(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715237
(24)【登録日】2020年6月10日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】呼吸作動式の吸入器用のコンプライアンス監視モジュール
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【請求項の数】33
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-511931(P2017-511931)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2017-525512(P2017-525512A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】US2015047366
(87)【国際公開番号】WO2016033419
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年8月17日
(31)【優先権主張番号】62/043,120
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モリソン,マーク,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェル,ダグラス,イー.
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン オリべラス,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】バック,ダニエル
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0178678(US,A1)
【文献】
特開2014−083446(JP,A)
【文献】
特表2003−522003(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/060269(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0178872(US,A1)
【文献】
特表平07−509378(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0041845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器であって、
薬剤を含むホッパー;
投与チャンバ;
マウスピース;
カバー;
流量を測定するためのセンサ、無線トランスミッタ、および、プロセッサを有する監視モジュール;および、
ベローズ、を備え、
前記ベローズは、前記カバーの前記マウスピースを露出させる移動に伴って収縮するように構成され、
前記ベローズの収縮は、前記監視モジュールのスイッチが作動されることをもたらし、
前記スイッチの作動は、前記監視モジュールが第1電力状態から第2電力状態へ変化することをもたらし、
前記ベローズは、計量された1用量の前記薬剤を放出するために当該ベローズによる抵抗空気力を解除するように構成されている、
吸入器。
【請求項2】
前記センサは、圧力センサを備える、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記圧力センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム圧力センサ、または、ナノエレクトロメカニカルシステム圧力センサを備える、
請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記第1電力状態は、第1電力消費と関係し、前記第2電力状態は、第2電力消費と関係し、
前記第1電力消費は、前記第2電力消費と異なる、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
前記第1電力状態は、オフ状態またはスリープ状態であり、前記第2電力状態は、オン状態である、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項6】
前記カバーに接続されたヨーク、をさらに備え、
前記ヨークは、前記カバーが移動されて前記マウスピースを露出させるとき前記スイッチを作動させるように構成され、
前記スイッチの作動は、前記監視モジュールを前記第1電力状態から前記第2電力状態へ変化させる、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記カバーが移動されて前記マウスピースを露出させるとき、前記吸入器が準備されていることの指示をユーザに提供するように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項8】
前記無線トランスミッタは、Bluetooth Low Energy(BLE)集積回路、または、BLEシステムオンチップ(SoC)の少なくとも1つを備える、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項9】
発光ダイオード(LED)をさらに備え、
前記プロセッサは、前記監視モジュールが前記第1電力状態から前記第2電力状態に変化するのに伴い前記LEDを起動させるように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項10】
前記センサは、前記マウスピースに対して遠位に位置されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項11】
前記センサは、前記マウスピースの流路を通じた吸入中に圧力を測定するように構成されており、
前記プロセッサは、測定された前記圧力に基づいて、前記流路を通じた吸入に関する流量を測定するように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項12】
前記マウスピースは、流路の少なくとも一部を規定する、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項13】
前記カバーの移動は、さらに、前記1用量の薬剤が前記流路で利用可能になることをもたらす、
請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記第2電力消費は、前記第1電力消費より大きい、
請求項4に記載の吸入器。
【請求項15】
前記センサは、前記マウスピースの流路を通じた吸入中に複数の圧力測定値を発生させるように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記複数の圧力測定値の1または2以上から、前記吸入に関するピーク流量を測定するように構成されている、
請求項15に記載の吸入器。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記複数の圧力測定値に基づいて、前記吸入に関する継続時間を測定するように構成されている、
請求項15に記載の吸入器。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記複数の圧力測定値に関する複数の流量を積分することによって、前記吸入に関する体積を測定するように構成されている、
請求項15に記載の吸入器。
【請求項19】
前記監視モジュールは、投与情報を生成するように構成され、
前記投与情報は、
装置の作動に関する時間;
前記1用量の薬剤の上首尾の投与に関する時間;
圧力測定値;
吸入流量;
ピーク吸入流量;
吸入持続時間;または、
吸入体積;
のうち少なくとも1つを備える、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項20】
前記無線トランスミッタは、前記投与情報をユーザ装置に送信するものであり、
前記ユーザ装置は、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、または、デスクトップコンピュータを備える、
請求項19に記載の吸入器。
【請求項21】
吸入器のための作動方法であって、
前記吸入器は、ベローズ、マウスピースカバー、ホッパー、および、監視モジュールを備え、前記監視モジュールは、流量を測定するためのセンサ、無線トランスミッタ、および、プロセッサを備え、
前記方法は、
前記マウスピースカバーの移動に基づいて、ベローズを収縮し;
前記ベローズの収縮に基づいて、前記監視モジュールのスイッチを作動させ、前記スイッチの作動は、前記監視モジュールが第1電力状態から第2電力状態に変化することをもたらし;
