(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査光に対する前記反射性薄膜の前記表面反射率Rt(%)は、前記光学膜の前記表面反射率Ro(%)より高く、その差(Rt−Ro)が5(%)以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトマスク基板。
反射性薄膜は、金属のシリサイド、又はその酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のフォトマスク基板。
i線、h線、g線を含む、波長域の光源によって露光するフォトマスクを製造するためのフォトマスク基板であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフォトマスク基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目下のところ、表示装置(例えば、スマートフォン、タブレットなどの携帯端末)に要求される画質(鮮鋭性、明るさ)、動作速度、省電力性は、従来になく高まっている。こうしたニーズに応えるため、表示装置の製造に用いられるフォトマスクの転写用パターンの微細化、高密度化が強く望まれている。
【0006】
表示装置の製造にあたっては、所望の転写用パターンを備えるフォトマスクを、フォトリソグラフィ工程を利用して製造することが行われる。すなわち、透明基板上に成膜した光学膜上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に、エネルギー線(レーザー光など)で描画し、現像することによって得たレジストパターンをマスクとして、光学膜にエッチングを施す。必要に応じて、更に他の光学膜を成膜して、上記フォトリソグラフィ工程を繰り返し、最終的な転写用パターンを形成する。ここでの光学膜とは、例えば、フォトマスクへの露光光を遮光する遮光膜、一部透過する半透光膜、或いは、位相シフト膜やエッチングストッパ膜などの機能膜などが含まれる。
【0007】
表示装置製造用フォトマスクは、半導体製造用フォトマスク(一般に5〜6インチ)に比べてサイズが大きい(例えば一辺は300mm以上)うえに、多種のサイズが存在する。そのため表示装置製造用フォトマスクを製造する際の光学膜のエッチングにおいては、真空チャンバーを必須とするドライエッチングよりも、ウェットエッチングを適用した場合に、エッチング装置やエッチング工程の負担が小さく、また、制御がしやすいという利点がある。
【0008】
但し、これらの工程を経て、最終的に得られる転写用パターンの寸法精度を精緻に制御することは、必ずしも容易ではない。例えば、目標寸法に対する許容範囲に関し、目標値に対して±100nm程度の許容範囲があれば、描画、現像、エッチング等各工程の厳重な管理により、大きな困難なくこれを達成可能であるとしても、目標値に対して±50nm程度の許容範囲内、更には、目標値に対して±20nm程度の許容範囲内とするためには、新たな技術課題が生じることになる。
【0009】
例えば、
図1のようなフローで、透光部と遮光部とをもつ転写用パターンを備えた、バイナリマスクを製造する工程を説明する。
【0010】
まず、
図1(a)に示すように、透明基板上に、スパッタ法等の成膜手段で光学膜を成膜し、その表面にフォトレジスト膜を塗布した、レジスト付フォトマスクブランク(レジスト付フォトマスク基板)を用意する。尚、ここでは光学膜は、クロムを主成分とする遮光膜とする。
【0011】
次に、
図1(b)に示すように、レーザー描画装置を用いて、所定のパターンを描画する。ここでは、描画光として、FPD(Flat Panel Display)用描画機が搭載する光源が発する、波長413nmのレーザー光を用いる。
【0012】
次に、
図1(c)に示すように、描画後のレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する。
【0013】
次に、
図1(d)に示すように、形成したレジストパターンをマスクとして、光学膜のウェットエッチングを行い、光学膜パターンを形成する。透光部となる部分の光学膜が十分にエッチング除去されるようにエッチング時間を設定するが、これによってウェットエッチングの性質により、サイドエッチングが進行する。従って、
図1(d)に図示するとおり、エッチング後の光学膜のエッジ(被エッチング断面)は、レジストパターンの下に隠れた状態となる。このため、上記
図1(b)に示す工程にて描画を行う際の描画データにおいては、サイドエッチングによる寸法変化を予め織り込んだ寸法としておく(サイジングをしておく)必要がある。
【0014】
次に、
図1(e)に示すように、レジストパターンを除去して、光学膜パターンからなる、転写用パターンを備えたバイナリマスクが完成する。
【0015】
最終的に目標寸法に一致した光学膜パターンを得るためには、エッチング時間を精緻に決定する必要がある。このため、所望のパターン寸法に到達するために、所定の光学膜のエッチングレート(単位時間あたりのエッチング量)を、定量的に把握しておく必要がある。但し、エッチングレートが把握できていても、エッチング終点を正確に決定することは、必ずしも容易でない。
【0016】
エッチングマスクとなるレジストパターンの一例を
図2に示す。
図2は、光学膜(ここでは遮光膜)上に形成したレジスト膜にパターンを描画し、現像して形成された、レジストパターン断面SEM写真を示す。これは、上記
図1(c)の時点でのレジストパターンの形状に相当する。
【0017】
図2に示すとおり、形成されるレジストパターンは、300〜1000nm程度の厚みがあり、光学膜よりも相当に厚い。また、その側面は、基板に対して垂直ではなく、若干の傾斜がある上、光学膜との接触部分のエッジには裾引きも見られる。こうしたレジストパターンの立体形状は、描画時や現像時の様々な条件変動の影響を受け、必ずしも、完全な再現性をもつとは限らない。従って、このレジストパターンをマスクとして、予め設定された時間のエッチングを行った後に、光学膜パターンの寸法が確実に目標寸法に到達するとは限らない。
【0018】
そこで、エッチング開始前に、まずレジストパターンの寸法を測定し、これを基準として、光学膜に対するエッチング時間を決定することが考えられる。測定にあたっては、検査光を照射して、反射光又は透過光を検出することにより、レジストのエッジ位置を判断することが、理論的には可能である。しかしながら、上述のとおり、レジストパターンの厚み、裾引きのある傾斜断面形状などからして、レジストパターンの光学的な寸法測定は困難であり、検出した検査光が、光学膜上のどの位置を示すかは不明瞭であって、測定精度の信頼性は十分でない。
