(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配合比率決定段階で変更した前記配合比率と、前記基本データ記憶段階で記憶した前記評価項目に及ぼす影響度合いとを用いて、前記雛形データに対して、変更後の配合比率によって、マイナス評価となった評価項目を出力する段階を含むことを特徴とする請求項2に記載のクッション体詰め物材の配合比率決定方法。
前記詰め物材は、発泡体ビーズ及び綿繊維を含み、さらに、汎用ウレタン若しくは低反発ウレタン若しくはゴムを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクッション体詰め物材の配合比率決定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術は、試行錯誤によって要求仕様を満足するクッション体を製造するものであり、詰め物材やその配合比率を変えながら試験を繰り返すため多大な労力と時間を要し、その結果コストアップにもなる。
【0005】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、要求を満足するクッション体を効率的に実現することのできるクッション体詰め物材の配合比率決定方法および配合比率演算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係わるクッション体詰め物材の配合比率決定方法は、複数種類の詰め物材を含むクッション体の前記詰め物材の配合比率を演算する方法であって、
詰め物材ごとに配合比率の許容可能な範囲と、詰め物材ごとに評価項目に及ぼす影響度合いとを記憶する基本データ記憶段階と、
評価項目に関する指標データを入力する指標データ入力段階と、
前記指標データと前記影響度合いをもとに、前記許容可能な範囲において前記詰め物材の配合比率を演算する配合比率決定段階と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
また本発明に係わる配合比率演算装置は、複数種類の詰め物材を含むクッション体の前記詰め物材の配合比率を演算する配合比率演算装置であって、
詰め物材ごとに配合比率の許容可能な範囲と、詰め物材ごとに評価項目に及ぼす影響度合いとを記憶する記憶手段と、
評価項目に関する指標データを入力する指標データ入力手段と、
前記指標データと前記影響度合いをもとに、前記許容可能な範囲において前記詰め物材の配合比率を演算する配合比率決定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、発泡体ビーズ、綿繊維、ウレタン類(ウレタン系素材およびその代替素材を含む。たとえば汎用ウレタン,低反発ウレタン,ゴム)などの詰め物材ごとに配合比率の許容可能な範囲を定める。この範囲は詰め物材ごとに配合比率の基準値を定めると共にその変動可能な範囲を定めるのが好ましい。また、評価項目としては、例えば、フィット感、もちもち感、ふわふわ感というような主観的評価項目、温度抑制効果、騒音抑制効果、へたり抑制効果、コストなどの客観的評価項目がある。そして詰め物材ごとにこれらの評価項目に及ぼす影響度合いを記憶する。影響度合いとしては、たとえば詰め物材の単位含有率あたりの評価項目に対する評価ポイント値を用いることができる。指標データとしては、例えばある評価項目を上げる/下げるなどのユーザ要求を表す情報として入力することができる。そして、入力した指標データと前記影響度合いをもとに、当該指標データに影響を与える詰め物材の配合比率から優先的に許容可能な範囲で配合比率を決定していく。
【0009】
好ましくは、上記のクッション体詰め物材の配合比率決定方法および配合比率演算装置において、ある配合比率のクッション体の当該配合比率を雛形データとして記憶しておき、指標データの入力の際は雛形のクッション体に対して前記評価項目ごとの相対的な指標データを入力するのが良い。そして、入力した当該相対的な指標データと前記評価項目ごとの影響度合いをもとに、前記許容可能な範囲において前記詰め物材の配合比率を変更する。これにより、簡便に所望の詰め物材の配合比率のクッション体を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、詰め物材ごとに評価項目に及ぼす影響度合いを定め、当該影響度合いと入力された指標データをもとに当該指標データに影響を与える詰め物材の配合比率を許容可能な範囲で決定するので、よりユーザ要求に近いクッション体を効率的に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係るクッション体の第1の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
