(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記付着予定位置と前記吸引孔とが重なるとき、前記付着予定位置が前記吸引孔の中心位置に近いほど、前記ノズルからのインクの吐出タイミングを早くすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記制御部は、前記搬送ベルトによるシートの搬送中に、当該搬送中のシートに吐出したインクの吐出量が予め定められた閾値量を超えたとき、前記吸引部の吸引力を印刷前よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<画像形成装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、シートSを搬送するための搬送路10を備える。搬送路10は、メイン搬送路1Aと両面印刷用搬送路1Bとに分類される。メイン搬送路1Aは、給紙位置P1から、レジスト位置P2および印刷位置P3をこの順番で経由し、排出位置P4に至る。両面印刷用搬送路1Bは、印刷位置P3よりもシート搬送方向下流側の位置DPにおいてメイン搬送路1Aから分岐し、レジスト位置P2よりもシート搬送方向上流側の位置UPにおいてメイン搬送路1Aに合流する。両面印刷用搬送路1Bは、シートSの一方面にのみ画像を印刷する片面印刷の実行時には使用されず、シートSの一方面に画像を印刷してからシートSの一方面とは逆の他方面にも画像を印刷する両面印刷の実行時に使用される。
図1では、シートSの搬送経路を破線で示すとともに、シートSの搬送方向を矢印で示す。
【0015】
また、画像形成装置100は、搬送部20および印刷部30を備える。搬送部20は、搬送路10に沿ってシートSを搬送する。印刷部30は、搬送路10に沿って搬送されているシートSに画像を印刷する。
【0016】
搬送部20は、給紙ローラー対21および給紙側搬送ローラー対22を備える。給紙ローラー対21は、給紙位置P1に設置される。給紙側搬送ローラー対22は、給紙位置P1とレジスト位置P2との間に設置される。給紙側搬送ローラー対22の設置数は複数でもよいし1つでもよい。
【0017】
給紙ローラー対21は、給紙位置P1においてシートカセットCAからシートSを引き出し搬送路10に供給する(1次給紙を行う)。また、給紙ローラー対21は、搬送路10に供給したシートSを搬送路10に沿って搬送する。給紙側搬送ローラー対22は、給紙ローラー対21と共に搬送路10に沿ってシートSを搬送する。これにより、給紙位置P1からレジスト位置P2に向けてシートSが搬送される。
【0018】
また、搬送部20は、レジストローラー対23を備える。レジストローラー対23は、レジスト位置P2に設置される。レジストローラー対23は、給紙位置P1から搬送されてくるシートSを印刷位置P3に向けて搬送する(2次給紙を行う)。言い換えると、レジストローラー対23は、後述するベルトユニット24にシートSを供給する。
【0019】
なお、レジストローラー対23は、レジスト位置P2にシートSが到達した時点では回転を停止している。これにより、シートSの進行が一旦停止され、そのときにシートSの斜行が矯正される(シートSの先端部分が撓む)。そして、レジストローラー対23は、シートSの進行を予め定められた斜行矯正時間が経過するまで一旦停止させてから、レジスト位置P2に到達したシートSの印刷位置P3への搬送(2次給紙)を開始する。
【0020】
また、搬送部20は、ベルトユニット24(「ベルト搬送部」に相当)を備える。ベルトユニット24は、印刷位置P3に設置される。そして、ベルトユニット24は、印刷位置P3においてシートSを搬送する。印刷部30によるシートSへの画像の印刷は、ベルトユニット24により搬送されるシートSに対して行われる。
【0021】
ベルトユニット24は、搬送ベルト241、駆動ローラー242および従動ローラー243を備える。搬送ベルト241は、搬送ベルト241の厚み方向に貫通するよう形成された吸引孔241a(
図2参照)を複数有する。また、搬送ベルト241は、無端ベルトであり、駆動ローラー242および従動ローラー243によって張架される。搬送ベルト241は、駆動ローラー242が回転することによって駆動(周回)する。
【0022】
ベルトユニット24に供給されたシートSは、搬送ベルト241の外周面上に載置される。このとき、搬送ベルト241は駆動している。これにより、搬送ベルト241上に載置されたシートSがシート搬送方向に搬送される。
【0023】
また、搬送部20は、吸引ユニット25(「吸引部」に相当)を備える。吸引ユニット25は、搬送ベルト241の内周面側に配置される。吸引ユニット25は、搬送ベルト241の内周面側において負圧を発生させ、搬送ベルト241上のシートSを搬送ベルト241のシート載置面に向けて吸引する。
【0024】
吸引ユニット25は、
図3に示すように、箱状部材からなる圧力室251を備える。圧力室251の上面側には、板厚方向に貫通する貫通孔252aが形成された蓋部材252が設置される(圧力室251の上面の開口が蓋部材252によって塞がれる)。圧力室251の下面側には、ファン253が設置される。圧力室251は、ファン253が駆動(回転)することにより、負圧が発生した状態となる。
【0025】
圧力室251に負圧が発生すると、当該発生した負圧により、搬送ベルト241上の空気が吸引孔241aを介して圧力室251に吸引される。搬送ベルト241上にシートSが載置されている場合には、吸引力がシートSに作用するので、搬送ベルト241のシート載置面にシートSが吸着する。
【0026】