前記ベローズによる抵抗空気力を解除することに基づいて、計量された1用量の薬剤を前記ホッパーから放出する、
方法。
【請求項22】
前記第1電力状態は、オフ状態またはスリープ状態であり、前記第2電力状態は、オン状態である、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1電力状態は、第1電力消費と関係し、前記第2電力状態は、前記第1電力消費と異なる第2電力消費と関係する、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、さらに、前記第2電力状態中に前記監視モジュール内で前記センサを起動させる、
請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、さらに、前記マウスピースカバーに接続されたヨークを移動させて前記監視モジュール内で前記スイッチを作動させ、
前記スイッチの作動は、前記監視モジュールを前記第1電力状態から前記第2電力状態に変化させる、
請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記センサは、前記吸入器の本体内の圧力を検出するように構成されている、
請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、さらに、複数の圧力測定値の1または2以上から、吸入に関するピーク流量を測定する、
請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、さらに、複数の圧力測定値に基づいて、吸入に関する継続時間を測定する、
請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、さらに、複数の圧力測定値に関する複数の流量を積分することによって、吸入に関する体積を測定する、
請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、さらに、前記監視モジュールを介して投与情報を生成し、
前記投与情報は、
装置の作動に関する時間;
前記1用量の薬剤の上首尾の投与に関する時間;
圧力測定値;
吸入流量;
ピーク吸入流量;
吸入持続時間;または、
吸入体積;
のうち少なくとも1つを備える、
請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、さらに、前記投与情報をユーザ装置に送信し、
前記ユーザ装置は、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、または、デスクトップコンピュータを備える、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法は、さらに、前記マウスピースカバーが移動されて前記吸入器のマウスピースを露出させるときにインジケータを照明する、
請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記インジケータは、前記1用量の薬剤がマウスピースの流路で利用可能であることを示す、
請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年8月28日付けで出願されたタイトル「呼吸作動式の吸入器用のコンプライアンス監視モジュール」の米国特許出願第62/043,120の優先権を主張するものであり、その内容は参照によって本願に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示は、吸入器を経由した薬剤投与に対する患者のコンプライアンスの監視に関する。特に、本開示は、呼吸作動式の吸入器内のコンプライアンス監視用の小型圧力センサの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
吸入器またはプッファー(手動作動式吸入器)は、肺を経由して体内に薬剤を送達するために用いられる。これらは、例えば喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用いることができる。吸入器のタイプは、定量吸入器(MDIs)、ドライパウダー吸入器(DPIs)、および、噴霧吸入器(ネブライザイザー)を含む。
【0004】
現代の呼吸制御式の噴霧吸入器は、一般的に2つのカテゴリー(呼吸強化式または呼吸作動式)に分類される。呼吸強化式の噴霧吸入器は、患者の気流を用いて、患者へのエアロゾルを含む薬の流れを制御する。エアロゾルは、これらの噴霧吸入器内で連続的に発生されるので、いくらかは環境へ逃げていく。呼吸作動式の噴霧吸入器は、患者の呼吸でエアロゾル発生器をオンおよびオフにするために、吸入及び/又は吐出の検出を用いる。薬が環境へ失われることがあったとしてもほんのわずかであるため、これは、呼吸強化式の噴霧吸入器と比較して効率性を改善する。呼吸作動式の装置での検出は、一般的に熱及び/又は圧力センサによる。
【0005】
呼吸器系薬送達において直面する共通の問題は、用いられる装置に関わらず、どのようにして患者のアドヒアランスおよびコンプラアンスを監視するかである。
【0006】
アドヒアランスは、例えば1日あたりに処方された回数の用量を服用しているといったように、調剤ラベルに従って患者を取り扱う。処方箋が1日あたり2用量を要求し、患者が1日に2用量を服用しているなら、それは100%のアドヒアラントとされる。患者が1日に1用量だけしか服用していないなら、それは50%のアドヒアラントにすぎない。後者の場合、患者は、医者により処方された治療を得ていない。
【0007】
コンプライアンスは、一方、患者が薬剤送達装置をどのように用いているかに関する。効果的な治療のために推奨された方法で用いられているなら、それは100%のコンプライアントである。適切に用いられていないなら、それは100%未満のコンプライアントである。呼吸作動式の吸入器の使用は、特別な方法で吸入することを伴う;例えば、吸入は、1回分の完全な用量の薬剤を取り込むのに十分に長く十分に強い必要があるかもしれない。例えば小児や高齢者のような患者にとって、完全なコンプライアンスのための要件を満たすことは難しいかもしれない。しかしながら、100%のコンプライアンスを達成できないことは、処方された治療の効果を減少しうる。医者が薬剤を処方するとき、当該治療の効き目は、患者が装置を適切にかつ各日に適切な回数使用することに完全に依存する。患者は、そうすることができないなら、コンディションの改善を感じられない虞がある。患者のアドヒアランス/コンプライアンスを確かめる手段がなく、改善が見られない患者に直面すると、医者は、より強い用量を処方し、または、より強い薬剤を処方するしかなくなるであろう。時として、これは患者を危険にさらすかもしれない。患者が処方された薬剤を実際に摂取していることを確認する何らかの方法を医者が有しているならば、これは回避されうる。
【0008】
ある製薬会社によるアプローチは、薬剤送達製品に一体型用量カウンタ(ドーズカウンタ)を付加することである。例えば、用量カウンタは、作動ボタンの押すことや、キャップまたはカバーを開くことによって始動される。ある呼吸作動式の吸入器は、エアロゾルバルブを開くことによって始動されるアドヒアランス用量カウンタを備え、患者が1用量の薬剤を放出するのに十分に強い吸入をしたことを示す。これは、患者や世話人に、装置が使用されたことの客観的な証拠を提供する一方、依然として何のコンプライアンス情報も提供することはできない。ユーザが全用量を吸入しているかを、または、彼らがエアロゾルバルブを作動させるのに十分なだけ吸入をし、それから吸入を停止したまたは吸入を薬剤が流路内に取り込まれうるまでのレベル未満に減少させたかを判定する方法はない。かくして、アドヒアランス情報だけでなくコンプライアンス情報も提供する製品の必要性がある。
【0009】
肺活量計は、患者の肺によって吸われおよび吐かれた空気の体積を測定するための装置である。肺活量計は、通気、つまり肺へのおよび肺からの空気の移動を測定する。肺容量曲線として知られ、肺活量計によって出力された記録波形から、異常な(閉塞性または拘束性のある)通気パターンを識別することができる。既存の肺活量計は、圧力変換器、超音波および水ゲージを含む様々な異なる測定方法を用いる。
【0010】
呼吸と関連する流れを監視するために、圧力センサが最も便利である、というのも、圧力情報は、流れを測定するために用いることができ、その後に体積を測定するために用いることができるからである。
【0011】
呼吸検出のために用いられる圧力センサは、一般的に、気道(該気道を通じて患者は吸入する)の一部分にわたる圧力差を測定する。これは、一般的には、管材や他の適切な導管によって、センサを気道に接続する2つの接続を用いて行なわれる。他方のポートを大気へ開放して、気道への単一の接続を用いることもできる。気道内の圧力が、流れが適用される前および後の双方で測定されるのであれば、シングルポートゲージタイプのセンサが用いられてもよく、測定値の差は、空気経路抵抗にわたる所望の圧力差を示す。しかしながら、最初の測定値(流れなしの測定値)に関連する不確実性は一般的に高い。
