特許第6715570号(P6715570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715570
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】配管探傷装置及び配管探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
   G01N27/90
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-31942(P2015-31942)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-153753(P2016-153753A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】浦田 幹康
(72)【発明者】
【氏名】黒川 政秋
(72)【発明者】
【氏名】川浪 精一
(72)【発明者】
【氏名】浦田 直矢
(72)【発明者】
【氏名】椿▲崎▼ 仙市
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−264512(JP,A)
【文献】 特開2004−294341(JP,A)
【文献】 実開昭54−156589(JP,U)
【文献】 特開昭61−133856(JP,A)
【文献】 特開平06−186207(JP,A)
【文献】 特開平05−312787(JP,A)
【文献】 特開平08−240568(JP,A)
【文献】 特開2004−251839(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103868986(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0124109(US,A1)
【文献】 実開平02−104194(JP,U)
【文献】 特開平04−269654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 − G01N 27/90
G01R 33/00 − G01R 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内周面に形成される減肉部を調査するための配管探傷装置であって、
調査対象となる配管の内周面に対して相対移動可能に配置され、前記配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、前記配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出可能なコイルユニットと、
前記コイルユニットが検出する前記渦電流、及び前記コイルユニットと前記配管との相対位置に基づいて前記減肉部の面積の大きさを評価する減肉面積評価部と、
前記減肉面積評価部で評価された前記減肉部の面積の大きさ、及び前記コイルユニットで検出された前記減肉部における前記渦電流の大きさに基づいて、前記減肉部の深さを算定する減肉深さ算定部と
を備え、
前記コイルユニットは、回転軸と、前記回転軸に固定されたハウジングと、前記コイルユニットが前記配管の内部に配置された状態において前記ハウジングの外周面から径外方向に突出するように取り付けられたコイル支持体であって前記配管の内周面の周方向に沿って回転可能なコイル支持体と、前記コイル支持体の外周面に配置され、前記配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、前記配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出可能な少なくとも一つのコイルと、を含み、前記配管の軸方向に移動可能に構成され、
前記減肉面積評価部は、前記配管の内周面のうち、閾値を超える大きさの前記渦電流が検出された範囲に基づいて前記減肉部の面積の大きさを評価するように構成され、
前記コイルユニットは、
前記回転軸と前記ハウジングとの間に設けられた付勢手段であって前記コイル支持体を前記配管の内周面に向けて付勢する付勢手段と、
前記コイル支持体における前記ハウジングの外周面から径外方向に突出した部分に取り付けられたガイドであって、前記配管の周方向に沿って延在するガイド面であって周方向の少なくとも一方に前記配管の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有するガイド面を有するガイドと、を有すること
を特徴とする配管探傷装置。
【請求項2】
前記減肉深さ算定部は、
少なくとも一つの参照用の配管の内周面に形成される減肉部の面積の大きさ、及び該減肉部における渦電流の大きさに関連付けられた該減肉部の深さが記憶された記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記減肉面積評価部で評価された前記減肉部の面積の大きさ、及び前記コイルユニットで検出された前記減肉部における前記渦電流の大きさに基づいて、前記減肉部の深さを算定する深さ算定部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の配管探傷装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記減肉部の深さを前記減肉部の面積の大きさごとに記憶していること
を特徴とする請求項2に記載の配管探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管探傷装置及び配管探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベンショナルボイラや排ガスボイラ(HRSG)では、酸素腐食やアルカリ腐食等の内面減肉による配管の損傷の可能性がある。配管の損傷は比較的広範囲に及ぶ傾向があり、損傷が生じると対策・復旧工事に多大な費用が必要になる。したがって、プラントの安定運用のためには、配管の損傷をいち早く検出し、プラントのトラブルを未然に防止する必要がある。
【0003】
