(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機体フレームに、前後方向に延びる前後フレームと、その前後フレームに連結されて左右方向に延びる左右フレームが備えられ、前記防塵カバーが位置する側の横外方側における前記前後フレームと前記左右フレームとの連結部に、前記後部外側支柱が載置固定されている請求項1又は2記載の収穫機。
前記防塵カバーは、下部に設けられた前後向きの揺動支軸の回りで揺動可能に構成され、前記揺動支軸が前記後部外側支柱の下部に支持されている請求項1〜3のいずれか一項記載の収穫機。
前記防塵カバーの左右揺動に伴う開き角度を規制する規制部材が、前記防塵カバーの前部と前記機体フレームに固定された部位とにわたって設けられている請求項4〜6のいずれか一項記載の収穫機。
前記エンジンボンネットが閉位置に位置する状態で、前記防塵カバーをメンテナンス位置に位置変更させることが可能な第一開放状態と、前記エンジンボンネットを開位置に前記防塵カバーと一体的に位置変更させることが可能な第二開放状態と、に変更可能に構成されている請求項1〜7のいずれか一項記載の収穫機。
前記後部内側支柱は前記キャビンの後方に位置しており、前記後部外側支柱の上部と前記後部内側支柱の上部とにわたって、前記後部外側支柱の上部と前記後部内側支柱の上部とを連結する上部連結フレームが備えられている請求項9記載の収穫機。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した普通型コンバイン(収穫機の一例)の作業走行時における前進側の進行方向(
図2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0032】
〔全体構成〕
図1に示すように、本発明を適用したコンバインは、機体フレーム10の下部に左右一対のクローラ走行装置11を設けて自走可能に構成された走行機体1を備えている。
走行機体1の前端部に植立茎稈を刈り取り収穫する刈取部12が配設されている。刈取部12で刈り取られた植立茎稈は全稈が被処理物としてフィーダ13で後方へ搬送され、フィーダ13の後端部から機体フレーム10上の脱穀装置14に投入される。脱穀装置14は機体フレーム10の後部における左横側方位置に搭載され、その右横側方にグレンタンク15が搭載されている。
【0033】
脱穀装置14内に投入された被処理物は、脱穀及び選別処理されて、選別された後の穀粒等の作物がグレンタンク15に送り込まれて貯留される。脱穀処理後の排ワラは脱穀装置14の後部に備えた細断装置16で細断され、機外へ排出される。グレンタンク15内に貯留された作物は、グレンタンク15の後部に備えたスクリューコンベア型の作物搬出装置17によって機外へ取出すことができる。
【0034】
前記グレンタンク15よりも前側で機体フレーム10の前端部における右方側の部位に運転部2が設けられている。運転部2は、キャビン3で覆われている。運転部2の下部には原動部4が設けられている。
原動部4には、クローラ走行装置11や走行機体1上の各作業装置に駆動力を伝達するエンジン18、及びエンジン18を内装するエンジンボンネット40、ならびにエンジンボンネット40の横外側に位置する防塵カバー50などが設けられている。
【0035】
〔運転部〕
運転部2について説明する。
運転部2は、機体フレーム10の前端部における右端側の部位に載置支持されている。
図5に示すように、運転部2には、運転部床2A上に、乗降口21、操縦塔22、サイドパネル23が備えられ、サイドパネル23と乗降口21の間で、操縦塔22の後方側に運転座席20が配置されている。この運転座席20は、運転部床2Aの後部を兼ねるエンジンボンネット40の天板部40aに支持された状態で設けられている。
【0036】
操縦塔22の上部には、フロントパネル22aが設けられ、フロントパネル22aに操向レバー24が設けられている。
操向レバー24は、左右方向に揺動操作することで、左右の操向クラッチ(図示せず)を操作して走行機体の操向操作を行なうものである。そして前後方向に揺動操作することで、図外の昇降装置を操作して刈取部12の昇降操作を行なうものである。
乗降口21とサイドパネル23とは、運転座席20を挟んで左右に振り分けて備えられている。サイドパネル23には、操縦関連機器としての走行主変速レバー25及び走行副変速レバー26と、作業関連機器としての刈取りクラッチレバー27及び脱穀クラッチレバー28が設けられている。
【0037】
〔キャビン〕
キャビン3について説明する。
キャビン3は、
図3乃至
図5に示すように、前壁部3F、左の側壁部3L、右の側壁部3R、後壁部3B(後壁に相当する)、及び屋根部3T(キャビンルーフに相当する)を備えている。
このキャビン3が、運転部2自体、及び運転部2の後方で機体フレーム10から立設されたキャビン支柱6に連結されて支持されている。
【0038】
屋根部3Tの内部には、キャビン3の内部を空調する空調装置(図示せず)が配設されている。
前壁部3Fは、フロントガラスとして用いられる透明板部30と、透明板部30の外周部内面側に装着された前壁枠部31とを備えている。
【0039】
乗降口21が位置する側(機体横外側)である右の側壁部3Rには、側壁部3Rの前部で、機体上下方向に延びている前縦フレーム32Fと、側壁部3Rの後部で、機体上下方向に延びている後縦フレーム32Bと、が備えられている。前縦フレーム32Fと前壁枠部31とが連結されていることで、右の側壁部3Rと前壁部3Fとが連結している。
【0040】
図5に示すように、右の側壁部3Rでは、乗降口21に乗降口ドア33が設けられている。乗降口21は、前縦フレーム32Fと、後縦フレーム32Bよりも前方側に立設された中間縦フレーム32Mと、の間に形成されており、乗降口ドア33の前端側が前縦フレーム32Fに上下一対のヒンジ33aを介して支持されている。
【0041】
中間縦フレーム32Mと後縦フレーム32Bとの間には、側壁部3Rの一部を構成する透明板材からなる側窓34が設けられている。側窓34よりも下方側の側壁部3Rには、側壁部3Rの一部を構成する側壁構成体35が設けられている。この側壁構成体35は、防塵カバー50の上隣りに位置していて、下方に位置する防塵カバー50の後述する前下がり傾斜面53との間を閉塞するために、下端縁が前下がり形状に形成されている。
【0042】
左の側壁部3Lは、
図5に示すように、運転部2のサイドパネル23が位置する側(機体横内側)に位置している。左の側壁部3Lには、側壁部3Lの前部で機体上下方向に延びている前縦フレーム32Fと、側壁部3Lの後部で機体上下方向に延びている後縦フレーム32Bと、前縦フレーム32Fと後縦フレーム32Bとに亘る範囲に設けられた開閉窓36と、が備えられている。前縦フレーム32Fと前壁枠部31とが連結されていることで、左の側壁部3Lと前壁部3Fとが連結している。
