特許第6715819号(P6715819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6715819多芯ケーブル製造装置、及び、多芯ケーブル製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715819
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】多芯ケーブル製造装置、及び、多芯ケーブル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/04 20060101AFI20200622BHJP
   H01R 13/02 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   H01R43/04 Z
   H01R13/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-247617(P2017-247617)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-114443(P2019-114443A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】間渕 実良
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−272818(JP,A)
【文献】 米国特許第04796358(US,A)
【文献】 実開平01−081891(JP,U)
【文献】 特開平10−092546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
13/15
13/187
13/193
43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、該複数の電線の前方の端末部を露出させるようにこれら複数の電線を一括して覆う絶縁部と、各前記電線の前方の端末部に接続される複数の端子と、を備えた多芯ケーブルを製造するための多芯ケーブル製造装置であって、
各前記電線と各前記端子とを圧着接続するために対を成して構成された圧着型を複数有し、
複数の前記圧着型は、前記複数の電線と前記複数の端子とを略同時に圧着接続するように構成され、
前記複数の圧着型は、前記複数の電線の前方の端末部を、該前方の端末部より後方側に位置する分岐点を中心とした放射状かつ前記分岐点から直線状に延在させた状態で、前記各電線の前方の端末部と前記各端子とを圧着接続することを特徴とする多芯ケーブル製造装置。
【請求項2】
前記対を成して構成された圧着型のうち少なくとも一方が、前記各電線の前方の端末部または前記各端子を載置するために直線状に延在形成された湾曲面を有し、
前記各電線と前記各端子とが圧着接続される際、複数の前記湾曲面の延在方向が、前記複数の電線の前記分岐点を中心とした放射方向に沿っていることを特徴とする請求項1に記載の多芯ケーブル製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯ケーブル製造装置、及び、多芯ケーブル製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フラット多芯電線における端子圧着方法の一形態が開示されている。この方法は、複数の被覆電線である心線の一方の端末部が絶縁シースで覆われた状態で、他方の端末部が露出されるように各心線を一括ピッチ揃え具内に挿通させ、該他方の端末部において、心線間の間隔が略一定となるように各心線を屈曲させる。この状態で、各心線の導体と端子とを圧着接続するものである。
【0003】
このような従来のフラット多芯電線において、各心線の導体と端子とを圧着接続するための圧着機は、二つの凹状に延在する湾曲面を有する上型のクリンパと、凹状に延在する湾曲面を有する下型のアンビルと、を備えている。
【0004】
特許文献2には、圧着機が、フラット多芯電線の軸に直交する方向(幅方向)に並ぶ複数の上型のクリンパと、複数の下型のアンビルと、を有した端子圧着電線製造装置が開示されている。複数の上型クリンパにおいて、各湾曲面は、フラット多芯電線の幅に直交する方向に平行に延在して設けられている。同様に、複数の下型クリンパにおいて、各湾曲面は、フラット多芯電線の幅に直交する方向に平行に延在して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−3429号公報