特許文献1には、データ採取部、判断部、及び記録部より構成される渦流探査検査システムが開示されている。データ採取部は、配管の中に挿入され測定データを出力するプローブと、この測定データを画面にリサージュ波形として表示するECT探傷器とから構成され、判断部は、このリサージュ波形からファジィ手法により欠陥の有無、種類、及び程度を判断するパーソナルコンピュータから構成される。また、記録部は、このパーソナルコンピュータと、この出力をプリントするプリンタとにより構成される。
【0004】
かかる渦流探査検査システムを用いた配管の渦流探傷検査判定方法では、配管の内部にプローブを挿入し、ECT探傷器によって得られるリサージュ波形の位相に対応して外面欠陥、肉厚貫通欠陥、内面欠陥のメンバーシップ関数、及びこれに対応して欠陥の程度を表す外面欠陥度合メンバーシップ関数、貫通欠陥度合メンバーシップ関数、及び内面欠陥度合メンバーシップ関数を予め作成しておき、測定された位相角より欠陥の種類と程度を判別する、とされている。
【0005】
また、かかる渦流探査検査システムを用いた配管の渦流探傷検査判定方法では、配管の内部にプローブを挿入し、ECT探傷器によって得られるリサージュ波形の面積に対応して減肉率の大きさごとのメンバーシップ関数、及びこれに対応する欠陥の大きさの程度を表す欠陥度合メンバーシップ関数を予め作成しておき、測定された減肉率より欠陥の大きさの程度を判定する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−312787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する渦流探査検査システム及び配管の渦流探傷検査判定方法は、非磁性材を材料とする配管を対象としたものであり、磁性材を材料とする配管の減肉量変化に伴う位相角の変化量は少なく、磁性材を材料する配管の内周面に形成される減肉部の深さ(減肉量)を定量的に評価できない。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の減肉量を定量的に評価できる配管探傷装置及び配管探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る配管探傷装置は、
配管の内周面に形成される減肉部を調査するための配管探傷装置であって、
調査対象となる配管の内周面に対して相対移動可能に配置され、前記配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、前記配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出可能なコイルユニットと、
前記コイルユニットが検出する前記渦電流、及び前記コイルユニットと前記配管との相対位置に基づいて前記減肉部の面積の大きさを評価する減肉面積評価部と、
前記減肉面積評価部で評価された前記減肉部の面積の大きさ、及び前記コイルユニットで検出された前記減肉部における前記渦電流の大きさに基づいて、前記減肉部の深さを算定する減肉深さ算定部と
を備える。
【0010】
本発明者らによる鋭意検討の結果、配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された渦電流を検出するコイルユニットでは、減肉部の面積が同一である場合に、減肉部の深さと渦電流の大きさとの間に相関があり、減肉部の面積が異なる場合には減肉部の深さが同一であっても渦電流の大きさが同一にならないことを見いだした。具体的には、減肉部の面積が同一である場合には、渦電流の大きさを検出すれば、減肉部の深さを算定することができることを見いだした。
上記(1)の構成によれば、コイルユニットが調査対象となる配管の内周面に対して相対移動可能に配置され、コイルユニットが配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された渦電流を検出する。そして、減肉面積評価部は、コイルユニットが検出する渦電流、及びコイルユニットと配管との相対位置に基づいて減肉部の面積の大きさを評価する。そして、減肉深さ算定部は、減肉面積評価部で評価された減肉部の面積の大きさ、及びコイルユニットで検出された減肉部における渦電流の大きさに基づいて、減肉部の深さ(減肉量)を算定する。これにより、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の減肉量が算定され、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の減肉量を定量的に評価できる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記減肉深さ算定部は、
少なくとも一つの参照用の配管の内周面に形成される減肉部の面積の大きさ、及び該減肉部における渦電流の大きさに関連付けられた該減肉部の深さが記憶された記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記減肉面積評価部で評価された前記減肉部の面積の大きさ、及び前記コイルユニットで検出された前記減肉部における前記渦電流の大きさに基づいて、前記減肉部の深さを算定する深さ算定部と
を有する。
【0012】
上記(2)の構成によれば、少なくとも一つの参照用の配管の内周面に形成される減肉部の面積、及び該減肉部における渦電流の大きさに関連付けられた該減肉部の深さが記憶された記憶部を参照し、減肉面積評価部で評価された減肉部の面積の大きさ、及びコイルユニットが検出した渦電流の大きさに基づいて、減肉部の深さ(減肉量)を算定する。これにより、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の減肉量が算定されるので、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の減肉量を定量的に評価できる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記記憶部は、前記減肉部の深さを前記減肉部の面積の大きさごとに記憶している。
【0014】
上記(3)の構成によれば、減肉部の深さを減肉部の面積の大きさごとに記憶しているので、減肉部の面積の大きさごとに渦電流の大きさに基づいて減肉部の深さ(減肉量)を算定する。これにより、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の減肉量が正確に算定されるので、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の減肉量を正確かつ定量的に評価できる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれか一つの構成において、
