mm未満であり得る。別の例において、リフト領域内のインサート壁は0.8mm未満であり得る。リフト領域内のインサート壁は、ステンレス鋼等の、低透磁率または最小強磁性特性を有する材料を使用し得る。磁性流体等のギャップ低減材料が、同様に、真空排気されない領域内で使用されてもよい。
【0042】
図8は、インサート壁214に一体化されたリフト電磁石222の極端を示し、それは、リフトギャップを低減し、磁界の強度を増加させ得る。インサート壁へのリフト電磁石の一体化は、インサートの真空を依然として維持するように実施され得る。
図9は、インサート壁214内に位置決めされたリフト電磁石222を示し、それは、リフトギャップを低減し、磁界の強度を増加させ得るが、リフト電磁石の巻線224またはコア225から熱を消散させることに関して難題を呈する場合がある。
【0043】
リフト電磁石222は、(リフトシャフト226を介して)回転組立体に磁気リフト力262を印加し、それが、軸受寿命を改善し得る、または軸受の負荷担持能力を増加させ得る。電磁石の磁力が使用されて、ガントリの遠心力等の軸受組立体にかかる負荷を相殺すると共に、振動を減衰させ、X線管の陽極組立体(または回転組立体)に安定性を付加し得る。リフト磁石が発生する力は、質量中心において(または、質量中心においてではなく)を含む、回転組立体上のどこに作用してもよく、また、力を提供する磁気リフトデバイスのうちの1つまたは組合せを使用してもよい。
【0044】
例えば、
図10は、リフトシャフトとして同様に働く陽極243に磁力を作用させるように構成される2極リフト電磁石223を示す。陽極は、陽極に対する磁気リフトのために使用され得る強磁性材料と共に、X線を発生するための、高原子番号を有する材料(例えば、W及びRe)を含んでもよい。示すように、リフト電磁石は、2つの玉軸受及びレースウェイ252と254との間にある。
【0045】
図11は、2つの異なるリフトシャフトまたはスリーブ226A〜Bに力を作用させる、陽極中心線248の対向端上の2つのリフト電磁石222A〜Bを示す。第1のリフトシャフト226Aは陽極シャフトに結合され、第2のリフトシャフト226Bは回転子234に結合される。リフト電磁石及びリフトシャフトの他の位置が、同様に、軸受組立体及び陽極に対して使用されてもよい。
【0046】
回転組立体に沿うどこかで、または回転組立体上の複数の場所で磁力を使用することは、軸受組立体にかかる力を減少させ、軸受寿命を改善し得る。力は、実質的に質量中心の近くで(
図10参照)、質量中心のいずれかの側で複数の力として(
図11)、または、片持ち力として、回転組立体に沿う複数の場所の組合せにおいて(
図2〜9参照)、または、これらのアプローチの組合せで作用してもよい。
【0047】
図12Aは、リフト電磁石が軸受組立体と固定子との間に位置決めされた状態のX線管の陽極組立体の斜視図を示し、
図12Bは
図12Aの側断面図を示す。リフト磁石は、
図4〜6と比べて、固定子及びリフト磁石の位置を切換えることによって軸受組立体250により近い。リフト電磁石222は、リフトシャフト266を持上げるように構成され、固定子232は、回転子264を回転させるように構成される。多くの管ハウジング設計は、(例えば、陽極領域内の)ハウジングの中心においてより大きな内径を与える。軸受組立体の近くにリフト磁石を位置決めすることは、リフト電磁石222が、管ハウジング設計を変更することなく、同じサイズ(例えば、z軸に沿う長さ)のコアについてより多くのコイルをコアウェブ224(
図6)の周りに有することを可能にし、それが、リフト電磁石のターン数及び力を増加させ得る。リフト電磁石が使用されて、軸受レースにかかるガントリ負荷反作用力を低下及び平衡させ得る。重心に対するリフト力間のモーメントアーム(すなわち、レバレッジ)が小さいため、コイルへの入力パワーは、
図4〜6の設計に比べて大きい場合がある。しかし、コアウェブの周りの巻線のより多くのターンによって、