【0012】
用いられる圧力センサのタイプに関わらず、圧力センサは、一般的に、フレキシブルな管材を用いて、患者の気道に接続される。このようなシステムの欠点は、薬漏れ、または、患者の分泌液(粘液、唾液等)の形式での液体汚染に関係するセンサ損傷の可能性である。圧力センサをこのような汚染から隔離するために、製造業者は、しばしば、エラストマー管材を用いて、圧力センサを測定箇所からいくらか離して位置させる。しかしながら、液体は、それでも管材内で濃縮していることがあり、患者に対して露出されるが一般的には清掃のためにアクセスできないエリアでの細菌繁殖のための環境を作りかねない。
【0013】
従来の圧力センサの別の問題は、熱ドリフトである;圧力測定値が局所温度の変化で経時的に変化しうる現象である。追加の回路を用いて当該ドリフトを補償することができるが、これはコストおよび体積を増やし、必要電力を増加させる。当該回路は、圧力センサ自体内に位置されてもよいが、センサは一般的に測定されているガスからいくらか離されていることを考慮すると、検出された温度は、そのガスを表すものにならないかもしれない。温度監視回路が、患者に置かれてもよいが、これはさらなる構成要素を追加し、コストおよび複雑性を増加させる。
【0014】
従来の圧力センサのさらに別の問題は、高周波(RF)暴露に対しての影響の受けやすさである。これは、携帯電話のようなラジオトランスミッタに接近させて作動させたときに、実際に問題になりうる。他の潜在源は、WiFiルーターやコードレス電話のような無線通信装置、および、無線ネットワークプリンタのような他の様々な形式の情報技術(IT)装備を含む。従来の圧力センサの問題はヒステリシスであり、変形後に元の形態、形状、または位置に戻るダイアフラムのような圧力検出材料のリラクタンスである。これは、異なる方向から(目標圧力の上方または下方のどちらかから)同じ圧力を通過するときに出力の差異として観測される。非常に低い圧力変化を取り扱うとき、このようなオフセットは、測定されている信号を隠すほど十分に大きくなりうる。
【0015】
上記の問題のいくらかまたは全部を回避する圧力検出を用いるコンプライアンス監視の新規な手段が以下で記載される。
【発明の開示】
【0016】
第1の態様によれば、呼吸作動式の吸入器用のコンプライアンス監視モジュールが備えられ、該モジュールは:小型圧力センサを備え、前記圧力センサのセンサポートは、流路に通気連結(空気的に連結)されるように構成されており、該流路を通じてユーザは吸入することができ;プロセッサを備え、該プロセッサは、薬剤が放出されたことを示す吸入器の投与機構から生じる信号を受信し;圧力センサの検出素子からデータを受信し;そして、前記投与機構からの前記信号および前記検出素子からの前記データに基づいて、前記流路を通じた薬剤を含む呼吸の吸入が、上首尾の投与(成功した投与)のための1または複数の所定の要件を満していることの判定を下すように構成されており;および、トランスミッタを備え、該トランスミッタは、前記判定に応じて、投与レポートを発するように構成されている。
【0017】
小型圧力センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)圧力センサ、または、ナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)圧力センサでよい。
【0018】
上首尾の投与のための前記1または複数の所定の要件は:所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入継続時間;少なくとも所定の閾値継続時間において所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入された総体積;および、所定の閾値を超えるピーク吸気流量(PIF);のうち1または複数を備えてよい。
【0019】
モジュールは、ユーザにより作動される投与機構のプライミング(準備)のための手段、および、呼吸により作動される薬剤の放出のための手段を備える吸入器での使用のために構成されてよい。
【0020】
投与機構から生じる前記信号は、ユーザにより作動される投与機構のプライミングに応答して送信されてよい。
【0022】
圧力センサは、MEMS気圧センサでよい。当該センサは、ピエゾ抵抗素子MEMS圧力センサまたは容量MEMS圧力センサでよい。
【0023】
圧力センサ、プロセッサ、および、トランスミッタの任意の2つ以上が、単一の集積回路またはシステムオンチップ(SoC)に備えられてよい。
【0024】
モジュールは、前記流路をさらに備えてよく、前記圧力センサは、流路の内部に位置されており、前記圧力センサは、任意で流路の内壁の凹部内に位置されている。
【0025】
モジュールは、前記流路をさらに備えてよく、前記圧力センサは、流路の外部に位置されており、そして、前記センサポートは、流路の壁の開口を経由して流路に通気連結されている。
【0026】
モジュールは、センサポートを前記開口に通気連結するように配置されたシールをさらに備え、前記シールの少なくとも一部は、任意で、圧力センサと壁との間に挟まれており、前記シールの少なくとも一部は、任意で、前記壁の外面から、圧力センサが取り付けられる面までのびて、壁に隣接する空気チャンバ内に圧力センサを包囲する。
【0027】
前記壁および前記シールは、二段階成形工程によって形成されてよい。モジュールは、さらに、圧力センサと壁との間に挟まれた熱伝導ガスケットをさらに備えてよく、前記熱伝導ガスケットは、任意で、シールとして機能する。
【0028】
モジュールは、前記センサポートを前記流路から分離する通気性、非通水性フィルタをさらに備えてよい。
【0029】
圧力センサは、金属製のハウジングを備えてよい。
【0030】
モジュールは、使用中に最上となる吸入器の本体の部品に、前記本体の1または複数の部品の殺菌の後に、付けられるように構成されてよい。前記プロセッサは、前記圧力センサに備えられてよい。
【0031】
モジュールは、圧力センサの検出素子から受信されたデータを格納するように構成されたデータバッファをさらに備えてよい。前記データバッファは、任意で、圧力センサ内に備えられてよい。前記データバッファは、1つの吸入/吐出の波形に対応するデータを格納するように構成されてよい。前記データバッファは、先入れ先出し(FIFO)データバッファでよい。
【0032】
モジュールは、環境気圧活動を監視するために構成された追加のMEMS気圧センサをさらに備えてよい。
【0033】
トランスミッタは、圧力センサから及び/又は圧力センサに、データを通信するように構成されたトランシーバに備えられてよい。トランスミッタは、無線でよい。前記無線トランスミッタは、Bluetooth(登録商標)サブシステム、任意で、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)集積回路またはシステムオンチップ(SoC)でよい。
【0034】
圧力センサ及び/又はトランスミッタは、プリント回路基板(PCB)に取り付けられてよい。
【0035】
モジュールは、圧力センサに電力を供給するように配置されたバッテリ、任意でコイン型電池をさらに備えてよい。
【0036】
圧力センサは、20パスカルまたはそれ未満の感度を有してよい。
【0037】
圧力センサは、検出素子を備えてよい。プロセッサは、100Hz以上の周波数で前記検出素子をポーリングするように構成されてよい。
【0038】
モジュールは、圧力センサのスイッチを入れるための及び/又は圧力センサを低電力状態から起ち上げるための制御手段をさらに備えてよい。
【0039】
前記制御手段は、マウスピースカバーに取り付けられたヨークの動作によって起動されてよく、前記マウスピースカバーの開放が、前記ヨークを、前記制御手段を起動させるように移動せしめる。
【0040】
前記制御手段は、機械式スイッチ、光学センサ、加速度計、またはホール効果センサでよい。
【0041】
プロセッサは、前記検出素子から風袋値を取得し、検出素子から受信されたデータを較正し、その後に前記風袋値を用いることによって、前記制御手段が圧力センサのスイッチを入れ及び/又は圧力センサを立ち上げることに応答するように構成されてよい。
【0042】
プロセッサは、圧力センサによって測定値の移動平均から動的ゼロを測定し、圧力センサを前記動的ゼロに従って動的に較正するように構成されてよい。
【0043】
プロセッサは、圧力センサの検出素子から受信されたデータにおける圧力センサに固有の電気的ノイズ及び/又は環境異常を除去するように構成されてよい。
【0044】
