(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書において、樹脂組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が樹脂組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本明細書において、「成形金型の内部表面」とは、成形金型により成形される被成形物と接する領域を意味する。
【0012】
[金型清掃用樹脂組成物]
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、メラミン系樹脂と、脂肪酸亜鉛と、有機塩基(但し、強酸と弱塩基との塩を除く。以下、単に「有機塩基」ともいう。)と、を含み、前記脂肪酸亜鉛の含有量が、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部以上であり、かつ、前記脂肪酸亜鉛の含有量に対する前記有機塩基の含有量の比率が、質量基準で、1/100〜1/2である。
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、従来の金型清掃用樹脂組成物と比較して、清掃性能に優れる。
本発明の金型清掃用樹脂組成物がこのような効果を奏し得る理由については、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0013】
一般に、メラミン系樹脂を含む金型清掃用樹脂組成物には、成形金型の清掃性能、清掃後における成形金型からの離型性、打錠性等を改善する目的で、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛が含まれている。例えば、上述の特許文献1及び特許文献2においても、ステアリン酸亜鉛を含む金型清掃用樹脂組成物の例が開示されている。
成形金型の清掃性能、清掃後における成形金型からの離型性、打錠性等をより高めるという観点からは、メラミン系樹脂を含む金型清掃用樹脂組成物には、できるだけ多くの脂肪酸亜鉛が含まれていることが望ましい。
しかしながら、酸性化合物である脂肪酸亜鉛は、メラミン系樹脂の硬化反応の酸性触媒として機能し得るため、メラミン系樹脂を含む金型清掃用樹脂組成物が脂肪酸亜鉛を過剰に含むと、メラミン系樹脂の硬化反応が速まり、却って、成形金型の清掃性能が低下する傾向を示す。
【0014】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、メラミン系樹脂と、脂肪酸亜鉛と、有機塩基(但し、強酸と弱塩基との塩を除く。)と、を含み、脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率が、質量基準で、1/100〜1/2であるため、脂肪酸亜鉛によるメラミン系樹脂の硬化反応が、有機塩基によって適切な速度に制御される。そして、脂肪酸亜鉛によるメラミン系樹脂の硬化反応が有機塩基によって適切な速度に制御されることで、金型清掃用樹脂組成物は、成形金型の清掃性能の改善に十分な量、すなわち、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部以上の脂肪酸亜鉛を含むことができる。その結果、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、優れた清掃性能を奏し得ると考えられる。
【0015】
また、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、上述のとおり、清掃後における成形金型からの離型性の改善に十分な量、すなわち、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部以上の脂肪酸亜鉛を含むことができるため、清掃後の金型清掃用樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際の作業性にも優れる。
【0016】
〔メラミン系樹脂〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、メラミン系樹脂を含む。
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、メラミン系樹脂を含むことで、成形金型の内部表面の汚れに対して、優れた清掃性能を発揮する。
メラミン系樹脂は、極性の高いメチロール基を有しており、該メチロール基がエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂組成物を含む封止成形材料に由来する汚れに作用することで、優れた清掃性能効果が奏されるものと考えられる。また、メラミン系樹脂は、熱に対して安定であるため、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、成形金型の清掃時の一般的な温度である160℃〜190℃付近においても、安定した清掃性能を発揮するものと考えられる。
【0017】
本発明において、「メラミン系樹脂」とは、メラミン樹脂、メラミン−フェノール共縮合物、及びメラミン−ユリア共縮合物を意味する。
【0018】
メラミン樹脂は、トリアジン化合物と、アルデヒド化合物との縮合物である。
トリアジン化合物としては、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等が挙げられる。
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
メラミン樹脂は、トリアジン化合物由来の繰り返し単位と、アルデヒド化合物由来の繰り返し単位とのモル比が、1:1.2〜1:4であることが好ましい。
【0019】
メラミン−フェノール共縮合物は、トリアジン化合物と、フェノール化合物と、アルデヒド化合物との共縮合物である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等が挙げられる。
メラミン−フェノール共縮合物は、トリアジン化合物由来の繰り返し単位と、フェノール化合物由来の繰り返し単位と、アルデヒド化合物由来の繰り返し単位とのモル比が、1:0.3:1〜1:1:3であることが好ましい。
【0020】
メラミン−ユリア共縮合物は、トリアジン化合物と、ユリア化合物と、アルデヒド化合物との共縮合物である。
ユリア化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるメラミン系樹脂は、公知の方法により製造することができる。
