【文献】
S. RICHARD TURNER et al.,Amorphous Copolyesters Containing Monomers Derived from Bisphenols,High Performance Polymers,2005年,Vol. 17, no. 3,361-376
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの非結晶体を、メタノール又はメチルエチルケトンから選ばれる少なくとも一つの溶媒に溶解させた後、該溶液を0℃以下かつ溶媒融点以上の温度として、溶解されている1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを晶析することを特徴とする、1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの結晶体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下、BPTMC−2EOと称する場合がある)は、ポリエステルに有用な化合物であることが知られている。(特許文献1、非特許文献1)
【化1】
このようなBPTMC−2EOは、従来、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンをエチレンオキサイドや炭酸エチレンと反応させて得られることが知られているが、得られたBPTMC−2EOは、いずれも示差走査熱量分析による融解吸熱ピークも確認されないなど、結晶体は得られていなかった。
このように、BPTMC−2EOの非結晶体は知られているものの、結晶体は知られておらず、加えてBPTMC−2EOを結晶体で得ることは容易ではなかった。
【0003】
そして、従来の非結晶体のBPTMC−2EOは常温では固化するため、容器等に保存していたものを使用する場合には、温度を上げて再度、液状にしなければならないか、もしくは、固化温度以上の温度に保つ必要があった。
また、ある程度の大きさに切り分けたり、粒状やフレーク状に加工しても、保存中に互いにくっつきあって塊状となったり、容器にも付着してしまうため容器等から容易に取り出せなくなる場合があり、この塊は完全にくっついていないものの、取り扱い性が非常に悪く、工業的に大量に使用する際には非効率となる。例えば、非結晶体のBPTMC−2EOを粉砕したものを保管しておくと塊状となるので、容器等から取り出す際には、掻き出したり、再度粉砕したりする必要があり、作業が面倒である。
さらに、ポリエステルやポリカーボネート等の高品質の樹脂を得るためには、不純物の少ない安定した品質の高純度のBPTMC−2EOを原料として用いる必要があるが、この非結晶体のBPTMC−2EOは、カラム分離等の工業的に効率の悪い方法でしか純度を上げることができず、低純度のものとしてのみ得られるに留まっていた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の結晶体を得るために使用する原料である、1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの非結晶体を得る方法について述べる。
その非結晶体を得る方法については特に制限はないが、従来より、1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとエチレンオキサイドまたは炭酸エチレンを触媒の存在下に反応させて得られることが知られており、この方法を採用することができる。
【0011】
しかしながら、このエチレンオキサイドを用いる方法は、エチレンオキサイドが常温で気体であるため、合成時にオートクレーブ等の加圧反応装置が必要であり、さらにエチレンオキサイドが毒性や引火性、爆発性等を有するため取り扱いが困難であるといった問題点がある。
【0012】
一方、炭酸エチレンを用いる方法は、炭酸エチレンは低毒性であり、無臭であり、引火性が低いことから、1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを工業的に製造することが容易である。
従って、本発明の結晶体を得るための原料である、1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの非結晶体を得る好ましい方法は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと炭酸エチレンを触媒の存在下に反応させる方法である。
【0013】
この反応については特に制限はなく、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを水酸化カリウム等の触媒の存在下、加温下に、炭酸エチレンと反応させて1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを得る。この反応において、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと炭酸エチレンの原料モル比は1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン/炭酸エチレン:1/2〜1/5程度の範囲、好ましくは1/2〜1/3程度の範囲である。