モジュールは、温度センサを、任意で圧力センサと一体化された温度センサをさらに備えてよい。プロセッサは、任意で圧力センサおよび温度センサのどちらか1つに備えられてよく、温度センサの検出素子から受信されたデータから測定された温度補償を、圧力センサの検出素子から受信されたデータに適用してよい。
【0045】
吸入器は、マウスピースをさらに備え、前記センサポートは、前記マウスピースと通気連通して流路に通気連結されてよい。
【0046】
第2の態様によれば、第1の態様のモジュールを備える呼吸作動式の吸入器が備えられる。
【0047】
第3の態様によれば、第1の態様のモジュールを備える吸入器の付属品が備えられ、該付属品は、前記センサポートが前記吸入器のマウスピースと通気連通して流路に通気連結されるように、前記吸入器に接続されるように構成されている。
【0048】
第4の態様によれば、呼吸作動式の吸入器を経由した薬剤投与に対する患者のコンプライアンスを監視するための方法が備えられ、当該方法:薬剤が放出されたことを示す吸入器の投与機構から生じる信号を受信し;小型圧力センサが、その圧力センサポートでの圧力変化を検出し、前記圧力センサの前記センサポートは流路に通気連結されており、前記流路を通じてユーザは呼吸をすることができ;前記圧力センサの検出素子からデータを受信し;前記投与機構からの前記信号及び前記検出素子からの前記データに基づいて、前記流路を通じた薬剤を含む呼吸の吸入が、上首尾の投与のための1または複数の所定の要件を満たしていることの判定を下し;そして、前記判定に応答して、投与レポートを送信する。
【0049】
小型圧力センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)圧力センサ、または、ナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)圧力センサでよい。圧力センサは、MEMS気圧センサでよい。当該センサは、ピエゾ抵抗素子または容量MEMS圧力センサでよい。上首尾の投与のための前記1または複数の要件は:所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入継続時間;少なくとも所定の閾値継続時間において所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入された総体積;および、所定の閾値を超えるピーク吸気流量(PIF);のうち1または複数を含んでよい。
【0050】
方法は:追加のMEMS気圧センサを用いて環境気圧活動を監視し;そして、前記流路に通気連結されたセンサポートを有する前記圧力センサを前記追加のMEMS気圧センサと対比して較正するステップをさらに備えてよい。方法は:圧力センサのスイッチを入れまたは前記圧力センサを低電力状態から立ち上げ;前記圧力センサのスイッチが入ったことまたは前記圧力センサが立ち上がったことに応答して、圧力センサの検出素子から風袋値を取得し;そして、検出素子から受信されたデータを較正し、その後に前記風袋値を用いるステップをさらに備えてよい。
【0051】
方法は:圧力センサによって測定値の移動平均から動的ゼロを測定し;そして、圧力センサを前記動的ゼロに従って動的に較正するステップをさらに備えてよい。
【0052】
方法は:温度センサの検出素子から受信されたデータを用いて、温度補償を圧力センサの検出素子から受信されたデータに適用するステップをさらに備えてよい。
【0053】
方法は、センサの検出素子から受信されたデータをデータバッファに格納するステップをさらに備えてよい。前記データは、1つの吸入/吐出の波形に対応するものでよい。
【0054】
投与レポートを送信することは、無線でよい。前記無線送信は、Bluetooth(登録商標)プロトコル、任意で、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)プロトコルでよい。
【0055】
方法は、プロセッサが100Hz以上の周波数でセンサの検出素子をポーリングするステップをさらに備えてよい。
【0056】
方法は、圧力センサの検出素子から受信されたデータにおける圧力センサに固有の電気的ノイズ及び/又は環境異常を除去するステップをさらに備えてよい。
【0057】
方法は、吸入器のユーザによって吸入または吐出された空気の体積を、センサの検出素子によって検出されたデータから測定するステップをさらに備えてよい。
【0058】
第5の態様によれば、第4の態様の方法を実施するコンピュータプロセッサによる実行用の指示を備えるコンピュータプログラム製品が備えられる。
【0059】
第6の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるようなコンプライアンス監視モジュールが備えられる。
【0060】
第7の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるような吸入器が備えられる。第8の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるような吸入器の附属品が備えられる。
【0061】
第9の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるような方法が設けられる。
【0062】
第10の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるようなコンピュータプログラム製品が備えられる。
【0063】
本発明の例示は、添付の図面を参照して以下で記載される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図2】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図3】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図4】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図5】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図7】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図8】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図9】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図10】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図11】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図12】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図13】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図14】一例に係るコンプライアンス監視方法を示すフローチャートである。
【
図15】一例に係るユーザ−装置相互作用を示すフローチャートである。
【0065】
図中に示される構成要素は正寸ではなく、働きを示すだけにすぎない。同様の構成は、同様の参照符号によって示される。
【0066】
上記で述べたような、差分(2ポート)タイプの圧力センサや、使用前および使用後のそれぞれで測定がなされるシングルポートゲージタイプのセンサに加えて、絶対圧または気圧センサを利用することができる。気圧センサは、真空を参照する。高度は気圧測定値から推測することができるので、これらはときに高度計とも呼ばれる。このタイプのセンサは、その極端に広いレンジ(20から110kPa)および低い分解能ゆえに、呼吸検出での使用が一般的に考慮されていない。どのように典型的な呼吸プロファイルがたった0.2kPaのオーダーの圧力変化を生じさせうるかを考慮すると、これは、その作動レンジの極端に狭い部分に渡りセンサを作動させることを要求するであろう。
【0067】
しかしながら、MEMSおよびNEMSの技術の導入を含む小型化により、さらに改良されたセンサを現在利用することができる。典型的なMEMS気圧センサは、20kPaから110kPaまで作動する能力を有しており、そして、既知の流体抵抗を有する流れ経路に通気連結されているとき、30lpm(リッター/分)未満の流量を検出することができる。
【0068】
気圧センサを使用することで、気圧を、測定サイクルを通じたベースラインとして用いることができ、それによって、他のシングルポートのアプローチの不確実性に対処することができる。
【0069】
また、局所の気圧の知識を有することで、患者の肺機能への洞察を提供することができる。大気圧の変化が、例えば接近する暴風雨前線と関連するようなそれが、おそらく喘息やCOPDの事象にすら関連する患者の呼吸に影響を与えるかは疑わしい。
