特許第6715037号(P6715037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715037
(24)【登録日】2020年6月10日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】美容器
(51)【国際特許分類】
   A61H 15/00 20060101AFI20200622BHJP
   A45D 44/00 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   A61H15/00 310C
   A61H15/00 310D
   A45D44/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-42229(P2016-42229)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-153868(P2017-153868A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−237064(JP,A)
【文献】 特表2011−503489(JP,A)
【文献】 特開2013−180725(JP,A)
【文献】 特開2014−134233(JP,A)
【文献】 特開2013−236440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
A45D 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、該ハンドルに基端が固定された支持軸と、該支持軸に抜け止めされた状態で取り付けられた連結部材と、該連結部材を介して前記支持軸に前記連結部材とともに回転可能に支持された回転体とを有する美容器であって、
前記連結部材は、前記支持軸が挿通される筒状の軸受部と、径方向外方に突出するとともに径方向に変位可能な係止爪とを有し、
前記回転体は、前記連結部材が挿入配置される空間を有するとともに、該空間の内壁面に、前記支持軸の基端側から該基端側と反対側の先端側に向かって前記係止爪に係合可能な段差部を有し、
前記係止爪は、前記支持軸の基端側の面に、径方向外方に向かうにしたがって前記支持軸の先端側に向かうように傾斜するとともに前記段差部に対向する第1の対向面と、該第1の対向面のさらに径方向外方に位置するとともに前記段差部に対向する第2の対向面とを有し、
該第2の対向面から前記支持軸に向けて前記第2の対向面に平行に延ばした仮想直線と前記支持軸とのなす角のうちの前記支持軸の先端側の角が、前記第1の対向面から前記支持軸に向けて前記第1の対向面に平行に延ばした仮想直線と前記支持軸とのなす角のうちの前記支持軸の先端側の角よりも大きく、
前記係止爪の径方向外方の先端部は、径方向外方に突出する湾曲状をなしており、
前記係止爪における前記支持軸の先端側の面は、前記係止爪の径方向外方に向かうにしたがって前記支持軸の基端側に向かうように傾斜しているとともに前記係止爪の径方向内方に緩やかに凹むように湾曲して前記先端部に繋がっている、美容器。
【請求項2】
前記第2の対向面における前記仮想直線と前記支持軸とのなす角のうちの前記支持軸の先端側の角が直角である、請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記連結部材は、前記支持軸の先端側の端部が固定されるとともに前記支持軸の基端側の端部が自由端である片持ち梁状を成す片持ち梁部を有し、該片持ち梁部における前記支持軸の基端側の端部に前記係止爪が形成されている、請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項4】
前記係止爪における前記支持軸の先端側の面、及び前記段差部における前記支持軸の基端側の面の少なくとも一方に、径方向外方に向かうにしたがって前記支持軸の基端側に向かうように傾斜する傾斜面が形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持軸に回転可能に支持された回転体によって、肌を押圧して美容効果を奏する美容器がある。例えば、特許文献1には、ハンドルと、基端がハンドルに取り付けられた支持軸と、支持軸に抜け止めされた状態で取り付けられた筒状の連結部材と、連結部材を介して回転可能に支持された回転体とを備える美容器が開示されている。そして、連結部材には支持軸の径方向に突出する係止爪が形成されており、当該係止爪が回転体の内側に形成された段差部に係合することにより、回転体は抜け止めされている。