特許第6715908号(P6715908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6715908
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】ランタンフリント光学ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
   C03C3/068
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-209352(P2018-209352)
(22)【出願日】2018年11月7日
(62)【分割の表示】特願2017-93706(P2017-93706)の分割
【原出願日】2017年5月10日
(65)【公開番号】特開2019-59667(P2019-59667A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】201610303608.0
(32)【優先日】2016年5月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】毛露路
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼良振
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−125636(JP,A)
【文献】 特開2013−139372(JP,A)
【文献】 特開2013−087047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で表す組成成分で、SiO 2−10%、B 12−25%、TiO 1−6.5%、La 20−45%、Y 2−10%、ZrO 2−7%、Nb 5−15%、WO 1−5%、BaO 6−20%を含み、(LiO+NaO+KO+BaO+SrO+CaO+MgO−SiO)/TiOの値が1以上であり、屈折率が1.81−1.87、アッベ数が32−38である、ランタンフリント光学ガラス。
【請求項2】
質量百分率で表す組成成分で、更に、CaO 0−5%、SrO 0−5%、MgO 0−5%、LiO 0−2%、KO 0−2%、NaO 0−3%、Sb 0−1%を含む、請求項1に記載のランタンフリント光学ガラス。
【請求項3】
質量百分率で表す組成成分で、LiO+KO+NaOの総含有量が1.5−6%である、請求項2に記載のランタンフリント光学ガラス。
【請求項4】
質量百分率で表す組成成分で、SiO 3−8%及び/又はB 14−23%及び/又はTiO 2−6%及び/又はLa 22−40%及び/又はY 3−9%及び/又はZrO 3−6% 及び/又はNb 6−14%及び/又はWO 1−4%及び/又はBaO 8−18%及び/又はCaO 0−3%及び/又はSrO 0−3%及び/又はMgO 0−3%及び/又はLiO 0.2−1%及び/又はKO 0.2−1%及び/又はNaO 0.5−2%及び/又はSb 0−0.5%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のランタンフリント光学ガラス。
【請求項5】
質量百分率で表す組成成分で、SiO 3.5−6.5%及び/又はB 16−22%及び/又はTiO 3−6%及び/又はLa 26−38%及び/又はY 4−8%及び/又はZrO 3.5−6% 及び/又はNb 7−13%及び/又はWO 2−4%及び/又はBaO 8−15%及び/又はLiO 0.2−0.8%及び/又はKO 0.2−0.8%及び/又はNaO 0.5−1.5%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のランタンフリント光学ガラス。
【請求項6】
質量百分率で表す組成成分で、BaO+CaO+SrO+MgOの総含有量が10−16%である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のランタンフリント光学ガラス。
【請求項7】
質量百分率で表す組成成分で、(La+Nb)/(TiO+Y+WO+ZrO)の値が1以上である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のランタンフリント光学ガラス。
【請求項8】