前記コイルユニットは、コイル支持体と、前記コイル支持体の外周面に前記配管の内周面の周方向に沿って配置され、前記配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、前記配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出可能な複数のコイルと、を含み、前記配管の軸方向に移動可能に構成され、
前記減肉面積評価部は、前記複数のコイルのうち、閾値を超える大きさの前記渦電流を検出したコイルの個数に基づいて前記減肉部の面積の大きさを評価する。
【0016】
上記(4)の構成によれば、コイル支持体の外周面に配管の内周面の周方向に沿って配置される複数のコイルが配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された渦電流を検出する。そして、複数のコイルのうち、閾値を超える大きさの渦電流を検出したコイルの個数に基づいて減肉部の面積の大きさが評価される。これにより、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の面積の大きさが評価されるので、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の面積の大きさを定量的に評価できる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれか一つの構成において、
前記コイルユニットは、前記配管の内周面の周方向に沿って回転可能なコイル支持体と、前記コイル支持体の外周面に配置され、前記配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、前記配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出可能な少なくとも一つのコイルと、を含み、前記配管の軸方向に移動可能に構成され、
前記減肉面積評価部は、前記配管の内周面のうち、閾値を超える大きさの前記渦電流が検出された範囲に基づいて前記減肉部の面積の大きさを評価する。
【0018】
上記(5)の構成によれば、配管の内周面の周方向に沿って回転可能なコイル支持体の外周面に配置される少なくとも一つのコイルが配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された渦電流を検出する。そして、配管の内周面のうち、閾値を超える大きさの渦電流を検出する範囲に基づいて減肉部の面積の大きさが評価される。これにより、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の面積の大きさが評価されるので、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の面積の大きさを定量的に評価できる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記コイルユニットは、前記コイル支持体を前記配管の内周面に向けて付勢する付勢手段を有する。
【0020】
本発明者らによる鋭意検討の結果、同一面積及び同一深さの減肉部の周りに誘起される渦電流を検出する場合でも、コイルと調査対象となる配管の内周面との距離が近いと大きな信号レベルを検出することができ、距離が離れると小さな信号レベルしか得られないことを見いだした。これにより、減肉部の深さの算定に高精度が要求される場合には、コイルを調査対象となる配管の内周面にできるだけ近づけて配置することが求められる。
上記(6)の構成によれば、コイル支持体を配管の内周面に向けて付勢するので、コイル支持体の外周面に配置されたコイルが配管の内周面に近づけられ、定量的に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された渦電流を正確に検出する。これにより、調査対象となる配管の内周面に誘起される渦電流が正確に検出され、減肉部の深さが正確に算定されるので、減肉部の深さ(減肉量)を正確かつ定量的に評価できる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記コイル支持体は、前記配管の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径の当接面を有する。
上記(7)の構成によれば、コイル支持体は、配管の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径の当接面で配管の内周面に当接するので、コイル支持体の外周面に配置されたコイルが配管の内周面に近づけられ、定量的に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起される渦電流を正確に検出する。これにより、調査対象となる配管の内周面に誘起される渦電流が正確に検出され、減肉部の面積及び深さが正確に算定されるので、減肉部の深さ(減肉量)を正確かつ定量的に評価できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記コイル支持体は、周方向の少なくとも一方に前記配管の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径のガイド面を有するガイドを備える。
上記(8)の構成によれば、コイル支持体は、周方向の少なくとも一方に配管の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径のガイドのガイド面で配管の内周面に当接するので、コイル支持体が配管の内周面に形成された減肉部に落ち込むのを防止できる。
【0023】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る配管探傷方法は、
配管の内周面に形成される減肉部を調査するための配管探傷方法であって、
コイルユニットを調査対象となる配管の内周面に対して相対移動可能に配置する配置ステップと、
