特許第6715214号(P6715214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6715214エレベーター及びエレベーターの制御方法、並びにエレベーターの管制制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715214
(24)【登録日】2020年6月10日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】エレベーター及びエレベーターの制御方法、並びにエレベーターの管制制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
   B66B5/02 P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-95840(P2017-95840)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-193149(P2018-193149A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西迫 竜一
(72)【発明者】
【氏名】金 政和
(72)【発明者】
【氏名】西江 聡
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−254862(JP,A)
【文献】 特開2012−126499(JP,A)
【文献】 特開2009−113952(JP,A)
【文献】 特開2007−119219(JP,A)
【文献】 特開2018−070312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震発生後に配信される緊急地震速報を受信する受信手段と、エレベーターの運転制御を行う制御装置と、該制御装置によって駆動制御される電動機と、該電動機によって昇降する乗かごと、該乗かごに設置され、ドアモーターにより開閉動作する乗かごドアと、建屋の各階乗場に設置された乗場ドアと、該乗場ドアに設置された乗場ドア係合手段と、該乗場ドア係合手段と係合し、前記乗かごドアの開閉動作に応じて前記乗場ドアを開閉させる乗かご係合手段とを有するエレベーターであって、
前記制御装置は前記受信手段が緊急地震速報を受信した際、前記乗場ドア係合手段と前記乗かご係合手段とが係合しない位置に前記乗かごを移動させるドア係合回避運転制御手段を備え
前記乗かごの下部には前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を塞ぐエプロンを備え、
前記ドア係合回避運転制御手段は、乗場床よりも上の位置であって前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を前記エプロンにより塞ぐ位置で前記乗かごを停止させることを特徴とするエレベータ
【請求項2】
前記制御装置は前記受信手段が緊急地震速報を受信した際、前記乗かごの状態を判定するかご状態判定手段と、前記乗かごを最寄階に移動させる第1の管制運転制御手段を備え、前記ドア係合回避運転制御手段は第2の管制運転制御手段であって、
前記かご状態判定手段が前記乗かご内に乗客がいると判断した場合には前記第1の管制運転制御手段により前記乗かごを最寄階に移動させ、前記かご状態判定手段が前記乗かご内に乗客がいないと判断した場合には、前記第2の管制運転制御手段により前記乗場ドア係合手段と前記乗かご係合手段とが係合しない位置に前記乗かごを移動させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ
【請求項3】
地震発生後に配信される緊急地震速報を受信し、エレベーターの制御を行う制御装置を備えたエレベーターの制御方法であって、
前記緊急地震速報を受信した際、乗場ドアと乗かごとが係合しない位置に前記乗かごを移動させる工程を有し、
前記乗場ドアと乗かごとが係合しない位置に前記乗かごを移動させる工程は、乗場床より上の位置であって前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を前記乗かごの下部に備えたエプロンにより塞ぐ位置で前記乗かごを停止させることを特徴とエレベーターの制御方法。
【請求項4】
前記緊急地震速報を受信し乗かごの状態を判定する工程と、前記乗かごを最寄階に移動させる工程とを備え、
前記乗かご内に乗客がいると判断した場合には前記乗かごを最寄階に移動させる工程を実施し、前記乗かご内に乗客がいないと判断した場合には乗場ドアと前記乗かごとが係合しない位置に前記乗かごを移動させる工程を実施する請求項3に記載のエレベーターの制御方法。