なお、圧力室251は、仕切板251aによって複数に区分けされる。すなわち、圧力室251は複数存在する。蓋部材252は複数の圧力室251の各上面側にそれぞれ設置され、ファン253は複数の圧力室251の各下面側にそれぞれ設置される。すなわち、吸引ユニット25は、それぞれが独立して負圧を発生させる複数の負圧発生部を含む。以下、複数の負圧発生部にそれぞれ符号250を付して説明する。
【0027】
吸引ユニット25に複数の負圧発生部250を設ける場合には、
図4に示すように、吸引ユニット25の吸引対象エリアを複数に分割し、当該分割した吸引対象エリアごとに吸引力(負圧発生部250に発生させる負圧)を異ならせることができる。
図4では、各吸引対象エリアを太線で示し、搬送ベルト241を破線で示す。
【0028】
なお、負圧発生部250の設置数は特に限定されない。また、負圧発生部250の配置パターンも特に限定されない。たとえば、複数の負圧発生部250をシート搬送方向または当該方向と直交する方向に一列に並べてもよい。
【0029】
図1に戻って、搬送部20は、排出側搬送ローラー対26を備える。排出側搬送ローラー対26は、印刷位置P3と排出位置P4との間に設置される。たとえば、排出側搬送ローラー対26の設置数は複数である。
【0030】
排出側搬送ローラー対26は、ベルトユニット24から搬送されてくるシートS(画像が印刷された印刷済みシートS)を排出位置P4に向けて搬送する。なお、排出位置P4には排出トレイETが設置される。そして、排出側搬送ローラー対26は、印刷済みシートSを搬送し、印刷済みシートSを排出トレイETに排出する。
【0031】
また、搬送部20は、両面印刷用搬送ローラー対27(スイッチバックローラー対27Sを含む)を備える。両面印刷用搬送ローラー対27は、両面印刷用搬送路1Bに設置される。たとえば、両面印刷用搬送ローラー対27の設置数は複数である。両面印刷用搬送ローラー対27は、両面印刷の実行時に使用する搬送ローラー対であり、両面印刷用搬送路1Bに沿ってシートSを搬送する。
【0032】
ここで、両面印刷について説明する。両面印刷用搬送路1Bは、第1搬送路11Bと第2搬送路12Bとに分類される。第1搬送路11Bは、メイン搬送路1Aの位置DPに繋がる。第2搬送路12Bは、シートSをスイッチバックさせるための搬送路であり、メイン搬送路1Aの位置UPに繋がる。
【0033】
片面印刷の実行時には、印刷部30においてシートSの一方面に一方面画像が印刷される。そして、搬送部20は、一方面画像が印刷されたシートSをメイン搬送路1Aに沿って搬送し、そのまま排出トレイETに排出する。
【0034】
一方で、両面印刷の実行時には、シートSへの一方面画像の印刷が終わると、両面印刷用の搬送処理が搬送部20により行われる。具体的には、搬送部20は、一方面に一方面画像が印刷されたシートS(ここでは、片面印刷シートSと称する)を第1搬送路11Bに引き込み、第1搬送路11Bから第2搬送路12Bに片面印刷シートSを進入させる。そして、搬送部20は、片面印刷シートSの表裏面の向きを反転させるための反転処理(片面印刷シートSをスイッチバックさせる処理)を行う。このとき、スイッチバックローラー対27Sは、片面印刷シートSの後端が第1搬送路11Bと第2搬送路12Bとの分岐点を通過するまで正回転し、当該分岐点を片面印刷シートSの後端が通過したタイミングで逆回転することによって片面印刷シートSをスイッチバックさせる。その後、搬送部20は、片面印刷シートSをメイン搬送路1Aの位置UPに戻す。
【0035】
搬送部20は、メイン搬送路1Aに片面印刷シートSを戻すと、片面印刷シートSをレジスト位置P2から印刷位置P3に向けて再度搬送する。すなわち、両面印刷の実行時には、シートSが印刷位置P3を2回通過する。そして、このときには、片面印刷シートSの表裏面の向きが反転した状態となる(印刷位置P3を再度通過するシートSの表裏面の向きが印刷位置P3を前回通過したときとは逆向きとなる)。したがって、印刷部30による画像の印刷は片面印刷シートSの他方面(未印刷面)に対して行われる。すなわち、片面印刷シートPの他方面に他方面画像が印刷される。その後、搬送部20は、両面にそれぞれ一方面画像および他方面画像が印刷されたシートSをメイン搬送路1Aに沿って搬送し排出トレイETに排出する。
【0036】
印刷部30は、ベルトユニット24の上方において搬送ベルト241の外周面と間隔を隔てて対向配置される。そして、印刷部30は、搬送中のシートS(搬送ベルト241上のシートS)に画像を印刷する。
【0037】
印刷部30は、4色分のインクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mを備える。インクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mは、この順番で、シート搬送方向の上流側から下流側に向かって配置される。インクヘッド3Yはイエローのインクを収容する。インクヘッド3Kはブラックのインクを収容する。インクヘッド3Cはシアンのインクを収容する。インクヘッド3Mはマゼンタのインクを収容する。
【0038】
また、インクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mは、それぞれ、インクを吐出するためのノズル31(
図5参照)を複数個ずつ有する。図示しないが、各ノズル31にはそれぞれ圧電素子が設けられており、ノズル31の圧電素子に駆動電圧を印加することにより、駆動電圧を印加した圧電素子に対応するノズル31が駆動する(ノズル31からインクが吐出される)。
【0039】
また、