前記配置ステップで配置されたコイルユニットに電流を供給し、前記配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、前記配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された前記渦電流、及び前記コイルユニットと前記配管との相対位置に基づいて前記減肉部の面積の大きさを評価する減肉面積評価ステップと、
前記減肉面積評価ステップで評価された前記減肉部の面積の大きさ、及び前記検出ステップで検出された前記減肉部における前記渦電流の大きさに基づいて、前記減肉部の深さを算定する減肉深さ算定ステップと、
を備える。
【0024】
上記(9)の方法によれば、コイルユニットを調査対象となる配管の内周面に対して相対移動可能に配置する。次に、配置ステップで配置された前記コイルユニットに電流を供給し、配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された前記渦電流を検出する。そして、検出された渦電流、及びコイルユニットと配管との相対位置に基づいて減肉部の面積の大きさを評価し、評価された減肉部の面積の大きさ、及び検出された減肉部における渦電流の大きさに基づいて、減肉部の深さを算定する。これにより、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の深さ(減肉量)が算定されるので、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の減肉量を定量的に評価できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、調査対象となる配管の内周面に形成される減肉部の深さ(減肉量)が算定されるので、磁性材を材料とする配管の内周面に形成される減肉部の減肉量を定量的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る配管探傷装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2】コイルユニットが配管の内周面に渦電流を誘起するとともに、配管の内周面に誘起された渦電流の大きさを検出するメカニズムを示す図である。
図3】減肉部の面積及び深さと信号強度との関係を示す図である。
図4】一実施形態にかかるコイルユニットの横断面を概略的に示す図である。
図5】減肉部の面積ごとに、減肉部における渦電流の大きさに関連付けられた該減肉部の深さを示す検量線を表す図である。
図6】コイルと調査対象となる配管の内周面との距離と、検出部で得られる信号レベルとの関係を示す図である。
図7】一実施形態にかかるコイルユニットの横断面を概略的に示す図である。
図8】一実施形態にかかるコイルユニットの横断面を概略的に示す図である。
図9】一実施形態にかかる配管探傷方法の手順を概略的に示すフローチャートである。
図10】一実施形態にかかる配管探傷方法の手順を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0028】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0029】
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
【0030】
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る配管探傷装置1の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係る配管探傷装置1は、配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dを調査するためのものである。配管探傷装置1は、コイルユニット2と、減肉面積評価部3と、減肉深さ算定部4とを備えている。
【0032】
図1に示すように、コイルユニット2は、調査対象となる配管Pの内周面Sに対して相対移動可能に配置され、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出可能である。
【0033】
図1に例示する形態において、コイルユニット2は、調査対象となる配管Pの内周面Sに対して移動可能に配置される。そして、配管Pに対するコイルユニット2の相対位置は逐次検出され、配管Pに対するコイルユニット2の相対位置は減肉面積評価部3及び減肉深さ算定部4で管理される。
また、コイルユニット2は、交流電源21から供給された交流電流により、調査対象となる配管Pの内周面に渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面に誘起された渦電流Wの大きさを検出する。これにより、配管Pに対するコイルユニット2の相対位置と、コイルユニット2が配管Pの内周面Sに誘起する渦電流Wの大きさが検出される。
【0034】
図2は、コイルユニット2が配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流の大きさを検出するメカニズムを示す図である。尚、図2において、説明の便宜上、配管Pを平坦な平板で示すが、配管Pが平坦な平板であることを意味するものではない。
図2に示すように、コイルユニット2に交流電流Eを流すと、(a)に示すように、交流電流Eと直交する方向に磁界が発生する。発生する磁界Φは、交流電流Eの大きさAとコイルの巻数Tに乗じたものに比例する(Φ=α(A×T))。コイルユニット2を配管Pに近づけると、(b)に示すように、コイルユニット2は配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起し、コイルユニット2に流れる交流電流Eの大きさはAからA1に変化する。(c)に示すように、配管Pの内周面Sに減肉部Dがあると、渦電流Wは減肉部Dを避けて迂回するために、コイルユニット2に流れる交流電流Eの大きさはA1からA2に変化する。
これにより、コイルユニット2は、配管Pの内周面Sに形成された減肉部Dを検出可能となる。
【0035】
図1に例示する形態において、コイルユニット2に流れる交流電流Eの変化、すなわち、コイルユニット2が配管Pの内周面Sに誘起する渦電流Wは、検出部22で検出され、信号(振幅(電圧))に変換される。
