特許第6715513号(P6715513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715513
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20200622BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20200622BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200622BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20200622BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20200622BHJP
   B41M 1/22 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B32B27/20 A
   B32B27/30 A
   B41M3/00 Z
   B41M1/30 B
   B41M1/22
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-128564(P2016-128564)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-35875(P2017-35875A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-156902(P2015-156902)
(32)【優先日】2015年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 衛
(72)【発明者】
【氏名】深水 敏夫
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−335161(JP,A)
【文献】 特開2004−223755(JP,A)
【文献】 特開2003−255839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
B41M 1/22
B41M 1/30
B41M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材シートの一方の面に、透明性を有する樹脂から成る硬化樹脂層と、着色インキから成る着色インキ層が、それぞれ部分的に設けられており、前記面には、前記硬化樹脂層と前記着色インキ層のいずれも存在していない非塗布部分が存在し、少なくとも当該非塗布部分と前記硬化樹脂層の部分に、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層が積層されていること
前記硬化樹脂層が、透明性を有する(メタ)アクリレート系活性エネルギー線照射硬化性樹脂から形成された層であること、及び
前記透明基材シートにおいて前記硬化樹脂層と前記鏡面印刷インキ層が積層されている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rと、前記透明基材シートにおいて前記硬化樹脂層が存在せずに前記鏡面印刷インキ層が直接、前記透明基材シートに設けられている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rとの比(R/R)が1.4以上であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記透明基材シートの他方の面に、当該面を保護するための表面保護フィルムが積層されていることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記鏡面印刷インキ層の全面を覆うようにして白インキ層が積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記白インキ層の全面を覆うようにして、粘着剤を塗布することによって形成された粘着剤層が積層されていることを特徴とする請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層の表面が、網目状の凹凸を有しており、前記凹凸における凹部の線巾が50〜350μmで、深さが12〜40μmであり、当該凹凸における凸部の一辺の長さが130〜350μmであることを特徴とする請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記硬化樹脂層の合計面積と、前記透明基材シートを通して観察可能な前記鏡面印刷インキ層の合計面積との比率α(硬化樹脂層面積/鏡面印刷インキ層)が、0.16〜0.84の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記着色インキ層の合計面積と、前記透明基材シートの表面積との比率β(着色インキ層面積/透明基材シート表面積)が、0.20〜0.97の範囲内であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鏡面印刷によって鏡面調の金属光沢とマット調の金属光沢を同時に表現できる意匠性を備えた積層フィルム(バックプリント積層体)に関する。又、本発明は、耐溶剤性が良くない樹脂フィルムが基材である場合にも、鏡面印刷インキを塗布することによって光輝性に優れた鏡面調の金属光沢が観察される積層フィルムに関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