【0070】
気圧センサは、すでに圧力が加えられた状態であり、装置内において真空下でシールされた内蔵の参照ポートを有している。これは、これらが関心領域で低いヒステリシスを有するこということである。
【0071】
それらの検出素子の極端に小さいサイズと質量により、MEMSセンサは、極端に小さい圧力変化に対して反応することができる。1Paほどの低い圧力変化を分析できるものもある。
【0072】
MEMS圧力センサは、必須のアナログ回路の全てをセンサパッケージ内に含んでよい。温度補正及び/又はデジタルインターフェースは、圧力センサに組み込まれてもよい。
【0073】
例えば、FreescaleMPL3115A2MEMS気圧計/高度計チップ(圧力センサ)は、デジタルであり、圧力情報をホストマイクロコンピュータへ通信するI<2>Cインターフェースを使用する。
【0074】
MEMS圧力センサは、金属内に包まれてよい。これは、RF遮蔽、および、温度補償に対する良好な熱伝導性を提供する。
【0075】
MEMS圧力センサは、また、ローコストであり、低電力消費を示し、とても小さい。これは、これらを、例えばコイン型電池のようなバッテリによって電力供給されるような、持ち運び可能及び/又は使い捨て可能な装置での使用に特に適したものにする。
【0076】
MEMS圧力センサの小さいサイズにより、これらを既存の設計の吸入器に組み込むことが容易になる。これらをマウスピース内またはマウスピースに隣接して組み込んで、患者の吸入または吐出によりもたらされる圧力変化をより正確に測定することがより容易になるであろう。
【0077】
小型気圧センサは、あらゆる種類の管材を必要としない空気の経路への小さな穴だけを用いて、患者の気道に直接的に接続されてよい。これは、エラストマー管材に関連する結露および潜在的な細菌繁殖の可能性を最小限にする。汚染から検出素子を保護する、例えばジェルシールのような内部シールが含まれてよい。
【0078】
このタイプの配置例が
図1に示されている。小型気圧センサ110が、流路120に向けて配置されており、該流路を通じて患者は呼吸する。気流は、実質的に、矢印130によって示される軸方向となる。センサポート111は、空気(気密)シール140によって流路壁122の開口121と一直線になるようにシールされている。(センサポートと流路との間の通気接続がある限り、当該シールが完全に気密である必要はない。)。センサポート111は、任意で、フィルタを、例えば通気性、非通水性のフィルタを備える。流路およびシールは、二段階成形工程によって形成されてよい。圧力センサ110は、電源および他の電子機器への接続を提供するプリント回路基板(PCB)に取り付けられてよい。
【0079】
シール140を開口121とセンサポート111との間の通路の周りに配置する代わりに、小型センサ全体が、
図2に示される通り、流路に隣接するチャンバ内に包囲されてよい。空気シール240は、センサ設置面の外側に位置され、流路壁222の外面から、センサ210が取り付けられる面250(例えばPCBの構成要素の面)まで、ずっとのびている。
図2は、断面を示し;空気シール240は、円形状、正方形状、長方形や他の任意の形状であってよく、センサ210の周囲を囲む。シール240、センサ取付面250、及び、流路壁222は、したがって、開口221の位置においての流路を除いて外部環境から通気不能に隔離された空洞を形成する。センサポート211における圧力は、したがって、開口221における流路内の圧力と等しい。
【0080】
MEMSセンサは、内蔵された温度補償を利用することができるので、外部温度センサを使用しなくてもよい。補償は測定位置で正しくなされ、補償の正確さは増加する。温度補償内蔵のMEMSセンサは、小型呼吸温度計として機能することもでき、追加の情報を患者及び/又はその世話人へ提供する。センサのハウジングが金属であるなら、感度の高い内部回路が、RF場、例えば携帯電話や近くの外乱と関連するそれから隔てられるだけでなく、センサは、最適な温度補償を提供するために、迅速に局所の温度と平衡になるであろう。
【0081】
図1および
図2の実施形態では、小型センサは、空気隙間によって流路壁から離されている。流路の温度の変化を迅速に検出する小型センサの能力を改善するために、熱伝導ガスケットが
図3に示されるように使用されてよい(
図3は、他の点では
図2と同様である)。
【0082】
図3の配置例では、トランジスタヒートシンク用のシリコンタイプのような熱伝導ガスケット360が、小型センサ310の(任意で金属製の)ハウジングと、流路壁322との間に設けられる。ガスケットによってカバーされた隣接表面積が大きい程、温度平衡がより素早くなる。ガスケット360は、したがって、流路壁322を向くセンサ310の面全体に実質的にわたってのびてよい。
【0083】
図4は、配置例を示すものであり、熱伝導ガスケット460は、非通気性材料からなり、センサ410の表面の輪郭と流路壁422に対して歪み、これらの間で圧縮される。これは、したがって、良好な熱接続を提供し、同時に空気シールとして機能し、別のシール要素の必要性を除去する。
【0084】
センサを流路に隣接して配置することに対しての代替案は、
図5に示される通り、センサ全体を、監視される装置の低圧力気道内に配置することである。例えば、センサは、DPIの本体内または加圧式定量吸入器(pMDI)の“ブーツ”内に配置されてよい。(“ブーツ“という用語は、一般的に薬キャニスタを保持する吸入器の本体を言う。)。この配置では、センサは、気流自体の圧力(および任意で温度)を本当に測定し、改善された正確さを提供する。したがって、流路520とセンサポート511との間の空気導管を作るシール要素の、または、これらの間での熱平衡を補助する熱伝導ガスケットの必要性もない。また、センサに、参照目的のための外部圧力環境へのアクセスを設ける必要もない、というのも、参照は、真空参照の形式でセンサ自体に既に内蔵されているからである。
【0085】
図5の実施例では、小型気圧センサ510は、流路壁522の内部に取り付けられ、任意で、PCB550を経由して取り付けられる。流路壁522は、示されるように、センサ510が530で示される気流に対する乱れを低減するように位置された凹部523を備えてよい。例えば、このような凹部523の深さは、センサ510の厚さに実質的に等しくてよく、センサポート511を備えるセンサの表面が、センサ510のどちらかの側で流路壁522の内側面の一部と同一平面上になる。凹部523は、壁522から除去された体積や、示されるように、残りの部分に対して径方向外方へのびる壁の一部でよい。
【0086】
小型圧力センサは、その小さいサイズゆえに、例えば噴霧吸入器、DPIs、またはpMDIsを通じた患者の流れを監視するために用いることができ、したがって、アドヒアランス監視に加えて/代えて、低コストなコンプライアンス監視を容易にし、装置の作動を確認する。前記コンプライアンス監視は、観測される気道への小さい穴を通じて投与装置に、または投与装置自体内に連結する付属の装置を用いて実施されてよい。MEMSセンサの小さいサイズ、高いパフォーマンス、および低コストは、それらを、サイズおよび重量が常に吸入器を持ち運ばなければならないであろうユーザにとって主要な動機となるアプリケーションに理想的に適したものにする。
【0087】
小型圧力センサからの出力がデジタルであるなら、すべての低レベル信号処理は、センサ内でなされてよく、それを外部干渉から遮蔽する。これは、外部回路を有する従来のセンサで挑戦されていたであろうことを、数十オーダーのパスカルの信号で難なくできるようにする。
図6は、一例に係る小型気圧センサのいくつかの電気構成要素を概略的に示す。検出素子601が、アナログ信号を、アナログデジタルコンバータ(ADC)602に送る。ADC602のデジタル出力信号は、それから、ノイズを低減するために、ローリング平均フィルタによって多くのサイクルに渡って平均化される。様々な平均が、応答時間に対してノイズのバランスをとるために、プログラムコントロール下で選択されてよい。
【0088】
一例として、ブロック603は、604での出力に対する8つの異なるオーバーサンプル(即ちフィルタ)比のうち1つを選択する手段を表す。最も早い応答は、OSR=1に対応するが、これはまた最もノイズがある設定である。反対に、OSR=128は、最も小さいノイズを導入するが、最も遅い応答を有する。最適な設定は、特定の用途に応じて選択されてよい。16のOSR設定であれば、出力は、ほとんどの呼吸器系の用途に対して、十分にクリーンであり、アップデートタイムは十分素早い。
【0089】
