特許第6716106号(P6716106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716106
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブシャフト
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20200622BHJP
【FI】
   A63B53/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-570359(P2016-570359)
(86)(22)【出願日】2016年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2016063221
(87)【国際公開番号】WO2016185889
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-100803(P2015-100803)
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】金光 由実
(72)【発明者】
【氏名】仲井 朝美
(72)【発明者】
【氏名】大谷 章夫
(72)【発明者】
【氏名】魚住 忠司
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−088088(JP,A)
【文献】 特開平09−267402(JP,A)
【文献】 特開2009−095601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の繊維強化樹脂層を有しており、
少なくとも1つの上記繊維強化樹脂層が、張力を付加しながら1つ又は複数の繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法により製造されており、
上記繊維束が、複数のフィラメントを含んでおり、
上記繊維束に付加される上記張力が、フィラメント1本当たり0.04(gf)以上であり、
少なくとも1つの上記繊維強化樹脂層が、複数の上記繊維束を並列させながら同時に巻き付けるマルチフィラメントワインディング法により製造されているゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
上記張力が、フィラメント1本当たり0.13(gf)以上0.30(gf)以下である請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
上記マルチフィラメントワインディング法により製造された複数の上記繊維強化樹脂層を有しており、
上記繊維強化樹脂層のそれぞれが、上記複数の繊維束を実質的に隙間がないように並列させて螺旋状に巻きつけることにより形成されている請求項1又は2に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項4】
上記フィラメントを構成する繊維が炭素繊維である請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項5】
上記繊維強化樹脂層に含まれる樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である請求項1から4のいずれかに記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項6】
上記繊維束が、第1繊維を含む第1繊維束と、第2繊維を含む第2繊維束とを含んでおり、
上記第1繊維の引張弾性率が、上記第2繊維の引張弾性率と相違する請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項7】
1つ又は複数の繊維強化樹脂層を有するゴルフクラブシャフトの製造方法であって、
少なくとも1つの上記繊維強化樹脂層が、張力を付加しながら1つ又は複数の繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法により形成されており、
上記繊維束が、複数のフィラメントを含んでおり、
上記繊維束に付加される上記張力が、フィラメント1本当たり0.04(gf)以上であり、
少なくとも1つの上記繊維強化樹脂層が、複数の上記繊維束を並列させながら同時に巻き付けるマルチフィラメントワインディング法により形成されているゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項8】
上記張力が、フィラメント1本当たり0.13(gf)以上0.30(gf)以下である請求項7に記載のゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項9】
上記マルチフィラメントワインディング法により複数の上記繊維強化樹脂層が形成され、
上記繊維強化樹脂層のそれぞれが、上記複数の繊維束を実質的に隙間がないように並列させて螺旋状に巻きつけることにより形成されている請求項7又は8に記載のゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項10】
上記フィラメントを構成する繊維が炭素繊維である請求項7から9のいずれかに記載のゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項11】
上記繊維強化樹脂層に含まれる樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である請求項7から10のいずれかに記載のゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項12】
上記繊維束が、第1繊維を含む第1繊維束と、第2繊維を含む第2繊維束とを含んでおり、
上記第1繊維の引張弾性率が、上記第2繊維の引張弾性率と相違する請求項7から11のいずれかに記載のゴルフクラブシャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフトは、一般に、シートワインディング法で製造されている。他の方法として、1つの繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法が知られている。特開平10−119138号公報は、このフィラメントワインディング法により製造された圧力容器を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−119138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートワインディング法の場合、継ぎ目が必須的に生じる。また、巻き始め端部及び巻き終わり端部が存在する。これらの継ぎ目及び端部は、クラックの起点となりうる。さらに、シートの巻き付け不良等に起因して、皺及び繊維のうねりが生じうる。これらは、シャフトの強度を低下させうる。