かかる構成では、係止爪における段差部との対向部の全域が、係止爪の突出方向に向かうにつれて、ハンドルから離れるように傾斜しており、回転体や係止爪の寸法公差を吸収して回転体にガタツキが生じにくいようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−236650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記構成では、係止爪における段差部との対向部の全域が、上述のごとく傾斜しているため、回転体に支持軸から抜ける方向に力がかかると、回転体の段差部が対向部の傾斜に沿って移動して、係止爪を乗り越えやすくなっている。そのため、当該美容器を落下させたりして、回転体に支持軸から抜ける方向に過度の力がかかると、予期せぬタイミングで回転体が支持軸から抜けることがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、回転体のガタツキを低減しつつ、回転体が予期せぬタイミングで支持軸から抜けることを防止することができる美容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ハンドルと、該ハンドルに基端が固定された支持軸と、該支持軸に抜け止めされた状態で取り付けられた連結部材と、該連結部材を介して前記支持軸に前記連結部材とともに回転可能に支持された回転体とを有する美容器であって、
前記連結部材は、前記支持軸が挿通される筒状の軸受部と、径方向外方に突出するとともに径方向に変位可能な係止爪とを有し、
前記回転体は、前記連結部材が挿入配置される空間を有するとともに、該空間の内壁面に、前記支持軸の基端側から該基端側と反対側の先端側に向かって前記係止爪に係合可能な段差部を有し、
前記係止爪は、前記支持軸の基端側の面に、径方向外方に向かうにしたがって前記支持軸の先端側に向かうように傾斜するとともに前記段差部に対向する第1の対向面と、該第1の対向面のさらに径方向外方に位置するとともに前記段差部に対向する第2の対向面とを有し、
該第2の対向面から前記支持軸に向けて前記第2の対向面に平行に延ばした仮想直線と前記支持軸とのなす角のうちの前記支持軸の先端側の角が、前記第1の対向面から前記支持軸に向けて前記第1の対向面に平行に延ばした仮想直線と前記支持軸とのなす角のうちの前記支持軸の先端側の角よりも大きく、
前記係止爪の径方向外方の先端部は、径方向外方に突出する湾曲状をなしており、
前記係止爪における前記支持軸の先端側の面は、前記係止爪の径方向外方に向かうにしたがって前記支持軸の基端側に向かうように傾斜しているとともに前記係止爪の径方向内方に緩やかに凹むように湾曲して前記先端部に繋がっている、美容器にある。
【発明の効果】
【0007】
前記美容器によれば、係止爪は回転体の段差部と係合可能であり、支持軸の基端側の面に段差部に対向する第1の対向面と第2の対向面とを有する。第1の対向面は径方向外方に向かうにしたがって支持軸の先端側に向かうように傾斜している。そのため、段差部や係止爪の寸法バラつきが比較的大きく、当該寸法が基準寸法よりも大きくなった場合に、段差部が第1の対向面に当接することにより、係止爪が径方向内側に押圧されて径方向内側に変位することができる。これにより、段差部や係止爪の寸法バラつきが吸収されて、回転体のガタツキが低減される。なお、段差部と係止爪とは、組み付け状態において必ずしも互いに当接している必要はない。両者が当接していない場合においても、段差部や係止爪の寸法バラつきを考慮して設けられる両者の隙間を必要最小限にすることができるため、回転体のガタツキが過度に大きくなることが防止される。
【0008】
さらに、係止爪における第2の対向面は、第1の対向面のさらに径方向外方に位置している。そして、第2の対向面から支持軸に向けて該第2の対向面に平行に延ばした仮想直線と支持軸とのなす角のうちの支持軸の先端側の角は、第1の対向面から前記支持軸に向けて前記第1の対向面に平行に延ばした仮想直線と支持軸とのなす角のうちの支持軸の先端側の角よりも大きくなっている。すなわち、第2の対向面は第1の対向面よりも支持軸に対して立った面となっている。これにより、回転体に支持軸から抜ける方向に力がかかった場合において、段差部が第1の対向面を乗り越えても、その先にある第2の対向面を乗り越えにくくなる。そのため、予期せぬタイミングで、回転体の段差部が係止爪を乗り越えて段差部と係止爪との係合が解除されて、回転体が支持軸から抜けてしまうことが防止される。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、回転体のガタツキを低減しつつ、回転体が予期せぬタイミングで支持軸から抜けることを防止することができる美容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、美容器の正面図。
