【文献】
Journal of Bioscience and Bioengineering,2005年,Vol.99,No.4,pp.303−310
【文献】
Journal of Biotechnology,2012年 6月15日,Vol.159,No.3,pp.155−161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのPeOIまたはPrOIは、ナイシン、HCRF、IFABP、IFNA2、MBP、SEQ ID NO:6に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド101、SEQ ID NO:8に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド102、SEQ ID NO:10に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド103、SEQ ID NO:63に明記されているアミノ酸配列から成るMAB−40、SEQ ID NO:64に明記されているアミノ酸配列から成るMab−42、SEQ ID NO:61に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド、サケカルシトニン、ヒトカルシトニン、SEQ ID NO:62に明記されているアミノ酸配列から成る阻害物質ペプチド1、SEQ ID NO:53に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド238、SEQ ID NO:54に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド239、SEQ ID NO:55に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド240またはSEQ ID NO:56に明記されているアミノ酸配列から成るペプチド241から成る群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
前記融合タンパク質を符号化する前記核酸分子は、前記融合タンパク質の発現を変調させる調節ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に用いられている用語は、その逆のことがはっきりと述べられていない限り、以下の意味をもつ。
【0023】
本明細書で用いられる「少なくとも1つ」とは、1つまたは複数、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くに関する。
【0024】
分子に関して本明細書で入れ替え可能に用いられている「単離された」または「単離する」とは、その分子が、その分子と自然な状態で関連している他の分子から少なくとも部分的に分離されていることを意味する。「単離された」とは、分子が精製されて、それが、他のタンパク質および核酸、並びに宿主細胞から生じる細胞残屑など他の分子および成分から分離させられていることを意味し得る。
【0025】
本明細書で用いられる「核酸」は、DNAおよびRNAなど全ての天然型の核酸を含む。好ましくは、核酸分子はDNAである。本明細書で用いられる「核酸配列同一性」とは、任意の位置における残基が、基準である核酸の対応する位置におけるものと同一であることを意味する。本願発明の好ましい核酸配列同一性は80%であり、より好ましくは90%であり、または、さらにより好ましくは95%である。
【0026】
核酸分子に関連して本明細書で用いられる「断片」という用語は、1つまたは複数の3'または5'末端ヌクレオチドだけ短縮されたその基準である核酸配列と比較される核酸配列に関する。短縮は、基準である配列の連続するヌクレオチド鎖が残るよう3'末端、5'末端、またはそれら両方で起こる。断片は好ましくは、少なくとも20、より好ましくは少なくとも50個のヌクレオチドの長さを有する。
【0027】
「ペプチド」という用語は、本明細書を通して、ペプチド結合により互いに結合されたアミノ酸残基のポリマーを指すのに用いられる。本願発明に係るペプチドは、2〜100のアミノ酸残基を有する。
【0028】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書を通じて入れ替え可能に、ペプチド結合により互いに結合されたアミノ酸残基のポリマーを指すのに用いられる。本願発明に係るタンパク質またはポリペプチドは、好ましくは、100またはそれより多くのアミノ酸残基を有する。
【0029】
本明細書で用いられる「関心対象のタンパク質」、「PrOI」、または「関心対象のペプチド」、「PeOI」という用語は、組換え発現を介して発現する任意の遺伝子産物に関する。本明細書に開示されている「関心対象のペプチドまたはタンパク質」という用語は、任意の天然型または非天然型のペプチドまたはタンパク質を網羅する。いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIは、非天然型/合成ペプチドまたはタンパク質である。これに関連する合成とは、ペプチドまたはタンパク質の配列が人工的に設計されていることを意味する。したがって、PeOIまたはPrOIに関する配列符号化は、1、2またはそれより多く天然型ペプチドまたはタンパク質に関する核酸配列符号化を含み得る。これらの天然型ペプチドまたはタンパク質はさらに、例えば、符号化配列の突然変異誘発により修飾されていてもよい。
【0030】
「N末端断片」という用語は、ペプチドまたはタンパク質のN末端から始まる連続するするアミノ酸ポリマーが残るよう、基準であるペプチドまたはタンパク質配列と比較してC末端で切断されたペプチドまたはタンパク質配列に関する。いくつかの実施形態において、そのような断片は、少なくとも10個のアミノ酸の長さを有し得る。
【0031】
「C末端断片」という用語は、ペプチドまたはタンパク質のC末端から始まる連続するアミノ酸ポリマーが残るよう、基準であるペプチドまたはタンパク質配列と比較してN末端で切断されたペプチドまたはタンパク質配列に関する。いくつかの実施形態において、そのような断片は、少なくとも10個のアミノ酸の長さを有し得る。
【0032】
本明細書で用いられる「融合タンパク質」という用語は、NまたはC末端で互いに結合されたペプチドおよびタンパク質に関する。そのような融合タンパク質は、操作可能に互いに融合させられた核酸配列により符号化され得る。特定の複数の実施形態において、融合タンパク質とは、本願発明に従って、ポリペプチド鎖、例えば、HlyAまたはその断片またはその相同体を含むポリペプチド鎖にC末端で融合させられた少なくとも1つのPeOIまたはPrOIを指す。
【0033】
概して、当業者は、本願発明を実施するために、本明細書に説明されている任意のヌクレオチド配列が、追加の開始および/または終止コドンを備え得る、または備えなければならないことを、または、本明細書に説明されている配列のいずれかの開始および/または終止コドンが、用いられる核酸コンストラクトに応じて削除され得る、または削除されなければならないことを理解する。当業者は、この決定を、例えば、本願発明の核酸分子に含まれる核酸配列が翻訳されることになるのか、および/または融合タンパク質として翻訳されることになるのかに基づいて行うであろう。
【0034】
核酸分子に関して本明細書で用いられる「導入」という用語は、宿主細胞への外来DNAの取り込みおよび組み込みを指す。核酸分子のそのような取り込みは、宿主細胞の自然な形質転換受容性に、または当技術分野で周知の電気穿孔または塩化カルシウム変換などの遺伝子導入法に依存し得る。
【0035】
本明細書で用いられる「宿主細胞」という用語は、核酸分子を内部に持つ生物、または組換えPeOIまたはPrOIを符号化するベクターに関する。好ましい複数の実施形態において、宿主細胞は原核細胞である。より好ましい複数の実施形態において、宿主細胞は、BL21、DH1、DH5α、DM1、HB101、JM101−110、K12、Rosetta(DE3)pLysS、SURE、TOP10、XL1−Blue、XL2−Blue、およびXL10−Blue系を含み得るがこれらに限定されない大腸菌である。
【0036】
本明細書で入れ替え可能に用いられている「発現」または「発現した」という用語は、遺伝子からの情報が遺伝子産物の合成のために用いられるプロセスに関する。細胞ベースの発現系において、発現は、転写および翻訳ステップを含む。
【0037】
本明細書で用いられる「組換え発現」という用語は、宿主生物における外来遺伝子の転写および翻訳に関する。外来DNAとは、当該生物の外部から生じる任意のデオキシリボ核酸を指す。タンパク質に関して本明細書で用いられる「異種」という用語は、外来DNAから発現するタンパク質を指す。これは、内在性核酸配列と同一である核酸配列から発現する、および人工的に複製されたタンパク質も含む。
【0038】
組換えペプチドまたはタンパク質に関して本明細書で用いられる「生成」という用語は、組換えペプチドまたはタンパク質が宿主細胞において発現し、続いて、宿主細胞の他の分子から単離されることを指す。
【0039】
本明細書で用いられる「培養する(culturing)」、「培養する」または「培養」は、管理された条件下で特別に用意された培地における宿主細胞の増殖に関する。「組換え発現に適した条件」または「発現を可能とする条件」という用語は、当技術分野で公知の方法を用いて宿主細胞におけるPrOIの生成を可能とする条件に関連し、ここで細胞は、規定の培地および温度条件下で培養される。培地は、栄養、最小、選択、分別、または強化培地であり得る。好ましくは、培地は最小培地である。宿主細胞の増殖および発現温度は、4℃から45℃の範囲であり得る。好ましくは、増殖および発現温度は、30℃から39℃の範囲である。本明細書で用いられる「発現培地」という用語は、それらがタンパク質の発現の間に宿主細胞の培養のために用いられるときの上記培地のいずれかに関する。
【0040】
本明細書で用いられる「晒す」という用語は、様々な成分、例えば、タンパク質および緩衝液が接触させられることを意味する。
【0041】
本明細書で入れ替え可能に用いられている「封入体」または「IB」という用語は、物質、例えば、タンパク質の核または細胞質内集蔟体に関する。IBは、未溶解であり、非単位(non−unit)脂質膜を有する。本願発明の方法において、IBは主に、少なくとも1つのPeOIまたはPrOIと、T1SSの少なくとも1つのアロクライトまたはその断片とを含む融合タンパク質から成る。
【0042】
本明細書で入れ替え可能に用いられている「基質」または「アロクライト」という用語は、T1SSのカーゴであり得る溶質に関する。基質またはアロクライトは、GG反復配列および分泌信号などT1SSを介した輸送を可能とする特定のペプチド配列輸送性を有するタンパク質である。
【0043】
本明細書で入れ替え可能に用いられている「タイプ1分泌系」または「T1SS」という用語は、3つのタンパク質サブユニット、ABCトランスポータータンパク質、MFP、およびOMPから成るタンパク質複合体に関する。ABCトランスポーターは、複数の膜に亘る様々な基質の転座を含む特定の生物学的プロセスを実行するのにアデノシン三リン酸(ATP)加水分解のエネルギーを利用する膜貫通タンパク質である。MFPファミリーのタンパク質は、グラム陰性菌の細胞膜における主要なポーターを、外膜においてポリンまたはチャネル機能を果たす外膜因子タンパク質と繋ぐ補助タンパク質または「アダプター」として機能する。したがって、三連のタンパク質複合体は、イオン、薬剤およびタンパク質などの様々な分子がグラム陰性菌の内膜および外膜を通過する輸送を可能とする。T1SS基質のサブグループは、RTX(毒素における反復配列)毒素である。