尚、磁性ノイズが大きい試験片についても、多重周波数による位相解析によりノイズを処理可能である。
【0036】
図3は、減肉部Dの面積及び深さと信号強度との関係を示す図である。
本発明者らによる鋭意検討の結果、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面に誘起された渦電流Wを検出するコイルユニット2では、減肉部Dの面積が同一である場合に減肉部Dの深さと渦電流Wの大きさとの間に相関があり、減肉部Dの面積が異なる場合には減肉部Dの深さが同一であっても渦電流Wの大きさが同一にならないことを見いだした(図3参照)。具体的には、減肉部Dの面積が同一である場合には、渦電流Wの大きさを検出すれば、減肉部Dの深さを算定できることを見いだした。例えば、図3に示すように、コイル径が十分に小さい場合において、減肉部Dの面積が中以上の場合には、同一の面積において、減肉部Dの深さと信号強度とに相関がある。
【0037】
図1に示すように、減肉面積評価部3は、コイルユニット2が検出する渦電流W、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置に基づいて減肉部Dの面積の大きさを評価するものである。
【0038】
図1に例示する形態において、減肉面積評価部3は、予め記憶された参照データと、コイルユニット2が検出する渦電流Wの大きさ、すなわち、検出部22で検出される信号強度、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置に基づいて減肉部Dの面積の大きさを評価するものである。参照データは、減肉部Dの面積及び深さが特定された標準試験片を探傷した場合に、コイルユニット2が検出する渦電流Wの大きさ、すなわち、検出部22で検出される信号強度、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置(渦電流Wの検出範囲)に基づいて作成される。これにより、標準試験片を基準とし、コイルユニット2で検出された渦電流Wの大きさ、すなわち、検出部22で検出される信号強度、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置(渦電流Wの検出範囲)に基づいて減肉部Dの面積の大きさが評価される。
【0039】
すなわち、図1に例示する形態では、標準試験片を基準とし、検出部22で検出され、信号強度に変換された渦電流Wの大きさ、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置(所定の信号レベルが出力される範囲)に基づいて減肉部Dの面積の大きさが評価される。
【0040】
図1に示すように、減肉深さ算定部4は、減肉面積評価部3で算定された減肉部Dの面積、及びコイルユニット2で検出された減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定するものである。
【0041】
図1に例示する形態において、減肉深さ算定部4は、予め記憶された参照データと、減肉面積評価部3で評価された減肉部Dの面積の大きさ、及びコイルユニット2で検出された渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定するものである。参照データは、減肉部Dの面積及び深さが特定された標準試験片を探傷した場合に、減肉面積評価部3で評価された減肉部Dの面積の大きさ、及びコイルユニット2で検出された渦電流Wの大きさに基づいて作成される。これにより、標準試験片を基準とし、減肉面積評価部3で評価された減肉部Dの面積の大きさ、及びコイルユニット2で検出された渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さが算定される。
【0042】
すなわち、図1に例示する形態では、標準試験片を基準とし、減肉面積評価部3で評価された減肉部Dの面積の大きさ、及び検出部22で検出され、信号に変換された渦電流Wの大きさに基づいて減肉部Dの深さが算定される。
【0043】
上述した少なくとも一実施形態に係る配管探傷装置1によれば、コイルユニット2が調査対象となる配管Pの内周面Sに対して相対移動可能に配置され、コイルユニット2が配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出する。そして、減肉面積評価部3は、コイルユニット2が検出する渦電流W、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置に基づいて減肉部Dの面積の大きさを評価する。そして、減肉深さ算定部4は、減肉面積評価部3で評価された減肉部Dの面積の大きさ、及びコイルユニット2で検出された減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さ(減肉量)を算定する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの減肉量が算定されるので、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの減肉量を定量的に評価できる。
【0044】
したがって、図1に例示する形態によれば、コイルユニット2が調査対象となる配管Pの内周面Sに対して移動可能に設置され、コイルユニット2が配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wの大きさを検出する。コイルユニット2で検出された渦電流Wの大きさは、検出部22で検出され、信号(電圧)に変換される。そして、減肉面積評価部3は、検出部22で変換された信号、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置(所定の信号レベルが出力される範囲)に基づいて減肉部Dの面積の大きさを評価する。そして、減肉深さ算定部4は、減肉面積評価部3で評価された減肉部Dの面積の大きさ、及び、検出部22で変換された信号(最大強度)に基づいて、減肉部Dの深さ(減肉量)を算出する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの減肉量が算定されるので、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの減肉量を定量的に評価できる。