例えば、メラミン樹脂は、メラミン結晶とホルムアルデヒドとを、モル比1:1.2〜1:4、反応温度80℃〜90℃、pH7〜7.5の条件下で撹拌した後、60℃において、反応物の3質量%水溶液が白濁するまでの時間、反応させる。次いで、水酸化ナトリウムを入れ、冷却することにより、メラミン樹脂を得ることができる。
【0022】
メラミン系樹脂としては、上市されている市販品を用いてもよい。
市販品の例としては、日本カーバイド工業(株)のニカレヂン(登録商標)S−166、S−176、S−260、S−305等が挙げられる。
【0023】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、メラミン系樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
本発明の金型清掃用樹脂組成物におけるメラミン系樹脂の含有量は、特に限定されるものではない。例えば、金型清掃用樹脂組成物におけるメラミン系樹脂の含有量は、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、55質量部〜85質量部が好ましく、60質量部〜80質量部がより好ましく、65質量部〜75質量部が更に好ましい。
【0025】
〔脂肪酸亜鉛〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、該金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部以上の脂肪酸亜鉛を含む。
本発明の金型清掃用樹脂組成物において、成形金型の清掃性能、清掃後における成形金型からの離型性、打錠性等の改善に寄与する。
【0026】
脂肪酸亜鉛としては、特に限定されない。
脂肪酸亜鉛を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、好ましくは飽和脂肪酸である。
脂肪酸亜鉛を構成する脂肪酸としては、炭素数12〜20の飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14〜18の飽和脂肪酸がより好ましい。
炭素数12〜20の飽和脂肪酸としては、具体的には、炭素数12のラウリン酸(IUPAC名:ドデカン酸)、炭素数14のミリスチン酸(IUPAC名:テトラデカン酸)、炭素数16のパルミチン酸(IUPAC名:ヘキサデカン酸)、炭素数18のステアリン酸(IUPAC名:オクタデカン酸)、炭素数20のアラキジン酸(IUPAC名:エイコサン酸)等が挙げられる。
【0027】
脂肪酸亜鉛としては、炭素数14の飽和脂肪酸と亜鉛とから構成されるミリスチン酸亜鉛、及び炭素数18の飽和脂肪酸と亜鉛とから構成されるステアリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸亜鉛が特に好ましい。
【0028】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、脂肪酸亜鉛を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0029】
本発明の金型清掃用樹脂組成物における脂肪酸亜鉛の含有量は、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、1質量部以上であり、1.2質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましい。
脂肪酸亜鉛の含有量が、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部以上であると、成形金型の内部表面の汚れに対して、優れた清掃性能を発揮する。また、清掃後における金型清掃用樹脂組成物の成形物と成形金型の内部表面との型離れが良好となり、成形物を成形金型から取り除く際の作業性が向上する。さらに、本発明の金型清掃用組成物をタブレット成形する際の打錠性が向上する。
【0030】
上述のとおり、脂肪酸亜鉛は、成形金型の清掃性能の改善のみならず、清掃後における成形金型からの離型性、打錠性等の改善にも寄与する。しかし、メラミン系樹脂を含む金型清掃用樹脂組成物が脂肪酸亜鉛を過剰に含むと、却って打錠性が低下したり、余剰の脂肪酸亜鉛が成形金型に残って成形金型を汚染したりすることがある。また、清掃後における成形金型からの離型性は、金型清掃用樹脂組成物における脂肪酸亜鉛の含有量がある一定の量を超えてもあまり変わらないため、脂肪酸亜鉛を過剰に含むメリットは少ないと考えられる。
本発明の金型清掃用樹脂組成物における脂肪酸亜鉛の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、打錠性の低下及び成形金型の汚染を防止する観点から、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。
【0031】
〔有機塩基〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、有機塩基(但し、強酸と弱塩基との塩を除く。)を含む。また、本発明の金型清掃用樹脂組成物において、脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率は、質量基準で、1/100〜1/2である。
本発明の金型清掃用樹脂組成物において、有機塩基は、既述の脂肪酸亜鉛によるメラミン系樹脂の硬化反応速度の制御に寄与する。
【0032】
有機塩基としては、強酸と弱塩基との塩以外であれば、特に限定されない。
有機塩基としては、グアニジン化合物(炭酸グアニジン、重炭酸アミノグアニジン、リン酸グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、フェニルグアニジン等)、アミジン化合物(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等)などが挙げられる。
これらの中でも、有機塩基としては、例えば、既述の脂肪酸亜鉛によるメラミン系樹脂の硬化反応速度の上昇を効果的に抑制できる点において、グアニジン化合物及びアミジン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、炭酸グアニジン、重炭酸アミノグアニジン、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく、炭酸グアニジンが更に好ましい。
