特許第6715178号(P6715178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6715178バルブ操作機の脱着方法およびバルブ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715178
(24)【登録日】2020年6月10日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】バルブ操作機の脱着方法およびバルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 43/00 20060101AFI20200622BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   F16K43/00
   F16K31/44 H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-248540(P2016-248540)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-100764(P2018-100764A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中平 佑
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−074740(JP,A)
【文献】 特開2001−193864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 43/00
F16K 31/44
F16K 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内に挿通した弁棒の軸心廻りに回動する弁体を有し、弁棒を回転駆動するバルブ操作機を弁棒に装着したバルブ装置において、バルブ操作機と弁箱の締結を解除し、バルブ操作機と弁棒との係合状態を維持しつつバルブ操作機を弁箱からメンテナンス用隙間だけ離間させ、メンテナンス用隙間を通して加工具で弁棒に係合部を形成し、弁棒の廻り止め用の係止材を係合部に装着する状態でバルブ操作機を脱着させることを特徴とするバルブ操作機の脱着方法。
【請求項2】
バルブ操作機は、弁箱の弁箱フランジに設けた締結ボルトの軸心方向に沿って弁箱から離間し、係止材は一端側が弁棒の係合部に弁棒の軸心廻りで回動不能に係合し、他端側が締結ボルトにより弁棒の軸心廻りで係止されることを特徴とする請求項1に記載のバルブ操作機の脱着方法。
【請求項3】
弁箱内に挿通した弁棒の軸心廻りに回動する弁体を有し、弁棒を回転駆動するバルブ操作機を弁体に装着したバルブ装置において、
弁箱は、弁箱フランジにバルブ操作機と弁箱とを結合離間可能に締結する締結ボルトを有し、
弁棒は、弁棒の廻り止め用の係止材と係合する係合部を形成するためのマーキング部を有し、
マーキング部は、バルブ操作機と弁棒との係合状態を維持しつつバルブ操作機を弁箱から締結ボルトの軸心方向に沿ってメンテナンス用隙間だけ離間させた状態において、メンテナンス用隙間において露出することを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
弁箱内に挿通した弁棒の軸心廻りに回動する弁体を有し、弁棒を回転駆動するバルブ操作機を弁体に装着したバルブ装置において、
弁箱は、弁箱フランジにバルブ操作機と弁箱とを結合離間可能に締結する締結ボルトを有し、
弁棒は、弁棒の廻り止め用の係止材と係合する係合部を有し、
係合部は、バルブ操作機と弁棒との係合状態を維持しつつバルブ操作機を弁箱から締結ボルトの軸心方向に沿ってメンテナンス用隙間だけ離間させた状態において、メンテナンス用隙間に挿通した係止材と係合することを特徴とするバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ操作機の脱着方法およびバルブ装置に関し、通水状態で弁棒を廻り止めする技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載するものは、既設弁の補修方法に関し、軸封部からの漏水が発生した場合に通水状態で補修して漏水を止めるものである。この方法は、操作機を弁棒の先端部から取り外して弁棒の先端部を露出させ、弁棒の先端部に補修用止水部材を外嵌し、操作機を弁棒先端部に取付けて、軸封部を通過する漏水を補修用止水部材で止水するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−84825
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法は、以下の構成を前提としている。すなわち、弁棒の上部に直径方向に貫通する貫通孔を形成し、弁箱のフランジ部と操作機のフランジ部との間に、弁棒を軸心廻りで回動不能に固定する固定部材を設けている。固定部材には直径方向に固定孔を形成し、固定孔と貫通孔とが直線上にある状態で固定用棒を挿通して廻り止めする。
