特許第6715368号(P6715368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6715368-配線回路基板 図000002
  • 特許6715368-配線回路基板 図000003
  • 特許6715368-配線回路基板 図000004
  • 特許6715368-配線回路基板 図000005
  • 特許6715368-配線回路基板 図000006
  • 特許6715368-配線回路基板 図000007
  • 特許6715368-配線回路基板 図000008
  • 特許6715368-配線回路基板 図000009
  • 特許6715368-配線回路基板 図000010
  • 特許6715368-配線回路基板 図000011
  • 特許6715368-配線回路基板 図000012
  • 特許6715368-配線回路基板 図000013
  • 特許6715368-配線回路基板 図000014
  • 特許6715368-配線回路基板 図000015
  • 特許6715368-配線回路基板 図000016
  • 特許6715368-配線回路基板 図000017
  • 特許6715368-配線回路基板 図000018
  • 特許6715368-配線回路基板 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715368
(24)【登録日】2020年6月10日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】配線回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/05 20060101AFI20200622BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20200622BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   H05K1/05 Z
   H05K1/02 L
   G11B5/60 P
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-77751(P2019-77751)
(22)【出願日】2019年4月16日
(62)【分割の表示】特願2015-248931(P2015-248931)の分割
【原出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-149563(P2019-149563A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2019年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸恵
【審査官】 黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−200934(JP,A)
【文献】 特開2011−175706(JP,A)
【文献】 特開2012−009111(JP,A)
【文献】 特開2013−054817(JP,A)
【文献】 特開2014−089797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/05
G11B 5/60
H05K 1/02
G11B 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、
前記配線層は、前記端子部を前記一般部に対し嵩上げ構造の層の段差により表面に突出させる層厚方向の段部を備え、
前記端子部は、前記金属支持層及び電気絶縁層の開口部に前記段部を含めた平面で先端が臨み、
前記段部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した前記電気絶縁層の前記開口内に突出する舌部により前記端子部の裏面が支持され、
前記端子部は、表面をスライダーの端子部に半田結合する
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、
前記端子部は、前記一般部に対し嵩上げ構造の平坦な連続により又は前記一般部に対し嵩上げ構造の段部を持って表面に突出して前記金属支持層及び電気絶縁層の開口部に先端が臨み、
前記端子部は、前記開口部で該開口部に臨む基部が前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した前記電気絶縁層の前記開口内に突出する舌部により裏面が支持され、
前記端子部は、表面をスライダーの下面の端子部に半田結合する
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項3】
基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、
前記配線層は、前記一般部に対し嵩上げ構造の層の段差により表面に突出させる層厚方向の段部を両側に有するフライングリードを備え、
前記フライングリードは、前記金属支持層及び電気絶縁層を貫通した開口部を通り、
前記フライングリードの両側の段部及び端子部の基部は、前記金属支持層及び電気絶縁層により裏面が支持され、
前記フライングリードの両側の段部及び基部の裏面と前記電気絶縁層との間にスパッタ層を設けた、
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項4】
基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、
前記配線層は、前記金属支持層に支持されている部分から前記金属支持層に支持されていない空中を通り前記金属支持層に支持されている部分に至ると共に前記一般部に対し嵩上げ構造の平坦な空中配線部を備え、
前記空中配線部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した薄肉部により裏面が支持され、
前記電気絶縁層の本体は、前記金属支持層に支持されている部分から前記金属支持層に支持されていない空中に突出して前記薄肉部を支持する、
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項5】
基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、
前記配線層は、画像処理用の基準孔を形成した基準孔形成部を前記一般部に対して平坦に形成し、
前記基準孔形成部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した舌部により支持された、
