(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板状部材が前記放出回転体の回転方向に沿って延びる感圧板として形成され、前記荷重検出器が前記感圧板に設けられたロードセルである請求項2に記載のコンバイン。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によるコンバインでは、スクリューコンベアで穀粒タンクの上方に搬送されてきた穀粒が投入口から自然落下する下方に穀粒センサが配置されており、この穀粒センサからの信号に基づいて穀粒量が連続的に検出される。穀粒センサの構造は開示されていないが、特許文献1の
図1からは、自然落下する穀粒との衝突によって信号を生成するセンサであることが読み取れる。このように、自然落下する穀粒を検出対象とする場合、搬送される穀粒量が変動すると、自然落下軌跡の周辺領域の穀粒密度は変動しても、自然落下軌跡の中心領域の穀粒密度はあまり変化しない可能性がる。このため、穀粒の搬送量の測定が不正確となる。また、走行中のコンバインには揺れが生じるので、自然落下する穀粒の流れにも揺れが生じる。このことも正確な測定を困難にする。
【0003】
特許文献2によるコンバインでは、脱穀装置からスクリューコンベアで送られてきた穀粒を穀粒放出口から放出する回転羽根板が設けられており、穀粒タンクの内部には、回転羽根板によって放出された穀粒との衝撃を歪みゲージで検出するセンサが設けられている。この歪みゲージから電圧に基づいて穀粒量が制御部によって算出される。この構成でも、回転羽根板によって放出される穀粒の流れによる衝撃量と穀粒量との関係が揺らぎがちであり、穀粒の搬送状態の正確な測定は困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、脱穀装置から穀粒タンクに送られてくる穀粒の量を、簡単かつ正確に、連続検出する技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコンバインは、脱穀装置と、前記脱穀装置による脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記脱穀装置から前記穀粒タンクに穀粒を搬送する穀粒搬送機構と、前記穀粒搬送機構の終端領域に設けられ、穀粒放出口を設けた放出ケース及び前記放出ケース内に回転可能に配置された放出回転体を有する穀粒放出装置と、前記放出回転体による穀粒放出直前の穀粒による押圧力を受ける押圧作用部と、前記押圧作用部に作用する前記押圧力を検出する荷重検出器と、前記荷重検出器の検出信号から穀粒搬送量を評価する収量評価部とを備え
、
前記収量評価部は、前記放出回転体の回転周期における前記検出信号に基づいて前記回転周期あたりの前記穀粒搬送量を評価し、前記回転周期毎に得られる前記検出信号の最大値を、単位走行距離を走行する時間において積算することで、前記単位走行距離における前記穀粒搬送量を評価する。
【0007】
この構成によれば、穀粒搬送機構によって脱穀装置から穀粒タンクに送られてくる穀粒は、放出回転体の回転運動により穀粒放出口から穀粒タンク内に放出される。放出回転体の回転運動により穀粒放出口に移動させられる際、穀粒は放出回転体に押し付けられる。この放出回転体によって穀粒に及ぼされる押圧力(以下、押圧と略称する)は穀粒の量が増加すると大きくなり、穀粒の量が減少すると小さくなる。したがって、押圧作用部にかかる荷重を荷重検出器により検出すると、その検出信号から、脱穀装置から穀粒タンクへの穀粒搬送量を評価することができる。この穀粒搬送量の評価量には、単位時間当たりの穀粒量(収量)を示すデータや穀粒収量の継時的な増減変化を示すデータなどが含まれる。
さらに、押圧作用部に生じる押圧の変動は、放出回転体の回転に依存する。つまり、放出回転体の回転角に応じて、検出荷重が変動する。したがって、この放出回転体の回転周期を考慮して検出信号を処理し、穀粒搬送量を評価することが測定工学的に好ましい。その際、検出信号が周期性を持つので、穀粒搬送量の評価は、所定周期における検出信号の最大値に基づくことが好適である。この検出信号の周期性は、放出回転体の回転周期に対応している。