図2図1における、II-II線位置一部断面図。
図3図1における、III-III線位置断面図。
図4図1における、IV-IV線位置断面図。
図5】実施例1における、ベース体の一部拡大図。
図6】実施例1における、連結部材の斜視図。
図7】実施例1における、連結部材の側面図。
図8図7における、VIII−VIII線位置断面図。
図9図4における、係止部付近の一部拡大図。
図10】変形例における、回転体を連結部材に取り付ける前の状態での係止部付近の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記第2の対向面における前記仮想直線と前記支持軸とのなす角のうちの前記支持軸の先端側の角が直角であることが好ましい。この場合には、回転体に支持軸から抜ける側、すなわち、支持軸の先端側に向かう力がかかることにより、段差部が第1の対向面を乗り越えた場合に、段差部が第2の対向面に当接して引っ掛かりやすくなる。そのため、段差部が係止爪を乗り越えることを一層防止でき、回転体の抜け止め効果が一層向上する。
【0012】
前記連結部材は、前記支持軸の先端側の端部が固定されるとともに前記支持軸の基端側の端部が自由端である片持ち梁状を成す片持ち梁部を有し、該片持ち梁部における前記支持軸の基端側の端部に前記係止爪が形成されていることが好ましい。この場合には、簡易な構成で係止爪を径方向に変位可能に構成することができる。
【0013】
前記係止爪における前記支持軸の先端側の面、及び前記段差部における前記支持軸の基端側の面の少なくとも一方に、径方向外方に向かうにしたがって前記支持軸の基端側に向かうように傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。この場合には、回転体の前記空間に連結部材を挿入配置する際に、当該傾斜面を介して段差部と係止爪が当接して係止爪が径方向内側に押圧されることにより、係合爪が径方向内側に変位することとなる。これにより、段差部が支持軸の基端側に向かって係合爪を乗り越えて、係合爪に基端側から係合することを可能としている。かかる構成により、回転体の取り付けを容易としつつ、係合爪による抜け止め効果を確保できる。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
前記美容器の実施例について、図1図9を用いて説明する。
図1図4に示すように、本実施例の美容器1は、ハンドル12、支持軸20、連結部材40及び回転体27を有する。
図4に示すように、支持軸20は、ハンドル12に基端20aが固定されている。
連結部材40は、支持軸20に抜け止めされた状態で取り付けられている。
回転体27は、連結部材40を介して支持軸20に連結部材40とともに回転可能に支持されている。
【0015】
そして、図4に示すように、連結部材40は、支持軸20が挿通される軸受部41と、径方向外方Y1に突出するとともに、径方向Yに変位可能な係止爪42とを有する。
回転体27は、連結部材40が挿入配置される空間271を有し、空間271の内壁面に、支持軸20の基端側L1a、L2aから該基端側L1a、L2aと反対側の先端側L1b、L2bに向かって係止爪42に係合可能な段差部272を有する。
図9(a)に示すように、係止爪42は、支持軸20の基端側L1a、L2aの面に、径方向外方Y1に向かうにつれて先端側L1bに向かうように傾斜するとともに段差部272に対向する第1の対向面421と、第1の対向面421のさらに径方向外方Y1に位置するとともに段差部272に対向する第2の対向面422とを有する。また、係止爪42は、前記支持軸20の先端側L1b、L2bの面に、径方向外方Y1に向かうにしたがって支持軸20の基端側L1a、L2aに向かうように傾斜する傾斜面425を有する。
そして、第2の対向面422から支持軸20に向けて第2の対向面422に平行に延ばした仮想直線VLbと支持軸20とのなす角のうちの支持軸20の先端側L1b、L2bの角βは、第1の対向面421から支持軸20に向けて第1の対向面421に平行に延ばした仮想直線VLaと支持軸20とのなす角のうちの支持軸20の先端側L1b、L2bの角αよりも大きい。
【0016】
本実施例の美容器1について、以下に詳述する。
美容器1は、図1図2に示すように、略棒状の把持部12bと、その先端に形成された二叉部12aとを有するハンドル12を備えている。図2図4に示すように、ハンドル12は、合成樹脂よりなるベース体13と、ベース体13の外周に被覆された一対の第1カバー体14及び第2カバー体15とから構成されている。第1カバー体14及び第2カバー体15は合成樹脂により形成され、その外表面には導電部としての導電金属メッキが施されている。そして、第1カバー体14はベース体13にネジ16により固定され、第2カバー体15は第1カバー体14の外周縁に嵌め込まれている。