【請求項5】
複数台のエレベーターを有するエレベーターの管制制御システムであって、
前記複数台のエレベーターの各々には、エレベーターの運転制御を行う制御装置と、該制御装置によって駆動制御される電動機と、該電動機によって昇降する乗かごと、該乗かごに設置され、ドアモーターにより開閉動作する乗かごドアと、建屋の各階乗場に設置された乗場ドアと、該乗場ドアに設置された乗場ドア係合手段と、該乗場ドア係合手段と係合し、前記乗かごドアの開閉動作に応じて前記乗場ドアを開閉させる乗かご係合手段とを設け、
前記複数台のエレベーターのうち1つの制御装置には、地震発生後に配信される緊急地震速報を受信する受信手段が設けられ、前記複数台のエレベーターの各々の制御装置は通信線によって接続され、前記各々の制御装置は、前記受信手段が緊急地震速報を受信した際、前記乗場ドア係合手段と前記乗かご係合手段とが係合しない位置に前記乗かごを移動させるドア係合回避運転制御手段を備え、
前記乗かごの下部には前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を塞ぐエプロンを備え、
前記ドア係合回避運転制御手段は、乗場床よりも上の位置であって前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を前記エプロンにより塞ぐ位置で前記乗かごを停止させることを特徴とするエレベーターの管制制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベーター及びエレベーターの制御方法、並びにエレベーターの管制制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震発生直後にインターネットや衛星通信等を利用して緊急地震速報を配信することにより、地震の本震(S波)到達前に地震への有効な対策を講じるといった様々な取り組みや提案が行われている。例えば、緊急地震速報受信時に、主ロープ等の振幅を最小限にする位置へ乗かごを退避運転させることにより、揺れによるエレベーターへの損傷を低減させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−254862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、緊急地震速報を受信した場合に、主ロープや釣合いロープの振幅を最小にする位置に乗かごを移動させることで、本震によるエレベーターの損傷を低減している。しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、ドア機器が損傷することへの考慮が成されていない。エレベーターのドアは、各階の乗場位置において乗かごドアと乗場ドアとのそれぞれの係合手段同士が係合しており、乗かごドアの動力が乗場ドアに伝達されることで動作している。エレベーターが乗かごドアと乗場ドアとが係合している位置にいた場合、地震の揺れにより、乗かごドアの係合手段と乗り場ドアの係合手段とが激しく衝突し合い、係合手段が損傷する虞がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、地震の揺れによる乗かごドアの係合手段と乗り場ドアの係合手段の損傷を防止するエレベーター及びエレベーターの制御方法、並びにエレベーターの管制制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、地震発生後に配信される緊急地震速報を受信する受信手段と、エレベーターの運転制御を行う制御装置と、該制御装置によって駆動制御される電動機と、該電動機によって昇降する乗かごと、該乗かごに設置され、ドアモーターにより開閉動作する乗かごドアと、建屋の各階乗場に設置された乗場ドアと、該乗場ドアに設置された乗場ドア係合手段と、該乗場ドア係合手段と係合し、前記乗かごドアの開閉動作に応じて前記乗場ドアを開閉させる乗かご係合手段とを有するエレベーターの制御装置であって、前記制御装置は前記受信手段が緊急地震速報を受信した際、前記乗場ドア係合手段と前記乗かご係合手段とが係合しない位置に前記乗かごを移動させるドア係合回避運転制御手段を備え、前記乗かごの下部には前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を塞ぐエプロンを備え、前記ドア係合回避運転制御手段は、乗場床よりも上の位置であって前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を前記エプロンにより塞ぐ位置で前記乗かごを停止させることにある。
