特許第6715280号(P6715280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6715280暴露防止具、及び暴露防止具付キャビネット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715280
(24)【登録日】2020年6月10日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】暴露防止具、及び暴露防止具付キャビネット
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20200622BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20200622BHJP
   B01L 9/00 20060101ALI20200622BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   B01L1/00 A
   F24F7/06 C
   B01L9/00
   A61J1/20 314C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-51134(P2018-51134)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-162580(P2019-162580A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591221134
【氏名又は名称】株式会社日本医化器械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】雉鼻 一郎
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−035340(JP,A)
【文献】 米国特許第05791260(US,A)
【文献】 特許第6251839(JP,B2)
【文献】 実開昭59−061836(JP,U)
【文献】 実開昭54−004563(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 − 1/04
C12M 1/00
F24F 7/06
B25H 1/20
G21F 7/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に作業用開口部を有する作業室と、前記作業室の底壁の前縁に沿って設けられる前縁吸引口と、前記前縁吸引口より後方において前記底壁を貫通する暴露防止具用吸引口とを備え、前記作業用開口部から前記作業室へ流入する外部の空気と、前記作業室内の空気とを前記前縁吸引口から作業室の底壁の下部空間へ吸引することにより設けた気流により前記作業用開口部をシールドするとともに、前記暴露防止具用吸引口から前記作業室内の空気を前記作業室の下部空間へ吸引するよう構成された暴露防止用キャビネットの前記作業室に設置して、薬剤や有機溶剤の調製を行う際に使用可能な暴露防止具であって、
前記前縁吸引口と前記暴露防止具用吸引口とを前後に仕切るように立設される透明な遮蔽板と、
前記遮蔽板を前記底壁上に支持する支持部と
を有し、
作業者が前記遮蔽板の左右の両端縁の外側から、前記遮蔽板の後方、かつ前記暴露防止具用吸引口の上方へ両手を回すことが可能に構成されており、
前記支持部は、前記遮蔽板の下端から後方へ延出する板状をなし、前記作業室内と前記暴露防止具用吸引口と連通すべく厚み方向に貫通する貫通孔からなる排気口を有することを特徴とする暴露防止具。
【請求項2】
前記遮蔽板は、上端縁に後方へ傾斜する傾斜部を備える請求項1に記載の暴露防止具。
【請求項3】
前記排気口の側方に薬剤密封容器を載置可能なバイアル台を有する請求項1、又は請求項2に記載の暴露防止具。
【請求項4】
前方に作業用開口部を有する作業室と、前記作業室の底壁の前縁に沿って設けられる前縁吸引口とを有し、前記作業用開口部から前記作業室へ流入する外部の空気と、前記作業室内の空気とを前記前縁吸引口から作業室の底壁の下部空間へ吸引することにより設けた気流により前記作業用開口部をシールドするよう構成された暴露防止用キャビネットと、 前記作業室に設置して、薬剤や有機溶剤の調製を行う際に使用可能な暴露防止具と
を備え、
前記暴露防止用キャビネットは、前記前縁吸引口より後方において前記作業室の底壁を貫通するとともに前記作業室内の空気を前記作業室の下部空間へ吸引する暴露防止具用吸引口を有し、
