(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロピレン単位と、エチレン単位と、所望により炭素数4〜8のα−オレフィンの少なくとも一種の単位と、を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A):30〜85質量部と、
プロピレン単独重合体(B):0〜30質量部と、
エチレン単位と、炭素数4〜8のα−オレフィンの少なくとも一種の単位と、を含むエチレン系エラストマー(C)(ただし、プロピレン単位を含まない):5〜30質量部と、
平均粒子径が3〜6μmであり、比表面積が15〜20m2/gであるタルク(D):10〜40質量部と(ただし、(A)〜(D)の合計は100質量部)、
を含有するプロピレン系樹脂組成物。
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が、下記要件(i)〜(iv)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)および下記要件(v)〜(viii)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)の少なくとも一方を含む請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
要件(i):n−デカンに不溶な成分が80〜97質量%含まれる。
要件(ii):前記要件(i)におけるn−デカンに不溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が0.2dl/g以上2.0dl/g以下である。
要件(iii):n−デカンに可溶な成分が3〜20質量%含まれる。
要件(iv):前記要件(iii)におけるn−デカンに可溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が2.0dl/g以上4.0dl/g未満である。
要件(v):n−デカンに不溶な成分が80〜97質量%含まれる。
要件(vi):前記要件(v)におけるn−デカンに不溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が0.2dl/g以上2.0dl/g以下である。
要件(vii):n−デカンに可溶な成分が3〜20質量%含まれる。
要件(viii):前記要件(vii)におけるn−デカンに可溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が4.0dl/g以上9.0dl/g以下である。
前記プロピレン単独重合体(B)の、荷重2.16kg、温度230℃で測定したメルトフローレート(MFR)が1〜500g/10分である請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
前記エチレン系エラストマー(C)の、荷重2.16kg、温度230℃で測定したメルトフローレート(MFR)が0.3〜40g/10分であり、密度が850〜892kg/m3である請求項1から3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単位と、エチレン単位と、所望により炭素数4〜8のα−オレフィンの少なくとも一種の単位と、を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A):30〜85質量部と、プロピレン単独重合体(B):0〜30質量部と、エチレン単位と、炭素数4〜8のα−オレフィンの少なくとも一種の単位と、を含むエチレン系エラストマー(C):5〜30質量部と、平均粒子径が3〜6μmであり、比表面積が15〜20m
2/gであるタルク(D):10〜40質量部と、を含有する。ただし、(A)〜(D)の合計は100質量部である。
【0011】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)と、プロピレン単独重合体(B)と、エチレン系エラストマー(C)と、タルク(D)とを所定の比率で含有し、特に、該タルク(D)の平均粒子径が3〜6μmであり、かつ比表面積が15〜20m
2/gであることにより、剛性と耐衝撃性とのバランスが良好となる。以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
[プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を30〜85質量部含有する。該含有量が30質量部未満である場合、製品の剛性が大幅に低下し、成形品とした際に外力による変形が起きやすい。一方、該含有量が85質量部を超える場合、製品の耐衝撃性が低下し、衝撃により破壊されやすくなる。該含有量は35〜80質量部が好ましく、40〜75質量部がより好ましく、45〜70質量部が更に好ましい。
【0013】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン由来の単位と、エチレン由来の単位と、任意で炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種由来の単位と、を含む。炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種由来の単位は任意成分であるため、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は該単位を含まなくてもよい。プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン由来の単位と、エチレン由来の単位と、任意で炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種由来の単位と、からなることができる。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン由来の単位と、エチレン由来の単位と、からなることができる。プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)としては、例えばいわゆるブロックポリプロピレンを用いることができる。