これまでに、蒸着アルミニウム顔料やアルミニウム箔片に、バインダーと溶剤を調合した鏡面印刷インキ(ミラーインキ)が知られており(例えば下記の特許文献1及び2)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の透明性を有する基材シートの一方の表面に溶剤系アンカー剤を絵柄状にコーティングした後、硬化させ、更にその上に上記鏡面印刷インキを塗布すると、フィルム側から観察した際に、鏡面印刷インキを塗布した部分が鏡面調の金属光沢部となった装飾用シートが製造できる。
【0003】
しかしながら、上記の装飾シートの場合、鏡面印刷インキが塗布された部分全体が鏡面反射となるために、観察される光輝性は均一なものであり、マット調の金属光沢を有する部分を形成させることはできない。このため、異なる金属光輝性を発現させるには、上記の鏡面印刷インキとは別のメタリックインキを準備し、異なるスクリーン版を用いて2回に分けて塗布を行う必要があり、製造工程が複雑であった。
また、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム等の耐溶剤性に乏しい樹脂フィルムを基材に用いた場合、有機溶剤を溶媒に用いるアンカー剤や鏡面印刷インクを基材表面に塗布すると有機溶剤により膨潤、発泡が発生してアンカー剤、もしくは鏡面印刷インクと基材の界面で密着不良が生じるため、鏡面調の金属光沢部を安定して製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3837597号公報
【特許文献2】特許第3681383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記の従来技術における問題点を解決し、市販の鏡面印刷インキを用いた金属鏡面印刷によって簡単に、鏡面調の金属光沢とマット調の金属光沢を同時に表現できる意匠性を備えた積層フィルムを提供することである。
本発明者は、透明性を有する基材シートの裏面側に設けられる層の構成に関して鋭意検討した結果、透明基材シートの一方の面(裏面側)に、活性エネルギー線照射硬化性樹脂を印刷した後に活性エネルギー線を照射することにより形成された硬化樹脂層と、着色インキを部分的に塗布して形成した着色インキ層と、硬化樹脂層と着色インキ層がいずれも形成されていない部分(非塗布部)を設け、その後、少なくとも非塗布部と硬化樹脂層の部分に、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布して鏡面印刷インキ層を積層させると、鏡面調の金属光沢である部分と、マット調の金属光沢である部分が同時に観察される優れた装飾性を有する積層フィルムが得られることを見出して、本発明を完成した。
又、本発明の課題は、耐溶剤性に乏しい樹脂フィルム(PVCフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム等)を基材として用いた場合であっても光輝性に優れた鏡面調の金属光沢が観察される積層フィルムを提供することでもあり、本発明者は、耐溶剤性に乏しい樹脂フィルムの一方の面(裏面側)に、上記の活性エネルギー線照射硬化性樹脂をアンカー剤として使用して形成した硬化樹脂層を設け、この層の上に、鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層を積層させることにより、光輝性に優れた鏡面調の金属光沢が観察される積層フィルムが得られることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決可能な本発明の積層フィルムは、透明基材シートの一方の面(裏面側)に、透明性を有する樹脂から成る硬化樹脂層と、着色インキから成る着色インキ層が、それぞれ部分的に設けられており、前記面には、前記硬化樹脂層と前記着色インキ層のいずれも存在していない非塗布部分が存在し、少なくとも当該非塗布部分と前記硬化樹脂層の部分に、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層が積層されていること前記硬化樹脂層が、透明性を有する(メタ)アクリレート系活性エネルギー線照射硬化性樹脂から形成された層であること、及び前記透明基材シートにおいて前記硬化樹脂層と前記鏡面印刷インキ層が積層されている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rと、前記透明基材シートにおいて前記硬化樹脂層が存在せずに前記鏡面印刷インキ層が直接、前記透明基材シートに設けられている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rとの比(R/R)が1.4以上であることを特徴とする。