Tgが630℃以下で、τ400nmが87%以上で、耐結晶性能がAグレ−ドである、請求項1乃至のいずれか一項に記載のランタンフリント光学ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率中・低分散ランタンフリント光学ガラスに関する。特に、屈折率が1.81−1.87、アッベ数が32−38である光学ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率中・低分散ランタンフリント光学ガラスは、光学機器レンズの解像度を上げ、デジタル一眼レフカメラ(DSLR/Digital Single Lens Reflex Camera/デジ一眼)・ミラ−レス式、安全監視、車載ビデオ等画像化分野に幅広く応用することができる。ランタンフリントガラス、特に屈折率が1.81−1.87、アッベ数が32−38範囲内の光学ガラスは、そのガラス組成成分に比較的多く含まれるTiO、La、Nb等の組成成分により、300nm−440nm周波数帯の光線(紫外線から青光線まで対応する)の吸収比が一般の低屈折率光学ガラスより高い。これらのガラスを、複数回反射を必要とする光学分野に応用する際には、複数回吸収された後に、屈折率とアッベ数が同一の二種類のガラスの内透過率が1%のみ異なっても、最後には画像装置の青周波数帯光量に10−30%の差ができ、これによって、光学機器の色再現が非常に難しくなる。また、高級画像設備の多くはCOMSを感光性エレメントとし、青色周波数帯に対しての感度は低く、レンズが青周波数帯に対する透過不足の場合は、画像設備の解像度を低下させてしまう。従って、如何に組成成分配合によって設計に必要な屈折率とアッベ数を満足し、同時にランタンフリントガラスの短波透過率を上げることが目前のランタンフリント光学ガラス分野で注目される研究課題である。
ランタンフリントガラス、特に非球面精密加圧成形に応用される低Tgランタンフリントガラスは、量産及びその後継加工工程において、結晶問題になり易い。既存の応用から見て、特に地球観測、宇宙観測等分野においては、大径(直径200mm以上)のレンズが必要となるが、ランタン系ガラスは成形過程において結晶がよく発生する特性があるため、仕様が大径で規格の厚い高屈折ランタン系ガラスは、既に光学設計のネックとなっている。
ランタンフリントガラスの量産で筋の問題を防ぐため、ガラスの成形温度は通常結晶上限温度に近づく、それから金型に配列してチャンク・ガラスとして冷却される。ランタンフリントガラスにとっては、冷却が始まる初期段階では、ガラスの粘度は非常に小さく、流動性はとても良く、組成成分における結晶し易い物質は、ガラスの自由転移組み合わせする能力が比較的に強い。ガラスの耐結晶性能が悪く、また、ガラスが液状から固化する時間が長い場合は、結晶し易い物質に充分な結晶時間を与えてしまい、ガラスの内部に結晶核が生じ、強いては肉眼で見える結晶体ができる。特に高屈折ランタン系ガラスは、大径で厚い仕様の製品成形において、ガラス液が熱の不良導体となり、冷却条件が悪く、ガラス冷却不良の中心部分と結晶閾値の比較的に低い三相境界において特に結晶がよく発生する。ランタンフリントガラスにとって、特に非球面精密加圧成形に適応する低軟化点のランタンフリントガラスにとって、ガラス組成成分の配合は、ガラスの冷却過程における耐結晶性能を上げ、製造難度を低下し、特に大径で厚い製品の製造技術をクリアする面では重要な意味を持つ。
また、ガラスの再加熱塑性加工工程においては、ガラスの耐結晶性能不良によって、加工製品表面には比較的に厚い結晶層がよく発生し、或いは内部に結晶粒子が発生して、製品の廃棄に繋がる。成形関係の実際経験からして、ガラスの耐結晶性能がBグレ−ド以上の場合において、二次成形プロセスの難度は比較的に低く、生産歩留まりも比較的に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国出願番号201410408995.5
【特許文献2】中国出願番号200910063091.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CN201410408995.5では光学ガラスを記述し、その組成成分には0.5−22モル%のZnOが含まれる。高含有量のZnOは、ガラスの高温溶融状態が比較的に長くなってしまい、在成形冷却過程において凝縮が比較的に遅く、特に大径成形過程において、内部に結晶がよく発生する。また、白金ルツボで高含有量のZnOガラスを精錬する際、その雰囲気をうまく制御しないと、ルツボがよく壊れてしまうので、生産技術に限界を与えられてしまう。