【0044】
タンパク質に関して本明細書で用いられる「機能的立体配座」という用語は、当該タンパク質が、その天然立体配座において同じタンパク質の活性の少なくとも5%、10%、20%、40%または50%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは100%である他のタンパク質との基質触媒作用、タンパク質特定の局在化または相互作用など特定の活性を有することを可能とする当該タンパク質の構造を指す。機能的立体配座は通常、タンパク質が可溶性であることを要する。タンパク質の天然立体配座は、有効であり機能性であるその適切に折り畳まれた、および/または組み立てられた形態である。生体分子の天然状態は、二次から四次構造が共有結合したバックボーンに沿った弱い相互作用から形成された、4つの全てのレベルの生体分子構造を有し得る。これは、これらの弱い相互作用が妨害され、これらの形態の構造の喪失に繋がり、生体分子の一次構造のみを保持している変性状態と対照的である。
【0045】
本明細書で用いられる「阻害」という用語は、エフェクター分子により引き起こされるタンパク質活性または遺伝子発現活性の検出可能である著しい低下に関する。タンパク質活性または遺伝子発現を検出する方法は当技術分野で公知である。
【0046】
本願発明は、関心対象の組換えペプチドおよびタンパク質の効率的な生成のための、タイプ1分泌系の基質/アロクライトまたはその断片の核酸配列を備える方法に関する。アロクライトまたはその断片は、封入体(IB)として関心対象のペプチドおよびタンパク質の発現を向上させ、IB−タグとして機能する。重要なことに、アロクライトおよびその断片は、封入体の、機能的立体配座への効率的な復元を可能とする。したがって、アロクライトおよびその断片は、対応する不利益なしで、複数のIB−タグおよび可溶性タグの利点を兼ね備える。
【0047】
Hly分泌系は、大抵はグラム陰性菌において起こるタンパク質分泌系である。この分泌系は、周辺質において中間的に留まることなく細胞基質から細胞外空間へ単一のステップでATP駆動されたやり方でそれらの基質を輸送するT1SSファミリーに属する。Hly分泌系は、ABCトランスポーターを表すHlyBと、MFP HlyDと、一般的なOMP TolCとを含む。〜110kDa溶血性毒素HlyAは、Hly分泌系の輸送基質である。遺伝子レベルでは、HlyA特定の分泌に必要な成分は、オペロン構造で組織化されている。HlyCのための核酸配列符号化は、このオペロンの一部を形成するが、Hly分泌系を通じたHlyA分泌には必要ではない。HlyCは、HlyAを溶血性にするHlyAのアシル化に触媒作用を及ぼす。HlyAは、1024個のアミノ酸残基から成るタンパク質であり、Hly分泌系を介したその排出のために、分泌信号と呼ばれる約40〜60個のアミノ酸を含むそのC末端を必要とする。さらに、HlyAは、いくつかのグリシンが豊富な(GG)反復配列(GGXGXDXUX。ここで、Xは任意のアミノ酸であり得、Uは、分泌信号のN末端に位置する疎水性の大きなアミノ酸である。)を含む領域により特徴づけられる。GG反復配列は、毒素(RTX)ファミリーにおける反復配列の特性である。GG反復配列は、それらの折り畳みを誘発するCa
2+を結合する。したがって、Ca
2+の不在状態で、GG反復配列を含む領域は構造化されない。1つのHlyAタンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2において、SEQ ID NO:1に明記されているヌクレオチド配列により符号化されるものとして明記されている。野生型HlyAと比較し高められたレベルで発現させられ、HlyA(
図1)のN末端部分を欠くHlyAの断片は、HlyA1と名前が付けられた。HlyA1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に明記されており、他方、符号化するヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3に明記されている。
【0048】
本願発明は、T1SSの少なくとも1つのアロクライトまたはその断片に融合させられたPeOIまたはPrOIが、非抱合型PeOIまたはPrOI単体が可溶性の形態で発現した場合であってもIBの形態の融合タンパク質の発現に繋がるという本発明者らの驚くべき発見に基づいている。さらに、Ca
2+が、アロクライトおよびPeOIまたはPrOIから成る融合タンパク質の変性IBの、可溶性および機能的立体配座への折り畳みを誘発することが本発明者らによって発見された。したがって、アロクライトまたはその断片は、対応する不利益(封入体タグ:凝集した非活性の産物。可溶性タグ:かなり低い収率、低い純度、タンパク質分解し易い)なしで、IB−タグ(高い収率、高い初期純度、タンパク質分解に対する免疫性)および可溶性タグ(可溶性かつ生理活性の産物)の利点を兼ね備える二機能性のタグである。
【0049】
したがって、第1態様において、本願発明は組換えPeOIまたはPrOIを生成するための方法に関し、方法は、(a)少なくとも1つのPeOIまたはPrOIを含む融合タンパク質を符号化する核酸分子と、T1SSの少なくとも1つのアロクライトまたはその断片とを宿主細胞に導入する段階と、(b)融合タンパク質の発現を可能とする条件下で宿主細胞を培養する段階であり、融合タンパク質は、IBの形態で発現する段階と、(c)組換え融合タンパク質を宿主細胞から単離する段階とを備える。更なる複数の実施形態は、(d)PeOIまたはPrOIが機能的立体配座へと折り畳まれることを可能とする条件に組換え融合タンパク質を晒すステップを備え得る。第1態様の様々な他の実施形態において、宿主細胞は、T1SSの異種ABCトランスポーター、異種MFP、および/または異種OMPを発現しない。
【0050】
様々な実施形態において、本願発明の本態様は、Linhartova et al.(Linhartova,I.et al.,FEMS Microbiol Rev 34,1076−1112,FMR231[pii]10.1111/j.1574−6976.2010.00231.x)に説明されているようなHlyA、CyaA、EhxA、LktA、PlLktA、PasA、PvxA、MmxA、LtxA、ApxIA、ApxIIA、ApxIIIA、ApxIVA、ApxI、ApxII、AqxA、VcRtxA、VvRtxA、MbxA、RTX細胞毒素、RtxL1、RtxL2、FrhA、LipA、TliA、PrtA、PrtSM、PrtG、PrtB、PrtC、AprA、AprX、ZapA、ZapE、Sap、HasA、コリシンV、LapA、ORF、RzcA、RtxA、XF2407、XF2759、RzcA、RsaA、Crs、CsxA、CsxB、SlaA、SwmA、Sll1951、NodO、PlyA、PlyB、FrpA、FrpC、FrpC様または他のT1SSアロクライトから成る群から選択されるT1SSのアロクライト、およびその断片も含む。様々な好ましい実施形態において、アロクライトは、共通配列GGxGxDxUx(ここで、Xは任意のアミノ酸であり得、Uは、疎水性の、大きなアミノ酸である。)の少なくとも1つのGG反復配列の存在により特徴づけられる。より好ましい複数の実施形態において、T1SSのアロクライトは、SEQ ID NO:2に明記されているアミノ酸配列、その断片、またはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド、またはその断片を含む、またはこれらから成るHlyAである。他の様々な実施形態において、HlyAの断片は、SEQ ID NO:4に明記されているアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドから成る。
【0051】
様々な実施形態において、本願発明の本態様は、SEQ ID No.1〜4の上記された配列の相同体も含む。本明細書で用いられる「相同性」または「相同体」という用語は、他のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列またはその一部とかなり同様の配列、または高い配列同一性(例えば、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれより高い)を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を指す。したがって、上記の核酸分子に関して、相同体という用語は、上記で定義されている第1の核酸配列のヌクレオチド配列と少なくとも70、好ましくは80、より好ましくは90、さらにより好ましくは95、97.5、または99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。配列同一性は、ヌクレオチドの連続した区間に亘り起こり得、または非連続的であり得る。
【0052】
本願発明の第1態様の様々な実施形態において、T1SSのアロクライトは、PeOIまたはPrOIのC末端に融合させられ得る。第1態様の他の様々な実施形態において、アロクライトは、PeOIまたはPrOIのN末端に融合させられ得る。
【0053】
一実施形態において、発現培地は20.0mMまたはそれより少量のCa
2+を含む。より好ましい実施形態において、発現培地におけるCa
2+濃度は、0.1mMまたはそれより低い。
【0054】
様々な実施形態において、T1SSの内在性ABCトランスポーター遺伝子、内在性MFP遺伝子、および/または内在性OMP遺伝子の発現、または宿主細胞における対応する遺伝子産物の活性は阻害される。様々な実施形態において、宿主細胞は、T1SSの内在性ABCトランスポーター、内在性MFP、および/または内在性OMPを発現しない。遺伝子の発現を阻害する、それらの削除、またはプロモータ配列または遺伝子自体の完全性を破壊するヌクレオチド配列の挿入などの方法が当技術分野で公知である。削除または破壊の後の好ましい遺伝子発現活性は、未処理の細胞において測定される活性の35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%より低くてもよい。本願発明の他の様々な実施形態において、タイプ1分泌系の内在性ABCトランスポーター、内在性MFP、および/または内在性OMPは、抗体または小分子阻害物質により阻害される。本願発明の好ましい複数の実施形態において、ABCトランスポーター活性は、オルトバナジウム酸または8−アジド−ATPなどのATP相同性阻害物質により阻害される。そのようなATPミメティックは当技術分野で公知である。阻害物質処理の後の好ましいタンパク質活性は、未処理の細胞で測定される活性の35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%より低くてもよい。本願発明の他の複数の実施形態において、輸送は、アロクライト自体、例えば、アロクライトを過剰発現させることにより、または融合ペプチドおよびタンパク質の付着により阻害またはブロックされる。
【0055】
他の複数の実施形態において、組換えペプチドまたはタンパク質は、再折り畳み緩衝液に曝され、ここで再折り畳み緩衝液は、少なくとも0.01、より好ましくは0.01〜40mMのCa
2+を含む。
【0056】