一般にクッション体91は、伸縮性を有する外装材92と該外装材92内に充填される詰め物材からなる。
【0013】
図1は、外装材92に充填される詰め物材の説明図である。この図において、詰め物材は、ウレタンチップ94、発泡体ビーズ95、および綿繊維(マイクロファイバー綿)96を略均一に混合することで形成されている。
【0014】
ちなみに、外装材92として、例えば引張り強さ116N,伸び478%(JIS L 1096 A法,カットストリップ法による。)の柔らかくてよく伸びる生地を用いて上記範囲にある混合率の詰め物材を充填するとき、生地が伸びないように詰めたときの詰め物材の質量の2.1倍程度の質量の詰め物材を充填することにより、温度、騒音に対する特性に優れ、かつ触感の良い枕などのクッション体を実現することができる。
【0015】
このような構造のクッション体91に含まれる詰め物材は、例えば、流動性、温度、騒音、へたりなどの点を評価項目として評価される。種々の試験を通してこの詰め物材は、次に述べるように評価項目に対して密に影響し合っていることがわかった。
【0016】
温度については、例えば発泡体ビーズのみに対して、発泡体ビーズに汎用ウレタンチップを混合した方が、温度上昇が抑えられる傾向にある。
【0017】
騒音については、汎用ウレタンチップの方が低反発ウレタンよりも騒音が小さく、また少量の綿の存在は騒音を弱める効果がある。このとき全詰め物材に対する綿の割合が0.2%程度から騒音抑制効果が現れ、5%(質量%、以下同様)程度まではその効果は急速に大きくなり、5%を超えると効果の伸びが鈍くなる。また、35倍ビーズよりも18倍ビーズのほうが騒音が小さく、発泡体ビーズの粒径の小さいほうが騒音抑制効果が高くなる傾向にある。
【0018】
へたりについては、発泡体ビーズ単体に比べて、汎用ウレタンチップと発泡体ビーズの混合品の方がへたりが大きい。
【0019】
さらに、クッション体の中でも枕のように肌に触れるようなものの場合は、フィット感、もちもち感、ふわふわ感というような主観的な表現で商品の特性や要求を表す場合もある。これら主観的評価項目に対しても、日々新しい素材が詰め物材として使用され、どのような詰め物材が主観的評価項目に寄与するかが研究されている。このように、詰め物材は、評価項目に対してそれぞれ密に影響し合っている。
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態は、
図2に示すコンピュータ装置(配合比率演算装置)を用いて、またはその補助により、ユーザ(製造者、販売者、顧客)の要求に合う、より適切な詰め物材配合比率を決定するものである。
【0021】
(構成)
図2において、本実施の形態のコンピュータ装置1は、データを記憶する記憶部2、データを入力する入力部4、入力部から入力されたデータや記憶部2に記憶されているデータを用いて演算処理を実行する演算部3、演算結果を出力する出力部5を有する。入力部としてはキーボード、マウス、あるいはタッチパッドなどを用いることができる。出力部5としてはプリンタやディスプレイなどを用いることができる。タッチスクリーンなど入力部4と出力部5を一体化して実現するようにしても良い。
【0022】
このコンピュータ装置1は、スタンドアロンの汎用コンピュータ装置やタブレット型のコンピュータ装置で実現することもできるが、入力部4、出力部5を端末装置として機能させ、当該端末装置と演算処理部3との間をネットワーク(図示せず)で接続することにより、クライアントサーバモデルやクラウドコンピューティング形態などにより構成するようにしても良い。
【0023】
記憶部2には、クッション体の識別情報(ID)ごとに詰め物材の配合比率を保存する雛形データベース(DB)21、詰め物材ごとに単位含有率あたりの評価項目に及ぼす影響度合いを記憶する影響度テーブル22、および詰め物材ごとに配合比率の許容可能な範囲を記憶する変動範囲設定テーブル23が基本データとして保存されている。
【0024】