CN200910063091.2では光学ガラスを記述し、2−8質量%のLiOを使って、ガラスのTg温度を下げるため、ガラスの耐結晶性能が低下してしまい、大径製品が得られ難くなる。同時に、高含有量のLiOガラスは精密加圧成形加工工程において金型を汚染してしまう危険性がある。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、Tg温度が比較的に低く、短波透過率の高く、耐結晶性能の強い、非球面精密加圧成形ガラスと大径成形ランタン系ガラスに適するランタンフリント光学ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、SiO 2−10%、B 12−25%、TiO 1−6.5%、La 20−45%、Y 2−10%、ZrO 2−7%、Nb 5−15%、WO 1−5%、BaO 6−20%を含む。
【0007】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、更に、CaO 0−5%、SrO 0−5%、MgO 0−5%、LiO 0−2%、KO 0−2%、NaO 0−3%、Sb 0−1%を含む。
【0008】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、LiO+KO+NaOの総含有量が1.5−6%である。
【0009】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、SiO 3−8%及び/又はB 14−23%及び/又はTiO 2−6%及び/又はLa 22−40%及び/又はY 3−9%及び/又はZrO 3−6% 及び/又はNb 6−14%及び/又はWO 1−4%及び/又はBaO 8−18%及び/又はCaO 0−3%及び/又はSrO 0−3%及び/又はMgO 0−3%及び/又はLiO 0.2−1%及び/又はKO 0.2−1%及び/又はNaO 0.5−2%及び/又はSb 0−0.5%である。
即ち、本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、SiO 3−8%、B 14−23%、TiO 2−6、La 22−40%、Y 3−9%、ZrO 3−6%、Nb 6−14%、WO 1−4%、BaO 8−18%、CaO 0−3%、SrO 0−3%、MgO 0−3%、LiO 0.2−1%、KO 0.2−1%、NaO 0.5−2%、及びSb 0−0.5%のうち、少なくとも一つを満たす。
【0010】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、SiO 3.5−6.5%及び/又はB 16−22%及び/又はTiO 3−6%及び/又はLa 26−38%及び/又はY 4−8%及び/又はZrO 3.5−6% 及び/又はNb 7−13%及び/又はWO 2−4%及び/又はBaO 8−15%及び/又はLiO 0.2−0.8%及び/又はKO 0.2−0.8%及び/又はNaO 0.5−1.5%である。
即ち、本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、SiO 3.5−6.5%、B 16−22%、TiO 3−6%、La 26−38%、Y 4−8%、ZrO 3.5−6%、Nb 7−13%、WO 2−4%、BaO 8−15%、LiO 0.2−0.8%、KO 0.2−0.8%、及びNaO 0.5−1.5%のうち、少なくとも一つを満たす。
【0011】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、BaO+CaO+SrO+MgOの総含有量が10−16%である。
【0012】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、(LiO+NaO+KO+BaO+SrO+CaO+MgO−SiO)/TiOの値が1以上である。
【0013】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、質量百分率で表す組成成分で、(La+Nb)/(TiO+Y+WO+ZrO)の値が1以上である。
【0014】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、屈折率が1.81−1.87、アッベ数が32−38である。
【0015】
本発明のランタンフリント光学ガラスの一実施形態は、Tgが630℃以下で、τ400Nmが87%以上で、耐結晶性能がAグレ−ドである。
【発明の効果】
【0016】