【0014】
前記炭素数4〜8のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0015】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(i)〜(iv)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A1)および下記要件(v)〜(viii)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)の少なくとも一方を含むことが好ましく、前記(A1)および前記(A2)を含むことがより好ましい。なお、n−デカンに不溶な成分(以下、n−デカン不溶成分とも示す)と、n−デカンに可溶な成分(以下、n−デカン可溶成分とも示す)との合計は100質量%である。
【0016】
(要件(i))
n−デカンに不溶な成分が80〜97質量%含まれる。n−デカン不溶成分は82〜93質量%含まれることが好ましく、84〜91質量%含まれることがより好ましい。n−デカン不溶成分が80〜97質量%含まれることにより、耐衝撃性が向上する。
【0017】
(要件(ii))
前記要件(i)におけるn−デカンに不溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が0.2dl/g以上2.0dl/g以下である。該極限粘度[η]は0.8〜1.8dl/gが好ましく、1.0〜1.6dl/gがより好ましい。該極限粘度[η]が0.2dl/g以上2.0dl/g以下であることにより、耐衝撃性が向上する。なお、極限粘度[η]は後述する方法により測定される値である。
【0018】
(要件(iii))
n−デカンに可溶な成分が3〜20質量%含まれる。n−デカン可溶成分は7〜18質量%含まれることが好ましく、9〜16質量%含まれることがより好ましい。n−デカン可溶成分が3〜20質量%含まれることにより、耐衝撃性が向上する。
【0019】
(要件(iv))
前記要件(iii)におけるn−デカンに可溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が2.0dl/g以上4.0dl/g未満である。該極限粘度[η]は2.1〜3.6dl/gが好ましく、2.2〜3.2dl/gがより好ましい。該極限粘度[η]が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であることにより、耐衝撃性が向上する。なお、極限粘度[η]は後述する方法により測定される値である。
【0020】
(要件(v))
n−デカンに不溶な成分が80〜97質量%含まれる。n−デカン不溶成分は82〜93質量%含まれることが好ましく、84〜91質量%含まれることがより好ましい。n−デカン不溶成分が80〜97質量%含まれることにより、耐衝撃性が向上する。
【0021】
(要件(vi))
前記要件(v)におけるn−デカンに不溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が0.2dl/g以上2.0dl/g以下である。該極限粘度[η]は0.8〜1.8dl/gが好ましく、1.0〜1.6dl/gがより好ましい。該極限粘度[η]が0.2dl/g以上2.0dl/g以下であることにより、耐衝撃性が向上する。なお、極限粘度[η]は後述する方法により測定される値である。
【0022】
(要件(vii))
n−デカンに可溶な成分が3〜20質量%含まれる。n−デカン可溶成分は7〜18質量%含まれることが好ましく、9〜16質量%含まれることがより好ましい。n−デカン可溶成分が3〜20質量%含まれることにより、耐衝撃性が向上する。
【0023】
(要件(viii))
前記要件(vii)におけるn−デカンに可溶な成分の、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]が4.0dl/g以上9.0dl/g以下である。該極限粘度[η]は4.5〜8.5dl/gが好ましく、5.0〜8.0dl/gがより好ましい。該極限粘度[η]が4.0dl/g以上9.0dl/g以下であることにより、耐衝撃性が向上する。なお、極限粘度[η]は後述する方法により測定される値である。
【0024】
なお、本発明者らの知見に拠れば、前記n−デカン不溶成分は、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムポリマー(エチレンおよび炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種由来の単位を1.5mol%を超えない量で含有するプロピレン系重合体)、またはこれらの二種以上の混合体と推測される。また、前記n−デカン可溶成分は、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、またはこれらの二種以上の混合体と推測される。なお、「共重合体」にはランダムポリマーも含まれる。
【0025】
(プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の製造方法)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、例えば、固体状チタン触媒成分(I)と有機金属化合物触媒成分(II)とを含む予備重合触媒の存在下、プロピレン等のオレフィンを予備重合し、次いで、プロピレン、エチレン、および炭素原子数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとの一種を本重合させる方法により製造できる。なお、予備重合を行わずに本重合を行ってもよい。
【0026】
前記予備重合は、予備重合触媒1g当り、好ましくは0.1〜1000g、より好ましくは0.3〜500g、更に好ましくは1〜200gのオレフィンを予備重合させることにより行われる。
【0027】
予備重合触媒に含まれる固体状チタン触媒成分(I)としては、具体的に、三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物が、比表面積が100m