図12A〜12Bのリフト電磁石は、(より小さなモーメントアームであっても)
図4〜6の設計より大きな最大力を依然として有する場合がある。
【0048】
図13Aは、固定子233がリフト電磁石222と同一平面上にある状態のX線管の陽極組立体の斜視図を示し、
図13Bは
図13Aの側断面図を示す。固定子及びリフト電磁石は、回転シャフトの同じセクション上で(すなわち、z軸に沿う同じx−y平面内で)動作し得る。リフト電磁石及びリフトシャフト239は、モータ及びリフト組立体231の外部に位置決めされ、固定子及び回転子237は、モータ及びリフト組立体の内部に位置決めされ、固定子は回転子ボイド内に位置決めされる。リフトシャフト及び回転子は、軸受組立体の近くの一端に共に結合される。リフト電磁石及び固定子は、真空排気済み外囲器の外に依然として位置決めされ得、リフト領域の周りのインサート壁217は、リフト電磁石とリフトシャフトとの間に位置決めされ、回転子領域の周りのインサート壁218は、固定子と回転子との間に位置決めされる。
図13A〜13Bに示す設計は、X線管プロファイル(例えば、z軸に沿う管ハウジング及びインサート)の長さを低減し得るが、モータ及びリフト組立体領域内のX線管プロファイルの径を増加させる場合がある。
【0049】
図14Aは、セクタ固定子296が、モータ及びリフト組立体290内の同じ回転子294に作用するように構成されたリフト電磁石291と同一平面上にある状態のX線管の陽極組立体の斜視図を示し、
図14Bは
図14Aの側断面図を示す。リフト電磁石は、他の設計のリフト電磁石と同様に構成され得、リフト電磁石コイル292は、リフト電磁石コア293に巻付けられるが、極端について楔形状またはパイ形状を有する。更に、極端は、回転子の近くにフランジを含み得る。図示しないが、インサート壁は、セクタ固定子またはリフト電磁石と回転子との間に存在する。回転子は、リフト電磁石用のリフトシャフトとして機能し得る。セクタ固定子は、(例えば、回転子の外周の360°未満だけ)回転子を部分的に囲む(または、回転子と部分的に磁気結合する)固定子である。従来の固定子と同様に、セクタ固定子は、固定子コア298の周りに、またはそれを通して巻かれる固定子コイル297を有する。対照的に、従来の固定子は、360°外周にわたって回転子を完全に囲む対称巻線を有する。一例において、セクタ固定子は、90°と355°との間のセクタを覆う。別の例において、セクタ固定子は、240°と330°との間のセクタを覆う。セクタ固定子は、最大速度に達する同様の時間、同様のサイズ、及び同様のコイル加熱等の、従来の固定子と同様の機能を有してもよい。通常、従来の固定子が使用されて、最小の固定子または回転子(例えば、より少数のコイルまたはコイル内のより少ない電流)の設計で回転子との最大の磁気結合を設ける。リフト電磁石は、セクタ固定子によって生成される結果として得られるギャップを占めてもよい。一例において、リフト電磁石は、180°と5°との間のセクタを覆う。別の例において、リフト電磁石は、120°と30°との間のセクタを覆う。
図14A〜14Bに示すセクタ固定子291は、約270°のセクタを有し、リフト電磁石は、90°未満のセクタを有する。セクタ固定子設計は、従来の固定子設計と同じX線管プロファイルを有し、電磁石リフト能力を有し得る。
【0050】
図15は、リフト組立体を従来の固定子に結合するモータ及びリフト組立体281のハイブリッド固定子283を有する陽極組立体280の側断面図を示す。固定子は、持上げ(例えば、リフト電磁石)と回転(例えば、従来の固定子)の両方のために巻かれるコイルを含む。固定子の極のそれぞれの極の周りで固定子283の1つの部分上のターンを増やすことによって、固定子が、持上げると共に回転を駆動することを可能にし得る一方で、固定子282の他の部分が従来のターン数(固定子283より少ないターン)を有し得る。結果として、固定子283は、回転だけのために構成される固定子282に比べて、更なるターン(またはコイル)に対して大きくてもよい。回転用のコイル(例えば、AC用のコイル)は、リフト用のコイル(例えば、AC用のコイル)から離れ得る。例えば、固定子は、DC磁界が、回転AC場に重畳されることを可能にする更なる巻線を含み得るため、固定子は、持上げると共に回転する。回転子は、リフトシャフト及び従来の回転子として機能し得る。