前記暴露防止具は、前記前縁吸引口と前記暴露防止具用吸引口とを前後に仕切るように立設される透明な遮蔽板と、前記遮蔽板を前記底壁上に支持する支持部とを有し、作業者が前記遮蔽板の左右の両端縁の外側から、前記遮蔽板の後方、かつ前記暴露防止具用吸引口の上方へ両手を回すことが可能に構成されており、前記支持部は、前記遮蔽板の下端から後方へ延出する板状をなし、前記作業室内と前記暴露防止具用吸引口と連通すべく厚み方向に貫通する貫通孔からなる排気口を有することを特徴とする暴露防止具付キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗癌剤の調製に用いる安全キャビネットや毒性の高い有機溶剤の取り扱いに用いる局所排気装置等の作業室内に付設して、抗癌剤や有機溶剤等による暴露事故を抑制する暴露防止具、及びこれを備えた暴露防止具付キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開放型の安全キャビネットや局所排気装置では、作業用開口部を気流でシールドするだけでは、抗癌剤や有機溶剤等を調製する際の暴露事故を十分に防止できない可能性が指摘されている。
【0003】
そこで、本発明者は、先に特許文献1において、かかる作業を行う際に安全キャビネットや局所排気装置の作業室に設置して用いる暴露防止箱を提案している。特許文献1の暴露防止箱は、箱の内部に設置したバイアルに対し、箱の天壁に設けた貫通孔(充填具挿入口)からシリンジを刺し込んで、箱の内部でシリンジの針をバイアルの蓋に刺し込むようにしたもので、この際漏れ出た薬剤は、箱の下部に設けた排気口から作業室の下部空間へ吸引するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6251839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の暴露防止箱は、暴露事故を防止するという観点では大きな効果を有するものの、扉を開閉してバイアルを1つずつ箱の中にセットしなければならないため、多数回連続して薬剤の調製を行う場合には、扉の開閉等に手間がかかって、当該暴露防止箱を用いない場合に比べると、作業効率が悪いという課題がある。
また、特許文献1の暴露防止箱は、バイアルを立てて設置し、上方よりシリンジの針を刺して薬剤の調製を行うことから、バイアルの先端部より薬剤が漏洩するとバイアル全体を汚染する虞があり、これを防止するための構造が複雑で、洗浄等の保守に手間がかかるという課題や製造コストが嵩むという課題が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、暴露防止具を用いない場合と同様に、作業効率の高く、かつ、シンプルな構造でバイアルの汚染を抑制可能な暴露防止具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた発明は、前方に作業用開口部を有する作業室と、前記作業室の底壁の前縁に沿って設けられる前縁吸引口と、前記前縁吸引口より後方において前記底壁を貫通する暴露防止具用吸引口とを備え、前記作業用開口部から前記作業室へ流入する外部の空気と、前記作業室内の空気とを前記前縁吸引口から作業室の底壁の下部空間へ吸引することにより設けた気流により前記作業用開口部をシールドするとともに、前記暴露防止具用吸引口から前記作業室内の空気を前記作業室の下部空間へ吸引するよう構成された暴露防止用キャビネットの前記作業室に設置して、薬剤や有機溶剤の調製を行う際に使用可能な暴露防止具であって、前記前縁吸引口と前記暴露防止具用吸引口とを前後に仕切るように立設される透明な遮蔽板と、前記遮蔽板を前記底壁上に支持する支持部とを有し、作業者が前記遮蔽板の左右の両端縁の外側から、前記遮蔽板の後方、かつ前記暴露防止具用吸引口の上方へ両手を回すことが可能に構成されており、前記支持部は、前記遮蔽板の下端から後方へ延出する板状をなし、前記作業室内と前記暴露防止具用吸引口と連通すべく厚み方向に貫通する貫通孔からなる排気口を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の暴露防止具は、このように、遮蔽板の左右の両端縁の外側から、遮蔽板の後方、かつ暴露防止具用吸引口の上方へ両手を回すことできるため、一方の手にバイアルやアンプル等の薬剤密封容器を持ち、他方の手にシリンジやピペット等の充填具を持って、両手を遮蔽板の後に回すだけで、薬剤密封容器に対し充填具を抜き差して薬剤の調製ができるため、作業室に暴露防止具を設置しない状態で行うのとほとんど変わらない作業効率で薬剤の調製を行うことができる。