ことを特徴とする配線回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド・サスペンション用フレキシャー等に供される配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)のさらなる高密度化や信頼性向上のため、磁気ヘッドには従来からある読み書き素子の他に、フライハイト制御用ヒーター、ハード・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の機能が組み込まれ、さらにエネルギーアシスト記録等の追加機能の組み込みが検討されており、接地用端子を含めると、10端子以上となる製品が多くなった。
【0003】
また、現在のHDDにおいては、Femtoスライダー「Femto Slider」と呼ばれる幅がわずか0.7mm程度のスライダーが使用されている。この0.7mm幅の内側に配されたスライダーとサスペンションとの10個を超える端子相互を短絡させることなく結合しなければならないのが実情となっている。
【0004】
ここで、スライダーとサスペンションとの端子相互の結合は、特許文献1〜5のようにマイクロ半田ボールを使用したリフローで行われることが多い。
【0005】
図17は、マイクロ半田ボールのリフローによるフレキシャーのヘッド部側の端子結合を示し、(A)は、相対的に大きなサイズ、(B)は、相対的に小さなサイズを示す概略断面図である。
【0006】
図17(A)、(B)のように、スライダー101の端子部103とフレキシャー105の端子部107との間の谷となった部分にマイクロ半田ボール109を置き、リフローすることでフィレット111を形成して端子部103、107を半田結合している。
【0007】
ここで、端子部107の数が相対的に少ない場合、例えば読み取り用、書き込み用の素子のみに応じた4個である場合は、端子部103、107は相対的に大きくでき、用いられる半田ボール109も大きなものを用いることができ、フィレット111も十分な太さのものを形成することができる。
【0008】
しかし、多機能に対応させるために端子部107が10個などと増加して相対的に数が多い場合は、図17(B)のように、端子部103、107が小さくなって、用いられる半田ボール109も相対的に小さくなり、フィレット111も細く、十分な太さには形成することができなくなる。このため、端子部103、107間の結合不良を招く割合が増加する問題があった。
【0009】
テール部側においては、メイン・フレキシャーとの間で半田ボールによる端子部の結合が行われ、半田ボールが小さくなることによる同様の問題があった。
【0010】
位置決め用の圧電素子においては、フレキシャーの端子部と導電性ペーストでの結合が行われ、より少ない導電性ペーストでは接合不良を招く恐れがあった。
【0011】
空中配線部、つまり配線層が金属支持層の開口部を通る構造においては、空中配線部での電気絶縁層の薄層化と配線層のフラット化との両立が困難であり、剛性の安定化が難しいという問題があった。
【0012】
画像処理に用いる位置決め用の基準孔を配線層に形成する構造においては、基準孔及びその周辺部が電気絶縁層側に落ち込んで屈曲形状となり、画像処理に不要なエッジが発生するため、誤認識するという問題もあった。
【0013】
何れにしても、端子部、空中配線部、基準孔及びその周辺部等の層厚方向での位置の問題であり、かかる位置の修正を図るために特許文献6のように機械加工により解決する手法も存在する。
【0014】
図18(A)は、金属支持層を含めた折曲げで嵩上げすることにより端子相互の間隔を小さくした要部断面図、(B)は、金属支持層を含めて折曲げることにより端子相互の間隔を小さくした要部断面図である。
【0015】
図18(A)、(B)では、機械加工により端子部107を金属支持層113と共に曲げることで端子部107の位置をスライダー101の端子部103に対して変更し、近づけた例である。この例では、端子部相互間の間隔が小さくなり、十分な太さのフィレットを形成することができる。
【0016】
しかし、金属支持層113を含めた機械的な曲げ加工では、曲げ角度のばらつきが大きくなる傾向があり、フィレットの太さのばらつきとなって半田接合品質に影響するという問題を招くことになる。
【0017】
金属支持層113を含めた機械的な曲げ加工によるばらつきによる影響は、端子部の半田接合以外にも空中配線部、基準孔及びその周辺部等において品質低下を招く原因でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】US07239484B2号公報
【特許文献2】US07984545B2号公報
【特許文献3】US08213121B2号公報
【特許文献4】US08295011B2号公報
【特許文献5】US8295012B1号公報
【特許文献6】特開2005−251262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
解決しようとする問題点は、端子部等に層厚方向の位置に起因する問題があり、金属支持層を含めた機械加工により解決する手法も存在するが、加工によるばらつきがあり、品質に影響する点である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、端子部等の層厚方向の位置に起因する問題を改善し、且つ鋼性の安定化を可能とするために、基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、前記配線層は、前記端子部を前記一般部に対し嵩上げ構造の層の段差により表面に突出させる層厚方向の段部を備え、前記端子部は、前記金属支持層及び電気絶縁層の開口部に前記段部を含めた平面で先端が臨み、前記段部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した前記電気絶縁層の前記開口内に突出する舌部により前記端子部の裏面が支持され、前記端子部は、表面をスライダーの端子部に半田結合することを配線回路基板の特徴とする。
【0021】
【発明の効果】
【0022】
本発明の配線回路基板は、上記構成であるから、層厚方向の段部により金属支持層の曲げに起因する曲げ角度のばらつきが無く、且つ配線層の一般部に対して端子部の表面を突出させて端子部の層厚方向での位置の問題の改善を図ることができる。しかも、端子部のフラット面の増大と剛性の安定化とを両立できる。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ヘッド・サスペンションのフレキシャー側から見た平面図である。(実施例1)