演算処理部3には、入力部4や出力部5との間でデータの入出力処理を実行する入出力処理手段31、クッション体の雛形の識別情報(ID)を入力してその配合比率を抽出する雛形データ抽出手段32、評価項目に関する要求などの指標データを入力する指標データ入力手段33、指標データや影響度合いをもとに、許容可能な範囲において詰め物材の配合比率を演算する配合比率決定手段34を備えている。
【0025】
図3は雛形DB21のデータ構成例を示す。この雛形DB21において、詰め物種別としては、大きく発泡体ビーズ、綿繊維、ウレタン類があり、また種別ごとに、細分類された詰め物材が特定され、クッション体IDごとに当該細分類の詰め物材の配合比率が登録されている。なお、配合比率は、質量%や容量%など管理し易い単位系を用いることができる。
【0026】
図4は影響度テーブル22のデータ構成例を示す。
図4において、詰め物材種別、詰め物材再分類ごとに、評価項目のポイント値(評価値)が対応付けられて保存されている。ウレタン類の小粒径、大粒径は、一定の大きさの孔径、例えば5mm四方の網を通り抜けなかったものを大粒径、この網を通り抜けたものを小粒径とすることができる。評価項目としては、フィット感、もちもち感、ふわふわ感などの主観的評価項目、温度抑制効果、騒音抑制効果、へたり抑制効果などの客観的評価項目、コスト(価格)などが挙げられる。ただし、評価項目はクッション体の種類によって異なるので、
図4の例に限定されるものではない。また、主観的評価項目であるフィット感は、客観的に測定可能な詰め物材の流動性と大きく関連している。このため、主観的評価項目、客観的評価項目は共通する場合もあり、特に分けて扱う必要はない。
【0027】
これらのポイント値は、使用者へのアンケートや実験等を通して、評価項目ごとの詰め物材再分類の相対比較として取得することができる。
図4において、例えばフィット感は、枕の場合、頭にフィットする感覚を意味するが、これは、詰め物材再分類の配合比率を一定の割合増減したときの、使用者の感覚をアンケートにより数値化し、その数値を配合比率の変化幅で除し、単位配合比率あたりの評価値として導出したものである。また、騒音抑制効果は、頭をボーリング玉で模擬し、一定の高さから落下させたり、転がしたりしたときに発生する騒音の測定値から導出したものである。いずれも評価が良い方向をプラスとし最低評価値をゼロとしている。
【0028】
図5は、変動範囲設定テーブル23のデータ構成例である。配合比率の基準値に対してプラス側、マイナス側の変動許容範囲が設定されている。なお、この変動範囲は、クッション体共通で設定しても良いし、クッション体IDごとに設定しても良い。また、配合比率の基準値を設定することなく、単に下限値、上限値のみ、あるいはそれらの一方のみを設定するようにしても良い。
【0029】
(動作概要)
本実施の形態では、雛形IDに対応するクッション体サンプルを使用し、これに対する評価項目ごとの要求評価値(指標データ)を入力部4から入力するものとする。この指標データは、数値として入力することができるが、たとえば、フィット感(流動性)を「少し」向上させるなど、主観的な表現で入力し、記憶部2にあらかじめ保存した変換テーブル(図示せず)により、この主観的な表現に対応する数値を取得するようにしても良い。また、指標データで指定する評価項目は1つに限らす2つ以上であっても良い。たとえばフィット感については「少し」上げ、騒音抑制効果については「かなり」上げるなどである。複数の評価項目について指標データが入力された場合は、影響度テーブル22を参照して、その指標データ中の評価項目についてその合計ポイント値が最大になる詰め物材を抽出し、当該詰め物材の配合比率を中心に全体の配合比率を決定する。
【0030】
(配合比率の決定手順)
図6は、配合比率を決定する手順の一例を示すフローチャートである。
ユーザは、まず入力部から評価に係るクッション体の雛形IDを入力する(S101)。演算処理部3の雛形データ抽出手段32は、入出力処理手段31を介してこの雛形IDを受け取ると、記憶部2の雛形DB21から、当該雛形IDに対応する配合比率を抽出する(S102)。例えば、雛形IDがID001の場合は、発泡体ビーズとして18倍ビーズ75%、綿繊維5%、ウレタン類として汎用ウレタン(小粒径)20%というデータが抽出される。
【0031】