【0008】
放出回転体による穀粒の放出時に穀粒が受ける押圧は、穀粒を介して放出ケースに伝わる。このことから、放出ケースにかかる荷重を検出することで、良好に穀粒搬送量を評価することができる。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記押圧作用部として、前記放出ケースにおける、穀粒搬送方向で前記穀粒放出口の直前の位置に、板状部材が取り付けられている。前記放出回転体と前記押圧作用部との間を通過する穀粒による前記押圧力が前記押圧作用部に作用する。
【0009】
板状部材にかかる荷重を、簡単な構成でかつ確実に検出するためには、その荷重によって弾性変形する感圧板と、その感圧板の歪みを検出するロードセルとの組み合わせが適している。その際、板状部材を感圧板として用いることで、荷重検出構造が簡単となる。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記板状部材が前記放出回転体の回転方向に沿って延びる感圧板として形成され、前記荷重検出器が前記感圧板に取り付けられたロードセルである。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記放出ケースは、前記放出回転体の回転軸心を中心とする円筒部分を有し、かつ前記回転軸心に沿って延びている筒状体であり、前記筒状体の内周面の一部に穀粒放出口が設けられ、前記内周面における、前記放出回転体の回転方向で前記穀粒放出口の手前に位置する周面部分に、前記押圧作用部が設けられている。放出回転体が穀粒を介して放出ケースに及ぼす押圧の変動は、穀粒放出口の手前付近で顕著となる。このため、穀粒放出口の手前付近に押圧作用部を配置することは、高い検出精度を得るために有利である。
【0011】
【0012】
【0013】
放出回転体の簡単で好適な構造として、前記放出回転体が回転軸と当該回転軸に設けられた羽根板からなる回転羽根とし、前記回転羽根は回転方向に穀粒を押し出す穀粒押し出し面を有するようにすることが、提案される。その場合、周期的に変動する荷重を好適に検出して、評価するために、本発明の好適な実施形態として、前記回転羽根の回転角を検出する回転角センサが備えられ、前記回転角センサは前記回転羽根の周方向特定点を検出するセンサであり、前記収量評価部は、前記周方向特定点から前記放出回転体の回転周期を算定し、かつ前記放出回転体の回転周期における検出信号の最大値発生領域を前記収量評価部による評価領域とすることが提案される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を用いて、本発明によるコンバインの具体的な実施形態の1つを説明する。
図1は、コンバインの一例である普通型コンバインの側面図であり、
図2は平面図である。このコンバインは、溝形材や角パイプ材などの複数の鋼材を連結した機体フレーム10を備えている。機体フレーム10の下部には左右一対のクローラ式の走行装置11を装備している。機体フレーム10における右半部の前側には、エンジン15が搭載され、その上部にキャビン構成の運転部13が形成されている。
【0016】
運転部13には、操縦レバー18やモニタ19などが配置されている。機体フレーム10の前部には、刈取部12が昇降自在に装備されており、機体フレーム10の後部には、刈取部12から供給された刈取穀稈を全稈投入して脱穀する脱穀装置14と、脱穀装置14から穀粒搬送機構16によって供給される穀粒を貯留する穀粒タンク2と、穀粒タンク2に貯留された穀粒を外部へ排出するアンローダ17とが装備されている。
【0017】
刈取部12は、機体横向きの第一横軸芯X1周りに上下昇降可能に構成されており、旋回時などの非収穫作業時には刈取部12は上昇状態となり、収穫作業時には圃場面に近接した下降状態となる。刈取部12によって刈られた刈取穀稈を脱穀装置14の前端部へ搬送される。
【0018】
脱穀装置14は、刈取部12から搬送された刈取穀稈を、回転駆動される扱胴14aによって脱穀処理するように構成されている。穀粒タンク2は、機体フレーム10上の右後部に配置されており、脱穀装置14の右横隣側で、運転部13の後方側に位置している。