【0017】
図2図4に示すように、ベース体13の外周縁全体には、リング状のパッキン17が二色成形により一体化されて固着されている。パッキン17上には、第1カバー体14の開口内周縁に係合可能なリップ部17aが形成されている。そして、ベース体13に第1カバー体14及び第2カバー体15が装着されて、パッキン17のリップ部17aが第1カバー体14の開口内周縁に圧接されることにより、第1カバー体14と第2カバー体15との隙間からハンドル12の内部に水が侵入することを防止している。これにより、ハンドル12の内部のベース体13に備えられた電装品に水が及ばないようにしている。
【0018】
図5に示すように、ハンドル12の二叉部12aにおいてベース体13には、一対の支持筒18が軸線L1、L2上に位置するように形成されている。軸線L1、L2は互いに交差している。そして、図4に示すように、ベース体13の支持筒18には、金属製の一対の支持軸20がシールリング21を介して、軸線L1、L2上に位置するとともに外側に突出した状態で嵌合支持されている。シールリング21は、支持軸20の周りからハンドル12の内部へ向かう水の侵入を防止している。
【0019】
そして、図4図5に示すように、支持軸20の軸線L1、L2において、ハンドル12に近づく側を基端側L1a、L2a、ハンドル12から離れる側を先端側L1b、L2bとする。図4に示すように、支持軸20の基端側L1aには、縮径された括れ部20bが設けられており、括れ部20bのさらに基端側L1aには、括れ部20bよりも拡径された抜け止め頭部20aが形成されている。図5に示すように、ベース体13上には、一対の支持筒18間にホルダ22が配置されている。ホルダ22の両端部には、図4に示すように支持軸20の括れ部20bを押さえるための略円筒状の押さえ部22aが形成されている。図5に示すように、ホルダ22の中間部には、円筒状のネジ止め部22bが形成されている。そして、ホルダ22の両端の押さえ部22aにより両支持軸20の括れ部20bが押さえられた状態で、図2に示すように、ホルダ22の中間のネジ止め部22bがネジ23によりベース体13に固定されている。これにより、各支持軸20は、ベース体13の支持筒18に嵌合した状態で支持されており、抜け止めされている。
【0020】
支持軸20をハンドル12に組み付けする際には、ベース体13に形成された一対の支持筒18に外側(図4の紙面左側)から支持軸20をそれぞれ嵌挿して、支持軸20が軸線L1上に位置するように配置する。次に、図4図5に示すように、ベース体13上の両支持軸20の基端間にホルダ22を配置し、ホルダ22の押さえ部22aにより両支持軸20の括れ部22bを押さえる。これにより、図4に示すように、各支持軸20の基端の抜け止め頭部20aが押さえ部22aの端縁に係合される。この状態で、図2に示すように、ホルダ22のネジ止め部22bをネジ23によりベース体13に固定することにより、一対の支持軸20がベース体13に対して抜け止め固定される。
【0021】
図4に示すように、ハンドル12の二叉部12aの先端外周には、合成樹脂よりなる円筒状のキャップ24が嵌着されている。そして、このキャップ24の嵌着により、二叉部12aの先端がシールされるとともに、支持軸20のガタツキが防止されている。また、このキャップ24の嵌着によって、ハンドル12の二叉部12aの外表面と、後述する回転体27の外表面との間の電気絶縁性が確保されている。
【0022】
図4に示すように、支持軸20の先端側L1bには、連結部材40が取り付けられている。連結部材40は合成樹脂よりなり、図6に示すように略円柱状の貫通孔48を有する円筒状をなしている。連結部材40は、図4に示すように、その内側に支持軸20の先端側L1bの先端20cが嵌合されるとともに、支持軸20の先端側L1bの先端20cに取り付けられたストップリング25により抜け止め固定されている。連結部材40の表裏両面を含む外側全面には金属メッキが施され、連結部材40と支持軸20との間の導電が確保されている。また、金属メッキに代えて、連結部材40を導電性樹脂によって構成することにより両者の導電を確保してもよい。
【0023】
図6に示すように、連結部材40は、軸受部41及び係止爪42を有する。軸受部41は、支持軸20の外周面に接する円筒形状から、直径方向に位置して軸方向に延びる一対の孔部411の領域を抜き取った形状を成しており、支持軸20の外周面に接している。これにより、軸受部41は、支持軸20に接して回転体27を回転可能に支持している。一対の孔部411の角部411aは略円弧状に形成されている。図8に示すように、軸受部41は、孔部411が形成された領域においては支持軸20の外周面に接していないが、円状の支持軸20の外周の70〜90%が軸受部41に接するように構成されている。