次に、ユーザは、入力部4から指標データを入力する(S103)。この指標データは、上述したように改善したい評価項目と改善の程度が把握可能なデータで構成されている。演算処理部3の指標データ入力手段33は、入出力処理手段31を介してこの指標データを受け取ると、影響度テーブル22にアクセスして指標データで指定された評価項目のポイント値の最も大きい詰め物材を選択する(S104)。たとえば、フィット感と騒音抑制効果が指標データとして入力された場合は、35倍ビーズ(フィット感1.5+騒音抑制0=合計1.5)が、全ての発泡体ビーズ、綿繊維、ウレタン類の中で最も大きい値となる。したがって、現状の雛形ID001の詰め物材種別の中で、発泡体ビーズの18倍ビーズを35倍ビーズに変更する。別の例で、雛形ID001において、指標データが「もちもち感」、「へたり抑制」が指定された場合は、ゴム(合計ポイント2.1)が選択される。
【0032】
次に、配合比率決定手段34は、選択した詰め物部材の配合比率を指標データに基づいて変更する。変更のしかたは、詰め物材(細分類)自体が変更になる場合と、詰め物材(細分類)は同じ場合の2通りある。以下、それぞれの手順について詳述する。
【0033】
(1)詰め物材(細分類)自体が変更になる場合
詰め物部材自体が変更になる場合は、まず雛形と同じ配合比率で変更前後の評価ポイント値について、各評価項目ごとに計算しその差分を取る。たとえば、18倍ビーズを35倍ビーズに変えた場合は、1%あたり0.5ポイントの差があるため、雛形IDの75%あたり37.5ポイントの改善となる。これが「フィット感」に対する改善の程度を満足しておれば問題ないが、ここで、仮に改善の程度を数値にしたときに10ポイントとする。この場合、変更範囲設定テーブル23を参照して、発泡体ビーズを10%減らしても要求される改善の程度を上回るため、発泡体ビーズの配合比率下限値の60%まで下げる。これでも、フィット感については30%の改善を図ることができる。
【0034】
そして、指標データに含まれている第2の評価項目である「騒音抑制効果」であり、雛形ID001に含まれている綿繊維を許容範囲最大の10%、残りを汎用ウレタン(小粒径)を上げる。これにより、第2の評価項目「騒音抑制効果」についても、綿繊維のみで5ポイントの改善を図ることができ、さらに汎用ウレタンが増える分の改善を図ることができる。
【0035】
(2)詰め物材(細分類)は同じ場合
雛形IDと同じ詰め物材(細分類)を用いるとした場合、例えば、指標データとして、「フィット感」を「少し(換算値を5ポイントとする)」良くするというデータが入力された場合は、フィット感の欄で最もポイント値の大きい詰め物材であり雛形ID001の詰め物材である、18倍ビーズが選択される、そのビーズのポイント値1を抽出する。一方、「少し」に対応するポイント値5より、(改善の程度)5÷(18倍ビーズのポイント値)1=5%だけ18倍ビーズの割合を増加させる。その他の詰め物材種別については、その分配合比率が減少することになるが、トータルの減少分を雛形データの配合比で按分して夫々の配合比率を変更する。例えば雛形データが、発泡体ビーズ75%、綿繊維5%、ウレタン20%であったとすると、変更後の配合比は、発泡体ビーズ80%、綿繊維4%、ウレタン16%となる。
【0036】
上記の2通りのやり方のいずれを採用するかは、予め決めておいても良いし、どちらで行なうかをステップS105でユーザに問合せをするようにしても良い。
配合比率決定手段34は、配合比率の演算終了後、変動許容範囲テーブル23を参照して、変更した各詰め物材種別の配合比率が変動許容範囲内か否かを判定する(S106)。そして判定の結果、変動許容範囲内の場合はこの新しい配合比率を出力部5へ出力する(S107)。
【0037】
次に、配合比率決定手段34は、新たな配合比率のポイント値と雛形の配合比率のポイント値とを比較項目ごとに比較して(S109)、新たな配合比率のポイント値の方が雛形のポイント値を下回った評価項目がある場合は、当該評価項目を出力する(S110)。
【0038】
たとえば、雛形ID001の評価項目ごとのポイント値は、詰め物材(細分類)の評価ポイントに配合比率を掛け合わせて、フィット感(75)、もちもち感(20)、ふわふわ感(5)、温度抑制(75)、騒音抑制(15)、へたり抑制(116.5)である。
一方、変更後の配合比率で、発泡体35倍ビーズを用いた場合は、上記の如く、その配合比率は、発泡体35倍ビーズ60%、綿繊維10%、汎用ウレタン小粒径30%である。したがって、詰め物部材および配合比率の変更後の評価項目ごとのポイント値はフィット感(90)、もちもち感(30)、ふわふわ感(10)、温度抑制(60)、騒音抑制(25)、へたり抑制(66)となる。これを雛形ID001の上記ポイント値と比較すると、温度抑制効果、および、へたり抑制効果が低減することになる。したがって、ステップS110でこの2つの評価項目について出力することになる。