【0045】
図1に示すように、幾つかの実施形態では、減肉深さ算定部4は、記憶部41と、深さ算定部42とを有する。
【0046】
記憶部41は、少なくとも一つの参照用の配管P(標準試験片)の内周面Sに形成される減肉部Dの面積の大きさ、及び該減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに関連付けられた該減肉部Dの深さが記憶されている。
【0047】
図1に例示する形態では、減肉部Dの面積の大きさごとに、減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに関連付けられた該減肉部Dの深さが記憶されている。すなわち、減肉部Dの面積の大きさごとに、検出部22が検出する信号に関連付けられた該減肉部Dの深さが記憶されている。
【0048】
深さ算定部42は、記憶部41を参照し、減肉面積評価部3が算定した減肉部Dの面積の大きさ、及びコイルユニット2が検出した渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定するものである。
【0049】
図1に例示する形態では、記憶部41を参照し、減肉面積評価部3が評価した減肉部Dの面積の大きさに基づいて、減肉部Dの面積の大きさごとに、検出部22が検出する信号に関連付けられた減肉部Dの深さを用いて、減肉部Dの深さを算定するものである。
【0050】
上述した幾つかの実施形態に係る減肉深さ算定部4によれば、まず、少なくとも一つの参照用の配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積の大きさ、及び該減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに関連付けられた該減肉部Dの深さが記憶された記憶部41を参照する。そして、減肉面積評価部3が評価した減肉部Dの面積の大きさ、及びコイルユニット2が検出した渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの深さ(減肉量)が算定されるので、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの減肉量を定量的に評価できる。
【0051】
幾つかの実施形態では、記憶部41は、減肉部Dの深さを減肉部Dの面積の大きさごとに記憶している。
【0052】
この構成によれば、記憶部41が減肉部Dの深さを減肉部Dの面積の大きさごとに記憶しているので、減肉部Dの面積の大きさごとに渦電流Wの大きさに基づいて減肉部Dの深さを算定する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの深さ(減肉量)が正確に算定され、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの減肉量を正確かつ定量的に評価できる。
【0053】
図4は、一実施形態にかかるコイルユニット2の横断面を概略的に示す図である。
図4に示すように、幾つかの実施形態では、コイルユニット2は、コイル支持体51と、複数のコイル52とを含む。
【0054】
図4に例示する形態では、コイル支持体51は、調査対象となる配管Pの内径よりも僅かに小径な横断面を有している。これにより、コイル支持体51は、配管Pの内周面に対して軸方向に相対移動可能に配置される。
【0055】
図4に例示する形態では、複数のコイル52は、コイル支持体51の外周面に配管Pの内周面Sの周方向に沿って配置され、配管Pの内周面に渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出可能である。
【0056】
図4に例示する形態では、複数のコイル52は、それぞれ同一性能のコイルで構成される。すなわち、複数のコイル52のそれぞれは、線径、コイル径、及び巻数が同一であり、同一の大きさの電流が流れるように構成される。例えば、図4に例示する形態では、巻線が交差するクロスコイルで構成される。
【0057】
また、図4に例示する形態では、複数のコイル52は、コイル支持体51の外周面に配管Pの内周面Sの周方向に沿って等間隔に配置され、配管Pの内周面に渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出可能である。
例えば、図4に例示する形態では、12個のコイル52をコイル支持体51の外周面に配管Pの内周面Sの周方向に沿って等間隔に配置される。
【0058】
上述した幾つかの実施形態において、減肉面積評価部3は、複数のコイル52のうち、閾値を超える大きさの渦電流Wを検出したコイル52の個数に基づいて減肉部Dの面積を算定するものである。
【0059】
図4に例示するコイルユニット2を用いる配管探傷装置1において、減肉面積評価部3は、(1)信号振幅がPaV以上のコイル52が三つ以上の場合に減肉部Dの面積の大きさをQamm、(2)信号振幅がPaV以上のコイル52が二つの場合に減肉部Dの面積の大きさをQbmm、(3)信号振幅がPaV以上のコイル52が一つの場合に減肉部Dの面積の大きさをQcmm、(4)全てのコイル52の信号振幅がPaV未満で、PaVよりも小さいPbV以上のコイル52が二つ以上の場合に減肉部Dの面積の大きさをQdmm、(5)全てのコイル52の信号振幅がPaV未満で、PaVよりも小さいPbV以上のコイルが一つの場合に減肉部Dの面積の大きさをQemm、と評価する
【0060】
図4に例示するコイルユニット2を用いる配管探傷装置1において、減肉深さ算定部4の記憶部41には、減肉部Dの面積ごとに、減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに関連付けられた該減肉部Dの深さが記憶されている。具体的には、減肉部Dの面積Qamm、Qbmm、Qcmm、Qdmm、Qemmに対して、それぞれ、減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに関連付けられた該減肉部Dの深さが関連づけられている。
【0061】
図5は、減肉部Dの面積ごとに、減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに関連付けられた該減肉部Dの深さを示す検量線を表す図である。尚、図8において、減肉部Dにおける渦電流Wの大きさは、検出部22で検出される信号強度で表している。
