特許第6715572号(P6715572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715572
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】シャンプー組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20200622BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20200622BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20200622BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20200622BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200622BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20200622BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/86
   A61K8/92
   A61K8/42
   A61Q5/02
   A61K8/49
   A61K8/73
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-58136(P2015-58136)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175874(P2016-175874A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貴成
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/029514(WO,A1)
【文献】 特開2012−62250(JP,A)
【文献】 特表平8−509753(JP,A)
【文献】 特開昭63−277611(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101785745(CN,A)
【文献】 特開2012−102025(JP,A)
【文献】 特開2010−138075(JP,A)
【文献】 Avon,JAPAN,Amino Damage Care,Mintel GNPD,2013年 2月,ID#:2060948,URL,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アシルアミノ酸型界面活性剤、
(B)両性界面活性剤、
(C)カチオン性高分子、及び
(D)ポリオキシエチレン平均付加モル数が30以上60以下であるポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂、
が配合され、
前記(A)アシルアミノ酸型界面活性剤として、少なくとも、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンの塩、ラウロイルメチルアラニン、ラウロイルメチルアラニンの塩、ミリストリルメチルアラニン、ミリストリルメチルアラニンの塩、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、及び、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンの塩から選ばれる1種又は2種以上が配合され、
前記(B)両性界面活性剤として、アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤が配合されたシャンプー組成物。
【請求項2】
前記(A)アシルアミノ酸型界面活性剤として、ラウロイルメチルアラニン、及びラウロイルメチルアラニンの塩から選ばれる1種又は2種以上が配合された請求項1に記載のシャンプー組成物。
【請求項3】
(A)アシルアミノ酸型界面活性剤、
(B)両性界面活性剤、
(C)カチオン性高分子、及び
(D)ポリオキシエチレン平均付加モル数が30以上60以下であるポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂、
が配合され、
前記(A)アシルアミノ酸型界面活性剤として、少なくとも、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンの塩、ラウロイルメチルアラニン、ラウロイルメチルアラニンの塩、ミリストリルメチルアラニン、ミリストリルメチルアラニンの塩、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、及び、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンの塩から選ばれる1種又は2種以上が配合され、
前記(B)両性界面活性剤として、アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤、及び、イミダゾリン型両性界面活性剤が配合されたシャンプー組成物。
【請求項4】
(A)アシルアミノ酸型界面活性剤、
(B)両性界面活性剤、
(C)カチオン性高分子、
(D)ポリオキシエチレン平均付加モル数が30以上60以下であるポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂、及び
(E)カルボキシメチルセルロース
が配合されたシャンプー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アニオン界面活性剤と両性界面活性剤とカチオン性高分子とを用いたシャンプー組成物が知られている。