【0051】
図16Aは、リフト電磁石のコイルが固定子コイル(固定子及びリフトコイル286)と一体化した状態のハイブリッド固定子283の斜視図を示し、
図16Bは
図16Aの側断面図を示す。一体化コイルは、持上げ及び回転用の同じコイルであり得る、または、持上げ用のコイル及び回転用のコイル上の分離電気接続部であり得る。
【0052】
図17Aは、リフト電磁石のコイル288及び固定子コイル289を有するハイブリッド固定子の斜視図を示し、
図17Bは
図17Aの側断面図を示す。リフトコイルは固定子の一方の側上での持上げを提供し、固定子コイルは回転子用の回転を与える。
【0053】
図18Aは、リフト電磁石222及び副リフト電磁石221を有するX線管の陽極組立体の斜視図を示し、
図18Bは
図18Aの側断面図を示す。複数の電磁石の使用は、陽極組立体の重心を人工的にシフトさせるために使用され得る。陽極組立体上のリフトにとっての理想的な場所は、陽極組立体の重心にある。しかし、重心は、通常、ターゲットの内部またはその近くに位置し、熱的理由及び空間的制約のため、陽極は持上げるのが難しい可能性がある。結果として、例えば、リフト電磁石は、別の軸受レース252と比べて1つの軸受レース254(フルクラムとして働く)に対してより大きな力または応力をかけ得る。2つの磁石、リフト電磁石、及び副リフト電磁石の使用は、軸受にかかるリフト力を平衡させるのを補助し得る。2つの磁石の使用は、陽極組立体及び軸受に対する運動及び力におけるより複雑な挙動及びより大きな自由度を可能にし得る。重心の近くに位置する副リフト電磁石は、g力と反対方向の力を加え、軸受にかかる負荷を低減し得る。重心から更に遠くに位置するリフト電磁石は、副リフト電磁石から反対方向に引張り、各軸受レースに等しい負荷をかけるのを助けるための平衡力を提供し得る。更なるリフト電磁石は、(z軸に沿って)X線管プロファイルに更なる長さ付加し得る。
【0054】
リフト電磁石は、種々のコイルまたは巻線構成を有し得る。例えば、コイルは、極端(例えば、内側極端または外側極端)上に、または、極端間のコアウェブ上に付加され得る。
図19A〜21Bは、種々のコイル構成を有するリフト電磁石を示す。外側極端322にコイルを付加することは、X線管プロファイルに更なる長さを付加し得、望ましくない場合がある。
【0055】
図19Aは、コイル334が内側極端324の周りにある状態の3極リフト電磁石310の斜視図を示し、
図19Bは、
図19Aの側断面図を示す。内側極端の周りにコイルを有することの利益は、コイルが磁石コア320の体積の内部に含まれることである。したがって、磁石コア体積は、リフト電磁石が、飽和する前により多くの磁束を扱えるように最大にされ得る。欠点は、磁束が、3極のうちの1つの極において制御されるだけである場合があることである。例えば、(各外側極とリフトシャフトとの距離または他の因子によって)外側極の1つの極内に、他の外側極より多くの磁束が存在するため、リフトは、リフト電磁石間で平衡しない場合がある。結果として、リフト力は、最適でない場所に印加される場合がある。
【0056】
図20Aは、コイル336が極端322と324との間のコアウェブ326の周りにある状態の3極リフト電磁石312の斜視図を示し、
図20Bは、
図20Aの側断面図を示す。コアウェブコイルによって、磁束は、特に、コイルが等しい数のターン及び同様の電流を有する場合、磁石内で均一に平衡され得る。しかし、コアウェブコイルのそれぞれの半分が、磁石コア320の外にあるため、磁石コアから突出するコアウェブコイルは、リフト電磁石に与えられる空間を管ハウジングが制限する場合に磁石コアのサイズを減少させる場合がある。したがって、同じ体積の場合、このコイルパックの変形は、単一中央コイルに比べて、小さな磁石コア及び少ない磁束容量をもたらす。
