【実施例1】
【0035】
[ヘッド・サスペンションの概要]
図1は、実施例1に係り、ヘッド・サスペンションのフレキシャー側から見た平面図である。なお、以下の説明で、ヘッド・サスペンションの旋回半径方向を長手方向又は前後方向、これに直交する方向を幅方向、旋回軸心方向を厚み方向又は層厚方向若しくは上下方向とする。
【0036】
図1のように、ヘッド・サスペンション1は、ベース・プレート3と、ロード・ビーム5と、フレキシャー7とを備える他、位置決めアクチュエータ9を備えたものである。
【0037】
ベース・プレート3は、旋回駆動用のキャリッジ側に取り付けられて軸回りに旋回駆動される構成部材であり、取り付け用のボス部11を有している。ベース・プレート3は、ボス部11によりキャリッジ(図示せず)側へのボールカシメによる取り付けを可能としている。ベース・プレート3に、位置決めアクチュエータ9が一体的に取り付けられている。
【0038】
位置決めアクチュエータ9は、後述のヘッド部をベース・プレート3側に対しスウェイ方向へ変位可能とするものであり、アクチュエータ・プレート13に圧電素子15が取り付けられている。アクチュエータ・プレート13の後部は、ベース・プレート3に重ねられてレーザ・スポット溶接等により一体的に結合されている。アクチュエータ・プレート13の前端に、ロード・ビーム5がレーザ・スポット溶接等により一体的に結合されている。
【0039】
ロード・ビーム5は、剛体部21及びばね部23a、23bを一体に含み、アクチュエータ・プレート13の前端に剛体部21の基端側がばね部23a、23bを介して支持されると共に情報の書き込み,読み取りを行う先端側の可動部であるヘッド部25に負荷荷重を与えるものである。剛体部21には、前記フレキシャー7が取り付けられている。
【0040】
フレキシャー7は、本実施例において配線回路基板を構成し、フレキシャー7には、前端側にスライダー27が設けられ、このスライダー27に読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、ハード・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の機能が組み込まれ、ヘッド部25を構成している。スライダー27の読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、ハード・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の各端子部は、フレキシャー7の配線の各端子部に半田により接続されている。このフレキシャー7は、位置決めアクチュエータ9を通ってベース・プレート3側のテール部側に延設されている。
【0041】
位置決めアクチュエータ9において、フレキシャー7のアクチュエータ接続端子部29が導電性ペーストにより圧電素子15の共通電極に導通接続されている。
【0042】
したがって、ヘッド・サスペンション1は、ボス部11を介したキャリッジ(図示せず)側への取り付けによりハード・ディスク・ドライブに組み込まれ、キャリッジ側のボイス・コイル・モータにより旋回駆動され、スライダー27によりヘッド部25がハード・ディスク上を移動し、ハード・ディスクに対しヘッド部25による情報の書き込み、読み取り等を行わせることができる。
【0043】
[ヘッド部側の端子部]
図2は、実施例1に係るフレキシャーのヘッド部側の端子部結合を示す要部概略拡大断面図である。
【0044】
図2のように、フレキシャー7は、導電性薄板31の表面に、電気絶縁層としてのベース絶縁層33を積層し、このベース絶縁層33の表面に銅による所定の配線パターンで配線層35を積層し、配線層35をカバー絶縁層37で覆ったものである。配線パターンは、例えば、
図1に太い線でヘッド部25側からテール部に渡るように延設されたものである。なお、
図1では、フレキシャー7のテール部側は、省略している。
【0045】