ここで、アニオン界面活性剤および両性界面活性剤を配合することで、シャンプーの泡立ちやすさを向上させることができる。また、カチオン性高分子を配合することで、毛髪のコンディショニング効果を向上させることができる。
【0003】
ここで、アニオン界面活性剤のなかでも、泡立ちやすさだけでなく、皮膚や目に対する刺激性を小さく抑える観点から、例えば、アシルアミノ酸型界面活性剤が用いられることがある。
【0004】
このような、アシルアミノ酸型界面活性剤が配合されたシャンプー組成物の例としては、例えば、特許文献1(特開2003−192560号公報)の実施例1〜11および比較例1,2に記載の例が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−192560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載のシャンプー組成物であっても、毛髪の仕上がりの柔らかさを向上させる観点からは、改良の余地があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、毛髪における仕上がりの柔らかさをさらに高めることが可能なシャンプー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、毛髪へのさらなる柔らかさの付与を可能とするべく鋭意検討を行った結果、アニオン界面活性剤としてアシルアミノ酸型界面活性剤を配合させるだけではなく、さらにポリオキシエチレンラノリンとポリオキシエチレンシア脂の少なくともいずれかを配合させることが有意であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るシャンプー組成物は、
(A)アシルアミノ酸型界面活性剤、
(B)両性界面活性剤
(C)カチオン性高分子、及び
(D)ポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂、
が配合されている。
【0010】
また、シャンプー組成物の(B)両性界面活性剤として、アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤が配合されていることが好ましい。
【0011】
また、シャンプー組成物の(B)両性界面活性剤として、アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤、及び、イミダゾリン型両性界面活性剤の両方が配合されていることがより好ましい。
【0012】
また、シャンプー組成物において(E)カルボキシメチルセルロースがさらに配合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシャンプー組成物によれば、毛髪における仕上がりの柔らかさをさらに高めることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、シャンプー組成物について、例を挙げつつ具体的に説明するが、これらの記載は発明を限定するものではない。
【0015】
本発明のシャンプー組成物は、(A成分)アシルアミノ酸型界面活性剤、(B成分)両性界面活性剤、(C成分)カチオン性高分子、及び(D成分)ポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂が配合されている。
以下、各成分について、詳細に説明する。
【0016】
(A成分):アシルアミノ酸型界面活性剤
A成分は、アシルアミノ酸型界面活性剤であり、一種又は二種以上が用いられる。
アシルアミノ酸型界面活性剤は、シャンプー組成物に配合させることで、泡立ち性を高めることが可能になるだけでなく、仕上がりの柔らかさを向上させると共に、シャンプー組成物の粘度を高めて取り扱い性を高めることが可能になる。
【0017】
アシルアミノ酸型界面活性剤としては、例えば、ラウロイル−L−アスパラギン酸、ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸、パーム脂肪酸−L−グルタミン酸、ラウロイル−L−グルタミン酸、ミリストイル−L−グルタミン酸、ステアロイル−L−グルタミン酸、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ラウロイルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニン、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ヤシ油脂肪酸サルコシン、ラウロイルサルコシン、および、これらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩など)などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記のアシルアミノ酸型界面活性剤の中でも、毛髪の仕上がりの柔らかさと毛髪の仕上がりの厚み感(毛髪表面に皮膜が得られている感触)が良好である点で、ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸、ラウロイルメチルアラニンが好ましく、仕上がりの毛髪の厚み感が特に優れる点でラウロイルメチルアラニンが好ましい。
【0019】
シャンプー組成物におけるアシルアミノ酸型界面活性剤の配合量は、毛髪の仕上がりの柔らかさ、毛髪の仕上がりの厚み感、及び、シャンプー組成物の外観の透明性を確保する観点から、下限が、1質量%であることが好ましく、5質量%であることがより好ましい。
【0020】
