(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の透過波長域のピーク波長を含む波長領域で、前記ユニットのリタデーションが、前記ピーク波長のモードを示す整数または半整数であるモード値と波長とを乗算した値と近づくように前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項4または5に記載の液晶波長可変フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態にかかる液晶波長可変フィルタおよび光学部品を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる液晶波長可変フィルタ1の機能を示す図である。液晶波長可変フィルタ1は、撮像範囲からの入射光が入射されると、設定された透過波長域の波長の光を透過させて、透過波長域以外の波長の光を遮断する。液晶波長可変フィルタ1は、定められた全波長範囲のなかで透過波長域を変更可能である。液晶波長可変フィルタ1に設定可能な各透過波長域において、透過率がピークとなる波長を、以下、ピーク波長と呼ぶ。全波長範囲は、どのように設定されてもよいが、例えば、400nm−1600nmである。撮像装置2は、液晶波長可変フィルタ1の透過光を撮像して、画像データを生成する。
【0012】
液晶波長可変フィルタの各ピーク波長に対応する各透過波長域の透過率の波長に対する特性は、各ピーク波長の透過率をピークとし、ピーク波長から離れるにしたがって透過率が低下する形状となる。一般に、液晶波長可変フィルタにおいては、各透過波長域の透過率の半値幅は、波長に依存する。
【0013】
一般に、液晶波長可変フィルタは、2枚の偏光板と該2枚の偏光板に挟まれる液晶とを含むユニットを1つ以上備える。1ユニットの透過率Tは、2枚の偏光板の透過軸が平行なパラレルニコルの場合、以下の式(1)で表すことができ、2枚の偏光板の透過軸が直交するクロスニコルの場合、以下の式(2)で表すことができる。λは波長を示し、δはリタデーションを示す。
T=cos
2((δ/λ)π) …(1)
T=sin
2((δ/λ)π) …(2)
【0014】
上記式からわかるように、透過率は1/λに比例して変化するため、短波長ほど透過率の変化が激しくなる。
図2は、各ピーク波長に対応する透過率特性の一例を示す図である。
図2において、透過率101〜108は、それぞれピーク波長400nm,491nm,601nm,776nm,886nm,1031nm,1201nm,1541nmに対応する透過率特性を示す。
図2から、波長が長いほど透過率特性が波長方向に広がっており半値幅が広くなっていることがわかる。
【0015】
また、上記式(1)、(2)からわかるように、リタデーションが大きいほど透過率の波長に依存する変化が激しくなる。
図3は、高リタデーション時と低リタデーション時のそれぞれにおける波長と透過率(規格化透過率)の関係を示す図である。透過率110は、高リタデーション時(高δ時)の透過率を示し、透過率109は、低リタデーション時(低δ時)の透過率を示している。
図3および上記式(1)、(2)からわかるように、高リタデーション時は、低リタデーション時に比べて、波長に依存した透過率の変化が激しくなる。
【0016】
さらに、リタデーションは波長が短いほど急激に変化する。
図4は、リタデーションの波長依存性を示す図である。
図4に示すように、リタデーションは、短波長側では波長に依存した変化が激しくなっている。
【0017】
以上のように、透過率が波長に依存することと、リタデーションが波長に依存することの2つの要因により、各ピーク波長の透過率の半値幅は波長に依存することになる。
【0018】
一方、光量のバランス等の観点から、波長によらず透過率の半値幅をなるべく均等に調整したい場合がある。上述したとおり、各ピーク波長の透過率の半値幅は波長に依存するため、液晶波長可変フィルタの透過波長域内の長波長で半値幅が適切になるように設計すると、透過波長域内の短波長では半値幅が狭すぎてしまう。逆に、液晶波長可変フィルタの透過波長域内の短波長で半値幅が適切になるように設計すると、透過波長域内の長波長では半値幅が広すぎてしまう。また、あるピーク波長に対応する透過率の半値幅を所望の値にしたいといった要求がある場合もある。本実施の形態の液晶波長可変フィルタ1は、後述するようにメイン液晶とサブ液晶とを組み合わせることによりリタデーションの調整の自由度を上げることで、各ピーク波長に対応する半値幅を自在に制御できる。
【0019】
次に、本実施の形態の液晶波長可変フィルタ1の構成について説明する。
図5は、本実施の形態の液晶波長可変フィルタ1の構成例を示す図である。本実施の形態の液晶波長可変フィルタ1は、1つ以上のユニット10から構成される光学部品40と、各ユニット10に電圧を印加する電圧源20と、各電圧源20がユニット10に印加する電圧の値を指示する電圧制御部30とを有する。
【0020】