脱穀装置14から穀粒タンク2に穀粒を搬送する穀粒搬送機構16が脱穀装置14と穀粒タンク2との間に配置されている。
【0019】
図3と
図4とに示されているように、穀粒搬送機構16は、脱穀装置14の底部に設けられた一番物回収スクリュー14Aと揚送コンベヤ16Aと横送りコンベヤ16Bとを含む。揚送コンベヤ16Aは、脱穀装置14から排出された穀粒を上方に送るために、ほぼ垂直に立設されている。揚送コンベヤ16Aは、駆動スプロケット161と従動スプロケット162とにわたって巻き掛けられた無端回動チェーン163の外周側に複数のバケット164が一定間隔で取り付けられているバケットコンベヤである。
【0020】
揚送コンベヤ16Aは、脱穀装置14から排出された穀粒を上方に送るバケットコンベヤである。横送りコンベヤ16Bは、揚送コンベヤ16Aの搬送終端部と接続されており、揚送コンベヤ16Aから移送された穀粒を穀粒タンク2の内部に送り込むスクリューコンベヤである。横送りコンベヤ16Bは、揚送コンベヤ16Aの上端部から横向きに延びて穀粒タンク2の左側壁2bにおける前側の上部に差し込まれており、外周部は、断面形状円形(八角形やその他の多角形でもよい)のケーシング165で包囲されている。横送りコンベヤ16Bは、スクリュー軸166と、このスクリュー軸166に固定されたスクリュー体167とを備えている。
【0021】
横送りコンベヤ16Bの終端領域に、穀粒を穀粒タンク2の内部に拡散放出する穀粒放出装置3が設けられている。穀粒放出装置3は、放出回転体32と放出回転体32の周囲を覆う放出ケース31とを備えている。放出回転体32は、スクリュー軸166から延長された回転軸321と、回転軸321に設けられた羽根板322からなる回転羽根である。羽根板322は、回転軸321から径外方向に突出するように回転軸321に固定されている。羽根板322は、その回転方向に穀粒を押し出していく実質的に平坦な押し出し面を有している。放出ケース31は、羽根板322の回転軌跡より少し大きな内径を有する円筒形である。放出ケース31の周面の一部が切り欠かれている。この切り欠きによって、羽根板322の回転によって穀粒を穀粒タンク2の内部における後方側へ放出する穀粒放出口30(
図5参照)が形成されている。
【0022】
スクリュー軸166と回転軸321とは、横軸芯X2周りに一体回転する。その回転方向は、この実施形態においては、横軸芯X2に沿ってスクリュー軸166の基端側から先端側を向く視線を基準にした左回転に設定されている。つまり、羽根板322は、
図5において反時計回りに回転する。
【0023】
この実施形態では、羽根板322の回転軌跡径とスクリュー体167の回転軌跡径がほぼ同じなので、放出ケース31は、円筒状の筒体であり、横送りコンベヤ16Bのケーシング165の延長部として形成されている。なお、羽根板322の回転軌跡径が、スクリュー体167の回転軌跡径より大きい場合は、放出ケース31は、横送りコンベヤ16Bのケーシング165より大径に形成され、逆の場合は、放出ケース31は、横送りコンベヤ16Bのケーシング165より小径に形成される
【0024】
穀粒放出口30は、
図5と
図6に示すように、放出ケース31の軸方向において、ほぼ羽根板322の幅で、放出ケース31の周方向において下端から回転方向でほぼ四分の一円周の長さにわたる切り欠き開口である。羽根板322で押し送りされてきた穀粒はこの穀粒放出口30を通じて、放出ケース31から穀粒タンク2の内部に放出される。放出ケース31から放出される穀粒の放出方向を規定するノズルを作り出すため、穀粒放出口30の周方向で両側の縁部に、放出ケース31から羽根板322の回転軌跡の接線方向に延びる放出案内片311が形成されている。
【0025】