【0007】
又、本発明は、前記の特徴を有する積層フィルムにおいて、前記透明基材シートの他方の面に、当該面を保護するための表面保護フィルムが積層されていることを特徴とするものである。
【0008】
又、本発明は、前記の特徴を有する積層フィルムにおいて、前記鏡面印刷インキ層の全面を覆うようにして白インキ層が積層されていることを特徴とするものである。
【0009】
又、本発明は、前記の特徴を有する積層フィルムにおいて、前記白インキ層の全面を覆うようにして、粘着剤を塗布することによって形成された粘着剤層が積層されていることを特徴とするものである。
この際、本発明では、貼付時に仮留めやエア抜け性能など作業性を向上させるため、粘着剤層の表面にタイラー標準ふるいのメッシュ状(網状)の凹凸が形成されていることが好ましく、この凹凸における凹部の線巾(メッシュ線部の巾に対応する)が50〜350μmで、深さが12〜40μmで、当該凹凸における四角錐台状の凸部(メッシュの目開き部に対応する)の一辺の長さが130〜350μmであることが好ましい。
【0011】
又、本発明は、前記の特徴を有する積層フィルムにおいて、前記硬化樹脂層の合計面積と、前記透明基材シートを通して観察可能な前記鏡面印刷インキ層の合計面積との比率α(硬化樹脂層面積/鏡面印刷インキ層)が、0.16〜0.84の範囲内であることを特徴とするものである。
【0012】
又、本発明は、前記の特徴を有する積層フィルムにおいて、前記着色インキ層の合計面積と、前記透明基材シートの表面積との比率β(着色インキ層面積/透明基材シート表面積)が、0.20〜0.97の範囲内であることを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明の積層フィルムは、透明基材シートの一方の面(裏面側)に、透明性を有する樹脂から成る硬化樹脂層が積層されており、当該硬化樹脂層の表面に更に、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層が積層されていること、及び
前記硬化樹脂層が、透明性を有する(メタ)アクリレート系活性エネルギー線照射硬化性樹脂から形成された層であり、前記透明基材シートにおいて前記硬化樹脂層と前記鏡面印刷インキ層が積層されている部分の、AL標準鏡の反射率に対する、波長500〜2000nmにおける相対反射率が50%以上であることを特徴とする。
【0014】
又、本発明の積層フィルムは、透明基材シートの一方の面(裏面側)に、透明性を有する樹脂から成る硬化樹脂層が設けられた部分と、着色インキから成る着色インキ層が設けられた部分が存在しており、少なくとも前記硬化樹脂層が設けられた部分には、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層が積層されていること、及び
前記硬化樹脂層が、透明性を有する(メタ)アクリレート系活性エネルギー線照射硬化性樹脂から形成された層であり、前記透明基材シートにおいて前記硬化樹脂層と前記鏡面印刷インキ層が積層されている部分の、AL標準鏡の反射率に対する、波長500〜2000nmにおける相対反射率が50%以上であることを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1種類の鏡面印刷インキ(アルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキ)を塗布することにより、鏡面調の金属光沢部分と、マット調の金属光沢部分が同時に観察される装飾性に優れた積層フィルムが得られる。
又、本発明の積層フィルムの場合、硬化樹脂層を構成する樹脂が活性エネルギー線照射硬化性樹脂であるので、PVCフィルム等の耐溶剤性に乏しい樹脂フィルムが基材であっても、膨潤や発泡が発生せず、光輝性に優れた鏡面調の金属光沢が観察され、又、硬化樹脂層又は着色インキ層を介して鏡面印刷インク層が積層された層構成とすることにより、鏡面印刷インク層の基材に対する密着性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)、(b)は、鏡面調の金属光沢とマット調の金属光沢が同時に観察される本発明の積層フィルムの好ましい一例における層構成を示す図であり、(c)は、マット調の金属光沢部が存在せず、透明基材シートの全面に鏡面調の金属光沢のみが観察される本発明の積層フィルムの好ましい一例における層構成を示す図であり、(d)は、マット調の金属光沢部が存在せず、着色インキ層の色と鏡面調の金属光沢のみが観察される本発明の積層フィルムの好ましい一例における層構成を示す図である。
