【実施例1】
【0011】
図1は本発明の一実施形態を示す全体構成図、
図2Aは乗場ドア及び乗かごドアが閉じた状態を上面から見た図、
図2Bは乗場ドア及び乗かごドアが開いた状態を上面から見た図、
図3は本発明の一実施形態に係るブロック図、
図4は本発明の一実施形態に係る全体処理手順を示すフローチャート、
図5は本発明の一実施形態に係る緊急地震速報受信時の処理手順を示すフローチャート、
図6は本発明の一実施形態に係る第1の管制運転制御手段処理手順を示すフローチャート、
図7は本発明の一実施形態に係る第2の管制運転制御手段処理手順を示すフローチャート、
図8Aは乗かごが乗場床より低い位置に停止した状態を示す側面図、
図8Bは乗かごが乗場床より高い位置に停止した状態を示す側面図である。
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施例の全体構成を説明する。
図1において、エレベーターを有する建物において、エレベーターの運転制御を行う制御装置101と、制御装置101によって駆動制御される電動機102と、ロープを介して電動機102によって昇降する乗かご103と、乗かご103とバランスをとる釣合いおもり104を有している。乗かご103は塔内に設置されたレール(図示しない)に沿い、塔内を上下に移動する。乗かご103には、かご内の負荷を検出するための負荷検出装置105が取り付けられており、乗かご103内に乗客が乗込んだ際の沈み込みを例えば非接触センサーにより検知することで乗かご103内負荷を検出する。乗客はかご内操作盤106を操作することにより、行き先階を登録することができる。乗かご下部にはエプロン108が取付けられており、乗かご103が着床位置からずれている場合に乗かご103と着床との間に生じる隙間を塞ぐものである。乗場で待つ乗客は乗場呼びボタン109を操作することにより、乗場階へ乗かご103を呼ぶ。
また、電動機102には乗かご103の位置を検出するためのエンコーダー107が接続されている。エンコーダー107は電動機102の回転に同期してパルス信号を発生し、制御装置101に信号を出力する。制御装置101は受信したパルス信号をカウントすることで乗かご103の位置を検出する。また、制御装置101には、地震発生時の揺れを検出することのできる地震感知器112と、緊急受信速報を受信することのできる受信手段113が接続されている。
乗かご103に設置された乗かごドア111は、乗かご103の上部に設置されたドアモーター114によって開閉動作する。一方、建屋の各階乗場に設置された乗場ドア110も上記ドアモーター114が動作することにより開閉されている。即ち、乗かごドア111と乗場ドア110には、平面視対向するようにドア係合装置200が設けられており、乗かごの着床時に、ドア係合装置200が互いに係合することにより、ドアモーター114の動力がドア係合装置200を介して乗場ドア110に伝達され開閉動作を行う。
上記ドア係合装置200は、乗場ドア110に設置された係合ローラー201(乗場ドア係合手段)と、乗場側に突出するように乗かごドア111に設置され、着床時に係合ローラー201の両側に配置される係合子202(乗かごドア係合手段)から構成される。各階着床時には
図2Aのように、係合ローラー201と係合子202が配置される。ドア開時には、ドアモーター114の動力により、乗かごドア111が開く。乗かごドア111の開動作時に係合子202と係合ローラー201がかみ合うことで、乗場ドア110が開く(
図2B)。また、ドア閉時にも同様に係合子202と係合ローラー201がかみ合うことで、ドアモーター114の動力が乗場ドア110にも伝達し、乗場ドア110が閉じる。
次に
図3を用いて、本実施例の構成を説明する。受信手段113は、地震発生後に配信される緊急地震速報を受信するための手段である。制御装置101には、かご状態判定手段301が設けられている。かご状態判定手段301はエンコーダー107から電動機102の回転に同期したパルス信号を受信し、乗かご103の位置を検出する。また、負荷検出装置105からの信号を受信し、乗かご103の負荷から乗客の有無を検出する。さらに、かご内操作盤106の操作、及び乗場呼びボタン109を操作の操作情報を検出する。
受信手段113にて緊急地震速報を受信した場合に、かご状態判定手段301の情報から、乗かご103内に乗客がいる場合に、乗かご103を最寄階へ停止させる制御を行う第1の管制運転制御手段302、乗かご103内に乗客がいない場合に、乗かごドア111と乗場ドア110とが係合しない位置へ運転させる制御を行う第2の管制運転制御手段303を有している。本実施例では緊急地震速報を受信した際に、乗かごドア111と乗場ドア110とが係合しない位置へ乗かご103を運転させるドア係合回避運転制御手段(第2の管制運転制御手段303)を備えたことに特徴がある。
