特許第6715512号(P6715512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715512
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】釣り機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20200622BHJP
   A01K 89/017 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   A01K79/00 F
   A01K89/017
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-118454(P2016-118454)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-221135(P2017-221135A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151944
【氏名又は名称】株式会社東和電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】浜出 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三木 智宏
(72)【発明者】
【氏名】玉森 学
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康平
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−104978(JP,A)
【文献】 特開2002−291388(JP,A)
【文献】 特開2010−273646(JP,A)
【文献】 特開2013−34397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 79/00
A01K 89/00−89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、該回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、前記駆動モータの回転を前記回転ドラムに伝達する電磁クラッチと、前記回転ドラムの回転速度及び回転方向を検出するための回転検出器と、該回転検出器の検出結果に基づいて前記駆動モータ及び前記電磁クラッチを制御する制御部とを備えた釣り機であって、前記電磁クラッチは連結トルクを可変設定可能であり、該連結トルクが前記釣り機の巻下げ方向への機械的負荷を打ち消すトルク値に設定されており、前記制御部は、前記駆動モータを回転させた状態で前記電磁クラッチの連結トルクをゼロから徐々に上げ、前記回転ドラムが回転し始めた際のトルク値を前記連結トルクとして前記電磁クラッチに設定するように構成されていることを特徴とする釣り機。
【請求項2】
前記制御部は、前記回転検出器の出力信号から前記回転ドラムの回転速度を算出する回転速度算出手段と、前記回転検出器の出力信号から前記回転ドラムの回転方向を判別する回転方向判別手段とを有し、前記回転方向判別手段により前記回転ドラムが巻下げ方向の回転となったと判別された場合において、前記回転速度算出手段から得られた回転速度が予め定めた第1の回転速度未満の場合は、前記駆動モータにより前記回転ドラムを巻下げ方向に駆動し、前記回転ドラムの回転速度が前記第1の回転速度以上となった場合は、前記駆動モータによる駆動を停止する制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項に記載の釣り機。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転方向判別手段により前記回転ドラムが巻下げ方向の回転であると判別された場合、前記回転速度算出手段から得られた回転速度に基づいて、前記第1の回転速度を保つために必要とされる前記電磁クラッチへの印加電圧の変更分を算出する印加電圧変更分算出手段と、前記電磁クラッチへの印加電圧を前記印加電圧変更分算出手段により算出された印加電圧の変更分だけ増加又は減少させて印加電圧を調整する印加電圧調整手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項に記載の釣り機。
【請求項4】
前記制御部は、前記回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、前記回転ドラムの回転速度が予め定めた第2の回転速度未満の場合は、前記電磁クラッチを連結し、前記回転ドラムの回転速度が前記第2の回転速度以上となった場合は、前記電磁クラッチの連結を解除する制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の釣り機。
【請求項5】
前記制御部は、前記回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、前記回転ドラムの回転速度が前記第1及び第2の回転速度より大きい予め定めた第3の回転速度以上となった場合は、前記電磁クラッチの連結トルクを制御して最大速度制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項に記載の釣り機。