図2】(a)〜(c)は、本発明の積層フィルムの具体例における外観を示す図であり、白く見える部分がマット調の金属光沢部分で、灰色に見える部分が鏡面調の金属光沢部分であり、黒く見える部分が着色インキ層の部分である。又、(d)は、マット調の金属光沢部が存在せず、着色インキ層の色と鏡面調の金属光沢のみが観察される本発明の積層フィルムの具体例における外観を示す図であり、灰色に見える部分が鏡面調の金属光沢部分で、黒く見える部分が着色インキ層の部分である。 一方、(e)は、従来の装飾用シートの外観を示す図であり、耐溶剤性に乏しいPVC樹脂製の透明基材シートの裏面側に硬化樹脂層(溶剤系アンカー剤を硬化させた層)が、数字の形状に対応するようにして設けられ(灰色に見える部分)、この硬化樹脂層以外の部分に着色インキ層が設けられ(黒く見える部分)、硬化樹脂層と着色インキ層の部分を含めたシート全面が覆われるようにして鏡面印刷インキ層が設けられた層構成を有しており、灰色に見える部分においては鏡面調の金属光沢のみが観察されるが、有機溶剤の影響により硬化樹脂層に膨潤や発泡が生じて、(a)〜(d)に見られるような光輝性に優れた鏡面調の金属光沢は観察されない。
図3】対照試料にAL標準鏡を用いて測定された本発明の積層フィルムにおける、従来の鏡面調の金属光沢部分(AL印刷インク部のみ)及び、光輝性に優れた鏡面調の金属光沢部分(UV硬化性樹脂/AL印刷インク部)の相対反射率(波長領域200〜2200nm)を示すグラフである。
図4】対照試料に従来の鏡面調の金属光沢部分(AL印刷インク部のみ)サンプルを用いて測定された、光輝性に優れた鏡面調の金属光沢部分(UV硬化性樹脂/AL印刷インク部)サンプルの相対反射率(波長領域200〜2200nm)の比を示すグラフであり、図3のデータからの計算値も併記されている。
図5】対照試料にAL標準鏡を用いて測定された、比較例で作成した積層フィルムにおける金属光沢部分(溶剤系硬化性樹脂/AL印刷インク部)の相対反射率(波長領域200〜2200nm)を、従来の鏡面調の金属光沢部分(AL印刷インク部のみ)と本発明の実施例と比較したグラフである。
図6】対照試料に従来の鏡面調の金属光沢部分(AL印刷インク部のみ)サンプルを用いて測定された、比較例で作成した積層フィルムにおける金属光沢部分(溶剤系硬化性樹脂/AL印刷インク部)サンプルの相対反射率(波長領域200〜2200nm)の比を示すグラフであり、本発明の実施例と併記されている。
図7】PVC樹脂製の透明基材シートの裏面側にUV硬化性樹脂から形成された硬化樹脂層を設け、更にその層の上に、鏡面印刷インキ(AL印刷インク)を塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層を積層した、本発明の積層フィルムの光輝性に優れた鏡面調の金属光沢部分(PVC/UV硬化性樹脂/AL印刷インク)における、AL標準鏡の反射率に対する相対反射率(波長領域200〜2200nm)を示すグラフであり、比較のために、PET基材シート及びPVC基材シートの裏面側にそれぞれ、直接、鏡面印刷インキ層(AL印刷インク層)が積層された構成の積層フィルムの鏡面調の金属光沢部分における、AL標準鏡の反射率に対する相対反射率が併記されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、鏡面調の金属光沢とマット調の金属光沢が同時に観察される本発明の積層フィルムの詳細を、図1(a)及び(b)を用いて説明する。
図1(a)、(b)に示されるように、本発明の積層フィルムにあっては、透明基材シート1の一方の面(裏面側)に、透明性を有する(メタ)アクリレート系の活性エネルギー線照射硬化性樹脂を印刷した後に活性エネルギー線を照射することによって形成された硬化樹脂層2と、着色インキを印刷することによって形成された着色インキ層3が、それぞれ部分的に設けられており、マット調の金属光沢が観察される部分として、硬化樹脂層2と着色インキ層3のいずれも設けられていない非塗布部分が存在している。そして、本発明では、金属光輝性を発現させるための層として、少なくとも上記非塗布部分と硬化樹脂層の部分を覆う鏡面印刷インキ層4が設けられている。
本発明における透明基材シート1としては、塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を15重量部以上添加した、透明な軟質ポリ塩化ビニルフィルムが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0018】
又、本発明における硬化樹脂層2を形成する際に使用される活性エネルギー線照射硬化性樹脂は、活性エネルギー線を照射した際に硬化可能な樹脂であれば良く、その種類が限定されるものではないが、紫外線照射により硬化可能な紫外線硬化性樹脂や、電子戦照射により硬化可能な電子線硬化性樹脂等が一般的であり、市販の(メタ)アクリレート系の紫外線硬化性樹脂が最も一般的である。
本発明において、透明基材シート1としてポリ塩化ビニル(PVC)フィルムを用いる場合には、無溶剤で市販のPVC用UV硬化性インキが選択され、例えば、セイコーアドバンス社製のUVタイプインキ(商品名:UVAシリーズ)が使用できる。この硬化樹脂層2の一般的な厚みは1〜6μm、好ましくは2〜5μmである。尚、本発明における着色インキ層3は特に限定されるものではなく、市販のものが広く使用でき、1種類の色に限定されず、複数種の着色インキによってカラー画像が表現されても良い。又、着色インキ層3の一般的な厚みは1〜5μm、好ましくは2〜4μmである。