【0019】
次に、このレジストパターンをマスクとして光学膜のウェットエッチングを行い、途中までエッチングが進行した時点での光学膜パターンの寸法を把握し、その寸法と、光学膜のエッチングレートから、光学膜に対する追加エッチング時間を決定し、光学膜に対して追加エッチングすることを考える。
【0020】
一般に、ドライエッチングが異方性エッチングの性質をもつのに対して、ウェットエッチングはエッチングが等方的に進行する性質をもつ。そのため、上記したように、エッチング対象の光学膜が厚み方向にエッチングされるのに伴い、その側面からもエッチングが進行する。このため、エッチング終了時が近づいた時点で、光学膜パターンの寸法は、エッチングマスクとなっているレジストパターンの寸法とは一致せず、より小さくなる。すなわち、光学膜パターンのエッジは、レジストパターンのエッジより、レジストパターン側に入り込み、レジストパターンの下に隠れた状態となる。レジストパターンをエッチングマスクとしたウェットエッチング後の光学膜パターン(
図3に示す遮光膜のパターン)の断面形状のSEM写真を
図3に示す。なお、このSEM写真は、
図1(d)の断面形状に対応する。
【0021】
このときに、
図3に示すような光学膜パターンの寸法を測定しようとする場合、基板の表面側(基板の主面のうち、パターン形成を行う側を、表面、又は第1主面という。)から、検査光を照射して、反射光又は透過光を検出しようとしても、レジストパターンが妨げになって、光学膜パターンの寸法の読み取り精度が得られない。そこで、裏面側(基板の表面側とは反対側の基板の主面)から検査光を照射して、表面側で透過光を検出しようとする場合にも、やはりレジストパターンが妨げになる。また、裏面側から検査光を照射して、反射光の検出により光学膜パターンの寸法を測定する場合には、透明基板が妨げになる。
【0022】
ところで、特許文献1には、
図3に示すような状態で、基板の裏面側から露光し、裏面側から見たときに光学膜の端部から露出した部分のレジストを感光し、現像によって溶出させ、レジストパターンと光学膜のエッジ位置を一致させた上で、線幅測定を行う方法が記載されている。
【0023】
この場合、理論的にはレジストパターン形状と同一形状の光学膜パターン形状が形成される訳であるから、レジストパターン側から寸法を測定し、その寸法測定結果を基に、追加エッチング時間を算定すれば、目標寸法の光学膜パターンが得られることとなる。
【0024】
しかしながら、この方法によっても、昨今の表示装置に要求される、極めて厳しい寸法精度を満足させることは容易でない。なぜなら、特許文献1の方法による光学膜パターンの寸法測定では、直接、光学膜の寸法を測定しているのではなく、光学膜の寸法を、レジストパターン寸法から間接的に得ているため、必ずしも十分な測定精度ではないのである。尚、この光学膜パターンの寸法測定を、下方(基板裏面側)から反射測定しようとするときには、やはり透明基板の厚みが測定の妨げになる。
【0025】
レジストパターンの形状は、レジストの現像温度や現像剤濃度などにも影響されるものであるところ、これらを常に一定とすることは容易でない。上記の現状を考慮すると、寸法精度の高いパターニングを行うためには、上記変動要因の影響を受けにくく、エッチング終点までの、正確なエッチング時間(すなわち、光学膜に対して必要なエッチング量に適合したエッチング時間)を把握する方法を得ることが有用である。
【0026】
上記で触れたとおり、液晶や有機ELに代表される表示装置には、従来以上に微細な構造をもつものが増加する傾向にある。この傾向は、薄膜トランジスタ(TFT)基板、カラーフィルタ(フォトスペーサ、色版)などの表示装置の部品の各々に共通する傾向であるが、これら表示装置における、画像の精細さ、動作の速さ、明るさ、省電力等のニーズと関係している。
【0027】
上記に伴い、表示装置製造用フォトマスクのもつ転写用パターンのCD(Critical Dimension:以下、パターン線幅の意味で使う)の精度要求が厳しくなっている。これは、ラインアンドスペースパターンであっても、ホールパターンであっても、或いは、TFT基板用チャネル構造であっても同様である。例えば、転写用パターンのCD精度を目標値±50nm以下、更には仕様によっては目標値±20nm以下とすること等が要求されるようになっている。
【0028】
こうした要求を満足するためには、転写用パターン形成における、面内のCDばらつきが抑制されるとともに、その絶対値が、限りなく設計どおりの寸法に仕上がっていることが要求されている。換言すれば、形成された転写用パターンのCDの中心値が精度よく目標値に一致する必要がある。そこで、本発明は、寸法精度の高い転写用パターンが形成できるフォトマスクの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するためには、等方性エッチングにおいて、パターニングされる光学膜寸法のCD中心値が目標値に達すると同時に、エッチングを停止することによって達成できる。従って、エッチングを停止するタイミングの検出(終点検出)を、正確に行うことが肝要となる。
【0030】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。本発明は、下記の構成1〜5及び8〜11であることを特徴とするフォトマスクの製造方法、下記の構成6、7、12及び13であることを特徴とするフォトマスク基板、下記の構成14であることを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0031】
(構成1)
本発明の構成1は、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ反射性薄膜とが積層され、更に最表面にレジスト膜が形成された、レジスト付フォトマスク基板を用意する工程と、描画装置を用いて、前記レジスト膜に所定パターンを描画し、現像することによって、レジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、前記レジストパターンをマスクとして、前記反射性薄膜をエッチングし、反射性薄膜パターンを形成する、薄膜エッチング工程と、前記レジストパターンを除去する工程と、前記反射性薄膜パターンの寸法を測定する、寸法測定工程と、測定された前記寸法に基づいて決定された、前記光学膜のエッチング時間に基づき、前記反射性薄膜パターンをマスクとして、前記光学膜のウェットエッチングを行う、光学膜エッチング工程と、前記反射性薄膜を除去する工程と、を有し、前記寸法測定工程においては、前記反射性薄膜パターンの測定部に検査光を照射し、前記検査光の反射光を検出することによって、前記寸法測定を行うことを特徴とすることを特徴とする、フォトマスクの製造方法である。