各成分間の配合比率を合理的に設計することにより、ZnO成分非含有で、且つLiOの含有量を下げ、ガラス屈折率が1.81−1.87、アッベ数が32−38、Tg温度が630℃以下で、非球面精密加圧成形に適し、400nm波長における透過率は、87%以上で、ガラス耐結晶性能はAグレードで、ガラスの内部に結晶の発生は無く、大径で規格の厚い製品の成形に適するランタンフリント光学ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、冷却耐結晶性能を測定するガラスキャスティング金型の平面図である。
図2図2は、図1の鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の課題を解決するための手段として、以下のとおり本発明の光学ガラスの各組成を説明するが、別途説明のない限り、各成分の含有量の比率は質量%で表示する。
【0019】
本発明の体系のガラスにおいてBは、ガラスを構成する主要成形体であり、ガラスの骨枠として働く。その含有量が25%を超えると、ガラスの屈折率は予期した設計より低くなり、同時に化学安定性も悪くなる。その含有量が12%以下であると、ガラスを成形する性能が大幅に低下してしまい、耐結晶性能も悪くなる。そのため、Bの含有量は12−25%とし、14−23%が好ましく、16−22%が更に好ましい。
【0020】
本発明の体系のガラスにおいてBは、主にホウ酸三角形[BO]構造の形で存在し、緩んだチェーン状とレイヤー状のネットワークである。これも高屈折率ランタン系ガラスの結晶性能の悪い根本原因である。SiOは、ガラスにおいて珪酸四面体三錐ネットワークを形成し、非常に緻密で丈夫である。この様なネットワークをガラスに投入して、緩んだホウ酸三角形[BO]ネットワークを補強して、緻密になるようにする。更に、珪酸四面体三次元ネットワークの投入により、La、Nb等結晶陽イオンと陰イオンとは隔離され、結晶閾値を上げ、ガラスの耐結晶性能が上がる。但し、物はいつも両面性が存在しており、SiOの含有量を無制限に投入されると、一方溶融困難となり、片一方比較的に高い屈折率を維持するため、必然的にBの含有量を減少させてしまう。SiOは、Laに対する溶解度は極めて低く、急激にガラス耐結晶性能が低下してしまう。従って、本発明において、SiOの含有量が2%以下の場合は、ガラスの高温溶融状態が長くなり、耐結晶性能が悪くなり、大径製品が成形し難くなる。その含有量が10%より高い場合は、比較的に高い温度でガラスを精錬する必要があり、透過率の低下を招く。特に、ガラスの中にTiO、Nb等組成成分を含むと、余りにも高い精錬温度では透過率の急激な低下を引き起こす。また、SiOの含有量が高すぎると、ガラスの屈折率と耐結晶性能の低下も引き起こす。従って、本発明において、SiOの含有量範囲を2−10%に限定し、3−8%が好ましく、3.5−6.5%さらに好ましい。

【0021】
BaO、SrO、CaO、MgOは、アルカリ土類金属酸化物に属し、ガラスに投入すると、屈折率を向上すると同時に、ガラスの耐結晶安定性と短波透過率を向上することができる。
【0022】
本発明者の鋭意研究によって、これらガラスシステムにおいて、一定量のアルカリ土類金属酸化物を投入することで、ガラスの耐結晶性能を向上することができる事が分かった。それは、アルカリ土類金属酸化物の陽イオン場の強度が比較的に低く、ガラスに投入することで、遊離酸素イオンを提供され、Bが構成する緩んだホウ酸三角形は遊離酸素イオンを吸収して、構造の緻密した四面体ネットワークを構成して、ガラスの耐結晶性能を上げる。それと同時に、アルカリ土類金属酸化物が提供する遊離酸素は、ガラスネットワークの破断酸素橋を改めて接続させる。従って、ガラスの短波透過率とガラス酸素橋の破断の程度とには関連があり、酸素橋の破断が少ないほど、短波透過率は高い。従って、アルカリ土類金属酸化物が提供する遊離酸素は、破断した酸素橋を修復することができ、従ってガラス短波透過率を向上する役割をする。
過少のアルカリ土類金属酸化物は、ホウ酸三角形が構造緻密の四面体ネットワークへの転換に用いる充分な遊離陽イオンを提供できず、良好な耐結晶性能と理想な短波透過率を得られない事が分かった。過量なアルカリ土類金属酸化物をガラスに投入すると、アルカリ土類金属酸化物が遊離陽イオンを提供すると同時に、その陽イオンもガラスのネットワークを破壊してしまい、ガラスの耐結晶性能が急激に低下してしまう。
【0023】