【0024】
図4図7図9(a)に示すように、連結部材40は、先端側L1bの端部が固定されるとともに基端側L1aの端部が自由端である片持ち梁状を成す片持ち梁部43を有する。係止爪42は、片持ち梁部43の基端側L1aの端部に形成されており、径方向外方Y1に突出している。係止爪42及び片持ち梁部43は複数設けることができ、本例では、図4図7に示すように、それぞれ一対設けている。そして、図8に示すように、一対の係止爪42はそれぞれ、先端側L1b、L2b(図7参照)から見て、支持軸20の軸線L1(L2)を中心とする仮想円C上において等間隔に位置している。図4図9(a)に示すように、係止爪42は、後述する回転体27の段差部272よりも、先端側L1bに位置している。
【0025】
そして、図9(a)に示すように、に対向する面に、第1の対向面421及び第2の対向面422を備える。第1の対向面421は、段差部272に対向して当接している。そして、第1の対向面421は、図4に示すように、突出方向である径方向外方Y1に向かうにつれてハンドル12から離れるように、すなわち、図9(a)に示すように、径方向外方Y1に向かうにつれて、支持軸20の先端側L1bに向かうように傾斜している。
【0026】
一方、図9(a)に示すように、第2の対向面422は、第1の対向面421よりも径方向外方Y1に位置しており、段差部272に対向している。そして、第2の対向面422から支持軸20に向けて第2の対向面422に平行に延ばした仮想直線VLbと支持軸20とのなす角のうちの先端側L1b、L2bの角βは、第1の対向面421から支持軸20に向けて第1の対向面421に平行に延ばした仮想直線VLaと支持軸20とのなす角のうちの先端側L1b、L2bの角αよりも大きい。
【0027】
前記角α、βは、いずれも本発明の作用効果を奏する範囲内の角度であればよく、本例ではαを60°とし、βを直角としている。なお、α、βはいずれも、図9(a)に示すように、回転体27に支持軸20から抜ける側(支持軸20の先端側L1b)に向かう力がかかっていない状態における角度を示すものである。また、本例では、第1の対向面421よりもに位置する面423は、支持軸20に垂直な面となっている。なお、本明細書において、「直角」及び「垂直」は、厳密に直角及び垂直な状態だけでなく、厳密には直角又は垂直でなくとも、実質的に直角又は垂直であると認識される範囲であるものを含むものとする。
【0028】
図4に示すように、連結部材40における支持軸20の基端側L1aの端部には、径方向外方Y1に拡径してなる拡径部44が形成されている。本例では、拡径部44は、支持軸20の径方向全域に拡径して円環状を成している。そして、図4図9(a)に示すように、係止爪42と拡径部44との間に段差部272が位置している。段差部272は、係止爪42及び拡径部44に当接して、両者に挟持されている。これにより、回転体27は支持軸20に対する位置決めがなされるとともに、回転体27のガタツキが低減されている。
【0029】
図7図8に示すように、連結部材40の外周面において拡径部44に隣接する部分には、連結部材40の外周面からわずかに突出したリブ45が複数形成されている。本例では、図9(a)に示すように、連結部材40の周方向に等間隔に4つ設けられている。リブ45は、段差部272における支持軸20側の面272bと接するように構成されている。リブ45は連結部材40の周方向において所定幅を有しており、当該リブ45により、連結部材40と回転体27との接触面積が所定の範囲で確保されている。
【0030】
図6に示すように、連結部材40の外周面における支持軸20の先端側L1bには、外周凹部46が形成されている。外周凹部46は扁平状の凹部であって、その底部461には、ゲート47が形成されている。ゲート47は、連結部材40を射出成形する際に、連結部材40の成形型において形成材料を注入するために設けられた注入口に対応する部分である。ゲート47は、底部461から若干盛り上がっている。
【0031】
図9(a)に示すように、段差部272が第1の対向面421に当接した状態において、回転体27に対して先端側L1bに向かう力がかかると、図9(b)に示すように、段差部272が第1の対向面421を押圧する。これにより、片持ち梁部43が撓んで、係止爪42が支持軸20に近づくように径方向内方Y2に変位する。そして、回転体27が先端側L1bに若干移動することにより、段差部272は第1の対向面421に乗り上げるとともに第2の対向面422に当接することとなる。その結果、段差部272は、第2の対向面422によって係止される。