本願発明の方法の様々な実施形態において、(I)宿主細胞は原核細胞であり、および/または、(II)発現は、最小培地で行われ、および/または、(III)組換え融合ペプチドまたはタンパク質は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびこれらの複数の組み合わせから選択される方法を用いて精製され、および/または、(IV)方法は、組換え融合タンパク質を、融合タンパク質の開裂に適したプロテアーゼと接触させて、別個の複数の分子としてアロクライトおよびPeOIまたはPrOIを生成する追加のステップ(e)を備え、および/または、(V)方法は、(IV)に定義されている、PeOIまたはPrOIの精製がその後に続くことになるステップ(e)を備える。
【0057】
さらに他の実施形態において、本願発明は、少なくとも1つのPeOIまたはPrOIが、ナイシン、HCRF、IFABP、IFNA2、MBP、ペプチド101、ペプチド102、ペプチド103、MAB−40、Mab−42、Fuzeon(登録商標)、サケカルシトニン、ヒトカルシトニン、阻害物質ペプチド1、238、239、240または241から成る群から選択される方法にも関し得る。
【0058】
様々な実施形態において、融合タンパク質を符号化する核酸分子は、融合タンパク質の発現を変調させる調節ヌクレオチド配列をさらに含む。好ましい調節核酸配列は、SEQ ID NO:39に明記されている。本明細書で用いられる「調節ヌクレオチド配列」という用語は、遺伝子の5'に位置し、当該遺伝子の発現活性を高める核酸配列に関する。
【0059】
本明細書で用いられる「親和性タグ」という用語は、PeOIまたはPrOIに結合され、親和性タグリセプタを用いてタグ付けされたPeOIまたはPrOIの濃縮を可能とする実体に関する。本明細書で用いられる「親和性クロマトグラフィー」という用語は、タグ付けされたペプチドまたはタンパク質およびリセプタの複合体形成に関する。特定の複数の実施形態において、親和性タグは、Strep−tag(登録商標)またはStrep−tag(登録商標)II、myc−タグ、FLAG−タグ、His−タグ、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)タグ、共有結合性であるが分離可能なNorpDペプチド(CYD)タグ、タンパク質C重鎖(HPC)タグ、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)タグ、またはHAタグ、若しくは、ストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン−S−転移酵素などのタンパク質から成る群から選択され得る。
【0060】
「プロテアーゼ開裂部位」という用語は、選択されたプロテアーゼに開裂され得、したがって、プロテアーゼ開裂部位により相互結合されたペプチドまたはタンパク質配列の分離を可能とするペプチド配列を指す。特定の複数の実施形態において、プロテアーゼ開裂部位は、第Xa因子、タバコエッジウイルス(tobacco edge virus。TEV)プロテアーゼ、エンテロキナーゼ、SUMO Expressプロテアーゼ、IgA−プロテアーゼ、Arg−Cプロテイナーゼ、Asp−Nエンドペプチダーゼ、Asp−Nエンドペプチダーゼ+N末端グル、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、キモトリプシン高特異性、キモトリプシン低特異性、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌ペプチダーゼI、トロンビン、トリプシン、およびサーモリシン開裂部位から成る群から選択される。
【0061】
化学的開裂という用語は、化合物により引き起こされる、ペプチド結合の開裂を指す。そのような化合物は、メチオニン残基へのC末端を開裂する臭化シアン(CNBr)、トリプトファン残基へのC末端を開裂するBNPSスカトール、NCSまたはTFA、および、テトラペプチドS/TXHZ(XおよびZは、任意のアミノ酸残基であり得るが、X=プロリンであることを除く)へのC末端を開裂するNi
2+イオンを含み得るが、これらに限定されない(Kopera et al.,(2012),Plos One 7(5))。
【0062】
本願発明の文脈で用いられる「融合させられ」とは、結果として得られるペプチドまたはタンパク質が直接的に、1つまたは複数のアミノ酸、ペプチド、またはタンパク質、例えば、1つまたは複数のプロテアーゼ開裂部位および/または親和性タグにより互いに結合され、または互いに連結されていることを意味する。
【0063】
PeOIまたはPrOIが2またはそれより多くの天然型ペプチドまたはタンパク質を含む場合、それら2つまたはそれより多くのペプチドまたはタンパク質は、プロテアーゼ開裂部位により分離され得る。
【0064】
概して、任意のペプチドまたはタンパク質が、PeOIまたはPrOIとして選択され得る。特定の複数の実施形態において、PrOIは、ホモ二量体またはホモ多量体を形成しないタンパク質である。より大きなタンパク質複合体の形成は効率的なタンパク質の排出を阻み得るので、自己相互作用するペプチドまたはタンパク質を避けることは、組換えペプチドまたはタンパク質が細胞培養上清内へと分泌される場合に有利であり得る。しかし、PrOIは、より大きなペプチドまたはタンパク質複合体のサブユニットであるペプチドまたはタンパク質であってもよい。そのようなペプチドまたはタンパク質は、発現、およびオプションで分泌の後に単離され得、マルチペプチドまたはタンパク質複合体のin vitroでの再構築に適し得る。特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、100個より少ないアミノ酸残基を有するペプチドである。これらのペプチドがそれらの天然状態において、翻訳の後にプレおよび/またはプロ配列を含む場合、PeOIのための核酸配列符号化は、成熟ペプチドを符号化する配列に限定されるように操作され得る。1つの例示的なペプチドはインスリン、例えば、ヒトインスリンである。過剰発現したペプチドおよびタンパク質の分泌は、ペプチドまたはタンパク質が宿主細胞にとって有害であるときに特に有利である。このことが理由となり、本願発明は、宿主細胞にとって毒性があると知られているリパーゼおよびプロテアーゼの発現に関して特に有利であり、したがって、本願発明に係るシステムおよび方法によるこれらのタンパク質の発現は、本願発明の特定の実施形態を表す。
【0065】
様々な実施形態において、PeOIまたはPrOIは酵素である。
【0066】
The International Union of Biochemistry and Molecular Biologyは、酵素に関する学名、EC番号を開発した。各酵素は、「EC」が頭に付けられた4つの番号の配列により説明される。最初の番号は、そのメカニズムに基づいて酵素を広く分類する。
【0067】
学名の全体は、http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/で閲覧することが出来る。
【0068】
したがって、本願発明に係るPeOIまたはPrOIは、クラスEC1(酸化還元酵素)、EC2(転移酵素)、EC3(加水分解酵素)、EC4(リアーゼ)、EC5(イソメラーゼ)、およびEC6(連結酵素)、並びにこれらのサブクラスのいずれかから選択され得る。
【0069】
特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、補助因子依存であり得、補欠分子族を内部に持つ。そのようなペプチドまたはタンパク質の発現のために、いくつかの実施形態において、対応する補助因子、または補欠分子族が、発現の間に培地に加えられ得る。
【0070】
特定の場合において、PeOIまたはPrOIは脱水素酵素または酸化酵素である。
【0071】
PeOIまたはPrOIが脱水素酵素である場合、いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIは、アルコール脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、セロビオース脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、およびアルデヒド脱水素酵素から成る群から選択される。
【0072】
PeOIまたはPrOIが酸化酵素である場合、いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIは、シトクロムP450酸化還元酵素、特にP450 BM3およびその変種、過酸化酵素、モノキシゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、モノアミン酸化酵素、アルデヒド酸化酵素、キサンチン酸化酵素、アミノ酸酸化酵素およびNADH酸化酵素から成る群から選択される。
【0073】
更なる複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、アミノ基転移酵素またはキナーゼである。
【0074】
PeOIまたはPrOIがアミノ基転移酵素である場合、いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIは、アラニンアミノ基転移酵素、アスパラギン酸アミノ基転移酵素、グルタミン酸オキサロ酢酸アミノ基転移酵素、ヒスチジノール−リン酸アミノ基転移酵素、およびヒスチジノールピルビン酸アミノ基転移酵素から成る群から選択である。
【0075】
様々な実施形態において、PeOIまたはPrOIがキナーゼである場合、PeOIまたはPrOIは、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ、ヌクレオシド一リン酸キナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、およびグルコキナーゼから成る群から選択である。
【0076】
いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIが加水分解酵素である場合、PeOIまたはPrOIは、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ニトリル加水分解酵素、ハロゲナーゼ、ホスホリパーゼ、およびエステラーゼから成る群から選択される。
【0077】
特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIがリアーゼである場合、PeOIまたはPrOIは、アルドラーゼ、例えば、ヒドロキシニトリルリアーゼ、チアミン依存酵素、例えば、ベンズアルデヒドリアーゼ、およびピルビン酸デカルボキシラーゼから成る群から選択される。
【0078】
様々な実施形態において、PeOIまたはPrOIがイソメラーゼである場合、PeOIまたはPrOIは、イソメラーゼおよびムターゼから成る群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIが連結酵素である場合、PeOIまたはPrOIはDNA連結酵素であり得る。
【0080】
特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは抗体であり得る。これは、完全な免疫グロブリンまたはその断片を含み得、それら免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3、IgMなどの様々なクラスおよびアイソタイプを含む。その断片は、Fab、Fv、およびF(ab')2、Fab'などを含み得る。