例えば患者の流れプロファイルを記録するために、センサによって検出された圧力のリアルタイム変動と関連する波形を作ることが望ましい。新しいデータが利用可能になる度に、このような波形をセンサの単一の測定値から作成すると、各タップと関連する遅延により、結果として得られる波形は、なめらかな波形というよりは、むらのあるアーチファクトを示すであろう。しかしながら、ADC602を、例えば約100Hzといった、適切な周波数で駆動し、そして、同じ速度でデータを読み取ることによって、各タップに示されるデータは、さらに平均化され、その結果、よりいっそうなめらかな波形となる。
【0090】
それから、平均出力は、データが装置内に組み込まれ接続されたプロセッサよって処理されうるまで、または、オフロード処理のために送信されうるまでの格納のためのサーキュラー先入れ先出し(FIFO)バッファ(図示略)へ送られてよい。このようなFIFOバッファは、例えば、1つの典型的な呼吸波形とほぼ同じまたはこれより僅かに大きな複数のサンプルを格納し、1つの吸入/吐出プロファイル全体がキャプチャーされることを保障するようにしてよい。波形がリアルタイムで必要とされない場合、バッファを使用することで、センサのシリアルポートの需要が減少する。通信の付加により、患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスを監視し、このような情報を、例えば患者の流れプロファイルを含むような情報を、スマートフォンまたはタブレットのようなユーザ装置へ通信することができる。ユーザ装置から、データは、任意で、例えば医者のパーソナルコンピュータ(PC)のような世話人の装置へ通信されてよい。これは、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを経由するといったように、有線接続を用いてなされてもよい。代わりに、無線技術を用いて、製品のハウジングを著しい方法で干渉することなく、結果を外部へ通信することができる。適切な無線技術は、例えば、IEEE802.11のようなWiFi技術、IEEE802.15のようなメディカルボディエリアネットワーク(MBAN)技術、近距離無線通信(NFC)技術、3Gのような携帯技術、および、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)のようなBluetooth(登録商標)技術でよい。無線トランシーバが、例えばBLEチップの形式で、小型圧力センサに接続され、または、それに組み込まれてもよい。
【0091】
前記無線の接続性は、例えば、装置の作動及び/又は検出された吸入を、リアルタイムで、日付およびタイムスタンプと共に報告するために、用いられてよい。このデータは、外部で処理されてよく、当該処理の結果が、処方箋が再提出されるべきであると判定されたものであるなら、アラートが、患者、及び/又は、世話人、及び/又は、薬剤師へ送られてよい。アラートは、1または複数の吸入器のインターフェース(例えばLED及び/又はブザー)を経由して、または、テキストメッセージまたはEメールを経由して、提供されてよい。他の例として、投与(投薬)レポートが、予定された投与時間後、所定の期間内に受けられてないなら、リマインダが、患者及び/又は世話人へ送られてよい。アラートは、例えば使用頻度が安全閾値を越えているときに、発生されるようにしてもよい。コンプランスは、患者のまたは世話人(例えば医者、看護師、薬剤師、家族メンバー、介護人)のユーザ装置(例えばスマートフォンのような携帯電話、タブレット、ラップトップ、デスクトップコンピュータ)、または、例えばヘルスサービスプロバイダーの、吸入器の製造業者の、薬の製造業者の、または、ディストリビュータのサーバ、または、クラウドストレージシステムのうち、1または複数と直接的または間接的に通信してよい。当該通信は、インターネットのようなネットワークを経由するものであってよく、例えば患者のスマートフォン上の専用アプリを伴うものでよい。
【0092】
コンプライアンス監視手段(例えばアドヒアランスおよびコンプライアンスレポート手段を検出する機械式のスイッチのような装置作動センサや、例えば適切な用量送達のための十分な流れを検出する小型圧力センサといった1または複数のセンサなど)、および、コンプライアンスレポート手段(例えば無線トランスミッタまたは有線出力ポートなど)は、単一のモジュール内に含まれてよい。このモジュールは、既存の設計の吸入器又はわずかに修正された設計の吸入器へのアタッチメント用の個別の吸入器の付属品/アップグレート品として売られてよい。代わりに、コンプライアンス監視モジュールは、製造中に吸入器に組み込まれてよい。コンプライアンス監視モジュールの全ての構成要素が、単一の物理ユニットに備えられている必要はないが、これは場合による。吸入器の付属品の形式の場合、モジュールは、1または複数の取り付け可能なユニットからなってよい。吸入器に組み込まれたモジュールの場合、個々の構成要素は、吸入器内または吸入器上の任意の適切な箇所に位置されてよく、そして、一緒にグループ化されるまたはそれらが機能するために必要とされる以上に接続される必要はない。
【0093】
センサは、例えば、PCT特許出願公開番号WO01/97889、WO02/00281、WO2005/034833またはWO2011/054527に記載された呼吸作動式のドライパウダー吸入器のタイプで用いられてよい。これらの吸入器は、ユーザによるマウスピースを通じた吸入がドライパウダー薬剤を取り込む装置を通じた気流となるように、構成されている。当該吸入は、また、外部から吸入器へ入り込む別の気流にもなる。吸入器は、2つの気流が互いに衝突する旋回チャンバと、より効果的な送達のためにドライパウダー薬剤の凝集体を分解するためのチャンバ壁とを備える。
【0094】
これらの吸入器は、パウダーの塊がユーザによるプライミングの後にホッパーから投与チャンバへ計量されたことを判定するための用量カウント機構を備える。用量計量システムは、当該用量計量システムによるマウスピースへの1用量の薬剤の計量中に所定の経路に沿って移動可能な歯止めを含む。用量カウンタは、ボビンと、回転可能なスプールと、ボビンに受けられてボビンの軸周りに回転可能な巻かれたリボンとを含む。リボンは、その上に、スプールに固定されたリボンの第1端とボビンに位置されるリボンの第2端との間で連続的にのびるしるしを有する。用量カウンタは、また、スプールから半径方向外向きに歯止めの所定の経路内へのびる歯も含み、スプールは歯止めによって回転され、リボンはマウスピースへの1用量の計量中にスプール上で進む。
【0095】
しかしながら、これらの吸入器は、用量が首尾よく投与されたかを判定する手段を何ら備えていない。吸入器を通じた気流経路中のどこかに、または、気流経路と流体連通するどこかに小型気圧センサを追加することで、コンプライアンス監視が可能となる。というのも、このような小型センサは、患者が適切な方法で(例えば、十分に強くそして十分長く)吸入して1回分の完全な用量の薬剤を受けたか否かを示す十分なデータを収集することができるからである。
【0096】
この情報は、薬剤の塊が吸入前に流路(該流路を通じて患者は吸入する)で利用可能になったことを示す用量計量システムから生じる信号と組み合わされて、1用量が首尾よく投与されたことを確かめるのに十分なものとなる。
【0097】
信号が、任意の便利な方法で用量計量システムから得られてよい。例えば、電子式スイッチが設けられて、それが歯止めの動作またはスプールの回転によって作動されてもよい。このスイッチは、プロセッサの入力に接続されて、1用量が計量されたとき、プロセッサが電子パルスを受けるようにしてよい。
図7−
図9は、どのようにしてコンプライアンスモジュールがこのような吸入器に組み込まれうるかの詳細を示す。
【0098】
図7は一例を示し、MEMS圧力センサ、および、任意でプロセッサおよびトランスミッタを携帯するPCB750が、マウスピース770の近傍で吸入器700の本体に組み込まれている。
図7Aでは、マウスピース770がカバー780によって隠されている。
図7Bでは、カバー780は、引き下げられてマウスピース770を露出させる。カバー780はヨーク790に接続されており、カバー780が下方へ揺動してマウスピース770を露出させるとき、ヨーク790が引き下げられてタクタイルスイッチ795を閉じる。スイッチ795が閉じられると、電気接続が、PCB750と、コイン型電池のようなバッテリ755との間に形成され、その結果、マウスピースカバー780が開いているときだけPCB750は電力供給される。これは、電力源をそれが必要なときだけのために節約するのを助ける。代わりに、PCB750は常にバッテリ755に接続されてよいが、スイッチ795を閉じること(または、例えば光学センサ、加速度計、またはホール効果センサのような他のスイッチング手段の起動)が、PCB750を電力節約スリープモードから起ち上げてもよい。
【0099】
代わりの配置は、
図8に示される。