【0032】
図9(a)、(b)に示すように、係止爪42における径方向外方Y1の先端部424は、径方向外方Y1に突出する湾曲状となっている。そして、係止爪42における支持軸20の先端側L1b、L2bの面である傾斜面425は、径方向外方Y1に向かうにしたがって支持軸20の基端側L1a、L2aに向かうように傾斜している。本例では、傾斜面425は、連結部材40において、先端部424から先端側L1bに位置する片持ち梁部43の外側表面43aに繋がっており、支持軸20側に緩やかに凹むように湾曲している。
【0033】
回転体27は、各支持軸20に設けられた連結部材40を介して支持軸20に連結部材40とともに回転可能に支持されている。図4に示すように、各回転体27は、合成樹脂よりなる芯材28と、その芯材28の先端内周に嵌着された合成樹脂よりなるキャップ材29と、芯材28及びキャップ材29の外周に被覆成形された合成樹脂よりなる外被材30とより構成されている。外被材30の外表面には、導電部としての導電金属メッキが施され、連結部材40との間の導電が確保されている。芯材28の内側には、連結部材40が挿入配置される空間271が形成されている。本例では、図4に示すように、空間271の内壁面は、支持軸20の基端側L1aが開口するとともに支持軸20の先端側L1bが閉塞した凹状を成している。
【0034】
図4図9(a)に示すように、空間271の内壁面には、支持軸20の基端側L1aから支持軸20の先端側L1bに向かって係止爪42に係合可能な段差部272が形成されている。段差部272は、支持軸20の外周面に沿って、環状に形成されている。本例では、段差部272は、支持軸20の軸線L1を通る断面において、略矩形状となっている。段差部272における係止爪42に対向する面272aは、支持軸20に垂直な面となっている。図9(a)に示すように、段差部272における面272aの径方向内側Y2の端部272d(すなわち、段差部272における先端側L1bの角部)は、径方向Yにおいて、第1の対向面421の範囲内に位置しており、軸線L1の方向において、第1の対向面421と対向している。そして、本例では、端部272dは、第1の対向面421に当接している。また、本例では、段差部272における支持軸20の基端側L1a、L2aの面272cは、拡径部44に当接している。そして、回転体27の空間271に連結部材40が挿入配置されて、係止爪42が段差部272に係合されることにより、回転体27が連結部材40に対して抜け止めされている。
【0035】
図1及び図3に示すように、ハンドル12の二叉部12aの付け根部付近において、第1カバー体14に透孔31が形成されている。透孔31には、透明な合成樹脂よりなる受光レンズ32がシール材33を介して嵌着されている。受光レンズ32の内側(ハンドル12の内部)において、ベース体13に太陽電池パネル34が配置されている。太陽電池パネル34のプラス、マイナスの出力端子は、ハンドル12の外表面の導電部及び支持軸20に接続されている。シール材33は太陽電池パネル34側及びハンドル12内への水の侵入を防止している。
【0036】
次に、本実施例の美容器1における作用効果について、詳述する。
本例の美容器1によれば、係止爪42は回転体27の段差部272と係合可能であり、支持軸20の基端側L1a、L2aの面に段差部272と対向する第1の対向面421と第2の対向面422とを有する。第1の対向面421は径方向外方Y1に向かうにしたがって支持軸20の先端側L1b、L2bに向かうように傾斜している。そのため、段差部272や係止爪42の寸法バラつきが比較的大きく、当該寸法が基準寸法よりも大きくなった場合に、段差部272が第1の対向面421に当接することにより、係止爪42が径方向内側Y2に押圧されて径方向内側Y2に変位することができる。これにより、段差部272や係止爪42の寸法バラつきが吸収されて、回転体27のガタツキが低減される。
【0037】
また、第1の対向面421のさらに径方向外方Y1には、第2の対向面422が位置している。そして、第2の対向面422から支持軸20に向けて第2の対向面422に平行に延ばした仮想直線VLbと支持軸20とのなす角のうちの支持軸20の先端側L1b、L2bの角βは、第1の対向面421から支持軸20に向けて第1の対向面421に平行に延ばした仮想直線VLaと支持軸20とがなす角のうちの支持軸20の先端側L1b、L2bの角αよりも大きくなっている。すなわち、第2の対向面422は、第1の対向面421よりも支持軸20に対して立った面となっている。これにより、回転体27に支持軸20から抜ける方向の力、すなわち、支持軸20の先端側L1b、L2bに向かう力がかかった場合において、段差部272が第1の対向面421を乗り越えても、その先にある第2の対向面422を乗り越えにくくなる。そのため、予期せぬタイミングで、段差部272が係止爪42を乗り越えて段差部272と係止爪42との係合が解除されて、回転体27が支持軸20から抜けてしまうことが防止される。