【0057】
図21Aは、コイル334及び336が内側極端324及び極端間のコアウェブ326の周りにある状態の3極リフト電磁石314の斜視図を示し、
図21Bは、
図21Aの側断面図を示す。リフト電磁石314は、リフト電磁石310とリフト電磁石312とのハイブリッドである。更なるコイルを有することは、コイルターン数及び総体積の最適化によってリフト電磁石を最適化するときに、より大きな自由度を与える。例えば、リフト電磁石の3つの異なるコイルは、比較的小さなサイズを依然として維持しながら、磁石の種々の極を通る等しい磁束によって、磁石性能及び力を最大にするターン数を有し得る。
【0058】
磁気リフトデバイスは、受動的(例えば、永久磁石)または能動的(例えば、電磁石)であり得る。能動手段の例は、電磁力または誘導力を含む。受動手段の例は、ガントリ力の方向と反対方向の力で負荷がかかる支持軸受、または、ガントリ力と反対方向に軸受に負荷をかける永久磁石を含む。永久磁石及び電磁石を含み得る1つまたは複数の磁気リフトデバイスは、力相殺デバイスとして使用され得る。
【0059】
ガントリ力が一定でない(動作していないとき静止する、スタートアップ中にランプアップする、シャットダウン中にランプダウンする、または、指定されたガントリ速度である)ため、リフト力は、同様に、可変ガントリ力に適合するように変動する場合がある。リフト電磁石に対する供給電流は、
図24に示す、制御式モジュール、制御システム、または管制御ユニット(TCU:tube control unit)450等の制御ユニットによって制御されて変動する場合がある。リフト電磁石は、リフト電磁石の巻線内のACまたはDCによって励磁され得る。リフト電磁石及び強磁性シャフトは、ACまたはDCに適合され得る。TCUは、リフト磁石用の電流を発生するリフトドライバ452を含み得る。幾つかの例において、TCUはX線管に一体化され得る、または、他の例において、TCUは、X線管と別個の構成要素であり得る。TCUは、回転ガントリフレーム上に、または、固定ガントリフレーム等の固定構成要素上に位置し得る。
【0060】
図24は、例示的なX線システム400(例えば、回転X線システム)の幾つかの構成要素を示す。X線システムは、X線ビーム428を発生すると共にリフト磁石412を含むX線管410と、X線管に対して幾つかの制御作用を与え得るTCU450と、X線ビームを検出すると共に画像データ432を生成するX線検出器430と、X線システムの構成要素(例えば、X線管、TCU、X線検出器、及びガントリ)に全体的なコントロール及びシステム情報442(例えば、パラメータ)を与え得るシステム制御ユニット440とを含む。システム制御ユニットは、ガントリ速度を含み得るガントリコントロール444を与えてもよい。TCUまたはシステム制御ユニットは、システム情報を使用して、X線管の軸受組立体にかかるガントリ力を計算し得る。ガントリ力を含む負荷力に基づいて、TCUは、負荷力を相殺するまたはそれに対抗するリフト力を発生し得る。一例において、TCUは、X線管に一体化され得る。別の例において、TCUは、X線管と別個の構成要素であり得る。幾つかの例において、TCUは、操向及び収束等のX線管に関連する他の機能を含み得る。
【0061】