以下、光学部品40を構成するユニット10のそれぞれを区別する場合、符号の後に枝番号を付加する。具体的には、
図5に示した例では、光学部品40は、3つのユニット10−1、ユニット10−2、およびユニット10−3を有する。
図5では、液晶波長可変フィルタ1が3つのユニット10を備える例を示しているが、液晶波長可変フィルタ1は1つ以上のユニット10を備えればよく、ユニット10の数は
図5に示した例に限定されない。
【0021】
ユニット10のそれぞれは、第1の偏光板である偏光子11と、第2の偏光板である検光子12とを有している。ユニット10のそれぞれは、さらに、偏光子11と検光子12との間に配置される中間部を備えている。中間部は、位相差板である位相差クリスタル13と、第1の液晶であるメイン液晶14Aと、第2の液晶であるサブ液晶14Bとで構成される。すなわち、光学部品40は、偏光子11と、検光子12と、偏光子11および検光子12の間に配置され、リタデーションが予め定められている位相差クリスタル13と、位相差クリスタル13と検光子12の間に配置されるメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bと、を備える。なお、
図5に示した例では、中間部が、位相差クリスタル13、メイン液晶14A、サブ液晶14Bの順に配置されているが、位相差クリスタル13、メイン液晶14A、サブ液晶14Bの並び順は任意であり、
図5に示した例に限定されない。例えば、位相差クリスタル13がメイン液晶14Aとサブ液晶14Bの間に配置されてもよい。
【0022】
各ユニット10を構成する偏光子11と検光子12は、透過軸が互いに平行であってもよいし、透過軸が互いに直交していてもよい。また、液晶波長可変フィルタ1が備えるユニット10が複数である場合、偏光子11と検光子12の透過軸が互いに平行なユニット10と、偏光子11と検光子12の透過軸が互いに直交なユニット10と、の組み合わせであってもよい。なお、隣接するユニット10の偏光子11と検光子12を1つの偏光板により実現してもよい。例えば、ユニット10−1の検光子12−1と、ユニット10−1に隣接するユニット10−2の偏光子11−2と、を1つの偏光板により実現してもよい。
【0023】
また、
図5に示した例では、本実施の形態で述べるユニット10を複数備える例を示しているが、液晶波長可変フィルタ1の光学部品40の備えるユニットのうち一部は、ユニット10と異なる他の構成のユニットであってもよい。例えば、光学部品40の備える他の構成のユニットとして、中間部がメイン液晶14Aのみで構成されるユニットを備えていてもよいし、中間部が位相差クリスタルとメイン液晶14Aで構成されるユニットを備えていてもよい。
【0024】
また、各ユニット10を構成するサブ液晶14Bは、メイン液晶14Aと光学軸が90度異なる。すなわち、各ユニット10を構成するメイン液晶14Aとサブ液晶14Bは、光学軸が互いに直交する。メイン液晶14Aの材料とサブ液晶14Bの材料とは同じであってもよいし異なっていてもよい。異なる材料を使用すると、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bで波長分散特性が異なることになるため、この違いも利用して、後述する半値幅の調整も行ってもよい。また、メイン液晶14Aのセルギャップとサブ液晶14Bのセルギャップとについても、同じあってもよいし異なっていてもよい。
【0025】
液晶波長可変フィルタ1は、各メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに接続される複数の電圧源20を有する。メイン液晶14Aに接続されている電圧源20を電圧源20Aと称し、サブ液晶14Bに接続されている電圧源20を電圧源20Bと称する。
図5では、ユニット10−1、ユニット10−2およびユニット10−3のそれぞれに対応する偏光子11、検光子12、位相差クリスタル13、メイン液晶14A、サブ液晶14B、電圧源20Aおよび電圧源20Bに、各ユニットと同一の枝番号を付加した符号を付している。位相差クリスタル13は、リタデーションが予め定められており、波長に応じた固有のリタデーションを有する。メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bは、接続される電圧源20から印加される電圧に応じて透過波長域が制御される。このとき、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bのリタデーションは、印加される電圧に応じて変化する。なお、
図5では、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bのそれぞれに対応した電圧源20を備える例を示しているが、1つの電圧源20がメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに電圧を印加してもよい。
【0026】