図2】フレキシャーのヘッド部側の端子部結合を示す要部概略拡大断面図である。(実施例1)
図3】フレキシャーの製造工程を比較例との関係で概略一覧的に示す各要部断面図である。(実施例1)
図4図3の2段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。(実施例1)
図5図3の3段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。(実施例1)
図6図3の4段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。(実施例1)
図7図3の5段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。(実施例1)
図8図3の6段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。(実施例1)
図9図3の工程の詳細の一例に係り、第1工程から第3工程までの比較を示す説明図である。(実施例1)
図10図3の工程の詳細の一例に係り、第4工程、第5工程の比較を示す説明図である。(実施例1)
図11図3の工程の詳細の一例に係り、第6工程から第8工程までの比較を示す説明図である。(実施例1)
図12】タング部上面での結合構造を示し、(A)は、比較例の要部断面図、(B)は、端子部を近づけた変形例に係る実施例1の要部断面図、(C)は、スライダー高さを上げた変形例に係る実施例1の要部断面図である。(実施例1)
図13】タング部上面での結合構造を示し(A)は、比較例の要部断面図、(B)は、端子部を近づけた変形例に係る実施例1の要部断面図、(C)は、スライダー高さを上げた変形例に係る実施例1の要部断面図である。(実施例1)
図14】テール部のフライングリードを示す要部断面図である。(実施例2)
図15】空中配線部を示し、(A)は、比較例、(B)は、実施例の断面図である。(実施例3)
図16】位置決め用の基準孔を示し、(A)は、比較例、(B)は、実施例の断面図である。(実施例4)
図17】嵩上げ構造を備えないフレキシャーのヘッド部側の端子結合を示し、(A)は、大きなサイズ、(B)は、小さなサイズを示す概略断面図である。(従来例)
図18】(A)は、金属支持層を含めた折曲げで嵩上げすることにより端子相互の間隔を小さくした要部断面図、(B)は、金属支持層を含めて折曲げることにより端子相互の間隔を小さくした要部断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0025】
端子部等の層厚方向の位置に起因する問題を、金属支持層が関わらずに改善して品質向上を可能にするという目的を、基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、前記配線層は、前記端子部を前記一般部に対し層の段差を形成して表面側に突出させる層厚方向の段部を備え、前記端子部は、前記金属支持層及び電気絶縁層の開口部に先端側が臨み、前記段部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した前記電気絶縁層の舌部により支持されたことで実現した。
【0026】
また、基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、前記端子部は、前記金属支持層及び電気絶縁層の開口部に先端側が臨み、前記端子部は、前記開口部で該開口部に臨む基部が前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した前記電気絶縁層の舌部により支持されたことで実現した。
【0027】
また、基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、前記配線層は、前記端子部を前記一般部に対し層の段差を形成して表面側に突出させる層厚方向の段部を備え、前記端子部は、前記金属支持層及び電気絶縁層を貫通した開口部を通り、前記段部及び端子部の基部は、前記金属支持層及び電気絶縁層により支持されたことで実現した。
【0028】
また、基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、前記配線層は、前記一般部に対し平坦にした空中配線部を備え、前記空中配線部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した薄肉部により支持されたことで実現した。
【0029】
また、基板をなす金属支持層と、前記金属支持層の表面に積層形成された電気絶縁層と、前記電気絶縁層の表面に積層されて配索された一般部及び該一般部に結合された外部への導通接続を行なう端子部を有する配線層とを備えた配線回路基板であって、前記配線層は、画像処理用の基準孔を形成した基準孔形成部を前記一般部に対して平坦に形成し、前記基準孔形成部は、前記電気絶縁層の本体の厚みよりも薄く形成した舌部により支持されたことで実現した。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【実施例1】
【0035】
[ヘッド・サスペンションの概要]
図1は、実施例1に係り、ヘッド・サスペンションのフレキシャー側から見た平面図である。なお、以下の説明で、ヘッド・サスペンションの旋回半径方向を長手方向又は前後方向、これに直交する方向を幅方向、旋回軸心方向を厚み方向又は層厚方向若しくは上下方向とする。
【0036】
図1のように、ヘッド・サスペンション1は、ベース・プレート3と、ロード・ビーム5と、フレキシャー7とを備える他、位置決めアクチュエータ9を備えたものである。
【0037】
ベース・プレート3は、旋回駆動用のキャリッジ側に取り付けられて軸回りに旋回駆動される構成部材であり、取り付け用のボス部11を有している。ベース・プレート3は、ボス部11によりキャリッジ(図示せず)側へのボールカシメによる取り付けを可能としている。ベース・プレート3に、位置決めアクチュエータ9が一体的に取り付けられている。
【0038】
位置決めアクチュエータ9は、後述のヘッド部をベース・プレート3側に対しスウェイ方向へ変位可能とするものであり、アクチュエータ・プレート13に圧電素子15が取り付けられている。アクチュエータ・プレート13の後部は、ベース・プレート3に重ねられてレーザ・スポット溶接等により一体的に結合されている。アクチュエータ・プレート13の前端に、ロード・ビーム5がレーザ・スポット溶接等により一体的に結合されている。
【0039】
