(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6716006
(24)【登録日】2020年6月11日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】散液装置
(51)【国際特許分類】
E01C 23/12 20060101AFI20200622BHJP
B05B 7/30 20060101ALI20200622BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
E01C23/12 B
B05B7/30
B05B17/00 101
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-218177(P2019-218177)
(22)【出願日】2019年12月2日
【審査請求日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2019-199518(P2019-199518)
(32)【優先日】2019年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金森 康継
(72)【発明者】
【氏名】若松 亨
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−049410(JP,A)
【文献】
実開平2−112708(JP,U)
【文献】
特開2008−163733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/12
B05B 7/30
B05B 17/00
E01C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設車両に設けられ、ラテックスを含む地盤改良剤を散液する散液装置であって、
駆動流体を圧送するポンプと、
前記ポンプから圧送された駆動流体が流れる第1の管路と、
ラテックスが流れる第2の管路と、
前記駆動流体と前記ラテックスとの混合流体を前記地盤改良剤として散液する散液管路と、
前記散液管路の上流端部に接続されている分岐管と、を備え、
前記第1の管路の下流端部、および、前記第2の管路の下流端部が前記分岐管に接続されており、前記第2の管路は、前記分岐管よりも上方に配置され前記ラテックスを流下させて前記駆動流体に混合させることを特徴とする散液装置。
【請求項2】
前記第1の管路のうち、前記ポンプの下流側の一部と前記ポンプの上流側の一部とに接続され、前記第1の管路を流れる前記駆動流体の流量を調節する第3の管路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の散液装置。
【請求項3】
前記第1の管路のうち、前記ポンプの下流側の一部に接続され、前記駆動流体を外部に放出する第4の管路をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の散液装置。
【請求項4】
前記散液管路には複数の孔部が設けられており、ノズルを介さず前記孔部から前記混合流体を直接散液することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の散液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路上等を自走しながら路盤や路床等の地盤をかき起こし、地盤改良剤を加えて破砕、混合して地盤改良を行うスタビライザ(ロードスタビライザ)の開発が進んでいる。スタビライザについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−112708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地盤改良剤には、石灰、セメント、アスファルト乳剤などの添加剤が用いられることが多いが、これらの添加剤が現地で入手困難となる場合がある。このため、例えば、ラテックスなど現地で容易に採取できる材料を地盤改良剤に用いることが望まれている。
【0005】
しかしながら、スタビライザが備える散液装置がラテックスを含んだ地盤改良剤を散液すると、散液装置の管路内壁やポンプ内部にラテックスが付着することがある。このため、散液装置のメンテナンスに多大な時間と労力を要するという問題がある。
【0006】