【0081】
また、本明細書においては治療的に活性なPeOIおよびPrOI、例えば、サイトカインも考慮されている。
【0082】
したがって、特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、サイトカイン、特に、ヒトまたはマウスインターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、壊死因子、例えば、腫瘍壊死因子、および増殖因子から成る群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態において、PeOIまたはPrOIがインターフェロンである場合、PeOIまたはPrOIは、インターフェロンアルファ、例えば、アルファ−1、アルファ−2、アルファ−2a、およびアルファ−2b、アルファ−2、アルファ−8、アルファ−16、アルファ−21、ベータ、例えば、ベータ−1、ベータ−1a、およびベータ−1b、又はガンマから成る群から選択され得る。
【0084】
更なる複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、抗菌性ペプチド、特に、バクテリオシンおよびランチビオティクス、例えば、ナイシン、カテリシジン、デフェンシン、およびサポシンから成る群から選択されるペプチドである。
【0085】
更なる複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、例えば、鋼、アルミニウムおよびその他の金属に対して明確な表面特異性、炭素、セラミック、鉱物、プラスチック、木材や他の材料または細胞のような他の生物材料などの他の表面に対して特異性を有する接着性ペプチド、または、水環境において、および嫌気性菌条件下で機能する接着性ペプチドである。
【0086】
更なる複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、2〜100個の範囲のアミノ酸の長さを有し、当該アミノ酸は、20のタンパク質構成アミノ酸から成る群から選択される。より好ましくは、当該PeOIまたはPrOIは、DYKDDDDKMASMTGGQQMGHHHHHH(SEQ ID NO:45)、MGSSAAAAAAAASGPGGYGPENQGPSGPGGYGPGGP(SEQ ID NO:46)、ENREVPPGFTALIKTLRKCKII(SEQ ID NO:47)、NLVSGLIEARKYLEWLHRKLKNCKV(SEQ ID NO:48)、HHHHHHIEGRAMSILKSPIDERSILK(SEQ ID NO:49)、HHHHHHIEGRPPGPPGPPGPPGPPGPPGPPGPPGPPG(SEQ ID NO:50)、HHHHHHIEGRGAPGAPGSQGAPGLQ(SEQ ID NO:51)、GGGRGDMGSSAAAAAAAASGPGGYGPENQGPSGPGGYGPGGPRGDGGG(SEQ ID NO:52)から成るペプチドまたはタンパク質の群から選択される。
【0087】
また、本明細書に開示されているのは、治療的に活性なペプチドまたはタンパク質であるPeOIまたはPrOIである。特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは治療的に活性なペプチドである。いくつかの実施形態において、治療的に活性なペプチドは、Fuzeon/T20、ヒトカルシトニン、サケカルシトニン、ヒトの副腎皮質刺激ホルモン放出因子、Mab40、Mab42、アルツハイマー病に関連するペプチド、エクセナチド、グラチラマー/コパクソン、テリパラチド/forsteo、ロミプロスチム/nplate、pramlintitde/シムリン、チマルファシン/ザダキシン、エンフビルチド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、ネシリチド/ナトレコル、コルチコリベリン、セルモレリン、ソマトレリン、セクレチン(ヒトおよびブタ)、テルリプレシン、シナプルチド、テデュグルチド、vx−001、血管作用性腸ペプチド、アビプダジル、リナクロチドおよびテデュグルチドから成る群から選択され得る。
【0088】
特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIはタイプI分泌基質である。1000より多くのタンパク質が、文献においてタイプI分泌基質として注釈をつけられ、または説明されている。それらの多く、特にプロテアーゼおよびリパーゼのような加水分解酵素は、生物工学的な使用に関して興味深い特性を有している。適したプロテアーゼおよびリパーゼは、Baumann et al.(1993)EMBO J 12,3357−3364およびMeier et al.(2007)J.BIOL.CHEM.:282(43),pp.31477−31483により説明されている。これらの文書のそれぞれの内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0089】
当然、少なくとも1つのPeOIまたはPrOIに関する核酸配列符号化は突然変異誘発を受け得、したがって、タンパク質レベルで変異したPeOIまたはPrOIへと繋がり得る。
【0090】
本明細書で用いられる「突然変異」という用語は、任意のヌクレオチド配列またはタンパク質のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列における変化に関連し、置換、削除、短縮化、および挿入を含む。1つの具体的な例において、突然変異は、点変異、すなわち、任意の配列における、1つまたは複数のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸の置換である。タンパク質配列に関して「突然変異」という用語が用いられた場合、タンパク質を符号化するヌクレオチド配列が、例えば、アミノ酸配列を変化させることなく発現の効率性を高める(コドン最適化)目的に資する沈黙突然変異を含む複数の突然変異または修飾を含み得ることが理解される。本願発明において、突然変異は好ましくは、他のアミノ酸による1または2つのアミノ酸の置換である。代替的に、または加えて、核酸分子は、符号化されたタンパク質配列を変化させないヌクレオチド交換、いわゆる沈黙突然変異を含み得る。いくつかの実施形態において、突然変異、例えば、沈黙突然変異は、核酸分子により符号化されたペプチドまたはタンパク質の発現および/または分泌の効率性を高める。重要なことに、突然変異は、本願発明の核酸分子全体で誘発され得る。したがって、突然変異は、ペプチドまたはタンパク質に関する配列符号化に限定されないかもしれない。したがって、また、非符号化配列の区間は突然変異誘発を受け得る。このタイプの突然変異も、沈黙突然変異という用語の範囲に含まれる。非符号化配列の突然変異誘発は、例えば、核酸分子内の異なる配列区間により符号化されたペプチドまたはタンパク質の向上した発現および/または分泌の達成のために有利であり得る。
【0091】
本明細書で用いられる「突然変異誘発」という用語は、タンパク質配列の任意の配列位置における天然型のアミノ酸が、それぞれの天然のポリペプチド配列においてこの特定の位置に存在しない少なくとも1つのアミノ酸により置換されるよう実験条件が選択されることを意味する。「突然変異誘発」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸の削除または挿入による、配列セグメントの長さの(追加の)修正も含む。したがって、例えば、選択された配列位置における1つのアミノ酸が3つのランダムな突然変異の区間により置き換えられ、野生型のタンパク質のそれぞれのセグメントの長さと比較して2つのアミノ酸残基の挿入に繋がることも本願発明の範囲に含まれる。本願発明において、そのような挿入または削除は、突然変異誘発を受け得るペプチドセグメントのいずれかにおいて互いに独立してもたらされ得る。
【0092】
「ランダム突然変異誘発」という用語は、予め定められた単一のアミノ酸(突然変異)が特定の配列位置に存在していないが、少なくとも2つの異なるアミノ酸の1つが、突然変異誘発の間に規定の配列位置において特定の確率で組み込まれ得ることを意味する。
【0093】
「コドン最適化された」とは、1つのアミノ酸残基を符号化するコドンが、同じアミノ酸を符号化するが、この特定のアミノ酸に関して任意の宿主生物によってより頻繁に用いられている異なるコドンにより置き換えられることを意味する。相同性のポリペプチドを符号化するそのようなヌクレオチド配列は、高い配列可変性を有し得、したがって、同じ、または相同性のポリペプチドを符号化する核酸分子間の配列同一性が低いかもしれないことが理解される。
【0094】
タンパク質配列の自然の符号化配列、すなわち、酵素のそれぞれの遺伝子セグメントは、本願発明において選択されるアミノ酸位置の突然変異誘発のための開始点として用いられ得る。列挙されているアミノ酸位置の突然変異誘発に関して、当業者は、部位特異的な突然変異誘発のための様々な確立された標準的な方法を自由に選ぶことが出来る(Sambrook,J.et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)。一般的に用いられている技術は、所望される配列位置において縮重塩基組成を有する合成オリゴヌクレオチドの混合物を用いてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により突然変異をもたらすことである。例えば、コドンNNKまたはNNS(ここで、N=アデニン、グアニン、シトシン、またはチミン、K=グアニンまたはチミン、S=アデニンまたはシトシン)を用いることにより、突然変異誘発の間に20の全てのアミノ酸、およびそれに加えてアンバー終止コドンを組み込むことが可能となり、他方、コドンVVSは、アミノ酸Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、Val(V=アデニン、グアニン、またはシトシン)がポリペプチド配列の選択された位置に組み込まれることを阻害するので、組み込まれる可能性のあるアミノ酸の数を12に制限する。コドンNMS(M=アデニンまたはシトシン)を用いることにより、アミノ酸Arg、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Valが選択された配列位置において組み込まれることを阻害するので、例えば、選択された配列位置における可能性のあるアミノ酸の数を11に制限する。他の可能性としては、コドンNDTまたはNDC(D=アデニン、グアニン、またはチミン)を用いることがある。これはコドンおよび符号化されたアミノ酸の数の間の割合を1:1とし、したがって、スクリーニングの手間を減らし、12の極性、非極性、芳香族、非芳香族、親水性および疎水性アミノ酸残基(Arg、Asn、Asp、Cys、Gly、His、Ile、Leu、Phe、Ser、Tyr、Val(Reetz MT et al.,2008,ChemBioChem,21;9(11):1797−804))のバランスのとれたセットへと繋がる。
【0095】
特定の複数の実施形態において、PeOIまたはPrOIは、野生型ペプチドまたはタンパク質配列に対する、少なくとも10、20、30、40、50、またはそれより多くのNおよび/またはC末端アミノ酸の削除を含む。
【0096】
