【文献】
Yushi KANEDA, et al.,Continuous-wave, single-frequency 229 nm laser source for laser cooling of cadmium atoms,Optics Letters,OSA,2016年,Vol. 41, Issue 4,pp. 705-708
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定期間では、前記レーザ電源が前記レーザ光源の定格最大出力を越えた出力電力を前記レーザ光源に供給する請求項7〜9のいずれか1項に記載の光源装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
BBO結晶、CLBO結晶では、長時間使用すると波長変換結晶そのものがダメージを受けて、変換効率が低下するという問題点がある。したがって、特許文献1では、出力光のパワーが一定となるようにフィードバック制御中に、基本波のパワーが所定値に達したら、BBO結晶をシフトしている。
【0008】
特許文献1では、基本波のパワーが所定値に達したら、波長変換結晶が劣化したと判断して、BBO結晶に対する入射光の受光位置を変化させている。このようにすることで、BBO結晶の劣化していない箇所において、波長変換光を発生させることができる。よって、変換効率の低下を防ぐことができる。
【0009】
しかしながら、非特許文献1によれば、波長変換結晶に入射光を入射させた直後では、変換効率が大きく低下してしまう。そのため、特許文献1の方法を用いた場合、BBO結晶をシフトした直後に、波長変換光の出力を安定させることができない恐れがある。
【0010】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、簡素な構成で、波長変換光の出力を安定させることができる光源装置、及び検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の一態様にかかる光源装置は、基本波を発生させるレーザ光源と、前記レーザ光源を駆動するレーザ電源と、前記基本波又はその高調波を入射光として、波長変換光を発生する少なくとも1つの非線形光学結晶と、前記波長変換光を検出する検出器と、前記非線形光学結晶に対する前記入射光の入射位置を変化させる駆動機構と、前記検出器からの検出信号に基づいて、前記波長変換光の出力が一定となるように前記レーザ電源の出力電力をフィードバック制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記出力電力が閾値を越えた場合に、前記入射位置を変化させるよう前記駆動機構を制御し、前記入射位置が変化した後の所定期間、前記出力電力が前記閾値を越えたとしても前記入射位置が変化しないよう、前記駆動機構を制御するものである。簡素な構成で、波長変換光の出力を安定させることができる。
【0012】
上記の光源装置において、前記非線形光学結晶がBBO結晶であることが好ましい。
【0013】
上記の光源装置において、前記レーザ光源が連続出力で動作することが好ましい。
【0014】
上記の光源装置において、前記所定期間では、前記レーザ電源が前記レーザ光源の定格最大出力を越えた出力電力を前記レーザ光源に供給することが好ましい。これにより、定格最大出力の低いレーザ光源を用いることができる。
【0015】
本実施の形態にかかる検査装置は、上記の光源装置と、前記光源装置からの前記波長変換光により照明された検査対象を撮像する撮像装置と、を備えたものである。これにより、安定して照明することができるため、安定した検査が可能となる。
【0016】
上記の検査装置において、前記検査対象を検査していない非検査時において、前記駆動機構により前記入射光の前記入射位置を変化させて、前記入射光を前記前記非線形光学結晶に入射させるようにしてもよい。
【0017】
本実施の形態にかかる光源装置の制御方法は、基本波を発生させるレーザ光源と、前記レーザ光源を駆動するレーザ電源と、前記基本波又はその高調波を入射光として、波長変換光を発生する少なくとも1つの非線形光学結晶と、前記波長変換光を検出する検出器と、前記非線形光学結晶に対する前記入射光の入射位置を変化させる駆動機構と、を備えた光源装置の制御方法であって、前記検出器からの検出信号に基づいて、前記波長変換光の出力が一定となるように前記レーザ電源の出力電力をフィードバック制御する工程と、前記出力電力が閾値を越えた場合に、前記入射位置を変化させるよう前記駆動機構を制御する工程と、前記入射位置が変化した後の所定期間、前記出力電力が前記閾値を越えたとしても前記入射位置が変化しないよう、前記駆動機構を制御する工程と、を備えたものである。簡素な構成で、波長変換光の出力を安定させることができる。