【0043】
後壁部3Bは、
図4,5に示すように、後窓37を有した板状部38を備えている。後窓37には、開閉不能な矩形状の透明板が装着されている。板状部38と左右の後縦フレーム32Bとが連結されていることで、後壁部3Bと、左の側壁部3L及び右の側壁部3Rとが連結している。
後壁部3Bは、後窓37よりも下方側の部位に、固定仕切壁39を備えている。この固定仕切壁39は、
図9及び
図16に示されているように、エンジンボンネット40の天板部40aに立設された仕切壁41の上端縁に対して、上下方向で対向する位置に設けられている。
そして、この固定仕切壁39、及びエンジンボンネット40の仕切壁41は、エンジンボンネット40が後述する閉位置にある状態におけるキャビン3の後壁部3Bの一部を構成している。
【0044】
すなわち、エンジンボンネット40の仕切壁41は、上端縁が
図9に示すように、左右方向で防塵カバー50に近い側が高く、防塵カバー50から離れる側ほど低くなる傾斜縁に形成されている。そして、固定仕切壁39の下端縁も、
図9に示すように、左右方向で防塵カバー50に近い側が高く、防塵カバー50から離れる側ほど低くなる傾斜縁に形成されている。
これは、エンジンボンネット40を前後方向軸心p1回りで揺動させて、後述するように、閉位置から開位置へ位置変更する際に、エンジンボンネット40の仕切壁41がキャビン側の固定仕切壁39と当接して位置変更が妨げられることがないようにするためである。
【0045】
〔キャビンの支持構造〕
キャビン3は、運転部2、及び運転部2の後方に位置するキャビン支柱6に連結され、支持されている。
キャビン支柱6は、防塵カバー50の後側で機体フレーム10に立設された後部外側支柱6Aと、後部外側支柱6Aよりも機体横内側に立設された後部内側支柱6Bとを備えている。
【0046】
機体フレーム10は、前後方向に延びる矩形パイプ状の前後フレーム10Aと、その前後フレーム10Aに連結されて左右方向に延びる下側開放のチャンネル状の左右フレーム10Bを備えている。そして、後部外側支柱6Aは、
図4乃至
図8に示すように、走行機体1の右横側端部で前後方向に延びる前後フレーム10Aと、左右フレーム10Bとの連結部に相当する箇所に載置された状態で取り付けられている。
【0047】
すなわち、
図6及び
図8に示すように、後部外側支柱6Aは、左右フレーム10Bと前後フレーム10Aとにわたる平板状の座板60を備え、その座板60の上面側に角パイプ状の縦支柱部61aが溶接固定されている。そして、縦支柱部61aの前面側に設けた前補強板60a(補強板に相当する)と縦支柱部61aの後面側に設けた後補強板60bとに挟まれた状態で、縦支柱部61aと前補強板60a及び後補強板60bが溶接固定されている。前補強板60a及び後補強板60bは座板60にも溶接固定されている。前補強板60aの上端縁は、縦支柱部61aから離れる横外方側ほど低くなるように傾斜している。
【0048】
座板60の右端側は、前後フレーム10Aの右端縁よりも右横外側にまで突出するように延出されている。その突出部分の下面側が、前後フレーム10Aの右横側面に溶接固定された門形のブラケット60cの上面に乗り、座板60と門形のブラケット60cとを貫通する連結ボルト60dによって連結されている。座板60は、門形のブラケット60cの上面に乗る部分だけではなく、左右方向で縦支柱部61aよりも機体中央側寄りに箇所においても、左右フレーム10Bに図示しない連結ボルトによって連結されている。
【0049】
後部外側支柱6Aは、縦支柱部61aの上側に接続された角パイプ状の前傾支柱部61bを備えている。前傾支柱部61bは、側面視で
図6及び
図7に示されるように、縦支柱部61aの上端部から前方斜め上方に向けて延出され、キャビン3の後方下部に接続されている。
縦支柱部61aと前傾支柱部61bとは、
図7に示されているように、縦支柱部61aの前面側の上端縁と前傾支柱部61bの前面側の下端縁とが当接し、縦支柱部61aの後面側の上端縁と前傾支柱部61bの後面側の下端縁とは離れている。この状態における縦支柱部61aと前傾支柱部61bとが、左右側面同士を接続する横当て板61cと、後面同士を接続する後当て板61dとを溶接することで固定されている。
【0050】
後部内側支柱6Bは、後部外側支柱6Aよりも機体横内側で、左右フレーム10B上に立設されている。
この後部内側支柱6Bは、左右フレーム10Bにボルト止めされた内側座板62の上面側に、角パイプ状の内側縦支柱部63aの下端側が溶接固定されている。内側縦支柱部63aの上端側には、長手方向を前後方向に沿わせた角パイプ状の上部支柱部63bが溶接固定され、前方側へ向けて延設されている。その上部支柱部63bと内側縦支柱部63aとにわたって筋交い状の支持ステー63cが溶接固定されている。
【0051】
後部外側支柱6Aの上部と後部内側支柱6Bの上部とは、
図4乃至
図7に示すように、後部外側支柱6Aの上部と後部内側支柱6Bの上部とにわたる上部連結フレーム64によって連結されている。
すなわち、後部外側支柱6Aにおける前傾支柱部61bの上端部に外側固定金具65が溶接固定されている。この外側固定金具65には、前傾支柱部61bの上端部を左右両側から挟み込む状態に位置する左右突片65aと、上部連結フレーム64の下面側に当接する支持面65bとが備えられている。そして、左右突片65aが前傾支柱部61bの上端部に溶接固定され、支持面65bが上部連結フレーム64の下面側に当て付けられた状態で外側固定金具65が上部連結フレーム64にボルト連結されている。
【0052】
後部内側支柱6Bは、上部支柱部63bの前端部に平板状の内側固定金具66が溶接固定されている。この内側固定金具66は、上部支柱部63bの前端部上面側に下面側が溶接固定され、上面側が上部連結フレーム64の下面側に当接する支持面66aに形成されている。そして、その支持面66aが上部連結フレーム64の下面側に当て付けられた状態で内側固定金具66が上部連結フレーム64にボルト連結されている。
【0053】
後部外側支柱6Aと後部内側支柱6Bとは、上下方向の中間部でも互いに連結されている。つまり、
図4乃至
図7に示すように、上部連結フレーム64よりも下方側で、後部外側支柱6Aの上下中間部と後部内側支柱6Bの上下中間部とが、中間連結フレーム67(連結フレームに相当する)によって連結されている。