ロード・ビーム5は、剛体部21及びばね部23a、23bを一体に含み、アクチュエータ・プレート13の前端に剛体部21の基端側がばね部23a、23bを介して支持されると共に情報の書き込み,読み取りを行う先端側の可動部であるヘッド部25に負荷荷重を与えるものである。剛体部21には、前記フレキシャー7が取り付けられている。
【0040】
フレキシャー7は、本実施例において配線回路基板を構成し、フレキシャー7には、前端側にスライダー27が設けられ、このスライダー27に読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、ハード・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の機能が組み込まれ、ヘッド部25を構成している。スライダー27の読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、ハード・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の各端子部は、フレキシャー7の配線の各端子部に半田により接続されている。このフレキシャー7は、位置決めアクチュエータ9を通ってベース・プレート3側のテール部側に延設されている。
【0041】
位置決めアクチュエータ9において、フレキシャー7のアクチュエータ接続端子部29が導電性ペーストにより圧電素子15の共通電極に導通接続されている。
【0042】
したがって、ヘッド・サスペンション1は、ボス部11を介したキャリッジ(図示せず)側への取り付けによりハード・ディスク・ドライブに組み込まれ、キャリッジ側のボイス・コイル・モータにより旋回駆動され、スライダー27によりヘッド部25がハード・ディスク上を移動し、ハード・ディスクに対しヘッド部25による情報の書き込み、読み取り等を行わせることができる。
【0043】
[ヘッド部側の端子部]
図2は、実施例1に係るフレキシャーのヘッド部側の端子部結合を示す要部概略拡大断面図である。
【0044】
図2のように、フレキシャー7は、導電性薄板31の表面に、電気絶縁層としてのベース絶縁層33を積層し、このベース絶縁層33の表面に銅による所定の配線パターンで配線層35を積層し、配線層35をカバー絶縁層37で覆ったものである。配線パターンは、例えば、図1に太い線でヘッド部25側からテール部に渡るように延設されたものである。なお、図1では、フレキシャー7のテール部側は、省略している。
【0045】
導電性薄板31は、ばね性を有する薄いステンレス鋼圧延板(SST)などで形成されて基板をなす金属支持層を構成し、その厚みは、10〜25μm程度に形成されている。ベース絶縁層33は、例えばポリイミドなどにより金属支持層である導電性薄板31の表面に積層され、その厚みは、5〜10μm程度に形成されている。配線層35は、例えば銅めっきにより電気絶縁層33の表面に積層され、その厚みは、5〜15μm程度に形成されている。この配線層35は、一般部35a及び端子部35bを有している。
【0046】
配線層35の一般部35aは、図1のようにヘッド部25側からテール部に渡るよう配索され、端子部35bは、一般部35aに結合されて外部への導通接続を行なわせ、ヘッド部25の端子部においては、スライダー27に導通接続されている。
【0047】
カバー絶縁層37は、例えばポリイミドにより形成され、配線層35の一般部35aを覆っている。一般部35aは、本実施例においてカバー絶縁層37によって覆われた部分となっているが、端子部35bとの対比において端子部35bではない部分であればよい。
【0048】
端子部35bは、一般部35aの先端部に形成されている。本実施例において、端子部35bは、フライングリードとして形成され、表裏に渡って金メッキ39が施され、表裏両面に端子面が形成されている。なお、フライングリードは、本実施例において、導電性薄板31及びベース絶縁層33の開口上を通ること等により、導電性薄板31及びベース絶縁層33に支持されていない状態の端子部を意味する。また、金メッキ39は、図面において表現上相対的に厚く描かれているが、実際はごく薄くメッキされている。また、金メッキ39は、省略することもできる。
【0049】
配線層35は、所要の機能を発揮する所定機能部である端子部35bに層厚方向の嵩上げ構造41を備えている。嵩上げ構造41とは、配線層35の一部を一般部35aに対して表面側に突出させ又は同一平面とする層厚方向部分を、金属支持層である導電性薄板31が関わらずに配線層35の端子部35bが備える構造を意味する。
【0050】
本実施例の嵩上げ構造41は、突出形態であり、導電性薄板31が関わらず、ベース絶縁層33を含めず、端子部35bのみで構成されている。この嵩上げ構造41は、端子部35bを一般部35aに対して段付き状に表面側に突出させた上位に配置している。一般部35a及び端子部35b間の段付きは、図示上直角になっているが、実際は傾斜により遷移している。
【0051】
嵩上げ構造41に導電性薄板31が関わらないので嵩上げ構造41に従来のような機械加工は不要であり、嵩上げ構造41の精度を高めている。
【0052】
ここで、嵩上げ構造41に金属支持層である導電性薄板31が関わらないとは、嵩上げ構造41を備えた部分で導電性薄板31が機械加工による曲げで嵩上げ構造41の一部をなすものではないとの意味である。
【0053】
図2のように、嵩上げ構造41を備えた端子部35bの層厚方向の下側は、開口部45であり、導電性薄板31及びベース絶縁層33が存在しない。ただし、開口部45が存在せず、端子部35bの層厚方向の下側に導電性薄板31及びベース絶縁層33が存在しても、端子部35bの嵩上げ構造41に導電性薄板31の曲げ等の機械加工が関わらなければ、これも含まれる。
【0054】
嵩上げ構造41以外の部分で導電性薄板31に機械加工の部分があっても嵩上げ構造41に関わらなければよい。ベース絶縁層33等は嵩上げ構造41に関わっても機械加工を伴わないので問題ない。
【0055】
なお、配線層35の一般部35aに対して所定機能部を同一平面とする層厚方向の嵩上げ構造は、一見すると嵩上げではないように考えられる。しかし、特開2001−350272号公報に開示された感光性ポリイミドによるベース絶縁層(ベース層)を用いてエッチング時間を短縮する形態のように、端子部が導電性薄板(支持基板)側に落ち込んでスライダーから離れる傾向の構造を改善し、端子部を落ち込みから持ち上げ(嵩上げ)て位置調整し、配線層の一般部に対して端子部を同一平面となるようにすることは、嵩上げ構造としての技術的意義がある。
【0056】
同一平面形態の具体例については後述する。
【0057】
端子部35bの嵩上げ構造41によりスライダー27の端子部43と端子部35bとの間隔を小さくし、適正な溶接フィレットの形成を可能とする。