図5に示すように、画像形成装置100は、画像形成装置100の各部を制御する制御部40を備える。制御部40は、CPU41、メモリー42およびASIC43を含む。CPU41は、制御用のプログラムおよびデータに基づき動作し、画像形成装置100の各部を制御するための処理を行う。メモリー42は、CPU41を動作させるための制御用のプログラムおよびデータを記憶する。ASIC43は、画像処理など特定の処理を行う。
【0040】
制御部40は、搬送部20によるシートSの搬送を制御するため、搬送部20のローラーを回転させる搬送モーターに接続される。たとえば、搬送モーターとしては、給紙側モーターM1、レジストモーターM2、ベルトモーターM3、排出側モーターM4、両面印刷用モーターM5およびスイッチバックモーターM6などがある。
【0041】
給紙側モーターM1は、給紙ローラー対21および給紙側搬送ローラー対22に連結される。制御部40は、給紙側モーターM1の駆動を制御し、給紙ローラー対21および給紙側搬送ローラー対22を適切に回転させる。また、給紙ローラー対21は、図示しない給紙側クラッチを介して、給紙モーターM1から駆動力を受ける。制御部40は、給紙側クラッチのオンオフを制御し、給紙ローラー対21と給紙側モーターM1との連結と連結解除とを切り替える。
【0042】
レジストモーターM2は、レジストローラー対23に連結される。制御部40は、レジストモーターM2の駆動を制御し、レジストローラー対23を適切に回転させる。また、レジストローラー対23は、図示しないレジストクラッチを介して、レジストモーターM2から駆動力を受ける。制御部40は、レジストクラッチのオンオフを制御し、レジストローラー対23とレジストモーターM2との連結と連結解除とを切り替える。
【0043】
ベルトモーターM3は、ベルトユニット24の駆動ローラー242に連結される。制御部40は、ベルトモーターM3の駆動を制御し、ベルトユニット24の駆動ローラー242を適切に回転させる。すなわち、制御部40は、ベルトユニット24の搬送ベルト411を適切に周回させる。たとえば、ベルトモーターM3はステッピングモーターである。
【0044】
排出側モーターM4は、排出側搬送ローラー対26に連結される。制御部40は、排出側モーターM4の駆動を制御し、排出側搬送ローラー対26を適切に回転させる。また、排出側搬送ローラー対26は、図示しない排出側クラッチを介して、排出側モーターM4から駆動力を受ける。制御部40は、排出側クラッチのオンオフを制御し、排出側搬送ローラー対26と排出側モーターM4との連結と連結解除とを切り替える。
【0045】
両面印刷用モーターM5は、スイッチバックローラー対27S以外の両面印刷用搬送ローラー対27に連結される。制御部40は、両面印刷用モーターM5の駆動を制御し、両面印刷用搬送ローラー対27を適切に回転させる。また、両面印刷用搬送ローラー対27は、図示しない両面印刷用クラッチを介して、両面印刷用モーターM5から駆動力を受ける。制御部40は、両面印刷用クラッチのオンオフを制御し、両面印刷用搬送ローラー対27と両面印刷用モーターM5との連結と連結解除とを切り替える。
【0046】
スイッチバックモーターM6は、スイッチバックローラー27Sに連結される。制御部40は、スイッチバックモーターM6の駆動を制御し、スイッチバックローラー対27Sを適切に回転させる。すなわち、制御部40は、スイッチバックローラー対27Sの正回転と逆回転とを切り替える。
【0047】
制御部40は、吸引ユニット25による吸引も制御する。すなわち、制御部40は、ファン253を回転させるファンモーターM7に接続される。たとえば、ファンモーターM7は、ファン253のケーシングに一体化される。そして、制御部40は、ファンモーターM7の駆動を制御し、ファン253を適切に回転させる(圧力室251に負圧を発生させる)。なお、制御部40は、複数の負圧発生部250にそれぞれ発生させる負圧(吸引力)を負圧発生部250ごとに独立して制御する。
【0048】
また、制御部40は、印刷部30のドライバー32に接続され、印刷部30の印刷動作を制御する。ドライバー32は、ノズル31からのインクの吐出を制御するための回路であって、インクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mにそれぞれ1つずつ設けられる。そして、制御部40は、インクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mの各ドライバー32に動作指示を与える。
【0049】
制御部40は、インクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mのそれぞれについて、インクを吐出させるノズル31(ここでは、吐出ノズル31と称する)および吐出ノズル31からのインクの吐出量などを定めた印刷データを生成する。そして、制御部40は、インクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mの各ドライバー32に対して印刷データを送信することにより、印刷データに基づくインク吐出処理を各ドライバー32に行わせる。また、制御部40は、インク吐出処理が1回行われるごとにシートSが1ライン(1ドット)の幅分だけ進むようにシートSの搬送を制御する。
【0050】
各ドライバー32は、インク吐出処理として、印刷データで示される吐出ノズル31に設けられた圧電素子に駆動電圧を印加して吐出ノズル31からインクを吐出させる処理を行う。各ドライバー32によるインク吐出処理は、予め定められた基準周期(基準タイミング)で繰り返される。
【0051】
なお、
図6に示すように、搬送ベルト241上のシートSと吐出ノズル31との間には間隔が設けられる。したがって、吐出ノズル31からのインクの吐出タイミングと当該インクのシートSへの到達タイミングとの間に時間差が生じる。このため、吐出ノズル31からのインクの付着予定位置(吐出ノズル31からのインクを付着させるべきシートS上の位置)が吐出ノズル31のシート搬送方向の位置よりもシート搬送方向下流側の位置に到達したタイミング(吐出ノズル31と付着予定位置とのシート搬送方向の間隔が所定間隔になるタイミング)が基準タイミングとされる。