また、地盤改良剤にラテックスを混合すると地盤改良剤の粘度が大きくなるため、高い圧力や性能を備えたポンプを使用しなければならず、製造コストが増大するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ラテックスを地盤改良剤に用いた場合であってもメンテナンスの負担を軽減することができるとともに、製造コストを低減することができる散液装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、建設車両に設けられ、ラテックスを含む地盤改良剤を散液する散液装置であって、駆動流体を圧送するポンプと、前記ポンプから圧送された駆動流体が流れる第1の管路と、ラテックスが流れる第2の管路と、前記駆動流体と前記ラテックスとの混合流体を前記地盤改良剤として散液する散液管路と、前記散液管路の上流端部に接続されている分岐管と、を備え、前記第1の管路の下流端部、および、前記第2の管路の下流端部が前記分岐管に接続されて
おり、前記第2の管路は、前記分岐管よりも上方に配置され前記ラテックスを流下させて前記駆動流体に混合させることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、地盤改良剤の散液によってラテックスが付着、固着する部品は第2の管路、分岐管および散液管路となり、ポンプおよび第1の管路は除外される。このため、散液装置の部品に付着、固着したラテックスを除去するためのメンテナンスの対象を最小限にとどめることができる。したがって、ラテックスを地盤改良剤に用いた場合であってもメンテナンスの負担を軽減することができる。また、散液管路の上流端部でラテックスを混合させるため、高い圧力や性能を備えたポンプを用いる必要が無い。これにより、製造コストを低減することができる。
【0012】
また、前記第1の管路のうち、前記ポンプの下流側の一部と前記ポンプの上流側の一部とに接続され、前記第1の管路を流れる前記駆動流体の流量を調節する第3の管路をさらに備えることが好ましい。
【0013】
前記構成によれば、散液管路から散液される地盤改良剤の流量および圧力を調節したりすることができる。
【0014】
また、前記第1の管路のうち、前記ポンプの下流側の一部に接続され、前記駆動流体を外部に放出する第4の管路をさらに備えることが好ましい。
【0015】
前記構成によれば、例えば、第4の管路を用いて容易に洗浄することができる。
【0016】
また、前記散液管路には複数の孔部が設けられており、ノズルを介さず前記孔部から前記混合流体を直接散液することが好ましい。
【0017】
前記構成によれば、孔部の目詰まりを防ぐとともに、孔部の洗浄を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラテックスを地盤改良剤に用いた場合であってもメンテナンスの負担を軽減することができるとともに、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の散液装置を備えるスタビライザ、および、タンクローリの側面図である。
【
図2】本実施形態の散液装置がラテックスを含む地盤改良剤を散液するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示すように、スタビライザSは、走行装置1と、作業装置2と、散液装置3とを備えている。走行装置1は、スタビライザSを所望の方向に自走させる。作業装置2は、地盤改良を行う装置である。作業装置2は、フード21と、ドラム22と、ビット23とを備えている。作業装置2は、フード21内のドラム22を回転させることで、ドラム22の外周にあるビット23が地盤をかき起こす。作業装置2は、かき起こした地盤に、散液装置3から散液される地盤改良剤を加え、破砕、混合して地盤改良を行うことができる。
【0022】
散液装置3は、フード21内に地盤改良剤を散液する装置である。散液装置3の詳細は後記する。地盤改良剤は、駆動流体とラテックスとの混合流体である。駆動流体は、例えば、水とすることができるが、これに限らず、例えば、水に石灰、セメント、アスファルト乳剤などの添加剤を混合したものでもよい。また、駆動流体は高温であってもよい。
【0023】
図1に示すタンクローリTは、スタビライザSと同方向に走行し、スタビライザSの散液装置3に駆動流体を供給する。また、
図1に示すタンク4は、散液装置3に供給されるラテックスを貯蔵する。タンク4は、例えば、走行装置1の運転席付近に配置することができるが、これに限らず、任意の場所に配置することができる。また、タンク4に貯蔵されているラテックスは、例えば、ゴムの木から採取された樹液を精製したものでもよいし、ラテックスの固化を防ぐためのアンモニアを添加したものでもよい。
【0024】
図2に示すように、散液装置3は、管路51〜56と、分岐管61〜64と、バルブ71〜74と、ポンプ8と、散液管路9とを備えている。
【0025】
管路51は、タンクローリTが貯蔵する駆動流体をポンプ8に送るための管である。管路52,53は、ポンプ8から圧送された駆動流体を散液管路9に送るための管である。管路54は、タンク4が貯蔵するラテックスを散液管路9に送るための管である。管路55は、ポンプ8から圧送された駆動流体をポンプ8の上流側に送るための管である。管路56は、洗浄する際に駆動流体を送るための管である。