なお、強酸と弱塩基との塩は、温度25℃におけるpKaが2.0以下の酸と、温度25℃におけるpKbが3.0〜11.0の塩基と、の塩である。ここで、「Ka」は酸の解離定数であり、「Kb」は塩基の解離定数であり、pKa=−logKaであり、pKb=−logKbである。
強酸と弱塩基との塩は、塩酸、硫酸、及び硝酸に代表される強酸と、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びアニリンに代表される弱塩基との塩を例示できる。
【0033】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、有機塩基を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0034】
本発明の金型清掃用樹脂組成物における有機塩基の含有量は、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、0.01質量部〜2.5質量部が好ましく、0.012質量部〜2.0質量部がより好ましく、0.015質量部〜1.5質量部が更に好ましい。
【0035】
また、本発明の金型清掃用樹脂組成物における、脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率は、質量基準で、1/100〜1/2であり、1/80〜1/3が好ましく、1/40〜1/4がより好ましい。
脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率が、質量基準で、1/100以上であると、脂肪酸亜鉛によるメラミン系樹脂の硬化反応速度の上昇を、有機塩基によって制御できるため、金型清掃用樹脂組成物が成形金型の清掃性能の改善に十分な量、すなわち、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部以上の脂肪酸亜鉛を含むことができる。その結果、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、優れた清掃性能を奏し得る。
脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率が、質量基準で、1/2以下であると、脂肪酸亜鉛がメラミン系樹脂の酸性触媒として、適度に機能するため、金型清掃用樹脂組成物の成形性が良好となる。
【0036】
〔その他の成分〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、メラミン系樹脂、脂肪酸亜鉛、及び有機塩基(但し、強酸と弱塩基との塩を除く。)以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、充填材、滑剤、着色剤、抗酸化剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0037】
<充填材>
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、充填材を含むことが好ましい。
金型清掃用樹脂組成物が充填材を含むと、成形した際に金型清掃用樹脂組成物の強度が適切に保たれるため、清掃後、金型清掃用樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際の作業性がより良好となり、かつ、成形金型の内部表面の清掃性能もより良好となる。
充填材としては、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよい。
【0038】
(有機充填材)
有機充填材としては、パルプ、木粉、合成繊維等が挙げられる。
これらの中でも、有機充填材としては、パルプが特に好ましい。
パルプとしては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等)、非木材パルプ(藁、竹、バガス、綿等)などが挙げられる。これらのパルプは、化学パルプ及び機械パルプのいずれであってもよい。
【0039】
パルプの大きさは、特に限定されず、例えば、5μm〜1000μmが好ましく、10μm〜200μmがより好ましい。
パルプの大きさが上記範囲内であると、金型清掃用樹脂組成物の流動性が良好となるため、成形金型のキャビティのコーナー部まで十分に清掃することができる。また、パルプの大きさが上記範囲内であると、成形した際に金型清掃用樹脂組成物の強度が適切に保たれるため、清掃後、金型清掃用樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際の作業性がより良好となり、かつ、成形金型の内部表面の清掃性能もより良好となる。
【0040】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が有機充填材を含む場合、有機充填材を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が有機充填材を含む場合、金型清掃用樹脂組成物における有機充填材の含有量は、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、3質量部〜20質量部が好ましい。
有機充填材の含有量が上記範囲内であると、金型清掃用樹脂組成物の流動性がより適正なものとなる。また、有機充填材の含有量が上記範囲内であると、成形した際に金型清掃用樹脂組成物の強度が適切に保たれるので、清掃後、金型清掃用樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際の作業性がより良好となり、かつ、成形金型の内部表面の清掃性能もより良好となる。
【0042】
(無機充填材)
無機充填材としては、炭化ケイ素、酸化ケイ素(シリカ)、炭化チタン、酸化チタン、炭化ホウ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材としては、金型清掃用樹脂組成物を調製する際に、メラミン系樹脂と良好に混合することができるという観点から、炭化ケイ素、酸化ケイ素(シリカ)、炭化チタン、酸化チタン、炭化ホウ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、無機充填材としては、酸化ケイ素(シリカ)及び酸化チタンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酸化ケイ素(シリカ)が特に好ましい。