中間連結フレーム67は、断面L字状のアングル部材67aと、そのアングル部材67aの後部内側支柱6B寄りの端部に連結される内側継ぎ板67bと、アングル部材67aの後部外側支柱6A寄りの端部に連結される外側継ぎ板67cと、を備えている。
【0054】
内側継ぎ板67bの後部内側支柱6Bに接続される箇所は、内側縦支柱部63aの機体横外方側へ向く面に沿うように当て付けられて、内側縦支柱部63aに溶接固定されている。
外側継ぎ板67cの後部外側支柱6Aに接続される箇所は、前傾支柱部61bの機体前方側へ向く面に沿うように当て付けられて、前傾支柱部61bに溶接固定されている。
そして、内側継ぎ板67bと外側継ぎ板67cとを連結する位置にアングル部材67aを設けて、ボルト連結することにより、後部外側支柱6Aと後部内側支柱6Bとが、中間連結フレーム67を介して連結された状態となる。
【0055】
図7に示すように、内側継ぎ板67bは、内側縦支柱部63aの機体横外方側へ向く面と、アングル部材67aの機体前方側に向く面とに沿うように、中間箇所が大きく捻られた形状の板状体で構成されている。
外側継ぎ板67cは、前傾支柱部61bの機体前方側へ向く面と、アングル部材67aの機体前方側に向く面と、を備えた板状体で構成されている。
そして、前記中間連結フレーム67は、
図5乃至
図7に示すように、後部内側支柱6Bに接続される箇所よりも後部外側支柱6Aに接続される箇所が機体前方側に寄る斜め姿勢で配置されている。
このため、外側継ぎ板67cは、アングル部材67aの機体前方側に向く面と、前傾支柱部61bの機体前方側へ向く面とのそれぞれに沿うように、図示はしないが板状体の中間位置が少し折れ曲げられている。
【0056】
図5及び
図6に示すように、後部外側支柱6Aの縦支柱部61aは、後部内側支柱6Bの内側縦支柱部63aよりも少し機体後方側に寄った位置で機体フレーム10に取り付けられている。これは、エンジンボンネット40を後述する前後方向軸心p1回りで揺動させる際に、エンジンボンネット40が後部外側支柱6Aと干渉しないようにするためである。
後部外側支柱6Aが縦支柱部61aと前傾支柱部61bとの組み合わせで屈曲した構造に構成されているのは、エンジンボンネット40上に搭載されているエアクリーナ44の位置を迂回してキャビン3を支持するためである。
【0057】
〔原動部〕
原動部4では、運転部2の下部に相当する位置の機体フレーム10上にエンジン18及びラジエータ19が搭載されている。そして、このエンジン18及びラジエータ19を覆うエンジンボンネット40と、エンジンボンネット40の内部空間に対して外気を導入するための防塵カバー50と、が備えられている。防塵カバー50は、エンジンボンネット40の横外側に位置する状態で設けられている。
【0058】
エンジンボンネット40は、
図9乃至
図12に示すように、エンジン18を内装可能な内部空間を形成するように、前壁40b、後壁40c、及び天板部40aを備えて、側面視でほぼ門形に構成されている。そして、横外方側及び横内方側には開口部45が形成されて、横外方側及び横内方側が開放されている。
天板部40aの前寄り部分に運転座席20が搭載され、運転座席20の後方側に,キャビン3の後壁部3Bの一部を構成する仕切壁41が立設されている。
【0059】
仕切壁41は、エンジンボンネット40の天板部40aに載置された状態で、下端側のフランジ部分41aを固定ボルト41bで連結されている。また、天板部40aには、ラジエータファン19aを正逆転駆動する電動モータ(図示せず)を内装したモータカバー42が固定されている。仕切壁41は、モータカバー42の後面に対向して当接している。そして図示はしないが、この当接箇所でも、フランジ部分41aよりも少し上方側の部位で仕切壁41が、モータカバー42に対して前後方向でボルト連結されている。
【0060】
仕切壁41の上面側及び横外側面側には、シール用のスポンジ材43が装着されている。同様のシール用のスポンジ材43は、エンジンボンネット40の横外側面側にも装着されている。
仕切壁41の上面側のスポンジ材43は、キャビン3の固定仕切壁39との間を閉塞するものである。仕切壁41の横外側面側、及びエンジンボンネット40の横外側面側のスポンジ材43は、起立姿勢位置で対向する防塵カバー50との隙間を閉塞するためのものである。
エンジンボンネット40における天板部40aの上側で、仕切壁41の後側には、エアクリーナ44が搭載されている。
【0061】
エンジンボンネット40及び防塵カバー50は、揺動支持機構7を介して、機体フレーム10に対して、前後方向軸心p1回りで揺動可能に取り付けられている。
【0062】
揺動支持機構7は、
図8乃至
図10に示すように、前後方向軸心p1を備えた前後一対の揺動支軸70を備えている。
後方側の揺動支軸70は、後部外側支柱6Aの縦支柱部61aの前面側に設けた前補強板60aに形成された枢支孔(図示せず)に挿抜可能に取り付けられている。
この後方側の揺動支軸70は、防塵カバー50の下部に取り付けられた第二ステー72に後端部が固定されている。そして、エンジンボンネット40の下部に取り付けられた第一ステー71の枢支孔(図示せず)を貫通して、防塵カバー50の内部に前端部が挿入されている。
【0063】
第一ステー71は、平板状の板材で構成されている。左右方向で機体横内方側に位置する部分がエンジンボンネット40の後壁40cの下部に当て付けられた状態で、連結ボルト71aを介して後壁40cに連結されている。エンジンボンネット40の後壁40cの横外端よりも横外方側へ突出した部分に、揺動支軸70に外嵌する枢支孔が形成されている。これによって、エンジンボンネット40は、揺動支軸70の前後方向軸心p1回りで揺動可能に構成されている。
【0064】
図8乃至
図10に実線で示すように、エンジンボンネット40でエンジン18及びラジエータ19が覆われている状態が、エンジンボンネット40の閉位置であり、
図11に実線で示すように前後方向軸心p1回りで横外方側へ揺動した状態が、エンジンボンネット40の開位置である。
【0065】
第二ステー72は、揺動支軸70を固定した側とは反対側の端部が、連結ボルト72aを介して防塵カバー50の後面側に連結されている。この第二ステー72は、
図8に示されているように、揺動支軸70を固定した側の端部と、防塵カバー50の後面側に連結されている側の端部との中間位置で段付き状態に屈曲されている。
したがって、揺動支軸70を固定した側とは反対側の端部が防塵カバー50の後面側に連結された状態では、防塵カバー50の後面と第二ステー72の段付き部分よりも揺動支軸70に近い部分との間に、隙間が形成された状態となる。その隙間に第一ステー71が入り込んだ状態とすることにより、共通の揺動支軸70に、第一ステー71と第二ステー72とが取り付けられた状態とすることができる。
