【実施例】
【0012】
図1(A)は、本実施例に係る信号伝送用フラットケーブル(以下、フラットケーブルという)10を示す。フラットケーブル10は、
図1(B)、(C)に示したように、両端に電子回路基板に接続される同じ構成のコネクタ部11を備えている。
【0013】
フラットケーブル10の外表面は、後述するように内側が金属層、外側が絶縁プラスチック層からなる保護遮蔽層20によりケーブル幅方向の一端20aを他端に重ね合わせる形で包囲されている。保護遮蔽層20の金属層の一部17aは、フラットケーブル10の外表面にケーブル長手方向に複数個所(3か所)で露出し、これら露出金属層17aは、後述するように、グラウンド層として機能し、フラットケーブル10は多点グラウンド構造となっている。
【0014】
本明細書において、ケーブル長手方向とは、フラットケーブル10が長く延びる
図1(A)においてDで示した方向、ケーブル幅方向とは、Dと直交するWで示した方向、ケーブル厚さ方向は、D、Wと直交する
図2(A)においてHで示した方向である。
【0015】
フラットケーブル10は多芯同軸ケーブルとして構成されており、
図2(A)、(B)に示したように、2つの信号導体12、13がケーブル長手方向に互いに平行に平面上に配置されている。信号導体12、13は、良導電性の金属、例えば銅箔を積層した87μ厚さの絶縁性液晶ポリマーフィルムからなる下部絶縁薄膜層14を、信号導体となる部分が残るようにエッチングして形成される。本実施例では、2つの信号導体12、13が設けられているが、信号導体は、2つに限定されるものでなく、それ以上の複数の信号導体(多芯)を設けることもでき、また一つ(単芯)とすることもできる。
【0016】
信号導体12、13は、
図1(B)、(C)で示したように、コネクタ部11の内部まで延びており、その端子12a、13aは、コネクタ導体15の空隙内に導かれる。コネクタ導体15は、信号導体12、13と同様に、下部絶縁薄膜層14を、コネクタ導体15となる部分が残るようにエッチングして形成される。
【0017】
コネクタ部11も、
図1(B)に示したように、コネクタ導体15の一部並びに信号導体の端子12a、13aがフラットケーブル10の外表面に露出するように、保護遮蔽層20のケーブル幅方向の一端20bがコネクタ導体15上に重ね合わせられ、また他端20cがケーブル幅方向に全体に重ね合されている。
図1(C)は、コネクタ部11の保護遮蔽層20を展開して図示したもので、保護遮蔽層20の裏側は金属層17となっており、保護遮蔽層20の端部20b、20cを、
図1(B)に示したように、重ね合わせると、保護遮蔽層20の金属層17がコネクタ導体15と電気的に接続するようになっている。
【0018】
下部絶縁薄膜層14上に形成された信号導体12、13は、コネクタ部11を除いて、例えば75μ厚さの絶縁性液晶ポリマーフィルムからなる上部絶縁薄膜層16で被覆される。なお、信号導体12、13は、特許文献1で示したような電気絶縁基体(不図示)の一方面(上側面)に形成し、この電気絶縁基体を液晶ポリマーフィルムからなる絶縁薄膜層で上下から被覆するようにしてもよい。いずれにしても、信号導体12、13は、絶縁性の薄膜層で上下から被覆される。
【0019】
信号導体12、13を上下から被覆した下部と上部の絶縁薄膜層14、16の全体は、例えば6μ厚の銅箔からなる金属層17と、それを積層した例えば12μ厚のポリイミドの絶縁プラスチック層18とからなる保護遮蔽層20により、絶縁プラスチック層18が外側となるように、被覆される。
【0020】
フラットケーブル10は、コネクタ部を除く部分のケーブル長手方向の長さがd1(例えば、約84.0mm)、コネクタ部11の長さがd2(例えば、約7.0mm)、グラウンド層として機能する金属層17aの長さがd3(例えば、約5.8mm)であり、ケーブル幅方向にw1(例えば、約2.6mm)の幅を、またケーブル厚さ方向にh1(例えば、約0.2mm)の厚さ(
図2(B))を有している。なお、
図2(A)、(B)、
図3(A)、(B)、
図4は、模式的な説明図であるので、各部分の寸法比は、実寸のものと異なり、特に、ケーブル厚さ方向の寸法が誇張して大きく描かれている。
【0021】