金型の材質及び状態にもよるため一概には言えないが、酸化ケイ素(シリカ)及び酸化チタンは、硬度が適当であり、成形金型の内部表面及びゲート部分の磨耗、並びに傷つきの発生を抑制することができ、かつ、成形金型の清掃時の一般的な温度である160℃〜190℃付近においても熱的に安定であるため、好ましい。
【0043】
なお、上記にて例示した無機充填材の硬度(新モース硬度)は、炭化ケイ素が13、酸化ケイ素(シリカ)が8、炭化チタンが9、酸化チタンが8、炭化ホウ素が14、酸化ホウ素が3、酸化アルミニウムが12、酸化マグネシウムが4、及び酸化カルシウムが3である。
【0044】
無機充填材としては、上市されている市販品を用いてもよい。
市販品の例としては、新日鉄住金マテリアルズ(株)マイクロンカンパニーの「S440−4」、「HS−202」、「HS−204」、「UF−320」(いずれも商品名)等の非晶質シリカ、瀬戸窯業原料(株)の純硅石粉(商品名)等の結晶質シリカなどが挙げられる。
【0045】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が無機充填材を含む場合、無機充填材を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が無機充填材を含む場合、金型清掃用樹脂組成物における無機充填材の含有量は、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、10質量部〜30質量部が好ましく、15質量部〜25質量部がより好ましい。
無機充填材の含有量が上記範囲内であると、成形した際に金型清掃用樹脂組成物の強度が適切に保たれるので、清掃後、金型清掃用樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際の作業性がより良好となり、かつ、成形金型の内部表面の清掃性能もより良好となる。
【0047】
<滑剤>
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、滑剤を含むことが好ましい。
金型清掃用樹脂組成物が滑剤を含むと、金型清掃用樹脂組成物を調製する際に、各成分の分散性が向上する。
【0048】
滑剤としては、脂肪酸アミド系滑剤、詳細には、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和又は不飽和モノアミド型滑剤、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等の飽和又は不飽和ビスアミド型滑剤などが挙げられる。
【0049】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が滑剤を含む場合、滑剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0050】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が滑剤を含む場合、金型清掃用樹脂組成物における滑剤の含有量は、金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、0.1質量部〜0.6質量部が好ましく、0.2質量部〜0.5質量部がより好ましい。
【0051】
〔金型清掃用樹脂組成物の調製方法〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、例えば、メラミン系樹脂、脂肪酸亜鉛、及び有機塩基(但し、強酸と弱塩基との塩を除く。)、並びに、必要に応じて、既述の他の成分を混合することにより調製することができる。
混合方法としては、特に限定されず、ニーダー、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ロール練り、らいかい機、タンブラー等の公知の混合機を用いる混合方法が挙げられる。
【0052】
〔用途〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を含む封止成形材料に由来する汚れを、成形金型の内部表面から取り除くために好適に用いられる。
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、特に、トランスファー成形されることにより、成形金型の内部表面を清掃する、所謂トランスファータイプの金型清掃用樹脂組成物として好適である。
【0053】
〔金型清掃方法〕
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、通常、タブレット状に加工して、成形金型の内部表面の清掃作業に用いられる。具体的には、成形金型の上にリードフレームを配置した後、タブレット状の金型清掃用樹脂組成物をポット部に挿入し、型締めした後、プランジャーで押し流す。この際、ポット部の金型清掃用樹脂組成物は、ランナー部を経由し、ゲート部を通り、キャビティ内部に流れ込む。所定の成形時間が経過した後、金型を開き、リードフレームと一体となった成形物、即ち、汚れを含む金型清掃用樹脂組成物の成形物を取り除く。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[パルプ含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の調製]
〔製造例1〕
メラミン346質量部と、ホルムアルデヒド(37質量%水溶液)522質量部と、を加熱温度70℃〜100℃、pH8〜10の条件下で、90分間加熱反応させ、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を得た。得られたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂に、有機充填材として、広葉樹パルプ(銘柄:LDPR、日本製紙(株))95質量部を加えて混練した後、減圧乾燥させ、粉末化して、パルプ含有率が15質量%のパルプ含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を得た。
【0056】
[金型清掃用樹脂組成物の調製]
〔実施例1〕