図7に示される例示と同様に、マウスピース870はカバー880を下方に揺動させることによって露出され、これはヨーク890の引き下げとなる。この実施例では、しかしながら、PCB850(ここでもまたMEMS圧力センサ、および、任意でプロセッサおよびトランスミッタを携帯している)は、吸入器800の本体の中部に組み込まれている。ヨーク890は、吸入器800が(マウスピースが下降端で水平となるように)使用のために配向されたときのPCBの左側、右側および上方に、「n」形状で形成されている。
図8Bは、カバーが閉じられたときのPCBおよびヨークの拡大図を示す。
図8Cは、カバーが開けられたときの同様の図である。
図8Cでは、ヨーク890の水平部が、引き下げられてタクタイルスイッチ895を閉じる。
図7の例示と同様に、スイッチ895が閉じられたとき、電気接続が、PCB850と、コイン型電池のようなバッテリ855と間に形成されて、その結果、マウスピースカバー780が開いているときだけPCB850は電力供給される。代わりに、PCB850は、常にバッテリ855に接続されてよいが、スイッチ895を閉じること(または、例えば光学センサ、加速度計、またはホール効果センサのような他のスイッチング手段の起動)が、PCB850を電力節約スリープモードから起ち上げてもよい。
【0100】
追加の代わりの配置が、
図9に部分的に拡大された形式で示されている。
図7および
図8に示された例示と同様に、マウスピース970は、カバー980を下方に揺動させることによって露出され、これはヨーク990の引き下げとなる。この実施例では、しかしながら、PCB950(ここでもまたMEMS圧力センサ、および、任意でプロセッサおよびトランスミッタを携帯している)は、吸入器900の本体の上部に組み込まれている。PCB950の周りのカラー997は、ヨークの上部(図示されない)上に吸入器900の製品の端に向けて止められている。これは、吸入器の本体の部品の殺菌の後になされてよい。殺菌処理がPCB950上の感度の高い電子機器を損傷しうるので、これは好ましい。この実施例では、ヨーク990は、マウスピースカバー980が開けられたときに上昇するように構成されている。これは、ヨーク900の水平な上部(
図8に示されたそれと同様である)を押し上げてタクタイルスイッチ995を閉じる。
図7および
図8の例示と同様に、スイッチ995が閉じられたとき、電気接続が、PCB950と、コイン型電池のようなバッテリ955と間に形成されて、その結果、マウスピースカバー980が開いているときだけPCB950は電力供給される。代わりに、PCB950は、常にバッテリ955に接続されてよいが、スイッチ995を閉じること(または、例えば光学センサ、加速度計、またはホール効果センサのような他のスイッチング手段の起動)が、PCB950を電力節約スリープモードから起ち上げてもよい。
【0101】
インジケータ発光ダイオード(LED)は、吸入器900の外部に現れる(任意で色付きの)窓または光パイプ952を通じて視認することができ、好ましくは投与中にユーザが視認することができる位置にあり、バッテリ955によって電力供給もされ、PCB上のプロセッサによって制御されてよい。LED952は、例えば異なる色およびフラッシュの組合せを用いて、例えばマウスピースカバーが開いていること(したがって、吸入器の投与のための準備がなされたこと)、及び/又は、処方箋を再提出する時期であること、及び/又は、(圧力センサ測定値の処理に従って)投与が完了した/完全に終わっていないことを示すことによって、情報をユーザ及び/又は世話人に提供するために用いられてよい。
【0102】
別の代わりの配置は、
図10に示されている。この場合、ヨーク1090は、ヒンジ付きマウスピースキャップ(図示されない)に連結されており、部分的に弾性材料からなるベローズ1091を移動させる。
【0103】
図10Aは、キャップが閉じられたときのベローズの位置を示す。スプリングアーム1092の足部が、ベローズの上壁の凹部1093に受けられている。凹部1093の底は、したがって足部の下側面を押し、当該スプリングアームが上向きに付勢される。これにより、スプリングアーム1092の頭部が、PCB1050をスリープモードに維持するスイッチ1095を閉じる。
【0104】
図10Bは、ヨーク1090そしてしたがってベローズ1091が僅かに上方に移動してキャップが開き始めたときの配置を示す。スプリングアーム1092は、スイッチ1095に接触したままであり、ベローズ材料の弾性は、スイッチに作用されるであろう追加の負荷を緩和する、というのも凹部1093の底が負荷を取るようにたわむからである。
【0105】
図10Cは、キャップが完全に開いているときの配置を示す。ヨーク1090およびベローズ1091は、下方へ移動してスプリングアーム1092から離れ、スイッチ1095から離れてこれを弛緩させる。スイッチ1095はしたがって開かれ、PCB1050を立ち上げる。
【0106】
任意で、グラブねじが、スイッチとスプリングアームとの接触を微調整するために含まれてよい。
【0107】
別の例では、センサは、PCT出願公開番号WO01/93933またはWO92/09323に記載された呼吸作動式・加圧式のエアロゾル吸入器のタイプに用いられてよい。これらの吸入器は、計量された1用量の薬剤を放出するための手段を備え、該放出手段は、送達手段を作動させることができるプレロードを適用することによって装置をプライミング(準備)するための手段、該送達手段の作動を防止することができる抵抗空気力を適用するための手段、および、抵抗空気力を解除してプレロードが送達手段を作動させて薬剤を放出できるようにする放出装置を備える。空気抵抗力は、例えば、ダイアフラム、ピストンシリンダ、ベローズまたはスプリングを備える機構によって設定されてよい。バルブを通じたまたは羽機構を通過する吸入は、プレロードがエアロゾルバルブを作動させて薬を放出することができるようにする。アドヒアランスは、このような吸入器において、装置が準備されたとき、及び/又は、エアロゾルバルブが開いたときを判定することによって監視されてよいが、これらは、ユーザが全用量を吸入したかを判定する手段を何ら備えていない。ここでもまた、MEMS気圧センサを吸入器を通じた気流経路のどこかに、または、気流経路と流体連通するどこかに導入することは、装置が準備されたとき、及び/又は、エアロゾルバルブが開いたときを判定する手段と組み合わさって、コンプライアンス監視を可能する。
【0108】
装置をプライミング(準備)することは、プレロードが送達手段に適用されたこと、および、負荷が電子式スイッチに適用されたことの双方をもたらしてよい。このスイッチは、プロセッサの入力に接続されて、プロセッサは、装置が準備されたときに電子パルスを受けるようにしてもよい。代わりにまたは追加的に、電子式スイッチは、エアロゾルバルブまたはエアロゾルバルブに先行する羽機構の動作によって作動されるように配置されてよい。このスイッチは、プロセッサの入力に接続されて、プロセッサは、エアロゾルが流路(これを通じて患者は吸入する)に放出されたときに電子パルスを受けるようにしてもよい。スイッチは、例えば、機械式の、光学の、近接のものや、加速度計であってよい。
【0109】
図11−
図13は、どのようにしてコンプライアンスモジュールがこのような吸入器に組み込まれうるのかを示す。
【0110】
図11は、吸入器1100のベースに位置されたコンプライアンスモジュール1150を示す。
図12A、
図12B、および、
図12Cは、吸入器の背の上部、中部、底部のそれぞれに位置されたコンプライアンスモジュール1250を示す。
【0111】
図11及び
図12のコンプライアンスモジュールは、吸入器の製造中に付加されてよく、また、任意の附属品であり後に吸入器上に留められるものであってもよい。つまり、モジュールは、固定手段を経由して吸入器に(任意で可逆的に)接続されてよく、そして、吸入器の内部と、したがって吸入器の本体の1または複数の開口を経由して気流経路と流体連通してよい。
【0112】
図13は、どのようにしてコンプライアンスモジュール1350が吸入器の上部に組みまれうるかを示す。
図13Aは、リテーナリング1390の基準位置を示しており、タクタイルスイッチ1395を押してこれを開ける。スイッチ1395が開いていると、コンプライアンスモジュール1350とコイン型電池のようなバッテリ1355との間の電気接続はない。
図13Bは、吸入器が使用のために準備されたときのリテーナリング1390の位置を示し、リテーナリングはスイッチ1395に対して下げられてこれを閉じ、コンプライアンスモジュール1350は電力供給される。
図13Cは、
図13Aおよび
図13Bに示された吸入器の製造の最終段階を示す。コンプライアンスモジュール1350は、吸入器の本体上に下げられており、それからキャップ1398が適切な位置に留められる。
図9の例示のように、LEDインジケータ1352が設けられてよい。
【0113】