【0062】
図5に示すように、減肉部Dの面積Qamm,Qbmm,Qcmm,Qdmm,Qemmごとに検量線(a)(b)(c)(d)(e)が用意され、減肉部Dの面積により検量線(a)から(e)が選択される。これにより、検出部22で検出される信号強度(最大信号強度)が特定されると、減肉部Dの深さが特定される。
【0063】
上述した幾つかの実施形態によれば、コイル支持体51の外周面に配管Pの内周面Sの周方向に沿って配置される複数のコイル52が配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出する。そして、複数のコイル52のうち、閾値を超える大きさの渦電流Wを検出したコイル52の個数に基づいて減肉部Dの面積が算定される。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積が算定されるので、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積を定量的に評価できる。
【0064】
図6及び図7は、一実施形態にかかるコイルユニット2の横断面を概略的に示す図である。
図6及び図7に示すように、幾つかの実施形態では、コイルユニット2は、コイル支持体61と、少なくとも一つのコイル62とを含む。
コイル支持体61は、配管Pの内周面Sの周方向に沿って回転可能である。
図6及び図7に例示する形態では、コイル支持体61は、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dよりも周方向において幅広であって、調査対象となる配管Pの内径よりも小径な円弧面を有している。これにより、コイル支持体61は、配管Pの内周面Sに対して軸方向に相対移動可能に配置されるとともに、配管Pの内周面Sに対して径方向に移動可能に配置される。
【0065】
少なくとも一つのコイル62は、コイル支持体61の外周面に配置され、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出可能である。
図6及び図7に例示する形態では、少なくとも一つのコイル62は、巻線が交差するクロスコイルで構成される。
上述した幾つかの実施形態において、減肉面積評価部3は、配管Pの内周面Sのうち、閾値を超える大きさの渦電流Wを検出する範囲に基づいて減肉部Dの面積を算定する。
【0066】
上述した幾つかの実施形態によれば、配管Pの内周面Sの周方向に沿って回転可能なコイル支持体61の外周面に配置される少なくとも一つのコイル62が配管Pの内周面に渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出する。そして、配管Pの内周面Sのうち、閾値を超える大きさの渦電流Wを検出する範囲に基づいて減肉部Dの面積が算定される。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積が算定され、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積を定量的に評価できる。
【0067】
上述した幾つかの実施形態において、減肉深さ算定部4は、算定された減肉部Dの面積、及びコイルユニット2で検出された減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積及び深さが算定されるので、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積及び深さを定量的に評価できる。
【0068】
図8は、コイル52,62と調査対象となる配管Pの内周面Sとの距離と、検出部22で得られる信号レベル(振幅(電圧))との関係を示す図である。
図8に示すように、同一面積及び同一深さの減肉部Dの周りに誘起される渦電流Wを検出する場合でも、コイル52,62と調査対象となる配管Pの内周面Sとの距離が近いと大きな信号レベルを検出することができ、距離が離れると小さな信号レベルしか得られないことがわかる。これにより、減肉部Dの面積及び深さの検出に高精度が要求される場合には、コイル52,62を調査対象となる配管Pの内周面Sにできるだけ近づけて配置することが求められる。
【0069】
図6及び図7に示すように、幾つかの実施形態では、コイル支持体61は、配管Pの内周面Sに向けて付勢される。
図6及び図7に例示する形態では、コイル支持体61は、回転軸63に固定された円筒状のハウジング64の外周面から径外方向に突出するように取り付けられている。コイル支持体61は、ハウジング64に進退可能に収容され、回転軸63との間に設けられたバネ65の弾性復元力により、配管Pの内周面Sを押圧するように付勢されている。
【0070】
上述した幾つかの実施形態によれば、コイル支持体61が配管Pの内周面Sに密着するので、コイル支持体61の外周面に配置された少なくとも一つのコイル62が配管Pの内周面Sに定量的に渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを正確に検出する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに誘起される渦電流Wが正確に検出され、減肉部Dの深さ(減肉量)が正確に算定され、減肉部Dの減肉量を正確かつ定量的に評価できる。
【0071】
図6に示すように、幾つかの実施形態では、コイル支持体61は、配管Pの内周面Sの曲率半径よりも小さな曲率半径の当接面61aを有する。
上述した幾つかの実施形態によれば、コイル支持体61は、配管Pの内周面Sの曲率半径よりも小さな曲率半径の当接面61aで配管Pの内周面Sに当接するので、コイル支持体61の外周面に配置された少なくとも一つのコイル62が配管Pの内周面Sに近づけられ、定量的に渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面に誘起される渦電流Wを正確に検出する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに誘起される渦電流Wが正確に検出され、減肉部Dの面積及び深さが正確に算定されるので、減肉部Dの深さ(減肉量)を正確かつ定量的に評価できる。
【0072】