2/g以上である担体に担持された固体状チタン触媒成分、あるいはマグネシウム、ハロゲン、電子供与体(好ましくは芳香族カルボン酸エステルまたはアルキル基含有エーテル)およびチタンを必須成分とし、これらの必須成分が比表面積100m
2/g以上である担体に担持された固体状チタン触媒成分が挙げられる。
【0028】
予備重合触媒に含まれる有機金属化合物触媒成分(II)としては、トリエチルアルミニウム、第13族金属を含む化合物、たとえば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物などを用いることができる。これらの中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。有機アルミニウム化合物としては具体的に、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライドなどが挙げられる。なお有機アルミニウム化合物は、使用するチタン触媒成分の種類に合わせて適宜選択することができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0029】
予備重合では、本重合よりも系内の触媒濃度を高くすることができる。予備重合における固体状チタン触媒成分(I)の濃度は、液状媒体1リットル当り、チタン原子換算で、好ましくは0.001〜200ミリモル、より好ましくは0.01〜50ミリモル、さらに好ましくは0.1〜20ミリモルである。
【0030】
予備重合における有機金属化合物触媒成分(II)の量は、固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、好ましくは0.1〜300モル、より好ましくは0.5〜100モル、更に好ましくは1〜50モルであることが好ましい。
【0031】
予備重合では、必要に応じて電子供与体成分等を用いることもできる。この際これらの成分は、前記固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、好ましくは0.1〜50モル、より好ましくは0.5〜30モル、さらに好ましくは1〜10モルの量で用いられる。
【0032】
予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィン及び触媒成分を加え、温和な条件下にて行うことができる。不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;およびこれらの混合物等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの不活性炭化水素媒体の中でも、脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。
【0033】
このように、不活性炭化水素媒体を用いる場合、予備重合はバッチ式で行うことが好ましい。一方、オレフィン自体を溶媒として予備重合を行うこともできる。また、実質的に溶媒のない状態で予備重合することもできる。この場合には、予備重合を連続的に行うことが好ましい。
【0034】
予備重合で使用されるオレフィンは、後述する本重合で使用されるオレフィンと同一であっても、異なっていてもよいが、プロピレンであることが好ましい。予備重合の際の温度は、−20〜+100℃であることが好ましく、−20〜+80℃であることがより好ましく、0〜+40℃であることが更に好ましい。
【0035】
次に、予備重合を経由した後に、または予備重合を経由することなく実施される本重合について説明する。
【0036】
本重合は、例えば以下の重合工程1および重合工程2を連続的に実施することによって行うことができる。また、以下の重合工程1と重合工程2とを独立して実施し、得られた(共)重合体を混合してもよい。
【0037】
(重合工程1)
プロピレン並びに、必要に応じてエチレンおよび炭素原子数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種を触媒成分の存在下で(共)重合させる工程(結晶性プロピレン系(共)重合体製造工程)。
【0038】
(重合工程2)
プロピレンと、エチレンと、炭素原子数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種とを触媒成分の存在下で共重合させる工程(共重合体ゴム製造工程)。
【0039】
前記重合工程1および前記重合工程2の重合時間(滞留時間)を調整することで、n−デカン不溶(可溶)成分の含有量および極限粘度[η]を調整することができる。
【0040】
本重合では、オレフィンとして、プロピレン、エチレン、および炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種以外にも、スチレン、アリルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン等の脂環族ビニル化合物を用いることもできる。さらに、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの環状オレフィン;イソプレン、ブタジエンなどの共役ジエン;非共役ジエンなどの多不飽和結合を有する化合物を用いることもできる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、以下これらのオレフィンを「他のオレフィン」とも示す。これらの他のオレフィンの中では、芳香族ビニル化合物が好ましい。また、オレフィンの総量100質量%のうち、他のオレフィンの量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0041】
予備重合及び本重合は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。前記重合工程1では、バルク重合や懸濁重合等の液相重合法または気相重合法が好ましい。前記重合工程2では、バルク重合や懸濁重合等の液相重合法または気相重合法が好ましく、気相重合法がより好ましい。
【0042】
本重合がスラリー重合である場合、反応溶媒としては、上述の予備重合時に用いられる不活性炭化水素媒体を用いることができ、反応温度・反応圧力において液体であるオレフィンを用いることもできる。