ここで上記触媒としては、上記の水酸化カリウムの他にも、一般に公知のものを用いることができ、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のトリオルガノホスフィン化合物、1−メチルイミダゾール等のアミン触媒、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メトキシナトリウム、フェノキシナトリウム等のアルカリ触媒を例示することができる。これらの触媒は、単独で用いても二種類以上を併用してもよい。
かかる触媒の使用量としては、用いる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの0.001〜10重量%であり、好ましくは0.01〜1重量%である。
【0014】
炭酸エチレンを過剰量使用することで反応を無溶媒で行うことも可能である。しかしながら、経済性や操作性の観点から通常は有機溶媒を用いて行われる。
反応溶媒を用いる場合、反応不活性な各種公知の溶媒を使用することができる。かかる反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、1,2−ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素、ブタノール、エチレングリコール等の脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などが挙げられる。
反応溶媒の使用量に関しては特に制限はないが、使用量があまりに多すぎる場合は製造効率等の面で好ましくなく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン100重量部に対して、好ましくは50〜300重量部の範囲であり、より好ましくは、100〜200重量部の範囲である。
【0015】
反応は、大気雰囲気下、あるいは、不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよいが、反応生成物の着色等を抑制するために、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下が好ましい。
反応温度は反応が進行する温度であれば特に限定はされないが、通常は加熱下に行われる。例えば、100℃〜250℃で行われ、好ましくは溶媒の還流下で行われる。
反応時間は、反応温度、使用する炭酸エチレン量、触媒の量と種類などによるが、通常は5〜24時間程度にて行われる。当該反応においては、炭酸ガスの発生がおさまった時点を反応終了の目安とすることができる。
反応終了後、常法に準じて、分離・精製することにより1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの非結晶体を得ることができる。
【0016】
分離・精製を行う処理としては、例えば、反応終了後反応系内に残留する過剰の炭酸エチレンを、加温下に水を加えて加水分解し、アルカリ触媒を用いている場合はこれに酸含有水(例えば、塩酸、硫酸)や酢酸、プロピオン酸等を加えて中和する。その後、必要に応じて水と分離する溶媒を加えてから、油層を複数回水洗し、水層を分離除去して得られた油層から減圧下で溶媒等の低沸点物を留出させて除去する又は乾燥する方法などを挙げることができる。
このようにして得られた本発明に係る原料の1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの粗精製物は、示差走査熱量分析による吸熱ピークをもたない非結晶性体であり、室温では樹脂状の固体である。
そして、このBPTMC−2EOの非結晶体の純度は、通常90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上である。
【0017】
このBPTMC−2EOの非結晶体は、驚くべきことに、その理由は定かではないが、特定の有機溶媒のみ、即ちメタノール又はメチルエチルケトンのみに加えて加熱溶解させ、これを特定温度である0℃以下かつ溶媒融点以上の温度に保持することにより結晶を析出させることができ、結果的に結晶体として取り出せる事を見出したものである。
使用するメタノール又はメチルエチルケトンの量は、BPTMC−2EOの非結晶体(但し、低純度のものは純度100%の換算量)1重量部に対し2〜10重量部、好ましくは2.5〜6重量部、より好ましくは3〜5重量部である。
BPTMC−2EOの溶解方法については特に制限はないが、例えば、攪拌下に40℃から60℃程度に加温して溶解する。その後、該溶液から0℃以下で溶媒融点以上の温度に保持して結晶を析出させる。晶析温度は、好ましくは−20℃〜0℃、より好ましくは−20℃〜−5℃の範囲である。