【0058】
端子部35bは、複数、例えば10個程度形成されている。端子部35bは、一般部35aに比較して幅方向に拡大して形成されている。なお、端子部35bは、一般部35aの配線幅と同一に形成することもできる。場合によっては、端子部35bを、一般部35aの配線幅よりも小さくしてもよい。
【0059】
端子部35bは、導電性薄板31及びベース絶縁層33の開口部45に臨んでいる。開口部45は、導電性薄板31からベース絶縁層33の層厚方向の中間部までの開口45a、45bと、ベース絶縁層33の層厚方向中間から表面までの開口45cとで構成されている。開口45a,45b,45cの形状や大きさは、フライングリードを実現できれば、特に限定されるものではないが、本実施例において、開口45a、45bは、同じ大きさに形成され、開口45cは、開口45bに対して段差状に突出する舌部33bにより、開口45a、45bよりも相対的に小さく形成されている。舌部33b上では、端子部35bの嵩上げが始まっている。ベース絶縁層33側の開口45bの深さは、ベース絶縁層33の厚み5〜10μm程度に対し2〜5μm程度に設定さている。但し、開口45bの深さは、設計要求により種々変更することができる。
【0060】
ヘッド部25の機能部品であるスライダー27は、例えばFemtoスライダーなどであり、且つ組み込まれた読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、HDIセンサー等に応じた例えば10個程度の端子部43群がスライダー27の前面27aにて幅方向に並んで配置されている。
【0061】
図2のように、フレキシャー7の各端子部35bとスライダー27の各端子部43とは、交差して配置され、断面においてほぼ直交するようにそれぞれ対向している。
【0062】
各端子部35bと各端子部43との間は、半田ボール47により半田溶融結合されフィレット49が形成されている。フィレット49は、端子部43の上下幅全体に及び、端子部35b上では先端から段付き部にまで至り、端子部35b、43間でフィレット49の幅、太さが十分に形成されている。
【0063】
[配線回路基板の製造方法]
図3は、フレキシャーの製造工程を比較例との関係で概略一覧的に示す要部断面図、図4図8は、それぞれ図3の2〜6段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。なお、フレキシャー7の導電性薄板31、電気絶縁層33等は、図3での製造途中において最終形状とは異なり、半製品状態であるが、説明の便宜上、フレキシャー7としての名称をそのまま用いる。
【0064】
図3において、本発明実施例の配線回路基板の製造方法では、図3の右欄1段目の、2段目の工程のように、金属支持層である導電性薄板31に電気絶縁層であるベース絶縁層33を形成する前に図2の嵩上げ構造41を形成するための図3の嵩上げ層51を導電性薄板31に付加した。
【0065】
嵩上げ層51の材質は、嵩上げができるものであれば任意であるが、ベース絶縁層33よりもエッチング時間の短い絶縁材、銅、ニッケル、クロムの何れか又はこれらの組み合わせを用いるのがよい。
【0066】
嵩上げ層51の設定範囲は、端子部35bに対応した箇所に部分的に設定しているが、端子部35bを嵩上げ構造41にできる限り特に限定されるものではない。
【0067】
図4(B)(図3の右欄2段目)のように嵩上げされた部分33aを有するベース絶縁層33に対して図5(B)(図3の右欄3段目)のように配線層35を形成する。従って、端子部35bが一般部35aに対して嵩上げされた嵩上げ構造41を形成することができる。
【0068】
図6(B)、図7(B)(図3の右欄4段目、5段目)のエッチングにより開口部45が形成される。この開口部45は、導電性薄板31及びベース絶縁層33を貫通し、嵩上げ層51を削除している。
【0069】
従って、ベース絶縁層33には、開口部45内に突出する舌部33bが残り、配線層35の一般部35aと端子部35bとの間の段部35cを支持する。舌部33bは、エッチングによりベース絶縁層33の本体の厚みよりも薄く形成されている。本実施例では、この舌部33bによる段部35cの支持により、ベース絶縁層33が嵩上げ構造41に関わっている。なお、開口部45の形成と併せて、カバー絶縁層37が形成される。
【0070】
図8(B)(図3の右欄6段目)のように端子部35bを開口部45に臨むフライングリードとし、導電性薄板31が関わらずに端子部35の嵩上げ構造41を形成することができる。
【0071】
これに対し、図3の左欄の比較例では、右欄の符号にAを付加し、重複を省略しながら説明すると、図4(A)、図5(A)(図3の左欄2段目、3段目)のように、対応する段の右欄に示す嵩上げ層51が存在しない。
【0072】
比較例では、図6(A)(図3の左欄4段目)、図7(A)(図3の左欄5段目)のようなエッチングにより開口部45Aを形成するとき、その形成時間を短縮するために、ベース絶縁層33Aの感光性ポリイミドを用い、開口部45Aを形成する位置に対応して図4(A)(図3の左欄2段目)のように部分33Aaを露光により薄く形成している。
【0073】
このため、図4(A)(図3の左欄2段目)のように薄い部分33Aaが形成されたベース絶縁層33Aに対して図5(A)(図3の左欄3段目)のように配線層35Aを形成するから、図8(A)(図3の左欄6段目)のように端子部35Abを開口部45Aに臨むフライングリードとしたとき、端子部35Abがベース絶縁層33A側に落ち込む段付き形状になる。
【0074】
ベース絶縁層33Aには、開口部45Aに突出する舌部33Abは残るが、配線層35Aの一般部35Aaと端子部35Abとの間の段部35Acを支持することはない。
【0075】
このように、本発明実施例の配線回路基板の製造方法により、導電性薄板31が関わらない嵩上げ構造41を端子部35bに備えたフレキシャー7を、機械加工を伴うことなく確実に製造することができる。
【0076】
つまり、本発明実施例の配線回路基板の製造方法により製造したフレキシャー7では、比較例に対し、端子部35bが一般部35aよりも表面側に突出した形態となり、図2のようにフレキシャー7の端子部35bとスライダー27の端子部43との相互間隔を小さくして十分な太さのフィレットを容易に形成することを実現する。
【0077】
[工程詳細]
図9図11は、図3の工程の詳細の一例を説明するものであり、図9は、第1工程から第3工程までの比較を示す説明図、図10は、第4工程、第5工程の比較を示す説明図、図11は、第6工程から第8工程までの比較を示す説明図である。図3の工程の詳細として、嵩上げ構造41を形成する他の例を採用することも可能である。
【0078】