次に
図4を用いて、本実施例の処理手順を説明する。制御装置101は、まずエレベーターの電源が投入されるとイニシャル処置工程(S401)が実施された後、通常運転処理工程(S402)にて通常運転を実施する。制御装置101は受信手段113での緊急地震速報の受信状況を監視し、緊急地震速報を受信していなければ(S403でNO)通常運転処理工程(S402)を継続する。緊急地震速報を受信した場合(S403でYES)、S404にて管制運転処理工程が実施される。
次に
図5を用いて、管制運転処理の詳細を説明する。緊急地震速報を受信した場合、地震によりエレベーターが損傷し正常に稼動できなくなる虞があるため、地震の揺れが到達する前にエレベーターを停止させる必要がある。本実施例において、制御装置101は乗かご103内に乗客がいると判定した場合には、乗客を乗かご103から脱出させることを優先し、乗かご103内に乗客がいないと判定した場合には、乗かご103の損傷を防ぐことを優先した制御を行う。まずS501の工程にてかご状態の情報を取得する。かご状態の情報は、例えばかご呼びや乗場呼び登録の有無や、かご内負荷、乗かご位置、走行状態である。
乗かご103の走行可否判断の工程において乗かご103が走行中であれば(S502でYES)、S503にてかご呼び登録の有無を判定する。かご呼びが登録されている場合(S503でYES)、乗かご103内に乗客がいると判断し、乗客の救出を優先させるために、乗かご103を最寄階に停止させて乗客を乗かご103外に脱出させる第1の管制運転制御手段302の工程を実施する(S504)。
かご呼び登録されていない場合(S503でNO)、乗場呼びによる走行のため、乗かご103内に乗客はいないと判断し、乗かご103の損傷を防ぐことを優先させるために、ドア係合しない位置で乗かご103を停止させる第2の管制運転制御手段303の工程を実施する(S506)。また、S502にて乗かご103が停止していた場合(S502でNO)、ドア閉の状態が所定時間以上経過している場合(S507でYES)、乗かご103内の負荷が所定の値以下の場合(S508でYES)は、乗かご103内に乗客はいないと判断し、第2の管制運転制御手段303の工程を実施する(S506)。
サービス終了後にエレベーターが操作されない時間が、例えば1分以上経過している場合、乗かご103内に乗客はいないと判断する。S507にて、ドア閉の状態が所定時間以上経過していない場合(S507でNO)や、乗かご103内の負荷が所定の値、例えば、30kg等人が乗っていると思われる値以上となっている場合(S508でNO)、乗かご103内に乗客が乗込んでいる可能性があるため、第1の管制運転制御手段302の工程を実施する(S504)。第1の管制運転制御手段302の工程(S504)及び第2の管制運転制御手段303の工程(S506)が実施されると、エレベーターは休止状態となる。
緊急地震速報受信後に地震が発生し、揺れにより地震感知器112が動作した場合または、揺れによりエレベーターが故障検出して停止した場合(S510でYES)、機器損傷している可能性があるため、保守員が故障状態の復旧や動作の確認を実施し復旧を行う(S512)。また、地震感知器112が動作していなければ(S510でNO)揺れによるエレベーターへの影響は無いと判断し、所定時間経過後(S511でYES)、エレベーターを自動で平常運転に復帰する(S512)。S511では、揺れの収まりや余震が発生することを考慮し、たとえば1分休止状態を継続させる。なお、S511で所定時間経過していない場合(S511でNO)や、保守員による復旧がされていない場合(S513でNO)、エレベーターは休止状態を継続する。
次に
図6及び
図7を用いて、第1の管制運転制御手段302及び第2の管制運転制御手段303の処理手順を説明する。
図6は乗かご103を最寄階に停止させて乗客を乗かご103外に脱出させる第1の管制運転制御手段302の処理手順、
図7はドア係合しない位置で乗かご103を停止させる第2の管制運転制御手段303の処理手順を示す。S504にて第1の管制運転制御手段302を実施する場合、S601にて最寄階着床運転を行う。最寄階へ到着後、戸開して乗かご103内の乗客を外へ出るよう促す(S602)。乗かご103内の乗客が外に出るための十分な時間が経過した後(S603でYES)、戸閉し(S604)、エレベーターは休止状態となる(S605)。
一方、S506にて第2の管制運転制御手段303を実施する場合、最寄階へ走行するが(S701)、このとき、乗場床から上でドア係合していない位置を検出すると(S702でYES)、休止状態にする(S703)。
【0012】