【0006】
また、本発明の特徴とするところは、地震発生後に配信される緊急地震速報を受信し、エレベーターの制御を行う制御装置を備えたエレベーターの制御方法であって、前記緊急地震速報を受信した際、乗場ドアと乗かごとが係合しない位置に前記乗かごを移動させる工程を有し、前記乗場ドアと乗かごとが係合しない位置に前記乗かごを移動させる工程は、乗場床より上の位置であって前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を前記乗かごの下部に備えたエプロンにより塞ぐ位置で前記乗かごを停止させることにある。
【0007】
さらに本発明の特徴とするところは、複数台のエレベーターを有するエレベーターの管制制御システムであって、前記複数台のエレベーターの各々には、エレベーターの運転制御を行う制御装置と、該制御装置によって駆動制御される電動機と、該電動機によって昇降する乗かごと、該乗かごに設置され、ドアモーターにより開閉動作する乗かごドアと、建屋の各階乗場に設置された乗場ドアと、該乗場ドアに設置された乗場ドア係合手段と、該乗場ドア係合手段と係合し、前記乗かごドアの開閉動作に応じて前記乗場ドアを開閉させる乗かご係合手段とを設け、前記複数台のエレベーターのうち1つの制御装置には、地震発生後に配信される緊急地震速報を受信する受信手段が設けられ、前記複数台のエレベーターの各々の制御装置は通信線によって接続され、前記各々の制御装置は、前記受信手段が緊急地震速報を受信した際、前記乗場ドア係合手段と前記乗かご係合手段とが係合しない位置に前記乗かごを移動させるドア係合回避運転制御手段を備え、前記乗かごの下部には前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を塞ぐエプロンを備え、前記ドア係合回避運転制御手段は、乗場床よりも上の位置であって前記乗かごと乗場床との間に生じる隙間を前記エプロンにより塞ぐ位置で前記乗かごを停止させることにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地震の揺れによる乗かごドアの係合手段と乗り場ドアの係合手段の損傷を防止するエレベーター及びエレベーターの制御方法、並びにエレベーターの管制制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例に係る全体構成図である。
図2A】乗場ドア及び乗かごドアが閉じた状態を上面から見た図である。
図2B】乗場ドア及び乗かごドアが開いた状態を上面から見た図である。
図3】本発明の一実施例に係るブロック図である。
図4】本発明の一実施例に係る全体処理手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施例に係る緊急地震速報受信時の処理手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施例に係る第1の管制運転制御手段処理手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施例に係る第2の管制運転制御手段処理手順を示すフローチャートである。
図8A】乗かごが乗場床より低い位置に停止した状態を示す側面図である。
図8B】乗かごが乗場床より高い位置に停止した状態を示す側面図である。
図9】本発明の他の実施例に係る複数台のエレベーターを示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照し説明する。本実施例では、シングルデッキタイプのエレベーターを例として以下説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の一実施形態を示す全体構成図、図2Aは乗場ドア及び乗かごドアが閉じた状態を上面から見た図、図2Bは乗場ドア及び乗かごドアが開いた状態を上面から見た図、図3は本発明の一実施形態に係るブロック図、図4は本発明の一実施形態に係る全体処理手順を示すフローチャート、図5は本発明の一実施形態に係る緊急地震速報受信時の処理手順を示すフローチャート、図6は本発明の一実施形態に係る第1の管制運転制御手段処理手順を示すフローチャート、図7は本発明の一実施形態に係る第2の管制運転制御手段処理手順を示すフローチャート、図8Aは乗かごが乗場床より低い位置に停止した状態を示す側面図、図8Bは乗かごが乗場床より高い位置に停止した状態を示す側面図である。
