【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用針は、中空状の針体と前記針体の基端側に設けられた樹脂製の針ハブとを備えた医療用針であって、前記針ハブには、前記針体の基端側が挿入される針挿入孔と、前記針挿入孔に挿入された前記針体の基端面が当接する位置決め部と、
前記針ハブの外周面と前記針挿入孔との間の壁内に形成されるとともに前記針ハブの先端側の面に開口した第1肉抜き部と、前記針ハブの外周面と前記位置決め部との間の壁内に形成され
るとともに前記第1肉抜き部に対して前記針ハブの基端側に離間して位置する第2肉抜き部と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、針ハブを射出成形する際に、
第2肉抜き部によって位置決め部の外周側に位置する樹脂材料の熱収縮量を比較的少なくすることができる。これにより、針挿入孔の基端部の孔径の寸法バラツキを抑えることができ
るため、針体の太さに関わらずに針体の基端を針ハブに対して精度よく位置決めすることができる。よって、細い針体を採用した場合でも、針ハブ内の針体の長さを比較的短くすることができるので、医療用針の流体流通速度の低下を抑制することができる。また、針体の太さ(針挿入孔の孔径)が変更されても針ハブの外面を成形する外側金型を変更する必要がない。これにより、針体の太さに応じて外側金型を個別に用意する必要がないため、針ハブの製造装置の部品点数を削減することができる。
さらに、第1肉抜き部によって針挿入孔の先端側の孔径の寸法バラツキを抑えることができる。
上記の医療用針において、前記針ハブは、当該針ハブの先端部を構成する小径部と、前記小径部の基端に設けられた中径部と、を含み、前記第1肉抜き部は、前記中径部の先端面に開口してもよい。
【0008】
上記の医療用針において、前記
第2肉抜き部は、前記針挿入孔の軸線回りに沿って互いに離間するように複数設けられていてもよい。
【0009】
このような構成によれば、針ハブを射出成形する際に、隣接する
第2肉抜き部の間に空間が形成されることになるため、
第2肉抜き部の外側(針ハブの外面側)及び内側(位置決め部側)に溶融樹脂を効率的且つ確実に導くことができる。
【0010】
上記の医療用針において、複数の前記
第2肉抜き部は、前記針挿入孔の軸線を中心に点対称に設けられていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、針挿入孔の基端部の孔径の寸法バラツキを一層抑えることができる。
【0012】
上記の医療用針において、前前記針ハブの基端部には、前記針体の内腔に連通する内腔を有するチューブの端部が挿入可能なチューブ挿入穴が形成され、前記
第2肉抜き部は、前記チューブ挿入穴から先端方向に延出していてもよい。
【0013】
このような構成によれば、針ハブを射出成形する際に、
第2肉抜き部とチューブ挿入穴とを効率的に成形することができる。
【0014】
上記の医療用針において、前記位置決め部は、円環状に形成されていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、針体の基端面を位置決め部に対して精度よく位置決めすることができる。
【0016】
上記の医療用針において、前記
第2肉抜き部を構成する壁面のうち前記位置決め部とは反対側の内面は、前記針ハブの先端側に向かって傾斜していてもよい。
【0017】
このような構成によれば、針ハブを射出成形する際に、
第2肉抜き部を成形するための部材(肉抜き成形部)に抜き勾配を設けることができる。
【0018】
上記の医療用針において、前記針ハブの外周面は、前記針ハブの先端側に向かって前記
第2肉抜き部の前記内面に対して平行になるように径方向内側に傾斜していてもよい。
【0019】
このような構成によれば、針ハブの軸線方向において、
第2肉抜き部と針ハブの外周面との間の部分の厚みを略一定にすることができるので、針ハブにおける
第2肉抜き部が位置する部分の剛性が過度に低下することを抑えることができる。
【0022】