【特許文献2】特開2014−220215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の端子圧着方法で得られたフラット多芯電線は、例えば、図6に示すように、複数の心線102間の間隔が略一定となるように各心線の所定の箇所S1で曲げられている。このため、複数の心線102のうち、特にその両端に位置する心線102は、所定の箇所S1が曲げられることによりフォーク状の曲がり癖が付いてしまう場合があった。このように心線102にフォーク状の曲がり癖がついてしまうことで、心線102間に比較的大きな隙間L0が空いてしまい、この比較的大きな隙間L0が各芯線102の高周波特性に影響を与える懸念があった。
【0007】
本発明の目的は、高周波特性に影響を与え難い多芯ケーブルを製造する多芯ケーブル製造装置、及び、多芯ケーブル製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、複数の電線と、該複数の電線の前方の端末部を露出させるようにこれら複数の電線を一括して覆う絶縁部と、各前記電線の前方の端末部に接続される複数の端子と、を備えた多芯ケーブルを製造するための多芯ケーブル製造装置であって、各前記電線と各前記端子とを圧着接続するために対を成して構成された圧着型を複数有し、複数の前記圧着型は、前記複数の電線と前記複数の端子とを略同時に圧着接続するように構成され、前記複数の圧着型は、前記複数の電線の前方の端末部を、該前方の端末部より後方側に位置する分岐点を中心とした放射状かつ前記分岐点から直線状に延在させた状態で、前記各電線の前方の端末部と前記各端子とを圧着接続することを特徴とする多芯ケーブル製造装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記対を成して構成された圧着型のうち少なくとも一方が、前記各電線の前方の端末部または前記各端子を載置するために直線状に延在形成された湾曲面を有し、前記各電線と前記各端子とが圧着接続される際、複数の前記湾曲面の延在方向が、前記複数の電線の前記分岐点を中心とした放射方向に沿っていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、各電線と各端子とを圧着接続するために対を成して構成された圧着型を複数有し、圧着型は、複数の電線の前方の端末部を、該前方の端末部より後方側に位置する分岐点を中心とした放射状に延在させた状態で、各電線の前方の端末部と各端子とを圧着接続する。即ち、複数の電線は、電線間の隙間が、分岐点から前方の端末部に向かうにしたがって徐々に大きくなるように緩やかに屈曲された状態で圧着接続される。従って、従来技術の如く、電線にフォーク状の曲がり癖がついてしまうことが抑制されて、電線間に比較的大きな隙間が空き難くされる。これにより高周波特性に影響を与え難い多芯ケーブルを製造することができる。さらに、複数の圧着型は、複数の電線と複数の端子とを略同時に圧着接続するように構成されているから、生産性の向上を図りつつ、複数の圧着型を制御する制御部の構成を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る多芯ケーブル製造装置により製造された多芯ケーブルを示す平面図である。
図2A】前記多芯ケーブル製造装置を示す斜視図である。
図2B図2Aを側方から見た平面図である。
図3A】前記多芯ケーブルの製造工程を説明するための平面図であり、端子ホルダに端子が保持された状態を示す図である。
図3B図3Aの後の工程を示す図であり、各端子の長手方向と各電線における前方の端末部の軸とが直線上に並ぶように配置された状態を示す図である。
図3C図3Bの後、製造された多芯ケーブルを示す平面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る多芯ケーブル製造装置により製造された多芯ケーブルの効果を説明するための図である。
図5】本発明の多芯ケーブル製造装置の変形例を示す斜視図である。
図6】従来のフラット多芯電線の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る多芯ケーブル製造装置により製造された多芯ケーブルを示す平面図である。