様々な実施形態において、PeOIまたはPrOIは、MBP、リパーゼCalB、プロテアーゼSprP、加水分解酵素PlaB、加水分解酵素PlaK、加水分解酵素PlbF、リパーゼTesA、Vif、ヒトインターフェロンアルファ−1、アルファ−2、アルファ−8、アルファ−16、アルファ−21、ヒトインターフェロンベータ、ヒトインターフェロンガンマ、マウスインターフェロンアルファ、マウスインターフェロンガンマ、IFABP、Cas2、アフィボディタンパク質ZA3、ナイシン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、アミロイドベータペプチド、エクセナチド、Fuzeon)/T20、サケカルシトニン、Mab40、Mab42、リパーゼLipA、SprP、HIV−1タンパク質Vif、およびヒトカルシトニンから成る群から選択される。
【0097】
PeOIまたはPrOIはベクターへとクローン化され得る。特定の複数の実施形態において、ベクターは、pSUベクター、pETベクター、pBADベクター、pK184ベクター、pMONOベクター、pSELECTベクター、pSELECT−Tagベクター、pVITROベクター、pVIVOベクター、pORFベクター、pBLASTベクター、pUNOベクター、pDUOベクター、pZEROベクター、pDeNyベクター、pDRIVEベクター、pDRIVE−SEAPベクター、HaloTag(登録商標)Fusionベクター、pTARGET(商標)ベクター、Flexi(登録商標)ベクター、pDESTベクター、pHILベクター、pPICベクター、pMETベクター、pPinkベクター、pLPベクター、pTOPOベクター、pBudベクター、pCEPベクター、pCMVベクター、pDisplayベクター、pEFベクター、pFLベクター、pFRTベクター、pFastBacベクター、pGAPZベクター、pIZ/V5ベクター、pLenti6ベクター、pMIBベクター、pOGベクター、pOptiベクター、pREP4ベクター、pRSETベクター、pSCREENベクター、pSecTagベクター、pTEF1ベクター、pTracerベクター、pTrcベクター、pUB6ベクター、pVAX1ベクター、pYC2ベクター、pYES2−vector、pZeoベクター、pcDNAベクター、pFLAGベクター、pTACベクター、pT7ベクター、gateway(登録商標)ベクター、pQEベクター、pLEXYベクター、pRNAベクター、pPKベクター、pUMVCベクター、pLIVEベクター、pCRUZベクター、Duetベクター、および他のベクター、またはそれらの誘導体から成る群から選択される。好ましい複数の実施形態において、ベクターはpSUベクターである。
【0098】
本願発明のベクターは、高、中、低コピーベクターから成る群から選択され得る。
【0099】
上記で説明されているベクターは、上記で説明されている核酸分子により符号化され、ベクターDNAに含まれるペプチドまたはタンパク質の発現を達成するために、宿主細胞の変換または遺伝子導入のために用いられ得る。
【0100】
宿主細胞は具体的に、遺伝子を発現可能な宿主細胞として選択され得る。加えて、またはそうでなければ、ペプチドまたはタンパク質、ペプチドまたはタンパク質の断片、または他のポリペプチドとのペプチドまたはタンパク質の融合タンパク質を生成するために、ペプチドまたはタンパク質に関する核酸符号化は、適した系における発現のために遺伝子改変され得る。変換は、標準的な技術を用いて行われ得る(Sambrook,J.et al.(2001)既出)。
【0101】
本明細書に説明されているPeOIまたはPrOIの組換え発現に関するそのようなベクターを含む原核または真核の宿主生物も、本願発明の一部を形成する。適した宿主細胞は原核細胞であり得る。特定の複数の実施形態において、宿主細胞は、グラム陽性およびグラム陰性細菌から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、宿主細胞は大腸菌などのグラム陰性細菌である。特定の複数の実施形態において、宿主細胞は大腸菌、特に大腸菌BL21(DE3)または他の大腸菌K12または大腸菌B834または大腸菌DH5αまたはXL−1誘導体である。更なる複数の実施形態において、宿主細胞は、大腸菌(大腸菌)、シュードモナス、セラチアマルセセンス、サルモネラ菌、赤痢菌(および他の腸内細菌)、ナイセリア、ヘモフィルス、クレブシエラ、プロテウス、エンテロバクター、ヘリコバクター、アシネトバクター、モラクセラ、ヘリコバクター、ステノトロホモナス、デロビブリオ、レジオネラ菌、酢酸菌、バチルス、桿菌、Carynebacterium、クロストリジウム、リステリア菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、および古細菌細胞から成る群から選択される。適した真核生物の宿主細胞には、CHO細胞、昆虫細胞、真菌、酵母細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、分裂酵母、ピキア・パストリスが含まれる。
【0102】
変換された宿主細胞は本願発明のペプチドまたはタンパク質を符号化するヌクレオチド配列の発現に適した条件下で培養される。特定の複数の実施形態において、細胞は、PeOIまたはPrOIを符号化するヌクレオチド配列の発現に適した条件下で培養される。
【0103】
組換えPeOIまたはPrOIを生成するために、組換えDNA技術によりベクターが、適した原核または真核の宿主生物に導入される。この目的のために、宿主細胞は最初に、確立された標準的な方法を用いて本願発明に係る核酸分子を含むベクターにより変換される(Sambrook,J.et al.(2001)既出)。その後、宿主細胞は、異種DNAの発現、したがって、対応するポリペプチドの合成を可能とする条件下で培養される。続いて、ポリペプチドが細胞から回収される。
【0104】
本願発明のペプチドおよびタンパク質の発現のために、いくつかの適した実施要綱が当業者に公知である。
【0105】
概して、選択された宿主の増殖に適した任意の公知である培地が本方法に採用され得る。様々な実施形態において、培地は富栄養培地または最小培地である。また、本明細書において考慮されているのは、細胞を増殖させるステップとペプチドまたはタンパク質を発現させるステップとが異なる培地の使用を含む方法である。例えば、増殖ステップは、富栄養培地を用いて行われ、発現ステップにおいて最小培地により置き換えられる。特定の場合において、培地は、LB培地、TB培地、2YT培地、合成培地、およ最小培地から成る群から選択される。
【0106】
いくつかの実施形態において、培地は、IPTG、アラビノース、トリプトファンおよび/またはマルトースが加えられてもよく、並びに/若しくは、培養温度が変更されてもよく、並びに/若しくは培養はUV光に曝されてもよい。様々な実施形態において、組換えペプチドまたはタンパク質の分泌を可能とする条件は、ペプチドまたはタンパク質の発現のために用いられるものと同じである。
【0107】
特定の複数の実施形態において、宿主細胞は、大腸菌、特に大腸菌BL21(DE3)および大腸菌DH5αなどの原核細胞である。
【0108】
いくつかの実施形態において、例えば、増殖および発現の間に宿主細胞の培養全体が最小培地で実行される。最小培地は、この培地においてタンパク質、脂質、炭化水素、色素、および不純物含有量が低下し、したがって、広範な精製ステップの必要性を回避または低減するので、組換えペプチドまたはタンパク質の発現に有利である。
【0109】
さらに、本発明者らは、再折り畳み緩衝液にアルカリ土類金属塩を加えることが、組換えPeOIまたはPrOIを機能的立体配座へと折り畳むのに有利であることを見出した。いくつかの実施形態において、再折り畳み緩衝液の最終的な濃度は少なくとも0.01mMである。特定の複数の実施形態において、再折り畳み緩衝液は、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩から成る群から選択される少なくとも1つのアルカリ土類金属塩が補充され得る。いくつかの実施形態において、再折り畳み緩衝液は、少なくとも0.01mMのカルシウム塩を含む。アルカリ土類金属塩の少なくとも0.01mMの全体濃度は、異なるアルカリ土類金属および/または同じアルカリ土類金属からのいくつかの塩を組み合わせることにより達成され得る。アルカリ土類金属が、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、またはバリウム塩から選択された場合、合成物は、少なくとも0.01mMの単一のカルシウム、ストロンチウムまたはバリウム塩、若しくはいくつかのマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウム塩の組み合わせを含み得、少なくとも0.01mMの全体濃度に繋がり得る。特に、少なくとも0.01mMであるカルシウム塩濃度は、いくつかのカルシウム塩を組み合わせることにより達成され得、少なくとも0.01mMの全体濃度に繋がり得る。特定の複数の実施形態において、カルシウム塩は、CaCl
2、CaCO
3、Ca(OH)
2、CaSO
4・2H
2O、Ca
3(PO
4)
2、Ca(CH
3COO)
2・H
2O、およびCa(C
2H
3O
2)
2から成る群から選択される。特定の複数の実施形態において、緩衝液は、少なくとも0.01mMのCa
2+イオンを含む。様々な実施形態において、再折り畳み緩衝液におけるCa
2+の濃度は、20〜100mMの範囲内である。好ましい実施形態において、Ca
2+濃度は20mMである。
【0110】
様々な実施形態において、方法は、組換えペプチドまたはタンパク質の精製も網羅し、組換えペプチドまたはタンパク質は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびこれらの複数の組み合わせから選択される方法を用いて精製される。
【0111】
いくつかの実施形態において、方法は、組換えペプチドまたはタンパク質内のプロテアーゼ開裂部位の開裂に適したプロテアーゼにより組換えペプチドまたはタンパク質を処理することを備え得る。いくつかの実施形態において、組換えペプチドまたはタンパク質は、上記に開示されている1つまたは複数の方法を用いてタンパク質分解開裂の前に精製される。また、組換えペプチドまたはタンパク質の開裂の後に、方法は、上記に定義されているようにさらに精製ステップを備え得る。したがって、いくつかの実施形態において、組換えペプチドまたはタンパク質は精製され、タンパク質分解開裂を受け、PeOIまたはPrOIはさらに精製される。
【0112】
HlyAまたはHlyAの断片とPeOI(例えばプロテアーゼ第Xa因子)との間の部位特異的なプロテアーゼ開裂部位の導入により、または化学的開裂により、アロクライトおよびPeOIまたはPrOIは、分離され得、および結果として得られるPrOIまたはPeOIが、追加の/人工的なアミノ酸なしで生成される。化学的開裂は、臭化シアン、B−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、BNPSスカトール(3−ブロモ−3−メチル−2−(o−ニトロフェニルスルフェニル)インドレニン)、またはNi
2+イオンにより処理され得る。そのような方法は当技術分野で周知である。
【0113】