図9図11において、実施例1の製造工程を比較例と対照しながら説明する。なお、加工途中においても、説明の便宜上、フレキシャー7としての名称をそのまま用いるのは、図3図8の場合と同様であり、左欄の比較例では、右欄の符号にAを付加して説明することも同様である。また、図9図11は、製造工程の詳細を示すものであり、構造の一部は、図2図8のものと相違する部分もあるが、実質同一である。
【0079】
本実施例の製造方法は、嵩上げ層51を形成した上で、導電性薄板31にベース絶縁層33、配線層35、カバー絶縁層37を順次フレキシャー7に倣った形状で積層し、最後に導電性薄板31をフレキシャー7に倣った形状にするものである。これにより、フレキシャー7の構造が煩雑であっても、対応することができるようになっている。
【0080】
(第1工程)
図9のように、第1工程では、実施例1、比較例共に、所定幅の帯状の導電性薄板31、31Aを用意する。
【0081】
(第2工程)
第2工程において、実施例1では、用意した導電性薄板31の該当箇所に嵩上げ層51としてスパッタ層51a及びステップ層51bを部分的に積層する。スパッタ層51aには、クロム及び銅を用い、ステップ層51bには、銅を用いている。
【0082】
具体的には、実施例1の第2工程では、まず、導電性薄板31の表面全体に二点鎖線で示すようにスパッタリングによりクロム及び銅のスパッタ層51aを形成し、次いで、レジストを形成して部分的に開口させ、その部分に銅メッキによりステップ層51bを形成する。このとき、ステップ層51bの高さで、嵩上げ層51の高さ調整を行う。次いでレジストを剥離し、エッチングを施して二点鎖線で示す部分を取り除いてスパッタ層51aを形成する。
【0083】
これに対し、比較例では、第2工程はなく、第1工程から第3工程に移る。
【0084】
(第3工程)
実施例1の第3工程において、感光性ポリイミドを塗布し、フォトマスクを用いて露光硬化させ、図1のフレキシャー7の形状に倣ったベース絶縁層33を形成しつつベース絶縁層33の一部33aを嵩上げる。
【0085】
比較例でも感光性ポリイミドを塗布し、露光硬化させるが、露光調整によりベース絶縁層33Aの部分3Aaを他の部分と比較して薄くし、後述のエッチング時間の短縮を図る。なお、実施例1の第2工程でも、嵩上げ層51により、絶縁層33の一部33aを嵩上げつつも他の部分と比較して薄くできている。
【0086】
(第4工程)
図10のように、実施例1及び比較例の第4工程において、ベース絶縁層33、33Aにクロム及び銅のスパッタ層53、53Aを形成し、その上にレジストを所定パターンで形成して銅メッキにより図1のフレキシャー7の形状に倣った配線層35、35Aを形成する。次いで、レジストを剥離し、エッチングにより不要なスパッタ層を除去する。
【0087】
(第5工程)
実施例1及び比較例の第5工程において、無電解ニッケルメッキ層55、55Aを施し、配線層35、35A上を被覆するようにカバー絶縁層37、37Aを形成し、無電解ニッケルメッキ層55、55Aの不要な部分を削除する。
【0088】
(第6工程)
図11のように、実施例1の第6工程において、導電性薄板31、嵩上げ層51のスパッタ層51a及びステップ層51b、ベース絶縁層33、及びスパッタ層53のエッチングにより開口部45を形成する。このとき、銅、クロムを同時にエッチングするエッチング液、銅、クロム、ステンレスを同時にエッチングするエッチング液などを適宜用いることができる。ベース絶縁層33のエッチングは、異なるエッチング液が用いられる。このとき、嵩上げ層51が既に除去されているのでベース絶縁層33のエッチング時間の短縮を図ることができる。かかるエッチングにより端子部35bが嵩上げ構造41により開口部45に臨む形状となる。
【0089】
比較例の第6工程においては、導電性薄板31A、ベース絶縁層33A、及びスパッタ層53Aが同様にエッチングされ、開口部45Aが形成される。この比較例では、第3工程においてベース絶縁層33Aの一部33Aaを露光により薄くしているのでエッチングによる一部33Aaの除去の短縮が図られる。しかし、端子部35Abは、嵩上げされず、開口部45Aにおいて導電性薄板31A側に落ち込む形態となる。
【0090】
(第7工程)
実施例1及び比較例の第7工程において、レジストを形成し、ニッケル下地メッキの後、金メッキにより金メッキ39、39Aを施して端子部35b、35Abの表裏を被覆し、レジストを剥離する。
【0091】
(第8工程)
実施例1及び比較例の第8工程において、レジストを形成し、導電性薄板31、31Aの外形を図1のフレキシャー7の外形に倣ってエッチングにより最終成形し、レジストを剥離して完成する。なお、端子部35b,35Abの構造には変化がなく、図11において第8工程は第7工程と同一となっている。
【0092】
このように、図9図11の第1工程〜第8工程の実施により、実施例1のフレキシャー7では、導電性薄板31の曲げ等の機械加工が係わらずに端子部35bの嵩上げ構造41を形成することができるのに対し、比較例では、導電性薄板31Aの曲げ等の機械加工が係わらずに端子部35bを形成することができるものの、端子部35Abが開口部45A内で導電性薄板31A側に落ち込む構造になる。
【0093】
[実施例1の効果]
上記のように、本発明実施例1のフレキシャー7は、導電性薄板31と、導電性薄板31の表面に積層されたベース絶縁層33と、ベース絶縁層33の表面に積層されて配索された一般部35a及びこの一般部35aに結合されて外部のスライダー27への導通接続を行なう端子部35bを有する配線層35とを備えたフレキシャー7であって、配線層35は、一般部35aに対して表面側に突出させる層厚方向の嵩上げ構造41を導電性薄板31が関わらずに端子部35bに備えた。
【0094】
このため、端子部35bに対し導電性薄板31の曲げ等の機械加工の影響が無く、端子部35bの位置精度にばらつきが無く、正確な嵩上げ構造41を得ることができる。
【0095】
結果として、フレキシャー7の各端子部35bとスライダー27の各端子部43とが小型化の伸展により小さくなって、用いられる半田ボール47を相対的に小さくしなければならないとしても、嵩上げ構造41の存在により、図2のように、フレキシャー7の各端子部35bをスライダー27の各端子部43に近づけることができる。従って、小さな半田ボール47により半田結合する場合でも、フィレット49の幅、太さを十分なものに形成することができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0096】
また、本発明実施例1のフレキシャー7の製造方法は、嵩上げ構造41を形成するための嵩上げ層51を、端子部35bを形成する位置で導電性薄板31にベース絶縁層33を形成する前に導電性薄板31に付加した。