【0039】
また、詰め物部材(細分類)を変えない場合の変更後の配合比率は、発泡体ビーズ(18倍ビーズ)80%、綿繊維4%、汎用ウレタン小粒径16%であるので、評価項目ごとのポイント値はフィット感(80)、もちもち感(16)、ふわふわ感(4)、温度抑制(80)、騒音抑制(12)、へたり抑制(123.2)となる。
したがって、フィット感をアップさせる分、もちもち感、ふわふわ感、騒音抑制効果が多少減少する。
【0040】
なお、ステップS106でNOの場合は、指標データに含まれている評価項目のポイント値が次に大きい詰め物材があるか否かを判定し、YESの場合は、当該詰め物材種別のポイント値を抽出して、ステップS105へ戻る。
上記の手順、特にデータの入力や出力の順序は、必要により任意に入れ替えることができる。
【0041】
(効果)
本実施の形態によれば、詰め物材の評価項目ごとに詰め物材の効能に応じてポイント値を定め、該ポイント値と入力された指標データをもとに当該指標データに影響を与える詰め物材の配合比率から優先的に許容可能な範囲で配合比率を決定していくので、要求を満足するクッション体を効率的に実現することができる。また、選択されたサンプルの配合比率を基準とし、相対値として入力された指標データをもとに配合比率を決定できるので、あらゆる配合比率のクッション体の全をラインナップしなくても、ユーザの要求に近いクッション体を提案することができる。したがって、試行錯誤によって比率を変えてクッション体を製造し、評価するのに比べて効率的に要求に沿ったクッション体を実現することができる。
【0042】
特に、詰め物材(細分類)が雛形と同じ場合限らず、詰め物材(細分類)自体を変更することにより、新素材を詰め物部材として使用してユーザの要求により近いクッション体を提案することが可能になる。また、ゴムをウレタン類に含めるなど、機能や特性が類似し代替可能な素材を同じ詰め物材種別に含め、配合比率決定手段はこの種別の中で指標データに含まれている評価項目のポイント値が最も高くなる素材に置換することにより、クッション体の全体の特性バランスを崩すことなく要求にあったクッション体を提案することができる。また、このようにすることにより影響度テーブルは詰め物材種別を同じくする素材の相対比較によるポイント値のみで管理でき、全種類の詰め物材全てを用いて都度サンプル試験をする煩雑さを回避することができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、第1の実施の形態との差異を中心に説明する。以下の記載で特に言及しない部分については、第1の実施の形態と同様である。
【0044】
本実施の形態の構成は、
図2のコンピュータ装置1を用いる。ただし、影響度テーブル22は、
図7に示すように、評価ポイントして負値をとるものとする。これは、クッション体の詰め物材の全体容量は決まっており、配合比率は相互に関連していることを考慮したものである。例えば、フィット感について、綿繊維を増やすことは、発泡体ビーズの配合比率は相対的に減ることに繋がり、その結果、フィット感は悪化するというものである。このため、綿繊維のフィット感は負値となる。フィット感に対するウレタン類を増やした場合の影響も同様である。また他の評価項目についても同様であり、一見、その評価項目に影響を与えないと考えられる詰め物材でも、その配合率を増やすことにより、相対的に、その評価項目のポイント値向上に貢献する詰め物材の配合比率を減らすことになり、結果その評価項目にはマイナス効果を及ぼすとしたものである。
【0045】
また本実施の形態では、雛形と同じ詰め物材(細分類)においてのみ、その配合比率を変える。また、指標データは、改善を要求する評価項目および改善の程度を一つずつ入力するか、評価項目に優先順位を付し、優先順位付けされた評価項目および改善の程度を一つずつ処理するというものである。
【0046】
図8は、本実施の形態による配合比率決定処理の手順を示すフローチャートである。
図6と同じステップ番号は、
図6の処理と同様である。
図8のステップS103aにおいて、改善を要求する評価項目および改善の程度を入力すると、