本願発明のペプチドまたはタンパク質の、特にPeOIまたはPrOIの精製および/または分泌の後に、ペプチドまたはタンパク質は、ペプチドまたはタンパク質の血清半減期を延長させる成分に融合させられ得る。そのような成分は当技術分野で周知であり、当業者は、通常のやり方に頼って、適した成分を特定し得る。例示的な成分は、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミンまたはアルブミン断片、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合タンパク質、トランスフェリン、ポリアルキレングリコール分子、ヒドロキシエチルデンプン、パルミチン酸、および他の脂肪酸分子を含むがこれらに限定されない。融合はNまたはC末端への融合であり得、しかしまた、システイン、リシン、セリン、スレオニン、グルタミン酸およびアスパラギン酸の側鎖を含む、そのように修飾されることが出来るアミノ酸側鎖への融合であり得る。
【0114】
様々な他の実施形態において、本願発明のペプチドまたはタンパク質、例えば、PeOIまたはPrOIのポリペプチド配列におけるシステイン残基は、他のアミノ酸へ変異させられ、または例えば、ジスルフィド架橋形成を防ぐよう削除させられ得る。他の複数の実施形態において、本願発明のペプチドまたはタンパク質は、修飾、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ビオチン、ペプチドまたはタンパク質などの他の化合物との共役のために、または非天然型ジスルフィド結合の形成のための共役部位を生成するために、システイン残基に変異させられる1つまたは複数のアミノ酸を含み得る。したがって、上記で説明されている方法は、ポリエチレングリコール(PEG)、ビオチン、ペプチドまたはタンパク質などの化合物の結合、または非天然型ジスルフィド結合の形成も含み得る。
【0117】
タンパク質を、大腸菌BL21(DE3)Novagen)で発現させた。全てのオリゴヌクレオチドはEurofins MWGから購入した。全ての酵素は、NEB、Clontech、Invitrogen、またはFermentasから購入した。
【0118】
1.In−Fusion HDクローン化
【0120】
ベクターは、所望される位置でアニーリングするオリゴヌクレオチドを用いたPCRにより直線化した。例えば、プラスミドpSU−HlyA1を、(5'−TAATATATTAATTTAAATGATAGCAATCTTACT−3')(SEQ ID NO:40)およびpSUrev_X_rev(5'−TGCTGATGTGGTCAGG−3)(SEQ ID NO:41)のためにオリゴヌクレオチドpSUrev_lin_forにより増幅させた。所望される場合、オリゴヌクレオチドは、プロテアーゼ開裂部位を符号化し、すなわち、オリゴヌクレオチドpSUrev_lin_Xa_rev(5'−ACGGCCATCAATTGCTGATGTGGTCAGG−3')(SEQ ID NO:42)が第Xa因子開裂部位(一次配列:IDGR)を符号化した。PCR産物をDpnIで処置して、PCRテンプレートを破壊した。所望される場合、PCR産物をPCR Purification Kit(Qiagen,Hilden)により、またはGel Extraction(Qiagen,Hilden)により精製した。
【0121】
1. 2.挿入断片の増幅 関心対象の遺伝子を、関心対象の遺伝子にアニーリングする、直線化されたベクターと相補的な5'オーバーハングを有するオリゴヌクレオチドによるPCRにより増幅させた。例えば、順方向オリゴヌクレオチドのオーバーハング((5'−GCAATTGATGGCCGT−3')(SEQ ID NO:43)は、オリゴヌクレオチドpSUrev_lin_Xa_revと相補的であり、逆方向オリゴヌクレオチドのオーバーハング(5'−TAAATTAATATATTA−3)(SEQ ID NO:44)は、オリゴヌクレオチドpSUrev_lin_forと相補的であった。所望される場合、PCR産物を、PCR Purification Kit(Qiagen,Hilden)により、またはGel Extraction(Qiagen,Hilden)により精製した。
【0122】
1. 3.In−Fusion HD反応
【0123】
この反応は、マニュアル(ClonTech)に従って行った。
【0125】
適した大腸菌細胞をIn−Fusion産物により変換させ、所望される選択マーカを含む寒天平板上で一晩増殖させ、単一のコロニーをプラスミドの調製のために選び取った。全てのプラスミドの配列を、配列決定により検証した。
【0126】
2.PCRおよびそれに続く連結によるヌクレオチドの挿入または削除
【0128】
オリゴヌクレオチドは、マニュアルに従って5'リン酸塩と共にオーダーし、または5'においてT4 Polynucleotide Kinase(NEB)によりリン酸化させた。
【0130】
ヌクレオチドの削除のために、プラスミドを、リン酸化されたオリゴヌクレオチドを用いてPCRにより、所望されるヌクレオチドにおいて増幅させた。挿入のために、プラスミドを、それらの5'に挿入されることになるヌクレオチドを有する5'リン酸化オリゴヌクレオチドを用い、PCRにより、所望されるヌクレオチドにおいて増幅させた。PCR反応を37℃でDpnIによって恒温放置してテンプレートDNAを破壊し、ゲル抽出された50ng直線化プラスミドを、Ligase(NEB)および推奨される反応緩衝液を用いて一晩かけて4℃で連結させた。連結試料を大腸菌の変換のために用い、プラスミドを単離し、配列を配列決定により検証した。
【0132】
突然変異誘発を、Site−Directed Mutagenesis Protocol of(Agilent)に従って行った。
【0134】
大腸菌を、所望されるプラスミドを用いて変換させ、37℃で振盪しながら2YT培地で増殖させた。発現を、1mMのIPTGにより誘発させ、細胞を4時間の間、増殖させた。典型的には、培養のOD600は5から8の範囲であった。細胞を遠心分離により回収し、−20℃で保存した。
【0136】
細胞を、再懸濁緩衝液(10mMのTris−HCl、120mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.3)に再懸濁させ、細胞粉砕器(2.5 kbar。Constant Systems)の3回の通過により破壊した。細胞可溶化物を20分の間、13.500xg、4℃で遠心分離し、ペレットを、0.5% Triton−X−100および1mMのDTTが加えられた再懸濁緩衝液を用いて洗浄した。20分間の13.500xg、4℃での遠心分離の後、ペレットを、再懸濁緩衝液を用いて洗浄した。遠心分離の後、IBを含むペレットを、4℃/室温で変性緩衝液(10mMのTris−HCl、120mMのNaCl、0.1mMのETDA、10%グリセロール、6Mのグアニジウム−塩酸塩/8Mの尿素pH7.3)において可溶化させ/変性させた。変性IBは−20℃で保存した。
【0137】
6.臭化シアン(CNBr)による化学的開裂
【0138】
変性IBに、0.1N HClおよび100倍のモル過剰量のCNBr(Sigma−Aldrich)を加えた。反応は、室温で恒温放置した。
【0139】
7.3−ブロモ−3−メチル−2−(2−ニトロフェニルチオ)−3H−インドール(BNPSスカトール)による化学的開裂
【0140】
IBを50% H
2Oおよび50%酢酸で可溶化させ、(酢酸に溶解された)BNPSスカトールを用いて室温または他の温度で培養した。更なる詳細は、Vestling et al.(1994)RCM 8,786−790、およびRahali et al.(1999)Journal of protein chemistry 18,1−12に説明されている。
【0141】
8.N−クロロスクシンイミド(NCS)による化学的開裂
【0142】
IBを、8Mの尿素、pH7.3で溶解し、(酢酸に溶解された)NCSと混ぜ合わせた。更なる詳細は、Shechter et al.(1976)Biochemistry 15,5071−5075、およびLischwe et al.(1977)The Journal of biological chemistry 252,4976−4980に説明されている。
【0143】
9.トリフルオロ酢酸(TFA)による化学的開裂
【0144】
IBを、TFAに溶解した。DMSOおよびHCl(37%)を加えて、開裂反応を開始させた。反応混合物は、異なる複数の温度で恒温放置した。更なる詳細はDimarchi et al.(1987)Process for selective peptide bond cleavage,EP0288272A3に説明されている。
【0146】
変性IBを、変性緩衝液において0.2mg/mLまで希釈し、20mMのCaCl
2または0.2mMのEDTAが加えられた再折り畳み緩衝液(10mMのTris−HCl、120mMのNaCl、pH7.3)に対して透析しつつ、または変性IBを(20mMのCaCl
2または0.2mMのEDTAが加えられた)再懸濁緩衝液において0.2mg/mLまで迅速に希釈することにより再び折り畳んだ。再折り畳み緩衝液の成分は変更され得、他の緩衝液(Hepes、CAPS、Bicine、Citrateなど)、0〜14の範囲のpH値、塩濃度、および追加の補足物が用いられ得る。再折り畳みのためのタンパク質濃度も、例えば、0.01〜20mg/mLの範囲で変更され得る。再び折り畳まれたIBは20分の間、50.000xg、4℃で遠心分離し、上清を更なる実験のために用いた。
【0148】
タンパク質を、所望される分画分子量(MWCO)による限外濾過(Amicon Filterデバイス。Millipore)により濃縮させた。
【0149】
12.固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)
【0150】
IMACを、FPLCシステム(Akta Systems。GE Healthcare)を用いて行った。Hisタグを含む再び折り畳まれたタンパク質をIMACカラムに充填し、0.1mMのEDTAまたは20mMのCaCl
2が加えられたIMAC緩衝液A(10mMのTris−HCl、100mMのKCl、10%グリセロール、10mMのイミダゾール、pH7.3)において平衡化させた。タンパク質を、10〜500mMの直線勾配のイミダゾールから溶出させた。
【0152】
50μgのタンパク質を、4℃、20℃、または25℃で1μg第Xa因子(NEB)を用いて培養し、試料を様々な時点において取り出した。
【0153】
14.サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
【0154】
対応する緩衝液において平衡化させられたSECカラム(Superdex 75 16/60、Superdex 75 10/300、Superdex 200 16/60、Superdex 200 10/300。GE Healthcare)へ、タンパク質を載せた。
【0156】
分析RP−HPLCを、室温で、LiChrospher WP 300 RP−18の末端にキャップがつけられたカラム(Merck)を用いて行った。再び折り畳まれた/変性IBを注入し、水性緩衝液A(0%アセトニトリル、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸)を有機溶剤緩衝液B)100%アセトニトリル、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸)と混合することにより溶出させた。タンパク質またはペプチドを、0〜100%の勾配の緩衝液を用いて溶出させた。クロマトグラムは、220nmでの吸光度を示す。溶出剤を分画し、回収し、溶剤を蒸発させた。
【0158】