図6では、図面を見易くするため、搬送ベルト241とシートSとの間に間隔を設けているが、実際には、搬送ベルト241にシートSが密着する。後で参照する
図7〜
図9についても同様である。
【0052】
図5に戻って、画像形成装置100は、CIS(Contact Image Sensor)ユニット50を備える。CISユニット50は「読取部」に相当する。CISユニット50は、たとえば、レジスト位置P2と印刷位置P3との間の位置に設置される(
図1参照)。そして、CISユニット50は、ベルトユニット24に供給されるシートSを読み取る。
【0053】
CISユニット50は、制御部40に接続される。制御部40は、CISユニット50によるシートSの読み取りによって得られた読取データに基づき、吸引ユニット25によるシートSの吸引を制御する。詳細は後述する。
【0054】
また、画像形成装置100は、操作パネル60を備える。操作パネル60は「受付部」に相当する。操作パネル60は、印刷に関する設定や指示をユーザーから受け付ける。たとえば、操作パネル60は、タッチパネルディスプレイを含み、印刷に関する設定や指示を受け付けるための受付画面を表示する。操作パネル60は、制御部40に接続される。制御部40は、操作パネル60の表示動作を制御するとともに、操作パネル60に対して行われた操作を検知する。
【0055】
また、画像形成装置100は、記憶部70を備える。記憶部70は、ROM(EEPROMなど)やHDDなどの不揮発性の記憶デバイスを含む。制御部40は、記憶部70に接続され、記憶部70からの情報の読み出しを行うとともに、記憶部70への情報の書き込みを行う。
【0056】
<インク吐出に関する補正処理>
伸縮性や柔軟性が高い素材(紙、布、革およびゴムなど)のシートSを印刷に用いる場合には、吸引ユニット25による吸引に起因するシートSの変形が発生し易い。具体的には、
図7に示すように、搬送ベルト241の吸引孔241aと重なるシートSの部分(ここでは、重畳部分と称する)が吸引孔241aに吸い込まれる。すなわち、シートSの重畳部分が搬送ベルト241のシート載置面に対して下方に凹むように変形する。
【0057】
ここで、インクを吐出させるノズル31(ここでは、吐出ノズル31と称する)からのインクのシートS上の付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aと重なったとする。すなわち、シートSの重畳部分が付着予定位置であったとする。
【0058】
この場合、
図6に示したような基準タイミング(吐出ノズル31と付着予定位置とのシート搬送方向の間隔が所定間隔になるタイミング)で吐出ノズル31からインクを吐出させると、当該インクのシートS上の実際の付着位置と付着予定位置とにズレが生じる。なぜなら、搬送ベルト241上のシートSと吐出ノズル31との上下方向の間隔が理想的な間隔D1よりも大きい間隔D2になるためである(基準タイミングは搬送ベルト241上のシートSと吐出ノズル31との上下方向の間隔が理想的な間隔D1である場合のタイミングである)。
【0059】
また、付着予定位置から見て、当該付着予定位置に付着されるインクはシート搬送方向下流側の斜め上方から吐出される。このため、
図8に示すように、搬送ベルト241の吸引孔241aのシート搬送方向下流側の内縁付近の位置が付着予定位置となっていれば、すなわち、シートSの重畳部分のうち付着予定位置を含む部分がシート搬送方向の下流側から上流側に向かって斜め下方に傾斜していれば、付着予定位置に向けて吐出されシートSに着滴したインクがシート搬送方向上流側に流れる場合がある。この場合には、シートSに着滴した1画素分のインクが複数の画素に跨るように広がる。なお、
図9に示すように、付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aのシート搬送方向下流側の内縁から離れていれば、インクの流れは許容範囲内に収まる(略発生しない)。
【0060】
これら不都合を解消するため、制御部40は、ノズル31から吐出させるインクの吐出タイミングを補正する補正処理を行う。なお、制御部40による補正処理では、ノズル31から吐出させるインクの吐出量の補正も行われる。
【0061】
たとえば、制御部40は、搬送ベルト241に設けられた基準部(図示せず)が所定の基準位置(基準部を検知するための検知部の検知位置)にあるときからのベルトモーターM3のステップ数に基づき、搬送ベルト241の周回方向に移動する吸引孔241aの位置を認識する。また、制御部40は、画像形成装置100に入力された画像データ(シートSに印刷すべき画像の画像データ)に基づき、シートS上の付着予定位置(インクを載せる画素)を認識する。そして、制御部40は、レジスト位置P2からタイミングを計って2次給紙したシートS上の付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aと重なるとき、当該付着予定位置に付着させるインクの吐出タイミングを基準タイミングよりも早くする。
【0062】
以下に、
図10に示すフローチャートを参照し、制御部40により行われるインク吐出に関する補正処理の流れを説明する。
図10に示すフローチャートは、シートSに画像を印刷するとき(シートSが2次給紙されたとき)にスタートする。
【0063】