【0015】
<多芯ケーブル>
多芯ケーブル1は、図1に示すように複数(図示例では2本、一対と記す場合がある)の被覆電線2(以下、電線2と記す)と、一対の電線2の前方の端末部20を露出させるようにこれらの電線2の後方側を一括して覆う絶縁シース3(絶縁部)と、各電線2の前方の端末部20に圧着接続される複数(図示例では2つ、一対と記す場合がある)の端子4と、を備えている。以下では、多芯ケーブル1において、端子4が取り付けられた側を「前方」と記し、これとは逆の絶縁シース3が設けられた側を「後方」と記す場合がある。また、前後方向に直交する方向を左右方向と記す場合がある。
【0016】
多芯ケーブル1において、一対の電線2は、前後方向及び左右方向を含む平面上に設けられている。また、多芯ケーブル1において、一対の電線2は、前方の端末部20が、(後述の)分岐点P0(所定の仮想点)を中心とした放射状に延在して設けられている。本実施形態では、多芯ケーブル1の分岐点P0より前方に位置する部分を「前半部分1A」と記し、分岐点P0より後方に位置する部分を「後半部分1B」と記す場合がある。実施形態の多芯ケーブル1は、一対の電線2を有しているが、電線は3本以上であってもよい。
【0017】
分岐点P0は、図1に示すように、各電線2の前方の端末部20より後方側に位置するとともに絶縁シース3によって覆われた位置にある。また、分岐点P0は、多芯ケーブル1の上面視において、絶縁シース3の中心軸P1上に位置している。
【0018】
一対の電線2は、後半部分1Bでは、軸が前後方向に沿うように近接して設けられ、前半部分1Aでは、分岐点P0から前方に向かうにしたがって、一対の電線2間の距離が徐々に大きくなるように緩やかに屈曲されている。即ち、各電線2は、分岐点P0で曲げられて、分岐点P0から前方の端末部20まで直線状に設けられている。本実施形態では、一対の電線2は、分岐点P0から前方に延在する仮想線P1と前半部分1Aの各電線2の軸延在方向P2との成す角が所定の角度θ1となるように曲げられている。仮想線P1(絶縁シース3の中心軸P1と同じ位置にあるので、同じ符号を付与する)は、絶縁シース3の中心軸P1の延長線である。以下では、前半部分1Aにおいて、仮想線P1に対する各電線2の軸延在方向P2を「分岐方向C」と記す場合がある。
【0019】
絶縁シース3は、多芯ケーブル1の前端から所定の長さだけ皮剥ぎされて、一対の電線2の前方の端末部20を露出させている。
【0020】
2つの端子4は、それぞれ、相手方端子(不図示)を挿入接続させる筒状の電気接触部41と、該電気接触部41に連設されて電線2を機械的及び電気的に接続される電線接続部42と、を備えて構成されている。なお、本実施形態では、端子4は、相手方端子を挿入接続させる筒状の電気接触部41を有する雌端子を一例として説明しているが、タブ状の電気接触部を有する雄端子であってもよい。
【0021】
電線接続部42は、図3Aに示すように、長方形板状の基底部43と、電線2の被覆部21が皮剥ぎされて露出した導体部22を加締めるための一対の導体加締め片44と、電線2の被覆部21を加締めるための一対の被覆加締め片45と、を備えている。基底部43において、電線2の導体部22が載置される位置を導体設置位置43Aと記し、電線2の被覆部21が載置される位置を被覆設置位置43Bと記す。被覆設置位置43Bは、導体設置位置43Aより、端子4の長手方向の後方に位置している。一対の導体加締め片44は、基底部43の導体設置位置43Aの幅方向(左右方向)の両側に対向して立設されている。一対の被覆加締め片45は、基底部43の被覆設置位置43Bの幅方向(左右方向)の両側に対向して立設されている。
【0022】
<多芯ケーブル製造装置>
多芯ケーブル製造装置10は、図2A図2B図3A図3Bに示すように、各電線2の端末部と各端子4とを圧着接続するアプリケータ11と、アプリケータ11を駆動する図示しない駆動源と、駆動源を制御する図示しない制御部と、を備えている。
【0023】
アプリケータ11は、図2A図2B図3A図3Bに示すように、一対の端子4をそれぞれ支持する一対の端子ホルダ12(図3A図3Bに示す)と、各電線2の端末部と端子ホルダ12により支持された各端子4とを圧着接続するための圧着型13(図2A図2B)と、を備えている。
【0024】