図5は、金属層17が紙面に現れるように展開した保護遮蔽層20を示している。保護遮蔽層20は、ケーブル長手方向の複数部分で一部がケーブル幅方向に長くなっており、その長くなった一部の金属層17aが、
図1(A)に示したように、フラットケーブル10の外表面にグラウンド層として露出する。
【0022】
保護遮蔽層20は、折り曲げられてフラットケーブル10を包囲するので、その折り曲げ部が符号17b〜17fを用いて点線で
図5に図示されている。なお、折り曲げ部17b〜17fは、実際には、ケーブル厚さ方向の厚さh1に応じた幅を有するが、図示が困難なので、一つの点線として図示されている。また、
図2(A),(B)、
図3(A)、(B)では、ケーブル厚さ方向が誇張されて大きく図示されているので、折り曲げ部がどの部分に相当するかは、図示されていない。
【0023】
保護遮蔽層20の折り曲げ部17b、17c間の幅、折り曲げ部17b、17d間の幅、並びに折り曲げ部17dと金属層17aの先端部間の幅はフラットケーブル10のケーブル幅方向の幅w1に相当し、保護遮蔽層20は折り曲げ部17b、17cに沿って内側に直角に折り曲げられる。また、コネクタ部の保護遮蔽層20は、折り曲げ部17e、17fに沿って内側に折り曲げられ、このようにして折り曲げられた保護遮蔽層20が、
図6に斜視図として図示されている。
図6では、保護遮蔽層20の絶縁プラスチック層18が可視でき、一部の金属層17aに相当する部分が符号18aで図示されている。
【0024】
保護遮蔽層20は、
図6に図示した状態で折り曲げ部17bに沿って保護遮蔽層20内部の上部絶縁薄膜層16(
図6には不図示)上に折り畳まれ、一部の金属層17aの部分では、折り曲げ部17dに沿って逆方向に折り畳まれ、一部の金属層17aが絶縁プラスチック層18上に露出する。この露出した金属層17aは、後述するように、電子回路基板のグラウンド層に直接あるいはクリップなどの金具を介して電気的に接続可能になっている。この状態で、保護遮蔽層20の一端20aが折り曲げ部17cに沿って折り曲げられ、他端上に重ね合される。このようにして保護遮蔽層20により全体が被覆された状態で一部の金属層17aが露出していない部分の断面図が
図2(A)に、また一部の金属層17aが露出している部分の断面図が
図2(B)に図示されている。
【0025】
コネクタ部11では、上部絶縁薄膜層16は設けられないので、保護遮蔽層20のケーブル幅方向一端20bが折り曲げ部17fに沿ってコネクタ導体15上に折り曲げられ、続いて終端20cが折り曲げ部17eに沿って折り曲げられる。このようにして保護遮蔽層20により被覆された状態で、
図1(B)のC−C´線に沿った断面図が
図3(A)に、
図1(B)のD−D´線に沿った断面図が
図3(B)に図示されている。これらの図から明らかなように、コネクタ導体15は、保護遮蔽層20の金属層17と接触しており、電気的に接続している。
【0026】
保護遮蔽層20により被覆されたフラットケーブル10は、保護遮蔽層20に、その上下方向から加熱加圧(ホットプレス)を施すことにより、下部絶縁薄膜層14と上部絶縁薄膜層16が軟化溶融して金属層17に接着し、下部絶縁薄膜層14、上部絶縁薄膜層16、保護遮蔽層20が一体化される。
【0027】
次に、フラットケーブル10の製造方法を、露出した金属層17aが形成される部分を断面図にした
図4に基づいて説明する。
【0028】
図4の左側に図示したように、銅箔を積層した絶縁性液晶ポリマーフィルムからなる下部絶縁薄膜層14を、信号導体12、13となる部分が残るようにエッチングして、下部絶縁薄膜層14上に信号導体12、13を形成する。
【0029】
続いて、信号導体12、13上部に上部絶縁薄膜層16を積層すると共に、上部絶縁薄膜層16および下部絶縁薄膜層14を保護遮蔽層20の金属層17の折れ曲げ部17b、17c間に配置して、
図4の左下に示したように、保護遮蔽層20を折れ曲り部17b、17cで垂直に折り曲げ、金属層17が内側に、絶縁プラスチック層18が外側になるように、配置する。なお、
図4でも、フラットケーブルの厚さが誇張して図示されているので、
図4で図示する折れ曲げ部は正確な位置を示すものではない。
【0030】
続いて、
図4の右側に示したように、折り曲げ部17bに沿って保護遮蔽層20を内側に折り曲げ、続いて金属層17aが絶縁プラスチック層18上に現れるように、折り曲げ部17dに沿って逆方向に折り曲げる。この状態で、