【0066】
前方側の揺動支軸70は、図示しないが、後方側の揺動支軸70の前後方向軸心p1と同軸心上で、機体フレーム10の適所に支持されている。
図10に示すように、後方側と同一構造の第一ステー71が、連結ボルト71aを介してエンジンボンネット40の前壁40bに連結されている。第一ステー71には、エンジンボンネット40の前壁40bよりも横外方側へ突出した部分に、揺動支軸70に外嵌する枢支孔が形成されていて、エンジンボンネット40は、前壁40b側においても、揺動支軸70の前後方向軸心p1回りで揺動可能に枢支されている。
【0067】
このエンジンボンネット40の前壁40b側では、揺動支軸70と防塵カバー50とを連結する第二ステー72に相当するものは存在せず、揺動支軸70が直接、防塵カバー50の前面側の下部に挿通されていて、防塵カバー50を前面側でも揺動支軸70で枢支している。
そして、防塵カバー50は、倒れ角度規制機構8によって、機体フレーム10に対する前後方向軸心p1回りでの揺動角度、つまり倒れ角度を複数段に調節可能に構成されている。
【0068】
倒れ角度規制機構8は、
図3及び
図10に示すように、機体フレーム10上に設けた固定枠10Cに、ガイド溝80が形成されているとともに、そのガイド溝80と防塵カバー50とにわたって連係ロッド81が掛け渡されたものである。
【0069】
ガイド溝80には、左右方向で最も横内方側に位置する引退位置80a、最も横外方側に位置する最突出位置80cと、その中間部に位置する中間突出位置80bとの三箇所に、係合溝が形成されている。
連係ロッド81には、防塵カバー50の前面に形成されている係合孔50aに対して挿入される係止突起81aと、ガイド溝80への係入側とは反対側の端部に形成された握り部81bとが備えられている。
【0070】
この構造では、握り部81bを把持して、係止突起81a部分を支点として、ガイド溝80への係入されている側の連係ロッド81の端部を操作することができる。したがって、ガイド溝80の係合溝に対する連係ロッド81の端部の係合状態を選択することにより、前後方向軸心p1回りでの防塵カバー50の揺動角度を多段に変更して固定することができる。
つまり、連係ロッド81が、ガイド溝80の係合溝が存在する位置から防塵カバー50の前面に形成されている係合孔50aの位置までの距離を規制することになるので、この連係ロッド81が、防塵カバー50の左右揺動に伴う開き角度を規制する規制部材としての役割を果たすことになる。
【0071】
連係ロッド81が上記の引退位置80aに操作されると、防塵カバー50は、エンジンボンネット40の横外側に開放されている開口部45に対向して、エンジンボンネット40の内部空間へ向けて外気を送り込む吸気位置に存在する状態となる。連係ロッド81が最突出位置80c、もしくは中間突出位置80bに操作されると、防塵カバー50は、下部の前後方向軸心p1回りで横外側に倒れて開口部45を開放するメンテナンス位置に存在する状態となる。
【0072】
図4及び
図10に示すように、エンジンボンネット40及び防塵カバ−50は、バックル式の留め具51,52で、互いに係脱可能に連結されている。また、エンジンボンネット40は、左右方向での横内方側の端部が機体フレーム10側の固定部に対して、バックル式の留め具46で係脱可能に連結されている。
【0073】
したがって、エンジンボンネット40の後壁40cと防塵カバー50の後面とを連結する留め具51、及びエンジンボンネット40の天板部40aと防塵カバー50の前面とを連結する留め具52による連結を解除すれば、エンジンボンネット40とは別に防塵カバー50のみを前後方向軸心p1回りで揺動操作することができる。つまり、この状態が、エンジンボンネット40が閉位置に位置する状態で、防塵カバー50をメンテナンス位置に位置変更させることが可能な第一開放状態に相当する。
【0074】
また、留め具51と留め具52による連結を維持したままの状態で、エンジンボンネット40の天板部40aと機体フレーム10側の固定部とを連結する留め具46の連結を解除すれば、エンジンボンネット40と防塵カバー50とを一体に前後方向軸心p1回りで位置変更させることができる。
この状態が、エンジンボンネット40を開位置に、防塵カバー50と一体的に位置変更させることが可能な第二開放状態に相当する。
【0075】
〔キャビンと防塵カバーとの隙間閉塞構造〕
図3、及び
図13乃至
図16に示すように、キャビン3の右の側壁部3Rには、防塵カバー50の上部前側に形成されている前下がり傾斜面53と、キャビン3の側壁構成体35との間に生じる隙間を閉塞するための隙間埋め部材9が設けられている。
【0076】
隙間埋め部材9は、側壁構成体35に対してキャビン3の外側に取り付けられる外側埋め部材9A(カバー部材に相当する)と、キャビン3の内側に取り付けられる内側埋め部材9Bとを備えたものである。
【0077】
外側埋め部材9Aは、
図13、
図14、及び
図16に示すように、ゴム等の可撓性材料で板状に形成された軟質埋め部材90と、その外側から当て付けて、軟質埋め部材90を挟み込むようにキャビン3側にボルト止めされる当て板部材91とを備えたものである。軟質埋め部材90に形成されるボルト挿通孔90aは、上下方向が長径の長孔に形成され、軟質埋め部材90による隙間埋め範囲を調節可能に構成されている。
【0078】
内側埋め部材9Bは、
図15及び
図16に示すように、側壁構成体35の内面側にボルト止めされるトリム取付板92と、そのトリム取付板92の下端部に装着されたゴム製等のトリム93とを備えている。
図15に示すように、トリム取付板92に形成されるボルト挿通孔92aは、上下方向が長径の長孔に形成され、防塵カバー50の前下がり傾斜面53に対するトリム93の当接状態を上下方向で調節可能に構成されている。
【0079】
図19に示すように、上記の隙間埋め部材9が設けられた箇所の近くに位置する中間縦フレーム32Mの下部には、水切り案内体94が設けられている。
この水切り案内体94は、乗降口ドア33の開閉などに伴って中間縦フレーム32Mに降りかかった雨水等が、中間縦フレーム32Mを伝ってキャビン3の室内に浸入することを抑制し得るようにするためのものである。中間縦フレーム32Mの下部に、内側上方から外側下方へ向けて雨水を案内する二本の棒状部材94aが溶接され、雨水をキャビン3の外側へ案内するように構成されている。
【0080】
〔防塵カバーの制振構造〕
図16乃至
図18に示すように、防塵カバー50には制振構造が設けられている。