晶析方法については特に制限はなく、例えば、攪拌下に温度−10℃程度の温度に冷却して結晶を析出させ、その後、同温度を維持するか、もしくはさらに冷却して結晶を増加させる。結晶析出前の冷却工程において過冷却の状態、または、溶解度が飽和状態かそれに近い状態の時には、スムーズな結晶析出を促すために種晶を適量添加してもよい。また、このように種晶を用いることによって、より高純度な結晶が得られる可能性がある。(なお、種晶を用いる場合は種晶なしでの晶析濾過工程がその前に少なくとも1回必要である。)
また、効果を阻害しない範囲内で、結晶析出後に歩留まりを向上する目的でトルエン等の貧溶媒を添加してもよい。
次いで、このようにして析出させた結晶を濾別した後、乾燥することにより、本発明に係るBPTMC−2EOの高純度の結晶体を得ることができる。
【0018】
この方法により得られた本発明に係るBPTMC−2EOの結晶体は、示差走査熱量分析において、吸熱ピークトップ温度が75〜100℃の範囲にある。その吸熱ピークトップ温度は、好ましくは80〜95℃の範囲、さらに好ましくは85〜92℃の範囲、特に好ましくは86〜90℃の範囲である。
【0019】
本発明に係る結晶体は、示差走査熱量分析において、吸熱ピークトップ温度が75〜100℃の範囲にある吸熱ピーク以外に、吸熱ピークが存在していてもよい。例えば、晶析条件によっては、溶媒とBPTMC−2EOの付加物からなるアダクト結晶が生成する場合があり、そのような場合には、75〜100℃の範囲に加えて、それ以外にも吸熱ピークが存在する。吸熱ピークトップ温度が75〜100℃の範囲にある吸熱ピーク以外にも吸熱ピークが存在する結晶体の場合には、吸熱ピークトップ温度が75〜100℃の範囲の吸熱ピーク面積が、それ以外のピーク面積よりも大きい結晶が好ましい。
このような本発明に係るBPTMC−2EO結晶体の純度は、通常95〜100%、好ましくは97〜100%、特に好ましくは98〜100%である。
本発明に係る結晶体の製造において用いられる晶析溶媒では、種晶を用いない場合は、メチルエチルケトンではBPTMC−2EOとの付加物からなるアダクト結晶が生成する傾向がある。
【実施例】
【0020】
示差走査熱量分析(DSC)の測定条件
・示差走査熱量計:島津示差走査熱量計(型番:DSC−60)
・測定試料量:2〜3mg
・昇温速度 : 10℃/分(30℃〜200℃)
・窒素流量 : 50ml/分
<粉末X線回折分析>測定条件
粉末X線回折装置:リガク製 SmartLab
X線:CuKα線
管電圧・管電流:45kV,200mA
スキャンスピード:20.0000 deg/min
【0021】
参考例1(BPTMC−2EOの合成例)
攪拌翼、温度計及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン1086.5g、純度85%の粒状水酸化カリウム11.6g、炭酸エチレン678.1g及びトルエン1629.8gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、撹拌下に114℃まで昇温した。その後、撹拌下109℃〜113℃で14時間反応を続けた。反応中は炭酸ガスの発生が続いた。
反応終了後に水25.2gを加えて、110℃で1時間加水分解を行った。還流した水は系外に留出させた。さらに80℃まで冷却し、90%酢酸を加えて中和した。
その液にトルエン1267gと水700gを加えて撹拌した後、静置して水層を分離除去した。得られた油層に水700gを加えて、撹拌後に静置し、水層を分離除去する水洗操作を2回行った。得られた油層を常圧で133℃まで昇温して濃縮し、溶媒等の低沸点物を除去した。さらに減圧下に0.6kPa、140℃の条件まで濃縮を続けた。
濃縮後、得られた残液は1368gの淡黄色液体で、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により測定した純度が95.0%のBPTMC−2EOであった。
室温で放置すると液は固化し、樹脂状物となった。
得られた樹脂状物を細かく粉砕した粉末を粉末X線回折分析した。測定結果を
図4に示す。
粉末X線回折分析において結晶質形態の特徴であるシャープなピークが全く無く、5°〜30°の回折角(2θ)にブロードなハローパターンを有し非晶質形態であることが分かった。
【0022】
実施例1(メタノール溶媒による晶析)
参考例1で得られた純度95.0%の樹脂状BPTMC−2EO2.0gに、メタノール8.0gを加えて溶解させた後、−10℃に冷却して、同温度でさらに24時間放置した。析出した結晶を−10℃に保持した状態で濾別し、得られた結晶を乾燥させて白色結晶1.6gを得た。
得られた結晶の純度は97.2%(HPLC法)、DSCでの融解吸熱範囲は76〜92℃で吸熱最大(ピークトップ)が86℃だった。
DSC測定結果を
図1に示す。
【0023】
実施例2(メチルエチルケトンによる晶析)
参考例1で得られた樹脂状BPTMC−2EO2.0gにメチルエチルケトン8.0gを加えて溶解させた後、−10℃まで冷却して、同温度でさらに24時間放置した。−10℃に保持した状態で析出した結晶を濾別し、減圧下に室温で2時間乾燥させて白色結晶0.61gを得た。