【0032】
(構成2)
本発明の構成2は、前記反射性薄膜の膜厚は、前記光学膜の膜厚より小さいことを特徴とする、構成1に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0033】
(構成3)
本発明の構成3は、前記検査光に対する前記反射性薄膜の表面反射率Rt(%)は、前記光学膜の表面反射率Ro(%)より高く、その差(Rt−Ro)が5(%)以上であることを特徴とする、構成1又は2に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0034】
(構成4)
本発明の構成4は、前記検査光に対する、前記反射性薄膜の前記表面反射率Rtは、20(%)以上であることを特徴とする、構成1〜3のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法である。
【0035】
(構成5)
本発明の構成5は、前記検査光としては、波長が300〜1000nmの範囲内の光を用いることを特徴とする、構成1〜4のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法である。
【0036】
(構成6)
本発明の構成6は、表示装置製造用の転写用パターンを備えたフォトマスクとするためのフォトマスク基板において、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ材料からなる反射性薄膜とが積層され、前記反射性薄膜の膜厚は、前記光学膜の膜厚より小さく、500nmの波長光に対する前記反射性薄膜の表面反射率Rtは20(%)以上であり、かつ、前記光学膜の表面反射率Ro(%)より高いことを特徴とする、フォトマスク基板である。
【0037】
(構成7)
本発明の構成7は、前記500nmの波長光に対する前記反射性薄膜の前記表面反射率Rt(%)は、前記光学膜の前記表面反射率Ro(%)より高く、その差(Rt−Ro)が5(%)以上であることを特徴とする、構成6に記載のフォトマスク基板である。
【0038】
(構成8)
本発明の構成8は、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ透過性薄膜とが積層され、更に最表面にレジスト膜が形成された、レジスト付フォトマスク基板を用意する工程と、描画装置を用いて、前記レジスト膜に所定パターンを描画し、現像することによって、レジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、前記レジストパターンをマスクとして、前記透過性薄膜をエッチングし、透過性薄膜パターンを形成する、薄膜エッチング工程と、少なくとも前記透過性薄膜パターンをマスクとして、前記光学膜をウェットエッチングし、光学膜予備パターンを形成する、光学膜予備エッチング工程と、前記光学膜予備パターンの寸法を測定する、寸法測定工程と、測定された前記寸法に基づいて決定された、前記光学膜の追加エッチング時間に基づき、前記光学膜を追加エッチングする、光学膜追加エッチング工程と、前記透過性薄膜を除去する工程とを有し、前記寸法測定工程においては、前記光学膜予備パターンの測定部に、前記透過性薄膜を透過した検査光を照射することによって、前記寸法測定を行うことを特徴とする、フォトマスクの製造方法である。
【0039】
(構成9)
本発明の構成9は、前記透過性薄膜の膜厚は、前記光学膜の膜厚より小さいことを特徴とする、構成8に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0040】
(構成10)
本発明の構成10は、前記検査光に対する前記透過性薄膜の透過率Ttは、50(%)以上であることを特徴とする、構成8又は9に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0041】
(構成11)
本発明の構成11は、前記光学膜予備エッチング工程終了時には、前記フォトマスクの表面側から見たとき、前記光学膜のエッジが、前記透過性薄膜パターンの内側に位置することを特徴とする、構成8〜10のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法である。
【0042】
(構成12)
本発明の構成12は、表示装置製造用の転写用パターンを備えたフォトマスクとするためのフォトマスク基板において、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ材料からなる透過性薄膜とが積層され、前記透過性薄膜の膜厚は、前記光学膜の膜厚より小さく、500nmの波長光に対する前記透過性薄膜の光透過率Ttが、50(%)以上であることを特徴とする、フォトマスク基板である。
【0043】
(構成13)
本発明の構成13は、500nmの波長光に対する、前記光学膜の光透過率Toは、50(%)以下であることを特徴とする、構成12に記載のフォトマスク基板である。
【0044】
(構成14)
本発明は、本発明の構成14は、構成1〜5及び構成8〜11のいずれかに記載の製造方法により製造したフォトマスクを用意する工程と、露光装置を用いて、前記フォトマスクに露光し、前記転写用パターンを、被転写体に転写する工程とを有する、表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0045】
本発明のフォトマスクの製造方法により、フォトマスクの製造における、精緻なパターン寸法精度の制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1(a)】フォトマスクの製造工程(a)の一例を示す断面模式図である。
【
図1(b)】フォトマスクの製造工程(b)の一例を示す断面模式図である。
【
図1(c)】フォトマスクの製造工程(c)の一例を示す断面模式図である。
【
図1(d)】フォトマスクの製造工程(d)の一例を示す断面模式図である。
【
図1(e)】フォトマスクの製造工程(e)の一例を示す断面模式図である。
【
図2】
図1(c)に示す工程に対応する、レジストパターンの断面形状のSEM写真の一例である。
【
図3】、
図1(d)に示す工程に対応する、レジストパターンをエッチングマスクとしたウェットエッチング後の光学膜パターン(遮光膜パターン)の断面形状のSEM写真の一例である。
【
図4(a)】本発明の第1の態様の製造工程(a)を示す断面模式図である。
【
図4(b)】第1の態様の製造工程(b)を示す断面模式図である。
【
図4(c)】第1の態様の製造工程(c)を示す断面模式図である。
【
図4(d)】第1の態様の製造工程(d)を示す断面模式図である。