【0005】
この方法は固定部材を弁箱のフランジ部と操作機のフランジ部との間に介装する必要があり、予め固定部材が装着されていないバルブ装置では実施が困難である。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するものであり、通水状態にある既設のバルブ装置のバルブ操作機を特別な構成を必要とせずに容易に脱着することができるバルブ操作機の脱着方法およびバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のバルブ操作機の脱着方法は、弁箱内に挿通した弁棒の軸心廻りに回動する弁体を有し、弁棒を回転駆動するバルブ操作機を弁棒に装着したバルブ装置において、バルブ操作機と弁箱の締結を解除し、バルブ操作機と弁棒との係合状態を維持しつつバルブ操作機を弁箱からメンテナンス用隙間だけ離間させ、メンテナンス用隙間を通して加工具で弁棒に係合部を形成し、弁棒の廻り止め用の係止材を係合部に装着する状態でバルブ操作機を脱着させることを特徴とする。
【0008】
本発明のバルブ操作機の脱着方法において、バルブ操作機は、弁箱の弁箱フランジに設けた締結ボルトの軸心方向に沿って弁箱から離間し、係止材は一端側が弁棒の係合部に弁棒の軸心廻りで回動不能に係合し、他端側が締結ボルトにより弁棒の軸心廻りで係止されることを特徴とする。
【0009】
本発明のバルブ装置は、弁箱内に挿通した弁棒の軸心廻りに回動する弁体を有し、弁棒を回転駆動するバルブ操作機を弁体に装着したバルブ装置において、弁箱は、弁箱フランジにバルブ操作機と弁箱とを結合離間可能に締結する締結ボルトを有し、弁棒は、弁棒の廻り止め用の係止材と係合する係合部を形成するためのマーキング部を有し、マーキング部は、バルブ操作機と弁棒との係合状態を維持しつつバルブ操作機を弁箱から締結ボルトの軸心方向に沿ってメンテナンス用隙間だけ離間させた状態において、メンテナンス用隙間において露出することを特徴とする。
【0010】
本発明のバルブ装置は、弁箱内に挿通した弁棒の軸心廻りに回動する弁体を有し、弁棒を回転駆動するバルブ操作機を弁体に装着したバルブ装置において、弁箱は、弁箱フランジにバルブ操作機と弁箱とを結合離間可能に締結する締結ボルトを有し、弁棒は、弁棒の廻り止め用の係止材と係合する係合部を有し、係合部は、バルブ操作機と弁棒との係合状態を維持しつつバルブ操作機を弁箱から締結ボルトの軸心方向に沿ってメンテナンス用隙間だけ離間させた状態において、メンテナンス用隙間に挿通した係止材と係合することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態におけるバルブ装置を示す一部断面図
図2】同バルブ装置のバルブ操作機を弁箱からメンテナンス用隙間だけ離間させた一部断面図
図3】同バルブ装置の弁棒にメンテナンス用隙間を通して加工する状態を示す一部断面図
図4】スプライン外れ防止治具を示し、(a)は正面図、(b)は側面図
図5】同バルブ操作機を省略した平面図
図6】同バルブ装置の弁棒を示す正面図
図7】本発明の他の実施の形態におけるバルブ操作機を省略した平面図
図8】本発明の他の実施の形態におけるバルブ操作機を省略した平面図
図9】本発明の他の実施の形態におけるバルブ操作機を省略した平面図
図10】同実施の形態におけるバルブ操作機を省略した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図3において、バルブ装置10はバタフライ弁、ボール弁等々の回転弁である。
【0013】
バルブ装置10は弁箱11の内部に挿通した弁棒12を有しており、弁棒12は弁箱11の内部に配置した弁体(図示省略)に接合し、頭部側が弁箱11の外部に突出している。図6に示すように、弁棒12は頭部にスプライン13を備えている。弁箱11にはバルブ操作機20を装着しており、バルブ操作機20は弁棒12を回転駆動して弁体を弁棒12の軸心廻りに回動させる。バルブ操作機20は弁箱フランジ14に対応する操作機フランジ21を有しており、操作機フランジ21に形成したボルト孔22が弁箱フランジ14に取り付けた締結ボルト15に対応する。そして、締結ボルト15に螺合するナット16を締め付けて弁箱フランジ14と操作機フランジ21とを結合離間可能に締結している。ここでは、締結ボルト15として埋め込みボルトを使用するが、六角ボルトを使用することも可能である。
【0014】
バルブ操作機20は、その内部に入力軸23と出力軸24および入力軸23と出力軸24の間に配置した減速用歯車機構25を備えており、入力軸23に操作キャップ26を装着し、出力軸24を弁棒12に装着している。出力軸24は弁棒12の頭部に嵌合するスプライン穴27を有し、このスプライン穴27で弁棒12のスプライン13に噛合し、スプライン穴27とスプライン13は弁棒12の軸心方向のスプライン長に亘って噛合している。本実施の形態では、弁棒12と出力軸24とをスプライン接合させたが、キー接合を用いることも可能である。