導電性薄板31は、ばね性を有する薄いステンレス鋼圧延板(SST)などで形成されて基板をなす金属支持層を構成し、その厚みは、10〜25μm程度に形成されている。ベース絶縁層33は、例えばポリイミドなどにより金属支持層である導電性薄板31の表面に積層され、その厚みは、5〜10μm程度に形成されている。配線層35は、例えば銅めっきにより電気絶縁層33の表面に積層され、その厚みは、5〜15μm程度に形成されている。この配線層35は、一般部35a及び端子部35bを有している。
【0046】
配線層35の一般部35aは、
図1のようにヘッド部25側からテール部に渡るよう配索され、端子部35bは、一般部35aに結合されて外部への導通接続を行なわせ、ヘッド部25の端子部においては、スライダー27に導通接続されている。
【0047】
カバー絶縁層37は、例えばポリイミドにより形成され、配線層35の一般部35aを覆っている。一般部35aは、本実施例においてカバー絶縁層37によって覆われた部分となっているが、端子部35bとの対比において端子部35bではない部分であればよい。
【0048】
端子部35bは、一般部35aの先端部に形成されている。本実施例において、端子部35bは、フライングリードとして形成され、表裏に渡って金メッキ39が施され、表裏両面に端子面が形成されている。なお、フライングリードは、本実施例において、導電性薄板31及びベース絶縁層33の開口上を通ること等により、導電性薄板31及びベース絶縁層33に支持されていない状態の端子部を意味する。また、金メッキ39は、図面において表現上相対的に厚く描かれているが、実際はごく薄くメッキされている。また、金メッキ39は、省略することもできる。
【0049】
配線層35は、所要の機能を発揮する所定機能部である端子部35bに層厚方向の嵩上げ構造41を備えている。嵩上げ構造41とは、配線層35の一部を一般部35aに対して表面側に突出させ又は同一平面とする層厚方向部分を、金属支持層である導電性薄板31が関わらずに配線層35の端子部35bが備える構造を意味する。
【0050】
本実施例の嵩上げ構造41は、突出形態であり、導電性薄板31が関わらず、ベース絶縁層33を含めず、端子部35bのみで構成されている。この嵩上げ構造41は、端子部35bを一般部35aに対して段付き状に表面側に突出させた上位に配置している。一般部35a及び端子部35b間の段付きは、図示上直角になっているが、実際は傾斜により遷移している。
【0051】
嵩上げ構造41に導電性薄板31が関わらないので嵩上げ構造41に従来のような機械加工は不要であり、嵩上げ構造41の精度を高めている。
【0052】
ここで、嵩上げ構造41に金属支持層である導電性薄板31が関わらないとは、嵩上げ構造41を備えた部分で導電性薄板31が機械加工による曲げで嵩上げ構造41の一部をなすものではないとの意味である。
【0053】
図2のように、嵩上げ構造41を備えた端子部35bの層厚方向の下側は、開口部45であり、導電性薄板31及びベース絶縁層33が存在しない。ただし、開口部45が存在せず、端子部35bの層厚方向の下側に導電性薄板31及びベース絶縁層33が存在しても、端子部35bの嵩上げ構造41に導電性薄板31の曲げ等の機械加工が関わらなければ、これも含まれる。
【0054】
嵩上げ構造41以外の部分で導電性薄板31に機械加工の部分があっても嵩上げ構造41に関わらなければよい。ベース絶縁層33等は嵩上げ構造41に関わっても機械加工を伴わないので問題ない。
【0055】
なお、配線層35の一般部35aに対して所定機能部を同一平面とする層厚方向の嵩上げ構造は、一見すると嵩上げではないように考えられる。しかし、特開2001−350272号公報に開示された感光性ポリイミドによるベース絶縁層(ベース層)を用いてエッチング時間を短縮する形態のように、端子部が導電性薄板(支持基板)側に落ち込んでスライダーから離れる傾向の構造を改善し、端子部を落ち込みから持ち上げ(嵩上げ)て位置調整し、配線層の一般部に対して端子部を同一平面となるようにすることは、嵩上げ構造としての技術的意義がある。
【0056】
同一平面形態の具体例については後述する。
【0057】
端子部35bの嵩上げ構造41によりスライダー27の端子部43と端子部35bとの間隔を小さくし、適正な溶接フィレットの形成を可能とする。