【0043】
本重合において、固体状チタン触媒成分(I)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、好ましくは0.0001〜0.5ミリモル、より好ましくは0.005〜0.1ミリモルの量用いられる。また、有機金属化合物触媒成分(II)は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、好ましくは1〜2000モル、より好ましくは5〜500モルの量用いられる。電子供与体成分を使用する場合、電子供与体成分は、有機金属化合物触媒成分(II)1モルに対して、好ましくは0.001〜50モル、より好ましくは0.01〜30モル、更に好ましくは0.05〜20モルの量用いられる。
【0044】
本重合を水素の存在下で行うと、得られる重合体の重量平均分子量を調節する(下げる)ことができ、メルトフローレート(MFR)の大きい重合体が得られる。重量平均分子量を調整するために必要な水素量は、使用する製造プロセスの種類、重合温度、圧力によって異なるため、適宜調整すればよい。
【0045】
前記重合工程1では、重合温度、水素量を調整することでMFRを調整できる。また、前記重合工程2においては、重合温度、圧力、水素量を調整することで極限粘度を調整することができる。
【0046】
本重合において、オレフィンの重合温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜100℃、更に好ましくは50〜90℃である。圧力(ゲージ圧)は、好ましくは常圧〜100kgf/cm
2(9.8MPa)、より好ましくは2〜50kgf/cm
2(0.20〜4.9MPa)である。
【0047】
予備重合および本重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。また、反応器の形状は、管状型、槽型のいずれも使用できる。さらに重合を、反応条件を変えて二段以上に分けて行うこともできる。この場合、管状と槽型を組合せることもできる。
【0048】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)としては、例えばブロックポリプロピレンの名称で市販されている組成物を用いることができる。具体的には、例えば「J707G」(商品名、(株)プライムポリマー製)等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0049】
[プロピレン単独重合体(B)]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(B)を0〜30質量部含有する。プロピレン単独重合体(B)は任意成分であり、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物はプロピレン単独重合体(B)を含まなくてもよい。プロピレン単独重合体(B)の含有量が30質量部を超えると、耐衝撃性が低下する。該含有量は2〜20質量部が好ましく、3〜17質量部がより好ましく、5〜15質量部が更に好ましい。
【0050】
プロピレン単独重合体(B)の荷重2.16kg、温度230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、成形性や耐衝撃性の観点から、1〜500g/10分が好ましく、5〜100g/10がより好ましく、7〜50g/10分がさらに好ましい。なお、該MFRは後述する方法により測定した値である。
【0051】
プロピレン単独重合体(B)の密度は、耐衝撃性に優れ、線膨張係数が低下する観点から、870〜930kg/m
3が好ましく、880〜920kg/m
3がより好ましく、890〜910kg/m
3が更に好ましい。なお、該密度は後述する方法により測定した値である。
【0052】
なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)にもプロピレン単独重合体が含まれる場合には、該プロピレン単独重合体とは極限粘度[η]が異なるプロピレン単独重合体をプロピレン単独重合体(B)として用いる。例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に含まれるプロピレン単独重合体の極限粘度[η]は0.2〜2.0dl/gであることができる。プロピレン単独重合体(B)の極限粘度[η]は0.5〜2.0dl/gであることができる。
【0053】
[エチレン系エラストマー(C)]
本発明で用いられるエチレン系エラストマー(C)は、エチレン単位と、炭素数4〜8のα−オレフィンの少なくとも一種の単位とを含む。なお、エチレン系エラストマー(C)はプロピレン単位を含まない。
【0054】
炭素数4〜8のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテン等が好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。エチレン系エラストマー(C)としては、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が好ましい。
【0055】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、エチレン系エラストマー(C)を5〜30質量部含有する。該含有量が5質量部未満である場合、製品の耐衝撃性が低下し、衝撃により破壊しやすくなる。一方、該含有量が30質量部を超える場合、製品の剛性が大幅に低下し、成形品とした際に外力による変形が起きやすい。また、製品の耐衝撃性が大幅に低下する。該含有量は6〜27質量部が好ましく、8〜25質量部がより好ましく、9〜22質量部がさらに好ましい。
【0056】
エチレン系エラストマー(C)の、荷重2.16kg、温度230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、製品の剛性と衝撃のバランスの観点から0.3〜40g/10分が好ましく、1〜15g/10分がより好ましく、1.5〜10g/10分がさらに好ましく、2〜5g/10分が特に好ましい。なお、該MFRは後述する方法により測定した値である。