乗かご103を停止させる位置は、ドア係合しない位置、すなわち係合ローラー201と、係合子202が係合しない位置とする。これにより、地震による揺れで係合ローラー201と係合子202とが激しく衝突して損傷することを防止できる。一般的にドア係合する位置は、階床によって変動することは無い。よって、エンコーダー107の出力信号により、乗かご103の位置が移動した最寄階の乗場床から所定の高さ以上となっていることを検出した位置で乗かご103を停止させる。
また、地震によりエレベーターが故障し動かなくなった場合に、保守員が乗かご103内に乗込んで復旧作業を行う。このとき、本実施例では乗かご103の停止位置を乗場床より上の位置にすることで、作業員が乗かご103内へ乗り込み易くなり、作業性が向上する。即ち、乗かご103が乗場床より下のドア係合しない位置で停止した
図8Aに示す状態では、保守員が乗かご103内を確認する際に、乗場よりかご床が低いため、作業員が乗かご103内へ乗り込み難くなり、作業性が低下する。かご床が乗場床より上のドア係合しない位置で停止した
図8Bに示す状態では、作業員が乗かご103内へ乗り込み易くなり、復旧に向けた作業性が向上する上、エプロン108により、乗場とかご床の隙間を塞ぐことができ、安全性が高まる。よって、乗かご103の停止位置は、乗場床より上のドア係合しない位置が好ましい。また、緊急地震速報の受信データに本震までの到達時間が含まれる場合、所定時間猶予があれば、第1の管制運転制御手段302実施後に第2の管制運転制御手段303を実施しても良い。所定時間は、ドア係合しない位置までの走行に必要な時間とする。この場合、乗客の安全を確保できると共に、地震によるドア機器の損傷を防ぐことができる。
以上説明したように、本実施例によれば、緊急地震速報を受信した際に、乗かごドア111と乗場ドア110とが係合しない位置へ乗かご103を移動させる管制運転制御を備えたことにより、ドア機器の損傷を防止することができる。また、本実施例によれば、ドア機器の損傷防止により、エレベーターの地震から早期復旧を実現できる。さらに、本実施例によれば、保守員による復旧作業の効率及び安全性を向上することができる。
【実施例2】
【0013】
次に
図9を用いて、本発明の他の実施例を説明する。
図9は、本発明の他の実施例に係る複数台のエレベーターを示す全体構成図である。実施例1と同じ構成のものについては、同一の符号を付している。
図9において、図示しない建屋には複数台(本実施例では3台)のエレベーターが設置され、エレベーターの管制制御システムを構築している。エレベーターを制御する制御装置101は、複数台のエレベーターの台数に合わせそれぞれ設置されている。また、エレベーターを構成する電動機102、乗かご103、釣合いおもり104、エンコーダー107、乗場呼びボタン109等も複数設けられている。また、
図9には図示しないが、
図2における乗場ドア110、乗かごドア111、係合ローラー201、係合子202も複数設けられている。複数台のエレベーターのうち、1つの制御装置101には緊急地震速報を受信する受信手段113が設けられている。各制御装置101同士は、通信線900によって電気的に接続されている。
動作について説明する。受信手段113で受信された緊急地震速報の信号は、通信線900を介して、各制御装置101に配信される。各制御装置101は緊急地震速報の信号を受信すると、
図3に示すかご状態判定手段301にてそれぞれの乗かご103の状態を判定する。そして、かご状態判定手段301の結果に応じて第1の管制運転制御手段302、第2の管制運転制御手段303を実行する。各制御装置101の構成、処理手順については実施例1と同様である。
本実施例によれば、複数台のエレベーターのうち、1台のエレベーターの制御装置101に緊急地震速報を設け、ここで受信した信号を通信線900を介して他の制御装置101に送信するようにしているので、受信手段113の設置コストを削減したエレベーターの管制制御システムを構築することができる。
また、受信手段113を複数台の各制御装置101にそれぞれ設置し、これらを通信線900で接続するようにしても良い。この構成によれば、他の受信手段113に故障が発生したり、緊急地震速報の信号を受信できなかった状況においても、正常に受信した受信手段113が、他の制御装置101へ送信することができ、エレベーターの管制制御システムの信頼性を向上させることができる。
以上説明したように、実施例1及び2ではシングルデッキタイプのエレベーターの例で説明したが、実施例1及び2に記載の発明はダブルデッキタイプのエレベーターにも適用することが可能である。
また、本発明に係るエレベーターは、前述した実施例1及び2に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。