以下、複数のノズル31のうち1つに着目してインク吐出に関する補正処理の流れを説明するが、他のノズル31についても同様の補正処理(補正処理を行うか否かを判断する処理を含む)が行われる。また、インク吐出に関する補正処理(補正処理を行うか否かを判断する処理を含む)は1ライン(1ドット)ごとに行われる。
【0064】
ここで、搬送ベルト241上で吸引ユニット25により吸引されても吸引孔241aに吸い込まれないシートS(伸縮性や柔軟性が低いシートS)である特殊シートSを示す情報が記憶部70に記憶される。たとえば、金属性のシートSが特殊シートSとされる。そして、印刷の実行に際し、操作パネル60は、印刷で使用するシートSの種類をユーザーから受け付ける。その結果、特殊シートSを印刷で使用する旨を操作パネル60がユーザーから受け付けた場合、制御部40は、インク吐出に関する補正処理を行わない。以下の説明では、特殊シートSとは異なるシートSを使用する旨を操作パネル60がユーザーから受け付けたとする。
【0065】
ステップS1において、制御部40は、ノズル31からのインクのシートS上の付着予定位置(画素)と搬送ベルト241の吸引孔241aとが重なるか否かを判断する。その結果、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重なると制御部40が判断した場合には、ステップS2に移行する。
【0066】
ステップS2において、制御部40は、搬送ベルト241の吸引孔241aの中心位置から付着予定位置までの距離を認識する。このとき、制御部40は、中心位置から付着予定位置までの距離を複数段階の距離レベルに分類する。なお、分類方法を定義した情報は記憶部70に記憶され、当該情報に基づき制御部40による分類が行われる。
【0067】
たとえば、距離レベルは、小、中および大の3段階に分類される(
図11参照)。付着予定位置が第1範囲(中心位置を含む範囲)に入っている場合、制御部40は、付着予定位置の距離レベルを小レベルに分類する。付着予定位置が第2範囲に入っている場合、制御部40は、付着予定位置の距離レベルを中レベルに分類する。付着予定位置が第3範囲に入っている場合、制御部40は、付着予定位置の距離レベルを大レベルに分類する。なお、距離レベルの分類数は特に限定されず、2段階に分類してもよいし、4段階以上に分類してもよい。
図11では、中心位置を黒丸で示す。
【0068】
ステップS3において、制御部40は、ノズル31からのインクの吐出タイミングを補正(設定)する吐出タイミング補正処理を補正処理の一処理として行う。吐出タイミング補正処理では、第1タイミング、第2タイミングおよび第3タイミングのいずれかがノズル31からのインクの吐出タイミングとして設定される。制御部40が吐出タイミングを第1タイミングに設定した場合には、ノズル31からのインクの吐出タイミングが最も早くなる。制御部40が吐出タイミングを第3タイミングに設定した場合には、ノズル31からのインクの吐出タイミングが最も遅くなる(ただし、基準タイミングよりは早いタイミングでノズル31からインクが吐出される)。制御部40が吐出タイミングを第2タイミングに設定した場合には、ノズル31からのインクの吐出タイミングが第1タイミングよりも遅く第3タイミングよりも早くなる。
【0069】
距離レベルが小レベル(3段階のうち中心位置から付着予定位置までの距離が最も短いレベル)である場合、制御部40は、ノズル31からのインクの吐出タイミングを第1タイミングに設定する。距離レベルが中レベルである場合、制御部40は、ノズル31からのインクの吐出タイミングを第2タイミングに設定する。距離レベルが大レベル(3段階のうち中心位置から付着予定位置までの距離が最も長いレベル)である場合、制御部40は、ノズル31からのインクの吐出タイミングを第3タイミングに設定する。すなわち、制御部40は、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重なるとき、付着予定位置が中心位置に近いほど、ノズル31からのインクの吐出タイミングがより早くなるよう設定する。
【0070】
ステップS4において、制御部40は、補正処理の一処理である吐出量補正処理を行う条件(所定条件)を満たすか否かを判断する。その結果、所定条件を満たすと制御部40が判断した場合には、ステップS5に移行する。
【0071】
たとえば、制御部40は、付着予定位置が中心位置よりもシート搬送方向下流側の領域にあり、かつ、付着予定位置と中心位置との距離が予め定められた第1閾値距離を超える場合に、所定条件を満たすと判断する。言い換えると、搬送ベルト241の吸引孔241aの内縁のうち、シート搬送方向下流側の部分の近傍領域に付着予定位置がある場合に、所定条件を満たすと制御部40が判断する。
【0072】
ステップS5において、制御部40は、ノズル31からのインクの吐出量を補正(設定)する処理を吐出量補正処理として行う。吐出量補正処理では、第1吐出量および第2吐出量のいずれかがインクの吐出量として設定される。制御部40が吐出量を第1吐出量に設定した場合には、制御部40が吐出量を第2吐出量に設定した場合に比べて、ノズル31からのインクの吐出量が減少する。なお、制御部40が吐出量を第1吐出量に設定した場合および第2吐出量に設定した場合のいずれであっても、ノズル31からのインクの吐出量はデフォルトの設定よりも少なくなる。
【0073】
制御部40は、吐出量補正処理を行うとき、付着予定位置と中心位置との距離が第1閾値距離よりも大きい予め定められた第2閾値距離を超えていれば、ノズル31からのインクの吐出量を第1吐出量に設定する(インクの吐出量の減少幅をより大きくする)。一方で、制御部40は、付着予定位置と中心位置との距離が第1閾値距離を超えているが第2閾値距離を超えていなければ、ノズル31からのインクの吐出量を第2吐出量に設定する(インクの吐出量を減少させるが減少幅は小さくする)。すなわち、制御部40は、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重なるとき、搬送ベルト241の吸引孔241aのシート搬送方向下流側の内縁に付着予定位置が近いほど、ノズル31からのインクの吐出量がより少なくなるよう設定する。