アルカリ土類金属酸化物の種類から見て、同一含有量の条件では、BaOはSrO、CaO、MgOより、遊離酸素を提供する能力はもっと強く、ガラスの耐結晶性能向上にもっと有利である。同時に、ガラスの密度ももっと高くなる。これは、ガラス成形における筋の除去に有利である。従って、本発明において、アルカリ土類金属酸化物は主にBaOを使い、その含有量範囲を6−20%に限定し、8−18%が好ましく、8−15%さらに好ましい。
【0024】
SrOはガラスにおける役割はBaOと似ているが、遊離酸素を提供する能力はBaOより弱く、少量でBaOを代替する場合、ガラスの耐結晶性能とガラスの化学安定性を向上することができる。その原料の原価がBaOより遥かに高い事を鑑み、その含有量の範囲を0−5%に限定し、0−3%が好ましく、非添加がさらに好ましい。
【0025】
CaOとMgOは、アルカリ土類金属酸化物において、高強度イオンに属し、周辺のイオンを強く集める役割を果たす。本体系ガラスにおいて、CaOとMgOを少量に投入すると、ガラスの化学安定性とガラスの成形性能を向上することができる。但し、投入量が過多の場合は、ガラスの耐結晶性能が下がってしまい、同時に、屈折率も予期の設計を満たさなくなる。従ってCaOとMgOの含有量範囲をそれぞれ0−5%に限定し、0−3%が好ましく、非添加がさらに好ましい。
【0026】
本発明において、BaO、CaO、SrO、MgOの総含有量が10−16%の場合、ガラスの耐結晶性能、透過率は最適である。
【0027】
LiO、KO、NaOはアルカリ金属酸化物であって、通常これら酸化物をガラスに投入すると、ガラスTg温度を下げる役割をする一方、ガラス組成成分にもっと多くの遊離酸素を提供して、ガラスの透過率を上げる。但し、アルカリ金属酸化物を過多に投入すると、ガラス耐結晶性能の悪化を急激に加速してしまい、同時に、冷却成形時にはガラスが液状から固化する時間を延長してしまい、結晶に条件を作り上げ、大径成形には不利となる。また、ガラス中に三種類のアルカリ金属酸化物が共存する場合は、ガラスの結晶化おいて、相互制約の作用を果たし、耐結晶能力は一つのアルカリ金属酸化物或いは二種類のアルカリ金属酸化物より良い。試験によって、各アルカリ金属酸化物は下記に記述の含有量範囲になると、ガラスのTg温度は設計の要求事項を満たし、耐結晶性能、透過率も最適になることを確認した。
【0028】
同じ含有量で、LiOは、この三種類の酸化物の中で、ガラスのTg温度を下げる能力が一番強いが、ガラスの中にLiOを過多に投入すると、一方、ガラスの成形粘度が小さくなり、耐結晶性能が低下してしまう一方、ガラスは精密加圧成形において、型を汚してしまう危険性がある。従って、その含有量範囲を0−2%に限定し、0.2−1%が好ましく、0.2−0.8%さらに好ましい。NaOの含有量範囲を0−3%に限定し、0.5−2%が好ましく、0.5−1.5%。KOの含有量範囲を0−2%に限定し、0.2−1%が好ましく、0.2−0.8%さらに好ましい。
【0029】
本発明において、アルカリ金属酸化物の総含有量が6%を超えると、耐結晶性能が悪化され、物理的性能も長くなり、大径で規格の厚い製品の製造には不利である。その総含有量が1.5%未満の場合、Tg温度は、設計の要求事項を満たさなくなる。従って、LiO、KO、NaOの総含有量の範囲を1.5−6%に制御する。
【0030】
Laは、高屈折低分散酸化物であり、本発明の高屈折性能を実現する主要組成成分であり、ガラスの結晶がよく発生する主要要素でもある。本体系ガラスにおいて、Laの含有量が20%以下の場合は、設計の屈折率を満たさなくなる。但し、その含有量が45%を超えると、ガラスの耐結晶性能が悪化してしまい、その物理的性能も長くなる。従って、Laの含有量範囲を20−45%とし、22−40%が好ましく、26−38%さらに好ましい。
【0031】
Nbは高屈折高色分散酸化物であり、ガラス組成成分に投入すると、ガラス屈折率を上げ、ガラスのアッベ数を調節することができる。NbとLaを共に使用すると、ガラスの耐結晶性能を向上することができる。本発明のガラスにおいて、その含有量が5%未満の場合は、ガラスの屈折率とアッベ数は設計の要求事項を満たさなくなる。但し、その含有量が15%より高くなると、ガラスの耐結晶性能は急激に低下してしまう。従って、Nbの含有量範囲を5−15%にし、6−14%が好ましく、7−13%さらに好ましい。
【0032】