【0018】
上記の制御方法において、前記非線形光学結晶がBBO結晶であることが好ましい。
【0019】
上記の制御方法において、前記レーザ光源が連続出力で動作することが好ましい。
【0020】
上記の制御方法において、前記所定期間では、前記レーザ電源が前記レーザ光源の定格最大出力を越えた出力電力を前記レーザ光源に供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡素な構成で、波長変換光の出力を安定させることができる光源装置、検査装置、及び光源装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施の形態にかかる光源装置は、例えば、波長変換素子(非線形光学結晶)によって、波長変換光を発生する。本実施の形態では、フォトマスクなどの半導体検査装置の照明光源として用いられる光源装置について説明するが、光源装置の用途は検査装置に限られるものではない。
【0024】
本実施の形態にかかる光源装置100について、
図1を用いて説明する。
図1は、光源装置100の構成を示す図である。光源装置100は、レーザ光源11と、レーザ電源12と、モータドライバ13と、制御PC14と、モータ15と、ステージ16と、レンズ17と、外部共振器20と、ミラー31と、ミラー32と、ビームサンプラ33と、検出器34を備えている。
【0025】
レーザ光源11は、基本波であるレーザ光L1を発生する。レーザ光源11が発生するレーザ光L1が、後述する波長変換結晶26に入射する入射光となる。具体的には、レーザ光源11は、波長488nmの連続出力の青色レーザ光を発生する。波長488nmのレーザ光L1は縦シングルモードである。
【0026】
レーザ電源12は、レーザ光源11を駆動するための電力を出力する。すなわち、レーザ電源12がレーザ光源11に電力を供給することで、レーザ光源11がレーザ光L1を生成する。後述するように、制御PC(パーソナルコンピュータ)14がレーザ電源12の出力電力を制御する。
【0027】
レーザ光源11からのレーザ光L1は、レンズ17を介して、外部共振器20に入射する。外部共振器20は、4つの光学鏡21〜24を有するリング型の外部共振器である。光学鏡21〜24は高反射ミラーである。光学鏡21、光学鏡22は、平面鏡となっている。光学鏡23、及び光学鏡24は凹面鏡となっている。外部共振器20は、さらに、非線形光学結晶26と、アクチュエータ25とを有している。外部共振器20の内部に非線形光学結晶26が配置されている。
【0028】
基本波のレーザ光L1は、部分反射ミラーである光学鏡21の裏面から、外部共振器20内に導かれる。外部共振器20内に導入されたレーザ光L1は、光学鏡22、光学鏡23、光学鏡24、光学鏡21での反射を順番に繰り返していく。これにより、レーザ光L1が共振するため、レーザ光L1の強度を高くすることができる。また、光学鏡22には、外部共振器長を調整するためのアクチュエータ25が取り付けられている。制御PC14が、アクチュエータ25を適切に制御することにより共振が保たれる。これにより、外部共振器20内では、レーザ光L1は入射パワーの50倍以上に増強される
【0029】
さらに、光学鏡23から光学鏡24までの間には、非線形光学結晶26が配置されている。非線形光学結晶26は、例えば、BBO結晶、LBO(LiB
3O
5)結晶、CLBO結晶などを用いることができる。非線形光学結晶26は、レーザ光L1を波長変換して、波長変換光L2を発生させる。ここでは、非線形光学結晶26としてBBO結晶を用いている。非線形光学結晶26は、レーザ光L1の第2高調波を波長変換光L2として発生する。したがって、波長変換光L2は波長244nmの紫外レーザ光となる。非線形光学結晶26の角度と温度を適切に維持することで第2高調波発生に対する位相整合条件が満たされる。これにより、波長244nmの波長変換光L2を数10%の変換効率で発生することができる。
【0030】