【0038】
また、本例では、前記角βが、直角となっている。これにより、段差部272が第1の対向面421を乗り越えた場合に、段差部272が第2の対向面422に当接して第2の対向面422に引っ掛かりやすくなる。そのため、段差部272が係止爪42を乗り越えることを一層防止でき、回転体27の抜け止め効果が一層向上する。
【0039】
また、本例では、前記角αは60°であり、第1の対向面421は、第2の対向面422よりも支持軸20に対して十分緩やかに傾斜する面となっている。これにより、段差部272や係止爪42等の寸法にバラつきがある場合でも、第1の対向面421が段差部272に当接することにより、当該寸法バラつきに応じて係止爪42が径方向に変位しやすくなっている。そのため、当該寸法バラつきが存在する場合でも、回転体27のガタツキが一層低減される。
【0040】
また、本例では、係止爪42における径方向外方Y1の先端部424は、径方向外方Y1に突出する湾曲状となっている。これにより、係止爪42の先端部424を厚肉に形成することが容易となり、係止爪42の強度を確保して、係止爪42の欠けなどの破損を防止できる。そのため、回転体27に支持軸20から抜ける方向(先端側L1b)に過度に力がかかった場合においても、回転体27の抜け止め効果が十分奏される。
【0041】
また、本例では、係止爪42における支持軸20の先端側L1b、L2bの面に、径方向外方Y1に向かうにしたがって支持軸20の基端側L1a、L2aに向かうように傾斜する傾斜面425を有している。そして、回転体27の空間271に連結部材40を挿入配置する際に、傾斜面425を介して段差部272と係止爪42が当接して係止爪42が径方向内側Y2に押圧されることにより、係合爪42が径方向内側Y2に変位することとなる。これにより、段差部272が支持軸20の基端側L1a、L2aに向かって係合爪42を乗り越えて、係合爪42に基端側L1a、L2aから係合することを可能としている。かかる構成により、回転体27の取り付けを容易としつつ、係合爪42による抜け止め効果を確保できる。
【0042】
なお、係止爪42に傾斜面425を形成することに替えて、図10に示す変形例のように、段差部272における支持軸20の基端側L1a、L2aの面に、径方向外方Y1に向かうにしたがって支持軸20の基端側L1a、L2aに向かうように傾斜する傾斜面272cを形成してもよい。当該変形例では、係止爪42は、図10に示すように、係止爪42における支持軸20の先端側L1b、L2bの面は、軸線L1に垂直な面426となっている。また、当該変形例では、片持ち梁部43の外側表面43aは、軸線L1に平行な面となっている。当該変形例においても、実施例1と同等の作用効果を奏する。
【0043】
なお、係止爪42に傾斜面425(図9(a)参照)を形成するとともに、段差部272に傾斜面272c(図10参照)を形成することとしてもよい。この場合も実施例1と同等の作用効果を奏する。
【0044】
また、本例では、連結部材40は筒状をなすとともに内側に支持軸20が挿通されている。これにより、連結部材40に軸受部41を容易に形成することができ、軸受部41と係止爪42を一体の部材として形成することが容易となる。その結果、部品点数を削減でき、組み付け作業の負担の軽減に寄与する。
【0045】
なお、本例の連結部材40に替えて、軸受部41と係止爪42とが別体からなるようにしてもよい。例えば、リング状の軸受部とこれを保持するケースとを備えるとともに、当該ケースに係止爪を設けるようにしてもよい。
【0046】
また、本例では、係止爪42は複数備えられ、支持軸20の先端側L1b(L2b)から見て、支持軸20の軸線L1(L2)を中心とする仮想円c上に等間隔に配置されている。これにより、支持軸20に対して、複数の係止爪42がバランスよく配置されるため、回転体27を安定して係止することができ、回転体27の抜け止め効果を向上させることができる。
【0047】
また、本例では、連結部材40は、支持軸20の先端側L1b、L2bの端部が固定されるとともに支持軸20の基端側L1a、L2aの端部が自由端である片持ち梁状を成す片持ち梁部43を有し、片持ち梁部43における支持軸20の基端側L1a、L2aの端部に係止爪42が形成されている。これにより、簡易な構成で係止爪42を径方向に変位可能に構成することができる。