【0057】
エチレン系エラストマー(C)の密度は、製品の剛性と衝撃のバランスの観点から850〜892kg/m
3が好ましく、853〜885kg/m
3がより好ましく、855〜880kg/m
3がさらに好ましい。なお、該密度は後述する方法により測定した値である。
【0058】
また、エチレン系エラストマー(C)として、例えば特表2013−523953号公報に開示されているエチレン・α−オレフィンマルチブロック共重合体を用いることもできる。
【0059】
[タルク(D)]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、タルク(D)を10〜40質量部含有する。該含有量が10質量部未満である場合、製品の剛性が不十分である。また、該含有量が40質量部を超える場合、耐衝撃性が低下し、脆くなる。また、二軸押出機での造粒が難しくなる。該含有量は15〜45質量部が好ましく、17〜40質量部がより好ましく、20〜35質量部がさらに好ましい。
【0060】
タルク(D)の平均粒子径は3〜6μmである。該平均粒子径が3μm未満である場合、二次凝集が発生して耐衝撃性が低下する。また、該平均粒子径が6μmを超える場合、粒子径の大きなタルクが存在するため耐衝撃性が低下する。該平均粒子径は3.1〜5.8μmが好ましく、3.3〜5.5μmがより好ましく、3.5〜5.2μmがさらに好ましい。なお、該平均粒子径は後述する方法により測定した値である。
【0061】
タルク(D)の比表面積は15〜20m
2/gである。該比表面積が15m
2/g未満である場合、剛性と耐衝撃性とのバランスが不十分となる。また、該平均粒子径が20m
2/gを超える場合、押出機での加工性が低下する。該比表面積は15〜19m
2/gが好ましく、15〜18m
2/gがより好ましく、15〜17m
2/gがさらに好ましい。なお、該比表面積はBET法により測定した値である。
【0062】
このように、本発明において用いられるタルク(D)は、平均粒子径が3〜6μmであり、比表面積が15〜20m
2/gである。このようなタルク(D)を得る方法としては、例えば、スパイラルジェットミルを用いてタルクを製造する際に、粒子同士を正面からぶつけずに、角度をつけて擦るようにぶつける方法が挙げられる。また、クラッシャー等で原石を数回粉砕後、ジェットミルにより粒子同士をぶつけてさらに細かくする際、ジェット圧を調整して破壊よりも剥離が優先的に起きるようにする方法が挙げられる。さらに、高温高圧下でタルク原料を湿式粉砕する方法が挙げられる。製造条件は、平均粒子径および比表面積が前記範囲内に含まれるように適宜設定することができる。以下、タルク(D)の製造方法の具体例について説明するが、タルク(D)の製造方法はこれらに限定されない。
【0063】
(タルク(D)の製造方法)
タルク(D)の製造方法としては、具体的には、タルク原石を所望の粒径になるまで機械的に粉砕する方法、タルク原石を機械的に粉砕後、分級する方法等が挙げられる。ここで、粉砕及び/又は分級は、各々1回のみ行っても、同一又は異なる装置を用いて2回以上行ってもよい。これらの方法の内、得られるタルク(D)の平均粒子径および比表面積を本発明の範囲内とし易く、アスペクト比定数を調整し易いことから、粉砕後に分級する方法が好ましい。以下、該方法について詳述するが、タルク(D)の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0064】
(粉砕)
タルク原石の粉砕に用いられる粉砕機としては、一般的にタルクの製造等に用いられている粉砕機を用いることができる。1つの粉砕機で1回のみ粉砕を行っても、粉砕効率を上げるためにタルク原石を粗粉砕(一次粉砕)した後、更に同一又は異なる粉砕機で微粉砕(二次粉砕)してもよい。また、粗粉砕及び微粉砕は、各々1回のみ行っても、同一又は異なる装置を用いて2回以上行ってもよいが、製造コストの観点から、粗粉砕及び微粉砕を各々1回ずつ行うのが好ましい。
【0065】
粉砕を2回に分けて行う場合、粗粉砕でタルクを微粉砕機に投入できるサイズに砕いた後、微粉砕で更に微粉化することができる。粗粉砕後のタルクの平均粒子径は、微粉砕機で粉砕し易く、微粉砕機に掛かる負荷が小さい観点から、小さい方が好ましい。粗粉砕後のタルクの平均粒子径は、10cm以下が好ましく、1cm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。粗粉砕に好適な粉砕機としては、大きな石を砕くのに適することから、ハンマークラッシャー、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー等のクラッシャータイプの乾式粉砕機が挙げられる。
【0066】
微粉砕を乾式法で行う場合には、微粉砕に適する乾式粉砕法としては、例えば、摩砕式粉砕法、衝撃式粉砕法、衝突式粉砕法等が挙げられる。摩砕式粉砕法は、タルクを磨り潰すように粉砕する手法である。摩砕式粉砕法で用いられる機械としては、VXローラーミル、5Rタイプレイモンドミル、4Rタイプレイモンドミル、竪型ミル、マスコロイダー等の石臼型粉砕機等が挙げられる。衝撃式粉砕法は、粉砕機により粉体に衝撃を与えることにより粉砕する手法である。衝撃式粉砕法で用いられる機械としては、アドマイザー、パルペライザー、ハンマーミル、ミクロンミル、ベベルインパクター、ピンミル、スーパーミクロンミル、ピンミル等が挙げられる。衝突式粉砕法は、粉体を衝突により粉砕する手法である。衝突式粉砕法で用いられる機械としては、乾式流動床式ジェットミル等のジェット型粉砕機;ネアミル、遊星ボールミル、連続式チューブミル等のボールミル等の粉砕機が挙げられる。なお、微粉砕機に分級機が内蔵されている粉砕機を用いる場合は、粉砕しながら分級を行ってもよい。
【0067】
微粉砕を湿式法で行う場合には、粗粉砕したタルク粉末をそのまま湿式粉砕しても、粗粉砕したタルク粉末を乾式法で微粉化してから湿式粉砕してもよい。しかしながら、粉砕時間を短くできる観点から、粗粉砕したタルク粉末を乾式粉砕してから湿式粉砕することが好ましく、該乾式粉砕を上述の微粉砕に適する乾式粉砕法で行ってから湿式粉砕することがより好ましい。該湿式粉砕は、例えば粗粉砕されたタルク粉末を水と接触させ、流動可能なスラリー状態で粉砕を行うことで実施できる。水接触時には、適宜分散剤を用いてもよい。湿式粉砕に適する装置としては、ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、ディスコプレックス等が挙げられる。これらのうち、過粉砕による扁平度の低下を起こさずに微粉化しやすいことから、ボールミルが好ましい。湿式粉砕後のタルク粉末は、通常、乾燥させて使用する。乾燥は、後述の分級前に行っても、分級後に行っても構わない。
