(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイオマス資源は、製紙プロセスまたは紙または古紙を処理するプロセスによって製造される排出物を脱水することによって得られるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のバイオマス資源からカルシウムの含量を低減したバイオマス資源を製造する方法。
【背景技術】
【0002】
日本国内の製紙業界では、製紙汚泥(ペーパースラッジ)と呼ばれる産業廃棄物が多量に発生している。このペーパースラッジは、セルロース及びヘミセルロースを多く含むバイオマス資源の一つである。現在世界中で、このバイオマス資源を有効利用する研究が活発に行われている。製紙業界においては、このペーパースラッジは、焼却処分した後、残渣の無機分を廃棄物として処分しているが、一部は埋め立て処分している。この処分方法では、大量の重油を燃焼させるため、二酸化炭素が発生している。そこで、ペーパースラッジに多量に含まれる「リグノセルロース」から「エタノール」を生産できれば、エネルギー製造用の原料として期待できる。なお、ペーパースラッジからエタノール発酵を効率的に進めるためにはペーパースラッジ中の炭酸カルシウムを除去する前処理が必要である。
【0003】
下記文献1に、製紙廃棄物中の炭酸カルシウムを除去する方法として、製紙廃棄物を熱処理する方法が開示されている。すなわち、この熱処理を特定の条件で行い或いは熱処理後分級することにより高硬度或いは粒子径の大きな粒子を除去した焼成物を得て、これを水酸化カルシウム含有水性懸濁液中に混合し、常温よりも高い温度で熟成する。次いで水性懸濁液に二酸化炭素または二酸化炭素含有ガスを通して炭酸化し、軽質炭酸カルシウムを製造する方法が記載されている。
【0004】
また、下記文献2には、焼成工程を行うことなく炭酸カルシウムを製造する方法として、石灰石または炭酸カルシウムを含有する材料を、イオン強度0.1〜4重量モル濃度の強電解質水溶液に懸濁した後、この懸濁液に炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込むという方法が開示されている。
【0005】
さらに、下記文献3には、バイオエタノール発酵工程で発生した二酸化炭素を、炭酸カルシウム含有バイオマスの水性スラリーに投入し、炭酸カルシウムを溶解度が高い炭酸水素カルシウムに変換させ、固液分離により炭酸カルシウムを除去する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−360983号
【特許文献2】特開2002−173323号
【特許文献3】特開2010−41923号
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本明細書に記載される材料、方法及び数値範囲などの説明は、当該材料、方法及び数値範囲などに限定することを意図したものではなく、また、それ以外の材料、方法及び数値範囲などの使用を除外するものでもない。
【0015】
本発明のバイオマス資源からカルシウムの含量を低減したバイオマス資源を製造する工程には少なくとも以下の工程が含まれる。本発明の製造工程は、(B)工程、(C)工程(C-1、
C-2工程を含む)と連続的に行うことが好ましい。また、必要に応じて(A)工程を前記両工程の間に行うことも可能である。さらに、(E)工程を(C)工程と(D)との間で実施してもよい。
(A)バイオマス資源の投入工程
(B)炭酸カルシウムを溶解する工程
(C)
炭酸カルシウムが溶解された反応溶液を反応槽から回収槽へ送液する反応溶液送液工程
(C-1)
前記回収槽において、回収槽にアルカリを添加する方法、回収槽に二酸化炭素を含む気体を吹き込む方法、又は回収槽を加熱する方法のいずれかの方法により、カルシウムイオンをカルシウムを含む化合物として析出させる析出工程
(C-2)
前記回収槽から前記反応槽へ回収溶液を送液する回収溶液送液工程
(D)炭酸カルシウムを溶解させたバイオマス資源を固液分離して、炭酸カルシウムの含
有量が低減されたバイオマス資源を分離する分離工程
(E)前記循環工程後の反応槽に酸を添加するpH調整工程
【0016】