【
図4(e)】第1の態様の製造工程(e)を示す断面模式図である。
【
図4(f)】第1の態様の製造工程(f)を示す断面模式図である。
【
図4(g)】第1の態様の製造工程(g)を示す断面模式図である。
【
図4(h)】第1の態様の製造工程(h)を示す断面模式図である。
【
図5(a)】本発明のフォトマスクの製造方法の第2の態様の製造工程(a)を示す断面模式図である。
【
図5(b)】第2の態様の製造工程(b)を示す断面模式図である。
【
図5(c)】第2の態様の製造工程(c)を示す断面模式図である。
【
図5(d)】第2の態様の製造工程(d)を示す断面模式図である。
【
図5(e)】第2の態様の製造工程(e)を示す断面模式図である。
【
図5(f)】第2の態様の製造工程(f)を示す断面模式図である。
【
図5(g)】第2の態様の製造工程(g)を示す断面模式図である。
【
図5(h)】第2の態様の製造工程(h)を示す断面模式図である。
【
図5(i)】第2の態様の製造工程(i)を示す断面模式図である。
【
図6】反射性薄膜パターンの寸法測定方法を示す説明図である。
【
図7】
図5(g)に示す寸法測定工程における、光学膜パターンの寸法測定方法を示す説明図である。
【
図8】エッチング時間とCD変化量との相関の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1の態様)
本発明の第1の態様のフォトマスクの製造方法は、レジスト付フォトマスク基板の光学膜に対して、所定の方法でパターンを形成することに適用されるフォトマスクの製造方法である。具体的には、本発明のフォトマスクの製造方法は、レジスト付フォトマスク基板を用意する工程と、レジストパターン形成工程と、薄膜エッチング工程と、レジストパターンを除去する工程と、寸法測定工程と、光学膜エッチング工程と、反射性薄膜を除去する工程と、を有する。レジスト付フォトマスク基板を用意する工程では、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ反射性薄膜とが積層され、更に最表面にレジスト膜が形成される。レジストパターン形成工程では、描画装置を用いて、前記レジスト膜に所定パターンを描画し、現像することによって、レジストパターンを形成する。薄膜エッチング工程では、前記レジストパターンをマスクとして、前記反射性薄膜をエッチングし、反射性薄膜パターンを形成する。レジストパターンを除去する工程では、レジストパターンを除去する。寸法測定工程では、前記反射性薄膜パターンの寸法を測定する。尚、この寸法測定工程においては、前記反射性薄膜パターンの測定部に検査光を照射し、前記検査光の反射光を検出することによって、前記寸法測定を行う。光学膜エッチング工程では、測定された前記寸法に基づいて決定された、前記光学膜のエッチング時間に基づき、前記反射性薄膜パターンをマスクとして、前記光学膜のウェットエッチングを行う。
【0048】
図4を参照して、本発明のフォトマスクの製造方法の第1の態様を、具体的に説明する。
【0049】
図4(a)に示すように、フォトマスク基板を用意する(レジスト付フォトマスク基板を用意する工程)。
【0050】
フォトマスク基板としては、以下の構成をもつフォトマスクブランクとすることができる。尚、後述するように本発明のフォトマスク基板は、必ずしもフォトマスクブランクである必要はないが、本態様では、
図4(a)に示すフォトマスクブランクとし、以下に説明する。
【0051】
尚、
図4(a)中、「Resist」とはレジストのことであり、「Qz」とは合成石英などの透明基板のことである。これらの用語は、他の図においても同様である。
【0052】
フォトマスク基板の製造に用いられる透明基板としては、合成石英などからなるものを、平坦、平滑に研磨したものを用いる。第1主面は一辺が300mm〜1400mmの四角形であり、厚みは5〜13mm程度である。
【0053】
この基板上に、スパッタ法など、公知の成膜法により、透明基板の第1主面上に光学膜を形成する。
【0054】
光学膜としては、例えば、遮光膜(フォトマスクを使用する際の露光光に対する光学濃度ODが3以上)とすることができる。また、光学膜は、一部露光光を透過する、半透光膜としても良い。半透光膜の露光光透過率は、3〜60%のものが例示される。
【0055】
例えば、露光光に対する透過率が3〜30%であるとともに、露光光に含まれる代表波長の位相を略180度シフトする、位相シフト膜であることができる。略180度とは、150〜210度の範囲内の角度を意味する。
【0056】
更には、光学膜としては、露光光に対する光透過率が3〜60%であるとともに、露光光に含まれる代表波長の位相を、5〜90度の範囲でシフトさせる、半透光膜であることができる。このような半透光膜は、微細なスペースパターンやホールパターンを形成する場合、遮光膜の代わりに、又は遮光膜とともに用いて、フォトマスクを透過する光量を補助し、被転写体上のレジストの感光閾値に到達させる目的に使用される、光量補助パターンとなることができる。
【0057】
光学膜の膜厚は、その機能によって決定されるが、10〜300nmであることができ、100〜150nm程度のとき、本発明の効果が顕著である。例えば光学膜が遮光膜であるとき、この膜厚範囲とすることが好適に行える。
【0058】
光学膜は、ウェットエッチングが可能なものとする。光学膜の材料としては、例えば、クロム(Cr)を含む膜が挙げられる。例えば、クロムの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物のいずれかを含む膜であることができる。
【0059】
更に、クロム以外の金属、例えば、Mo、Ta、W、Zr、Nb、Ti、又はそれら化合物からなる光学膜も適用できる。例えば、金属シリサイドやその酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物を含む材料とすることもできる。金属シリサイドの例としては、モリブデンシリサイド、及びタンタルシリサイドなどがある。
【0060】
光学膜は、後述の、反射光による寸法測定に用いる検査光に対し、その表面反射率Roが15(%)以下であることが好ましい。例えば、検査光として、波長500nmの光を用いる場合、この波長に対する光学膜の表面反射率Ro500が、15(%)以下であることが好ましい。より好ましくは、10(%)以下、更に好ましくは8%以下である。
【0061】