図6に示すように、羽根板322の回転方向で穀粒放出口30の手前に位置する放出ケース31の周壁部分に、羽根板322の軸方向の幅内で、羽根板322の回転方向に沿って延びた開口が設けられ、この開口に板状部材で形成された押圧作用部40が取り付けられている。その際、放出ケース31の周壁の内面と押圧作用部40の内面とに段差を形成しないために、開口に押圧作用部40を嵌め込むような構造を採用してもよい。さらに、押圧作用部40にかかる荷重を検出する荷重検出器41として、押圧作用部40の外面にロードセルが設けられている。羽根板322による穀粒の放出時に、羽根板322の回転力による穀粒への押圧が穀粒を介して押圧作用部40に伝達される。この押圧による圧力が押圧作用部40にひずみを生じさせる。羽根板322による穀粒への押圧は、穀粒搬送機構16によって搬送されてくる穀粒の量が多くなるほど、大きくなる。したがって、押圧作用部40のひずみによりロードセルに生じる電気信号は、搬送されてくる穀粒の量(収穫された穀粒の量:収量)に依存する強さを有することになるので、搬送されてくる穀粒の変動や量を評価するための検出信号として取り扱うことができる。
【0026】
この実施形態では、押圧作用部40を構成する板状部材は放出ケース31の周壁の一部として機能するとともに、穀粒の増減による圧力変動を検出する感圧板として機能している。このことから、押圧作用部40にかかる荷重を検出する荷重検出器41としては、ロードセル以外に、その他の感圧センサを用いることも可能である。
【0027】
さらに、
図6に示されているように、回転軸321の周辺に、羽根板322の回転周期、つまり回転軸321の周期を検出する回転角センサ91が配置されている。回転角センサ91は、回転軸321の周方向の特定位置に設けられた突起などの被検出体を光学的または磁気的に検出するセンサであり、この検出信号に基づいて、回転軸321の周方向特定点の通過時点、結果的には羽根板322の通過時点を示すパルス信号が生成される。
【0028】
図7に、穀粒放出時における荷重検出器41からの検出信号の継時的な挙動が示されている。
図7の上のグラフは、羽根板322が一回転する間(一周期)に荷重検出器41により出力される検出信号(ロードセルからの電圧)を模式的に示している。羽根板322が押圧作用部40を通り過ぎた直後は、押圧作用部40に大きな押圧(荷重)が掛からないので、検出信号は低いレベルを示している。横送りコンベヤ16Bから穀粒放出装置3に連続的に送り込まれてくる穀粒は、回転する羽根板322によって穀粒放出口30の方に押し込まれていく。羽根板322が押圧作用部40を通過する際に、羽根板322による押し込みによる力が押圧作用部40において最も強くなるので、その時に荷重検出器41の検出信号が一周期における最大値(max)を示す。
【0029】
図7では、回転角センサ91の検出信号に基づくパルス信号が発生してから次のパルス信号が発生するまでの期間(以下、パルス区間とも呼称する)に、羽根板322が押圧作用部40を1度だけ通過しており、最大値(max)として検出されるべきであるピーク(穀粒放出直前のピーク)が各パルス区間に1度ずつ生じている。ここで、羽根板322が一回転する間において、最大値(max)として検出されるべきであるピークの生じるタイミング(以下、ピークタイミングとも呼称する)は、多少前後にずれることがある。
そのため、仮に、パルス信号が発生するタイミングと荷重検出器41の検出信号が最大値(max)となるタイミングとが近接するように構成されている場合、ピークタイミングのずれによって、最大値(max)として検出されるべきであるピークが1つのパルス区間に1つも含まれない、あるいは、1つのパルス区間に2つ以上含まれてしまう、といった事象が起こり得る。そこで、この実施形態においては、
図7に示すように、パルス区間のうち、中央付近の時点で、羽根板322が押圧作用部40を通過し、ピークタイミングとなるように構成されている。この構成によれば、ピークタイミングが多少前後にずれても、最大値(max)として検出されるべきであるピークが1つのパルス区間に1つも含まれない、あるいは、1つのパルス区間に2つ以上含まれてしまう、といった事象が起こりにくい。
【0030】
図7の下のグラフは、羽根板322が複数回転する間(複数周期)に荷重検出器41により出力される検出信号(ロードセルからの電圧)を模式的に示している。各周期における最大値(max)の変動は、横送りコンベヤ16Bで送られてくる穀粒量の変動、つまり圃場の微小区画単位の収穫量(収量)の変動を表す。
【0031】