【請求項6】
釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、該回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、前記駆動モータの回転を前記回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを備えた釣り機の制御方法であって、
前記電磁クラッチの連結トルクを前記釣り機の巻下げ方向への機械的負荷を打ち消すトルク値に設定すると共に、前記駆動モータを回転させた状態で前記電磁クラッチの連結トルクをゼロから徐々に上げ、前記回転ドラムが回転し始めた際のトルク値を連結トルクとして前記電磁クラッチに設定することを特徴とする釣り機の制御方法。
【請求項7】
前記回転ドラムが巻下げ方向の回転であると判別された場合において、前記回転ドラムの回転速度が予め定めた第1の回転速度未満の場合は、前記駆動モータにより前記回転ドラムを巻下げ方向に駆動し、前記回転ドラムの回転速度が前記第1の回転速度以上となった場合は、前記駆動モータによる駆動を停止することを特徴とする請求項に記載の釣り機の制御方法。
【請求項8】
前記回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、前記回転ドラムの回転速度が予め定めた第2の回転速度未満の場合は、前記電磁クラッチを連結し、前記回転ドラムの回転速度が前記第2の回転速度以上となった場合は、前記電磁クラッチの連結を解除することを特徴とする請求項に記載の釣り機の制御方法。
【請求項9】
前記回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、前記回転ドラムの回転速度が前記第1及び第2の回転速度より大きい予め定めた第3の回転速度以上となった場合は、前記電磁クラッチの連結トルクを制御して最大速度制御を行うことを特徴とする請求項に記載の釣り機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船に搭載され、釣り糸を巻き上げ・巻き下げする回転ドラムを回転させて自動的に魚類の釣りを行うための釣り機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣り機は、一般に、釣り糸が巻回されている巻き取り部の軸断面形状が円形である丸型回転ドラムと、この丸型回転ドラムを回転駆動する駆動モータと、駆動モータの回転を制御する制御手段とを備えており、モータは回転ドラムの巻上げ方向のみ動作可能で、錘を下げる際にはモータを停止させ、回転ドラムの回転速度が設定回転速度以上になった場合にパウダークラッチでブレーキをかけ、錘の自重だけで錘(漁具)を沈降させる構成となっている。
【0003】
また、本出願人は、回転ドラムが巻下げ方向の回転になった場合、釣り糸にかかるテンションを所定値に保つために電磁クラッチへの印加電圧を制御して釣り糸の繰出量が必要以上とならないように抑制できる魚釣り機及びその制御方法を提案している(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の魚釣り機において、制御部は、回転検出器の出力信号から回転ドラムの回転速度を算出し、さらに回転ドラムの回転方向を判別し、回転ドラムが巻下げ方向の回転(逆回転)になったと判断される場合、算出された回転速度に基づいて、釣り糸にかかるテンションを所定値に保つために必要とされる電磁クラッチへの印加電圧の変更分を算出し、予め設定された値に算出された印加電圧の変更分を加算又は減算した印加電圧を電磁クラッチに印加して釣り糸にかかるテンションを所定値に保つよう制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−104978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の魚釣り機及び特許文献1に記載の魚釣り機においては、大径ドラム(例えば、φ400mm)を用い、重い錘(例えば、200号〜300号程度)を用いる場合は、錘の自重で錘(漁具)を問題なく沈降させることが可能であるが、小径ドラム(例えば、φ280mm程度、あるいはそれ以下)を用い軽い錘(例えば、120号程度)を用いる場合は、錘の自重だけではドラムを下げ方向に回転させることができず、結果として釣り機の自動制御化が困難であった。これは、下がろうとする錘の重さによる外力より釣機内の機械的負荷が大きいために起こる現象である。この場合、ドラムを下げ方向に強制的に回転させる手法も考えられる。しかしながら、この手法によると、錘が下がらない事態(例えば船のどこかにテグスや錘が引っ掛かる事態)が生じた場合にもドラムが強制的に下げ方向に回転するため、糸巻きドラム部やその他の場所(例えば主軸など)で糸が絡む可能性がある。従って、ドラムを単に巻下げ方向に強制的に回転させる手法は、実用化が難しかった。