そして、非線形光学結晶26で発生した波長変換光L2は、光学鏡24から取り出される。光学鏡24には、波長488nmに対して高反射、波長244nmに対して反射防止の膜が施されている。なお、光学鏡24として、レーザ光L1を反射して、波長変換光L2を透過するダイクロイックミラー等を用いてもよい。
【0031】
外部共振器20から取り出された波長変換光L2は、ミラー31、32で反射して、ビームサンプラ33に入射する。ビームサンプラ33は、波長変換光L2の一部を透過して、一部を反射する。ビームサンプラ33を透過した波長変換光L2は、フォトマスクの検査で利用される出力光L3となる。例えば、ビームサンプラ33を透過した出力光l3は、後述するように検査装置の照明光として利用される。ビームサンプラ33で反射した波長変換光L2は、検出器34に入射する検出光L4となる。なお、ビームサンプラ33は、検出器34が検出できる程度の光量の検出光L4を取り出せればよい。
【0032】
検出器34は、フォトダイオードやフォトマルチプライア等である。検出器34は、検出光L4に応じた検出信号を制御PC14に出力する。検出器34は、検出光L4の検出光量に基づいた検出信号を生成して、制御PC14に出力する。制御PC14は、検出信号に基づいて、レーザ電源12の出力電力を制御する。
【0033】
具体的には、検出器34での検出光量が一定となるよう、レーザ電源12の出力電力を調整する。制御PC14は、波長変換光L2の出力が一定となるように、フィードバック制御を行う制御部となる。検出器34からの検出信号の信号強度が下がると、制御PC14は、レーザ電源12の出力電力を高くする。これにより、レーザ光L1の出力が高くなるため、波長変換光L2の出力が一定に保たれる。一方、検出器34からの検出信号の信号強度が上がると、制御PC14は、レーザ電源12の出力電力を低くする。これにより、レーザ光L1の出力が低くなるため、波長変換光L2の出力が一定に保たれる。このように、非線形光学結晶26からの波長変換光L2の光強度が一定になるように、制御PC14がフィードバック制御を行う。
【0034】
また、非線形光学結晶26は、ステージ16の上に載置されている。ステージ16はモータ15が取り付けられた駆動ステージである。モータ15は、ステッピングモータやサーボモータであり、モータドライバ13に接続されている。モータドライバ13は、制御PC14からの制御信号によりモータ15を動作させる。すなわち、ステージ16、モータ15、及びモータドライバ13は、非線形光学結晶26におけるレーザ光の入射位置を変化させるための駆動機構となる。具体的には、モータ15は、ステージ16を光軸と直交する方向に移動させる。これにより、非線形光学結晶26におけるレーザ光の入射位置がシフトする。
【0035】
このようにすることで、非線形光学結晶26における入射光の入射位置を変えることができる。すなわち、モータ15がステージ16を移動することで、ステージ16の上に固定された非線形光学結晶26が移動する。よって、レーザ光L1が、非線形光学結晶26の異なる位置に入射するようになる。
【0036】
制御PC14は、検出信号に基づいて、モータドライバ13を制御する。制御PC14は、非線形光学結晶26に対するレーザ光L1の入射位置を制御する。なお、制御PC14によるレーザ光L1の入射位置の制御については後述する。
【0037】
ここで、非線形光学結晶26に入射する入射光の出力を一定とした場合に、波長変換光L2の出力変動について、
図2を用いて、説明する。
図2は、非線形光学結晶26に入射する入射光(すなわち、レーザ光L1)の出力を一定とした場合の、波長変換光L2の出力の時間変化を示すグラフである。なお、入射光の出力は、レーザ電源12がレーザ光源11に供給する出力電力に対応している。つまり、
図2では、レーザ電源12がレーザ光源11に一定の出力電力を供給した場合の、波長変換光L2の出力変化を示している。
図2では、上段に入射光(レーザ光L1)の出力(W)を示し、下段に波長変換光L2の出力(W)を示している。なお、
図2では、入射光の出力を1Wで一定としている。
【0038】
ここでは、タイミングT11、T13で、モータ15が非線形光学結晶26に対する入射光の入射位置をシフトしている。そして、
図2では、入射光の入射位置を変えた直後の一定期間を期間A1、A2として示している。また、期間A1、期間A2の後、次に入射光の入射位置を変えるまでの期間を期間B1、B2として示している。すなわち、期間B1は、期間A1の終端(T12)から次に入射位置を変えるタイミング(T13)の期間となる。
【0039】