11−(ダンシルアミノ)ウンデカノン酸(DAUDA。Cayman Chemical)を、50%イソプロパノルおよび50%緩衝液(20mMのKH
2PO
4、0.25mMのEDTA、pH7.3)の1mMの保存液として調製し、さらに、緩衝液を用いて適切な濃度まで希釈した。100nMのタンパク質を、緩衝液および1mLの石英ガラスキュベットにおいて用いた。Fluorolog(登録商標)−3(Horiba)(Kim and Frieden(1998)Protein Sci,7,1821−1828)を用いた350nmでの励起の後、蛍光信号を500nmの波長で記録した。励起および発光の両方に関してスリット幅は4.3nmに調整し、0.5秒の間、信号を積算した。タンパク質の不在状態での緩衝液におけるDAUDAの蛍光信号は、バックグラウンドとして減算した。補正し、正規化した蛍光信号を、DAUDA濃度に対してプロットした。データは、プログラムPrism 5を用いて調整した。
【0160】
再び折り畳まれたHlyA1−MBPを、自然流下によりアミロース樹脂上に載せ、広範な洗浄の後に、タンパク質を、10mMのマルトースを含む再折り畳み緩衝液により溶出させた。
【0162】
大腸菌細胞を、(ABCトランスポーターHlyBおよび膜融合タンパク質HlyDを符号化する)プラスミドpK184−HlyBDにより変換させ、Haemolysin A T1SSとプラスミド符号化融合タンパク質との会合を可能とした。pK184 HlyB,Dは、Bakkes et al.(2010)JBC;285(52):40573−80により以前に説明されている。(30μg/mL)およびアンピシリン(100μg/mL)および5mMのCaCl
2が加えられたた2xYT培地で、細胞を一晩かけて増殖させた。50mLの増殖培地に、開始0.1のOD600の細胞を播種した。細胞を37℃で攪拌して増殖させ、発現を0.4〜0.6のOD600で1mMのIPTGにより誘発させた。2〜6時間後、培養物を遠心分離し(20分、50.000xg、4℃)、上清試料(16μL)および細胞(ODeq=0.08)がSDS−PAGEおよびクーマシーブリリアントブルー(CBB)染色により解析した。
【0163】
19.用いられたベクター、および用いられたベクターにより符号化されたタンパク質配列
【0164】
以下のDNAを、pSUプラスミドのバックボーンへとクローン化させた。
【表1】
【表2】
【0165】
実施例1:HlyAまたはその断片にN末端またはC末端で融合させられたPeOIまたはPrOIのIBの形成
【0166】
全ての示されている、HlyAまたはHlyAの断片(例えば、HlyA1。いくつかのコンストラクトの模式図に関しては
図1を参照)にN末端で融合させられたPrOIおよびPeOIがIBとして細胞において凝集する(
図2)。注目すべきことに、非抱合型のIFABPは通常、細胞内で可溶性であった(
図2のCを参照)。これら結果は、HlyAおよびHlyAの断片がIBの形成を誘発し、この特性を、融合させられたペプチドおよびタンパク質へと伝えていることを示している。
【0167】
HlyAまたはHlyAの断片(例えば、HlyA1。コンストラクトの模式図に関しては
図1を参照)にC末端で融合させられたPrOIまたはPeOIを、大腸菌において発現させ(
図2のB)、それらは細胞内で不溶性である(例示的なHlyA1−IFABP、
図2のCを参照)。したがって、HlyAおよびHlyAの断片は、そのNおよびC末端に融合させられたPrOIおよびPeOIのIBとしての凝集を強いる。
【0168】
HlyAまたはその断片の融合タンパク質、および1つのペプチドまたは異なる複数のペプチドの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれより多くの単量体から成るペプチド多量体も、細胞内の不溶性凝集体として発現する。
図2のDは、HlyA1に融合させられた、単量体としてのペプチド238(SEQ ID NO:53)、三量体(ペプチド240SEQ ID NO:55)、および五量体(ペプチド241[SEQ ID NO:56])の発現を示す。HlyA1への融合なしで、三量体および五量体のペプチドは細胞により生成されなかった(pET16b_240およびpET16b_241を参照)。多量体のペプチドは細胞内で発現せず、またたタンパク分解的に分解されなかった(proteolytically degraded)。
【0169】
同様の発現データを、HlyA1に融合させられた以下のペプチドに関して得た。Mab40(SEQ ID NO:63)、Mab42(SEQ ID NO:64)、サケカルシトニン(SEQ ID NO:65)、ヒトカルシトニン(SEQ ID NO:60)、阻害物質ペプチド1(SEQ ID NO:62)、およびその他。
【0170】
実施例2:HlyAおよびHlyA1の精製および再折り畳み
【0171】
HlyAおよびHlyA1を、IBとして大腸菌において生成した。IBを、それぞれEDTAまたはCaCl
2存在下で再び折り畳んだ。再折り畳み効率性は、EDTAにより約35%であり、不均質かつ不安定なHlyAまたはHlyA1を得た。
図3のAおよびBは、HlyA断片HlyA1に関する結果を示す。対照的に、Ca
2+存在下で90%を超えるHlyAまたはHlyA1が再び折り畳まれ、タンパク質は安定しており均質であった(
図3のCおよびD)。
【0172】
実施例3:HlyA1−ナイシンの精製および再折り畳み
【0173】
(プラスミドpIAR_214により符号化された)HlyA1−ナイシンを発現している5gの細胞から、HlyA1−ナイシンの約140mgの未精製IBを調製し、変性させ、再び折り畳んだ。EDTA存在下で、殆どのタンパク質は不溶性であり、凝集し、少量の不均質なHlyA1−ナイシンのみが生成された(
図4のAおよびC)。対照的に、Ca
2+による再折り畳みは、高い純度の均質なタンパク質種を高い収率で生成した(
図4のBおよびC)。再折り畳みの効率性は、Ca
2+存在下で95%より高く、EDTA存在下で25%より低かった。
【0174】
再折り畳みに続き、第Xa因子による部位特異的なタンパク質分解によりナイシンをHlyA1から分離させた(
図4のD)。90分後、100μLの反応混合物を、HPLCにより精製した(
図4のE)。溶出分画を、SDS−PAGE解析(
図4のF)、Western Blotting、および質量分析(データは示されていない)により解析し、完全なナイシン分子を識別した。
【0175】
実施例4:LipA1−ナイシンの精製および再折り畳み
【0176】
リパーゼA(LipA)は、専用のT1SSにより分泌させられた他のRTXタンパク質である。HlyA1−ナイシンと同等の、ナイシンがLipAのC末端断片に融合させられたコンストラクトをクローン化させた。この断片は、RTX領域、および(プラスミドpIAR_302上で符号化された)LipAの分泌信号をカバーしていた。続いてLipA1−ナイシンを大腸菌において生成し、IBの形成を検査した。
図5のAに示されているように、LipA1−ナイシンはIBを形成する。さらに、変性させられたLipA1−ナイシンの再折り畳みを、Ca
2+およびEDTAそれぞれの存在下で解析した。再び折り畳まれたLipA1−ナイシンのSEC解析は、融合タンパク質がHlyA1−ナイシンと同様の挙動を示し、Ca
2+が、LipA1−ナイシンの、安定した均質なタンパク質への再折り畳みを誘発することを示した(
図5のB)。対照的に、EDTA存在下で、LipA1−ナイシンはより低い効率性で再び折り畳まれ、LipA1−ナイシンの大部分は凝集を形成する(
図5のCおよびD)。したがって、HlyA、LipA、およびおそらくRTXタンパク質スーパーファミリーの他の要素が、IBとしてPrOIおよびPeOIを生成し、Ca
2+、他の金属イオン、または特定の再折り畳み条件を加えることにより融合タンパク質を再び折り畳むのに用いられ得るかもしれない。
【0177】
実施例5:異なるHlyA断片およびそれらの再折り畳みを誘発する統合性の解析
【0178】
各GG反復配列の、IBの形成および再折り畳みに関する影響を調べるためにHlyA1−ナイシンを、GG反復配列毎にN末端から段階的に切断した(
図1)。プラスミドpIAR_215、pIAR_220、pIAR_221、pIAR_222から発現させられたタンパク質を調べた。HlyA1のC末端部分の影響を検討するためにpIAR_223を設計した。pIAR_223は、HlyA1のC末端を欠いている(分泌信号を含む)HlyA1の4つのGG反復配列全てにC末端で融合させられたナイシンに対応する。
【0179】
プラスミドpIAR_222からの発現させられたタンパク質のみを、細胞可溶化物試料において見える量で大腸菌において発現させた(
図6のA)。それにも関わらず、pIAR_215、pIAR_220〜223により符号化されたタンパク質を発現する細胞のIBを調製し、変性させ、Ca
2+またはEDTAを用いて再び折り畳むことが出来た。再び折り畳まれたタンパク質を濃縮させ、SECにより解析した。濃縮されたタンパク質の、第Xa因子による開裂を解析した。プラスミドpIAR_220、pIAR_222、およびpIAR_223のみが、相当量の組換えタンパク質を生成した。したがって、これらのタンパク質は、以下の解釈により検討された。
【0180】
プラスミドpIAR_220(2つのGG反復配列)、pIAR_222(GG反復配列なし)、およびpIAR_223(4つのGG反復配列のみ、HlyA1のC末端部分なし)から符号化されたタンパク質のIBを生成した。したがって、GG反復配列および分泌信号から成るHlyA1のC末端部分がIBの形成を誘発する可能性がある。
【0181】
pIAR_220(2つのGG反復配列)により符号化されたタンパク質は、EDTAと比較してCa
2+存在下でより効率的に再び折り畳まれ濃縮された(
図6のBおよびC)。他方、Ca
2+およびEDTAの両方の場合において、pIAR_222(GG反復配列なし)により符号化されたタンパク質の再折り畳みおよび濃縮の効率性は同程度であった。したがって、2つのGG反復配列は、Ca
2+依存的に再折り畳みの効率性の向上を可能とする。pIAR_220およびpIAR_222により符号化されたタンパク質のSEC解析はこれらの結果を支持している。pIAR_220により符号化されたタンパク質は、Ca
2+存在下でのみ、SEC解析により明確かつ対称的な信号を示し(
図6のC)、他方、pIAR_222により符号化されたタンパク質によるSEC解析のクロマトグラムは、EDTAおよびCa
2+存在下で同等であり(
図6のDおよびE)、したがって、pIAR_222により符号化されたタンパク質は、可溶性の均質な状態へと折り畳まれなかった。このことは、GG反復配列が効率的な復元のために必須であることを示している。
【0182】
Ca
2+存在下でのみSECから対称的な信号として、pIAR_223(4つのGG反復配列あり、HlyA1のC末端部分なし)により符号化されたタンパク質は溶出する。対照的に、EDTA存在下で、pIAR_223から発現させられた組換えタンパク質は不均質である(
図6のFおよびG)。
【0183】
実施例6:HlyA1−HCRFの精製および再折り畳み
【0184】
約5gの細胞から、(プラスミドpIAR_202により符号化された)HlyA1−HCRFに関して約200mgの未精製IBを精製し、グアニジウム−塩酸塩において変性させ、続いて再び折り畳んだ(
図7のA)。EDTA存在下での40mgのHlyA1−HCRFの再折り畳みは、約8.4mgの可溶性タンパク質を生成したが、タンパク質試料は不安定かつ不均質であった(
図7のCおよびE)。対照的に、Ca