本発明における硬化樹脂層2及び着色インキ層3は、スクリーン印刷法によって形成されたものであることが好ましく、スクリーン印刷法に適したPVC用UV硬化性インキ及び着色インキを選択することが好ましい。
【0019】
本発明における鏡面印刷インキ層4は、図1(a)に示されるようにして、硬化樹脂層2と着色インキ層3の部分を含めた透明基材シート1の裏面側全面が覆われるようにして設けられても、図1(b)に示されるようにして、硬化樹脂層と着色インキ層がいずれも形成されていない非塗布部分と硬化樹脂層が存在する部分に設けられてもよく、この際、鏡面印刷インキ層4は、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することによって形成される。
この際に使用される鏡面印刷インキとしては、市販のものが広く使用でき、例えば、帝国インキ製造社製のミラーインキ(商品名:ミラーシルバー)や、セイコーアドバンス社製の鏡面インキ等が使用できる。この鏡面印刷インキ層4の厚みは2〜10μm程度が一般的であり、3〜8μmが好ましく、鏡面印刷インキ層4は、スクリーン印刷法によって形成されたものであることが好ましい。尚、本発明では、上記の鏡面印刷インキに硬化剤を添加することが好ましく、この場合には、鏡面印刷インキ層の密着性を高めることができる。
【0020】
本発明では、透明基材シート1の他方の面(観察側の表面)に、図1(a)、(b)に示されるようにして、当該面の保護、ならびに印刷加工時の積層フィルムに腰(剛性)を持たせる支持体として表面保護フィルム5が積層されていることが好ましく、この表面保護フィルム5は、表面保護フィルム5の裏面側に設けられた微粘着剤層6を介して透明基材シート1の表面に積層される。この表面保護フィルム5としては、市販の保護用PETフィルムが利用できる。
【0021】
又、本発明では、図1(a)に示されるように、鏡面印刷インキ層4の全面を覆うようにして、あるいは図1(b)に示されるように、着色インキ層3及び鏡面印刷インキ層4を覆うようにして、白インキ層7が設けられていることが好ましい。この白インキ層7は、積層フィルムを貼着する対象物(被着体)自身の色が観察されないように隠蔽性を付加するために設けられ、市販のスクリーン印刷用インキを用いて形成されたものであることが好ましく、厚みは、3〜15μm程度が一般的であり、5〜10μmが好ましい。
【0022】
又、本発明では、図1(a)、(b)に示されるように、白インキ層7の全面を覆うようにして、粘着剤、好ましくはアクリル系粘着剤を塗布することによって形成された粘着剤層8が設けられていることが好ましく、これによって、本発明の積層フィルムを任意の対象物に貼着することが可能となる。この際、図1(a)、(b)に示されるように、粘着剤層8の保護を目的として粘着剤層面に剥離紙ライナー9を積層するのが一般的であり、剥離紙ライナー9としては、表面に離型剤がコーティングされた市販品が利用できる。粘着剤層の剥離ライナー側の表面にはタイラー標準ふるいのメッシュ状に凹凸を形成して貼付時の仮留めやエア抜け性能など作業性を向上させることができる。メッシュの線部が凹部、メッシュの目開き部が凸部となり、線部の巾が50〜350μm、深さ12〜40μm、目開き部の一辺の長さが130〜350μmになるように調節する。
【0023】
図1(a)、(b)に示される層構成を有した本発明の積層フィルムにおいては、透明基材シート1の下側の表面に設けられた硬化樹脂層2と鏡面印刷インキ層4が積層されている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rと、透明基材シート1において硬化樹脂層が存在せずに鏡面印刷インキ層4が直接、透明基材シート1の下側表面に設けられている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rとの比(R/R)が1.4以上であり、相対反射率がRである部分を透明基材シート1の表面側(図面の上側の表面)から観察した際には、鏡面調の金属光沢が観察され、相対反射率がRである部分を透明基材シート1の表面側から観察した際には、マット調の金属光沢が観察される。
【0024】
又、本発明では、硬化樹脂層2の合計面積と、透明基材シートを通して観察可能な鏡面印刷インキ層の合計面積との比率α(硬化樹脂層面積/鏡面印刷インキ層面積)が、0.16〜0.84の範囲内であることが好ましく、上記比率αが0.16未満の場合には、アンカー剤の効果をもつ硬化樹脂との接触面積が減少するため、透明基材シートと鏡面印刷インクの界面で密着不良が発生し、逆に、上記比率αが0.84を超えた場合には、意匠の観点からマット調の金属光沢状に観察される部分がキズやかすれなどの欠陥のように見え、外観が悪くなるので好ましくない。
【0025】