【0007】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、小径ドラム、軽い錘を使用した場合でも錘の下がり出しをスムーズに行うことができ、自動制御化を実現できる釣り機及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、釣り機は、釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、駆動モータの回転を回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを備えている。電磁クラッチは連結トルクを可変設定可能であり、この連結トルクが釣り機の巻下げ方向への機械的負荷を打ち消すトルク値に設定されている。
【0009】
連結トルクを可変設定可能な電磁クラッチのこの連結トルクが釣り機の巻下げ方向への機械的負荷を打ち消すトルク値に設定されているため、小径ドラム、軽い錘を使用した場合でも、錘の下がり出しをスムーズにすることができ、釣り糸の巻き下げ及び巻き上げ操作を自動化することができる。
【0010】
回転ドラムの回転速度及び回転方向を検出するための回転検出器と、回転検出器の検出結果に基づいて駆動モータ及び電磁クラッチを制御する制御部とをさらに備えており、この制御部は、駆動モータを回転させた状態で電磁クラッチの連結トルクをゼロから徐々に上げ、回転ドラムが回転し始めた際のトルク値を連結トルクとして電磁クラッチに設定するように構成されていることが好ましい。これにより、電磁クラッチの連結トルクを自動設定することが可能となる。
【0011】
制御部は、回転検出器の出力信号から回転ドラムの回転速度を算出する回転速度算出手段と、回転検出器の出力信号から回転ドラムの回転方向を判別する回転方向判別手段とを有し、この回転方向判別手段により回転ドラムが巻下げ方向の回転となったと判別された場合において、回転速度算出手段から得られた回転速度が予め定めた第1の回転速度未満の場合は、駆動モータにより回転ドラムを巻下げ方向に駆動し、回転ドラムの回転速度が第1の回転速度以上となった場合は、駆動モータによる駆動を停止する制御を行うように構成されていることも好ましい。
【0012】
この場合、制御部は、回転方向判別手段により回転ドラムが巻下げ方向の回転であると判別された場合、回転速度算出手段から得られた回転速度に基づいて、第1の回転速度を保つために必要とされる電磁クラッチへの印加電圧の変更分を算出する印加電圧変更分算出手段と、電磁クラッチへの印加電圧を印加電圧変更分算出手段により算出された印加電圧の変更分だけ増加又は減少させて印加電圧を調整する印加電圧調整手段とをさらに備えていることがより好ましい。
【0013】
制御部は、回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、回転ドラムの回転速度が予め定めた第2の回転速度未満の場合は、電磁クラッチを連結し、回転ドラムの回転速度が第2の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチの連結を解除する制御を行うように構成されていることも好ましい。
【0014】
制御部は、回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、回転ドラムの回転速度が第1及び第2の回転速度より大きい予め定めた第3の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチの連結トルクを制御して最大速度制御を行うように構成されていることも好ましい。
【0015】
本発明によれば、さらに、釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、駆動モータの回転を回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを備えた釣り機の制御方法であって、電磁クラッチの連結トルクを釣り機の巻下げ方向への機械的負荷を打ち消すトルク値に設定する釣り機の制御方法が提供される。
【0016】
駆動モータを回転させた状態で電磁クラッチの連結トルクをゼロから徐々に上げ、回転ドラムが回転し始めた際のトルク値を連結トルクとして電磁クラッチに設定することが好ましい。
【0017】
回転ドラムが巻下げ方向の回転であると判別された場合において、回転ドラムの回転速度が予め定めた第1の回転速度未満の場合は、駆動モータにより回転ドラムを巻下げ方向に駆動し、回転ドラムの回転速度が第1の回転速度以上となった場合は、駆動モータによる駆動を停止することも好ましい。
【0018】
この場合、回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、回転ドラムの回転速度が予め定めた第2の回転速度未満の場合は、電磁クラッチを連結し、回転ドラムの回転速度が第2の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチの連結を解除することも好ましい。
【0019】