液晶波長可変フィルタ1は、複数の電圧源20に接続された電圧制御部30を有する。電圧制御部30は、各電圧源20がメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧の値を指示することによって、ユニット10ごとに光学部品40を透過する光の波長範囲である透過波長域を制御する。すなわち、電圧制御部30は、電圧源20がメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧を制御することにより光学部品40の透過波長域を制御する。また、電圧制御部30は、電圧源20がメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧を制御することにより光学部品40のリタデーションを制御することができる。すなわち、電圧制御部30は、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bのリタデーションが、光学部品40の透過率の半値幅を所望の値に近づけるような波長依存特性を有するようにメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧を制御することが可能である。
【0027】
次に、本実施の形態の各ピーク波長に対応する透過率の半値幅の制御について説明する。本実施の形態では、光学軸が互いに直交するメイン液晶14Aとサブ液晶14Bを用いることで、リタデーションの波長依存性が所望の特性となるように制御する。ここでは、一例として波長ごとの半値幅の差を抑制する、すなわち半値幅を波長によらずなるべく均一にするようにする例を説明する。半値幅を波長によらずなるべく均一にする場合、具体的な制御の手法としては、長波長側または短波長側のどちらかで半値幅が所望の値となるように位相差クリスタル13のリタデーションを決定し、他の波長における半値幅を、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bのリタデーションを調整することによって制御する手法が考えられる。
【0028】
上記手法の例として、まず、長波長側で半値幅が所望の値となるように位相差クリスタル13のリタデーションを決定し、短波長側の半値幅を広げるようにメイン液晶14Aとサブ液晶14Bのリタデーションを調整する手法(以下、短波長側の半値幅を広げる手法と呼ぶ)について説明する。
【0029】
ユニット10の透過率は、リタデーションδがδ=mλを満たすときに1となる。mはモードを示す値であり、パラレルニコルの場合は整数であり、クロスニコルの場合は半整数である。半値幅の調整対象とする透過波長域のピーク波長をλ
Pとし、ピーク波長λ
Pに対応するリタデーションをδ
Pとし、λ
Pおよびδ
Pに対応するmの値をm
Pとする。このm
Pを用いて、ユニット10の透過率が、ピーク波長λ
Pだけでなくピーク波長λ
Pの周辺でも1となるようにδを調整すれば、透過率が大きくなる範囲を広げることができる。すなわち、ピーク波長λ
Pの周辺でδ=m
Pλとなるようにすれば、透過率が大きくなる範囲を広げることができる。例えば、短波長側の第1の透過波長域のピーク波長を含む波長領域で、ユニット10のリタデーションが、ピーク波長のモードを示す整数または半整数であるモード値と波長とを乗算した値と近づくようにメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧を制御する。
【0030】
図6は、ピーク波長の周辺の透過率が1となるように調整したリタデーションの一例を示す図である。
図7は、
図6に示したリタデーションの調整を行った場合の透過率を示す図である。
図6および
図7に示した例では、ピーク波長λ
Pが400nmであり、m
Pが6.5であり、400nmの周辺の範囲として390nm−410nmの範囲で透過率を1となるようにδを調整している。
図6に示すように、390nm−410nmの範囲で、δ=m
Pλとなるように調整すれば、
図7に示すように、390nm−410nmの範囲で透過率を1とすることができる。
図6および
図7では、390nm−410nmの範囲で透過率を1とする例を説明したが、厳密に
図6および
図7に示した特性とならなくても、
図6および
図7に示した特性に近づけば、透過率が大きくなる範囲を広げることができる。
【0031】
このようなδの調整を行うために、本実施の形態では、ユニット10に、メイン液晶14Aと、光軸がメイン液晶14Aと90度異なるサブ液晶14Bとを設けている。
図8は、本実施の形態のユニット10の物理的な構成を示す模式図である。
図8において、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに示した矢印は光学軸を示し、偏光子11および検光子12に示した矢印は透過軸を示している。
【0032】
図9は、サブ液晶14Bの有無によるユニット10のリタデーションの差を示す模式図である。