本発明に用いられる炭酸カルシウムを含むバイオマス資源とは、木材、紙、繊維などどのようなものでもよいが、炭酸カルシウムを内部に含有するか、炭酸カルシウム入りの塗料が塗られたものなどである。代表的なものとしては、古紙、製紙汚泥物(ペーパースラッジ)が挙げられる。古紙としては、古紙を原料のひとつとしたものであればどのような種類の古紙でもよく、段ボール古紙、雑誌古紙、新聞古紙等を用いることができる。また、製紙汚泥物としては、排水処理され脱水されたペーパースラッジを用いることができる。また、感熱紙、ノーカーボン、アルミ貼合段ボール、重袋等の禁忌品も使用することができる。また、上記の古紙や禁忌品を原料としたパルプを用いることもできる。古紙、禁忌品ならびにパルプに含まれる異物の種類や量は、どのような種類や量でも良いが、原料としてはセルロース分が多い方が好ましい。
【0017】
(B)炭酸カルシウムを溶液に溶解する工程では、炭酸カルシウムを含有するバイオマス資源が分散された溶液に二酸化炭素を接触させて炭酸カルシウムを溶解する工程を含む。炭酸カルシウムを含む溶液に二酸化炭素ガスを通気させ、二酸化炭素濃度を上げると二酸化炭素を減らす方向に平衡移動が起こり、バイオマス資源中の炭酸カルシウムが水に可溶の炭酸水素カルシウムとなり溶出することが知られており、本発明はこの反応を利用して、バイオマス資源中に含まれる炭酸カルシウムを除去する。炭酸カルシウムと二酸化炭素の反応は以下の反応式として表すことができ、生成した炭酸水素カルシウムは、水中において炭酸水素イオンとカルシウムイオンとして存在するとされる。以下の反応式から、炭酸カルシウムは、二酸化炭素と水の濃度が高くなるほど、炭酸水素カルシウムとなり水中に溶解しやすくなるといえる。
【0019】
本発明において、バイオマス資源と二酸化炭素を接触させる方法は特に制限されないが、例えば、バイオマス資源を含む分散液に、二酸化炭素を含む気体を吹き込んだり、または、二酸化炭素を溶解した二酸化炭素溶解水を用いてバイオマス資源と二酸化炭素を接触させることも可能である。
【0020】
前記二酸化炭素を含む気体は、二酸化炭素を含んでいれば特に制限はなく、二酸化炭素以外の気体を含んでいる気体をも使用可能である。したがって、製紙工場においてキルン工程、焼却工程等の製紙プロセスから発生する二酸化炭素、具体的には、ラインキルンやボイラーなどの焼却装置から発生する排ガスを二酸化炭素を含む気体として利用してもよい。このような排ガスを利用することによって、工場内に存在する物質を有効利用することができる。
他の二酸化炭素を含む気体の態様においては、例えば、二酸化炭素を含む気体として炭酸ガスを用いることも可能である。このような炭酸ガスを利用することによって、二酸化炭素の純度が高い炭酸ガスを選択し、炭酸カルシウムと二酸化炭素との反応を効率的に行うことができる。
【0021】
本発明において、二酸化炭素を含む気体中の二酸化炭素の濃度は特に制限されない。ただし、炭酸カルシウムと二酸化炭素とを効率的に反応させるため、二酸化炭素ガスの体積濃度は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上である。二酸化炭素ガスの体積濃度が1体積%未満では、炭酸カルシウムを効率的に溶解させることが難しくなる。上述したように、本発明においては二酸化炭素の純度が高い炭酸ガスを選択することもできるため、二酸化炭素ガスの体積濃度の上限は特になく、100体積%であってもよい。
【0022】
本発明において、二酸化炭素を含有する気体の導入装置は特に制限されないが、好ましくは、二酸化炭素がバイオマス資源中の炭酸カルシウムへ多く接触することができるように、二酸化炭素を流入する速度や溶液中での気泡径を調整することが可能な導入装置が好ましい。例えば、マイクロバブル発生装置、ナノバブル発生装置等の導入装置を使用することが可能である。
【0023】
本発明において、炭酸カルシウムを含むバイオマス資源と二酸化炭素とを接触させる時間に特に制限はなく、バイオマス資源に含まれる炭酸カルシウムの量等に応じて適宜調整することができる。ただし、二酸化炭素の含有量が低い気体を利用する場合、二酸化炭素がバイオマス資源中の炭酸カルシウムと反応し、炭酸水素カルシウムとして水中に溶解するためにある程度の反応時間が必要であるため、前記接触させる時間は、ある程度確保することが望ましい。
【0024】
本発明において、バイオマス資源中の炭酸カルシウムと二酸化炭素とを接触させる際の溶液の温度は、好ましくは5〜90℃、より好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜50℃である。5℃未満の場合には冷却が必要となるし、90℃を超える場合には加熱する必要が生じ、経済的に非効率的である。基本的に、二酸化炭素の水への溶解度は温度が低い方が大きい。また、炭酸水素カルシウム水溶液を過度に加熱すると二酸化炭素を発し、再び炭酸カルシウムが析出する。そのため、本発明においては、炭酸カルシウムの溶解という観点から、50℃以下の温度域において二酸化炭素を接触させることが好ましい。