【0074】
ステップS4において、所定条件を満たさないと制御部40が判断した場合には、吐出量補正処理は行われず、本フローは終了する(吐出タイミング補正処理は行われる)。すなわち、付着予定位置が中心位置よりもシート搬送方向上流側の領域にある場合や、付着予定位置が中心位置よりもシート搬送方向下流側の領域にあっても付着予定位置と中心位置との距離が第1閾値距離を超えない場合には、吐出量補正処理は行われない。
【0075】
また、ステップS1において、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重ならないと制御部40が判断した場合には、吐出タイミング補正処理および吐出量補正処理は共に行われない。この場合には、ノズル31からは基準タイミングでインクが吐出される。また、ノズル31からのインクの吐出量はデフォルトの設定で維持される。
【0076】
<シートの吸引制御>
(第1吸引制御)
画像形成装置100には、吸引ユニット25による吸引に起因する変形が発生し難いシートSがセットされる場合がある(当該シートSが印刷で使用される場合がある)。このようなシートSが印刷で使用された結果、搬送ベルト241の吸引孔241aと重なるシートSの重畳部分の凹み量(変形量)が想定よりも小さくなった場合、ノズル31からのインクの吐出タイミングを基準タイミングよりも早めると、当該インクのシートS上の実際の付着位置と付着予定位置とにズレが生じる。
【0077】
このため、制御部40は、第1吸引制御を行う。制御部40に第1吸引制御を行わせるため、吸引ユニット25の吸引による搬送ベルト241上でのシートSの変形のし易さのレベルとシートSの種類との対応関係を示す情報が記憶部70に記憶される。また、印刷の実行に際し、操作パネル60は、印刷で使用するシートSの種類をユーザーから受け付ける。そして、制御部40は、印刷で使用するシートSの種類に応じて吸引ユニット25の吸引を制御する(第1吸引制御を行う)。
【0078】
以下に、
図12に示すフローチャートを参照し、制御部40が行う第1吸引制御の流れを説明する。
【0079】
ステップS11において、制御部40は、操作パネル60がユーザーから受け付けたシートSの種類に対応するレベルを認識する。当該レベルは、たとえば、標準レベルおよび標準レベルよりも低い低レベルの2段階に分類される。レベルが低いほど、シートSの伸縮性や柔軟性が乏しく、吸引ユニット25による吸引に起因するシートSの変形は発生し難い。
【0080】
ステップS12において、制御部40は、ステップS11で認識したレベルが標準レベルであるか否かを判断する。その結果、標準レベルであると制御部40が判断した場合には、ステップS13に移行し、標準レベルではない(低レベルである)と制御部40が判断した場合には、ステップS14に移行する。
【0081】
ステップS13に移行した場合、制御部40は、吸引ユニット25の吸引力をデフォルトの設定のまま維持する。すなわち、制御部40は、ファンモーターM7の回転数を予め定められた基準回転数に設定する。
【0082】
一方で、ステップS14に移行した場合、制御部40は、吸引ユニット25の吸引力を大きくする(ファンモーターM7の回転数を基準回転数よりも高くする)。これにより、印刷で使用されるシートSの伸縮性や柔軟性が低い場合には、吸引ユニット25の吸引力が大きくなる。
【0083】
(第2吸引制御)
両面印刷では、シートSの一方面に一方面画像が印刷され、その後、シートSの他方面に他方面画像が印刷される。この場合、シートSの一方面に対する一方面画像の印刷後、当該シートSの伸縮性や柔軟性が印刷前よりも低くなる。すなわち、吸引ユニット25による吸引に起因する変形が発生し難くなる。したがって、シートSの他方面に対する他方面画像の印刷時に、ノズル31からのインクの吐出タイミングを基準タイミングよりも早めると、当該インクのシートS上の実際の付着位置と付着予定位置とにズレが生じる。
【0084】
このため、制御部40は、第2吸引制御を行う。制御部40は、第2吸引制御を行うため、一方面画像の画像データに基づき、一方面画像が印刷されるシートSの部分を対象部分と認識する処理を行う。そして、制御部40は、シートSの対象部分に対する吸引力を大きくする(第2吸引制御を行う)。
【0085】
以下に、
図13に示すフローチャートを参照し、制御部40が行う第2吸引制御の流れを説明する。
図13に示すフローチャートは、シートSがベルトユニット24に供給されたとき(シートSの他方面に他方面画像を印刷するとき)にスタートする。
【0086】
ステップS21において、制御部40は、シートSの対象部分が吸引対象エリアに入った負圧発生部250が存在するか否かを判断する。その結果、存在すると制御部40が判断した場合には、ステップS22に移行する一方、存在しないと制御部40が判断した場合には、ステップS21の処理(制御部40による判断)が繰り返される。
【0087】
ステップS22において、制御部40は、対象部分が吸引対象エリアに入った負圧発生部250の吸引力を他の負圧発生部250の吸引力よりも大きくする。すなわち、制御部40は、当該負圧発生部250のファンモーターM7の回転数を高くする。
【0088】