図9の上段には、サブ液晶14Bが無い場合、すなわち、偏光子11と検光子12とに挟まれる中間部が、位相差クリスタル13とメイン液晶14Aで構成される場合のリタデーションを模式的に示している。
図9の下段には、サブ液晶14Bが有る場合、すなわち、偏光子11と検光子12とに挟まれる中間部が、位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bで構成される場合のリタデーションを模式的に示している。
図9では、ある波長におけるリタデーションを模式的に示している。
【0033】
位相差クリスタル13のリタデーションは波長に応じた固有のものである。
図9の上段の左端に示すように位相差クリスタル13の、ある波長におけるリタデーションは固定である。一方、
図9の上段の左端から2番目に示すメイン液晶14Aのリタデーションは、印加される電圧に応じて変更可能である。
図9では、メイン液晶14Aのリタデーションの最小値をハッチングで示している。メイン液晶14Aのハッチングされた部分の上の波線で囲まれた部分がリタデーションを変更可能な範囲である。
図9の上段の右端に示すように、位相差クリスタル13とメイン液晶14Aを組み合わせたときには、リタデーションの最小値は、位相差クリスタル13のリタデーションにメイン液晶14Aのリタデーションの最小値を加算した値(合計最小値とよぶ)となる。また、位相差クリスタル13とメイン液晶14Aを組み合わせたときのリタデーションの可変範囲は、
図9にδ可変範囲と示したように、合計最小値より上の破線の範囲となる。
【0034】
図9の下段において、左端に示す位相差クリスタル13のリタデーションと、左端から2番目のメイン液晶14Aのリタデーションとは、
図9の上段と同様である。一方、下段では、左端から3番目に示したサブ液晶14Bのリタデーションが追加される。
図9では、サブ液晶14Bのリタデーションの最小値をハッチングで示している。サブ液晶14Bのハッチングされた部分の上の波線で囲まれた部分はリタデーションを変更可能な範囲である。サブ液晶14Bは、メイン液晶14Aと光学軸が90度異なるため、メイン液晶14Aのリタデーションからサブ液晶14Bのリタデーションが引かれることになる。このため、
図9の下段の右端に示すように、位相差クリスタル13とメイン液晶14Aとサブ液晶14Bとを組み合わせたときのリタデーションの最小値は、位相差クリスタルのリタデーションより低い値にすることができる。
図9の下段の右端に示すように、位相差クリスタル13とメイン液晶14Aとサブ液晶14Bとを組み合わせたときのリタデーションの可変範囲は、位相差クリスタル13のリタデーションより低い値から位相差クリスタルのリタデーションより大きい値までの広い範囲となる。
【0035】
図10は、位相差クリスタル13およびメイン液晶14Aのリタデーションとこれらの合計値の波長依存の一例を示す図である。
図10において、リタデーション202は、位相差クリスタル13のリタデーションを示し、リタデーション203は、メイン液晶14Aのリタデーションを示し、合計値201は、位相差クリスタル13およびメイン液晶14Aを組み合わせた場合のリタデーションを示す。なお、メイン液晶14Aのリタデーションは上述したとおり変更可能であるが、
図10ではメイン液晶14Aのリタデーション可変範囲のうちの1つを例として示している。
図11は、サブ液晶14Bのリタデーションの波長依存の一例を示す図である。
図11において、リタデーション204は、サブ液晶14Bのリタデーションを示している。なお、サブ液晶14Bのリタデーションは上述したとおり変更可能であるが、
図11ではサブ液晶14Bのリタデーションの可変範囲のうちの1つを例として示している。
図10および
図11からわかるように、位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bのリタデーションはいずれも波長が短いほど増加する。また、サブ液晶14Bのリタデーションは、位相差クリスタル13およびメイン液晶14Aのリタデーションに比べ、短波長側での変化が急激である。すなわち、サブ液晶14Bのリタデーションは、短波長側では波長が長くなるに従って急激に減少する。
【0036】
図12は、位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bを組み合わせた場合のリタデーションの波長依存の一例を示す図である。上述したように、サブ液晶14Bのリタデーションは、位相差クリスタル13およびメイン液晶14Aのリタデーションから引かれることになる。このため、
図12に示すように、これらを組みあわた場合、短波長側で、サブ液晶14Bの特性(波長が長くなるに従ってリタデーションが急激に減少する特性)が反転し、波長が長くなるに従ってリタデーションが増加する特性が得られる。すなわち、サブ液晶14Bのリタデーションを