別の例において、X線管は、負荷力、ガントリ力、またはリフト力を特定するために使用され得る陽極組立体のパラメータを測定するセンサ414を含む。センサは、X線システムの動作中に動的フィードバックを供給し得る。例示的なセンサは、リフト電磁石の磁束を測定するために使用される、リフト電磁石の極端に対して非常に接近するホールセンサ;リフト電磁石の巻線の電流を測定するために使用される、リフト電磁石の巻線に結合された電流センサ;リフト電磁石の巻線の抵抗を測定するために使用される、リフト電磁石の巻線に結合された電圧センサ;リフト電磁石と強磁性シャフトとの間のギャップの距離または強磁性シャフトの偏向を測定するために使用される変位センサまたは超音波センサ;陽極組立体内の振動、遠心力、または回転子力を測定するために使用される加速度計416;リフト電磁石の巻線またはコアの温度を測定するために使用される、リフト電磁石の巻線またはコアに結合された温度センサまたは熱電対;または、軸受組立体にかかる力を測定するために使用される力センサを含み得る。
【0062】
一例において、TCU及びX線管は、システム制御ユニットまたはガントリコントロールからのシステム情報と無関係にセンサフィードバックを供給し得る。センサは、負荷力、ガントリ力、またはリフト力が導出され得る測定値を提供し得、TCUは、リフト電磁石への電流を調整して、負荷力、ガントリ力、またはリフト力の変化する状態に適応し得る。
【0063】
図25は、リフト電磁石を制御する例示的な制御システムを示す。制御システムは、制御モジュール470及びリフトドライバ452に電力457及び458を供給するリフト電源454を有するTCU450を含む。制御モジュール470は、プロセッサ472(例えば、コントローラまたはマイクロプロセッサ)とリフトデータ482を含み得るデータストレージ480とを含む。プロセッサは、TCUを初期化するブートローダコード472、TCUアプリケーションを実行するアプリコード(appcode)476、及びデータを処理するためのデータメモリ478を含むメモリ472を含む。制御モジュールは、リフト電流を発生するために強度信号454をリフトドライバ452に送信し、リフトドライバからエラー信号を受信し得る。
【0064】
作用する磁力は、TCUからの電力によって制御され得、TCUは、リフト電磁石内の電流、リフト電磁石から強磁性シャフトまでの距離、またはこれらのアプローチの組合せを制御し得る。
【0065】
永久磁石は、リフト力を供給するために使用され得るが、リフトシャフトから固定距離で一定の力を供給し、それは、永久磁石とリフトシャフトとの距離を調整することなく、変化するガントリ速度(ガントリ力を変化させる)に基づいてリフト力を変化させることを可能にしない。永久磁石は、磁化され、それ自身の永続的磁界を生成する材料から作られた物体である。
【0066】
永久磁石が使用される場合、強磁性シャフトにかかる磁力は、ハルバッハアレイ等の磁石アレイの場合、距離、温度、磁石要素配向、ギャップ、または、挿入材料によって制御され得る。ハルバッハアレイは、磁石の特別な配置であり、アレイの一方の側で磁界を増大させ、一方、アレイの他方の側でほぼゼロまで磁界を相殺する。
【0067】
図26は、アクチュエータと共にリフト磁石として永久磁石350を使用するX線管を示す。アクチュエータは、リフトギャップを変更し得、それが、リフトシャフトにかかる力を変更し得る。アクチュエータが使用されて、ガントリ速度または軸受組立体にかかる負荷に基づいてリフト力を変更し得る。リフト磁石は、x軸可動シャフト361を介してx軸アクチュエータ360に、y軸可動シャフト363を介してy軸アクチュエータ362に、またはz軸可動シャフト365を介してz軸アクチュエータ364に結合され得る。x軸アクチュエータ、y軸アクチュエータ、またはz軸アクチュエータは、管ハウジングに結合され得、x軸可動シャフト、y軸可動シャフト、またはz軸可動シャフトは、永久磁石に結合され得る。別の例において、可動シャフトは、管ハウジングに結合され得、アクチュエータハウジングは、永久磁石に結合され得る。
【0068】
別の例において、リフト永久磁石は、リフト電磁石と組合せて使用されてもよい。
リフト電磁石を制御する方法
【0069】