又、本発明では、着色インキ層3の合計面積と、透明基材シート1の表面積との比率β(着色インキ層面積/透明基材シート表面積)が、0.20〜0.97の範囲内であることが好ましく、上記比率βが0.20未満の場合には、意匠デザインの観点から鏡面部分が強調され過ぎて製品として成立しなくなり、逆に、上記比率βが0.97を超えた場合には、鏡面印刷インクの効果を引き出すことが困難となり、非常に高価な鏡面印刷インクを利用する価値が見いだせないので好ましくない。
【0026】
本発明の積層フィルムの場合には、図2(a)〜(c)に示されるように、硬化樹脂層と鏡面印刷インキ層が積層された部分(灰色に見える部分)が鏡面調の金属光沢を有しており、硬化樹脂層が存在せずに、透明基材シートの裏面側に直接、鏡面印刷インキ層が積層された部分(白く見える部分)がマット調の金属光沢を有しており、異なる2種類の金属光沢部分が同時に観察されることによって優れた装飾性が発揮される。尚、図2(a)〜(c)において黒く見える部分については、着色インキ自身の色が観察される。図2(a)〜(c)は、本発明の積層フィルムが有する優れた装飾性を説明するための具体例であって、この他の模様(文字、図形、絵柄等)をマット調の金属光沢によって、あるいは鏡面調の金属光沢によって表現することができる。
これに対して、図2(e)に示される従来の装飾用シートの場合には、透明基材シート(材質:ポリ塩化ビニル樹脂)の裏面側に、数字の形状に対応するようにして、溶剤系アンカー剤を用いて硬化樹脂層が設けられ、この硬化樹脂層以外の部分に着色インキ層が設けられており、これら硬化樹脂層と着色インキ層を覆うようにして基材シートの全面に鏡面印刷インキ層が設けられた層構成を有するが、アンカー剤に含まれる有機溶剤により硬化樹脂層の膨潤や発泡が生じて、数字の形状全体に発現する鏡面調の金属光沢が低下し、光輝性に優れた鏡面調の金属光沢は観察されない。
【0027】
図2(a)〜(c)と図2(e)の比較からわかるように、本発明の積層フィルムの場合には、透明基材シートの裏面側に硬化樹脂層を任意の文字や図形や絵柄状に設けることにより、従来の装飾用シートの場合には得られない優れた装飾性が発揮される。
【0028】
次に、図1(c)及び(d)に示される層構成を有した本発明の積層フィルムについて説明する。
図1(c)に示される構成を有した本発明の積層フィルムは、透明基材シート1の一方の面(裏面側)に、透明性を有する樹脂から成る硬化樹脂層2が設けられ、更にその上に、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層4が積層された層構成を有しており、この硬化樹脂層2は、前述の透明性を有する(メタ)アクリレート系活性エネルギー線照射硬化性樹脂から形成された層である。
このような層構成を有する本発明の積層フィルムの場合、鏡面印刷インキ層4が、透明基材シート1の一方の面(裏面側)に設けられた硬化樹脂層2と全面で接することによって、硬化樹脂層2と鏡面印刷インキ層4が積層されている部分の、波長500〜2000nmにおける反射率が大きくなり(相対反射率R1が50%以上)、鏡面に近い高い光輝性が観察され、鏡面印刷インキ層4の透明基材シート1に対する接着性も改善される。
尚、図1(a)〜(d)において、符号5〜9はそれぞれ、表面保護フィルム、微粘着剤層、白インキ層、粘着剤層、剥離紙ライナーである。
【0029】
又、図1(d)に示される構成を有した本発明の積層フィルムは、透明基材シート1の一方の面(裏面側)に、透明性を有する樹脂から成る硬化樹脂層2と、着色インキから成る着色インキ層3が存在し、少なくとも硬化樹脂層2の部分に、アルミニウム顔料粒子またはアルミニウム箔片が顔料として分散されてなる鏡面印刷インキを塗布することにより形成された鏡面印刷インキ層4が積層されており、この硬化樹脂層2は、前述の透明性を有する(メタ)アクリレート系活性エネルギー線照射硬化性樹脂から形成されたものである。
上記の図1(d)の層構成を有する本発明の積層フィルムにおける透明基材シート1としては、有機溶剤に対する耐性が良くない軟質ポリ塩化ビニルフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられ、この積層フィルムも、図1(c)の積層フィルムと同様、鏡面印刷インキ層4が硬化樹脂層2を介して透明基材シート1に積層されることで、図2(d)に示されるような高い光輝性が観察され、層間接着強度も高い。
【実施例】
【0030】
実施例1:本発明の積層フィルムの製造例1