【0025】
本発明において、バイオマス資源中の炭酸カルシウムと二酸化炭素とを接触させる場合、攪拌しながら接触させることが好ましい。炭酸カルシウムと二酸化炭素とを水中で効率的に接触させて、反応を促進させるためである。具体的な攪拌装置は特に制限されない。
【0026】
(C)
炭酸カルシウムが溶解された反応溶液を反応槽から回収槽へ送液する反応溶液送液工程では、前記(B)工程後の溶液を反応槽から回収槽へ送液する(以下、反応溶液という。)。続いて、
前記回収槽において、カルシウムイオンをカルシウムを含む化合物として析出させる析出工程を行う(C-1工程)。続いて、反応溶液と回収槽中の溶液と混合された溶液の一部を回収槽から反応槽へを送液する(以下、回収溶液という。)
回収溶液送液工程を行う(C-2工程)。これを連続的に行うことで、反応槽中の溶液を反応槽と回収槽間を循環させる。送液手段としては、ポンプ等の公知の手段を用いることができる。前記反応槽と前記回収槽とを配管等で接続し、反応槽中の溶液を前記反応槽と前記回収槽との間を前記配管を通液させて循環させる。配管の数や径の大きさ、ポンプ等の流量を適時調節して、循環させる溶液量を調節する。
【0027】
回収槽でカルシウムイオンをカルシウムを含む化合物として析出させる工程では、回収槽にて、反応溶液中に溶解するカルシウムイオンを析出させる。前記(C)工程
乃至(C-2)工程を組み合わせることによって、カルシウムイオンが析出された回収溶液を反応槽へ連続的に送液することができ、結果として、
反応槽にあった炭酸カルシウムが溶解された溶液を、炭酸水素カルシウムとして溶出させるために
反応槽において再利用することができる。
【0028】
さらに、(C)工程、(C-1)工程の実施形態の一態様として、前記反応溶液を送液する途中に、及び/又は、回収槽から反応槽へ前記回収溶液を送液する途中に各種機能を有するバッファー槽を設け、当該バッファー槽に前記両溶液を経由させるようにし、それぞれのバッファー槽でカルシウムイオンを析出させる工程とすることもできる。ここで、各種機能とは、例えば、遠心分離機能が挙げられる。すなわち、反応溶液を遠心分離して、固体物は、反応槽へ戻し、ろ液については、回収槽へ送るという工程を追加することもできる。このような工程にすることによって、バッファー槽において、カルシウムイオン濃度を低下させることができるから、反応槽へ戻る回収溶液のカルシウム濃度をより低下させることができる。なお、バッファー槽は単数であっても、複数であってもよく、容量が統一されていなくともよい。
【0029】
本発明において、回収槽でカルシウムイオンを析出させる方法として、回収槽に水酸化カルシウム等のアルカリを添加する方法、回収槽に二酸化炭素を含む気体を吹き込む方法、及び回収槽を加熱する方法を適時選択することができる。いずれの方法を選択した場合にも、回収槽において炭酸カルシウムを析出させることができる。そして、析出された炭酸カルシウムを固液分離することによって、炭酸カルシウムを得ることができる。このような観点からは、本発明は、バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法と評価することができる。
【0030】
バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法としては、少なくとも以下の工程が含まれる。本発明の製造工程は、(B)工程、(C)工程(C-1工程
、C-2工程を含む)と連続的に行うことが好ましい。また、必要に応じて(A)工程を前記両工程の間に行うことも可能である。
(A)バイオマス資源の投入工程
(B)炭酸カルシウムを溶解する工程
(C)炭酸カルシウムが溶解された反応溶液を反応槽から回収槽へ送液する反応溶液送液工程
(C-1)前記回収槽において、回収槽にアルカリを添加する方法、回収槽に二酸化炭素を含む気体を吹き込む方法、又は回収槽を加熱する方法のいずれかの方法により、カルシウムイオンをカルシウムを含む化合物として析出させる析出工程
(C-2)前記回収槽から前記反応槽へ回収溶液を送液する回収溶液送液工程
(F)回収槽において、炭酸カルシウムを回収する工程
【0031】
すなわち、上記の記載から明らかなように、バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法とバイオマス資源からカルシウムの含量を低減したバイオマス資源を製造する方法とは、(A)から