図27に示すフローチャートは、X線管の陽極組立体上でリフト電磁石を制御する方法600を示す。ステップ610のように、陽極組立体の軸受組立体に半径方向に作用する負荷力を特定するステップを含む。ステップ620のように、リフト電磁石が負荷力に抗するための電気リフト信号を発生するステップが続く。本方法の次のステップは、ステップ630のように、軸受組立体に結合された強磁性シャフトにかかる磁気反力をリフト電磁石によって発生することを含む。磁気反力は、電気リフト信号から発生され、負荷力と実質的に反対の方向にある。
【0070】
本明細書で述べる技術(デバイス、組立体、構成要素、システム、及び方法)は、回転X線システム内のX線管の従来の軸受組立体、特に、高g力状態を発生する軸受組立体に関する難題の多くを解決する。述べる技術は、軸受組立体または陽極組立体にかかる力(ガントリの遠心力を含む)を相殺、減衰、減少、または平衡させ得る。述べる技術は、振動またはノイズを低減し、軸受寿命を増加させ、軸受負荷能力を増加させ、熱接触を制御し、回転組立体の芯出し及び精度を改善し、回転型X線管(例えば、回転陽極型X線管)におけるより小さな軸受(例えば、玉軸受または他の回転軸受)の使用または他の軸受型の使用を可能にし得る。
【0071】
述べた例の少なくとも1つの例であるX線管であって、軸中心から0.7メートルの半径で回転ガントリフレーム上に搭載され、0.275sec/rot(≒37gs)で回転し、リフト電磁石を使用する、X線管を使用すると、軸受上での回転数は、軸受が故障するまでのリフト電磁石なしのX線管上の軸受組立体の従来の寿命の少なくとも3倍であった(すなわち、軸受組立体の寿命は3倍超にX線延長された)。X線管であって、軸中心から0.7メートルの半径で回転ガントリフレーム上に搭載され、約50gsを受け、リフト電磁石を使用する、X線管の場合、軸受組立体の寿命は、軸受が故障するまでの、37gsを受けるリフト電磁石なしのX線管上の軸受組立体の寿命の2倍であった。そのため、リフト電磁石の使用は、陽極組立体内の軸受組立体の寿命を、X線管の寿命の延長だけX線延長し得る。
【0072】
一例において、陽極組立体は、陽極242と、軸受組立体250と、強磁性シャフト226と、リフト電磁石222とを含む。陽極は、陰極によって放出される電子を受取るように構成される。軸受組立体は、陽極の回転中に陽極を安定させるように構成される。強磁性シャフトは、陽極に結合され、陽極の回転軸と実質的に同一直線上にある回転軸を有する。リフト電磁石は、半径方向に強磁性シャフトに磁力を印加するように構成される。
【0073】
別の例において、リフト電磁石は、強磁性シャフトのほうに向けられた少なくとも3つの極端を含む。リフト電磁石の巻線(またはコイル)は、極336間の少なくとも1つのコアウェブ上に、内側極端334上に、または、少なくとも1つのコアウェブ336及び内側極端334上に位置し得る。強磁性シャフトは、スロット付きシャフト226Aまたは積層式シャフト226Bを含み得る。リフト電磁石は、リフト電磁石の巻線内の交流(AC)または直流(DC)によって励磁される。陽極組立体は、陽極に結合した回転子スリーブ234を少なくとも部分的に囲む固定子232を更に含み得、回転子スリーブは、固定子に対する印加電磁界に応答して回転するように構成され、リフト電磁石の巻線は固定子のコアを少なくとも部分的に囲む。軸受組立体は、少なくとも1つのレース252または254を有する玉軸受組立体、回転要素軸受、平軸受、スリーブ軸受247及び257、ジャーナル軸受、または液体金属軸受を含み得る。
【0074】
別の例において、陽極組立体は、強磁性シャフトにかかる磁力を変化させるように構成される制御モジュール470を更に含み得る。陽極組立体は、強磁性シャフトにかかる磁力を検出するセンサ414を更に含み得る。制御モジュールは、センサ値に基づいてリフト電磁石に供給される電流を変化させるように構成される。センサは、リフト電磁石の巻線に結合された電流計または電圧計、リフト電磁石の極端に極接近するホールセンサ、超音波センサ、または変位センサを含み得る。
【0075】