入射光の入射位置を変えた直後のシフトタイミングT11、T13では、変換効率が急激に低下するため、波長変換光L2の出力が最も低くなる。具体的には、シフト直後では、波長変換光L2の出力が0.2W程度となる。そして、入射位置を変えた後の期間A1、A2では、時間とともに波長変換光の出力が徐々に上昇する。期間A1、及び期間A2の終端(T12、T14)では、波長変換光L2の出力が0.3Wに到達して飽和する。
【0040】
そして、期間A1、A2の後の期間B1、B2では、徐々に波長変換光の出力が徐々に減少していく。すなわち、期間B1、B2では、レーザ光L1の照射によって非線形光学結晶26が劣化していくため、変換効率が徐々に低下していく。例えば、200時間経過すると、変換効率が10%低下して、0.27Wとなる。
【0041】
このように、入射光の入射位置をシフトしたシフトタイミングT11、T13で、変換効率が大幅に低下する。例えば、波長変換効率が30%程度低下する。
図3に、シフトタイミングからの波長変換光L2の出力変化を示す。
図3では横軸が時間(hr)、縦軸が波長変換光L2の出力(a.u.)となっている。
図3に示すように、シフトタイミング(0:00)では、波長変換光L2の出力が最も低くなっている。そして、波長変換光L2の出力が徐々に増加して、2時間程度経過すると、ほぼ元の出力に戻る。さらに、シフトタイミングから6時間経過後(6:00)程度で波長変換光L2の出力が最大となる。
【0042】
特許文献1に示した制御方法では、出力光が一定のパワーとなるようにフィードバック制御している。そして、フィードバック制御中に、入射光のパワーが所定値に到達すると、入射位置をシフトしている。しかしながら、上記のように、シフトタイミングにおいて、変換効率が大幅に低下する。このため、出力光のパワーを一定にしようとすると、シフトタイミングの直後では、入射光の出力を大幅に上昇させる必要がある。シフトタイミングの直後において、入射光の入射位置をさらに変える必要が生じる。よって、特許文献1の制御方法では、入射光の入射位置を安定させることができず、出力の安定化が困難になる
【0043】
そこで、本実施の形態では、制御PC14が、以下に示す制御により、出力を安定させている。
図4を用いて、本実施の形態にかかる制御方法について説明する。
図4は、波長変換光L2の出力を一定となるよう制御した場合の、入射光(レーザ光L1)の出力の時間変化を示すグラフである。
【0044】
制御PC14は、波長変換光L2の出力が一定となるよう、フィードバック制御を行っている。すなわち、検出器34からの検出信号が一定値となるように、制御PC14は、レーザ電源12の出力電力を制御している。ここで、レーザ電源12がレーザ光源11に出力する出力電力が入射光の出力に対応する。さらに、本実施の形態では、入射光の出力に対して閾値THが設定されている。そして、制御PC14は、レーザ電源12の出力電力(入射光の出力)と閾値THを比較する。入射光の出力が閾値THに到達したら、制御PC14は、非線形光学結晶26に対する入射光の入射位置をシフトするよう、モータドライバ13を制御する。すなわち、入射光の出力が閾値THを越えたら、モータ15がステージ16を駆動して、非線形光学結晶26を移動させる。
【0045】
図4では、タイミングT1、T3が、非線形光学結晶26をシフトさせるシフトタイミングとなっている。タイミングT1、T3では、変換効率が大幅に低下する。波長変換光L2の出力を一定とするために、タイミングT1、T3において、入射光の出力が最大となっている。そして、非線形光学結晶26をシフトした直後の期間C1、C2では、徐々に変換効率が上昇する。例えば、タイミングT2から変換効率が回復する。同様に、タイミングT4から変換効率が回復する。よって、期間C1、C2では、入射光出力が徐々に低下していく。なお、期間C1は、シフトタイミングT1からタイミングT2までの期間であり、期間C2はタイミングT3からタイミングT4までの期間である。
【0046】