一対の端子ホルダ12は、図3A図3Bに示すように、それぞれ、一対の端子4それぞれを載置して保持する載置面12Aを有している。各載置面12Aは、上面視が等脚台形状となるように形成されている。この上面視が等脚台形状の各載置面12Aは、平行な一組の対辺12a、12bのうち、長い辺12aが前方側に位置され、短い辺12bが後方側に位置されている。一対の載置面12Aは、各載置面12Aの長い辺12aの端部同士の接触点12Pを回転中心として、各載置面12Aの短い辺12bの端部同士が離間する離間位置と、各載置面12Aの短い辺12bの端部同士が接触する接触位置と、に変位可能に設けられている。
【0025】
一対の端子ホルダ12は、それぞれ、電気接触部41を載置面12Aに載置した状態で保持している。各端子4は、載置面12Aに載置された状態で、その長手方向が載置面12Aの短い辺12bに直交する向きで、電線接続部42が、載置面12Aの短い辺12bから後方に突出されている。一対の端子ホルダ12は、離間位置では、図3Aに示すように、各端子4において、電気接触部41と電線接続部42が並ぶ方向(以下、端子4の長手方向と記す)が、前後方向に沿う向きにあり、接触位置では、図3Bに示すように、各端子4は、長手方向が前後方向に対して所定の角度θ1となるように斜めの状態で保持されている。即ち、一対の端子ホルダ12が接触位置にある際に、一対の端子4は、長手方向が、分岐点P0を中心とした放射方向に沿うように配置されている。
【0026】
圧着型13は、図2A図2Bに示すように、各電線2の端末部と各端子4とを上下方向に挟み込んで圧着接続するための2組のアンビル14及びクリンパ15を有している。即ち、圧着型13は、各一対のアンビル14及び各一対のクリンパ15を有している。各一対のアンビル14及び各一対のクリンパ15は、各電線2の端末部と各端子4とを略同時に圧着接続し、一対の端子4が取り付けられた一対の電線2を略同時に製造可能に構成されている。
【0027】
各アンビル14には、図2A図2Bに示すように、各端子4の基底部43の導体設置位置43Aを載置するアンビル前方側湾曲面14Aと、各端子4の基底部43の被覆設置位置43Bを載置するアンビル後方側湾曲面14Bと、が設けられている。
【0028】
アンビル前方側湾曲面14A及びアンビル後方側湾曲面14Bは、各電線2の前方の端末部20の軸を中心とする円弧状に形成されているとともに、電線2の前方の端末部20の軸延在方向の何れの位置においても略同じ形状となるように形成されている。アンビル前方側湾曲面14A及びアンビル後方側湾曲面14Bは、各電線2の前方の端末部20の軸方向に並ぶ位置に設けられ、アンビル前方側湾曲面14Aは、アンビル後方側湾曲面14Bより、電線2の前方の端末部20の軸方向の前方側に設けられている。換言すると、前方側湾曲面14A及びアンビル後方側湾曲面14Bは、それぞれ、分岐方向Cに延在形成されている。
【0029】
各クリンパ15には、図2A図2Bに示すように、アンビル前方側湾曲面14Aの上方に位置して、一対の導体加締め片44を加締めるクリンパ前方側湾曲面15Aと、アンビル後方側湾曲面14Bの上方に位置して、一対の被覆加締め片45をそれぞれ加締めるクリンパ後方側湾曲面15Bと、が設けられている。
【0030】
クリンパ前方側湾曲面15Aは、一対の導体加締め片44の先端をそれぞれ、各電線2の中心軸に近付けるように屈曲させて、各電線2の導体部22を加締めるための一対の前方側弧状部150を有して構成されている。一対の前方側弧状部150は、それぞれ、円弧状に形成されているとともに、電線2の前方の端末部20の軸延在方向の何れの位置においても略同じ形状となるように形成されている。即ち、各前方側弧状部150は、それぞれ、分岐方向Cに延在形成されている。
【0031】
クリンパ後方側湾曲面15Bは、一対の被覆加締め片45の先端をそれぞれ、各電線2の中心軸に近付けるように屈曲させて、各電線2の被覆部21を加締めるための一対の後方側弧状部151を有して構成されている。一対の後方側弧状部151は、それぞれ、円弧状に形成されているとともに、電線2の前方の端末部20の軸延在方向の何れの位置においても略同じ形状となるように形成されている。即ち、各後方側弧状部151は、それぞれ、分岐方向Cに延在形成されている。
【0032】