回転ドラムが巻下げ方向に回転する際に、回転ドラムの回転速度が第1及び第2の回転速度より大きい予め定めた第3の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチの連結トルクを制御して最大速度制御を行うことも好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、連結トルクを可変設定可能な電磁クラッチのこの連結トルクが釣り機の巻下げ方向への機械的負荷を打ち消すトルク値に設定されているため、小径ドラム、軽い錘を使用した場合でも、錘の下がり出しをスムーズにすることができ、釣り糸の巻き下げ及び巻き上げ操作を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の釣り機の構成例を概略的に示す正面図及び側面図である。
図2図1の釣り機の内部構造を概略的に示す正面図である。
図3図1の釣り機の設置、動作状態を概略的に示す側面図である。
図4図1の釣り機の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図5図1の釣り機を用いて釣り糸を巻下げの際に、巻下げ補助動作を示すフローチャートである。
図6図1の釣り機においてクラッチ補助動作モード用トルクの自動設定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る釣り機及びその制御方法の実施形態を、図を参照して説明する。
【0023】
図1及び図2は本発明の一実施形態における釣り機100の構成を示しており、図3は釣り機100の設置、動作状態を示しており、図4は釣り機100の電気的構成を示している。
【0024】
図1及び図3に示すように、本実施形態に係る釣り機100は、釣り機本体10と、ドラム取付け軸20と、このドラム取付け軸15を介して釣り機本体10に取付けられた1対の回転ドラム30と、1対の釣り糸40と、1対の錘50とを備えている。本実施形態においては、釣り機100が魚釣り機であるとして説明を行うが、本発明の釣り機が、イカ等を釣りの対象としても良いことは明らかである。
【0025】
図2に示すように、釣り機本体10は、ハウシング11と、ハウシング11の内部に配置され、図1に示す回転ドラム30を駆動する駆動モータ12と、駆動モータ12の回転を回転ドラムに伝達する電磁クラッチ13と、回転ドラム30の回転速度及び回転方向を検出する回転検出器14と、回転検出器14の検出結果に基づいて駆動モータ12及び電磁クラッチ13を制御する図4に示す制御部15とを備えている。
【0026】
ハウジング11には、図1(a)に示すように、制御部15の操作パネルが取付けられており、この操作パネルには入力部15a、表示部15b及び電源スイッチ15c等が設けられている。
【0027】
図2に示すように、駆動モータ12は、ハウシング11の下部に設置され、この駆動モータ12の駆動力が電磁クラッチ13及び伝動ギアを介してドラム取付け軸20及び可動軸17に伝達される。可動軸17はドラム取付け軸20を左右に振りながら回転するように構成されている。また、回転検出器14はチェーン16を介して可動軸17に連結される。
【0028】
電磁クラッチ13としては、例えばパウダークラッチが用いられている。パウダークラッチは、駆動側の回転子と被駆動側の回転子との間に細かな鉄粉が充填され、これら回転子部分を外部から電磁石によって磁化できるように構成されている。クラッチが切れた状態では回転子同士が直接的に接触していないため、通常は動力の伝達が行われないが、回転子が磁化されると回転子の間隙にパウダー(細かな鉄粉)が吸い寄せられこの間隙が埋められるので、動力が伝達される仕組みである。このタイプのクラッチでは回転子部分に印加する磁力を調節することで伝達する連結トルクを細かく可変制御できる。なお、電磁クラッチ13は、パウダークラッチに限定されるものではなく、同様の機能を有するものであれば良い。
【0029】
回転検出器14は、回転ドラム30の回転速度及び回転方向を検出するための回転検出器としてのロータリエンコーダである。
【0030】
図4に示すように、制御部15は、キーボード等からなる入力部15aと、液晶ディスプレイ等からなる表示部15bと、CPU15cと、ROM15dと、RAM15eと、回転検出器14の出力信号から回転ドラム30の回転速度を算出する回転速度算出手段15fと、回転検出器14の出力信号から、回転ドラム30が巻上げ方向の回転(正回転)であるか巻下げ方向の回転(逆回転)であるかという、回転ドラム30の回転方向を判別する回転方向判別手段15gと、回転方向判別手段15gにより回転ドラム30が巻下げ方向の回転になったと判別された場合、回転速度算出手段15fから得られた回転速度に基づいて、回転速度を所定の回転速度に保つために必要とされる電磁クラッチ13への印加電圧の変更分を算出する印加電圧変更分算出手段15hと、予め設定された印加電圧に対して印加電圧変更分算出手段15hにより算出された印加電圧の変更分を増加又は減少させて印加電圧を調整する印加電圧調整手段15iとを備えている。
【0031】
CPU15cは、ROM15dに格納された制御プログラムに従って、RAM15eをワークエリアとして使用しながら、釣り機100の全体の動作を制御する。
【0032】
印加電圧変更分算出手段15hは、回転ドラム30が逆回転になったと判断される場合、得られた回転速度に基づいて、釣り糸の巻下げ速度を所定値に保つために必要とされる電磁クラッチ13への印加電圧の変更分を算出するように構成されている。例えば、印加電圧変更分算出手段15hは、回転速度算出手段15fから得られた回転速度とこの回転速度に対応する所定の定数との積を電磁クラッチ13への印加電圧の変更分として算出するようになされる。