まず、図1及び図2を用いて、本実施例の全体構成を説明する。図1において、エレベーターを有する建物において、エレベーターの運転制御を行う制御装置101と、制御装置101によって駆動制御される電動機102と、ロープを介して電動機102によって昇降する乗かご103と、乗かご103とバランスをとる釣合いおもり104を有している。乗かご103は塔内に設置されたレール(図示しない)に沿い、塔内を上下に移動する。乗かご103には、かご内の負荷を検出するための負荷検出装置105が取り付けられており、乗かご103内に乗客が乗込んだ際の沈み込みを例えば非接触センサーにより検知することで乗かご103内負荷を検出する。乗客はかご内操作盤106を操作することにより、行き先階を登録することができる。乗かご下部にはエプロン108が取付けられており、乗かご103が着床位置からずれている場合に乗かご103と着床との間に生じる隙間を塞ぐものである。乗場で待つ乗客は乗場呼びボタン109を操作することにより、乗場階へ乗かご103を呼ぶ。
また、電動機102には乗かご103の位置を検出するためのエンコーダー107が接続されている。エンコーダー107は電動機102の回転に同期してパルス信号を発生し、制御装置101に信号を出力する。制御装置101は受信したパルス信号をカウントすることで乗かご103の位置を検出する。また、制御装置101には、地震発生時の揺れを検出することのできる地震感知器112と、緊急受信速報を受信することのできる受信手段113が接続されている。
乗かご103に設置された乗かごドア111は、乗かご103の上部に設置されたドアモーター114によって開閉動作する。一方、建屋の各階乗場に設置された乗場ドア110も上記ドアモーター114が動作することにより開閉されている。即ち、乗かごドア111と乗場ドア110には、平面視対向するようにドア係合装置200が設けられており、乗かごの着床時に、ドア係合装置200が互いに係合することにより、ドアモーター114の動力がドア係合装置200を介して乗場ドア110に伝達され開閉動作を行う。
上記ドア係合装置200は、乗場ドア110に設置された係合ローラー201(乗場ドア係合手段)と、乗場側に突出するように乗かごドア111に設置され、着床時に係合ローラー201の両側に配置される係合子202(乗かごドア係合手段)から構成される。各階着床時には図2Aのように、係合ローラー201と係合子202が配置される。ドア開時には、ドアモーター114の動力により、乗かごドア111が開く。乗かごドア111の開動作時に係合子202と係合ローラー201がかみ合うことで、乗場ドア110が開く(図2B)。また、ドア閉時にも同様に係合子202と係合ローラー201がかみ合うことで、ドアモーター114の動力が乗場ドア110にも伝達し、乗場ドア110が閉じる。
次に図3を用いて、本実施例の構成を説明する。受信手段113は、地震発生後に配信される緊急地震速報を受信するための手段である。制御装置101には、かご状態判定手段301が設けられている。かご状態判定手段301はエンコーダー107から電動機102の回転に同期したパルス信号を受信し、乗かご103の位置を検出する。また、負荷検出装置105からの信号を受信し、乗かご103の負荷から乗客の有無を検出する。さらに、かご内操作盤106の操作、及び乗場呼びボタン109を操作の操作情報を検出する。
受信手段113にて緊急地震速報を受信した場合に、かご状態判定手段301の情報から、乗かご103内に乗客がいる場合に、乗かご103を最寄階へ停止させる制御を行う第1の管制運転制御手段302、乗かご103内に乗客がいない場合に、乗かごドア111と乗場ドア110とが係合しない位置へ運転させる制御を行う第2の管制運転制御手段303を有している。本実施例では緊急地震速報を受信した際に、乗かごドア111と乗場ドア110とが係合しない位置へ乗かご103を運転させるドア係合回避運転制御手段(第2の管制運転制御手段303)を備えたことに特徴がある。
次に図4を用いて、本実施例の処理手順を説明する。制御装置101は、まずエレベーターの電源が投入されるとイニシャル処置工程(S401)が実施された後、通常運転処理工程(S402)にて通常運転を実施する。制御装置101は受信手段113での緊急地震速報の受信状況を監視し、緊急地震速報を受信していなければ(S403でNO)通常運転処理工程(S402)を継続する。緊急地震速報を受信した場合(S403でYES)、S404にて管制運転処理工程が実施される。