期間C1、C2の少なくとも一部では、入射光の出力が閾値THを越えている。そのため、本実施の形態では、シフトタイミング直後の一定の期間C1、及び期間C2では、入射光の出力が閾値THを越えていたとしても、非線形光学結晶26が移動しない。すなわち、入射位置が変化した後の所定の期間C1、及び期間C2において、レーザ電源12が供給する出力電力が閾値THを越えたとしても、入射位置が変化しないよう、制御PC14が制御する。すなわち、期間C1、及び期間C2では、モータ15が停止するように、制御PC14が制御を行う。このようにすることで、ステージ16の位置を固定することができる。よって、非線形光学結晶26のシフト直後に、一時的に変換効率が低下した場合でも、非線形光学結晶26に対するレーザ光L1の入射位置が一定となる。よって、安定して波長変換光L2を発生させることができる。期間C1、及び期間C2の時間は予め設定しておけばよい。例えば、期間C1、期間C2として2時間〜6時間程度の時間を設定することができる。
【0047】
一方、期間C1及び、期間C2の終了後において、すなわち、期間D1、及び期間D2において、入射光の出力が閾値THを越えたら、制御PC14は、モータドライバ13を制御して、入射位置をシフトさせる。すなわち、期間C1の後の期間D1、及び期間C2の後の期間D2では、制御PC14が入射光の出力と閾値THを比較し、比較結果に応じて、非線形光学結晶26をシフトさせる。例えば、
図4では、タイミングT3、T5の直前において、入射光の出力が閾値THを越える。したがって、タイミングT3、T5の直前において、制御PC14は、入射位置を変えるように、モータドライバ13を制御する。
【0048】
このようにすることで、レーザ光L1の照射により非線形光学結晶26がある程度劣化すると、非線形光学結晶26の別の箇所に入射位置が移動する。非線形光学結晶26に未使用箇所にレーザ光L1を照射することができる。よって、高い変換効率で、安定して波長変換光L2を発生させることができる。非線形光学結晶26の変換効率の著しい低下を防ぐことができるため、レーザ電源12からレーザ光源11に供給される出力電力量を少なくすることができる。よって、波長変換光L2を安定して発生させることができる。
【0049】
また、期間C1、期間C2においては、レーザ電源12からレーザ光源11に供給される出力電力が一時的に高くなる。しかしながら、期間C1、期間C2は、上記の通り、1〜6時間程度である。一方、期間D1、及び期間D2は、100〜200時間である。期間C1、及び期間C2は、期間D1、及び期間D2に比べて十分短い。したがって、短時間であれば、レーザ光源11が定格最大出力以上でレーザを発振させたとしても、問題がない。
【0050】
例えば、
図4において、定格最大出力が1Wであるレーザ光源11を用いた場合、期間C1、及び期間C2の一部では、定格最大出力を越えてしまう。例えば、タイミングT1、T3では、入射光出力が1.16Wとなる。しかしながら、定格最大出力を越える時間は、最大2時間程度であり、全動作時間(200時間程度)の1%程度にすぎない。よって、レーザ光源11に対する負荷の増大は、装置寿命に対して、ほとんど影響がない。
【0051】
なお、レーザ光源11を常時、定格最大出力1W以下で動作させようとする場合について考える。
図2、
図4に示すような特性を有する非線形光学結晶26を用いた場合において、出力を安定化させようとすると、最も変換効率が低いタイミング、すなわちシフトタイミング直後の出力で安定させる必要が生じてしまう。すなわち、定格最大出力1W以下で動作させた場合、0.2Wの出力光しか得ることができなくなる。
【0052】
一方、本実施の形態のように、期間C1、期間C2において、定格最大出力1Wを越えてレーザ光源11を動作させるようにすれば、0.27Wの出力光を安定して得ることができる。短時間だけ10〜20%の範囲で定格最大出力を越えて動作させることで、より高い出力の波長変換光L2を安定して得ることができる。
【0053】
具体的には、
図4では、定格最大出力(1W)を16%(1.16W)越えた値が、全動作期間を通じた入射光の最大出力となっている。このように、レーザ電源12がレーザ光源11の定格最大出力を越えた出力電力を一時的にレーザ光源11に供給する。よって、比較的小型のレーザ光源11を用いた場合でも、高出力の波長変換光L2を得ることができる。また、定格最大出力を越える時間は、上記のように、全動作時間に比べて十分に短いため、レーザ光源11に対する影響は小さい。
【0054】
なお、入射位置をシフトするための閾値THの値については、予め適切な値を設定することが好ましい。具体的には、変換効率が最大変換効率の90%程度に低下したタイミングでシフトするような閾値THを設定することが好ましい。すなわち、入射光出力が最低となるタイミング(例えば、T2)から5%〜10%増加した値を閾値THとして用いることが好ましい。
【0055】