【0068】
(分級)
粉砕されたタルクは、分級することによってその平均粒子径を調整することができる。分級は、乾式粉砕後に乾式の分級を行う方法、湿式粉砕後に乾燥させてから乾式分級を行う方法、乾式粉砕後に水と接触させて湿式分級を行う方法、湿式粉砕後にそのまま湿式分級を行う方法等の何れの方法で行ってもよい。分級では、分級機の条件を調節することにより、目的とする平均粒子径を有するタルクを得ることができる。分級機は、粉砕機に内蔵されていても、粉砕機とは別の装置であっても構わないが、過粉砕が起こり難いことから分級機が粉砕機と別になっていることが好ましい。また、分級前のタルクが大きい場合などには、複数回分級を繰り返してもよい。
【0069】
乾式分級機としては、例えば、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレター、風簸分級機(安川製作所製、商品名:「YACA−132」など)、ターボクラッシファーアー(日清エンジ社製など)、高精度気流分級機(日本ニューマチック社製、商品名:「DSF」、「DXF」、「UFC」など)、スラリースクリーナー等が挙げられる。また、湿式分級は、例えば、ディスコプレックス、水簸分級法等を用いて行うことができる。
【0070】
[その他の成分]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、前記プロピレン単独重合体(B)、前記エチレン系エラストマー(C)、および前記タルク(D)以外にも、例えば安定剤、帯電防止剤、耐候剤、表面滑剤、金属不活性剤、結晶造核剤等を含有してもよい。
【0071】
[プロピレン系樹脂組成物の製造方法]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、前記プロピレン単独重合体(B)、前記エチレン系エラストマー(C)、および前記タルク(D)を、本発明を満たす配合量で配合することで製造することができる。具体的には、前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、前記プロピレン単独重合体(B)、前記エチレン系エラストマー(C)、前記タルク(D)および必要に応じて前記その他の成分を、本発明を満たす配合量で配合し、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等により混合した後、2軸混練押出機、単軸押出機等により溶融混練する方法が挙げられる。該プロピレン系樹脂組成物を成形する方法としては、例えば射出成形機、プレス成型機、シート成形機等により成形する方法が挙げられる。
【0072】
[用途]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、自動車部品の材料である自動車材料として好適に使用される。自動車部品としては、例えばバンパー、インストルメンタルパネル(ダッシュボード)、ドアトリム、ピラーなどが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各評価は、以下の方法により行った。
【0074】
(1)メルトフローレート(MFR)
ISO 1133に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。
【0075】
(2)密度
ISO 1183に準拠し、水中置換法で密度を測定した。
【0076】
(3)n−デカン可溶(不溶)成分含有量
ガラス製の測定容器に、プロピレン・エチレンブロック共重合体約3g(10
−4gまで測定した。また、この質量を、下記式においてb(g)と表した)、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入した。これを窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温して、プロピレン・エチレンブロック共重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られた析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得て、この質量を10
−4gまで測定した(この質量を、下記式においてa(g)と表した)。この操作の後、n−デカン可溶(不溶)成分含有量を下記式によって決定した。
【0077】
n−デカン可溶成分含有量(質量%)=100×(500×a)/(100×b)
n−デカン不溶成分含有量(質量%)=100−100×(500×a)/(100×b)
(4)極限粘度[η]
試料をデカリンに溶解させた後、135℃のデカリン中で極限粘度[η]を測定した。すなわちサンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
【0078】
(5)常温シャルピー衝撃強度
ISO 178に準拠し、23℃、湿度50%の条件で試験片の常温シャルピー衝撃強度(kJ/m
2)を測定した。
【0079】
(6)曲げ弾性率
ISO 179に準拠し、試験片の曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0080】
(7)高速面衝撃試験
−30℃において、5m/sの速度で先端径1/2インチのロードセル付き撃芯を厚み3mmの角板の試験片に衝突させた。試験片の裏面には受け台として先端径(受け径)3インチの台を使用した。これにより、試験片の全吸収エネルギー(kJ/m
2)を求めた。
【0081】
(8)比表面積
BET法によりタルク(D)の比表面積(m
2/g)を測定した。
【0082】
(9)平均粒子径
レーザー法粒度分布測定機(商品名:「SALD−2000」、株式会社島津製作所製)を用いて、JIS R1629に準拠してタルク(D)の平均粒子径を測定した。具体的には、累積量50質量%の粒径値を粒度累積分布曲線から読みとり、平均粒子径(μm)を求めた。