【0026】
分岐管61は、管路51の下流端部と、ポンプ8と、管路55の下流端部とを接続する管である。分岐管62は、管路52の下流端部と、分岐管63と、管路56の上流端部とを接続する管である。分岐管63は、分岐管62と、バルブ71,73とを接続する管である。分岐管64は、管路53の下流端部と、バルブ72と、散液管路9の上流端部とを接続する管である。分岐管61〜64は、例えば、T字管路を用いる。
【0027】
バルブ71は、管路53の流路の開閉を行うとともに、駆動流体の流量を調節する。バルブ71は、分岐管63と、管路53の上流端部とに接続されている。バルブ72は、管路54の流路の開閉を行うとともに、ラテックスの流量を調節する。バルブ72は、管路54の下流端部と、分岐管64とに接続されている。バルブ73は、管路55の流路の開閉を行うとともに、駆動流体の流量を調節する。バルブ73は、分岐管63と、管路55の上流端部とに接続されている。バルブ74は、管路56の流路の開閉を行うとともに、駆動流体の流量を調節する。バルブ74は、管路56の下流端部と、ノズル75とに接続されている。
【0028】
ポンプ8は、例えば、エンジンポンプであり、駆動流体を圧送する駆動源である。ポンプ8は、管路51を介してタンクローリTから駆動流体を吸引し、管路52を介して駆動流体を圧送する。
【0029】
散液管路9は、駆動流体とラテックスとの混合流体を地盤改良剤として散液する管である。散液管路9は、例えば、所定の径の孔部93が軸方向に所定個数設けられた樹脂製または金属製のパイプ91およびストッパー92を含んで構成することができる。ストッパー92は、パイプ91の下流端に設けられ流れを堰き止める部材である。散液管路9の上流端部は、分岐管64に直接接続されている。分岐管64から最も上流側の孔部93までの長さは、管路53及び管路54の長さに比べて十分に短くなっている。
【0030】
本実施形態の孔部93は径が10mm程度の丸孔になっている。孔部93にはノズルは設けておらず、孔部93から直接混合流体を散液する構成になっている。このようにすることで、ラテックスによる孔部93の目詰まりを防ぐとともに、孔部93の清掃を容易に行うことができる。つまり、メンテナンスを容易に行うことができるとともに、寿命(使用期間)を長くすることができる。孔部93の径(開口部の長さ)は、5〜20mm程度で適宜設定すればよい。また、孔部93の形状は丸孔に限定されず、適宜設定すればよい。
【0031】
なお、パイプ91の孔部93の形状を適宜変更し、混合流体を霧状に噴出させるようにしてもよいし、ノズルを設けてもよい。また、例えば、孔部93に流量計を設置してもよい。当該流量計は、一端を孔部93に挿入し、他端から混合流体を流出させることができる。流量計を設けることにより、散液された混合流体の流量を把握することができるため、各バルブの開度を調節しつつ混合流体の散液量を所望の量に調節することができる。
【0032】
管路51〜53は、特許請求の範囲の第1の管路の具体例である。管路54は、特許請求の範囲の第2の管路の具体例である。管路55は、特許請求の範囲の第3の管路の具体例である。管路56は、特許請求の範囲の第4の管路の具体例である。散液管路9は、特許請求の範囲の散液管路の具体例である。分岐管64は、特許請求の範囲の分岐管の具体例である。
【0033】
<動作例>
駆動流体とラテックスとの混合時では、バルブ71,72を開き、バルブ74を閉じる。駆動流体の流量を調節しない場合は、バルブ73を閉じる。タンクローリTから供給された駆動流体はポンプ8によって吸引され管路51を流れる。ポンプ8から圧送された駆動流体は、管路52→分岐管62→分岐管63→バルブ71→管路53→分岐管64の順に流れる。
【0034】
一方、タンク4に貯蔵されたラテックスは、管路54→バルブ72→分岐管64の順に流れる。そして、分岐管64にて、駆動流体およびラテックスが混合される。バルブ72の開度を調節することにより、駆動流体とラテックスとの混合割合を調節することができる。駆動流体とラテックスとの混合流体は、散液管路9に案内され、パイプ91の孔部93から地盤改良剤として散液される。作業装置2は、かき起こした地盤に地盤改良剤を加え、破砕、混合を行う。
【0035】
駆動流体の流量を調節する場合は、バルブ73を開く。すると、ポンプ8から圧送された駆動流体の一部は、管路52→分岐管62→分岐管63→バルブ73→管路55→分岐管61→ポンプ8の順に流れる。このため、バルブ73の開度に応じて管路53に流れる駆動流体の流量を調節することができる。
【0036】
また、メンテナンス等で洗浄する場合は、バルブ71,72を閉じ、バルブ74を開く。バルブ73は、基本的には閉じるが、開いてもよい。すると、ポンプ8から圧送された駆動流体の一部は、管路52→分岐管62→管路56の順に流れる。管路56は、例えば、フレキシブルなパイプであることが好ましい。管路56から放出された駆動流体は洗浄以外の用途に用いてもよい。