また、入射光出力が閾値THを越えたとしても非線形光学結晶26をシフトさせない期間C1、C2については、入射光の出力などに応じて、適切な時間を設定することができる。また、非線形光学結晶26の材料に応じて、期間C1、C2の長さを設定してもよい。入射光出力が閾値を越えたとしても非線形光学結晶26をシフトさせない期間は、例えば、6時間未満とすることが好ましい。
【0056】
上記の説明では、非線形光学結晶26がBBO結晶であったが、非線形光学結晶26は、BBO結晶に限定されるものではなく、LBO結晶やCLBO結晶であってもよい。非線形光学結晶26が波長488nm光を波長244の第2高調波に変換したが、波長は上記の例に限定されるものではない。また、レーザ光源11は連続発振のレーザに限らず、パルスレーザであってもよい。
【0057】
なお、上記の光源装置100では、外部共振器20の内部に、非線形光学結晶26を配置したが、非線形光学結晶26の配置はこれに限られるものではない。基本波のレーザ光L1、又はその高調波が入射する光路に非線形光学結晶26が配置されていればよい。すなわち、光源装置100には、基本波又はその高調波を入射光として、波長変換光を発生する非線形光学結晶26が少なくとも1つ設けられていればよい。例えば、非線形光学結晶26は2つ以上設けられていてもよい。また、共振器を用いないパルスレーザであってもよい。あるいは、内部変換方式によるパルスあるいは連続発振レーザであってもよい。
【0058】
次に、本実施の形態にかかる光源装置100を用いた検査装置の構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、検査装置300の全体構成を示す図である。
図5に示す検査装置300は、半導体製造の露光工程に用いられるマスクの検査装置である。なお、検査対象であるフォトマスクは、主に193nmのDUV光を露光波長とするリソグラフィーに用いられる。もちろん、検査対象はフォトマスクに限定されるものではない。
【0059】
図5に示すように、検査装置300は、光源装置100、レンズ302a〜302d、均一化光学系303a、303b、λ/2波長板304、偏光ビームスプリッタ305、λ/4波長板306、対物レンズ307、結像レンズ311、二次元光検出器312、ハーフミラー313a、ミラー313b〜313c、コンデンサーレンズ314、3λ/4波長板315を有している。
【0060】
光源装置100はP波である照明光L111を発生する。照明光L111は、
図1の出力光L3に相当する。照明光L111はハーフミラー313aにより2本の照明光に分岐される。ここで、ハーフミラー313aを透過した照明光L111は、反射照明用レーザ光L301となり、ハーフミラー313aで反射した照明光L111は、透過照明用レーザ光L306となる。
【0061】
反射照明用レーザ光L301は、レンズ302aで集光され、均一化光学系303aに入射する。均一化光学系303aには、例えば、ロッド型インテグレータと呼ばれるものなどが適する。
【0062】
均一化光学系303aから、空間的に強度分布が均一化された反射照明用レーザ光L301が出射する。反射照明用レーザ光L301は、レンズ302bを通り、λ/2波長板304を通ることによって偏光方向が90度回転してS波となる。そして、S波となった反射照明用レーザ光L301は、偏光ビームスプリッタ305に入射し、反射照明用レーザ光L302のように
図5の下方に反射する。反射照明用レーザ光L302は、λ/4波長板306を通って円偏光の反射照明用レーザ光L303になる。反射照明用レーザ光L303は、対物レンズ307を通ってマスク308のパターン面309内の観察領域310を照明する。なお、以上は反射照明と呼ばれる照明系である。そして、マスク308のパターン面309で反射して上方に進む反射光がレーザ光L304となる。
【0063】
一方、光源装置100から供給された透過照明用レーザ光L306は、ミラー313bで反射される。ミラー313bで反射した透過照明用レーザ光L306は、レンズ302cで集光され、均一化光学系303bに入射する。均一化光学系303b内を進むことで、空間的に強度分布が均一化された透過照明用レーザ光L307が出射する。透過照明レーザ光L307はレンズ302dを通過し、ミラー313cで反射し、3/4波長板315を通過して、円偏光の透過照明レーザ光L308のようになる。そして、透過照明用レーザ光L308は、コンデンサーレンズ314を通り、マスク308のパターン面309内の観察領域310を照射する。なお、以上は透過照明と呼ばれる照明系である。マスク308を通過して、上方に進む透過光は、レーザ光L304となる。