次に図5を用いて、管制運転処理の詳細を説明する。緊急地震速報を受信した場合、地震によりエレベーターが損傷し正常に稼動できなくなる虞があるため、地震の揺れが到達する前にエレベーターを停止させる必要がある。本実施例において、制御装置101は乗かご103内に乗客がいると判定した場合には、乗客を乗かご103から脱出させることを優先し、乗かご103内に乗客がいないと判定した場合には、乗かご103の損傷を防ぐことを優先した制御を行う。まずS501の工程にてかご状態の情報を取得する。かご状態の情報は、例えばかご呼びや乗場呼び登録の有無や、かご内負荷、乗かご位置、走行状態である。
乗かご103の走行可否判断の工程において乗かご103が走行中であれば(S502でYES)、S503にてかご呼び登録の有無を判定する。かご呼びが登録されている場合(S503でYES)、乗かご103内に乗客がいると判断し、乗客の救出を優先させるために、乗かご103を最寄階に停止させて乗客を乗かご103外に脱出させる第1の管制運転制御手段302の工程を実施する(S504)。
かご呼び登録されていない場合(S503でNO)、乗場呼びによる走行のため、乗かご103内に乗客はいないと判断し、乗かご103の損傷を防ぐことを優先させるために、ドア係合しない位置で乗かご103を停止させる第2の管制運転制御手段303の工程を実施する(S506)。また、S502にて乗かご103が停止していた場合(S502でNO)、ドア閉の状態が所定時間以上経過している場合(S507でYES)、乗かご103内の負荷が所定の値以下の場合(S508でYES)は、乗かご103内に乗客はいないと判断し、第2の管制運転制御手段303の工程を実施する(S506)。
サービス終了後にエレベーターが操作されない時間が、例えば1分以上経過している場合、乗かご103内に乗客はいないと判断する。S507にて、ドア閉の状態が所定時間以上経過していない場合(S507でNO)や、乗かご103内の負荷が所定の値、例えば、30kg等人が乗っていると思われる値以上となっている場合(S508でNO)、乗かご103内に乗客が乗込んでいる可能性があるため、第1の管制運転制御手段302の工程を実施する(S504)。第1の管制運転制御手段302の工程(S504)及び第2の管制運転制御手段303の工程(S506)が実施されると、エレベーターは休止状態となる。
緊急地震速報受信後に地震が発生し、揺れにより地震感知器112が動作した場合または、揺れによりエレベーターが故障検出して停止した場合(S510でYES)、機器損傷している可能性があるため、保守員が故障状態の復旧や動作の確認を実施し復旧を行う(S512)。また、地震感知器112が動作していなければ(S510でNO)揺れによるエレベーターへの影響は無いと判断し、所定時間経過後(S511でYES)、エレベーターを自動で平常運転に復帰する(S512)。S511では、揺れの収まりや余震が発生することを考慮し、たとえば1分休止状態を継続させる。なお、S511で所定時間経過していない場合(S511でNO)や、保守員による復旧がされていない場合(S513でNO)、エレベーターは休止状態を継続する。
次に図6及び図7を用いて、第1の管制運転制御手段302及び第2の管制運転制御手段303の処理手順を説明する。図6は乗かご103を最寄階に停止させて乗客を乗かご103外に脱出させる第1の管制運転制御手段302の処理手順、図7はドア係合しない位置で乗かご103を停止させる第2の管制運転制御手段303の処理手順を示す。S504にて第1の管制運転制御手段302を実施する場合、S601にて最寄階着床運転を行う。最寄階へ到着後、戸開して乗かご103内の乗客を外へ出るよう促す(S602)。乗かご103内の乗客が外に出るための十分な時間が経過した後(S603でYES)、戸閉し(S604)、エレベーターは休止状態となる(S605)。
一方、S506にて第2の管制運転制御手段303を実施する場合、最寄階へ走行するが(S701)、このとき、乗場床から上でドア係合していない位置を検出すると(S702でYES)、休止状態にする(S703)。
【0012】
乗かご103を停止させる位置は、ドア係合しない位置、すなわち係合ローラー201と、係合子202が係合しない位置とする。これにより、地震による揺れで係合ローラー201と係合子202とが激しく衝突して損傷することを防止できる。一般的にドア係合する位置は、階床によって変動することは無い。よって、エンコーダー107の出力信号により、乗かご103の位置が移動した最寄階の乗場床から所定の高さ以上となっていることを検出した位置で乗かご103を停止させる。