(C-2)工程が同一工程である。すなわち、回収槽において炭酸カルシウムを回収することを目的とすれば、本発明は、前者と評価できる。また、炭酸カルシウムが低減されたバイオマス資源を製造することを目的とすれば、本発明は、後者と評価することができる。
【0032】
バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法として評価した発明において、回収槽に二酸化炭素を含む気体を吹き込む方法としては、前述の反応槽に二酸化炭素を導入する方法と同様の方法を使用することができる。すなわち、回収槽中の溶液に多くの空気が接触することができるように、空気を流入する速度や前記溶液中での気泡径を調整することが可能な導入装置が好ましい。例えば、マイクロバブル発生装置、ナノバブル発生装置等の導入装置を使用することも可能である。
【0033】
バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法として評価した発明において、前記二酸化炭素を含む気体は、二酸化炭素を含んでいれば特に制限はなく、二酸化炭素以外の気体を含んでいる気体をも使用可能である。したがって、製紙工場から発生する二酸化炭素、例えば、ラインキルンやボイラーなどの装置からの各種プロセスにおいて発生する排ガスを二酸化炭素を含む気体として利用してもよい。このような排ガスを利用することによって、工場内に存在する物質を有効利用することができる。
他の二酸化炭素を含む気体の態様においては、例えば、二酸化炭素を含む気体として炭酸ガスを用いることも可能である。このような炭酸ガスを利用することによって、二酸化炭素の純度が高い炭酸ガスを選択し、炭酸カルシウムと二酸化炭素との反応を効率的に行うことができる。
【0034】
バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法として評価した発明において、回収槽を加熱する方法としては、適時、公知の方法を選択することができる。例えば、保温ジャケット等を備える回収槽を用いて、所望の温度の水を通液させて、温度調節をすることができる。設定温度については、好ましくは、常温〜90℃である。90℃を超える場合には加熱する必要が生じ、経済的に非効率的であるからである。
【0035】
バイオマス資源から炭酸カルシウムを製造する方法として評価した発明において、(F)工程は、炭酸カルシウムを固液分離する工程である。固液分離する方法としては、一般的な方法を採用可能である。例えば、濾過や遠心分離、沈降などの方法によって固液分離することができる。具体的には、例えば、濾紙、濾布、濾過膜、遠心等を利用して炭酸カルシウムを固形分として分離することができるが、フィルタプレスなどのように加圧式で固液分離すると、効率的に固液分離できるため好ましい。
【0036】
(D)炭酸カルシウムを溶解させたバイオマス資源を固液分離して、炭酸カルシウムの含有量が低減されたバイオマス資源を分離する分離工程では、
(B)〜(C-2)工程を一定時間実施した後、固液分離工程を行う。このような工程とすることによって、溶解させた炭酸カルシウムをさらに、固液分離によって除去することができる。
【0037】
本発明における固液分離の方法は特に制限されず、一般的な方法を採用可能である。例えば、濾過や遠心分離、沈降などの方法によって固液分離することができる。具体的には、例えば、濾紙、濾布、濾過膜、遠心等を利用してセルロースを固形分として分離することができるが、フィルタプレスなどのように加圧式で固液分離すると、効率的に固液分離できるため好ましい。
【0038】
固液分離によって固相として得られるバイオマス資源は、炭酸カルシウム含量が低減されているため、例えば、糖、さらには、アルコールを製造するためのバイオマス資源として利用価値が高い。つまり、好ましい態様において、本発明による炭酸カルシウムの除去を、バイオマス資源の糖化若しくはアルコール発酵の前処理として行うことができる。また、本発明によって製造されたバイオマス資源は、それ自体に商品価値があるため、糖の生産原料やアルコール製造の原料として販売することもできる。
【0039】
また、本発明における他の実施形態として、(D)工程の実施前に、(E)前記循環工程後の反応槽に酸を添加するpH調整工程 を実施してもよい。このような工程とすることによって、最終的なバイオマス資源のpHを調節することができ、糖化反応の原料又はアルコール発酵の原料として利用しやすいものとなる。一般的に、セルロースなどの多糖類を酵素などによって加水分解して糖を製造する場合又はアルコール発酵の原料とする場合、酸性〜中性のpH域で反応を行うことが多いからである。本発明においてpH調整する方法は特に制限されないが、塩酸、硫酸などの一般的な酸を添加して、pHを4〜8に調整することができる。