また、バイアルを横倒しにして作業を行うため、バイアルを立てて作業を行う場合に比べて、バイアルの先端部を作業室の底板にある吸引口に近接させることができ、バイアルの先端部から漏洩した薬剤を直ちに吸引口から吸引することができる。加えて、バイアルを横倒しにすることで、その胴体部を側方へ逃がすこととなるため、バイアル先端から漏れ出て、下方の吸引口に吸引される薬剤がバイアルを汚染することを効果的に抑制できる。
そして、かかる効果を得るために、本発明に係る暴露防止具は、少なくとも遮蔽板と支持部を備えれば足りるため、特許文献1の暴露防止箱に比べ、非常に構造がシンプルで、洗浄等の保守や製造にかかるコストを節約できる。
【0008】
また、前記支持部は、前記遮蔽板の下端から後方へ延出する板状をなし、前記作業室内と前記暴露防止具用吸引口と連通すべく厚み方向に貫通する貫通孔からなる排気口を有することで、排気口を暴露防止具用吸引口に合わせるだけで、遮蔽板の位置決めを行うことができるとともに、支持部の上で薬剤の調製等を行うだけで、漏れ出た薬剤の蒸気等を排気口(暴露防止具用吸引口)を介して作業室の下部空間へ排出することができる。
【0009】
前記遮蔽板は、上端縁に後方へ傾斜する傾斜部を備えることが好ましい。こうすること
で、遮蔽板の後側で発生した薬剤の蒸気等が遮蔽板の前に流出することを、より効果的に
抑制できる。
【0010】
前記支持部は、前記排気口の側方に薬剤密封容器を載置可能なバイアル台を有することが好ましい。このように、排気口の側方にバイアル台を設けることで、薬剤密封容器を安定させて針の抜き差し操作を行うことができるとともに、排気口の直上で調製作業を行うよう作業者に促すことができる。
【0011】
本発明は、前方に作業用開口部を有する作業室と、前記作業室の底壁の前縁に沿って設けられる前縁吸引口とを有し、前記作業用開口部から前記作業室へ流入する外部の空気と、前記作業室内の空気とを前記前縁吸引口から作業室の底壁の下部空間へ吸引することにより設けた気流により前記作業用開口部をシールドするよう構成された暴露防止用キャビネットと、 前記作業室に設置して、薬剤や有機溶剤の調製を行う際に使用可能な暴露防止具とを備え、前記暴露防止用キャビネットは、前記前縁吸引口より後方において前記作業室の底壁を貫通するとともに前記作業室内の空気を前記作業室の下部空間へ吸引する暴露防止具用吸引口を有し、前記暴露防止具は、前記前縁吸引口と前記暴露防止具用吸引口とを前後に仕切るように立設される透明な遮蔽板と、前記遮蔽板を前記底壁上に支持する支持部とを有し、作業者が前記遮蔽板の左右の両端縁の外側から、前記遮蔽板の後方、かつ前記暴露防止具用吸引口の上方へ両手を回すことが可能に構成されており、前記支持部は、前記遮蔽板の下端から後方へ延出する板状をなし、前記作業室内と前記暴露防止具用吸引口と連通すべく厚み方向に貫通する貫通孔からなる排気口を有することを特徴とする暴露防止具付キャビネットを含む。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の暴露防止具、及び暴露防止具付キャビネットによれば、シンプルな構成で、暴露防止具を用いない場合と同様の作業性を確保しながら、暴露事故の発生を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る暴露防止具付キャビネットの作業室周辺を示した部分斜視図である。
図2図1に示した暴露防止具の斜視図である。
図3図1に示した暴露防止具付キャビネットのX−X線断面図である。
図4図1の暴露防止具用吸引口周辺を表す斜視図である。
図5図1に示したバイアル台の使用方法を示す(a)正面図、(b)右側面図である。
図6図1に示したバイアル台の別の使用方法を示す(a)正面図、(b)右側面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るバイアル台の使用方法を示す(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図である。
図8図7のバイアル台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。尚、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る暴露防止具付キャビネット100を示している。暴露防止具付キャビネット100は、図1に示すように、安全キャビネット(暴露防止用キャビネット)10と、暴露防止具1とを備えている。