前記光学膜は、その表面に、光反射率を抑制するための反射防止層を備えるものであることが好ましい。その場合、例えば、クロムを主成分とする光学膜において、反射防止層は、そのクロム化合物(酸化物、窒化物、炭化物など)の表面層が、光学膜の厚さ方向において、組成変化してなることが好ましい。尚、組成変化は、段階的な変化でも、連続的な変化でも良い。この反射防止層は、フォトマスクを使用する際に用いる露光光に対して反射を抑える機能をもつが、後述の寸法測定においても、表面反射を抑える作用をもつ。
【0062】
また、本発明のフォトマスク基板は、フォトマスクブランクに限らず、本発明の効果を妨げない範囲で、透明基板上に、本発明の光学膜や本発明の反射性薄膜以外の膜、或いは該膜のパターンが形成されたものであって、更に、本発明の光学膜、反射性薄膜を備えた、フォトマスク中間体であってもよい。反射性薄膜以外の膜又は該膜のパターンとは、機能膜(導電性や絶縁性など電気的性質を与えるもの、エッチングストッパ機能をもつもの)などが挙げられるが、本発明の反射率測定(第2の態様にあっては透過率測定)に影響を与えないものとする。
【0063】
次に、光学膜上に、反射性薄膜を、やはりスパッタ法などの公知の成膜法によって形成する。反射性薄膜は、寸法測定工程において、寸法測定のために検査装置が発する波長の光を反射する性質を有する薄膜である。
【0064】
反射性薄膜の材料は、光学膜との間で、互いにエッチング選択性をもつものを使用する。エッチング選択性とは、互いに他方の膜をエッチングするエッチング剤に対して耐性をもつことをいう。好ましくは、他方の膜のエッチング剤に対するエッチングレートが、該エッチング剤に対する他方の膜のエッチングレートに対して、1/10以下、好ましくは1/50以下、更に好ましくは1/100以下である。
【0065】
反射性薄膜は、後述の寸法測定のときに用いる検査光に対する表面反射率Rtが20(%)以上であることが好ましい。例えば、検査光として波長500nmの光を用いる場合、反射性薄膜の検査光に対する反射率Rt500が、20(%)以上であることが好ましく、50(%)であることがより好ましい。
【0066】
また、反射性薄膜は、描画工程において、描画光に対する反射率が過大でないことが望まれる。このため、反射性薄膜の描画光波長(例えば、413nm)に対する表面反射率Rwは、10(%)以下であることが好ましい。
【0067】
また、反射性薄膜の検査光に対する表面反射率Rtは、反射性薄膜の描画光に対する表面反射率Rwより高いことが好ましい。例えば、反射性薄膜の、500nmの波長に対する表面反射率Rt500と、413nmの波長に対する表面反射率Rw413との差が、5(%)程度あることが好ましい。
【0068】
更に、反射性薄膜の検査光に対する反射性薄膜の表面反射率Rt(%)は、前記光学膜の表面反射率Ro(%)より高く、その差(Rt−Ro)が5(%)以上であることが好ましい。検査光として500nmの波長を使用する場合には、反射性薄膜と、前記光学膜との、500nmの波長光に対する反射率の差(Rt500−Ro500)が5(%)以上、好ましくは10(%)以上、更には20%以上とすることが好ましい。
【0069】
反射性薄膜の材料の例としては、Mo、Ti、W、Ta、又はZrを含む金属、又はその化合物が挙げられる。化合物とは、例えば酸化物、窒化物、炭化物、及び酸化窒化物が例示される。又は、これらの金属のシリサイドや、その酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物などを使用してもよい。また、光学膜がCr以外の素材であれば、反射性薄膜にCrを含む材料を用いても良い。但し、上記のうちSiを含まない素材は、レジスト膜との密着性が高いため、より好ましい素材といえる。
【0070】
反射性薄膜の材料は、上記のとおり光学膜とのエッチング選択性が得られる材料とする。
【0071】
反射性薄膜の膜厚は、光学膜よりも小さいことが好ましい。反射性薄膜の膜厚は5〜100nmであり、より好ましくは5〜20nmである。
【0072】
反射性薄膜が厚すぎると、エッチング時間が過大となり、更に、後述の寸法測定精度が不十分となりやすい。反射性薄膜が薄すぎると、面内の膜厚変動が大きくなりやすい。また、反射性薄膜のサイドエッチングが、後述の測定に影響を与えないようにするためには、反射性薄膜の膜厚は、光学膜の膜厚よりも小さいことが好ましい。例えば光学膜の膜厚に対して、1/10以下、より好ましくは1/20以下の膜厚とする。反射性薄膜の膜厚がこの程度に小さくなると、反射性薄膜のサイドエッチング分を予め描画データに反映させる(サイジング)する際の、サイジング量が小さくでき、有利である。尚、サイジング量が大きいと、抜きパターン(ホールパターンやスペースパターンなど)などにおいて、最小解像寸法に近づいてしまう(或いは達してしまう)という不都合が生じる。つまり、反射性薄膜の膜厚が小さいことは、微細な抜きパターン(例えばCDが2μm以下など)を形成する際には、特に重要である。
【0073】
本発明の第1の態様のフォトマスクの製造方法に用いることのできるフォトマスク基板としては、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、光学膜に対してエッチング選択性をもつ材料からなる反射性薄膜とが、この順に積層されたものを好ましく用いることができる。上述のように、反射性薄膜の膜厚は、光学膜の膜厚より小さく、500nmの波長光に対する反射性薄膜の表面反射率Rtは20(%)以上であり、かつ、光学膜の表面反射率Ro(%)より高いことが好ましい。更に、上述のように、検査光に対する反射性薄膜の表面反射率Rt(%)は、光学膜の表面反射率Ro(%)より高く、その差(Rt−Ro)が5(%)以上であることが好ましい。
【0074】
本発明のフォトマスクの製造方法に用いるフォトマスク基板としては、反射性薄膜の上に、更に、レジスト膜を形成したレジスト付フォトマスク基板を用いることができる。レジスト膜の形成のために、スリットコータやスピンコータなどの公知の塗布装置によって、レジスト膜の原料となるレジストを、透明基板上に塗布することができる。レジスト膜の膜厚は、300〜1000nmが好ましい。
【0075】
尚、レジスト膜とは、ここでは、レーザー描画用のポジ型フォトレジストとして説明する。但し、レジスト膜として、ネガ型フォトレジストを使用してもよく、また、描画を電子線で行う場合には、電子線用レジストを用いることも可能である。
【0076】
次に、
図4(b)に示すように、上記レジスト膜に対して、所望のパターンの描画を行う(レジストパターン形成工程の描画)。パターンの描画のために用いる描画装置はFPD用レーザー描画機を用いることができる。描画光は、一般に波長413nmのレーザー光が使用される。
図4(b)中、描画のためのレーザー光の照射を複数の矢印で模式的に示している。
【0077】
ここで用いる描画データとしては、目標とする光学膜パターンのスペース幅の寸法(