この制振構造は、防塵カバー50の外周枠部55の内周面側に設けられている。すなわち、ゴム材等で構成された帯板状の制振材56が、外周枠部55の内周面側のほぼ全周にわたって設けられている。
そして、制振材56を外周枠部55の内周面との間に挟み込んで止め付けるための当て板57が、外周枠部55の内周面側の複数箇所に設けられている。
【0081】
制振材56を外周枠部55の内周面との間に挟み込んで止め付けるための当て板57は、外周枠部55に対して連結金具58で固定されている。
【0082】
図3、
図16、及び
図18に示すように、外周枠部55の上面及び前下がり傾斜面53の後部に相当する箇所では、連結金具58のうち、連結金具58を構成するボルト58aが外周枠部55に下向き(防塵カバー50の内方向き)に溶接固定されている。そのボルト58aが制振材56及び当て板57を貫通した状態で、下方側からナット58bを螺合させることで、制振材56及び当て板57を外周枠部55に固定してある。
【0083】
図3、
図17、及び
図18に示すように、外周枠部55の前向き面54及び前下がり傾斜面53の前部に相当する箇所では、連結金具58のうち、連結金具58を構成する中間ナット58cが、外周枠部55の内周側に溶接固定されている。この中間ナット58cが嵌り込む貫通孔が制振材56に形成してある。したがって、制振材56の下側(防塵カバー50の内側)から当て板57を当てて、下側(防塵カバー50の内側)からボルト58aを挿通し、外周枠部55の上側(防塵カバー50の外側)からナット58bを螺合させることができる。このようにして制振材56及び当て板57を外周枠部55に固定してある。
【0084】
上記の外周枠部55の前向き面54に相当する箇所等で用いられる中間ナット58cを採用した連結金具58は、
図17及び
図18に示すように、乗降口ドア33に対する緩衝用のトリム59aを取り付けるための、トリム取付板59を固定するための連結手段を兼ねるものである。
つまり、外周枠部55の上側(防塵カバー50の外側)に装着したナット58bが、トリム取付板59を外周枠部55との間に挟み込んで固定している。
【0085】
〔透明板部押さえ金具〕
キャビン3のフロントガラスで構成される透明板部30の下端部は、
図20及び
図21に示す透明板部押さえ金具95を用いて、前壁部3Fに固定されている。
透明板部押さえ金具95は、キャビン3の前壁部3Fに取り付けられるスライド部材96を備えている。そのスライド部材96を前壁部3Fに沿って上下方向でスライド操作、及び固定可能に構成されたものである。
【0086】
キャビン3の透明板部30は、キャビン3の内部から前方下方を見通し易いように、前傾姿勢で設けられている。
その透明板部30を下方から支える前壁部3Fは、操縦塔22の配設用空間の確保や脚元空間を広く確保したいがために、透明板部30よりも下方では、下部側ほど前方に位置する後傾姿勢で設けられている。
このため、
図21に示したように、透明板部30の前面は、透明板部30よりも下方の前壁部3Fに沿う仮想平面f1との間にかなり大きな交差角度θを持って取り付けられている。
【0087】
透明板部30を下方から支える前壁部3Fは、
図21に断面視で示すように、透明板部30の下端よりも下方側で、下部側ほど前方に位置する後傾前壁部分3Faと、透明板部30の下端よりも上方側で、透明板部30の背面側(キャビン3の内側)に僅かな上下方向範囲ではあるが位置する前傾前壁部分3Fbとを備えている。
透明板部30の取り付け状態は、前壁部3Fのうちで、透明板部30の背面側に位置する前傾前壁部分3Fbに透明板部30の下部が精度良く当て付けられることよって所定の位置及び角度に取り付けられた状態となる。このため、前傾前壁部分3Fbと透明板部30の下部との間に、無用なクリアランスなどが生じていると、透明板部30の取付位置や角度が所定の取付状態とはならないことがある。
【0088】
この発明では、スライド部材96を前壁部3Fの後傾前壁部分3Faに沿う方向でスライドさせることにより、透明板部30の取付位置や角度を簡単に調整できるようにしている。
つまり、スライド部材96を後傾前壁部分3Faに取り付けて、後傾前壁部分3Faに沿う方向でスライド移動可能であるように、上下方向が長径となる複数の長孔96aを介して、複数本の連結ボルト98bにより連結可能に構成してある。この複数本の連結ボルト98bは、後傾前壁部分3Faの背面側(キャビン3の内側)に溶接固定した固定ナット98aに螺合して締め付け連結可能に構成されている。
【0089】
そして、スライド部材96のうち、透明板部30の前面に対向する上部箇所は、前壁部3Fの前傾前壁部分3Fbと同様な前傾姿勢となるように、長孔96aを備えた下部箇所に対して屈折させてある。
また、上部箇所の透明板部30の前面に対向する部位には、透明板部30の前面、及び透明板部30の横側面と接触する箇所に、緩衝用ゴム97を貼着してある。
【0090】
このように構成したスライド部材96を、後傾前壁部分3Faに沿ってスライド操作することにより、前傾前壁部分3Fbとスライド部材96の上部箇所との対向間隔を調節して、透明板部30を精度良く取り付けることができる。
【0091】
〔騒音低減機構〕
図22乃至
図24に、キャビン3内における騒音を低減することを目的とした騒音低減機構が示されている。
キャビン3内では、
図5、
図22、及び
図23に示されるように、サイドパネル23を上面側に備えるサイドパネルボックス2Bが運転部床2Aから立ち上げられている。このサイドパネルボックス2Bの下方側は、エンジン18が存在する原動部4の空間と隣接している。
【0092】
このため、サイドパネルボックス2Bの内部空間を通して原動部4からの騒音がキャビン3内へ伝播し易い構造であるが、サイドパネルボックス2Bの低部に、騒音低減用の防音板29を設けることで、原動部4からの騒音を低減している。
つまり、本発明にいう騒音低減機構は、防音板29、サイドパネルボックス2B、およびサイドパネル23の組み合わせによる二重壁構造部分を、原動部4とキャビン3との接続箇所に配設することによって構成されている。
【0093】
サイドパネルボックス2Bの内部は、サイドパネル23上の走行主変速レバー25や走行副変速レバー26などの操作を原動部側へ伝えるための操作連係機構が、原動部4との繋がりを有した状態で配設されている。
このため、サイドパネル23やサイドパネルボックス2B内部の操作連係機構の配設領域や作動領域となる空間を通して原動部4側の騒音がキャビン3側へ伝播し易いものであるが、上述したように、防音板29の配設位置を工夫して、サイドパネルボックス2Bの上下に、サイドパネル23と防音板29との二重壁構造が形成された状態とすることにより、比較的効果的に、原動部4側からキャビン3内への騒音を低減することができる。