【0058】
端子部35bは、複数、例えば10個程度形成されている。端子部35bは、一般部35aに比較して幅方向に拡大して形成されている。なお、端子部35bは、一般部35aの配線幅と同一に形成することもできる。場合によっては、端子部35bを、一般部35aの配線幅よりも小さくしてもよい。
【0059】
端子部35bは、導電性薄板31及びベース絶縁層33の開口部45に臨んでいる。開口部45は、導電性薄板31からベース絶縁層33の層厚方向の中間部までの開口45a、45bと、ベース絶縁層33の層厚方向中間から表面までの開口45cとで構成されている。開口45a,45b,45cの形状や大きさは、フライングリードを実現できれば、特に限定されるものではないが、本実施例において、開口45a、45bは、同じ大きさに形成され、開口45cは、開口45bに対して段差状に突出する舌部33bにより、開口45a、45bよりも相対的に小さく形成されている。舌部33b上では、端子部35bの嵩上げが始まっている。ベース絶縁層33側の開口45bの深さは、ベース絶縁層33の厚み5〜10μm程度に対し2〜5μm程度に設定さている。但し、開口45bの深さは、設計要求により種々変更することができる。
【0060】
ヘッド部25の機能部品であるスライダー27は、例えばFemtoスライダーなどであり、且つ組み込まれた読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、HDIセンサー等に応じた例えば10個程度の端子部43群がスライダー27の前面27aにて幅方向に並んで配置されている。
【0061】
図2のように、フレキシャー7の各端子部35bとスライダー27の各端子部43とは、交差して配置され、断面においてほぼ直交するようにそれぞれ対向している。
【0062】
各端子部35bと各端子部43との間は、半田ボール47により半田溶融結合されフィレット49が形成されている。フィレット49は、端子部43の上下幅全体に及び、端子部35b上では先端から段付き部にまで至り、端子部35b、43間でフィレット49の幅、太さが十分に形成されている。
【0063】
[配線回路基板の製造方法]
図3は、フレキシャーの製造工程を比較例との関係で概略一覧的に示す要部断面図、
図4〜
図8は、それぞれ
図3の2〜6段目の比較を示し(A)は、比較例、(B)は、実施例の拡大断面図である。なお、フレキシャー7の導電性薄板31、電気絶縁層33等は、
図3での製造途中において最終形状とは異なり、半製品状態であるが、説明の便宜上、フレキシャー7としての名称をそのまま用いる。
【0064】
図3において、本発明実施例の配線回路基板の製造方法では、
図3の右欄1段目の、2段目の工程のように、金属支持層である導電性薄板31に電気絶縁層であるベース絶縁層33を形成する前に
図2の嵩上げ構造41を形成するための
図3の嵩上げ層51を導電性薄板31に付加した。
【0065】
嵩上げ層51の材質は、嵩上げができるものであれば任意であるが、ベース絶縁層33よりもエッチング時間の短い絶縁材、銅、ニッケル、クロムの何れか又はこれらの組み合わせを用いるのがよい。
【0066】
嵩上げ層51の設定範囲は、端子部35bに対応した箇所に部分的に設定しているが、端子部35bを嵩上げ構造41にできる限り特に限定されるものではない。
【0067】
図4(B)(
図3の右欄2段目)のように嵩上げされた部分33aを有するベース絶縁層33に対して
図5(B)(
図3の右欄3段目)のように配線層35を形成する。従って、端子部35bが一般部35aに対して嵩上げされた嵩上げ構造41を形成することができる。
【0068】
図6(B)、
図7(B)(
図3の右欄4段目、5段目)のエッチングにより開口部45が形成される。この開口部45は、導電性薄板31及びベース絶縁層33を貫通し、嵩上げ層51を削除している。
【0069】
従って、ベース絶縁層33には、開口部45内に突出する舌部33bが残り、配線層35の一般部35aと端子部35bとの間の段部35cを支持する。舌部33bは、エッチングによりベース絶縁層33の本体の厚みよりも薄く形成されている。本実施例では、この舌部33bによる段部35cの支持により、ベース絶縁層33が嵩上げ構造41に関わっている。なお、開口部45の形成と併せて、カバー絶縁層37が形成される。