図4(g)のCD2)に対して、若干小さめ(アンダー方向)に設定するサイジングをしておく。
【0078】
次に、
図4(c)に示すように、現像剤により、レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する(レジストパターン形成工程の現像)。
【0079】
次に、
図4(d)に示すように、形成したレジスト膜をマスクとして、反射性薄膜をエッチングし、反射性薄膜パターンを形成する(薄膜エッチング工程)。尚、このエッチングはウェットエッチングであることが好ましいが、ドライエッチングでもかまわない。
【0080】
一般に、表示装置用のフォトマスクは、半導体製造用のフォトマスク(5〜6インチ)に比較して、サイズ(例えば、一辺が300mm〜1400mm)が大きく、更に、多様なサイズがある。そのため、真空チャンバーなど装置制御の負担が大きいドライエッチングを行うよりも、ウェットエッチングを行う方が有利である。ここでは、反射性薄膜パターンを形成するための方法として、ウェットエッチングを例に説明する。
【0081】
ウェットエッチングを行うためのエッチング液(エッチング剤)としては、反射性薄膜の素材に応じて公知のものから選択できる。例えば、Crを含む反射性薄膜に対しては、硝酸第2セリウムアンモニウム等を使用することができる。反射性薄膜が金属シリサイド系などの素材の場合には、バッファードフッ酸などを適宜使用する。
【0082】
反射性薄膜のエッチングにより、エッチングされた反射性薄膜に対応する部分の光学膜表面が露出する。
【0083】
次に、
図4(e)に示すように、反射性薄膜パターン上に残存するレジストパターンを除去する(レジストパターンを除去する工程)。
【0084】
次に、
図4(f)に示すように、反射性薄膜パターンの寸法測定を行う(寸法測定工程)。寸法測定は、反射性薄膜パターンのいずれの部分で行ってもよい。例えば、ラインアンドスペースパターンであれば、ライン部の幅を測定してもよく、スペース部を測定してもよい。
図4(f)では、スペース部のCD1を測定する場合を例示する。最終的に得ようとする転写用パターンにおいて、特に高い精度を要求される部分を、保証部とし、この部分の幅を測定する。測定対象は、反射性薄膜パターンの幅(例えば遮光部の幅)でも、反射性薄膜パターンの間隙(ホール、スリットなど透光部の幅)のいずれでもよい。
【0085】
反射性薄膜パターンの寸法測定方法を、
図6に例示する。検査光としては、波長が300〜1000nmの範囲内光を使用することができる。例えば、寸法測定に400〜600nmの波長の検査光を用いる場合には、測定感度が高く、また、300〜500nmの検査光を用いる場合であれば、解像性が高いため高精度が得られる。ここでは検査光として500nm程度の検査光を例示する。尚、上記のとおり、反射性薄膜の検査光に対する反射率と、光学膜の検査光に対する反射率との間に、検出可能なコントラストをもつため、寸法測定の精度が確保される。
【0086】
また、検査光の波長は、描画光の波長と一定の波長差があることが好ましい。検査光と、描画光との波長差は、50nm以上、より好ましくは80nm以上あることが好ましい。
【0087】
ここで、測定したCD1の値と、予め把握されている光学膜のエッチングレートとを用いて、光学膜のエッチングに適用するエッチング時間を設定する。
【0088】
尚、上記のとおり光学膜のエッチングレートは、
図8に例示するようなエッチング時間とCD変化量との相関を得ておくことにより求めることができる。すなわち、得ようとする光学膜パターンと同じ、膜材料、膜厚の光学膜に対し、使用するエッチング液を用いたときの、単位時間当たりのエッチング量をデータとして得ておく。
【0089】
次に、
図4(g)に示すように、この反射性薄膜パターンをマスクとして、設定したエッチング時間のウェットエッチングを施す(光学膜エッチング工程)。このエッチングが終了したときには、光学膜のサイドエッチングが進み、フォトマスクの第1主面(パターン形成面)側から見たとき、前記光学膜パターンのエッジ(被エッチング断面)が、前記反射性薄膜パターンの下に隠れた状態となる。
【0090】
しかしながら、エッチング後の光学膜パターンのエッジ位置は正しく制御され、目標寸法CD2が得られる。
【0091】
次に、
図4(h)に示すように、反射性薄膜を除去する(反射性薄膜を除去する工程)。
【0092】
上記方法によれば、反射性薄膜を用いた寸法測定を行って、エッチング時間を決定しているので、レジストパターンをマスクとして光学膜をエッチングする場合に比較して、光学膜のCD精度を高くすることが可能となる。寸法測定の対象とする反射性薄膜の膜厚は、レジストパターンの厚みに比べて1/50以下であり、反射光学測定に適した物性をもつことも、CD精度向上に寄与している。
【0093】
もちろん本発明の製造方法は、上記のような光学膜パターンが形成された後に、更に成膜とパターニングを行って、より複雑な構造のフォトマスクとする場合を含む。
【0094】
(第2の態様)
本発明の第2の態様のフォトマスクの製造方法は、レジスト付フォトマスク基板の光学膜に対して、所定の方法でパターンを形成することに適用されるフォトマスクの製造方法である。具体的には、本発明のフォトマスクの製造方法は、レジスト付フォトマスク基板を用意する工程と、レジストパターン形成工程と、薄膜エッチング工程と、光学膜予備エッチング工程と、寸法測定工程と、光学膜追加エッチング工程と、透過性薄膜を除去する工程と、を有する。具体的には、レジスト付フォトマスク基板を用意する工程では、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ透過性薄膜とが積層され、更に最表面にレジスト膜が形成される。レジストパターン形成工程では、描画装置を用いて、前記レジスト膜に所定パターンを描画し、現像することによって、レジストパターンを形成する。薄膜エッチング工程では、前記レジストパターンをマスクとして、前記透過性薄膜をエッチングし、透過性薄膜パターンを形成する。光学膜予備エッチング工程では、少なくとも前記透過性薄膜パターンをマスクとして、前記光学膜をウェットエッチングし、光学膜予備パターンを形成する。寸法測定工程では、前記光学膜予備パターンの寸法を測定する。尚、この寸法測定工程においては、前記光学膜予備パターンの測定部に、前記透過性薄膜を透過した検査光を照射することによって、前記寸法測定を行う。光学膜追加エッチング工程では、測定された前記寸法に基づいて決定された、前記光学膜の追加エッチング時間に基づき、前記光学膜を追加エッチングする。透過性薄膜を除去する工程では、前記透過性薄膜を除去する。
【0095】
図5を用いて、本発明のフォトマスクの製造方法の第2の態様を、具体的に説明する。