したがって、荷重検出器41からの検出信号に対してフィルタ処理を含む信号処理を施し、羽根板322の一回転(一周期)毎に算定される最大値(max)から、予め設定されている収量導出マップ63を用いて単位走行距離当たりの収量を導出することができる。収量導出マップ63の内容は、コンバインの走行速度、羽根板322の回転速度、穀粒の種別等によって変更される。最も簡単な収量導出マップ63は、最大値(max)と単位時間(羽根板322の一回転)当たりの収量とを線形で関係付けたものである。これを用いて導出された単位時間当たりの収量とコンバインの走行速度とから単位走行距離当たりの収量、つまり圃場の単位距離当たりの収量が得られる。さらに、単位距離当たりの収量とコンバインの刈幅とから圃場の単位面積(微小区画)当たりの収量が得られる。
【0032】
刈取り走行中のコンバインの圃場における穀稈の刈取り位置(収穫位置)は、GPSなどを用いて取得できる。刈り取られた穀稈から脱穀処理で取り出された穀粒が、穀粒放出口30から放出されるまでの遅れ時間を予め求めておき、この遅れの間のコンバインの走行軌跡を辿ることで、上述した単位面積(微小区画)当たりの収量を割り当てるべき圃場の微小区画を決定することができる。これにより、最終的に圃場の穀粒収量分布の生成が可能となる。
【0033】
なお、収量を割り当てるべき圃場の微小区画(単位走行距離)において、羽根板322が複数回回転する場合には、各回転(各周期)毎に得られる最大値(max)は積算される。
【0034】
図8には、コンバインの制御ユニット5の機能ブロックの一部が示されている。制御ユニット5には、コンバインの各機器の動作を制御するモジュールとして、走行に関する機器を制御する走行制御部51と作業装置に関する機器を制御する作業制御部52と、入力信号処理部53が備えられている。さらに、制御ユニット5には、収量計測に関する機能モジュールとして収量評価部6が構築されている。走行制御部51及び作業制御部52で生成された制御信号は機器制御部54を介して各種機器に送られる。入力信号処理部53には、人為操作デバイスからの信号、コンバインを構成する機器の状態を検出するセンサやスイッチなど作業状態検出センサ群9からの信号、ロードセルである荷重検出器41の検出信号が入力される。そして、入力信号処理部53は、これらの入力を要求されるデータフォーマットに変換したのち、制御ユニット5の各機能部に転送する。このコンバインには、自車位置を検出するためにGPSユニット90が備えられている。GPSユニット90で取得される方位情報も、制御ユニット5に入力される。
【0035】
この実施形態では、収量評価部6は、最大値算定部61、収量演算部62、収量導出マップ63、収量分布算定部64を備えている。最大値算定部61には、入力信号処理部53で増幅処理やフィルタ処理を受けた、ロードセルである荷重検出器41の検出信号が入力される。最大値算定部61は、さらに、穀粒放出装置3の羽根板322の回転周期を検出する回転角センサ91からの信号を、入力信号処理部53を介して受け取り、一周期毎の最大値(max)を算定する。
【0036】
この実施形態では、1つの羽根板322が回転軸321に設けられており、回転角センサ91からの検出信号に基づいて、回転軸321が1回転する毎に1つのパルスが生成される。つまり、360度の回転周期毎に1つの最大値(max)が算定される。このパルスの発生する時点と、最大値(max)が発生する時点との関係は予め算定できる。したがって、所定の時間幅をもった最大値発生領域をゲートとして設定し、この最大値発生領域を、最大値(max)を算定するための評価領域とすることが可能である。
【0037】
収量導出マップ63は、羽根板322の一周期における最大値(max)を入力として、横送りコンベヤ16Bで送られてくる単位時間当たりの穀粒量を導出するルックアップテーブルである。羽根板322の回転速度が選択可能な場合、各回転速度別にルックアップテーブルが用意されるか、あるいは回転速度に応じて設定される補正係数で出力値が補正される。収量演算部62は、最大値算定部61で算定された最大値(max)から収量導出マップ63を用いて、単位時間当たりの穀粒量(収量)を求める。さらに、コンバインの車速や刈取り幅を取得して、単位走行距離当たりや単位面積当たりの穀粒量(収量)を求めることも可能である。