【0070】
図8(B)(
図3の右欄6段目)のように端子部35bを開口部45に臨むフライングリードとし、導電性薄板31が関わらずに端子部35の嵩上げ構造41を形成することができる。
【0071】
これに対し、
図3の左欄の比較例では、右欄の符号にAを付加し、重複を省略しながら説明すると、
図4(A)、
図5(A)(
図3の左欄2段目、3段目)のように、対応する段の右欄に示す嵩上げ層51が存在しない。
【0072】
比較例では、
図6(A)(
図3の左欄4段目)、
図7(A)(
図3の左欄5段目)のようなエッチングにより開口部45Aを形成するとき、その形成時間を短縮するために、ベース絶縁層33Aの感光性ポリイミドを用い、開口部45Aを形成する位置に対応して
図4(A)(
図3の左欄2段目)のように部分33Aaを露光により薄く形成している。
【0073】
このため、
図4(A)(
図3の左欄2段目)のように薄い部分33Aaが形成されたベース絶縁層33Aに対して
図5(A)(
図3の左欄3段目)のように配線層35Aを形成するから、
図8(A)(
図3の左欄6段目)のように端子部35Abを開口部45Aに臨むフライングリードとしたとき、端子部35Abがベース絶縁層33A側に落ち込む段付き形状になる。
【0074】
ベース絶縁層33Aには、開口部45Aに突出する舌部33Abは残るが、配線層35Aの一般部35Aaと端子部35Abとの間の段部35Acを支持することはない。
【0075】
このように、本発明実施例の配線回路基板の製造方法により、導電性薄板31が関わらない嵩上げ構造41を端子部35bに備えたフレキシャー7を、機械加工を伴うことなく確実に製造することができる。
【0076】
つまり、本発明実施例の配線回路基板の製造方法により製造したフレキシャー7では、比較例に対し、端子部35bが一般部35aよりも表面側に突出した形態となり、
図2のようにフレキシャー7の端子部35bとスライダー27の端子部43との相互間隔を小さくして十分な太さのフィレットを容易に形成することを実現する。
【0077】
[工程詳細]
図9〜
図11は、
図3の工程の詳細の一例を説明するものであり、
図9は、第1工程から第3工程までの比較を示す説明図、
図10は、第4工程、第5工程の比較を示す説明図、
図11は、第6工程から第8工程までの比較を示す説明図である。
図3の工程の詳細として、嵩上げ構造41を形成する他の例を採用することも可能である。
【0078】
図9〜
図11において、実施例1の製造工程を比較例と対照しながら説明する。なお、加工途中においても、説明の便宜上、フレキシャー7としての名称をそのまま用いるのは、
図3〜
図8の場合と同様であり、左欄の比較例では、右欄の符号にAを付加して説明することも同様である。また、
図9〜
図11は、製造工程の詳細を示すものであり、構造の一部は、
図2〜
図8のものと相違する部分もあるが、実質同一である。
【0079】
本実施例の製造方法は、嵩上げ層51を形成した上で、導電性薄板31にベース絶縁層33、配線層35、カバー絶縁層37を順次フレキシャー7に倣った形状で積層し、最後に導電性薄板31をフレキシャー7に倣った形状にするものである。これにより、フレキシャー7の構造が煩雑であっても、対応することができるようになっている。
【0080】
(第1工程)
図9のように、第1工程では、実施例1、比較例共に、所定幅の帯状の導電性薄板31、31Aを用意する。
【0081】
(第2工程)
第2工程において、実施例1では、用意した導電性薄板31の該当箇所に嵩上げ層51としてスパッタ層51a及びステップ層51bを部分的に積層する。スパッタ層51aには、クロム及び銅を用い、ステップ層51bには、銅を用いている。
【0082】