本発明者は、一般ガラス系統は成分が簡単で有ればあるほど、メルトが液相ライン温度まで冷却される時に、化合物の組成が相互衝突して一定格子に配列する確率は大きくなり、これらガラスは結晶がよく発生する事を、研究を通じで発見した。既存技術では、通常Ta及び/又はGdを採用してガラスの耐結晶性能を上げる。これでは、一方ガラスの溶解温度を上げ、ガラスの透過率が低下してしまい、強いてはガラスの内部に白金の介在物が生じてしまう。一方、Ta及び/又はGdを使うと、ガラスの原価が上がってしまう。従って、本発明のガラスにおいては、高価なTa、Gdを使って、ガラスの耐結晶性能を上げるのではなく、比較的に原価の安いY、ZrO、TiO、WO等組成成分を使って、合理的に配合をして、その相乗作用を活かして、耐結晶性能とガラスの安定性を極端に挙げることができる。それと同時に、ガラスの屈折率とアッベ数を調節して、ガラスの原価を下げることができる。
【0033】
は、高屈折低分散酸化物であり、その含有量が2%より低いと、耐結晶性能を上げる効果は明らかでなく、10%を超えると、ガラスの耐結晶性能が下がってしまう。従って、その含有量範囲を2−10%に限定し、3−9%が好ましく、4−8%さらに好ましい。
【0034】
ZrOは、高屈折酸化物であり、ガラスに投入すると、ガラスの屈折率を明らかに向上させ、同時にガラスの耐結晶性能と化学安定性も向上することができる。但し、ZrOは、難溶解性酸化物であり、過量に投入するとガラスの溶融温度を著しく上げてしまい、ガラスの透過率を下げるだけではなく、結石と結晶が生じる危険も与えられてしまう。従って、その含有量範囲を2−7%に限定し、3−6%が好ましく、3.5−6%さらに好ましい。
【0035】
TiOは、高屈折酸化物であり、ガラスに投入すると、ガラスの屈折率と色分散を明らかに向上すると同時に、ガラスの耐結晶性能を向上することができる。但しその含有量が1%より低いと、屈折率と色分散は設計の要求事項を満たさず、同時に、耐結晶性能を上げる効果も明らかでない。但し、TiOをガラスに過多に投入すると、ガラスの透過率が損なわれ、且つ、ガラスの耐結晶性能を低下してしまう。従って、TiOの含有量を1−6.5%に限定し、2−6%が好ましく、3−6%さらに好ましい。
【0036】
かかる組成において、Tiイオンは、これらガラスにおいては、[TiO]と[TiO]の二種類の配位構造の形で存在し、ガラス体系において、遊離酸素が充分な状況において、Tiイオンは、[TiO]配位構造の形でガラスネットワークに入り、ガラスのネットワーク構造とガラスの耐結晶性能を増強することができる。最も大事なのは、これらTiを含有する高屈折率ランタン系ガラスにおいて、Tiは、ガラス中の配位構造は、短波透過率に極めて大きな影響を与える。Tiイオンが、[TiO]の配位構造の形でガラスネットワークに入ると、Tiイオンは、雰囲気と精錬温度の影響を受け難く、ガラスの短波透過率が上がると同時に、ガラスネットワークの緻密性が上がり、耐結晶能力が増強される。Tiイオンが、[TiO]配位構造の形で、ガラスネットワークに入ると、ネットワーク外部体として存在し、その電子外層構造は、周辺のイオンの極性化作用の影響を受け、同時に精錬温度と雰囲気の影響を受け易くなり、ガラスの短波透過率は急激に下がってしまう。従って、ガラス組成成分の設計においては、各組成成分の合理的な配合を考慮して、TiO組成成分をできるだけ[TiO]配位構造になるようにして、ガラスの短波透過率と耐結晶性能を上げる。本発明者の鋭意研究により、Tiイオンの配位構造とガラス体系中の遊離酸素数量と関係がある事を発見した。本ガラス体系において、Bイオン、Tiイオンは、ガラス体系中の遊離酸素を得る能力を有し、同時にアルカリ金属、アルカリ土類金属は、遊離酸素の主要供給源である。BイオンとTiイオンがガラス体系に同時に存在する場合、Bイオンと遊離酸素結合能力は、Tiイオンより遥かに大きくなる。従って、体系中の遊離酸素はBイオンと優先して結合して、反応のバランスが取れた後に、余剰の遊離酸素がTiイオンと結合して、[TiO]配位構造を形成して、ガラスネットワークに入る。同時に、Bイオンの遊離酸素との結合能力は、更にガラスのSiO含有量とも関係があり、一つの[BO]構造には、一つの珪酸四面体孤立電荷が必要である。ガラス体系に珪酸四面体の隔離がない場合、Bイオンは遊離酸素の結合ができず、[BO]四面体が形成できない。従って、Tiイオンは、ガラス中の配位構造は主に酸化シリコン、酸化ホウ素、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物と関係がある。言い換えると、ガラスのTiO含有量の短波透過率への影響は、主に前記の数種類の酸化物の含有量とは密接な相乗関係がある。
【0037】
(LiO+NaO+KO+BaO+SrO+CaO+MgO−SiO)/TiOの値が1より大きい時、ガラスが比較的に高い短波透過率を有することを、発明者は研究を通じて見つけた。