別の構成において、陽極組立体は、陽極に結合された回転子スリーブを更に含み得る。回転子スリーブ234は、印加電磁界に応答して回転するように構成され得る。
【0076】
別の例において、リフト電磁石222または291は、強磁性シャフトの回転軸を基準にして固定子233または296と同一平面上にある。陽極組立体は、陽極に結合された回転子スリーブを部分的に囲むセクタ固定子296を更に含み得る。回転子スリーブは、セクタ固定子に対する印加電磁界に応答して回転するように構成され、リフト電磁石291は、強磁性シャフトの回転軸を基準にしてセクタ固定子と同一平面上にある。セクタ固定子は、180°と350°との間で回転子スリーブを部分的に囲み得る。
【0077】
別の例において、X線管は、真空排気済み外囲器と、真空排気済み外囲器内に配設される陰極と、陰極によって放出される電子を受取るように構成される、真空排気済み外囲器内に配設される陽極と、陽極の回転中に陽極を安定させるように構成される軸受組立体250と、電磁界を発生するように構成される固定子232と、陽極に結合された回転子スリーブ234であって、固定子からの印加電磁界に応答して回転するように構成される、回転子スリーブと、陽極に結合され、陽極の回転軸と実質的に同一直線上にある回転軸を有する強磁性シャフト226と、半径方向に強磁性シャフトに磁力を作用させるように構成されるリフト電磁石222とを含む。
【0078】
別の例において、リフト電磁石は、強磁性シャフトのほうに向けられた少なくとも3つの極端を含む。リフト電磁石の極端は、真空排気済み外囲器の覆いを貫通して延在し得る(
図8)。別の構成において、リフト電磁石は、真空排気済み外囲器内に配設される(
図9)。別の構成において、リフト電磁石222は、強磁性シャフトの回転軸を基準にして固定子233と同一平面上にあり、固定子は、真空排気済み外囲器の外に位置決めされる。別の構成において、リフト電磁石222は、強磁性シャフトの回転軸を基準にして軸受組立体250と固定子232との間に位置決めされる(
図12A〜12B)。
【0079】
別の例において、X線管は、強磁性シャフトにかかる磁力を変化させるように構成される管制御ユニット(TCU)450を更に含む。X線管は、強磁性シャフトにかかる磁力を検出するセンサを更に含み得る。管制御ユニットは、センサ値に基づいてリフト電磁石に供給される電流を変化させるように構成される。X線管は、軸受組立体にかかる力を特定するため、X線管内に配設された加速度計を更に含み得る。管制御ユニットは、加速度計からの加速度計値に基づいて陽極回転速度を計算するように構成され得る。
【0080】
別の例において、X線システムは、回転可能環状ガントリ200と、回転可能ガントリに結合された、先に述べたX線管と、回転可能ガントリに結合され、X線管からのX線放射を検出するように構成される先に述べたX線検出器とを含む。管制御ユニットは、加速度計からの加速度計値に基づいて、軸受組立体にかかるガントリ力またはガントリ回転速度を計算するように構成され得る。
【0081】
別の例において、X線システムは、回転可能環状ガントリと、回転可能ガントリに結合された、先に述べたX線管と、回転可能ガントリのコントロールを与え、TCUにシステムデータを送信するように構成されるシステム制御ユニットとを含み、TCUまたはシステム制御ユニットは、ガントリデータに基づいて軸受組立体にかかる力を計算し、TCUは、軸受組立体にかかる力に比例して磁力を変化させる。X線システムは、回転可能ガントリに結合され、X線管からのX線放射を検出するように構成されるX線検出器を更に含み得る。
【0082】
別の例において、X線管の陽極組立体上においてリフト電磁石を制御する方法は、陽極組立体の軸受組立体に半径方向に作用する負荷力を特定することを含み得る。リフト電磁石が負荷力に抗するために電気リフト信号を発生するステップが続き得る。本方法の次のステップは、軸受組立体に結合された強磁性シャフトにかかる磁気反力をリフト電磁石によって発生することを含む。磁気反力は、電気リフト信号から発生され、かつ、負荷力と実質的に反対の方向である。