【0033】
印加電圧調整手段15iは、電磁クラッチ13を駆動するための所定の電圧設定値(又は巻上力設定値)に、印加電圧変更分算出手段15hが算出した印加電圧の変更分を加算又は減算して得られる印加電圧を電磁クラッチ13に印加する。
【0034】
制御部15は、回転方向判別手段15gにより回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合であって、回転速度算出手段15fから得られた回転速度が所定の回転速度未満の場合は、駆動モータ12により回転ドラム30を巻下げ方向に駆動し、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度以上となった場合は、駆動モータ12を停止するように制御する。また、制御部15は、回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合であって、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度未満の場合は、電磁クラッチ13を連結し、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチ13の連結を解除するように制御する。
【0035】
また、制御部15は、電磁クラッチ13の連結トルクをクラッチ補助動作モードの連結トルクに自動で設定可能である。クラッチ補助動作モードの連結トルクの設定は、後述するように制御部15が自動的に行っても良いし、操作者が手動で行っても良い。手動で行う場合、回転ドラム30が巻き下げ方向に回転するように駆動モータ12を回転させた状態で、電磁クラッチ13の連結トルクをゼロから徐々に上げ、回転ドラム30が回転し始めた際のトルク値をクラッチ補助動作モード用連結トルクとして電磁クラッチ13に設定する。
【0036】
ドラム取付け軸20は、釣り機本体10のハウシング11を挿通するように設けられている。ドラム取付け軸20の両端には、それぞれ回転ドラム30が装着されている。
【0037】
回転ドラム30は、釣り糸が巻回されている巻き取り部31の軸断面形状が円形のドラムである。これら回転ドラム30が釣り機本体10によって、適宜の方向に回転駆動されることにより、釣り糸40が巻上げ又は巻下げされる。 釣り糸40には、枝針や連結針のような疑似餌付の釣り針が取り付けられている。また、釣り糸40の先端に錘50が取付けられている。
【0038】
次に、図面を参照しながら、釣り糸40の巻下げを行う際の釣り機100の制御方法について説明する。図5は釣り機100の巻下げ補助動作を示している。
【0039】
まず、釣り糸40を海中に繰出す巻下げ動作を行う。即ち、図5に示すように、ステップS1で、電源スイッチをオンにして駆動モータ12を巻き下げ方向に回転させ(モータ補助動作させ)、釣り糸40の巻下げ動作を開始する。これにより、回転ドラム30が回転を開始し、先端に錘50が取付けられた釣り糸40が海中に降りて行く。この場合、電磁クラッチ13の連結トルクがクラッチ補助動作モード用連結トルクに設定されているため、釣り機の巻下げ方向への機械的負荷が打ち消され、回転ドラム30が小径であっても、また、錘が軽い場合であっても、錘50の下がり出しをスムーズにすることができる。その結果、釣り糸40の巻き下げ及び巻き上げ操作を自動化しても問題は生じない。
【0040】
次いで、回転ドラム30の回転速度が駆動モータ12によるこのモータ補助動作をオフとすべき回転速度(第1の回転速度、例えば100rpm)となったか否かを判別する(ステップS2)。回転ドラム30の回転速度が第1の回転速度ではないと判別された場合(NOの場合)は、ステップS3へ進み、駆動モータ12をオンのままに維持する。これにより、駆動モータ12は、回転ドラム30が巻下げ方向に回転するモータ補助動作を継続する。一方、ステップS2で回転ドラム30の回転速度が第1の回転速度となったと判別された場合(YESの場合)は、ステップS4へ進み、駆動モータ12をオフとし、ステップS8へ進む。これにより、回転ドラム30は、電磁クラッチ13に接続されているが、駆動モータ12には駆動されない状態となる。
【0041】
ステップS3において、駆動モータ12がオンのままに維持された場合、回転ドラム30の回転速度が電磁クラッチ13によるクラッチ補助動作をオフとすべき回転速度(第2の回転速度、例えば100rpm)となったか否かを判別する(ステップS5)。回転ドラム30の回転速度が第2の回転速度ではないと判別された場合(NOの場合)は、ステップS6へ進み、電磁クラッチ13をオンのままに維持する。これにより、回転ドラム30は、電磁クラッチ13の連結トルクで連結された状態で巻下げ方向に回転駆動するクラッチ補助動作を継続する。一方、ステップS5で回転ドラム30の回転速度が第2の回転速度となったと判別された場合(YESの場合)は、ステップS7へ進み、電磁クラッチ13をオフにする。これにより、回転ドラム30は、フリーとなり、錘50の自重で回転する。
【0042】