なお、アシルアミノ酸型界面活性剤はアニオン性界面活性剤の一種であり、シャンプー組成物には、アシルアミノ酸型界面活性剤以外のアニオン性界面活性剤を配合させてもよいが、シャンプー組成物におけるアニオン性界面活性剤の量が多すぎると、頭皮や手に対する刺激が強くなる傾向があることから、シャンプー組成物におけるアニオン性界面活性剤の配合量の総量は、30%質量以下であることが好ましく、20%質量以下であることがより好ましい。
【0021】
(B成分):両性界面活性剤
B成分は、両性界面活性剤であり、一種又は二種以上が用いられる。
両性界面活性剤は、シャンプー組成物に配合させることで、泡立ち性を高めることが可能になると共に、シャンプー組成物の粘度を高めて取り扱い性を高めることが可能になる。
【0022】
両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルベタイン、リノレイン酸アミドプロピル、パーム核脂肪酸アミドプロピルベタインなどのアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤を含むアミドアルキルベタイン型両性界面活性剤;N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリン型両性界面活性剤;N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸ナトリウム、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウムなどのスルホベタイン型両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどのアミドアミンオキシド型両性界面活性剤;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記の両性界面活性剤の中でも、毛髪の仕上がりの柔らかさを良好にできる観点から、アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤がより好ましい。
【0024】
さらに、上記の両性界面活性剤の中でも、毛髪の仕上がりの柔らかさを良好にするだけではなく毛髪の仕上がりの厚み感についても良好にできる観点から、アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤とイミダゾリン型両性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0025】
なお、両性界面活性剤ではあるが、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインやラウリルヒドロキシスルホベタインは、毛髪の仕上がりの柔らかさを良好にすることができない点で、シャンプー組成物には配合されないことが好ましい。
【0026】
シャンプー組成物における両性界面活性剤の配合量(複数種類の両性界面活性剤を用いる場合には合計の配合量)は、あまり少なすぎると、例えば泡立ちを良好にする効果が小さくなる虞があることから、0.5質量%以上であることが好ましい。また、シャンプー組成物における両性界面活性剤の量の上限値については、特に制限はないが、通常は20質量%程度である。
【0027】
(C成分):カチオン性高分子
C成分は、カチオン性高分子であり、一種又は二種以上が用いられる。
カチオン性高分子は、シャンプー組成物に配合させることで、処理された毛髪のコンディショニング効果を高めることが可能になり、洗い流す際の毛髪の指通りやすさを向上させ、きしみを低減することができると共に、シャンプー組成物の粘度を高めて取り扱い性を高めることが可能になる。
【0028】
このようなカチオン性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等が挙げられる。
【0029】
カチオン化セルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体である塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。当該カチオン化セルロースは市販されており、例えば、ダウ・ケミカル日本社製「UCARE Polymer JR-30M」、東邦化学工業社製「カチナールHC−200」、東邦化学工業社製「カチナールLC−200」が挙げられる。
【0030】
カチオン性高分子は、2質量%水溶液にしたときの粘度が10000mPa・s以上40000mPa・s以下のものを選定すると良く、20000mPa・s以上40000mPa・s以下のものを選定するのが好ましい。この粘度が高くなるほど、シャンプー組成物としての粘度も高くなる傾向にある。なお、カチオン性高分子の2質量%水溶液の粘度については、B形粘度計を用いて、25℃、M4ロータ、12rpmの条件で測定開始から60秒後の値を採用する。
【0031】
カチオン性高分子のカチオン化度(カチオン性高分子における窒素含有質量の百分率)は、特に限定されないが、1.3%以上2.0%以下が良く、1.5%以上2.0%以下が好ましい。
【0032】
シャンプー組成物におけるカチオン性高分子の含有量は、指通り性を高める観点から、下限は、0.2質量%であることが好ましく、0.25質量%であることがより好ましく、上限は、2質量%であることが好ましく、1質量%であることがより好ましい。
【0033】
(D成分):ポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂
D成分は、ポリオキシエチレンラノリン及び/又はポリオキシエチレンシア脂であり、それぞれ一種又は二種以上が用いられる。
D成分は、シャンプー組成物に配合させることで、毛髪の仕上がりの柔らかさを向上させることが可能になる。