図11に示すように波長が長くなるに従ってリタデーションが急激に減少する特性となるように調整すれば、位相差クリスタル13およびメイン液晶14Aと組み合わせると、波長が長くなるに従ってリタデーションが増加する特性が得られる。これにより、短波長側で、
図6に示した特性に近い特性を得ることができる。したがって、ピーク波長に応じて、透過率が1となる範囲を広げる特性となるように、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bのリタデーションを調整することで、半値幅を広げることができる。このように、短波長側の半値幅を広げる手法では、電圧制御部30は、短波長側の第1の透過波長域の透過率の半値幅が第1の透過波長域より長波長の第2の透過波長域の透過率の半値幅に近づくように、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bに印加する電圧を制御する。
【0037】
図13は、本実施の形態のユニット10の透過率を、サブ液晶14Bを設けない比較例の透過率とともに示す図である。
図13において、透過率301は、本実施の形態のユニット10すなわち位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bを備える場合の透過率を示し、透過率302は、サブ液晶14Bを設けない比較例の透過率を示す。
図13では、1つのユニット10を用いて、
図6および
図7の特性となるように、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bを調整した場合の透過率特性を示す。
図13に示した例では、
図6および
図7の例と同様、ピーク波長は400nmとし、m
Pは6.5としている。このように、本実施の形態のユニット10の透過率は、比較例に比べて値の大きい範囲が波長方向に広がっていることがわかる。
【0038】
図14は、本実施の形態のユニット10を含む7つのユニットを組み合わせた場合の透過率の一例を示す図である。
図14において、透過率303は、
図13に示した透過率特性を有する本実施の形態のユニット10と、他の6つのユニットとを組み合わせた合計7つのユニットを用いた場合の透過率を示している。また、透過率304は、
図13に示した比較例のユニットと、上記他の6つのユニットとを組み合わせた合計7つのユニットを用いた場合の透過率を示している。他の6つのユニットは、本実施の形態のユニット10であってもよいし、他の構成のユニットであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
図13に示す透過率特性を有するユニット10を用いて、不要な波長域の透過率を低下させるような特性を他の6つのユニットにより実現することで、
図14に示すように、本実施の形態のユニット10を含む7つのユニットを組み合わせた場合の透過率303では、比較例のユニットを用いた場合の透過率304に比べて、半値幅が広くなっている。なお、これら他の6つのユニットの透過率特性の調整については、一般的な液晶波長可変フィルタにおける技術を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
なお、
図14では、7つのユニットを組み合わせる例を説明したが、組み合われるユニットの数は7つに限定されない。例えば、1つのユニット10を用いてリタデーションを調整して、透過率特性が所望の半値幅となるようにしてもよい。
【0040】
以上、短波長側の半値幅を広げる手法を説明した。上述したように、半値幅を広げるようなリタデーションの調整すなわちメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bへ印加する電圧の調整をピーク波長ごとに実施し、電圧制御部30は、調整により得られたメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bへ印加する電圧をピーク波長ごとに保持しておく。例えば、まず、調整対象のピーク波長が、透過率のピークとなるようにメイン液晶14Aに印加する電圧を調整する。その後、上述したように、半値幅を広げるようなリタデーションとなるようにサブ液晶14Bに印加する電圧を調整する。さらに、必要に応じて、半値幅を広げるようなリタデーションとなるようにサブ液晶14Bに印加する電圧とメイン液晶14Aに印加する電圧を微調整する。さらに、他のユニットを組み合わせて使用する場合にも同様に、他のユニットについても、同様に電圧を調整して、最終的に、ピーク波長ごとに所望の半値幅となるように、全ユニットの電圧を調整する。このような調整により得られた、ユニットごとの電圧をテーブルとして、電圧制御部30に設定しておく。そして、液晶波長可変フィルタ1を使用する際には、電圧制御部30は、テーブルを参照して、所望のピーク波長に対応する電圧を印加するよう各電圧源20を制御する。
【0041】