図7影響度テーブル22を参照して、雛形IDのクッション体で用いる詰め物材の中で、指標データ中の評価項目のポイント値の最も大きい詰め物材を抽出すると共にそのポイント値を抽出する(S104a)。
【0047】
いま、雛形IDとしてID001(18倍ビーズ75%、綿繊維5%、汎用ウレタン小粒径20%)、指標データとして、フィット感を「少し」(ポイント値5相当)上げるとした場合、
図7の影響度テーブル22において、18倍ビーズが他の詰め物材(綿繊維、汎用ウレタン小粒径)よりもフィット感のポイント値が大きいため、18倍ビーズとそのポイント値「1」が選択される。
【0048】
そして、ステップS105において、配合比率決定手段34は、「少し」に対応するポイント値5を18倍ビーズのポイント値1で除し、その結果5%だけ18倍ビーズの割合を増加させる。その他の詰め物材種別については、その分配合比率が減少することになるが、トータルの減少分を雛形データの配合比で按分して夫々の配合比率を変更する。雛形ID001の場合は、変更後の配合比は、発泡体ビーズ80%、綿繊維4%、ウレタン16%となる。そして、ステップ107でこの配合比率を出力する。
【0049】
次に、ステップ109aにおいて、抽出した詰め物材の中で評価項目がマイナス(負値)のものがあるか否かを判定し、YESの場合は、その評価項目を出力する(S110)。上記の例では、抽出した詰め物材(18倍ビーズ)で負値の評価項目は、もちもち感、ふわふわ感、騒音抑制であるため、これらの評価項目が出力される。このとき、簡易的には、抽出した詰め物物質(18倍ビーズ)の増加割合(5%)を各負値に掛け合わせた値が、あらかじめ定めた主観的表現「わずか」、「かなり」のどれに該当するかを判定し、該当する主観的表現で出力するようにしても良い。
そして、次の指標データがある場合は(S114a)は、再びステップ103aに戻って処理を繰り返す。
【0050】
なお、
図8のステップ106の判定の結果「NO」の場合は、変動許容範囲の限界値を設定して(S113a)、次に大きいポイント値(正値)を有する詰め物材が存在するか否かを判定し(S111a)、存在する場合は、その詰め物材についてステップS105以降の処理を実行する。
【0051】
雛形ID001の例で、仮に18倍ビーズの変更後の配合比率が許容値90%を超えていたら限界値である90%をセットすると共に、他の詰め物材(綿繊維、汎用ウレタン小粒径)の中で18倍ビーズに次いで大きい評価ポイントを有するものがあるか否かを判定することになる。雛形ID001の例では、他の詰め物材は両方とも負値であるため、ステップS111aの判定結果は「NO」となり、ステップS107へ移行して、以降の処理を実行することになる。
【0052】
(効果)
本実施の形態は、第1の実施の形態に比べて、より簡便、効率的に変更後の配合比率を演算でき、また、それに伴いポイント値が低減した評価項目を影響度テーブルを参照するのみで迅速に特定することができる。本実施の形態は、第1の実施の形態に比べて雛形のラインアップを増やし、雛形に対して詰め物材の配合比率を多少調整する程度の用途に適している。
【0053】
本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実現することができる。たとえば、変更後にポイント値が低下した評価項目を出力する際に、変更後にポイント値が上がった指標データに含まれていない評価項目についても出力するようにしても良い。また、影響度テーブルのコストデータを用いて変更前後のコスト比較情報を出力するようにしても良い。
【0054】
雛形DBを設け、雛形IDを入力するのに代えて、直接詰め物材の配合比率を入力するようにしても勿論問題ない。また単位含有率は1%単位である必要はなく、3%単位など任意の増減単位とすることができる。このとき詰め物材種別により増減単位を変えるようにしても良い。なお詰め物材や評価項目およびその評価ポイントは、対象とするクッション体により異なる可能性があることは言うまでもない。
【0055】
評価項目は上述した実施形態に限らず、実験やアンケート等により数値管理が可能な指標を用いることができる。例えば、クッション体に関する複数種類の素材の配合技術であるフレフィーマ(FLEFIMAは株式会社CCMの登録商標である。)で用いる支え(体圧分散)、なめらか(流動性)、ふわもち(ふわふわ、もちもちを組み合わせた主観的要素)などの要素によって管理するようにしても良い。