【0096】
図5(a)に示すように、ここでは、上記第1の態様で用いた反射性薄膜の代わりに透過性薄膜を用いた、フォトマスク基板を用意する。
【0097】
第2の態様のフォトマスクの製造方法では、例えば、まず
図5(a)に示すフォトマスクブランクを用意する(レジスト付フォトマスク基板を用意する工程)。尚、本態様のフォトマスク基板は、反射性薄膜の代わりに透過性薄膜を設けた以外は、第1の態様のフォトマスクブランクと同様である。
【0098】
第2の態様の透明基板としては、第1の態様と同様の透明基板が使用できる。
【0099】
第2の態様の光学膜としては、第1の態様と同様の光学膜が使用できる。但し、第2の態様の光学膜は、後述するように、透過光による寸法測定に用いる検査光に対し、その透過率Toが50(%)以下であることが好ましい。例えば、検査光として、波長500nmの光を用いる場合、この波長に対する光学膜の透過率To500が、上記範囲であることが好ましい。また、検査光に対する光学膜の反射率Roは15%以下であることが好ましい。より好ましくは、光学膜の反射率Roは8%以下である。
【0100】
第2の態様のフォトマスクの製造方法では、上記光学膜上に、透過性薄膜がスパッタなど公知の成膜法で形成される。透過性薄膜は、寸法測定工程において、寸法測定のために検査装置が発する波長の光を透過する性質を有する薄膜である。
【0101】
透過性薄膜の材料は、光学膜の材料との間で、互いにエッチング選択性をもつものとする点については、第1の態様と同様である。また、第1の態様の反射性薄膜の場合と同様に、透過性薄膜の膜厚は、光学膜の膜厚より小さいことが好ましい。
【0102】
透過性薄膜は、後述の寸法測定のときに用いる検査光に対する透過率Ttが50(%)以上であることが好ましい。透過性薄膜の検査光に対する透過率Ttは、より好ましくは70(%)以上、更に好ましくは80(%)以上である。例えば、検査光として波長500nmの光を用いる場合、透過性薄膜の検査光に対する透過率Tt500が、上記範囲であることが好ましい。ここで透過率Tt500は、空気中の検査光の透過率を100(%)としたときの値で示す。
【0103】
前記検査光に対する前記光学膜の透過率To(%)は、前記検査光に対する透過性薄膜の透過率Tt(%)より低いことが好ましい。前記検査光に対する透過性薄膜の透過率Tt(%)と、前記光学膜の透過率To(%)との差(Tt−To)が20(%)以上、より好ましくは30%以上あることがより好ましい。
【0104】
また、描画工程において、透過性薄膜の描画光に対する反射率が過大でないことが望まれる。このため、透過性薄膜の描画光波長(例えば、413nm)に対する表面反射率Rwは、10(%)以下であることが好ましい。
【0105】
透過性薄膜の材料としては、Mo、Ti、W、Ta、又はZrを含む金属や、それらの化合物が挙げられる。化合物とは、例えば酸化物、窒化物、炭化物、及び酸化窒化物が例示される。又はこれらの金属のシリサイド又は該シリサイドの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物などを使用してもよい。更に、Siの酸化物、窒化物、酸化窒化物であることもできる。但し、上記のうちSiを含まない素材は、レジスト膜との密着性が高いため、より好ましい素材といえる。これらを考慮し、Ta、Ti、又はZrの酸化物、窒化物、酸化窒化物、炭化窒化酸化物などが特に好ましい。こうした素材で、上記の光透過性を有するものを選択して使用することができる。
【0106】
但し、透過性薄膜は、上記のとおり光学膜とのエッチング選択性が得られる材料とする。
【0107】
透過性薄膜の膜厚は、光学膜よりも小さく、その膜厚は5〜100nm、より好ましくは5〜50nm、更に好ましくは5〜20nmとすることが望まれる。
【0108】
透過性薄膜の膜厚は、サイドエッチングの影響を小さくするため、上記第1の態様と同様に、光学膜の膜厚の1/10以下、より好ましくは1/20以下が好ましい。
【0109】
本発明の第2の態様のフォトマスクの製造方法に用いることのできるフォトマスク基板としては、透明基板上に、転写用パターンを形成するための光学膜と、前記光学膜に対してエッチング選択性をもつ材料からなる透過性薄膜とが積層されたものを好ましく用いることができる。上述のように、透過性薄膜の膜厚は、前記光学膜の膜厚より小さく、500nmの波長光に対する前記透過性薄膜の光透過率Ttが、50(%)以上であることが好ましい。更に、500nmの波長光に対する、光学膜の光透過率Toは、50(%)以下であることが好ましい。
【0110】
第2の態様で用いるレジスト膜としては、第1の態様のレジスト膜と同様のものを用いることができる。
【0111】
次に、
図5(b)に示すように、上記レジスト膜に対して、所望のパターンの描画を行う(レジストパターン形成工程の描画)。第2の態様のパターンの描画は、第1の態様と同様である。但し、用いる描画データとしては、目標とする光学膜パターンのスペース部分の寸法(
図5(h)のCD5)に対して、若干小さめ(アンダー方向)に設定するサイジングをしておくことが好ましい。
図5(b)中、描画のためのレーザー光の照射を複数の矢印で模式的に示している。
【0112】
次に、
図5(c)に示すように、現像剤により、レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する(レジストパターン形成工程の現像)。
【0113】
次に、
図5(d)に示すように、形成したレジストパターンをマスクとして、透過性薄膜をエッチングし、透過性薄膜パターンを形成する(薄膜エッチング工程)。尚、このエッチングはウェットエッチングであることが好ましいが、ドライエッチングでもかまわない。ここではウェットエッチングとする。第2の態様において透過性薄膜パターンを形成するために適用可能なエッチング液は、第1の態様の反射性薄膜パターンを形成するためのエッチングの場合と同様である。
【0114】
透過性薄膜のエッチングにより、エッチングされた透過性薄膜に対応する部分の光学膜表面が露出する。その部分の寸法(CD)をCD3とする。
【0115】
次に、
図5(e)に示すように、透過性薄膜パターンをマスクとして、露出した光学膜をウェットエッチングする(光学膜予備エッチング工程)。ここでエッチング時間は、光学膜パターンの最終寸法(CD5)を得るために必要なエッチング時間より短い時間、すなわち、エッチングがアンダーでとまるエッチング時間とする。本明細書において、このエッチングを「予備エッチング」という。予備エッチングにより、光学膜がエッチング除去されると同時に、サイドエッチングが進むので、サイドエッチングされる部分の寸法は、CD3より大きいCD4となる。そして、このときの光学膜のエッジ(被エッチング断面)は、透過性薄膜パターンの下に位置する。つまり、光学膜予備エッチング工程終了時には、前記フォトマスクの表面側から見たとき、光学膜のエッジは、透過性薄膜パターン(透過性薄膜の領域)の内側に位置する状態となる。