【0083】
以下の実施例および比較例において、使用した各成分は、次の通りである。
【0084】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1−1):商品名:J707G、(株)プライムポリマー製、MFR:30g/10分、密度:910kg/m
3
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1−2)、(A2−1)および(A2−2)は、以下の方法により製造した。
【0085】
[製造例1]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1−2)の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを混合し、130℃で2時間反応させて均一溶液を得た。その後、該均一溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0086】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、該均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下した。滴下終了後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0087】
その後、熱濾過にて固体部を採取し、該固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間反応させた。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離チタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0088】
ここで、前記遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに前記溶液の上澄み液10mlを注射器で採取した。次に、窒素気流にて溶媒であるヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを添加し30分間攪拌した。得られた水溶液をろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃リン酸1mlと、チタンの発色試薬として3質量%H
2O
2 5mlを加えた。さらに、イオン交換水を添加して全体積を100mlにした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用いて420nmの吸光度を観測した。この吸収が観測されなくなるまで遊離チタン化合物の洗浄除去を行った。
【0089】
これにより、固体状チタン触媒成分を調製した。該固体状チタン触媒成分は、デカンスラリーとして保存した。該固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。
【0090】
(2)予備重合触媒の製造
前記固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム131mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン37.3ml、ヘプタン14.3Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちプロピレンを1000g挿入し、120分間攪拌しながら重合反応させた。反応終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁させて、固体触媒成分濃度が1.0g/Lとなるように、ヘプタンにより濃度を調整した。
【0091】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器に、プロピレンを40kg/時間、水素を58NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.50g/時間、トリエチルアルミニウムを3.6ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシランを1.4ml/時間連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合させた。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.28MPa/Gであった。
【0092】
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が1.17mol%になるように供給した。重合温度は70℃、圧力は3.03MPa/Gであった。
【0093】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.20(モル比)、水素/エチレン=0.13(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度は70℃、圧力は1.20MPa/Gであった。その後80℃で真空乾燥し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1−2)を得た。
【0094】
[製造例2]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2−1)の製造
(1)予備重合触媒の製造
製造例1と同様の方法により予備重合触媒を製造した。
【0095】
(2)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器に、プロピレンを40kg/時間、水素を222NL/時間、(1)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.42g/時間、トリエチルアルミニウムを3.0ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシランを1.1ml/時間連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合させた。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.57MPa/Gであった。