具体的には、実施例1の第2工程では、まず、導電性薄板31の表面全体に二点鎖線で示すようにスパッタリングによりクロム及び銅のスパッタ層51aを形成し、次いで、レジストを形成して部分的に開口させ、その部分に銅メッキによりステップ層51bを形成する。このとき、ステップ層51bの高さで、嵩上げ層51の高さ調整を行う。次いでレジストを剥離し、エッチングを施して二点鎖線で示す部分を取り除いてスパッタ層51aを形成する。
【0083】
これに対し、比較例では、第2工程はなく、第1工程から第3工程に移る。
【0084】
(第3工程)
実施例1の第3工程において、感光性ポリイミドを塗布し、フォトマスクを用いて露光硬化させ、
図1のフレキシャー7の形状に倣ったベース絶縁層33を形成しつつベース絶縁層33の一部33aを嵩上げる。
【0085】
比較例でも感光性ポリイミドを塗布し、露光硬化させるが、露光調整によりベース絶縁層33Aの部分3Aaを他の部分と比較して薄くし、後述のエッチング時間の短縮を図る。なお、実施例1の第2工程でも、嵩上げ層51により、絶縁層33の一部33aを嵩上げつつも他の部分と比較して薄くできている。
【0086】
(第4工程)
図10のように、実施例1及び比較例の第4工程において、ベース絶縁層33、33Aにクロム及び銅のスパッタ層53、53Aを形成し、その上にレジストを所定パターンで形成して銅メッキにより
図1のフレキシャー7の形状に倣った配線層35、35Aを形成する。次いで、レジストを剥離し、エッチングにより不要なスパッタ層を除去する。
【0087】
(第5工程)
実施例1及び比較例の第5工程において、無電解ニッケルメッキ層55、55Aを施し、配線層35、35A上を被覆するようにカバー絶縁層37、37Aを形成し、無電解ニッケルメッキ層55、55Aの不要な部分を削除する。
【0088】
(第6工程)
図11のように、実施例1の第6工程において、導電性薄板31、嵩上げ層51のスパッタ層51a及びステップ層51b、ベース絶縁層33、及びスパッタ層53のエッチングにより開口部45を形成する。このとき、銅、クロムを同時にエッチングするエッチング液、銅、クロム、ステンレスを同時にエッチングするエッチング液などを適宜用いることができる。ベース絶縁層33のエッチングは、異なるエッチング液が用いられる。このとき、嵩上げ層51が既に除去されているのでベース絶縁層33のエッチング時間の短縮を図ることができる。かかるエッチングにより端子部35bが嵩上げ構造41により開口部45に臨む形状となる。
【0089】
比較例の第6工程においては、導電性薄板31A、ベース絶縁層33A、及びスパッタ層53Aが同様にエッチングされ、開口部45Aが形成される。この比較例では、第3工程においてベース絶縁層33Aの一部33Aaを露光により薄くしているのでエッチングによる一部33Aaの除去の短縮が図られる。しかし、端子部35Abは、嵩上げされず、開口部45Aにおいて導電性薄板31A側に落ち込む形態となる。
【0090】
(第7工程)
実施例1及び比較例の第7工程において、レジストを形成し、ニッケル下地メッキの後、金メッキにより金メッキ39、39Aを施して端子部35b、35Abの表裏を被覆し、レジストを剥離する。
【0091】
(第8工程)
実施例1及び比較例の第8工程において、レジストを形成し、導電性薄板31、31Aの外形を
図1のフレキシャー7の外形に倣ってエッチングにより最終成形し、レジストを剥離して完成する。なお、端子部35b,35Abの構造には変化がなく、
図11において第8工程は第7工程と同一となっている。
【0092】
このように、
図9〜
図11の第1工程〜第8工程の実施により、実施例1のフレキシャー7では、導電性薄板31の曲げ等の機械加工が係わらずに端子部35bの嵩上げ構造41を形成することができるのに対し、比較例では、導電性薄板31Aの曲げ等の機械加工が係わらずに端子部35bを形成することができるものの、端子部35Abが開口部45A内で導電性薄板31A側に落ち込む構造になる。
【0093】
[実施例1の効果]
上記のように、本発明実施例1のフレキシャー7は、導電性薄板31と、導電性薄板31の表面に積層されたベース絶縁層33と、ベース絶縁層33の表面に積層されて配索された一般部35a及びこの一般部35aに結合されて外部のスライダー27への導通接続を行なう端子部35bを有する配線層35とを備えたフレキシャー7であって、配線層35は、一般部35aに対して表面側に突出させる層厚方向の嵩上げ構造41を導電性薄板31が関わらずに端子部35bに備えた。