【0116】
次に、
図5(f)に示すように、レジストを除去する。
【0117】
次に、
図5(g)に示すように、光学膜のエッジ位置を検出し、CD4を測定する(寸法測定工程)。寸法測定方法を、
図7に示す。
【0118】
透過性薄膜は、検査光(例えば、500nm程度の波長をもつ光)に対して、十分な透過性をもつ。そのため、透明基板の裏面(第2主面)側から検査光を入射させ、表面(第1主面)側で透過光を検知すると、透過性薄膜と透明基板の間にある、光学膜のエッジが検出可能である。この結果、光学膜のエッジの部分の寸法(CD4)を、十分な精度で測定できる。
【0119】
上記のとおり、光学膜のエッジの部分の寸法(CD4)は、目標寸法(CD5)に対して、若干エッチング不足(アンダー方向)のものとしてあるので、この後の追加エッチングによって目標寸法CD5に到達することができる。追加エッチングのために、測定されたCD4の寸法と、予め把握された、透過性薄膜のエッチングレートとにより、目標寸法CD5に到達するまでの追加エッチング時間を算定する。
【0120】
次に、
図5(h)に示すように、算定された時間分の追加エッチングを行う(光学膜追加エッチング工程)。
【0121】
次に、
図5(i)に示すように、透過性薄膜を除去する(透過性薄膜を除去する工程)。
【0122】
以上により、フォトマスクが完成する。もちろん、第1の態様と同様、この後、更に成膜やパターニングを行って、より複雑な構造のフォトマスクを製造してもよい。
【0123】
このフォトマスクは、上記目標寸法(CD5)に対し、CD精度が優れ、目標値に対して、エッチング終点の決定が正確に行われているため、CDの面内中心値の一致性が高い。
【0124】
尚、上記の第2の態様の製造方法にて、
図5(f)に示すレジストパターンの除去は、
図5(e)において、光学膜のエッチングを行う前に行っても良い。
【0125】
本発明の製造方法によるフォトマスクの用途には特に制約がない。本発明の製造方法によるフォトマスクは、表示装置製造用のフォトマスクとして、特に有利に用いることができる。例えば、本発明の製造方法によるフォトマスクは、表示装置に用いる各レイヤ(例えば、TFTアレイの、ソース・ドレイン・レイヤ、画素レイヤや、カラーフィルタのフォトスペーサレイヤなど、CD精度が特に肝要なレイヤ)の形成に、有利に用いられることができる。
【0126】
従って、本発明は、上述の本発明の製造方法により製造したフォトマスクを用いた表示装置の製造方法である。具体的には、本発明の表示装置の製造方法は、上述の本発明の第1の態様又は第2の態様の製造方法により製造したフォトマスクを用意する工程と、露光装置を用いて、前記フォトマスクに露光し、前記転写用パターンを、被転写体に転写する工程とを有する。本発明の表示装置の製造方法により、精緻なパターン寸法精度の制御が可能になったフォトマスクを用いて、表示装置を製造することができるので、製造される表示装置においても精緻なパターン寸法精度の制御が可能になる。
【0127】
例えば表示装置を製造する場合、転写用パターンのもつ線幅は1〜100μm程度であり、2〜30μmの部分(測定部)を寸法測定の対象とするようなフォトマスクの場合に、特に本発明のフォトマスクの製造方法の効果が顕著である。
【0128】
従って、本発明の製造方法により製造されるフォトマスクが備える転写用パターンを、被転写体に転写する際に用いる露光機としては、いわゆるFPD用露光装置(或いは液晶用露光装置)とされる、等倍のプロジェクション露光装置、又は、プロキシミティ露光装置とすることができる。
【0129】
このとき、露光光とは、フォトマスク使用時に露光機によって露光されるときに用いる光であって、表示装置の製造においては、i線、h線、g線を含む、波長域の光源が用いられる。また、本願において上記代表波長とは、ここに含まれるいずれかの波長光、例えば、h線とすることができる。
【0130】
上記露光装置の光学系としては、プロジェクション露光装置の場合、NA(開口数)が0.08〜0.10、コヒレンシファクタ(σ)の値が、0.5〜1.0の範囲のものを好適に使用することができる。但し、より高解像度の露光装置のニーズも生じており、例えば、NAが0.08〜0.14のものを使用することももちろん可能である。
【0131】
本発明のフォトマスク製造方法は、少なくとも1層の光学膜を、透明基板上に有する、あらゆる種類のフォトマスクの製造に適用することができる。
【0132】
例えば、光学膜を遮光膜として、バイナリマスクを製造する際に好ましく適用できる。また、光学膜を位相シフト膜とした、位相シフトマスク(いわゆるレベンソンマスク、又は、ハーフトーン型位相シフトマスク)の製造方法にももちろん適用できる。
【0133】
また、転写用パターンに、透光部、遮光部とともに、本発明の光学膜を用いた半透光部を含む、多階調フォトマスクを形成することに適用することもできる。この場合、光学膜として、露光光を位相反転せず(位相シフト量が90度以下)に一部透過する(透過率が例えば、20〜60%)膜を使用することにより、半透光部とする。形成された転写用パターンは、被転写体上に、段差をもつ立体形状のレジストパターンを形成することができ、表示装置などの製造の効率化を図ることができる。
【0134】
更に、光学膜として、露光光を位相反転せずに一部透過する(透過率が例えば、2〜50%)膜を使用し、これによる半透光部を透光部に隣接させることで、微細スリットの透過光量不足を補う、光量補助マスクに適用することも可能である。
【0135】
また、本発明は、上記製造方法に用いるための、光学膜と反射性薄膜、又は透過性薄膜が形成されたフォトマスク基板、例えばフォトマスクブランクを含む。
【0136】
第1の態様、第2の態様のいずれの場合も、寸法測定工程において寸法測定の対象とする部分(測定部)は、フォトマスク基板主表面全体の傾向を把握できるように、複数位置で行うことが好ましい。更に、この測定部は、少なくとも四角形の主表面をもつ基板の、4辺それぞれの近傍、及び/又は4つの角のそれぞれの近傍に設けることが好ましい。更には、主表面を一定面積に等分する格子を描いたとき、該格子に等分された区画のそれぞれに測定部が配置されることが好ましい。この場合、現像やエッチングの際に生じる、面内の線幅変動傾向を、的確に把握することができる。或いは、これら複数点で得られた寸法は、平均値をとるなど、適切な演算を行い、定量的分析をすることができる。