【0016】
安全キャビネット10は、日本工業規格JISK3800におけるバイオハザード対策用クラスIIキャビネットの分類B2に属する開放型・全排気型に構成された安全キャビネットである。
安全キャビネット10は、シャッター2と、作業室3と、作業室3の前方に開口する作業用開口部4とを備え、作業用開口部4は、作業室3の底壁5の前端部に設けられるグレーチング51の前縁吸引口51aから、作業室3の空気と作業用開口部4から流入した空気を吸引して設けた気流により、エアシールドされている。
底壁5は、前縁吸引口51aより後方において、厚み方向に貫通する略正方形の貫通孔からなる暴露防止具用吸引口6を有している。
また、作業室3の後壁52には、下端縁に沿って、作業室の空気を作業室後方の排気路8(図3参照)に吸引する後壁吸引口52aが列設されている。
【0017】
底壁5には、暴露防止具用吸引口6が、1個、又は複数個(図1の例では、複数個)設けられている。暴露防止具用吸引口6は、図4に示すように、蓋板61と、底壁5を貫通する平面視略正方形の貫通孔からなる嵌合受部62とからなる。嵌合受部62は、図3に示すように、角枠状に配置した断面が4本のコ字材62bを底壁5にねじ固定して設けられている。嵌合受部62の入り口周縁には、蓋板61を底壁5と面一に支持する蓋受け部62aが設けられ、嵌合受部62の四方のコ字材62bの下縁中央から延出する4つの挟持部材64を有している。挟持部材64は、L字金具64aからなり、突出端側がゴムパッド64bで覆われている。嵌合受部62の下側の開口は、落下物防止用のパンチングボード63にて通気自在に閉塞されている。
【0018】
暴露防止具1は、図2に示すように、側面視略L字型をなす作業台本体11と、2個のバイアル台16,16とを備えている。
【0019】
作業台本体11は、全体がアクリル樹脂やガラス等の透明材料から形成され、図1に示すように、安全キャビネット10の作業室3に設置した際に、前縁吸引口51a,51a,…と、暴露防止具用吸引口6との前後方向の間において、略鉛直に、かつ厚み方向を前後方向として立設される遮蔽板12と、遮蔽板12の下端から後方へ略水平に延出する板状をなす支持部13とからなる。
【0020】
遮蔽板12は、正面視矩形の板状をなし、上端に後方へ傾斜する傾斜部12aを有している。遮蔽板12は、図1に2点鎖線で示すように、作業用開口部4から作業室3に両手を入れた作業者が、遮蔽板12の両側縁から後へ両手を回して、遮蔽板12の後側で両手を使って、バイアルやアンプルにシリンジの針やピペットの先端を挿入できるような幅や位置に設けられる。
【0021】
支持部13は、図2に示すように、遮蔽板12と垂直に設けられる矩形の板状をなし、平面視における略中央に、排気口14を備えている。排気口14は、支持部13の略中央に設けた矩形の貫通孔14aと、貫通孔14aの周縁から下方へ延出するよう設けた4枚の帯板状の周壁14bとからなる。
また、支持部13の上面には、排気口14の両側縁に沿って、支持部13の前後方向の略全長に亘って延びる一対の帯板状のリブ15,15が立設されている。
【0022】
バイアル台16は、ポリカーボネート等の透明な硬質樹脂製からなり図5(b)に示すように、長方形の幅方向(図5(b)の上下方向)の両端縁に、大きさの異なる半円状の凹部16a,16bが設けられている。バイアル台16は、幅方向を上下方向として、リブ15にあてがう様にして支持部13に載置される。
【0023】
次に、暴露防止具付キャビネット100を用いて、薬剤の調製を行う際の手順と各部の作用効果について説明する。
暴露防止具付キャビネット100を用いて薬剤の調製を行う際には、まず、図1に示したように、蓋板61を取り外して暴露防止具用吸引口6を開放し、作業台本体11を設置する。作業台本体11は、図3に示すように、排気口14の周壁14bを暴露防止具用吸引口6の周壁(コ字材)62bと挟持部材64の間に刺し込むようにして設置する。
作業台本体11を設置したら、バイアル台16を作業台本体11に載置する。この際、使用する薬剤密封容器A(バイアルやアンプル等)の外径が大きい場合は、図5に示すように、径の大きな凹部16aを上側にし、2枚のバイアル台16を重ねて使用する。薬剤密封容器Aの外径が小さい場合、バイアル台16は、図6に示すように、径の小さい凹部16bを上側にして1枚のみ使用する。
【0024】