また、地震によりエレベーターが故障し動かなくなった場合に、保守員が乗かご103内に乗込んで復旧作業を行う。このとき、本実施例では乗かご103の停止位置を乗場床より上の位置にすることで、作業員が乗かご103内へ乗り込み易くなり、作業性が向上する。即ち、乗かご103が乗場床より下のドア係合しない位置で停止した図8Aに示す状態では、保守員が乗かご103内を確認する際に、乗場よりかご床が低いため、作業員が乗かご103内へ乗り込み難くなり、作業性が低下する。かご床が乗場床より上のドア係合しない位置で停止した図8Bに示す状態では、作業員が乗かご103内へ乗り込み易くなり、復旧に向けた作業性が向上する上、エプロン108により、乗場とかご床の隙間を塞ぐことができ、安全性が高まる。よって、乗かご103の停止位置は、乗場床より上のドア係合しない位置が好ましい。また、緊急地震速報の受信データに本震までの到達時間が含まれる場合、所定時間猶予があれば、第1の管制運転制御手段302実施後に第2の管制運転制御手段303を実施しても良い。所定時間は、ドア係合しない位置までの走行に必要な時間とする。この場合、乗客の安全を確保できると共に、地震によるドア機器の損傷を防ぐことができる。
以上説明したように、本実施例によれば、緊急地震速報を受信した際に、乗かごドア111と乗場ドア110とが係合しない位置へ乗かご103を移動させる管制運転制御を備えたことにより、ドア機器の損傷を防止することができる。また、本実施例によれば、ドア機器の損傷防止により、エレベーターの地震から早期復旧を実現できる。さらに、本実施例によれば、保守員による復旧作業の効率及び安全性を向上することができる。
【実施例2】
【0013】
次に図9を用いて、本発明の他の実施例を説明する。図9は、本発明の他の実施例に係る複数台のエレベーターを示す全体構成図である。実施例1と同じ構成のものについては、同一の符号を付している。
図9において、図示しない建屋には複数台(本実施例では3台)のエレベーターが設置され、エレベーターの管制制御システムを構築している。エレベーターを制御する制御装置101は、複数台のエレベーターの台数に合わせそれぞれ設置されている。また、エレベーターを構成する電動機102、乗かご103、釣合いおもり104、エンコーダー107、乗場呼びボタン109等も複数設けられている。また、図9には図示しないが、図2における乗場ドア110、乗かごドア111、係合ローラー201、係合子202も複数設けられている。複数台のエレベーターのうち、1つの制御装置101には緊急地震速報を受信する受信手段113が設けられている。各制御装置101同士は、通信線900によって電気的に接続されている。
動作について説明する。受信手段113で受信された緊急地震速報の信号は、通信線900を介して、各制御装置101に配信される。各制御装置101は緊急地震速報の信号を受信すると、図3に示すかご状態判定手段301にてそれぞれの乗かご103の状態を判定する。そして、かご状態判定手段301の結果に応じて第1の管制運転制御手段302、第2の管制運転制御手段303を実行する。各制御装置101の構成、処理手順については実施例1と同様である。
本実施例によれば、複数台のエレベーターのうち、1台のエレベーターの制御装置101に緊急地震速報を設け、ここで受信した信号を通信線900を介して他の制御装置101に送信するようにしているので、受信手段113の設置コストを削減したエレベーターの管制制御システムを構築することができる。
また、受信手段113を複数台の各制御装置101にそれぞれ設置し、これらを通信線900で接続するようにしても良い。この構成によれば、他の受信手段113に故障が発生したり、緊急地震速報の信号を受信できなかった状況においても、正常に受信した受信手段113が、他の制御装置101へ送信することができ、エレベーターの管制制御システムの信頼性を向上させることができる。
以上説明したように、実施例1及び2ではシングルデッキタイプのエレベーターの例で説明したが、実施例1及び2に記載の発明はダブルデッキタイプのエレベーターにも適用することが可能である。
また、本発明に係るエレベーターは、前述した実施例1及び2に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0014】
101 制御装置
102 電動機
103 乗かご
105 負荷検出装置
107 エンコーダー
109 乗場呼びボタン
110 乗場ドア
111 乗かごドア
112 地震感知器
113 受信手段
114 ドアモーター
200 ドア係合装置
201 係合ローラー
202 係合子
302 第1の管制運転制御手段
303 第2の管制運転制御手段
900 通信線
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9