本発明に係る針ハブの製造装置は、互いに近接離間可能な状態で対向配置された第1金型及び第2金型を備え、前記第1金型及び前記第2金型の型閉じ状態で、中空状の針体の基端側に設けられる針ハブの外形形状に対応した形状のキャビティに溶融樹脂を充填して固化させることにより前記針ハブを成形する針ハブの製造装置であって、前記キャビティ内には、前記第1金型に支持され、前記針体の基端側が挿入可能な針挿入孔を成形する針挿入孔成形部と、前記第2金型に支持され、前記型閉じ状態で前記針挿入孔成形部に対して当接可能な当接部と、が設けられ、前記針挿入孔成形部及び前記当接部の境界部には、前記針体の基端面が当接可能な位置決め部を成形する段差部が形成され、前記境界部の外周側には、前記位置決め部よりも外周側に肉抜き部を成形する肉抜き成形部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
このような構成の製造装置を用いれば、上述した針ハブを容易に成形することができる。
【0024】
上記の針ハブの製造装置において、前記針挿入孔成形部のうち前記当接部側の端部及び前記当接部の一方には、凹部が形成され、前記針挿入孔成形部の前記端部及び前記当接部の他方には、前記凹部に嵌合可能な凸部が設けられていてもよい。
【0025】
このような構成によれば、針挿入孔成形部及び当接部の境界部に段差部を精度よく形成することができる。
【0026】
上記の針ハブの製造装置において、前記肉抜き成形部は、前記型閉じ状態で前記キャビティを構成する壁面と前記段差部との間に、前記壁面及び前記段差部から離間するように配置されていてもよい。
【0027】
このような構成によれば、針ハブの内部に肉抜き部を形成することができる。
【0028】
上記の針ハブの製造装置において、前記肉抜き成形部は、前記針挿入孔成形部の軸線回りに沿って互いに離間するように複数設けられていてもよい。
【0029】
上記の針ハブの製造装置において、複数の前記肉抜き部は、前記針挿入孔成形部の軸線を中心に点対称に設けられていてもよい。
【0030】
上記の針ハブの製造装置において、前記肉抜き成形部は、前記針挿入孔成形部の軸線方向に沿って延在し、径方向に沿った厚みが前記第1金型に向かって薄く形成されていてもよい。
【0031】
このような構成によれば、キャビティ内に成形された針ハブから肉抜き成形部を容易に引き抜くことができる。
【0032】
上記の針ハブの製造装置において、前記キャビティ内には、前記針挿入孔成形部の外周側且つ前記肉抜き成形部よりも先端側に当該肉抜き成形部とは別の肉抜き成形部が設けられていてもよい。
【0033】
本発明に係る医療用針の製造方法は、中空状の針体と前記針体の基端側に設けられた樹脂製の針ハブとを備えた医療用針の製造方法であって、前記針ハブを製造装置によって射出成形する針ハブ成形工程と、前記針ハブ成形工程によって成形された前記針ハブに対して前記針体の基端側を固定する針体固定工程と、を行い、前記製造装置は、互いに近接離間可能な状態で対向配置され、型閉じ状態で前記針ハブの外形形状に対応した形状のキャビティを形成する第1金型及び第2金型を備え、前記キャビティ内には、前記第1金型に支持され、前記針体の基端側が挿入可能な針挿入孔を成形する針挿入孔成形部と、前記第2金型に支持され、前記型閉じ状態で前記針挿入孔成形部に対して当接可能な当接部と、
前記針挿入孔成形部と前記キャビティを成形する壁面との間に当該針挿入孔成形部及び当該壁面から離間するように配置された第1肉抜き成形部と、前記針挿入孔成形部及び前記当接部の境界部と前記キャビティを成形する壁面との間に当該境界部及び当該壁面から離間するように配置された
第2肉抜き成形部と、が設けられ、
前記第1肉抜き成形部は、前記第2肉抜き成形部に対して離間するように前記針ハブの先端面を形成するコア本体の外周部から前記第2金型側に向かって延出し、前記針ハブ成形工程では、前記第1金型及び前記第2金型を型閉じすることによって、前記キャビティを形成し、前記針挿入孔成形部及び前記当接部を互いに当接させる型閉じ工程と、前記キャビティ内に溶融樹脂を充填する充填工程と、前記キャビティ内に充填された前記溶融樹脂を固化させる固化工程と、固化されることによって成形された前記針ハブを前記キャビティから取り外す型開き工程と、を行い、前記針体固定工程では、前記針挿入孔成形部及び前記当接部の境界部によって成形された位置決め部に前記針体の基端面を当接させた状態で固定することを特徴とする。
【0034】
このような方法によれば、上述した作用効果を奏する医療用針を得ることができる。