メラミン系樹脂として、上記にて得られたパルプ含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂30質量部及びニカレヂン(登録商標)S−166(商品名、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、日本カーバイド工業(株))50質量部と、無機充填材として、酸化ケイ素(商品名:純硅石粉、結晶質シリカ、瀬戸窯業原料(株))20質量部と、脂肪酸亜鉛として、ミリスチン酸亜鉛(商品名:パウダーベースM、日油(株))1質量部と、有機塩基として、炭酸グアニジン(商品名:GC、(株)三和ケミカル)0.025質量部と、をボールミルに仕込み、粉砕した。次いで、滑剤として、エチレンビスステアリン酸アミド(商品名:アルフロー(登録商標) H50T、日油(株))0.4質量部をナウターミキサーにて加え、撹拌することにより、実施例1の金型清掃用樹脂組成物を得た。
【0057】
〔実施例2〜実施例8〕
実施例1において、金型清掃用樹脂組成物の組成を下記の表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例8の金型清掃用樹脂組成物を得た。
【0058】
〔比較例1〜比較例6〕
実施例1において、金型清掃用樹脂組成物の組成を下記の表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜比較例6の金型清掃用樹脂組成物を得た。
【0059】
[評価]
実施例1〜実施例8及び比較例1〜比較例6の金型清掃用樹脂組成物の清掃性及び成形性を、以下に示す方法により評価した。
【0060】
(1)清掃性
金型清掃用樹脂組成物をタブレット状に成形し、評価用サンプルとした。
市販のエポキシ樹脂成形材料(商品名:CEL−9240HF10、グリーンコンパウンド、日立化成(株))を用い、トランスファー型自動成形機にて、金型温度175℃、トランスファー圧9.5MPa、トランスファー時間10.5秒、硬化時間80秒の成形条件で、QFP(Quad Flat Package)を600ショット成形し、成形金型の内部表面を汚れさせた。
この汚れた成形金型を用い、上記と同様の成形条件で、評価サンプルを繰り返し成形した。そして、成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要したショット数を測定し、このショット数を、金型清掃用樹脂組成物の清掃性を評価するための指標とした。汚れを完全に除去できたか否かは、目視にて確認し、判断した。
評価に際しては、特に、成形金型のキャビティのゲート部及びコーナー部に付着した汚れを除去できているかに注目した。今回の評価に用いた成形金型のキャビティのゲート部は、幅が800μmであり、高さが300μmである。
成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要したショット数は、小さいほど清掃性能が優れていることを示し、本評価では、1ショットを「合格」と判定した。
【0061】
(2)成形性
上記の1.清掃性の評価における1ショット目の成形後(清掃後)の金型清掃用樹脂組成物を成形金型から取り除く際の作業性を、金型清掃用樹脂組成物の成形性を評価するための指標とした。
成形後の金型清掃用樹脂組成物が十分に硬化しており、硬化不良により金型清掃用樹脂組成物に由来する汚れが成形金型の内部表面に部分的に貼り付くといった現象が起きず、清掃後に成形金型から金型清掃用樹脂組成物を容易に取り除くことができた場合には、金型清掃用樹脂組成物の成形性が「良好」であると評価した。また、成形後の金型清掃用樹脂組成物が十分に硬化しておらず、その一部が未成形のため、成形金型の内部表面に貼り付く等、清掃後に成形金型から金型清掃用樹脂組成物を容易に取り除くことができなかった場合には、金型清掃用樹脂組成物の成形性が「不良」であると評価した。
【0062】
実施例1〜実施例8及び比較例1〜比較例6の金型清掃用樹脂組成物の組成、並びに各評価結果を表1及び表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び表2において、「−」は、該当するものがないことを意味する。
表1及び表2におけるステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウムの詳細は、以下のとおりである。
・ステアリン酸亜鉛(商品名:ジンクステアレート GF200、日油(株))
・ステアリン酸カリウム(商品名:ノンサール(登録商標) SK−1、日油(株))
【0066】
表1及び表2の結果より、実施例1〜実施例8の金型清掃用樹脂組成物は、比較例1〜比較例6の金型清掃用樹脂組成物と比較して、優れた清掃性能を有していることが明らかとなった。また、実施例1〜実施例8の金型清掃用樹脂組成物は、成形性が良好であることも明らかとなった。金型清掃用樹脂組成物の成形性が良好であると、清掃後に成形金型から金型清掃用樹脂組成物を容易に取り除くことができるため、作業性が良好となる。
【0067】
一方、脂肪酸亜鉛の含有量が金型清掃用樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1質量部未満である比較例1の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性に劣ることが明らかとなった。また、比較例1の金型清掃用樹脂組成物は、成形性が悪いことも明らかとなった。
【0068】
脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率が、質量基準で、1/100未満である比較例2の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性に劣ることが明らかとなった。
【0069】
脂肪酸亜鉛の含有量に対する有機塩基の含有量の比率が、質量基準で、1/2を超える比較例3の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性に劣ることが明らかとなった。また、比較例3の金型清掃用樹脂組成物は、成形性が悪いことも明らかとなった。
【0070】
有機塩基の代わりに無機塩基を含む比較例4〜比較例6の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性に劣ることが明らかとなった。
これらの中でも、有機塩基の代わりに無機塩基として水酸化ナトリウムを含む比較例4の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性により劣ることが明らかとなった。また、比較例4の金型清掃用樹脂組成物を用いて成形金型の清掃を行うと、成形不良により成形金型に金型清掃用樹脂組成物に由来する汚れが付着し、かえって成形金型が汚染されることが明らかとなった。