さらに、防音板29やサイドパネル23やサイドパネルボックス2Bの内部に吸音材を貼り付けるなどすれば、より効果的である。
【0094】
防音板29は、
図23に示すように、サイドパネルボックス2Bに対して、サイドパネルボックス2Bの低部で連結ボルト29a,29aを介して着脱可能に構成されている。このように防音板29を着脱可能に構成することにより、例えば、キャビン3を備えていないコンバインのように、上記の騒音低減機構を採用してもあまり意味のない機種の場合には、防音板29を装着せずに、コスト低減を図ることも可能である。
【0095】
〔別実施形態の1〕
図25乃至
図28は、キャビンの屋根部に空調装置を配設した収穫機の、別の実施形態を示している。
この実施形態では、運転部2やキャビン3を除く、普通型コンバインとしての他の構造は前述した実施形態と同様のものであるが、運転部2及びキャビン3に関して次のように構成されている。
【0096】
<運転部について>
運転部101は、機体フレーム(図示せず)の前端部における右端側の部位に設けられている。
図26に示すように、運転部101には、運転部床101A上に、運転座席110、乗降口111、操縦塔112、サイドパネル113が備えられている。運転座席110は、エンジンボンネット114の天板部114aに支持されている。
【0097】
操縦塔112の上部には、フロントパネル112aが設けられ、フロントパネル112aに操向レバー115が設けられている。
操向レバー115は、左右方向に揺動操作することで、左右の操向クラッチ(図示せず)を操作して走行機体の操向操作を行なうものである。そして前後方向に揺動操作することで、図外の昇降装置を操作して刈取部の昇降操作を行なうものである。
乗降口111とサイドパネル113とは、運転座席110を挟んで左右に振り分けて備えられている。サイドパネル113には、操縦関連機器としての走行主変速レバー116及び走行副変速レバー117と、作業関連機器としての刈取りクラッチレバー118及び脱穀クラッチレバー119が設けられている。
【0098】
<キャビンについて>
キャビン102は、
図25及び26に示すように、前壁部102F、左の側壁部102L、右の側壁部102R、後壁部102B(後壁に相当する)及び屋根部102T(キャビンルーフに相当する)を備えている。
このキャビン102が、運転部101自体、及び運転部101の後方で機体フレームから立設された後支柱105,105に連結され、支持されている。
【0099】
前壁部102Fは、フロントガラスとして用いられる透明板部120と、透明板部120の外周部内面側に装着された前壁枠部121とを備えている。
【0100】
右の側壁部102Rは、運転部101の左右側のうちの乗降口111が位置する側(機体横外側)に位置している。右の側壁部102Rには、側壁部102Rの前部に設けられ、機体上下方向に延びている前縦フレーム122と、側壁部102Rの後部に設けられ、機体上下方向に延びている後縦フレーム123と、が備えられている。前縦フレーム122と前壁枠部121とが連結されていることで、右の側壁部102Rと前壁部102Fとが連結している。
【0101】
図26に示すように、前縦フレーム122と後縦フレーム123との間に乗降口111が設けられ、この乗降口111に乗降口ドア124が設けられている。
乗降口111は、前記前縦フレーム122と、後縦フレーム123よりも前方側に立設された中間縦フレーム125との間に形成されており、乗降口ドア124の前端側が前縦フレーム122に上下一対のヒンジ124aを介して支持されている。
中間縦フレーム125と後縦フレーム123との間は側壁部102Rを構成する板部材で連結されている。
【0102】
左の側壁部102Lは、
図26に示すように、運転部101のサイドパネル113が位置する側(機体横内側)に位置している。左の側壁部102Lには、側壁部102Lの前部に設けられ、機体上下方向に延びている前縦フレーム122と、側壁部102Lの後端部に設けられ、機体上下方向に延びている後縦フレーム123と、前縦フレーム122と後縦フレーム123とに亘る範囲に設けられた開閉窓126と、が備えられている。前縦フレーム122と前壁枠部121とが連結されていることで、左の側壁部102Lと前壁部102Fとが連結している。
【0103】
後壁部102Bは、
図25,26に示すように、後窓127を有した板状部128を備えている。後窓127には、開閉不能な矩形状の透明板が装着されている。板状部128と後縦フレーム123とが連結されていることで、後壁部102Bと左の側壁部102Lとが連結している。
【0104】
<空調装置について>
図25に示すように、キャビン102の屋根部102Tに空調装置103が内装されている。空調装置103はキャビン102の内部空間を空調するためのものである。本実施例では、空調装置103が屋根部102Tのうちの前後方向での中心よりも後方の部位に内装されているが、前後方向での中心によりも前方の部位、あるいは、前後方向での中央部位に内装してもよい。
【0105】
図25に示すように、空調装置103から結露水排出用の一対の結露ホース130(管状部材に相当する)が下方に延びている。この結露ホース130のうち、空調装置103の左右方向における右端側に接続されている結露ホース130は、キャビン102の後壁部102Bの外側(後側)で、後窓127の右横外側を通って下降し、キャビン102の後部を支持する後支柱5に沿って機体フレームの下方にまで下降するように延出されている。
この右側の結露ホース130は、後壁部102Bに沿って、かつ後窓127の右横外側縁に沿って下降し、後窓127の下端近くに達した後、さらに下降しながら中央側へ寄せるように屈曲され、左右方向で中央位置付近に位置する後支柱5の存在箇所に近づけて配設されている。そして、右側の結露ホース130の下端は、後窓127の下端よりも下方である機体フレームの下方にまで延出されている。
【0106】
空調装置103の左端に近い側の結露ホース130は、空調装置103の左右方向における左端側寄りの中間位置に上端側が接続されている。そして、接続箇所からさらに左側へ向けて延出され、後窓127の左横外側縁よりも左外側へ寄せられる。後窓127の左横外側縁よりも左外側に寄せられた結露ホース130は、その位置から後壁部102Bの外側(後側)で、後壁部102Bに沿って、かつ後窓127の左横外側縁に沿って下降している。この左側の結露ホース130は、後窓127の下端近くに達した後、さらに下降しながら中央側へ寄せるように右側に屈曲され、後支柱105の存在箇所に近づけて配設され、やはり機体フレームの下方にまで下降するように延出されている。