2+存在下での再折り畳みは、(約85%の再折り畳み率に対応する)34mgの可溶性かつ均質なタンパク質を生成した(
図7のCおよびD)。
【0185】
再び折り畳まれたHlyA1−HCRFは第Xa因子を用いて温浸し(
図7のG)、反応混合物をHPLCにより精製した(
図7のF)。この方策により、HCRFをHlyA1から開裂し、分離させた。
【0187】
(プラスミドpIAR_207上で符号化された)HlyA1−IFABPを発現させ、約6gの細胞から205mgの変性IBを調製した。HlyA1−IFABPを、Ca
2+およびEDTA存在下で、安定した均質な状態へと再び折り畳んだ(>65%)(
図8のA〜D)。IFABPのIBへの凝集を強いたにも関わらず、HlyA1は、変性させられたIFABPのin vitroでの再折り畳みを阻害しない。この方策により、HlyA1−IFABPは高い収率、高い純度、および可溶性の形態で生成された。SEC解析に基づくと、Ca
2+のプラスの影響はHlyA1−IFABPの復元に関して無視できる程度であったが、しかし、HlyA1−IFABPの生物活性はCa
2+存在下でより高い(
図8のFおよびG)。したがって、いくつかの実施形態において、T1SSのアロクライトまたはその断片は、IB−タグとして機能し、融合させられたPeOIまたはPrOIの効率的な復元を妨げない。Ca
2+イオンの存在は融合パートナーの生物活性を、例えば、アロクライトまたはその断片の安定性および/または可溶性を高めることによりその安定性および可溶性を高めることにより高める。
【0188】
IFABPを、第Xa因子によりHlyA1から開裂した。1μgの第Xa因子が3時間および20℃で50μgのHlyA1−IFABPの>95%を消化した(
図8のE)。HlyA1−IFABPの生物活性を、11−(((5−(ジメチルアミノ)−1−ナフタレニル)スルホニル)アミノ)−ウンデカノン酸(DAUDA)、蛍光性脂肪酸類似体により検査した(
図8のFおよびG)。Ca
2+およびEDTAにおいて再び折り畳まれたHlyA1−IFABPのK
Dは、それぞれ140.8nM±13.1nMおよび264.3nM±13.2nMであると判断した。HlyA1−IFABPは、生物活性であり、開発された技術が、活性であり可溶性であるタンパク質の生成を可能とすることを示した。活性は、IFABPに関する文献における値と同等であった(K
D=20.9nM±0.6nM)。
【0190】
(プラスミドpIAR_210により符号化された)HlyA1−IFNA2を、大腸菌において高いレベルで発現させた。約5gの細胞から310mgの変性IBを精製した。HlyA1−IFNA2の再折り畳みを、Ca
2+またはEDTA存在下で行った。±3〜4%のHlyA1−IFNA2を、両方の試薬存在下で再び折り畳んだ。還元剤(DTT)ありでの、またはなしでのSDS−PAGE解析は、再折り畳み後のHlyA1−IFNA2の酸化状態、およびしたがって、ジスルフィド結合の形成を示唆している(データは示されていない)。再折り畳みの効率性は、0.5Mアルギニンを加えることによりほぼ100%まで高められた。ここでも、HlyA1はIFNA2の再折り畳みを妨げず、IFNA2が、本願発明を用いることにより高い収率で生成された。再び折り畳まれたHlyA1−IFNA2はDTT存在下で、またはそれが存在していない状態でSDS−PAGE解析により示されるように酸化され(
図9のA)、生物活性であった(データは示されていない)。
【0191】
アルギニンおよびCa
2+存在下で再び折り畳まれたHlyA1−IFNA2は可溶性であり均質であった(
図9のB)。対照的に、アルギニンおよびEDTAにより再び折り畳まれたHlyA1−IFNA2に関して2つの溶出信号が観察された(
図9のC)。したがって、Ca
2+存在下での再折り畳みは、EDTA存在下での再折り畳みと比較してHlyA1−IFNA2の均質性を高めた。
【0193】
MBPは、大腸菌内での融合させられたPrOIの可溶性の発現のための可溶性タグとして周知である(Nallamsetty,S.& Waugh,D.S.A.(2007)Nat Protoc,2,383−391)。それにも関わらず、IBおよび(プラスミドpIAR_213により符号化された)HlyA1−MBP IBが調製され、HlyA1はMBPの凝集を強いる(
図10)。HlyA1−MBPをCa
2+存在下で再び折り畳み、濃縮させた。SEC解析は、可溶性HlyA1−MBPの生成を示した(データは示されていない)。再び折り畳まれたHlyA1−MBPは固定化アミロースに結合し、再び折り畳まれたMBPの生物学的機能性を示した(
図10)。
【0194】
実施例10:pIAR_101〜103再折り畳みおよび第Xa因子消化
【0195】
HlyA1および(プラスミドpIAR_101、pIAR_102、pIAR_103により符号化された)ペプチド101、102および103の融合タンパク質を、IBとして大腸菌において発現させた(
図11のA)。約4.5gの細胞から72mg、92mg、および108mgの未精製IBを調製した。
【0196】
IBを、Ca
2+によりほぼ100%まで再び折り畳み、タンパク質を濃縮させた(列「ペレット」および「再び折り畳まれたペプチド10X」を比較。
図11のB〜D)。融合タンパク質を第Xa因子により培養し、PeOIをHlyA1から分離させることが出来た。ペプチドをHPLCにより精製した。ペプチド103を質量分析により識別した(データは示されていない)。
【0197】
実施例11:HlyA1−Fuzeon(登録商標)の精製および再折り畳み
【0198】
約4gの細胞から、(プラスミドpIAR_201により符号化された)HlyA1−Fuzeon(登録商標)の130mgの未精製IBを精製し、これらをグアニジウム−塩酸塩で変性させ、続いて再び折り畳んだ。再折り畳みの効率性はCa
2+を用いた場合に±30%であり、EDTAを用いた場合に±11%であった。SEC解析は、HlyA1−Fuzeon(登録商標)は、Ca
2+存在下でのみ可溶性状態で生成され得ることを示した(
図12のAおよびB)。
図12のCは、第Xa因子による、HlyA1−Fuzeon(登録商標)からのFuzeon(登録商標)のタンパク分解性分離の結果を示す。
【0199】
実施例12:HlyA1における第Xa因子に関する非特異的な開裂部位の変性
【0200】
質量分析は、HlyA1における第Xa因子に関する非特異的な開裂部位を識別した(一次配列SYGR、aa 207−210)。野生型HlyA1の、プラスミドpIAR_112におけるHlyA1−R210Dへの突然変異は、この開裂部位を破壊すること、およびHlyA1とPeOIまたはPrOIとの間の意図されている開裂部位上での第Xa因子の開裂の効率性を高めることを目的として構築された。ペプチド103に融合させられたHlyA1−R210Dの第Xa因子消化は、HlyA1−R210Dの部位産物が形成されなかったことを示した(
図13)。
【0201】
実施例13:融合タンパク質の化学的開裂
【0202】
ペプチド結合の化学的開裂は文献において周知である。そのようなアプローチの、PrOIまたはPeOIの二機能性タグからの分離への適用可能性を調べた。臭化シアン(CNBr)、メチオニン残基にC末端で結合するペプチドを開裂する化学試薬、およびBNPSスカトール、NCS、およびTFA、トリプトファン残基のC末端でのペプチド結合を開裂する化学試薬を選択した。HlyA1内の単一のメチオニンおよびトリプトファン残基はアラニン(M88A、W109A)に変異し、メチオニンまたはトリプトファンはN末端でPeOIまたはPrOIに置かれた。例えば、メチオニンを、N末端でペプチド103(タンパク質HlyA1 M88A−Met−ペプチド3。プラスミドpIAR_115上で符号化された)に追加した。
図14におけるSDS−PAGE解析により示されるように、ペプチドは成功裏にHlyA1から開裂された。A:ペプチド103を、CNBrによりHlyA1 M88A−Metから分離させた。ペプチド103のアイデンティティは、質量分析により確認された(データは示されていない)。B:pIAR_202w、pIAR_238、pIAR_239、pIAR_240およびpIAR_241により符号化されたペプチドの約50%を、3hでNCSによりHlyA1から開裂した。pIAR_240およびpIAR_241はクーマシー染色されたゲル上で明確に見え(矢印により示されている)、他方、他のペプチドは染色するには小さ過ぎた。0hの試料において50kDa超で見える種は、ペプチドのシステイン架橋二量体に対応する。
【0203】
実施例14:発酵を介して発現させられたHlyA1融合タンパク質
【0204】
プラスミドpIAR_115を含む大腸菌を発酵のために用いた。発酵の間に餌としてグルコースが用いられたとき、発現が抑制された。この抑制は、グルコースによるプラスミドpIAR_115の発現を規制するラクトースプロモータの抑制から生じるのかもしれない。したがって、グリセロールを、発酵の間に餌としてテストした。この方策により、2.5kgより多くの湿細胞が10Lの発酵ブロスから生成された。HlyA1 M88A−Met−ペプチド3の発現レベルは、バッチ培養と同等であり、またはさらには、それよりも高められた(
図15)。440gの細胞(湿細胞質量)から65gのIBを調製した。したがって、本願発明に係る技術は規模の拡張が可能であり、IBの滴定量は、細胞質量を増やす、および/または発現レベルを高めることにより増やされる。
【0205】
本明細書に引用されている全ての文書は、それらの全体が参照によりここに組み込まれる。
【0206】
本明細書において例示的に説明されてきた複数の本願発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素または複数の要素、限定または複数の限定がなくても適切に実施され得る。したがって、例えば、「備える」、「含む(including)」、「含む(containing)」等の用語は、拡大的に、限定することなく読まれるべきである。加えて、本明細書に採用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として用いられており、そのような用語および表現の使用において、示されている、および説明されている特徴、またその一部の任意の同等物を排除する意図はなく、様々な修正が特許請求されている発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本願発明が、好ましい複数の実施形態、およびオプション的な複数の特徴によって具体的に開示されてきたが、それらにおいて実施される、本明細書において開示されている本願発明の修正および変形が、当業者により用いられるかもしれなく、そのような修正および変形は本願発明の範囲内にあるものとして見なされることが理解されるべきである。本願発明は、本明細書において幅広く、および一般的に説明されてきた。包括的な開示内に含まれるより狭い範囲の種および部分的なグルーピングのそれぞれも本願発明の一部を形成する。これには、削除された部材が本明細書に具体的に列挙されているかいないかに関わらず、任意の主題をその種類から取り除く但し書きまたは否定的な限定を用いた本願発明の包括的な説明が含まれる。加えて、本願発明の複数の特徴または態様が、マーカッシュグループに関して説明されているとき、これによって本願発明は、マーカッシュグループの任意の個々の要素、または複数の要素のサブグループに関しても説明されていることを当業者は認識されよう。本願発明の更なる複数の実施形態は、以下の請求項より明らかになるであろう。