【0038】
収量演算部62は、その収量演算の対象となった穀粒に対応する穀稈が刈り取られた圃場位置をGPSユニット90からの位置情報に基づいて算定し、当該位置情報と求めた穀粒量(収量)とを関係づけて、穀粒収量状態情報として記録する。収量分布算定部64は、穀粒収量状態情報に基づいて、圃場の微小区画毎に収量を割り当て、穀粒収量分布を生成する。
【0039】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、穀粒収量状態情報として収量が取り扱われたが、これに代えて、単に収量の変動、つまり最大値(max)の変動データを穀粒収量状態情報としてもよい。この場合、穀粒収量分布は、微小区画単位での収量の多少を示す相対データとなる。圃場における収量の絶対的な値は、穀粒タンク2から穀粒を搬出する際に行われる穀粒量の計測結果によって、得ることが可能である。
【0040】
(2)上述した実施形態では、押圧作用部40と荷重検出器41とは、横送りコンベヤ16Bの延長上に設けられた穀粒放出装置3の放出ケース31の一部分に設けられている。穀粒放出装置3の形態は、コンバインの種類によって異なるので、本発明では、穀粒放出装置3の形態、押圧作用部40と荷重検出器41との形状及び配置は、上述した実施形態に限定されない。例えば、
図9と
図10では、脱穀装置14の底部から穀粒を穀粒タンク2の上方に搬送するスクリューコンベア式の揚送コンベヤ16Aの上端に穀粒放出装置3が設けられている。穀粒放出装置3は、揚送コンベヤ16Aを構成するスクリューコンベア190の軸体191の上端に、軸方向に沿って設けられた羽根板192と、この羽根板192を覆う羽根カバー193とを備えている。羽根カバー193は、羽根板192の回転軌跡の穀粒タンク2の内部を向いている部分に対向する領域を開口しており、この開口が穀粒の穀粒放出口30となる。スクリューコンベア190で搬送されてきた穀粒は、羽根板192が穀粒放出口30から穀粒を穀粒タンク2内に向けて跳ね飛ばす。羽根カバー193は、跳ね飛ばされた穀粒が穀粒タンク2内に極力均一な水平分布状態で貯留されるような形状を有する。羽根カバー193の側壁で、穀粒放出時に羽根板192との間に穀粒を挟み込む箇所に、板状の押圧作用部40と、ロードセルによる荷重検出器41とが取り付けられている。揚送コンベヤ16Aで搬送されてきた穀粒は、羽根板192によって羽根カバー193の側壁に押し付けられるので、穀粒の量に対応する荷重が押圧作用部40に掛かる。荷重検出器41(ロードセル)は、この側壁に掛かる荷重を検出する。
【0041】
(3)上述した実施形態では、回転軸321に1つの羽根板322が設けられていたが、回転軸321に複数の羽根板322が設けられてもよい。その際、羽根板322は周方向で等間隔に配置されることが好ましい。この場合、最大値(max)として検出されるべきであるピーク(穀粒放出直前のピーク)が発生する回転位相の間隔は、360度ではなく、360度を羽根板322の数で割った値となる。各ピークをそれぞれ最大値(max)として検出するためには、回転軸321の回転周期を、回転軸321の回転方向における羽根板322の割り付けピッチと対応する比率で、羽根板322の数と同数の区間(以下、分割区間と呼称する)に分割すればよい。その場合、各分割区間における中央付近の時点で、羽根板322が押圧作用部40を通過し、ピークタイミングとなるように構成すれば、ピークタイミングが多少前後にずれても、最大値(max)として検出されるべきであるピークが1つの分割区間に1つも含まれない、あるいは、1つの分割区間に2つ以上含まれてしまう、といった事象が起こりにくい。なお、回転軸321の回転周期を分割するためには、各羽根板322に対応するように複数の特定点を設定すればよい。その場合、回転角センサ91は、回転軸321の1回転毎に、羽根板322の数の分だけのパルスを発生させる。これにより、回転軸321の回転周期が、羽根板322の数と同数のパルス区間に分割されることとなる。
【0042】
(4)上述した実施形態では、羽根板322の形状は平板であったが、湾曲体など、種々の形状を採用することができる。