【0094】
このため、端子部35bに対し導電性薄板31の曲げ等の機械加工の影響が無く、端子部35bの位置精度にばらつきが無く、正確な嵩上げ構造41を得ることができる。
【0095】
結果として、フレキシャー7の各端子部35bとスライダー27の各端子部43とが小型化の伸展により小さくなって、用いられる半田ボール47を相対的に小さくしなければならないとしても、嵩上げ構造41の存在により、
図2のように、フレキシャー7の各端子部35bをスライダー27の各端子部43に近づけることができる。従って、小さな半田ボール47により半田結合する場合でも、フィレット49の幅、太さを十分なものに形成することができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0096】
また、本発明実施例1のフレキシャー7の製造方法は、嵩上げ構造41を形成するための嵩上げ層51を、端子部35bを形成する位置で導電性薄板31にベース絶縁層33を形成する前に導電性薄板31に付加した。
【0097】
このため、嵩上げ層41を機械加工を伴うことなく確実かつ容易に形成することができる。また、嵩上げ層41は、ベース絶縁層33の階調性ポリイミドよりもエッチング時間の短縮が図れる材料を用いることができ、ベース絶縁層33のエッチング時間の短縮も図ることができる。
【0098】
嵩上げ層51を、銅、クロムなどで形成し、ステンレスの導電性薄板31と共にエッチングできるエッチング液を用いれば、嵩上げ層51のみのエッチング時間を省略できる。
【0099】
[変形例]
図12は、タング部上面での結合構造を示し(A)は、比較例の要部断面図、(B)は、端子部を近づけた変形例に係る実施例1の要部断面図、(C)は、スライダー高さを上げた変形例に係る実施例1の要部断面図である。なお、変形例には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にBを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0100】
図12は、タング部トップボンドのタイプである。このタイプは、端子部35Bbがスライダー27の端部ではなく、下面下に配置され、スライダー27の上方からの搭載により半田結合する形態である。
【0101】
図12(A)の比較例のフレキシャー7Bは、実施例1において説明した比較例のフレキシャー7Aと同様の製造方法であり、端子部35Bbの半田付け用の部分が落ち込んでスライダー27の下面に対する間隔が大きくなっている。
【0102】
図12(B)、(C)の変形例では、端子部35bに嵩上げ構造41を備えている。なお、
図12(B)、(C)では、異なる二つの端子部35bが対称に配置されている部分を示す。
【0103】
図12(B)では、一般部35a及び端子部35bが平坦に連続するように形成され、舌部33bが端子部35bの基部を支持している。
図12(C)では、端子部35bが段部35cを持って一般部35aに対して表面側に突出している。段部35cは、舌部33bに対してオフセットされ、導電性薄板31の開口縁部の上方に対応して位置している。段部35cの上方にカバー絶縁層37の突部37aが形成され、スライダー27を支持している。
【0104】
図12(B)、(C)の変形例において、端子部35bの嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、各端子部35bに対して階調性ポリイミドのベース絶縁層33を形成する際に、ベース絶縁層33に段付き部として突出する部分を嵩上げ層により形成する。
【0105】
つまり、嵩上げ層(図示せず)がベース絶縁層33の形成前の導電性薄板31上に形成され、階調性ポリイミドが塗布されてベース絶縁層33の段付き部に、エッチングにより除去される嵩上げ層がエッチング前には存在することになる。
【0106】
このとき、嵩上げ層の高さ調整によって、