【0097】
このため、嵩上げ層41を機械加工を伴うことなく確実かつ容易に形成することができる。また、嵩上げ層41は、ベース絶縁層33の階調性ポリイミドよりもエッチング時間の短縮が図れる材料を用いることができ、ベース絶縁層33のエッチング時間の短縮も図ることができる。
【0098】
嵩上げ層51を、銅、クロムなどで形成し、ステンレスの導電性薄板31と共にエッチングできるエッチング液を用いれば、嵩上げ層51のみのエッチング時間を省略できる。
【0099】
[変形例]
図12は、タング部上面での結合構造を示し(A)は、比較例の要部断面図、(B)は、端子部を近づけた変形例に係る実施例1の要部断面図、(C)は、スライダー高さを上げた変形例に係る実施例1の要部断面図である。なお、変形例には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にBを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0100】
図12は、タング部トップボンドのタイプである。このタイプは、端子部35Bbがスライダー27の端部ではなく、下面下に配置され、スライダー27の上方からの搭載により半田結合する形態である。
【0101】
図12(A)の比較例のフレキシャー7Bは、実施例1において説明した比較例のフレキシャー7Aと同様の製造方法であり、端子部35Bbの半田付け用の部分が落ち込んでスライダー27の下面に対する間隔が大きくなっている。
【0102】
図12(B)、(C)の変形例では、端子部35bに嵩上げ構造41を備えている。なお、図12(B)、(C)では、異なる二つの端子部35bが対称に配置されている部分を示す。
【0103】
図12(B)では、一般部35a及び端子部35bが平坦に連続するように形成され、舌部33bが端子部35bの基部を支持している。図12(C)では、端子部35bが段部35cを持って一般部35aに対して表面側に突出している。段部35cは、舌部33bに対してオフセットされ、導電性薄板31の開口縁部の上方に対応して位置している。段部35cの上方にカバー絶縁層37の突部37aが形成され、スライダー27を支持している。
【0104】
図12(B)、(C)の変形例において、端子部35bの嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、各端子部35bに対して階調性ポリイミドのベース絶縁層33を形成する際に、ベース絶縁層33に段付き部として突出する部分を嵩上げ層により形成する。
【0105】
つまり、嵩上げ層(図示せず)がベース絶縁層33の形成前の導電性薄板31上に形成され、階調性ポリイミドが塗布されてベース絶縁層33の段付き部に、エッチングにより除去される嵩上げ層がエッチング前には存在することになる。
【0106】
このとき、嵩上げ層の高さ調整によって、図12(B)、(C)の端子部35bの形状を選択的に形成することができる。
【0107】
かかる変形例では、図12(B)のように端子部35bをスライダー27の下面に、比較例よりも近づけ、或いは図12(C)のように端子部35bとスライダー27の下面との間隔は比較例と同じであるが、スライダー27の搭載高さを上げることができた。
【0108】
図13は、タング部上面での結合構造を示し(A)は、比較例の要部断面図、(B)は、端子部を近づけた変形例に係る実施例1の要部断面図、(C)は、スライダー高さを上げた変形例に係る実施例1の要部断面図である。なお、変形例には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にCを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0109】
図13は、図12同様にタング部上面での結合構造である。なお、変形例には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にCを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0110】
図13(A)の比較例のフレキシャー7Cは、カバー絶縁層37Cの穴を介して配線層35Cを部分的に露出させた端子部35Cbを有し、端子部35Cbは、対向するスライダー27の下面の端子部に接続される。かかる構造において、端子部35Cbのスライダー27下面に対する間隔を小さくするには、カバー絶縁層37Cを薄くするか金メッキ39Cを厚くすることになる。しかし、カバー絶縁層37Cは、機能を維持するために3μm程度必要であり、金メッキ39Cは、コスト増を抑制するために1μm程度にする必要がある。このため、端子部35Cbと端子部35Cbのスライダー27下面に対する間隔は、2μm程度空くことになり、これ以上の間隔の調整は困難となっている。
【0111】
図13(B)の変形例では、端子部35bに嵩上げ構造41を備えて、端子部35bとスライダー27下面との間隔を調整可能としている。
【0112】
具体的には、平面視におけるカバー絶縁層37の開口部の範囲内に嵩上げ層51を有し、ベース絶縁層33が突出形状の段付き部を有し、それに応じて端子部35bが一般部35aに対して突出してカバー絶縁層37の開口部内に入り込んでいる。端子部35bの表面に金メッキ39が施され、端子部35bをスライダー27の下面に接触させる。
【0113】
なお、図13(C)のように、嵩上げ層51を平面視におけるカバー絶縁層37の開口部の範囲内外にわたる形状とすることで、端子部35bとスライダー27の下面との間隔は比較例と同じであるが、スライダー27の搭載高さを上げることもできる。
【0114】
図13(B)、(C)の変形例において、端子部35bの嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、嵩上げ層51が導電性薄板31上に形成され、階調性ポリイミドが塗布されてベース絶縁層33を介して端子部35bの嵩上げ構造41を形成することができる。
【0115】
なお、図13(B)のように嵩上げ層51を設ける構造は、図2の端子部35bをフライングリードではなく、パッドタイプにする場合に適用することが可能である。パッドタイプの端子部35bは、図13(B)のように導電性薄板31及びベース絶縁層33に端子部35bが支持されている端子部を意味する。かかるパッドタイプの端子部35bは、例えば、実施例1において図10の第5工程まで行って嵩上げ層51を形成した後、図11の第6工程を行わずに第7工程を行って金メッキ39を施すこと等で実現できる。
【0116】
[その他]