図4で右下に示したように、保護遮蔽層20の一端20aが折り曲げ部17cに沿って折り曲げられ、
図4で右下に示したように、他端上に重ね合される。
【0031】
一方、コネクタ部11では、図示されていないが、保護遮蔽層20のケーブル幅方向一端20bが折り曲げ部17fに沿ってコネクタ導体15上に折り曲げられ、続いて終端20cが折り曲げ部17eに沿って折り曲げられる。
【0032】
続いて、保護遮蔽層20の上下方向から加熱、加圧を施すことにより、下部絶縁薄膜層14、上部絶縁薄膜層16、保護遮蔽層20を一体化してフラットケーブル10を作製する。
【0033】
図7には、フラットケーブル10が、例えば、スマートフォンなどの電子機器に応用される例が模式的に図示されている。
図7は、フラットケーブル10をケーブル厚さ方向Hに拡大して金属層17、17aがどのように電気的に接続されるかを機能的に図示している。
【0034】
フラットケーブル10の一端のコネクタ部11は、コネクタ部11のコネクタ導体15が電子回路基板30のグラウンド層30aと電気的に接続するように、電子回路基板30に差し込まれる。また、フラットケーブル10の他端のコネクタ部11は、そのコネクタ部11のコネクタ導体15が電子回路基板31のグラウンド層31aと電気的に接続するように、電子回路基板31に差し込まれる。
【0035】
信号導体13は、その端子13a(
図1(B)、(C))を介して、電子回路基板30の、例えばアンテナ素子(不図示)に接続された端子30bに接続され、また、信号導体13の他の端子13aは、電子回路基板31の高周波回路(不図示)に接続された端子31bに接続される。アンテナ素子で受信した信号は、信号導体13を介して電子回路基板31の高周波回路で受信されて、信号処理される。
【0036】
ここで、コネクタ導体15は、
図3(A),(B)に図示したように、保護遮蔽層20の金属層17と電気的に接続しており、またコネクタ導体15は、電子回路基板30、31のグラウンド層30a、31aと電気的に接続されるので、信号導体12、13は、ケーブル長手方向の全域に渡って電気的にグラウンド層として機能する金属層17で包囲される。従って、信号伝送時のノイズを顕著に抑制することができ、S/N比を向上させることができる。
【0037】
また、
図7に示すように、フラットケーブル10は、他の電子回路基板32のグラウンド層32aに近接して配置され、フラットケーブルの外表面に露出した金属層17aを電子回路基板32のグラウンド層32aと電気的に接続させることができる。この電気的な接続は、仮想円で上部に示したように、例えばクリップ状の金具33を用いて行われる。金具33は、ケーブル幅方向Wにw1、厚さ方向Hにh1の大きさの金具辺33aを有し、その一辺にピン33bを備える。金具辺33aに金属層17aが電気的に接続するように、フラットケーブルをクリップし、ピン33bを電子回路基板32のグラウンド層32aに接触させるかあるいは突き刺して、金属層17aをグラウンド層32aに電気的に接続させることができる。フラットケーブル10を包囲する金属層17は、金属層17aを介して電子回路基板32のグラウンド層32aと電気的に接続されるので、信号導体12、13は、ケーブル長手方向の全域に渡って電気的にグラウンド層として機能する金属層17で包囲される。従って、信号伝送時のノイズを顕著に抑制することができ、S/N比を向上させることができる。
【0038】
なお、金具33を介して金属層17aを電子回路基板32のグラウンド層32aと電気的に接続させたが、フラットケーブル10を該グラウンド層32aに接触させることができる場合は、当該接触により電気的な接続を行うようにしてもよい。
【0039】
また、本実施例では、フラットケーブル10の両端にコネクタ部を設けたが、コネクタ部は、一方の端部だけに設けるようにしてもよい。その場合には、他方の信号導体端子は、コネクタを介さず直接電子回路基板の接続端子などに接続される。
【0040】
なお、本実施例のフラットケーブルが、主にスマートフォンのような高密度配線電子機器に使用される例を説明したが、本発明は、これに限定されず、例えば、自動車やその他の電子機器の電源供給や信号通信に用いられる複数の信号導体線を束にしたワイヤーハーネスにも適用できるものである。