【0064】
マスク308を反射したレーザ光L304、又はマスク308を透過したレーザ光L304は、対物レンズ307を通過後、λ/4波長板306を通過して直線偏光に戻る。上方に進むレーザ光L304は、下方に進む透過照明用レーザ光L302とは偏光方向が直交するP波となり、偏光ビームスプリッタ305を透過する。その結果、レーザ光L305のように進んで結像レンズ311を通過して二次元光検出器312に当たる。したがって、二次元光検出器312は、波長変換光により照明されたマスク308を撮像する。観察領域310を二次元光検出器312上に拡大投影させて、パターン検査する。なお、二次元光検出器312としては、CCDセンサ、CMOSセンサ、又はTDIセンサなどの撮像装置を用いることができる。
【0065】
上記のように、光源装置100は、波長変換光L2である照明光L111を安定して発生させることができる。よって、高い精度で欠陥を検出することができる。
【0066】
ここで、検査装置300の非検査時において、光源装置100は、非線形光学結晶26をシフトして、レーザ光を非線形光学結晶26に照射している。これにより、シフトタイミング直後に変換効率が一時的に低下する期間に検査を行わないようにすることができる。すなわち、マスク308を検査していないときに、非線形光学結晶26をシフトして、レーザ光L1を非線形光学結晶26に照射する。具体的には、非線形光学結晶26をシフトした後、2〜6時間程度、レーザ光L1を非線形光学結晶26に照射する。こうすることで、シフトタイミング直後の変換効率の一時的な低下が回復する。そして、照射が終わった後、検査を再開する。
【0067】
非検査時では、波長変換光L2の出力が一定となるようにフィードバック制御を行わなくてもよい。よって、レーザ光源11の出力が最大定格電力を越えない範囲で、レーザ光L1を非線形光学結晶26に照射することができる。このようにすることで、シフトタイミング直後に一時的に落ち込んだ変換効率を非検査時に回復することができる。最大定格電力を越えないようにレーザ光源11が動作したとしても、検査時における波長変換光L2の出力を安定化させることができる。換言すると、検査時、及び非検査時の全体を通じて、最大定格電力を越えないようにレーザ光源11を動作させることが可能になる。非検査時は検査時よりも、レーザ電源12の出力電力が低出力となるアイドリングを行う。
【0068】
例えば、一定期間検査を行わない場合、オペレータが制御PC14の入力装置を操作して、非検査モードを指定する。すると、制御PC14が非線形光学結晶26をシフトして、レーザ光源11の定格最大出力内でレーザ光L1を非線形光学結晶26に照射する。このようにすることで、非検査時に、変換効率の一時的な低下を回復することができる。レーザ光L1を一定時間、非線形光学結晶26に照射したら、制御PC14はレーザ光源11が動作いないように制御してもよい。
【0069】
あるいは、変換効率の一時的な低下を回復できる程度に予め非線形光学結晶26の一か所又は複数箇所にレーザ光L1を照射しておいてもよい。具体的には、検査装置300に光源装置100を設置する前に、1時間〜6時間程度、レーザ光L1を非線形光学結晶26に照射して、その照射位置を制御PC14に記憶させておく。そして、検査装置300に光源装置100を設置する。検査時において、制御PC14に記憶された照射位置にレーザ光L1が照射するように、ステージ16を精度よく移動させる。このようにすることで、シフト直後の変換効率を抑制することができる。
【0070】
本実施形態によれば、非線形光学結晶26を用いてレーザ光を短波長化した光源装置100において、低コストで信頼性の高い光出力制御を実現することができる。半導体検査用の光源装置100においては、被測定物への照射光量が多少でも変動すると、測定データにばらつきが生じ、正確な検査結果が得られなくなる。また、長期間に渡っての出力安定性も求められる。このため、本実施形態に係る光源装置100によって、レーザ光の光量を安定化させることができる。よって、光源装置100からの波長変換光L2によって、検査対象を照明することで、安定した検査が可能となる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。