図7に示すように、幾つかの実施形態では、コイル支持体61は、周方向の少なくとも一方に配管Pの内周面Sの曲率半径よりも小さな曲率半径のガイド面66a,67aを有するガイド66,67を備える。
【0073】
図7に例示する形態では、コイル支持体61は、周方向の両側に配管Pの内周面Sの曲率半径よりも小さな曲率半径のガイド面66a,67aを有するガイド66,67を備えるが、周方向の少なくとも一方にガイド66,67を備えるものであればよい。
【0074】
上述した幾つかの実施形態によれば、コイル支持体61は、配管Pの内周面Sの曲率半径よりも小さな曲率半径のガイド66,67のガイド面66a,67aで配管Pの内周面Sに当接するので、コイル支持体61が配管Pの内周面に形成された減肉部に落ち込むのを防止できる。
【0075】
図9及び図10は、一実施形態にかかる配管探傷方法の手順を概略的に示すフローチャートである。
図9及び図10に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係る配管探傷方法は、配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dを調査するためのものである。配管探傷方法は、配置ステップ(ステップS1)と、検出ステップ(ステップS2)と、減肉面積評価ステップ(ステップS3)と、減肉深さ算定ステップ(ステップS5)とを備えている。
【0076】
配置ステップ(ステップS1)は、コイルユニット2を調査対象となる配管Pの内周面Sに対して相対移動可能に配置するステップである。
図9に例示する形態では、図4に示したコイルユニット2を調査対象となる配管Pの内周面Sに対して軸方向に相対移動可能に配置する。
図10に例示する形態では、図6又は図7に示したコイルユニット2を調査対象となる配管Pの内周面Sに対して周方向及び軸方向に相対移動可能に配置する。
【0077】
検出ステップ(ステップS2)は、配置ステップ(ステップS1)で配置されたコイルユニット2に電流を供給し、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出する。
【0078】
図9に例示する形態では、図4に示したコイルユニット2の複数のコイル52に電流を供給し、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出する。そして、コイルユニット2を配管Pの内周面Sに沿って軸方向に相対移動させる。これにより、検出部22で渦電流Wの変化が検出され、配管Pの内周面Sに減肉部Dが形成されている場合には、減肉部Dが特定される。
【0079】
図10に例示する形態では、図6又は図7に示したコイルユニット2の少なくとも一つのコイル62に電流を供給し、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流を検出する。そして、コイルユニット2を配管Pの内周面Sに沿って周方向及び軸方向に相対移動させる。これにより、検出部22で渦電流Wの変化が検出され、配管Pの内周面Sに減肉部Dが形成されている場合には、減肉部Dが特定される。
【0080】
減肉面積算定ステップ(ステップS3)は、検出ステップ(ステップS2)で検出された渦電流W、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置に基づいて減肉部Dの面積を算定する。
図9に例示する形態では、図4に示したコイルユニット2の複数のコイル52のうち渦電流Wの変化を検出したコイル52の数を抽出することにより、減肉部Dの面積を算定する(ステップS31)。より詳しくは、上述したように、信号振幅がPaV以上のコイルの個数、及び信号振幅がPbV以上のコイルの個数により減肉部Dの面積を算定する。
図10に例示する形態では、図6又は図7に示したコイルユニット2の少なくとも一つのコイル62が渦電流Wの変化を検出する範囲で減肉部Dの面積を算定する(ステップS32)。
【0081】
また、図9及び図10に例示する形態では、減肉部Dで変化した渦電流Wの変化を検出した検出部22の信号振幅の最大値を抽出する(ステップS4)。
【0082】
減肉深さ算定ステップ(ステップS5)は、減肉面積算定ステップ(ステップS3)で算定された減肉部Dの面積、及び検出ステップ(ステップS4)で検出された減肉部Dにおける渦電流Wの大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定する。
【0083】
図9に例示する形態では、渦電流Wの変化を検出したコイル52の数及び検出部22で検出された最大振幅値から検量線を選定し、減肉量(減肉部Dの深さ)を評価する。
図10に例示する形態では、渦電流Wの変化を検出した範囲及び検出部22で検出された最大振幅値から検量線を選定し、減肉量(減肉部Dの深さ)を評価する。
【0084】
上述した本発明の少なくとも一実施形態に係る配管探傷方法によれば、コイルユニット2を調査対象となる配管Pの内周面に対して相対移動可能に配置する。次に、配置ステップ(ステップS1)で配置されたコイルユニット2に電流を供給し、配管Pの内周面Sに渦電流Wを誘起するとともに、配管Pの内周面Sに誘起された渦電流Wを検出する。そして、検出された渦電流W、及びコイルユニット2と配管Pとの相対位置に基づいて減肉部Dの面積を算定し、算定された減肉部Dの面積、及び検出された減肉部Dにおける渦電流の大きさに基づいて、減肉部Dの深さを算定する。これにより、調査対象となる配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積及び深さが算定され、磁性材を材料とする配管Pの内周面Sに形成される減肉部Dの面積及び深さを定量的に評価できる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0086】
1 配管探傷装置
2 コイルユニット
21 交流電源
22 検出部
3 減肉面積評価部
4 減肉深さ算定部
41 記憶部
42 深さ算定部
51 コイル支持体
52 コイル
61 コイル支持体
61a 当接面
62 コイル
63 回転軸
64 ハウジング
65 バネ
66 ガイド
66a ガイド面
67 ガイド
67a ガイド面
P 配管
S 内周面
D 減肉部
W 渦電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10