【0107】
空調装置103の冷媒を循環させるための冷媒ホース131(管状部材に相当する)は、空調装置103に対する冷媒の供給側の冷媒ホース131も、空調装置103から排出される側の冷媒ホース131も、上端側が空調装置103の右側端部に接続されている。
そして、両冷媒ホース131のいずれもが、空調装置103との接続箇所から左方向に向きを変え、後窓127の左横外側縁を迂回するように屈曲形成されて、レシーバ133やコンプレッサー(図外)と接続されている。
【0108】
上記の冷媒ホース131も、後窓127の左横外側では、後壁部102Bに沿って、かつ後窓127の左横外側縁に沿って下降する。そして、後窓127の下端近くに達した後、さらに下降しながら中央側へ寄るように屈曲されている。
【0109】
空調装置103には、導電線のハーネス132(管状部材に相当する)も接続されている。
このハーネス132も後窓127の左横外側に位置し、後壁部102Bに沿って、かつ後窓127の左横外側縁に沿って下降するように延出されている。空調装置103に接続された側とは反対側のハーネス132の端部は、図外の電源供給部に接続されている。
【0110】
<カバーについて>
上記の結露ホース130、冷媒ホース131、及びハーネス132で構成される管状部材のうち、空調装置103の右端側に接続されている結露ホース130は、
図25及び
図26に示されるように、Uボルトで構成された止め金具134を用いて後壁部102Bに位置固定されている。
【0111】
空調装置103の左端側に接続されている結露ホース130、及び冷媒ホース131、ならびにハーネス132は、後壁部102Bの左端側寄りの位置に備えた固定用の位置保持具104によって位置固定されている。
【0112】
位置保持具104は、
図25及び
図28に示すように、キャビン102の屋根部102T及び空調装置103への連結部を備えた金属製の取付部材140、その取付部材140及びキャビン102の後壁部102Bに対する連結部を備えた金属製のカバー141を備えている。
そして、カバー141の下部には、キャビン102の後壁部102Bに接着、及びカバー141に内嵌した状態で押さえ込まれるスポンジ状の弾性体142が設けられている。
また、スポンジ状の弾性体142よりも上側のカバー141の内部で、空調装置103の左端側に接続されている結露ホース130、及び冷媒ホース131、ならびにハーネス132を抱き込むように巻き付けて、カバー141の内部に詰め込むための隙間埋め部材143が備えられている。この隙間埋め部材143は、フェルト等の軟質の布状部材で構成され、管状部材に巻き付けてカバー141の内部に詰め込むことにより、カバー141の内周部と管状部材との隙間を埋めてガタツキを少なくしたり、吸音効果を高めたりするためのものである。
【0113】
図27に示すように、スポンジ状の弾性体142には、空調装置103の左端側に接続されている結露ホース130、及び冷媒ホース131、ならびにハーネス132を挿入状態にして位置決め可能な保持孔142aが形成されている。
そして、弾性体142には、カバー141を外した状態で、後方側から管状部材を押し込み挿入可能な切り込み142bが形成されている。これにより、管状部材の長手方向からではなく、管状部材の径方向での押し込み操作により、各管状部材を保持孔142aに押し込み位置させることができる。
【0114】
また、このスポンジ状の弾性体142の後壁部102Bに対向する側の面142cには接着材が塗布されていて、カバー141を外した状態でも後壁部102Bに対する弾性体142の位置を維持できるようにしてある。
【0115】
この別実施形態1に示された構造によると、屋根部102Tに内装された空調装置103に連なる管状部材が、キャビン102の外側でキャビン102の外壁に沿って下方へ延びているので、キャビンフレームの内部や、屋根部102Tを支える支柱の内部に管状部材を挿通させるような煩わしい作業を伴わず、かつ構造簡単に配設でき、しかも、キャビン102の密閉性が損なわれる虞も少ないという利点がある。
また、空調装置103が屋根部102Tの後部に存在しているので、管状部材をキャビン102の後部側から導出する場合に、屋根部102T内における管状部材の配設長を短くすることができる。
さらに、キャビン102の後壁を管状部材の取付対象面として利用し、構造簡単に配設することができる。
さらにまた、空調装置103の左右両側で下方に延ばされた管状部材が、キャビン102の後壁における左側部分と右側部分とに沿って延びているので、キャビン102の後壁における左側部分と右側部分とを管状部材の取付箇所として利用し得る。
また、キャビン102の後窓の横外側に沿う管状部材が、後窓の下端よりも下方まで延ばされているので、その管状部材によって後窓からの視界が妨げられることはない。
上記のカバー141が存在することによって管状部材を保護することができる。
カバー141の内部には弾性変形可能な隙間埋め部材143が設けられているので、管状部材の姿勢を安定良く保ち易い。また、カバー141の内部空間における騒音を低減することができる。
【0116】
〔別実施形態の2〕
(1)上記した別実施形態の1では、
図25に実線で示したように、結露ホース130の、後窓127の下端よりも下方側に達した部位が、左右方向で機体中央側へ寄るように屈曲されている構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、同図に仮想線で示したように、左右の結露ホース130の両方が、ほぼ鉛直下方へ垂れ下がるように直線的に設けられたものであってもよい。また、左右の結露ホース130の両方が対称的に配設されるものに限らず、一方は屈曲し、他方は直線的であるなど、適宜の配設形態を採用することができる。
また、空調装置103に対する管状部材の接続箇所は、空調装置103の左右方向の端部箇所のみならず、空調装置103の左右方向の中間位置に相当する箇所であってもよい。そして空調装置103に対する管状部材の接続方向も、左右横側方からの接続のみならず、上下方向もしくは前後方向からの接続であってもよい。要は、空調装置103に接続される管状部材が、後窓127の横外側縁に沿う位置で、下方に延ばされた状態に設けられていれば良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0117】
(2)上記した別実施形態の1では、管状部材として、結露ホース130、冷媒ホース131、及びハーネス132を例示したが、これに限られるものではない。