図3において、白抜きの矢印は作業室3における空気の流れを示している。作業用開口部4から作業室3に流入した空気は、作業室3の天壁(不図示)からの給気と共に、前縁吸引口51aから下部空間7に吸引される。作業室3の後部の空気は、後壁吸引口52aから排気路8へ吸引される。暴露防止具1の上方から下降する空気は、排気口14(暴露防止具用吸引口6)を介して下部空間7へ吸引される。
【0025】
この状態で、図1に示すように、一方の手(図1の例では左手)に薬剤密封容器Aを握り、他方の手にシリンジBを掴んで、遮蔽板12の両側縁(りょうそくえん)の外側から遮蔽板12の後方に両手を回す。
このように、遮蔽板12は、作業者が左右両側から後方へ手を回すだけで薬剤の調製を行うことができるため、暴露防止具1を備えない安全キャビネット等を用いる場合と同様の作業性を確保することができる。
また、薬剤密封容器Aを横倒しにして作業を行うため、薬剤密封容器Aを立てて作業を行う場合に比べて、その先端部を作業室の底板にある吸引口に近接させることができ、薬剤密封容器Aの先端部から漏洩した薬剤を直ちに吸引口から吸引することができ、また、薬剤密封容器Aの胴体部を側方へ逃がすことができるため、薬剤密封容器Aの先端から漏れ出て、下方の吸引口に吸引される薬剤が薬剤密封容器Aを汚染することを効果的に抑制できる。
【0026】
そして、一方の手に持った薬剤密封容器Aを、図1に示すように横倒しにしてその周面をバイアル台16の凹部16a(又は16b)に載置する。こうすることで、シリンジ針を薬剤密封容器Aの蓋に抜き差しする位置を、排気口14(暴露防止具用吸引口6)の直上に案内できる。
【0027】
こうして、排気口14(暴露防止具用吸引口6)の上方で薬剤の調製を行うと、シリンジ針を薬剤密封容器Aの蓋に刺した個所から漏れ出た薬剤の蒸気やガス等が、排気口14(暴露防止具用吸引口6)を介して、下部空間7へ吸引される。
また、バイアル台16に薬剤密封容器Aを載置することで、薬剤密封容器Aが手振れせず針の誤操作による暴露事故を抑制できる。
【0028】
また、遮蔽板12は、上端縁に後方へ傾斜する傾斜部12aを備えるため、遮蔽板12の後側で発生した薬剤の蒸気等が遮蔽板12の前へ流出することを効果的に抑制できる。
【0029】
(第2実施形態)
図7図8は、本発明の第2実施形態に係る暴露防止具201を示している。暴露防止具201は、第1実施形態と共通する作業台本体11と、第1実施形態とは異なるバイアル台216とを備えている。以下、第1実施形態と共通する部材は、同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
バイアル台216は、図7に示すように、略直方体状の台部216aと台部216a上面の幅方向(図6(b)の左右方向)の一端(図6(b)の右端)から上方へ延出する矩形の板状をなす保護ボード216bとを備え、リブ15にあてがう様にして作業台本体11に載置される。台部216aの上面には、前後方向における排気口14と同じ位置に、幅方向に延びる断面円弧状の凹部216cが設けられ、保護ボード216bには、凹部216cの直上に円形貫通孔からなる容器挿通孔216dが設けられている。
【0031】
暴露防止具201(バイアル台216)を用いて薬剤の調製を行う際には、図7(b)、図8に示すように、横倒しにした薬剤密封容器Aの蓋部分を容器挿通孔216dに挿通し、薬剤密封容器Aの胴部分を凹部216cに載置した状態で薬剤密封容器Aを一方の手で押さえ、他方の手でシリンジBを掴んでシリンジ針の抜き差しを行う。バイアル台216は、保護ボード216bを備えているので、シリンジ針を誤って手に刺してしまうことや、薬剤密封容器Aとシリンジ針との間から漏れ出た薬剤等が薬剤密封容器Aを握った方の手に付着することを抑制できる。
【0032】
以上、本発明は、上記の実施形態に限らず、例えば、暴露防止用キャビネットは、作業用開口部が同様の気流によりエアシールドされるものであれば、安全キャビネットに限らず、有機溶剤を取り扱ういわゆる局所配置装置の他、アイソレーター等、同様の構成を備えるものを適宜に使用できる。暴露防止具は、傾斜部や排気口、バイアル台を備えなくともよいし、支持部が板状でなくともよい。排気口は、正方形に限らず円形他適宜の形状を採用できる。
【符号の説明】
【0033】
暴露防止具付キャビネット100
暴露防止用キャビネット10
暴露防止具1,201
遮蔽板12
傾斜部12a
支持部13
排気口14
バイアル台16,216
作業室3
作業用開口部4
底壁5
前縁吸引口51a
暴露防止具用吸引口6
下部空間7
薬剤密封容器A
充填具B
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8