【0040】
また、本発明の他の実施形態として、得られたバイオマス資源をアルコール発酵処理してアルコールを製造することができる。バイオマス資源のアルコール処理としては、微生物や酵素を利用した加水分解を好ましい例として挙げることができる。
【0041】
本発明の一実施態様(
図1)
参考までに、本発明の一実施態様を示す工程図を
図1に示す。まず、ペーパースラッジAを原料として、それに二酸化炭素を含むガスBを導入する。そうすると、反応槽1でペーパースラッジ中に含まれる炭酸カルシウムと二酸化炭素とが接触し、炭酸カルシウムが炭酸水素カルシウムとなって(炭酸水素イオンとカルシウムイオンとなって水中に存在するとされる。)溶解する。この溶解工程においては、適用な撹拌装置を用いて攪拌を行い、ペーパースラッジ中の炭酸カルシウムと二酸化炭素との反応を促進させることが好ましい。
【0042】
次いで、反応槽1の炭酸カルシウムが溶解した溶液を回収槽2へ送液する。同時に、回収槽2から反応槽1へ溶液を送液させ、反応槽と回収槽との間で、前記溶液を循環させる。この循環を行いながら、回収槽2を明細書本文において示したいずれかの方法で、カルシウムイオンを炭酸カルシウムCとして析出させる。
【0043】
一定時間前記処理を行った後のペーパースラッジを明細書本文において示したいずれかの方法で固液分離する。これによって、カルシウムの含量を低減したペーパースラッジDが得られる。また、固液分離を実施する前に、pH調整を行って所望のpHとすることができる。
【0044】
このように本発明によれば、ペーパースラッジ等のバイオマス資源からカルシウムの含量を低減したバイオマス資源を製造することが可能であり、バイオマス資源の付加価値を高めることができる。また、反応槽1と回収槽2を循環させる溶出液は透明であるから、白色度の高い炭酸カルシウムを製造することができ、さらに、填料として再利用することができる。
【実施例】
【0045】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0046】
以下の実施例では、二酸化炭素は、ガスボンベから供給して用いたが、これをラインキルンやボイラーなどの装置からの各種プロセスにおいて発生する二酸化炭素に置き換えることが可能である。
[実施例1]
1 L の反応槽内に ペーパースラッジ0.1 kgを撹拌しながら投入し、反応槽底部より 100% 二酸化炭素ガスを0.05VVM(VVM :分散液1 L 当たり1 分間に流すガス量)で通気しながら、透明水溶液のみを反応槽と回収槽との間で循環させた。このとき、透明水溶液の循環量を200 ml/hとし、反応槽の温度を40℃、回収槽の温度を60℃に設定した。
実験開始から2時間毎に12時間経過後まで、ペーパースラッジより溶出した炭酸水素カルシウムを、市販のイオンクロマト装置により分析した結果を表1に示した。また、この処理後のペーパースラッジ残渣の無機成分に関して市販のXRFを用いて分析を行った結果を表2に示した。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、反応槽中の透明水溶液を回収槽との間で循環させず、それ以外は全て同様に操作を行い、実験開始から2時間毎に12時間経過後まで、ペーパースラッジより溶出した炭酸水素カルシウムを、市販のイオンクロマト装置により分析した結果を実施例1と比較するため同一の表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に結果を示す。比較例1では、反応開始後直ちに溶液側に Ca が溶出し始め、 1 h後に約 1.5 g/L でほぼ一定の濃度となった。一方、実施例1では、溶出したカルシウムは時間経過とともに増加し、処理時間12時間で6.5 g/L となった。これは、バッチ溶出処理の 4 倍以上の溶出量に相当する。 なお、ペーパースラッジ0.1kg を1 L の水で懸濁した場合、ペーパースラッジ中のカルシウムを全て溶出できたとすると 13.3 g/L に相当する。本実施例の結果から、本願発明に係る処理方法を使用し、ペーパースラッジから炭酸カルシウムとして溶出することが出来、処理時間12時間でペーパースラッジに含まれるカルシウムの約50%を溶出させることが実証できた。
【0050】
【表2】
表2の結果から明らかなように、ペーパースラッジ中のカルシウム含量を32%から14%にまで減少させることができた。この結果より、本発明により炭酸カルシウムを経済的に回収できることが実証できた。