【0048】
また、本例では、連結部材40は、支持軸20の基端側L1a、L2aの端部に、径方向外方Y1に拡径してなる拡径部44を有し、段差部272は、係止爪42と拡径部44との間に位置して両者に挟持されている。これにより、回転体27の段差部272が、連結部材40の係止爪42と拡径部44とにより位置決めされることとなるため、回転体27のガタツキを一層低減することができる。
【0049】
なお、本例では、図9aに示すように、段差部272の基端側L1aの面272cが拡径部44に当接している状態において、段差部272における面272aの径方向内側Y2の端部272dは第1の対向面421に当接しているが、係止爪42は径方向内側Y2に変位しないように、段差部272の厚さ(支持軸20の軸方向の長さ)が規定されている。これに替えて、段差部272の基端側L1aの面272cが拡径部44に当接している状態において、段差部272の端部272dが第1の対向面421に当接しており、かつ、係止爪42が径方向内側Y2に変位するように段差部272の厚さを厚くしてもよい。この場合には、片持ち梁部43の復元力により、係止爪42の第1の対向面421が段差部272の端部272dを基端側L1aに押圧することとなる。これにより、段差部272が、係止爪42と拡径部44とによって一層強く挟持されるため、ガタツキの発生を一層防止することができる。
【0050】
また、本例では、回転体27における空間271の内壁面は、支持軸20の基端側L1a、L2aが開口するとともに支持軸20の先端側L1b、L2bが閉塞した凹状を成している。これにより、回転体27における、支持軸20の先端側L1b、L2bの外表面を閉塞させて、回転体27の外表面の広い範囲を肌に当接させることが可能となる。その結果、回転体27を様々な方向から肌に押圧させやすくなるため、美容器1によるマッサージ効果を向上させることができる。
【0051】
また、本例では、一対の孔部411の角部411aは略円弧状に形成されている。これにより、当該角部411aに応力が集中することを抑制して、連結部材40の破損を防止される。
【0052】
また、本例では、連結部材40の内側に位置する支持軸20の外周の70〜90%が軸受部41に接するように、孔部411が形成されている。これにより、軸受部41と支持軸20との接触面積を十分確保することができ、連結部材40の摩耗による消耗を軽減することができる。
【0053】
また、本例では、連結部材40の外周面において、拡径部44と反対側の先端部にゲート47が設けられている。これにより、連結部材40を射出成形する際に、成形型内に形成材料が充填されやすくなり、成形作業性の向上や、成形精度の向上が図られる。
【0054】
なお、本例では、連結部材40において、係止爪42は、片持ち梁部43を介して軸受部41と一体的に形成されており、段差部272が第1の対向面421を押圧すると片持ち梁部43が撓んで係止爪42が支持軸20に近づくように径方向内方Y2に変位することとした。これに替えて、係止爪42が連結部材40と別体に設けられるようにしてもよい。例えば、連結部材40の軸受部41の外周面に径方向Yに弾性変形可能な弾性体を配設し、当該弾性体の径方向外方Y1の面に、径方向外方Y1に突出する係止爪を配設する。この場合において、軸受部41の外周面と弾性体、及び弾性体と係止爪との接合方法は特に限定されない。なお、当該弾性体は、軸受部41の外周面に有底の凹部を形成し、当該凹部の底面に配設するようにしてもよい。
【0055】
かかる変形例では、段差部272が第1の対向面421を押圧すると上記弾性体が圧縮されて弾性変形して、係止爪42が支持軸20に近づくように径方向内方Y2に変位する。したがって、かかる変形例においても実施例1の場合と同等の作用効果を奏する。さらに、係止爪42は連結部材40と別体であるため、回転体27を先端側L1bに引っ張って連結部材40から抜き取った場合に係止爪42が破損したとしても、係止爪42のみを交換すればよく、連結部材40全体を交換する必要がない。そのため、係止爪42が破損した場合の修理コストを低減できる。
【0056】
以上のごとく、本実施例によれば、回転体のガタツキを低減しつつ、回転体が予期せぬタイミングで支持軸から抜けることを防止することができる美容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 美容器
12 ハンドル
20 支持軸
27 回転体
272 段差部
40 連結部材
42 係止爪
421 第1の対向面
422 第2の対向面
44 拡径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10