図12(B)、(C)の端子部35bの形状を選択的に形成することができる。
【0107】
かかる変形例では、
図12(B)のように端子部35bをスライダー27の下面に、比較例よりも近づけ、或いは
図12(C)のように端子部35bとスライダー27の下面との間隔は比較例と同じであるが、スライダー27の搭載高さを上げることができた。
【0108】
図13は、タング部上面での結合構造を示し(A)は、比較例の要部断面図、(B)は、端子部を近づけた変形例に係る実施例1の要部断面図、(C)は、スライダー高さを上げた変形例に係る実施例1の要部断面図である。なお、変形例には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にCを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0109】
図13は、
図12同様にタング部上面での結合構造である。なお、変形例には実施例1の符号を用い、比較例には実施例1の構成部分と対応する構成部分に同符号又は同符号にCを付して説明し、重複した説明は省略する。
【0110】
図13(A)の比較例のフレキシャー7Cは、カバー絶縁層37Cの穴を介して配線層35Cを部分的に露出させた端子部35Cbを有し、端子部35Cbは、対向するスライダー27の下面の端子部に接続される。かかる構造において、端子部35Cbのスライダー27下面に対する間隔を小さくするには、カバー絶縁層37Cを薄くするか金メッキ39Cを厚くすることになる。しかし、カバー絶縁層37Cは、機能を維持するために3μm程度必要であり、金メッキ39Cは、コスト増を抑制するために1μm程度にする必要がある。このため、端子部35Cbと端子部35Cbのスライダー27下面に対する間隔は、2μm程度空くことになり、これ以上の間隔の調整は困難となっている。
【0111】
図13(B)の変形例では、端子部35bに嵩上げ構造41を備えて、端子部35bとスライダー27下面との間隔を調整可能としている。
【0112】
具体的には、平面視におけるカバー絶縁層37の開口部の範囲内に嵩上げ層51を有し、ベース絶縁層33が突出形状の段付き部を有し、それに応じて端子部35bが一般部35aに対して突出してカバー絶縁層37の開口部内に入り込んでいる。端子部35bの表面に金メッキ39が施され、端子部35bをスライダー27の下面に接触させる。
【0113】
なお、
図13(C)のように、嵩上げ層51を平面視におけるカバー絶縁層37の開口部の範囲内外にわたる形状とすることで、端子部35bとスライダー27の下面との間隔は比較例と同じであるが、スライダー27の搭載高さを上げることもできる。
【0114】
図13(B)、(C)の変形例において、端子部35bの嵩上げ構造41を備えるための製造方法では、上記同様の工程が実行され、嵩上げ層51が導電性薄板31上に形成され、階調性ポリイミドが塗布されてベース絶縁層33を介して端子部35bの嵩上げ構造41を形成することができる。
【0115】
なお、
図13(B)のように嵩上げ層51を設ける構造は、
図2の端子部35bをフライングリードではなく、パッドタイプにする場合に適用することが可能である。パッドタイプの端子部35bは、
図13(B)のように導電性薄板31及びベース絶縁層33に端子部35bが支持されている端子部を意味する。かかるパッドタイプの端子部35bは、例えば、実施例1において
図10の第5工程まで行って嵩上げ層51を形成した後、
図11の第6工程を行わずに第7工程を行って金メッキ39を施すこと等で実現できる。
【0116】
[その他]
なお、配線回路基板としては、後述の嵩上げ構造を適用できるものであればフレキシャー7に限らず、その他の電気部品にも適用することができる。他の実施例も同様である。
【0117】
嵩上げ構造は、他の所定機能部に備えることも可能であり、例えば、フレキシャー7の端子部としてのアクチュエータ接続端子部29に嵩上げ構造を備え、このアクチュエータ接続端子部29に、例えば銀ペーストにより圧電素子15をペースト結合し、より少ない銀ペーストで結合不良を抑制しながらペースト結合することができる。