次いで、回転ドラム30の回転速度が第1及び第2の回転速度より大きい所定の回転速度(第3の回転速度、例えば200rpm)以上になったか否かを判別する(ステップS8)。回転ドラム30の回転速度が第3の回転速度以上ではないと判別された場合(NOの場合)は、ステップS10へ進む。一方、回転ドラム30の回転速度第3の回転速度以上となったと判別された場合(YESの場合)は、ステップS9で、電磁クラッチ13の連結トルクを制御し、設定された最大速度に到達しないように回転ドラム30の回転を制御する(PI制御)。次いで、釣り糸40の先端の錘50が目標位置に到達したか否かを判別する(ステップS10)。ここで、釣り糸40の先端の錘50が目標位置に到達したと判別された場合(YESの場合)は、ステップS11で、巻下げ動作を終了する。一方、ステップS10で、目標位置に到達していないと判別された場合(NOの場合)は、ステップS2に戻り、上述したステップS2からの処理を繰り返す。
【0043】
次に、電磁クラッチ13のクラッチ補助動作モード用連結トルクの自動設定処理動作を説明する。図6は釣り機100においてクラッチ補助動作モード用トルクの自動設定動作を示している。
【0044】
まず、ステップS21で、クラッチ補助動作モード用連結トルクの自動設定処理を開始する。次いで、カウンタ変数cnt=0にする(ステップS22)。次いで、平均化計算用RAM=0にする(ステップS23)。次いで、電磁クラッチ13のDUTY=0にする(ステップS24)。次いで、駆動モータ12を巻下げ方向に回転させる(ステップS25)。次いで、回転ドラム30が動いたか否かを判断する(ステップS26)。
【0045】
ステップS26において、回転ドラム30が動いていないと判断された場合(NOの場合)は、ステップS27で、電磁クラッチ13のDUTYを+1とする。そして、ステップS26に戻り、上記処理を繰り返す。一方、ステップS26で、回転ドラム30が動いたと判断された場合(YESの場合)は、ステップS28で、電磁クラッチ13の出力値を平均化計算用RAMに加算する。次いで、ステップS29で駆動モータ12及び電磁クラッチ13を一旦停止する。次いで、カウンタ変数cntが所定数になったか否かを判断する(ステップS30)。
【0046】
ステップS30において、カウンタ変数cntが所定数になっていないと判別された場合(NOの場合)は、ステップS31で、電磁クラッチ13のDUTY=0、かつカウンタ変数cntを+1とする。そして、ステップS26に戻り、上記処理を繰り返す。一方、ステップS30で、カウンタ変数cntが所定数になったと判断された場合(YESの場合)は、ステップS32で、電磁クラッチ13の出力値の平均値を算出する(平均化用RAM/所定回数)。次いで、ステップS33で、クラッチ補助動作モード用連結トルクの自動設定処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の釣り機100は、釣り機本体10と、ドラム取付け軸20と、このドラム取付け軸15を介して釣り機本体10取付けられた1対の回転ドラム30と、釣り糸40と、錘50とを備えている。釣り機本体10は、ハウシング11と、駆動モータ12と、電磁クラッチ13と、回転検出器14と、制御部15とを備えている。制御部15は、回転検出器14の出力信号から回転ドラム30の回転速度を算出する回転速度算出手段15fと、回転検出器14の出力信号から回転ドラム30の回転方向を判別する回転方向判別手段15gとを有し、回転方向判別手段15gにより回転ドラムが巻下げ方向の回転になったと判断される場合において、回転速度算出手段15fから得られた回転速度が予め設定された予定の回転速度より低い場合は、駆動モータ12により回転ドラム30を巻下げ方向に駆動し、回転ドラム30の回転が所定の回転速度以上になった場合は、駆動モータ12を停止するように制御する。
【0048】
これにより、小径ドラム、軽い錘を使用した場合でも錘の下がり出しをスムーズにでき、自動化を実現できる。
【0049】
なお、上述した実施形態の釣り機100においては、ドラム取付け軸15に1対の回転ドラム30が取付けられた構成例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの回転ドラム30を設けるようにしても良い。
【0050】
また、上述した実施形態の釣り機100において、補助トルク自動設定モードを有する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
また、上述した実施形態の釣り機100は、魚釣り機の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、イカ釣り機にも本発明を適用できる。
【0052】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、小径ドラム、軽い錘を有する釣り機に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
10 釣り機本体
11 ハウシング
12 駆動モータ
13 電磁クラッチ
14 回転検出器
15 制御部
15a 入力部
15b 表示部
15c CPU
15d ROM
15e RAM
15f 回転速度算出手段
15g 回転方向判別手段
15h 印加電圧変更分算出手段
15i 印加電圧調整手段
20 ドラム取付け軸
30 回転ドラム
40 釣り糸
50 錘
100 釣り機
図1
図2
図3
図4
図5
図6