【0034】
なお、特に限定されないが、D成分が配合されたシャンプー組成物で処理された毛髪に対して柔らかさを付与できる理由について、以下のように考えられる。すなわち、毛髪は、根元部分よりも毛先の方がダメージが多くなりがちであり、毛先の方が保湿力が損なわれて硬くなりがちであるが、D成分が配合されたシャンプー組成物は、処理される毛髪のうち特にこの硬くなりがちな毛先部分を柔らかくすることで、仕上がりの柔らかさの向上に大きく寄与しているものと考えられる。
【0035】
このようなポリオキシエチレンラノリンやポリオキシエチレンシア脂は、ポリオキシプロピレン鎖が含まれていないものである。
また、ポリオキシエチレンラノリンやポリオキシエチレンシア脂におけるポリオキシエチレン平均付加モル数は、30以上60以下であることが好ましく、水溶性を向上させることで安定性を高める観点からは50以上60以下がより好ましい。
【0036】
また、D成分のポリオキシエチレンラノリンとポリオキシエチレンシア脂のうち、シャンプー組成物の外観の透明性を確保しやすくする観点からは、ポリオキシエチレンシア脂よりもポリオキシエチレンラノリンを用いる方が好ましい。
【0037】
D成分のポリオキシエチレンラノリンとポリオキシエチレンシア脂のシャンプー組成物における配合量は、仕上がりの柔らかさと仕上がりの指通りのいずれについても良好にする観点から、その上限を0.7質量%とすることが好ましく、0.5質量%とすることがより好ましい。また、下限については、特に限定されないが、例えば、0.2質量%とすることができる。
【0038】
(任意成分)
シャンプー組成物が含有してもよい任意成分としては、公知のシャンプー成分が挙げられる。この任意成分としては、例えば、(E成分)カルボキシメチルセルロース、ノニオン性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤等が挙げられる。なお、各任意成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(E成分)のカルボキシメチルセルロースは、任意成分ではあるが、シャンプー組成物に配合させることでシャンプー流し時の毛髪のすべりを良くするだけでなく、毛髪における根元から毛先までの仕上がりの均一感を向上させることができる点で配合させることが好ましい。
このようなカルボキシメチルセルロースとしては、エーテル化度が0.5以上1.6以下であることが好ましい。
また、シャンプー組成物の外観の透明性を確保しやすくする観点からは、カルボキシメチルセルロースを水に溶解させて1%の溶液とした際の粘度(mPa・s)としては、10mPa・s以上500mPa・s以下が好ましい。
なお、カルボキシメチルセルロースを配合させる場合には、特に限定されないが、手触りを良好にする観点から、シャンプー組成物における配合量が、0.05質量%未満であることが好ましい。
このようなカルボキシメチルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。このカルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、具体的には、ダイセルファインケム株式会社製の「商品名:CMCダイセル1330」(「CMCダイセル」は登録商標)や第一工業製薬社製の「商品名:セロゲンF」(「セロゲン」は登録商標)等が挙げられる。
【0040】
(剤型)
シャンプー組成物は、液状であるとよい。
シャンプー組成物の粘度は、HAAKE社製レオメーター「Rheo Stress 6000」を用いて粘度(η)を測定した。粘度(η)の測定は、定常フロー カーブモードにて、せん断速度(dγ/dt)18〜90s-1、コーンプレートセンサー(直径35mm、傾斜角2°)、温度25℃の条件で行った。以上の条件で測定した場合に、シャンプー組成物は、その粘度が3000(mPa・s)以下であることが好ましい。
【0041】
(pH)
シャンプー組成物のpHは、特に限定されないが、弱酸性であるとよく、例えば、pH5〜6であることが好ましい。pHを5以上とすることで、pHの低下に伴う粘度の上昇による発泡性及び取り扱い性の悪化を抑制することが可能になる。
【0042】
(外観)
シャンプー組成物の外観は、特に限定されないが、透明であることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1〜3、及び、比較例1〜5>
実施例1〜3、及び、比較例1〜5のシャンプー組成物を、表1に示す組成及び水により調製した。なお、実施例1〜3及び比較例1〜5のいずれのシャンプー組成物についても、粘度(上述したHAAKE社製レオメーターを用いて測定した粘度)が3000mPa・s以下となるように調製され、pHが約5〜6となるように調製された。
【0045】
<評価方法>
各シャンプー組成物を用いて毛束をシャンプー処理し、洗い流した後、トリートメントを塗布した。ここで、トリートメントとしては、ミルボン株式会社製の商品名:ディーセスノイドゥーエウィローリュクスヘアトリートメントを用いた(「ディーセス」は登録商標)(各実施例、比較例、参考例において同様)。その後、さらにトリートメントされた毛髪を洗い流し、乾燥させることで得られた毛髪を評価対象とした。評価としては、以下の官能評価を行った。
【0046】
<仕上がりの柔らかさの評価>
実施例及び比較例のシャンプー組成物により処理された毛髪全体の仕上がりの柔らかさについて、以下の基準で評価した。
基準:比較例1
○:4人中3人以上が基準よりも良いと評価
△:4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)
×:4人中2人以上が基準よりも良くないと評価
【0047】
<仕上がりの指通りの評価>