【0038】
WOも結晶し易い高屈折率高色分散酸化物であり、本発明のガラスに投入することによって、屈折率、色分散の調節及び提高ガラスの耐結晶性能を向上する役割をする。また、WOをガラス体系に投入することによって、TiOの使用量を低下させ、ガラスの短波透過率を向上することができる。但し、その含有量が1%未満の場合は、耐結晶性能と透過率を向上する効果は明らかでない。但し、その含有量が5%以上の場合は、ガラスの耐結晶性能が下がり、同時にガラスの原価も上がって、透過率は下がる。従って、その含有量を1−5%に限定し、1−4%が好ましく、2−4%さらに好ましい。
【0039】
かかる組成において、上記6種の酸化物は、上記規定の組成成分範囲を満足し、さらに(La+Nb)/( TiO+Y+WO+ZrO)の比の値が1以上を満足する時、ガラスの耐結晶能力は最適となる。
【0040】
Sbは清澄剤であり、ガラスに添加すると、気泡がもっと容易に除去できる。本発明において、その含有量を0−1%に限定し、0−0.5%が好ましく、非添加がさらに好ましい。
【0041】
次に、本発明の光学ガラスの性能について説明する。
屈折率とアッベ数はGB/T 7962.1−2010 規定により測定する。
400nm波長における透過率は、GB/T 7962.12−2010規定により測定する。
ガラスのTg温度は、GB/T 7962.16−2010規定により測定する。
ガラスは加圧成形においての耐結晶性能は、下記の方法により測定する。
実験試料を20×20×10mm規格に加工し、両面をバフニングし、サンプルを温度Tg+200℃の結晶炉内に放置して30分間保持してから、取り出して冷却後、更にその大きな両面をバフニング加工し、下表1によりガラスの結晶性能を判定し、Aグレードは最好で、Eグレードは最悪である。
【0042】
【表1】
【0043】
ガラスの冷却鋳込み段階における耐結晶能力、大径成形性能有無は下記の実験方法により測定する。
【0044】
全ての実験試料は、0.8L容積に基づいて配合を行い、1L容積の白金ルツボを使って原料を溶解する。ガラスは澄清、均質の後、ガラス液の温度を1150℃まで下げ、長さ170mm、幅150mm、深さ75mmの鋳鉄型に鋳込み(型は鋳込む前に550℃保温を維持)、図1−2に示すとおりである。その内、金型にはダイロック1、サイドパネル2、ボトムボード3とサポート4等幾つの部分から構成し、サポート4は、耐熱鋳鉄材料を採用する。ガラスは冷却後、マッフル炉に入れて焼きなましをする。焼きなまし完了後はガラスを取り出して、ガラス内部に結晶の発生有無を観察し、結晶がない場合は、当該ガラスの冷却時の耐結晶能力が良好で、厚くて大径成形の能力を有することを証明する。
【0045】
測定によって、本発明の光学ガラスは以下の性能を有する。屈折率が1.81−1.87、アッベ数が32−38である。400nm波長における透過率(τ400nm)は87%以上である。Tg温度は630℃以下である;ガラス耐結晶性能はAグレードである;前記規定の鋳込み条件と冷却条件において、ガラス内部に結晶が発生しない。
【実施例】
【0046】
本発明の課題を解決するための手段として、以下、実施例を挙げて本発明の光学ガラスをさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られない。
表2−3に示す光学ガラス(実施例1〜20)は、表2−3に示す各実施例の比の値に基づいて計量して、且つ光学ガラス用普通原料を混合して(例えば:酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)、混合原料を白金のルツボに投入してから、1260−1300℃にて2.5−4時間溶融して、澄清、攪拌、均質の後、気泡の無い、及び非溶解物の無い均質の溶融ガラスを得て、この熔融ガラスを金型で鋳込み、焼きなましをして得られる。
【0047】
表2−3にでは、本発明実施例1〜20の組成成分、屈折率(nd)、アッベ数(vd)、400nm波長における透過率(τ400nm)、Tg温度を示しており、LiO+KO+NaOの総含有量はK1で示し、BaO+CaO+SrO+MgOの総含有量はK2で示し、(LiO+NaO+KO+BaO+SrO+CaO+MgO−SiO)/TiOの値は、K3で示し、(La+ Nb)/( TiO+Y+WO+ZrO)の値は、K4で示し、ガラスの耐結晶性能グレードはAで示し、前記規定の鋳込み条件において、ガラス内部の結晶状況をBで示す。
【0048】
【表2】


【0049】
【表3】
図1
図2