【0037】
<作用効果>
以上説明した本実施形態に係る散液装置3によれば、地盤改良剤の散液によってラテックスが付着、固着する部品は管路54、分岐管64、および、散液管路9となり、ポンプ8および管路51〜53は除外される。このため、散液装置3の部品に付着、固着したラテックスを除去するためのメンテナンスの対象を最小限にとどめることができる。したがって、ラテックスを地盤改良剤に用いた場合であってもメンテナンスの負担を軽減することができる。また、散液管路9の上流端部でラテックスを混合させるため、高い圧力や性能を備えたポンプ8を用いる必要が無い。これにより、製造コストを低減することができる。
【0038】
なお、駆動流体とラテックスとの混合流体の粘度は、駆動流体のみの粘度よりも大きいため、混合流体を散液するのに相応の圧力で圧送することが本来必要である。しかし、本実施形態によれば、散液管路9の上流端部、つまり、散液する直前で駆動流体とラテックスとを混合させているため、混合流体そのものの流路を相対的に短く構成している。このため、ポンプ8の圧力を大きくしなくても、散液することができる。
【0039】
また、分岐管64は、地盤改良剤の散液においてエゼクタの役割を果たすことができる。つまり、所定の圧力で流れる駆動流体は、分岐管64内に低圧空間を生成し、ベルヌーイの定理に従い、駆動流体よりも低圧で流れるラテックスを吸引することができる。その結果、新たに動力源を設けなくても、タンク4から所定量のラテックスを散液管路9へ送ることができる。
【0040】
また、走行装置1の運転席付近に配置されているタンク4は、フード21内に配置されている散液管路9よりも上方に配置されている(
図1参照)。また、管路54は、分岐管64よりも上方に配置されている。よって、ラテックスを自然流下させて管路54に流し、駆動流体に混合させることができる。その結果、ラテックスを圧送するためのポンプを不要とすることができる。
【0041】
また、管路55を設けることにより、散液管路9から散液される地盤改良剤の流量および圧力を調節したりすることができる。かかる構成は、駆動流体に対するブリードオフ回路として機能する。
【0042】
また、地盤改良剤を散液する散液管路9は、ラテックスによるパイプ91の孔部93の目詰まりなどに起因して散液できず散液管路9内の圧力上昇により破損するおそれがある。しかし、管路55を設け、地盤改良剤の流量および圧力を低減するように適宜調節することで、散液管路9の破損を回避することができる。また、管路55を設けることにより、作業中に諸事情でバルブ71,72を閉じて散液を中止する場合であっても、ポンプ8は駆動を継続させ駆動流体をブリードオフ回路中に巡回させることができる。このため、散液中止の度にポンプ8を駆動停止させるという煩雑な操作を回避することができる。また、駆動流体を圧送するポンプ8に対して相応の能力が本来求められている。しかし、管路55を設け、地盤改良剤の流量および圧力を調節可能とすることで、ポンプ8に求める能力の条件を緩和することができ、ポンプ8の能力選定の幅を広げることができる。
【0043】
また、管路56を設けることにより、容易に洗浄することができる。例えば、作業員は、ノズル75から噴出した駆動流体で、タンク4を容易に洗浄することができる。また、作業員は、ノズル75から噴出した駆動流体で、ラテックスが付着、固着する分岐管64の内部や散液管路9の内部も容易に洗浄することができる。
【0044】
また、例えば、散液管路9に関しては、作業員は、ストッパー92を外してパイプ91の下流端部にノズル75の先端部を合わせて駆動流体を噴出することができる。これにより、駆動流体がパイプ91内を逆流することになり、パイプ91の内部を効率よく洗浄することができる。
【符号の説明】
【0045】
S スタビライザ
T タンクローリ
1 走行装置
2 作業装置
3 散液装置
4 タンク
51〜53 管路(第1の管路)
54 管路(第2の管路)
55 管路(第3の管路)
56 管路(第4の管路)
61〜63 分岐管
64 分岐管
71〜74 バルブ
8 ポンプ
9 散液管路
【要約】 (修正有)
【課題】ラテックスを地盤改良剤に用いた場合であってもメンテナンスの負担を軽減することができるとともに、製造コストを低減することができる散液装置を提供する。
【解決手段】スタビライザSに設けられ、ラテックスを含む地盤改良剤を散液する散液装置3は、駆動流体を圧送するポンプ8と、ポンプから圧送された駆動流体が流れる管路51〜53と、ラテックスが流れる管路54と、駆動流体とラテックスとの混合流体を地盤改良剤として散液する散液管路9と、散液管路の上流端部に接続されている分岐管64と、を備え、管路53の下流端部、および、管路54の下流端部が分岐管に接続されている。
【選択図】
図1