ステップS23において、制御部40は、吸引力を大きくした負圧発生部250の吸引対象エリアを対象部分が抜けたか否かを判断する。その結果、対象部分が吸引対象エリアを抜けたと制御部40が判断した場合には、ステップS24に移行し、対象部分が吸引対象エリアを抜けていないと制御部40が判断した場合には、ステップS23の処理(制御部40による判断)が繰り返される。
【0089】
ステップS24において、制御部40は、吸引力を大きくした負圧発生部250の吸引力を元に戻す。以降、制御部40は、対象部分が別の吸引対象エリアに入った場合、当該エリアを吸引対象とする負圧発生部250の吸引力を大きくする。
【0090】
(第3吸引制御)
場合によっては、印刷で使用するシートSに欠損部分(たとえば、折れ曲がった部分や破れた部分、パンチ処理を施した部分など)が存在することがある。この場合、シートSの欠損部分をインクが通過すると、搬送ベルト241にインクが付着する(搬送ベルト241に汚れが発生する)。また、他のシートSがインクで汚れる恐れもある。
【0091】
このため、制御部40は、第3吸引制御を行う。制御部40による第3吸引制御では、ベルトユニット24に供給されるシートSの読み取りをCISユニット50が行う。制御部40は、CISユニット50によるシートSの読み取りによって得られた読取データに基づき、シートSに欠損部分が存在するか否かを判断する。そして、制御部40は、シートSに欠損部分が存在するとき、第3吸引制御を行う。
【0092】
以下に、
図14に示すフローチャートを参照し、制御部40が行う第3吸引制御の流れを説明する。
図14に示すフローチャートは、シートSがベルトユニット24に供給されるとき(CISユニット50がシートSを読み取ったとき)にスタートする。
【0093】
ステップS31において、制御部40は、シートSに欠損部分が存在するか否かを判断する。その結果、欠損部分が存在すると制御部40が判断した場合には、ステップS32に移行する。一方で、欠損部分が存在しないと制御部40が判断した場合には、本フローは終了する。
【0094】
ステップS32において、制御部40は、欠損部分が吸引対象エリアに入った負圧発生部250の吸引を停止する。すなわち、制御部40は、当該負圧発生部250のファンモーターM7の駆動を停止する。
【0095】
ステップS33において、制御部40は、吸引を停止した負圧発生部250の吸引対象エリアを欠損部分が抜けたか否かを判断する。その結果、欠損部分が吸引対象エリアを抜けたと制御部40が判断した場合には、ステップS34に移行し、欠損部分が吸引対象エリアを抜けていないと制御部40が判断した場合には、ステップS33の処理(制御部40による判断)が繰り返される。
【0096】
ステップS34において、制御部40は、吸引を停止した負圧発生部250の吸引力を元に戻す。以降、制御部40は、欠損部分が別の吸引対象エリアに入った場合、当該エリアを吸引対象とする負圧発生部250の吸引を停止する。
【0097】
(第4吸引制御)
印刷部30がシートSに画像を印刷するときには、イエロー(Y)、ブラック(K)、シアン(C)およびマゼンタ(M)の各インクがこの順番でシートSに吐出される。シートに印刷すべき画像によっては、イエローやブラックなどシート搬送方向上流側のインクの吐出量が多くなる(当該インクのシートSへの付着量が多くなる)。たとえば、ベルトユニット24へのシートSの供給時にはシートSにカールが発生していなくても、シート搬送方向上流側のインクの吐出量が多くなると、印刷中にシートSにカールが発生するという不都合が生じ得る。
【0098】
このため、制御部40は、第4吸引制御を行う。制御部40による第4吸引制御では、インクの吐出量に基づき吸引ユニット25の吸引力が制御される。制御部40は、第4吸引制御を行うため、印刷中に吐出されたインクの吐出量(シートSに付着したインクの付着量)を累積していく。
【0099】
以下に、
図15に示すフローチャートを参照し、制御部40が行う第4吸引制御の流れを説明する。
図15に示すフローチャートは、シートSがベルトユニット24に供給されたとき(シートSに画像を印刷するとき)にスタートする。
【0100】
ステップS41において、制御部40は、ベルトユニット24によるシートSの搬送中に、搬送ベルト241上のシートSに向けて吐出したインクの吐出量が予め定められた閾値量を超えたか否かを判断する。その結果、インクの吐出量が閾値量を超えたと制御部40が判断した場合には、ステップS42に移行する。ステップS42に移行すると、制御部40は、吸引ユニット25の吸引力を印刷前よりも大きくする。
【0101】
ステップS41において、インクの吐出量が閾値量を超えていないと制御部40が判断した場合、ステップS43に移行する。ステップS43に移行すると、制御部40は、搬送ベルト241上のシートSへの印刷が完了したか否かを判断する。その結果、印刷が完了していないと制御部40が判断した場合には、ステップS41に移行する。一方で、印刷が完了したと制御部40が判断した場合には、本フローは終了する。すなわち、印刷中にインクの吐出量が閾値量を超えなければ、吸引ユニット25の吸引力はデフォルトの設定で維持される。
【0102】
本実施形態の画像形成装置100は、上記のように、複数の吸引孔241aが形成された搬送ベルト241を含み、搬送ベルト241を駆動することによって搬送ベルト241上に載置されたシートSを搬送するベルトユニット24(ベルト搬送部)と、搬送ベルト241の内周面側(シート載置面側とは反対面側)において負圧を発生させ、吸引孔241aを介して搬送ベルト241上のシートSを吸引する吸引ユニット25(吸引部)と、搬送ベルト241と間隔を隔てて対向配置され、インクを吐出するためのノズル31を有し、ノズル31から搬送ベルト241に向けてインクを吐出することによって搬送ベルト241上のシートSにインクを付着させるインクヘッド3Y、3K、3Cおよび3Mと、ノズル31からのインクを付着させるべき付着予定位置と搬送ベルト241の吸引孔241aとが重ならないとき、基準タイミングでノズル31からインクを吐出させ、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重なるとき、基準タイミングよりも早いタイミングでノズル31からインクを吐出させる制御部40と、を備える。