例えば、これらの結露ホース130、冷媒ホース131、及びハーネス132の一部であったり、他の管状のものを含むものであっても差し支えない。また、軟質の管状部材に限らず、硬質の管状部材を用いたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0118】
(3)上記した別実施形態の1では、管状部材としての、結露ホース130、冷媒ホース131、及びハーネス132を、キャビン102の後壁部102Bに沿わせて配設した構造のものを例示したが、これに限られるものではない。例えば、結露ホース130、冷媒ホース131、及びハーネス132を、キャビン102の、左の側壁部102Lや右の側壁部102Rに沿わせて配設してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0119】
(4)上記した別実施形態の1では、キャビン102として後壁部102Bに後窓127を備えた構造のものを例示したが、後窓127が設けられていないものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0120】
(5)上記した別実施形態の1では、カバー141を取付部材140とは別部材で構成した構造のものを例示しが、これに限らず、取付部材140とカバー141とを一体化した構造であってもよい。また、カバー141は、金属製のものに限らず、合成樹脂製など、適宜の構成材で作成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0121】
(6)上記した別実施形態の1では、位置保持具104を後壁部の左側端部寄り箇所に設けた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。例えば、位置保持具104を後壁部の右側端部寄り箇所に設けたものであっても良いし、左右両側に設けたものであっても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0122】
〔別実施形態の3〕
(1)上記した実施形態では、エンジンボンネット40及び防塵カバー50を、前後方向軸心p1回りで揺動操作することにより、第一開放状態と第二開放状態とに位置変更可能に構成したものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、エンジンボンネット40及び防塵カバー50を、上下方向の軸心回りで揺動可能に構成したり、水平方向や上下方向にスライド移動可能に構成して位置変更させるようにしたもの、あるいは、エンジンボンネット40や防塵カバー50を着脱するものであっても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0123】
(2)上記した実施形態では、防塵カバー50のメンテナンス位置への移動量を規制する規制部材として、ガイド溝80や連係ロッド81を用いた倒れ角度規制機構8を例示したが、この倒れ角度規制機構8としては、長さ調節可能なロッド部材を用いる等、適宜の構造を採用することができる。また、その倒れ角度規制機構8を設ける位置も、防塵カバー50の前方側に限らず、後方側など、適宜の位置に設けてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0124】
(3)上記した実施形態では、エンジンボンネット40と防塵カバー50を連結する留め具51,52、及びエンジンボンネット40と機体固定部とを連結する留め具46として、バックル式の留め具を採用した構造を例示したが、この構造に限られるものではなく、適宜フックなど、簡易に脱着できる留め具を適宜採用すればよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0125】
〔別実施形態の4〕
上記した実施形態では、エンジンボンネット40と防塵カバー50との両者を前後方向軸心p1回りで揺動可能に構成して、第一開放状態と第二開放状態との、両開放状態の現出が可能である構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、防塵カバー50のみを前後方向軸心p1回りで揺動可能に構成して、第一開放状態のみを現出可能に構成されたものであってもよい。
あるいは、エンジンボンネット40と防塵カバー50との両者が常に一体で前後方向軸心p1回りに揺動可能であるように構成して、第二開放状態のみを現出可能に構成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0126】
〔別実施形態の5〕
上記した実施形態では、キャビン支柱6としての後部外側支柱6Aを、防塵カバー50よりも左右方向で少し機体内方側寄りの位置に設けた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図4に仮想線で示したように、後部外側支柱6Aと防塵カバー50とが前後方向視で重複するように設けてもよい。このようにすれば、後部外側支柱6Aによるキャビン3の支持を、より機体外方側寄りの箇所で行うことができ、さらに安定良く支持し易い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0127】
〔別実施形態の6〕
上記した実施形態では、運転部2が走行機体1の右端側に設けられた例を示したが、走行機体1の左端側に設けて実施してもよい。この場合、キャビン3の左の側壁部3Lに乗降口21が位置し、キャビンの右の側壁部3R側にサイドパネル23が位置する。
そして、キャビン3の下部に原動部4が位置し、後部外側支柱6Aは機体フレーム10の左端側に立設される。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0128】
〔別実施形態の7〕
上記した実施形態では、制振材56及び当て板57を、防塵カバー50における外周枠部55の内周面側に設けた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、図示はしないが、防塵カバー50における外周枠部55の外側に制振材56を位置させて、ボルト止め、もしくは接着剤や両面粘着テープで固定してもよい。また、制振材56の上側に布状の内装材を、接着剤や両面粘着テープで貼着するなどしてもよい。
これによれば、制振材56の装着を容易に行い易く、制振効果も見栄えも良好に保ち易い。内装材としては、布状のものの他、合成樹脂材や皮革状のものなど、適宜の材料を選択することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。