次に、短波長側で半値幅が所望の値となるように位相差クリスタル13のリタデーションを決定し、長波長側の半値幅を狭めるようにメイン液晶14Aとサブ液晶14Bのリタデーションを調整する手法(以下、長波長側の半値幅を狭める手法と呼ぶ)について説明する。
【0042】
短波長側で半値幅が所望の値となるように位相差クリスタル13のリタデーションを決定する。そして、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bのリタデーションを、位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bの合計のリタデーションが、長波長側で、波長が長くなるに従って急激に減少するように調整する。
図15は、長波長側の半値幅を狭める手法における位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bの合計のリタデーションの一例を示す図である。
【0043】
図15に示すように、位相差クリスタル13、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bの合計のリタデーションが、波長が長くなるに従って急激に減少するように調整することで、長波長側の透過率の半値幅を狭めることができる。
図16は、
図15に示した調整を行った場合の透過率の一例を示す図である。
図16では、1つのユニット10の透過率を示している。透過率305は、本実施の形態のユニット10の透過率を示しており、透過率306は、比較例の透過率を示している。
図16に示すように、本実施の形態のユニット10では、長波長側の透過率のピークの間隔を狭くすることができ、透過率の半値幅を狭めることができる。
【0044】
なお、以上説明した例では、中間部は、位相差クリスタル13とメイン液晶14Aとサブ液晶14Bとの3つの素子で構成されている例を説明したが、液晶波長可変フィルタ1に要求される透過率特性によっては、中間部がメイン液晶14Aとサブ液晶14Bの2つの素子で構成されてもよい。
【0045】
なお、以上の説明では、メイン液晶14Aの光学軸とサブ液晶14Bの光学軸とが直交する例を示した。しかしながら、この例に限定されず、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bを組み合わせて、所望の半値幅を実現するためのリタデーションの特性を実現できれよく、メイン液晶14Aの光学軸とサブ液晶14Bの光学軸とが70°異なる等、光学軸の方向の角度差は90°に限定されない。メイン液晶14Aのリタデーションとサブ液晶14Bのリタデーションとが引き算の関係となるような光学軸の方向の角度差であればよい。さらには、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bの材料が異なる等によりメイン液晶14Aとサブ液晶14Bのリタデーションが異なる場合には、メイン液晶14Aのリタデーションとサブ液晶14Bのリタデーションが足し算になる場合であっても、所望の半値幅を実現するためのリタデーションの特性を実現できる可能性もある。したがって、メイン液晶14Aとサブ液晶14Bを組み合わせて、所望の半値幅を実現するためのリタデーションの特性を実現するように調整できれば、メイン液晶14Aの光学軸とサブ液晶14Bの光学軸との角度差が、メイン液晶14Aのリタデーションとサブ液晶14Bのリタデーションが足し算になるような値であってもよい。
【0046】
また、以上の説明では、半値幅を波長によらずなるべく均等に調整する例を説明したが、このような例に限らず、ある波長ピークに対応する透過率の半値幅を所望の値にしたいといった場合にも、同様にメイン液晶14Aとサブ液晶14Bのリタデーションを調整すればよい。すなわち、電圧制御部30が、複数の透過波長域のうち少なくとも1つの透過波長域に対応する透過率の半値幅が定められた値となるようにメイン液晶14Aとサブ液晶14Bに印加する電圧を制御すればよい。このように、この本実施の形態によれば、各波長ピークに対応する透過率の半値幅を自在に制御することができる。
【解決手段】偏光子11と、検光子12と、偏光子11および検光子12の間に配置されるメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bと、を含むユニット10、を少なくとも1つ有する光学部品と、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに電圧を印加する電圧源と、電圧源がメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧を制御することにより光学部品を透過する光の波長範囲である透過波長域を制御するとともに、メイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bのリタデーションが、光学部品の透過率の半値幅を所望の値に近づけるような波長依存特性を有するようにメイン液晶14Aおよびサブ液晶14Bに印加する電圧を制御する電圧制御部と、を備える。