【0015】
以下にバルブ操作機20の脱着方法を説明する。
【0016】
図1に示すように、バルブ装置10を全開もしくは所定開度の通水状態に維持しつつ、ナット16を緩めて締結ボルト15から取り外し、弁箱フランジ14と操作機フランジ21との締結を解除し、バルブ操作機20を弁箱11から離間可能な状態とする。そして、図4に示すスプライン外れ防止治具30をバルブ装置10およびバルブ操作機20に装着する。図5はスプライン外れ防止治具30を装着した状態を示しており、ここではバルブ操作機20を省略して示している。
【0017】
スプライン外れ防止治具30は、内側に凹部31を有し、凹部31が弁箱フランジ14および操作機フランジ21の外周縁に倣った円弧状をなし、凹部31において弁箱フランジ14および操作機フランジ21に外嵌し、操作機フランジ21が弁棒12の軸心方向へメンテナンス用隙間Lに相当する一定距離だけ移動することを許容する。
【0018】
次に、図2に示すように、スプライン穴27とスプライン13との係合状態を維持して弁棒12および弁体の回動を防止しつつバルブ操作機20を締結ボルト15の軸心方向に沿って弁箱11からメンテナンス用隙間Lだけ離間させる。このとき、スプライン外れ防止治具30がバルブ操作機20の過剰な引き抜きを防止する。バルブ操作機20は人的作業によって引き上げても良く、揚重機等を使用して行ってもよく、メンテナンス用隙間Lだけ離間させた後に、弁箱フランジ14および操作機フランジ21との間に間隙保持材(図示省略)を挿入してもよい。
【0019】
この状態で、図3に示すように、バルブ装置10の外側からメンテナンス用隙間Lを通して切削加工用の加工具40、ここでは長尺ドリルを弁棒12に向けて挿入し、加工具40で弁棒12に係合部51としての有底穴61を穿つ(図5参照)。
【0020】
次に、図5に示すように、弁棒12の廻り止め用の係止材52として係止ピン62を、バルブ装置10の外側からメンテナンス用隙間Lを通して挿入し、係止ピン62の一端側を弁棒12の係合部51の有底穴61に弁棒12の軸心廻りで回動不能に係合させ、係止ピン62の他端側を締結ボルト15により弁棒12の軸心廻りで係止する。このとき、必要に応じて締結ボルト15と係止ピン62の間に隙間調整用にシム63を挿入する。ここでは、係止ピン62を締結ボルト15で係止したが、人的作業によって係止ピン62を係止することも可能であり、あるいは締結ボルト15に代えて装置外の固定物で支持することも可能である。
【0021】
そして、係止ピン62で弁棒12を廻り止めした状態でバルブ操作機20を脱着する。すなわち、バルブ操作機20を弁箱11から取り外し、メンテナンス作業後に戻すか、あるいは新しいバルブ操作機20を装着する。
【0022】
本実施の形態では、既設のバルブ装置10の弁棒12に係合部51を形成したが、バルブ装置10を新設する際に、予め弁棒12に係合部51を形成しておくことも可能であり、係合部51に代えて係合部51を形成するためのマーキング部、例えばポンチ穴を形成することも可能である。
【0023】
また、図7に示すように、係合部51としては貫通孔64を形成することも可能であり、貫通孔64を貫通させて係止ピン62を配置することで、係止ピン62を二つの締結ボルト15で安定した両端支持状態に保持することができる。
【0024】
さらに、図8に示すように、シム63に代えてピン保持具65を配置することも可能である。ピン保持具65は締結ボルト15の間に配置し、弁棒12の軸心廻りにおいて締結ボルト15で廻り止めされている。ピン保持具62は弁棒12の軸心廻りに沿った複数個所にピン保持用の溝もしくは穴66を有しており、任意のピン保持用の溝もしくは穴66で係止ピン62を保持でき、係止ピン62により弁体開度に応じた位置で弁棒12を廻り止めすることができる。
【0025】
また、図9および図10に示すように、係合部51として、弁棒12の両側に切り込み溝67を形成し、切り込み溝67に二股の係止ピン68を挿入して弁棒12を軸心廻りで係止することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 バルブ装置
11 弁箱
12 弁棒
13 スプライン
14 弁箱フランジ
15 締結ボルト
16 ナット
20 バルブ操作機
21 操作機フランジ
22 ボルト孔
23 入力軸
24 出力軸
25 減速用歯車機構
26 操作キャップ
27 スプライン穴
30 スプライン外れ防止治具
31 凹部
40 加工具
51 係合部
52 係止材
61 有底穴
62 係止ピン
63 シム
64 貫通孔
65 ピン保持具
66 ピン保持の溝もしくは穴
67 切り込み溝
68 二股の係止ピン
L メンテナンス用隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10