【0083】
本方法は、回転可能ガントリフレームを回転させることを更に含み得る。陽極組立体は、X線管に結合され、X線管は、回転可能ガントリフレームに結合され、回転可能ガントリフレームの回転は、ガントリからの遠心力を負荷力に付加する。負荷力を特定するステップは、回転可能ガントリフレームの回転速度に基づいて遠心力を計算することを更に含み得る。
【0084】
別の例において、方法は、センサを使用して、陽極組立体のパラメータを検知することを更に含み得る。負荷力を特定するステップは、パラメータを使用して、負荷力または磁気反力を計算することを更に含む。センサは、リフト電磁石の極端に極接近するホールセンサであり得、パラメータは、リフト電磁石の磁束測定値である、または、センサは、リフト電磁石の巻線に結合された電流センサであり得、そのパラメータは、リフト電磁石の巻線の電流測定値である、または、センサは、リフト電磁石の巻線に結合された電圧センサであり得、そのパラメータは、リフト電磁石の巻線の抵抗測定値である、または、センサは、変位センサまたは超音波センサであり得、そのパラメータは、リフト電磁石と強磁性シャフトとの間のギャップの距離測定値である、または、センサは、加速度計であり得、そのパラメータは、陽極組立体内の振動、遠心力、または回転子力である、または、センサは、リフト電磁石の巻線またはコアに結合された温度センサまたは熱電対であり得、そのパラメータは、リフト電磁石の巻線またはコアの温度測定値である、または、センサは、力センサであり得、そのパラメータは、軸受組立体に対する力測定値である。
【0085】
電気リフト信号を発生するステップは、リフト電磁石の巻線のためのリフト電流を発生することを更に含み得る。磁気反力を発生するステップは、負荷力の変化と共に変化し得る。
【0086】
別の例において、X線管用の陽極組立体は、陰極によって放出される電子を受取るように構成される陽極と、陽極の回転中に前記陽極を安定させるように構成される軸受組立体と、陽極に結合され、陽極の回転軸と実質的に同一直線上にある回転軸を有する強磁性シャフトと、半径方向に強磁性シャフトに磁力を作用させるように構成されるリフト磁石(例えば、永久磁石350)とを含む。
【0087】
本明細書書において列挙される全ての参照は、特定の参照によってその全体が本明細書に組込まれる。
【0088】
本明細書全体を通しての、「例」または「実施形態」に対する参照は、その例に関連して述べる特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通しての種々の場所における「例」または「実施形態」という語の出現は、必ずしもその全てが同じ実施形態を指さない。
【0089】
更に、述べる特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において適した仕方で結合されてもよい。以下の説明において、本発明の実施形態を完全に理解するために多数の特定の詳細が提供される(例えば、レイアウト及びデザインの例)。しかし、本発明は、特定の詳細の1つまたは複数なしに、または、他の方法、構成要素、レイアウト等で実施され得ることを当業者は認識するであろう。他の例において、周知の構造、構成要素、または動作は、本発明の態様を曖昧にすることを回避するため、詳細に示されない、または述べられない。
【0090】
先の例は、1つまたは複数の特定の適用において本発明の原理を例証するが、発明的才能を鍛えることなくまた本発明の原理及び概念から逸脱することなく、実装態様の形態、使用法。及び詳細における多数の修正が行われ得ることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、限定されることを意図されない。本発明の種々の特徴及び利点は、特許請求の範囲において述べられる。