【0096】
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.5mol%になるように供給した。重合温度は69℃、圧力は3.39MPa/Gであった。
【0097】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.24(モル比)、水素/エチレン=0.022(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度は70℃、圧力は0.90MPa/Gであった。その後80℃で真空乾燥し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2−1)を得た。
【0098】
[製造例3]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2−2)の製造
(1)予備重合触媒の製造
製造例1と同様の方法により予備重合触媒を製造した。
【0099】
(2)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器に、プロピレンを43kg/時間、水素を256NL/時間、(1)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.49g/時間、トリエチルアルミニウムを4.5ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシランを1.8ml/時間連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合させた。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.57MPa/Gであった。
【0100】
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.8mol%になるように供給した。重合温度は68℃、圧力は3.36MPa/Gであった。
【0101】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.20(モル比)、水素/エチレン=0.0063(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度は70℃、圧力は1.40MPa/Gであった。その後80℃で真空乾燥し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2−2)を得た。
【0102】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)および(A2−2)のMFR、並びにn−デカン不溶(可溶)成分の含有量および極限粘度[η]について、表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
プロピレン単独重合体(B−1):商品名:J105G、(株)プライムポリマー製、MFR:9g/10分、密度:900kg/m
3、極限粘度[η]:1.5dl/g
エチレンブテンゴム(C−1):商品名:タフマーA−1050S、三井化学(株)製、MFR:2.4g/10分、密度:862kg/m
3
タルク(D−1)〜(D−3)は、以下の方法により製造した。
【0105】
[製造例4]タルク(D−1)の製造
タルク原石をジョークラッシャーおよびハンマーミルを用いて、平均粒子径10mm以下に粗粉砕した。その後、ミクロンミルを用いて平均粒子径20μm以下に粗粉化した。さらに、カウンタージェットミルを用いて平均粒子径6μm以下に微粉化し、サイクロン分級機で分級することで、タルク(D−1)を得た。
【0106】
[製造例5]タルク(D−2)の製造
タルク原石をジョークラッシャーおよびハンマーミルを用いて、平均粒子径10mm以下に粗粉砕した。その後、ミクロンミルを用いて平均粒子径20μm以下に粗粉化した。さらに、スパイラルジェットミルを用いて平均粒子径6μm以下に微粉化することで、タルク(D−2)を得た。
【0107】
[製造例6]タルク(D−3)の製造
タルク原石をジョークラッシャーおよびハンマーミルを用いて、平均粒子径10mm以下に粗粉砕した。その後、ミクロンミルを用いて平均粒子径20μm以下に粗粉化した。さらに、スパイラルジェットミルを用いて平均粒子径6μm以下に微粉化し、サイクロン分級機で分級することで、タルク(D−3)を得た。
【0108】
タルク(D−4):商品名:クラウンタルク、松村産業(株)製
タルク(D−5):商品名:HAR−T84、Lunsenac社製
タルク(D−6):商品名:D−1000、日本タルク製
タルク(D−7):商品名:JM−209、浅田製粉(株)製
タルク(D−8):商品名:TP−A20、富士タルク工業(株)製
タルク(D−1)〜(D−8)の平均粒子径および比表面積を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
[実施例1]
(A1−1)70質量部、(C−1)10質量部、および(D−1)20質量部と、全体に対し、Irganox1010(商品名、BASF社製)0.1質量%と、Irgafos168(商品名、BASF社製)0.1質量%と、ステアリン酸マグネシウム(日油(株)製)0.2質量%とを、タンブラーミキサーにてドライブレンドした。その後、2軸混練押出機(商品名:TEX30α、日本製鋼所製)にて180℃で溶融混練してペレット化した。このペレットを射出成形機にて試験片に成形し、前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0111】
[実施例2〜12、比較例1〜16]
表3、4に示される成分を使用した以外は、実施例1と同様に試験片を作製し、評価した。結果を表3、4に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】