実施例及び比較例のシャンプー組成物により処理された毛髪の根元から毛先までの指通りについて、以下の基準で評価した。
基準:比較例1
○:4人中3人以上が基準よりも良いと評価
△:4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)
×:4人中2人以上が基準よりも良くないと評価
【0048】
<外観の透明性の評価>
実施例及び比較例のシャンプー組成物を透明容器に保存した際の外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:3人中3人が透明と評価
×:3人中3人が不透明と評価
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、本願発明のD成分であるポリオキシエチレンラノリンかポリオキシエチレンシア脂が配合された実施例1〜3については、これが配合されていない比較例1〜5と比べて、仕上がりの柔らかさが向上していることが確認できる。
また、D成分の中でも、ポリオキシエチレンラノリンを用いた場合には、シャンプー組成物の外観を透明にすることができていることが分かる。
なお、仕上がりの指通りについて、比較例1の基準と実施例2を比べると、実施例2の評価が「△」となっているが、この「△」の評価は、上述したように「4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)」との評価であるため、基準よりも改善されていることが分かる。
【0051】
<実施例1、4〜11>
実施例1、4〜11のシャンプー組成物を、表2に示す組成及び水により調製した。なお、表1と同様に、実施例1、4〜11のいずれのシャンプー組成物についても、粘度(上述したHAAKE社製レオメーターを用いて測定した粘度)が3000mPa・s以下となるように調製され、pHが約5〜6となるように調製された。
【0052】
<評価方法>
各シャンプー組成物を用いて毛束をシャンプー処理し、洗い流した。この洗い流しの際に、すべりを官能評価した。さらに、シャンプーが洗い流された毛髪に対してトリートメントを塗布した。その後、さらにトリートメントされた毛髪を洗い流し、乾燥させることで得られた毛髪について、以下の仕上がりの均一感の評価を行った。
【0053】
<シャンプー流し時のすべりの評価>
実施例及び比較例のシャンプー組成物によりシャンプー処理された後の濡れた毛髪に指を通した際のすべりについて、以下の基準で評価した。
基準:実施例1
○:4人中3人以上が基準よりも良いと評価
△:4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)
×:4人中2人以上が基準よりも良くないと評価
【0054】
<仕上がりの均一感の評価>
実施例及び比較例のシャンプー組成物により処理された毛髪の根元から毛先までの毛髪表面に均一な被膜がある感触について、以下の基準で評価した。
基準:実施例1
○:4人中3人以上が基準よりも良いと評価
△:4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)
×:4人中2人以上が基準よりも良くないと評価
【0055】
<外観の透明性の評価>
表1の各実施例および比較例における評価と同様である。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示す実施例1、4〜11は、いずれも本願発明の毛髪の柔らかさを付与することができるものである。
ここで、表2に示すように、本願発明の任意成分の(E成分)であるカルボキシメチルセルロースがさらに配合された実施例4〜6については、これが配合されていない実施例1、7〜11と比べて、シャンプー流し時のすべりが向上しつつ仕上がりの均一感についても向上していることを確認できる(評価の「△」については表1の説明と同様)。
これに対して、(E成分)であるカルボキシメチルセルロースに変えて、キサンタンガムを配合させた実施例7、高重合ポリエチレングリコールを配合させた実施例8、カラギーナンを配合させた実施例9、ポリアクリル酸ナトリウムを配合させた実施例10、プルランを配合させた実施例11のいずれにおいても、仕上がりの均一感を向上できず、高重合ポリエチレングリコールを配合させた実施例8においてのみシャンプー時のすべりだけが向上していることが分かる。
なお、(E成分)であるカルボキシメチルセルロースの中でも、外観の透明性を確保する観点からは、カルボキシメチルセルロースを水に溶解させて1%の溶液とした際の粘度(mPa・s)が50〜100mPa・sである実施例4、5の「カルボキシメチルセルロースナトリウム(商品名:CMCダイセル1330)が好ましいことが分かる。
【0058】
<参考例1〜7>
参考例1〜7のシャンプー組成物を、表3に示す組成及び水により調製した。
【0059】
<評価方法>
各シャンプー組成物を用いて毛束をシャンプー処理した。このシャンプー処理の際に、泡立ちを以下の基準で官能評価した。その後、シャンプーを洗い流し、シャンプーが洗い流された毛髪に対してトリートメントを塗布した。その後、さらにトリートメントされた毛髪を洗い流し、乾燥させることで得られた毛髪について、以下のように柔らかさおよび厚み感に関する官能評価を行った。
【0060】
<仕上がりの柔らかさの評価>
各参考例のシャンプー組成物により処理された毛髪全体の仕上がりの柔らかさについて、以下の基準で評価した。
基準:参考例2
○:4人中3人以上が基準よりも良いと評価
△:4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)
×:4人中2人以上が基準よりも良くないと評価
【0061】
<仕上がりの厚み感の評価>