得られた結晶の純度は97.9%(HPLC法)で、DSCによる測定結果は、53〜62℃(ピークトップ57℃)及び77〜92℃(ピークトップ86℃)に吸熱範囲を有し、中でも融解吸熱最大が86℃であった。
DSC測定結果を
図2に示す。
その得られた結晶を更に乾燥して得られた結晶をDSC測定した。DSC測定による融解吸熱範囲は78〜93℃で吸熱最大(ピークトップ)が87℃であった。
そのDSC測定結果を
図5に示す。
【0024】
実施例3
攪拌翼、温度計及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン93.0g、炭酸エチレン58.1g、純度85%の粒状水酸化カリウム0.99g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.97g及びトルエン140gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、撹拌下に109℃まで昇温した。その後、撹拌下109℃〜114℃で10時間反応を続けた。
反応終了液に水1.1gを加えて、110℃で1時間加水分解を行った。さらに80℃まで冷却して、酢酸を加えて中和した。
その液にトルエン140g及び水50gを加えて70℃で1時間撹拌した後、静置して水層を分離除去した。得られた油層に水50gを加えて、70℃で1時間撹拌した後に静置し、水層を分離除去する水洗操作を2回行った。
得られた油層を濃縮して、溶媒等の低沸点物を除去した。濃縮は2.0kPa、130℃(残液温度)まで続けた。
【0025】
得られた残液114.9gは純度95.6%(HPLC法)のBPTMC−2EOであり、この残液20gにメタノール80gを加え、60℃に昇温して溶解した。撹拌下にこの溶液を−10℃まで冷却し、この温度で24時間撹拌を続けた後、析出した結晶を濾別、乾燥して、純度97.9%(HPLC法)の結晶13.4gを得た。この結晶にメタノール54gを加え、60℃に昇温して溶解した。撹拌下にこの溶液を−10℃まで冷却し、この温度で24時間撹拌を続けた後、析出した結晶を濾別、乾燥して、純度98.8%(HPLC法)の結晶9.7gを得た。この結晶にさらにメタノール39gを加え、60℃に昇温して溶解した。撹拌下にこの溶液を−10℃まで冷却し、この温度で24時間撹拌を続けた後、析出した結晶を濾別、乾燥して純度99.1%(HPLC法)の白色結晶6.7gを得た。
この結晶をDSC測定したところ、70〜95℃に吸熱ピークがあり、その吸熱最大(ピークトップ)が88.4℃であった。DSC測定結果を
図3、粉末X線回折分析の結果を
図6に示す。
【0026】
比較例1(メタノール溶媒・高温)
冷却温度を2℃にした以外は、実施例1と同様に行ったが、結晶の析出は確認できなかった。
【0027】
比較例2(メチルエチルケトン溶媒・高温)
冷却温度を2℃にした以外は、実施例2と同様に行ったが、結晶の析出は確認できなかった。
【0028】
比較例3(トルエン溶媒)
溶媒にトルエンを使用し、室温(25〜30℃)で放置した以外は実施例1と同様に行ったが、結晶は析出しなかった。また、冷却温度を2℃とする以外は上記と同様におこなったが、結晶は析出しなかった。
さらに冷却温度を−10℃とする以外は上記と同様におこなったが、分離層が生成しただけで結晶は析出しなかった。
【0029】
比較例4(エタノール溶媒)
溶媒にエタノールを使用した以外は比較例3と同様に行ったが、いずれも結晶は析出しなかった。
【0030】
比較例5(メチルイソブチルケトン溶媒)
溶媒にメチルイソブチルケトンを用いた以外は比較例3と同様に行ったが、いずれも結晶は析出しなかった。
【0031】
比較例6(ヘプタン溶媒)
溶媒にヘプタンを使用した以外は比較例3と同様に行ったが、いずれも分離層が生成して結晶は析出しなかった。
【0032】
(保存性・取り扱い性の確認)
参考例1で得られた非結晶体(樹脂状BPTMC−2EO)を細かく粉砕した。その粉砕した非結晶体1.0gと、実施例3で得られた純度99.1%の結晶体1.0gの粉体を、それぞれ20ml容量のガラス製サンプル瓶に入れ、蓋をして24時間放置した。
その後、蓋を開けて、サンプル瓶を逆さにして、流動性を確認した。実施例3の結晶体はサンプル瓶から1.0gすべて出たが、参考例1により得られた非結晶体は、サンプル瓶の壁面に付着し、更に互いにくっつきあって塊状化しており、サンプル瓶からまったく出ず、瓶の底を叩いても、まったく落下しなかった。
さらに、実施例2で得られた純度97.9%、DSCによる吸熱範囲が、53〜62℃(ピークトップ57℃)及び77〜92℃(ピークトップ86℃)である結晶体0.5gの粉体を用いた以外は上記と同様に流動性の確認を行った。この実施例2の結晶体も、実施例3の結晶体と同様にサンプル瓶から0.5gすべて出た。
この結果によると、参考例1による非結晶体よりも、本発明の結晶体は、粉体として保存しても流動性を失わず、瓶から取り出して取り扱う際の取り扱い性にも優れる。