透明基材シートとして、市販の透明軟質ポリ塩化ビニルフィルム(日本カーバイド工業社製、商品名:ハイエスペイント5085−80DP、厚み80μm)を準備し、硬化樹脂層を形成させるための紫外線硬化型アンカー剤として、紫外線硬化型インキ(セイコーアドバンス社製、商品名:UV Y1439 ACMクリヤー)を準備した。そして、300メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷を行い、図1(a)に示されるようにして透明基材シートの裏面側に紫外線硬化型アンカー剤を塗布し、塗布側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、硬化樹脂層(厚み2〜3μm)を形成させた。その後、塩化ビニル用の着色インキを用いて、上記と同様にスクリーン印刷を行い、乾燥を行って、図1(a)に示されるような着色インキ層(厚み2〜3μm)を形成させた。この際、硬化樹脂層の合計面積と、透明基材シートを通して観察可能な鏡面印刷インキ層の合計面積との比率α(硬化樹脂層面積/鏡面印刷インキ層)が図2(a)(b)(c)において、それぞれ0.3、0.37、0.75となるようにし、着色インキ層の合計面積と、透明基材シートの表面積との比率β(着色インキ層面積/透明基材シート表面積)が0.62となるようにした。
そして、鏡面印刷インキ層を形成させるための鏡面印刷インキとして、セイコーアドバンス社製、商品名:鏡面インキ700CX(MIRROR INK 700CX)を準備し、硬化樹脂層と着色インキ層の部分を含めた透明基材シートの全面が覆われるようにして、上記鏡面印刷インキをスクリーン印刷(300メッシュのスクリーンを使用)によって塗布し、乾燥を行い、鏡面印刷インキ層(厚み5〜6μm)を形成させた。その後、市販のスクリーン印刷用白色インキを用いて、上記鏡面印刷インキ層の全面にスクリーン印刷により白色インキを塗布し、乾燥を行って、白インキ層(厚み7〜8μm)を形成させ、更に上記白インキ層の全面に、市販のアクリル系粘着剤を日栄化工社製の凹凸剥離紙ライナーMX3(メッシュ数65メッシュ)の表面に塗布して、粘着剤層表面の凹凸部が線部巾110μm、深さ20μm、見開き部一辺の長さ330μmとなるように粘着加工したものを転写して積層した。
尚、透明基材シートの表面側には、市販の表面保護用PETフィルム(厚み19μm)の表面にアクリル系微粘着剤層(厚み18μm)が設けられた保護フィルムを、上記微粘着剤層が透明基材シートの表面と接するようにして貼着し、図1(a)に示される積層構造を有した本発明の積層フィルムを製造した。
【0031】
上記で得られた本発明の積層フィルムを、透明基材シートの表面側(図1(a)の上側)から観察した際、硬化樹脂層と鏡面印刷インキ層が積層された部分は鏡面調の金属光沢が観察され、透明基材シートの裏面側に直接、鏡面印刷インキ層が設けられた部分はマット調の金属光沢が観察され、透明基材シートの裏面側に着色インキ層が設けられた部分は着色インキ自身の色が観察され、異なる2種類の金属光沢が同時に観察されることによって優れた装飾性を有するものであることが確認された。
【0032】
〔1回反射測定器によるAL標準鏡を用いた相対反射率の測定〕
紫外可視分光光度計のV-570(日本分光(株))と1回反射測定装置(日本分光(株))を使用して、1回反射でのAL標準鏡との相対反射率を測定した。
まず、1回反射測定ユニット内の試料側及び対照側試料台にアルミニウムを蒸着した標準鏡(AL標準鏡)をセットしてベースラインを測定し、その後、試料側台のAL標準鏡をアルミニウム箔片の印刷用インキのフィルム試料(本発明の金属光沢部分)に替えて測定して相対反射率を測定した。上記の測定を、従来の鏡面調の金属光沢部分(AL印刷インク部のみ)と、光輝性に優れた鏡面調の金属光沢部分(UV硬化性樹脂/AL印刷インク部)のそれぞれについて2つのサンプルを用いて行い、AL標準鏡の反射率に対する相対反射率を測定した。測定条件は、以下のとおりである。
(測定条件)測光モード:%R、スペクトルバンド幅[UV:2nm NIR:8nm]、レスポンス:Fast、波長走査範囲:2200-200nm、走査速度:400nm/min
この測定結果が図3に示されている。
【0033】
〔1回反射測定器によるUV硬化性樹脂とアルミニウム箔片印刷用インキサンプルを用いた相対反射率の測定〕
紫外可視分光光度計のV-570(日本分光(株))と1回反射測定装置(日本分光(株))を使用して、アルミニウム箔片の印刷用インキのみの試料とUV硬化性樹脂/アルミニウム箔片印刷用インキの試料を用いた時の相対反射率を測定した。
まず、試料側及び対照側試料台にAL標準鏡をセットしてベースラインを測定し、その後、対照側のAL標準鏡をアルミニウム箔片の印刷用インキのみの試料(マット調の金属光沢部分)に替え、試料側のAL標準鏡をUV硬化性樹脂/アルミニウム箔片印刷用インキの試料(鏡面調の金属光沢部)に替えて相対反射率を測定した。測定条件は、以下のとおりである。
(測定条件)測光モード:%R、スペクトルバンド幅[UV:2nm NIR:8nm]、レスポンス:Fast、波長走査範囲:2200-200nm、走査速度:400nm/min
この測定結果が図4に示されている。
【0034】
図4の結果は、上記の方法により測定された相対反射率が、図3のデータからの計算値と良く一致していること、及び、本発明の積層フィルムにおける、硬化樹脂層と鏡面印刷インキ層が積層されている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rと、硬化樹脂層が存在せずに鏡面印刷インキ層が直接、透明基材シートに設けられている部分の、波長領域500〜2000nmにおける相対反射率Rとの比(R/R)が1.4以上であることを示している。