なお、配線回路基板としては、後述の嵩上げ構造を適用できるものであればフレキシャー7に限らず、その他の電気部品にも適用することができる。他の実施例も同様である。
【0117】
嵩上げ構造は、他の所定機能部に備えることも可能であり、例えば、フレキシャー7の端子部としてのアクチュエータ接続端子部29に嵩上げ構造を備え、このアクチュエータ接続端子部29に、例えば銀ペーストにより圧電素子15をペースト結合し、より少ない銀ペーストで結合不良を抑制しながらペースト結合することができる。
【実施例2】
【0118】
図14は、実施例2に係り、テール部のフライングリードを示す要部断面図である。なお、実施例1の符号を用いて説明し、重複した説明は省略する。
【0119】
図14のように、テール部7aの配線層35は導電性薄板31及びベース絶縁層33を貫通した開口部57を通るフライングリード59を有している。なお、フライングリードは、実施例1と同様、導電性薄板31及びベース絶縁層33の開口部57上を通ることにより、導電性薄板31及びベース絶縁層33に支持されていない状態の端子部を意味する。このフライングリード59は、表裏に金メッキ61が施され、また嵩上げ構造41を備えている。
【0120】
図14において、フライングリード59の嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、嵩上げ層(図示せず。)がベース絶縁層33形成前の導電性薄板31上に形成され、階調性ポリイミドが塗布硬化され、その後エッチングなどして、開口部57に嵩上げ構造41のフライングリード59が形成される。
【0121】
従って、本実施例では、メインフレキシャーの端子部に対するフライングリード59の高さ調節ができ、適切な半田結合を行わせることができる。
【実施例3】
【0122】
図15は、実施例3に係り、空中配線部を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の断面図である。なお、実施例3には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にDを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0123】
図15(A)のように、比較例の空中配線部67Dは、空中配線部67Dにおいてベース絶縁層33Dの表面を露光により削っており、空中配線部67Dが導電性薄板31D側に落ち込んでいる。なお、本実施例において、空中配線部は、ベース絶縁層33、配線層35、及びカバー絶縁層37の導電性薄板31に支持されていない部分であり、且つ端子部以外の部分を意味する。
【0124】
図15(B)の実施例3のフレキシャー7では、所定機能部として空中配線部67が嵩上げ構造41を備えている。本実施例の空中配線部67は、ベース絶縁層33の薄肉部33cが全体的に支持し、薄肉部33cの平坦な表面に配線層35が積層され、その平坦な表面にカバー絶縁層37が積層されている。
【0125】
図15(B)において、空中配線部67が嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、嵩上げ層(図示せず。)がベース絶縁層33形成前の導電性薄板31上に付加設定され、次いで階調性ポリイミドが塗布硬化によりベース絶縁層33が形成され、導電性薄板31、ベース絶縁層33のエッチングにより嵩上げ層を除去して薄肉部33cを形成する。こうすることで空中配線部67を一般部35aに対して平坦にする嵩上げ構造41を空中配線部67が備える。
【0126】
このように空中配線部67を一般部35aに対して平坦な構造にすることで、フレキシャー7の剛性を安定させることができる。
【実施例4】
【0127】
図16は、実施例4に係る位置決め用の基準孔を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の断面図である。なお、実施例4には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にEを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0128】
近年、スライダーの位置決めは、高精度化のために一般に画像処理が用いられている。この画像処理の基準とする孔として、従来はステンレスの導電性薄板の基準孔を使用していた。しかし、端子部とステンレスの導電性薄板との位置誤差を招くという理由で配線層に形成した基準孔を用いるようになっている。
【0129】
図16(A)のフレキシャー7Eでは、配線層35Eが画像処理用の基準孔71Eを備え、この基準孔71Eの形成のためにベース絶縁層33Eの表面を露光により削った上で配線層35Eを形成し、配線層35Eに基準孔71Eとなる孔を形成する前又は後にベース絶縁層33Eの裏面をエッチングにより削っている。この結果、基準孔71Eを形成した基準孔形成部73Eが導電性薄板31側に落ち込んでいる。この落ち込みにより、図16(A)のP,Q、Rの各箇所において基準孔形成部73Eの表裏に複数の不要なエッジが発生する。
【0130】
この複数のエッジにより画像処理時にエッジが認識されてしまい、誤認識の原因となっていた。
【0131】
図16(B)の実施例4のフレキシャー7では、配線層35が有する画像処理用の基準孔71を形成した所定機能部としての基準孔形成部73が嵩上げ構造41を備えた。
【0132】
図16(B)において、基準孔形成部73が嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、嵩上げ層(図示せず。)がベース絶縁層33形成前の導電性薄板31上に付加設定され、次いで階調性ポリイミドが塗布硬化によりベース絶縁層33が形成される。その後、表面の露光、裏面のエッチングにより、一般部35aに対して平坦にする嵩上げ構造41の基準孔形成部73が形成される。
【0133】
従って、図16(A)、(B)を比較しても明らかなように、嵩上げ構造41の基準孔形成部73では、基準孔71の周囲に不要なエッジが発生せず、画像処理時の誤認識を抑制することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 ヘッド・サスペンション
7 フレキシャー(配線回路基板)
27 スライダー
31 導電性薄板(金属支持層)
33 ベース絶縁層(電気絶縁層)
35 配線層
35a 一般部
35b 端子部(所定機能部)
41 嵩上げ構造
51 嵩上げ層
59、67 空中配線部(所定機能部)
71 基準孔
73 基準孔形成部(所定機能部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18