【0103】
本実施形態の構成では、付着予定位置を含むシートSの重畳部分が搬送ベルト241のシート載置面に対して下方に凹むように変形しても、すなわち、インクの吐出から当該インクのシートSへの着滴までの時間が理想的な時間(シートSに凹みが発生していない場合の時間)よりも長くなる場合であっても、インクの実際の付着位置と付着予定位置とがずれるのを抑制することができる。その結果、印刷画質の低下を抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重なるとき、付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aの中心位置に近いほど、ノズル31からのインクの吐出タイミングを早くする。ここで、付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aの中心位置に近いほど、インクの吐出から当該インクの付着予定位置への着滴までの時間が理想的な時間よりも長くなる。したがって、付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aの中心位置に近いほど、ノズル31からのインクの吐出タイミングを早くするのが好ましい。これにより、インクの実際の付着位置と付着予定位置とのズレをより小さくすることができる。
【0105】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、搬送ベルト241の吸引孔241aと付着予定位置とが重なるとき、付着予定位置が搬送ベルト241の吸引孔241aのシート搬送方向下流側の内縁に近いほど、ノズル31からのインクの吐出量を少なくする。これにより、シートSの重畳部分のうち付着予定位置を含む部分がシート搬送方向の下流側から上流側に向かって斜め下方に傾斜していても、付着予定位置に向けて吐出されシートSに着滴したインクがシート搬送方向上流側に流れるのを抑制することができる。これにより、印刷画質の低下をより抑制することができる。
【0106】
また、本実施形態では、上記のように、操作パネル60(受付部)は、印刷で使用するシートSの種類をユーザーから受け付ける。また、記憶部70は、吸引ユニット25の吸引による搬送ベルト241上でのシートSの変形のし易さのレベルとシートSの種類との対応関係を記憶する。そして、制御部40は、操作パネル60が受け付けたシートSの種類に対応するレベルを認識し、当該認識したレベルが低いほど(印刷に使用するシートSの伸縮性や柔軟性が低いほど)、吸引ユニット25の吸引力を大きくする。すなわち、伸縮性や柔軟性が低いシートSを印刷に使用する場合には、吸引ユニット25の吸引力を大きくすることにより、意図的に、シートSの重畳部分に凹みを生じさせる。これにより、伸縮性や柔軟性が低いシートSを印刷に使用する場合に、制御部40による吐出タイミング補正処理(インクの吐出タイミングを早める処理)が行われたためにインクの実際の付着位置と付着予定位置との間のズレが大きくなる、という不都合が生じるのを抑制することができる。
【0107】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、両面印刷を実行する場合、一方面画像の画像データに基づき、一方面画像が印刷されるシートSの部分を対象部分と認識する処理を行い、他方面画像をシートSに印刷するときに、対象部分が吸引対象エリアに入った負圧発生部250の吸引力を他の負圧発生部250の吸引力よりも大きくする。これにより、シートSの他方面に対する印刷時にシートSの対象部分(シートSの一方面に対する印刷時にインクが付着したことによって伸縮性や柔軟性が低くなった部分)が搬送ベルト241の吸引孔241aと重なった場合に、制御部40による吐出タイミング補正処理(インクの吐出タイミングを早める処理)が行われたためにインクの実際の付着位置と付着予定位置との間のズレが大きくなる、という不都合が生じるのを抑制することができる。すなわち、両面印刷の実行により得られる印刷物の画質低下(他方面画像の画質低下)を抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、CISユニット50(読取部)によるシートSの読み取りによって得られた読取データに基づきベルトユニット24に供給されるシートSに欠損部分が存在するか否かを判断する。そして、シートSに欠損部分が存在するとき、制御部40は、シートSの欠損部分が吸引対象エリアに入った負圧発生部250の吸引を停止させる。これにより、搬送ベルト241に向けて吐出されたインクがシートSの欠損部分を介して搬送ベルト241のシート載置面に侵入する(搬送ベルト240のシート載置面が汚れる)のを抑制することができる。
【0109】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、搬送ベルト241によるシートSの搬送中に、当該搬送中のシートSに向けて吐出したインクの吐出量が閾値量を超えたとき、吸引ユニット25の吸引力を印刷前よりも大きくする。これにより、シートSの搬送中にシートSにカールが発生するのを抑制することができる。
【0110】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。