多芯ケーブル製造装置10は、制御部の指示により駆動源が駆動されることにより、2組のクリンパ15が略同時にアンビル14に向けて降下することで、一対の電線2に対して各端子4それぞれが略同時に圧着接続される。即ち、一対の電線2において、各電線2の被覆部21と導体部22の4箇所が略同時に加締め接続される。2組のクリンパ15が略同時にアンビル14に向けて降下される際、各端子4は、制御部の指示により、各端子ホルダ12により保持されている。各電線2の端末部と各端子4とが圧着接続された後、制御部の指示により、各端子ホルダ12の各端子4への保持が解除される。こうして、各電線2の端末部と各端子4とが圧着接続された多芯ケーブル1が製造される。
【0033】
このような多芯ケーブル製造装置10によれば、各電線2と各端子4とを圧着接続するために対を成して構成された圧着型13を複数有し、圧着型13は、複数の電線2の前方の端末部20を、該前方の端末部20より後方側に位置する分岐点P0を中心とした放射状に延在させた状態で、各電線2の前方の端末部20と各端子4とを圧着接続する。即ち、図4に示すように、複数の電線2は、電線2間の隙間L1が、分岐点P0から前方の端末部20に向かうにしたがって徐々に大きくなるように緩やかに屈曲された状態で圧着接続される。従って、従来技術の如く、電線(心線102)にフォーク状の曲がり癖がついてしまうことが抑制されて、電線102間に比較的大きな隙間L0が空き難くされる。これにより高周波特性に影響を与え難い多芯ケーブル1を製造することができる。
【0034】
また、複数の圧着型13は、複数の電線2と複数の端子4とを略同時に圧着接続するように構成されている。これによれば、生産性の向上を図りつつ、複数の圧着型13を制御する制御部の構成を単純化することができる。
【0035】
また、対を成して構成された圧着型13のうち少なくとも一方が、各電線2の前方の端末部20または各端子4を載置するために直線状に延在形成された湾曲面14A、14B、15A、15Bを有し、各電線2と各端子4とが圧着接続される際、複数の湾曲面14A、14B、15A、15Bの延在方向(分岐方向C)が、複数の電線2の分岐点P0を中心とした放射方向に沿っている。これによれば、各電線2と各端子4とが圧着接続される際、電線2に局部的な負荷をかけることなく、各電線2と各端子4とを圧着接続することができる。従って、より一層、高周波特性に影響を与え難い多芯ケーブル1を製造することができる。
【0036】
<多芯ケーブル製造方法>
続いて、多芯ケーブル1製造装置10を用いた多芯ケーブル1の製造方法について、図3A図3B図3Cを参照して説明する。図3A図3B図3Cは、多芯ケーブル1の製造工程を説明するための平面図である。詳細には、図3Aは、各端子4が端子ホルダ12に保持された状態を示す図である。図3Bは、図3Aの後の工程を説明する図であり、各電線2と各端子4とが圧着接続された状態を示す図である。図3Cは、図3Bの後の工程を説明する図であり、各端子4から各端子ホルダ12が取り外された状態を示す図である。
【0037】
図3Aに示すように、一対の端子ホルダ12が離間位置にある際に各載置面12Aに、各端子4を保持させる。この後、制御部が、駆動部を駆動し、一対の端子ホルダ12の接触点Pを回転中心として、一対の端子ホルダ12を接触位置に変位させる。こうして、一対の端子4を、電気接触部41が前方で電線接続部42が後方側となり、かつ、その長手方向が、所定の仮想点P0を中心とした放射方向に沿う向きとなるように配置する(端子配置工程)。アプリケータのアンビル前方側湾曲面14Aに各端子4の電線接続部42の導体設置位置43Aが載置され、アンビル後方側湾曲面14Bに被覆設置位置43Bが載置される。
【0038】
ここで、一対の電線2は、後方側の部分に絶縁シース3が被覆され、前方の端末部20は露出されている。この状態で、図3Bに示すように、各電線2の所定の分岐点P0(所定の仮想点P0)で仮想線P1と各前方の端末部20の軸との成す角が所定の角θ1となるように曲げる。これにより、一対の電線2の前方の端末部20は、分岐点P0を中心とした放射状に延在される(電線屈曲工程)。
【0039】
各電線2の導体部22を電線接続部42の導体設置位置43Aに載置し、各電線2の被覆部21を電線接続部42の被覆設置位置43Bに載置する。この際、一対の電線2の分岐点P0は、各端子4の長手方向の延長上に位置している(位置決め工程)。
【0040】