【0035】
比較例:硬化樹脂層として、溶剤系硬化性樹脂を印刷することにより形成された層を設けた場合との相対反射率の比較試験
透明基材シートとして、実施例1に記載の透明軟質ポリ塩化ビニルフィルムを準備し、硬化樹脂層を形成させるための溶剤系硬化性樹脂として、以下の表1に記載される4種類の2液型溶剤系硬化性樹脂(セイコーアドバンス社製、商品名:SG700遅乾(Z)800メジウム;帝国インキ社製、商品名:EG−000メジウム;帝国インキ社製、商品名:XGワニス3/1000;NAZDAR社製ニス)を準備し、表1に記載される硬化剤を添加した。そして、300メッシュのスクリーン版を用いてスクリーン印刷を行い、図1(a)に示されるようにして透明基材シートの裏面側に上記の溶剤系硬化性樹脂を塗布し、硬化樹脂層(厚み2〜3μm)を形成させた。その後、鏡面印刷インキ層を形成させ、鏡面調の金属光沢部とマット調の金属光沢部をもつ積層フィルムを製造した。
【0036】
【表1】
【0037】
上記で得られた積層フィルムについて、前記実施例と同様にして、相対反射率の比、及び反射率測定を行った。
この測定結果が図5及び図6に示されている。
この図5及び図6の結果と、図3及び図4の結果の比較から、UV硬化性樹脂(無溶剤タイプ)を使用した場合の方が、溶剤系硬化性樹脂を使用した場合よりも、高い鏡面調の金属光沢が得られ、光輝性が優れていることがわかった。尚、溶剤系硬化性樹脂を使用した場合に高い鏡面調の金属光沢が得られない理由としては、耐溶剤性に劣るPVC基材は溶剤によって基材表面の膨潤が生じたり、または残留溶剤による発泡などの影響でマット調になって、光輝性が損なわれると考えられる。
【0038】
実施例2:本発明の積層フィルムの製造例2
実施例1で使用した透明基材シート(透明軟質ポリ塩化ビニルフィルム)の一方の面(裏面側)全体に、300メッシュのスクリーン版を用いてスクリーン印刷を行い、図1(c)に示されるようにして透明基材シートの裏面側に、実施例1で使用した紫外線硬化型アンカー剤を塗布し、塗布側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、硬化樹脂層(厚み2〜3μm)を形成させた。その後、この硬化樹脂層の全面を覆うようにして、実施例1で使用した鏡面印刷インキをスクリーン印刷(300メッシュのスクリーン版を使用)によって塗布し、乾燥を行い、鏡面印刷インキ層(厚み5〜6μm)を形成させた。
その後、実施例1と同様にして、白インキ層を形成させ、更に粘着加工を施し、粘着剤層の表面を剥離紙ライナーで保護する一方、透明基材シートの表面に、実施例1と同様の保護フィルムを貼着して、図1(c)に示される積層構造を有した本発明の積層フィルムを製造した。
【0039】
上記で得られた本発明の積層フィルム(PVCフィルム/UV硬化性樹脂/AL印刷インク)の鏡面調の金属光沢部分の、AL標準鏡の反射率に対する、波長200〜2200nmにおける相対反射率を、前記実施例1と同様の方法で測定した。その結果、図7に示されるように、波長500〜2000nmの範囲の相対反射率は50%以上であることが確認された。
【0040】
実施例3:本発明の積層フィルムの製造例3
実施例1で使用した透明基材シート、紫外線硬化型アンカー剤、着色インキ、鏡面印刷インキ、白インキを用いて、実施例1と同様の製造工程により、図1(d)に示される積層構造を有した本発明の積層フィルムを製造した。
このようにして得られた積層フィルムの場合、着色インキ層が設けられた部分は着色インキ自身の色が観察され、着色インキ層が存在していない鏡面調の金属光沢部分においては高い光輝性が観察され、鏡面調の金属光沢部分における、AL標準鏡の反射率に対する、波長500〜2000nmの範囲の相対反射率は50%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の積層フィルムは、1種類の鏡面印刷インキを塗布して形成された鏡面印刷インキ層によって、鏡面調の金属光沢と、マット調の金属光沢が同時に観察される装飾性に優れたものであり、このような積層フィルムの裏面側に凹凸形状を有する粘着加工を施すことにより、種々の対象物に簡単に貼着でき、装飾性に優れたラベルやステッカー等として広く利用することができる。
又、耐溶剤性に乏しい透明基材シートの裏面に活性エネルギー線照射硬化性樹脂を硬化させることにより形成された硬化樹脂層を介して鏡面印刷インキ層が透明基材シートに積層された層構成を有する本発明の積層フィルムにおいては、上記硬化樹脂層によって鏡面印刷インキ層の反射率が大きくなり、鏡面調の金属光沢が観察され、優れた意匠性を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 透明基材シート
2 硬化樹脂層
3 着色インキ層
4 鏡面印刷インキ層
5 表面保護フィルム(保護用PETフィルム)
6 微粘着剤層
7 白インキ層
8 粘着剤層
9 剥離紙ライナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7