MEMS気圧センサは、経時的に変化しうる環境気圧に応答するので、後に続くセンサ出力信号分析が基準とする最初の測定値に注意を払うべきことに、留意すべきである。自動ゼロ値・ゼロリーディング(即ち風袋)は、吸入信号を監視する直前に実行されてよい。この値を局所の環境気圧の変化に応答して経時的に変化させることができるが、治療が数分内で完了されるのであれば、問題を生じさせるようなことは望まれないであろう。代わりに、第2の気圧計チップが気圧の活動の経過を記録するために用いられてよく、これにより、第1のチップを呼吸検出のためにもっぱら使用することができる。
【0114】
投与が完了する(即ち肺の体積がピークになる)点は、流れの方向が反転する点に対応しうる。したがって、圧力センサからのデータが、流れの方向が反転したことを示すとき、プロセッサは、投与が完了したとの判定を下してよい。
【0115】
全ての処理が、モジュールによってなされる必要はない。任意のまたは全ての処理が外部データ処理装置へオフロードされてよい。無線方式(例えばBLEモジュールを含む)が、患者の流れプロファイルを、その後に特定の呼吸パラメータを計算するアプリへ送信するために用いられてよい。吸入器は、それによって、このようなタスクのために必要とされる処理を、例えばスマートフォンプロセッサにオフロードしてよい。これは、吸入器にとってふさわしい最小のフォームファクターを容易にするであろう。このアプローチのさらなる利点は、スマートフォンを動かすソフトウェアが吸入器を動かすソフトウェアより、より容易に変化させることができることにある。
【0116】
図14は、一例に係るコンプライアンス監視方法を示すフローチャートである。ステップ1410で、ユーザは、例えばボタンを押すまたはマウスピースカバーを開けることによって、吸入器を使用のために準備する。ステップ1420で、ユーザは、吸入器のマウスピースを通じて吸入を開始する。ステップ1430で、コンプライアンスモジュールのプロセッサは、用量放出信号を受信する。この信号は、ステップ1410での吸入器のプライミング(準備)に応答して、または、圧力センサや吸入が始められたことを検出する他の機構に応答して、送信されてよい。例えば、吸入は、バルブの開放をもたらし、これが、ユーザが吸入をしている流路への薬剤の放出、および、用量放出信号を生じさせるための電子式スイッチの作動の双方をもたらす。ステップ1440で、MEMS圧力センサは、流路での圧力変化を検出する。ステップ1450で、プロセッサは、センサからデータを受信する。ステップ1460で、プロセッサは、上首尾の投与のための1または複数の所定の要件が満たされたことをセンサデータから判定する。例えば、センサデータは、流路での吸入方向の流量が少なくとも所定の閾値継続時間において所定の閾値を越えたことを示すものであってよい。代わりに、センサデータは、センサが吸入を検出していた期間にわたって流量が積分されて全吸入体積を測定するように処理されてよく、そして、この体積が、上首尾の投与のための所定の最小体積と比較されてよい。ステップ1470で、例えば無線トランスミッタによってまたは有線出力を経由して、投与レポートがプロセッサの判定に応答して送信される。
【0117】
図15は、呼吸作動式の吸入器のコンプライアンスデータをユーザおよび外部実体の双方へ提示するための一例に係る制御ロジックを示すフローチャートである。例示の吸入器には、インジケータLED、ブザー、および、無線トランスミッタが装備されている。それは、また、投与機構に連結されたキャップを備えており、キャップの開放は、薬剤の塊を流路(ユーザはこれを通じてその後に吸入する)で利用可能にすることによって吸入器を準備する。次の1用量を利用可能にするために、キャップは、閉じられて再び開けられなければならない。MEMS圧力センサは、流路を通じた吸入を検出するように配置されており、さらに、追加のセンサ(例えばスイッチ)は、キャップの開閉を検出するように配置されている。
【0118】
ステップ1510で、吸入器は、スリープモードである。ステップ1520でのキャップの開放は、ステップ1530において、吸入器を立ち上げ、LEDのスイッチをオンにする。コンプライアンスに準拠する吸入(即ち、投与が完了したことを確認するために必要とされる何らかの基準を満たす吸入)が、ステップ1540で検出されると、ステップ1550で、LEDのスイッチがオフになり、ブザーが短い確認ビープ音を発する。キャップがそれからステップ1560で閉じられたなら、ステップ1590で、1用量が首尾よく服用されかつ装置が正しく停止されたことを示すコンプライアンスデータは、例えばユーザや世話人の装置へ送信される。吸入器は、それからスリープモードに戻る。
【0119】
ステップ1560で、キャップが閉じられないなら、装置は、ステップ1561でタイムアウトループに入る。タイムアウトが起こったら、ステップ1562で長いエラービープ音が発せられる。1用量が服用されたが装置が開けられたままであり、したがって次の投与の準備がされていないことを示すコンプライアンスデータが、吸入器がスリープモードに再び入る前に、ステップ1590で送信される。装置が、例えば喘息発作中に用いられる救助吸入器であるなら、このタイプのコンプライアンスデータは、薬剤が首尾よく摂取されたがユーザを回復させることができなかったことを示してよい。自動化されたシステムが、救急医療隊員をユーザの位置へ呼ぶために、適した位置にあってよい(例えば吸入器のまたは吸入器と通信するスマートフォンまたはタブレットのようなユーザ装置のGPSトラッカによる周知のものであってよい。)。
【0120】
コンプライアンスに準拠する吸入がステップ1540で検出されないと、ステップ1570で、キャップが閉じられたかが判定される。閉じられていないと、ステップ1571で、タイムアウトループに入り、ステップ1540、1570、1571をサイクルする。タイムアウトがステップ1571で起こると、ステップ1572で長いエラービープ音がブザーによって発せられる。コンプライアンスデータは、1用量が装填されたが首尾よく服用されなかったことを示しており、それからステップ1590で送信される。吸入器は、それから、スリープモードに戻る。ここでもまた、吸入器が救急吸入器であるなら、この種のコンプライアンスデータは、救急医療隊員の呼び出しを引き起こしてよい。
【0121】
キャップがステップ1570で閉じられたなら、それからステップ1580でLEDのスイッチがオフになり、そしてステップ1590で1用量が誤って装填されたことを示すコンプライアンスデータが送信される。吸入器は、それから、再びスリープモードに入る。
【0122】
吸入器は、コンプライアンスに準拠した吸入の後に、新たな1用量が最初に充填されることなく(即ち、キャップが閉じかつ開けられることなく)吸入が再び試みられたときを判定することができるようにしてもよい。これは、エラービープ音を引き起こしてよい。
【0123】
図16Aおよび
図16Bは、10個の異なる吸入器のケーシングの上部に付けられた小型相対圧力センサを用いて測定された平均圧力を、装置を通じて適用された一連の空気流量に対して示す。繰り返しの測定値は、各吸入器の寿命の初期、中期、および最期に対するものが含まれていた(用量が不足する前の“ショット”の回数を通じた進捗の観点で)。
図16Aでは、エラーバーは、±3シグマ変動で示される。
図16Bでは、エラーバーは、±2シグマ変動で示され、95%の吸入器が該当する帯域をキャプチャーしている。したがって、圧力測定に対する流れの不確実性の考えを、吸入器中で用いられるこのようなセンサによって得ることができる。
【0124】
典型的な吸入流量(30−60l/min)において、不確実性は、
図16Aから、〜16l/minとして計算することができる。(各測定における流量の不確実性は、その測定値における上側のエラーバーと、当該測定値における下側のエラーバーおよびその次のそれとを結ぶ線が測定された圧力に達する点との流れ軸の差分として見積られる。即ち、30l/minでは、差分は、41l/min−30l/min=11l/minである。45l/minでは、差分は、15l/minであり、60l/minでは、それは22l/minである。)
図16Bから得られる同等の値は、〜10l/minである。よって、十分な精度を得ることができ、有益なコンプライアンスデータを提供できる。
【0125】
上記は、本発明の例示に係る用途に関するものであり、他の実施形態および変形が可能であることが理解されよう。
【0126】
加えて、当業者は、装置の特定の特徴における特定の幾何学形状および配置を修正または変更させることができる。他の変形および修正も、当業者にとって自明である。当該変形および修正は、既に知られ、かつ、ここで記載された特徴に代えてまたは加えて用いられうる同等のおよび他の特徴を含むことができる。それぞれの実施形態で関連して記載された特徴は、単一の実施形態にて組合せで備えられてよい。逆に、単一の実施形態で関連して記載された複数の特徴は、別々に、または、適切な部分的組合せで備えられてもよい。