この状態で、制御部が、駆動部を駆動させて、圧着型13のクリンパ15を下方に降下させる。アンビル前方側湾曲面14Aとクリンパ前方側湾曲面15Aとの間において、一対の導体加締め片44が曲げられて、各電線2の導体部22と各端子4とが圧着接続される。これと(略)同時に、アンビル後方側湾曲面14Bとクリンパ後方側湾曲面15Bとの間において、一対の被覆加締め片45が曲げられて、電線2の被覆部21と端子4とが圧着接続される。この後、制御部の指示により、一対の端子ホルダ12から各端子4が取り外される。こうして、図3Cに示す多芯ケーブル1を製造する。
【0041】
上述した多芯ケーブル製造方法によれば、端子配置工程で、電気接触部41が前方で電線接続部42が後方側となり、かつ、電気接触部41と電線接続部42とが連設される長手方向が、所定の仮想点P0を中心とした放射方向に沿う向きとなるように各端子4を配置し、電線屈曲工程で、複数の電線2をその前方の端末部20が、仮想点P0を中心とした放射状に分岐するように仮想点P0の位置で複数の電線2を屈曲させ、位置決め工程で、各端子4の長手方向と各電線2における前方の端末部20の軸P2とが直線上に並ぶように、各端子4と各電線2を位置決めし、圧着接続工程で、各端子4と各電線2を圧着接続する。これによれば、複数の電線2は、電線2間の隙間が、分岐点P0から前方の端末部20に向かうにしたがって徐々に大きくなるように緩やかに屈曲された状態で圧着接続される。従って、高周波特性に影響を与え難い多芯ケーブル1を製造することができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0043】
前記実施形態では、アンビル14は、アンビル前方側湾曲面14A(湾曲面)及びアンビル後方側湾曲面14B(湾曲面)を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図5に示すように、アンビル24は、平坦な面240を有していてもよい。即ち、アンビルは、アンビル前方側湾曲面14A(湾曲面)及びアンビル後方側湾曲面14B(湾曲面)を有していなくともよい。つまり、多芯ケーブル製造装置は、少なくともアンビルとクリンパとのうち一方が湾曲面を有していればよい。
【0044】
また、前記実施形態では、クリンパ15は、クリンパ前方側湾曲面15Aとクリンパ後方側湾曲面15Bを有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図5に示すように、クリンパ25は、前後方向に連続する1つの湾曲面250を有していてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、端子配置工程で、各端子4を所定の位置に配置した後、電線屈曲工程で、各電線2を、その前方の端末部20が、仮想点P0を中心とした放射状に分岐するように仮想点P0の位置で複数の電線2を屈曲させているが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、端子配置工程の後、電線屈曲工程を行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。電線屈曲工程の後、端子配置工程を行ってもよい。
【0046】
前記実施形態では、2組のクリンパ15が同時にアンビル14に向けて降下することで、一対の電線2に対して各端子4それぞれが略同時に圧着接続される。即ち、一対の電線2において、各電線2の被覆部21と導体部22の4箇所が略同時に加締め接続されるが、本発明はこれに限定されるものではない。2組のクリンパ15が別々に駆動されて、タイミングをずらして順次降下するように制御部により制御されていてもよい。
【0047】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 多芯ケーブル
10 多芯ケーブル製造装置
13 圧着型
14、24 アンビル
14A アンビル前方側湾曲面(湾曲面)
14B アンビル後方側湾曲面(湾曲面)
15、25 クリンパ
15A クリンパ前方側湾曲面(湾曲面)
15B クリンパ後方側湾曲面(湾曲面)
2 一対の電線(複数の電線)
20 複数の電線の前方の端末部
3 絶縁シース(絶縁部)
4 一対の端子(複数の端子)
41 電気接触部
42 電線接続部
P0 分岐点、所定の仮想点
C 複数の湾曲面の延在方向(分岐方向)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6