各参考例のシャンプー組成物により処理された毛髪の中間部分から毛先部分までに毛髪表面の被膜がある感触について、以下の基準で評価した。
基準:参考例2
◎:4人中4人が基準よりも良いと評価
○:4人中3人が基準よりも良いと評価
△:4人中2人が基準よりも良いと評価(残りの少なくとも1人は基準と同等と評価)
×:4人中2人以上が基準よりも良くないと評価
【0062】
<シャンプーの泡立ちの評価>
各参考例のシャンプー組成物によりシャンプー処理した際の泡立ちについて、以下の基準で評価した。
基準:参考例2
◎:3人中3人が基準よりも良いと評価
○:3人中2人が基準よりも良いと評価
−:3人中2人以上が基準と同等と評価
【0063】
<外観の透明性の評価>
表1の各実施例および比較例における評価と同様である。
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示すように、参考例1〜7は、いずれも(D成分)が配合されていないが、A〜Cの各成分が概ね同量配合されている点で共通している。
ここで、(A成分)であるアシルアミノ酸型界面活性剤のみ、または、アシルアミノ酸型界面活性剤と参考例6のテトラデセンスルホン酸ナトリウムや参考例7のアルキル(C14−17)s−スルホン酸Naが配合されている例では、参考例2の基準と比べて、仕上がりの柔らかさや仕上がりの厚み感が同等もしくは改善されていることが分かる。なお、アルキル(C14−17)s−スルホン酸Naは、炭素数14〜17の第二級のアルカンスルホン酸のナトリウム塩である。
また、表3に示すように、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等を配合させた場合の仕上がりの柔らかさが悪化していることから、アニオン性界面活性剤を配合するというだけで柔らかさを向上できるわけでは無いことが分かる。
また、表3に示すように、シャンプー組成物に配合させた場合の仕上がりの柔らかさや毛髪の厚み感を良好にできない観点から、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムをシャンプー組成物に配合しないことが好ましいことが分かる。
また、表3に示すように、(A成分)としてラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムのみを配合させるか、(A成分)としてラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムとN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウムを併用する場合はより多くのラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムを配合させることが、仕上がりの柔らかさと仕上がりの厚み感を向上させる点で好ましいことが分かる。
【0066】
<参考例8〜14>
参考例8〜14のシャンプー組成物を、表4に示す組成及び水により調製した。
【0067】
<評価方法>
各シャンプー組成物を用いて毛束をシャンプー処理し、洗い流した後、トリートメントを塗布した。その後、さらにトリートメントされた毛髪を洗い流し、乾燥させることで得られた毛髪を評価対象とした。評価としては、以下の官能評価を行った。
【0068】
<仕上がりの柔らかさの評価>
各参考例のシャンプー組成物により処理された毛髪全体の仕上がりの柔らかさについて、以下の基準で評価した。
基準:参考例8
○:2人中2人が基準よりも良いと評価
×:2人中2人が基準よりも良くないと評価
【0069】
<仕上がりの厚み感の評価>
各参考例のシャンプー組成物により処理された毛髪の中間部分から毛先部分までに毛髪表面の被膜がある感触について、以下の基準で評価した。
基準:参考例8
○:2人中2人が基準よりも良いと評価
×:2人中2人が基準よりも良くないと評価
【0070】
<外観の透明性の評価>
表1の各実施例および比較例における評価と同様である。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示すように、参考例8〜14は、いずれも(D成分)が配合されていない点と(A成分)の配合種類および配合量が共通している。
ここで、(B成分)のうち「ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン」や「ラウリン酸アミドプロピルベタイン」の「(B1)アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤」が配合されている場合には、仕上がりの柔らかさの向上に寄与していることが分かる(参考例8、9、14参照)。
他方で、(B成分)のうち「N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム」や「2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン」の「(B2)イミダゾリン型両性界面活性剤」のみが配合され、「(B1)アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤」が配合されていない場合には、仕上がりの柔らかさの向上に寄与できていないことが分かる(参考例12、13参照)。
さらに、(B成分)のうち「(B1)アミドアルキルベタイン型両性界面活性剤」と「(B2)イミダゾリン型両性界面活性剤」の両方が配合された場合には、仕上がりの柔らかさだけでなく仕上がりの厚み感の向上にも寄与していることが分かる(参考例14参照)。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、毛髪における仕上がりの柔らかさをさらに高めることが可能なシャンプー組成物として好ましく用いることができる。