【0005】
フィラメントワインディング法では、シートワインディング法における上記欠点が解消されうる。軽量化の観点から、更なる強度の向上が望まれる。
【0006】
本発明者は、フィラメントワインディング法について鋭意検討を行った。その結果、成形品の強度を向上しうる新たな知見を得た。
【0007】
本発明の目的は、フィラメントワインディング法により製造されており、強度に優れたゴルフクラブシャフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る好ましいゴルフクラブシャフトは、1つ又は複数の繊維強化樹脂層を有している。少なくとも1つの上記繊維強化樹脂層は、張力を付加しながら1つ又は複数の繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法により製造されている。上記繊維束が、複数のフィラメントを含んでいる。上記繊維束に付加される上記張力は、フィラメント1本当たり0.04(gf)以上である。
【0009】
好ましくは、少なくとも1つの上記繊維強化樹脂層が、複数の上記繊維束を並列させながら同時に巻き付けるマルチフィラメントワインディング法により製造されている。
【0010】
好ましくは、このシャフトは、上記マルチフィラメントワインディング法により製造された複数の上記繊維強化樹脂層を有している。好ましくは、上記繊維強化樹脂層のそれぞれが、上記複数の繊維束を実質的に隙間がないように並列させて螺旋状に巻きつけることにより形成されている。
【0011】
好ましくは、上記繊維束を構成する繊維が炭素繊維である。
【0012】
好ましくは、上記繊維強化樹脂層に含まれる樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である。
【0013】
上記繊維束が、第1繊維を含む第1繊維束と、第2繊維を含む第2繊維束とを含んでいてもよい。好ましくは、上記第1繊維の引張弾性率が、上記第2繊維の引張弾性率と相違する。
【発明の効果】
【0014】
軽量で強度の高いシャフトが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るシャフトを備えたゴルフクラブを示す。
図2図2は、図1の実施形態に係るシャフトの部分断面図である。
図3図3は、図1のシャフトの製造に用いられる製造装置の概略を示す斜視図である。
図4図4は、3点曲げ強度試験の説明図である。
図5図5は、ねじり強度試験の説明図である。
図6図6は、減衰比の測定方法の説明図である。
図7図7は、減衰比の測定に係る伝達関数のグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
本願において「内側」とは、シャフトの半径方向における内側を意味する。本願において「外側」とは、シャフトの半径方向における外側を意味する。本願において、「軸方向」とは、シャフトの軸方向を意味する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブシャフト6を備えたゴルフクラブ2を示す。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを備えている。シャフト6の先端部に、ヘッド4が設けられている。シャフト6の後端部に、グリップ8が設けられている。ヘッド4として、ウッド型ゴルフクラブヘッド、ハイブリット型ゴルフクラブヘッド、ユーティリティ型ゴルフクラブヘッド、アイアン型ゴルフクラブヘッド、パターヘッド等が例示される。図1に示されるヘッド4は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。
【0019】
ヘッド4の材質として、チタン、チタン合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ステンレス鋼、マルエージング鋼、軟鉄等が挙げられる。複数の材質が組み合わされてもよい。例えば、CFRPとチタン合金とが組み合わせられうる。
【0020】
シャフト6は、複数の繊維強化樹脂層を備えた積層体である。シャフト6は、管状体である。シャフト6は中空構造を有する。図1が示すように、シャフト6は、チップ端Tpとバット端Btとを有する。チップ端Tpは、ヘッド4の内部に位置している。バット端Btは、グリップ8の内部に位置している。
【0021】
シャフト6は、フィラメントワインディング法によって製造されている。シャフト6は、フィラメントワインディング法と他の製法との組み合わせにより製造されていてもよい。例えば、フィラメントワインディング法とシートワインディング法とが組み合わされてもよい。
【0022】
フィラメントワインディング法の種類として、ドライ法及びウェット法が知られている。
【0023】
ウェット法では、繊維束に樹脂組成物を含浸させながら、この繊維束をマンドレルに巻き付ける。このウェット法では、樹脂組成物を含浸させるための樹脂溜めが必要である。上記ウェット法では、樹脂含有量のバラツキが生じやすい。
【0024】
一方、ドライ法では、トウプレグが用いられる。トウプレグは、予め樹脂組成物が含浸された繊維束である。このトウプレグは、トウプリプレグ、ヤーンプリプレグ又はストランドプリプレグとも称されている。市販されているトウプレグが用いられ得る。
【0025】
ドライ法では、樹脂溜めが不要であるから、作業効率が高まる。この観点から、ドライ法が好ましい。また、ドライ法は、ウェット法に比較して、樹脂含有量のバラツキが生じにくい。この観点からも、ドライ法が好ましい。即ち、トウプレグを用いるのが好ましい。
【0026】
通常、このトウプレグは、ボビンに巻き取られた状態で、フィラメントワインディング装置に取り付けられる。マルチフィラメントワインディング法では、例えば、複数のボビンがフィラメントワインディング装置にセットされる。各ボビンから同時に、複数のトウプレグが供給される。
【0027】
なお、マルチフィラメントワインディング法とは、複数の繊維束を同時に巻き付けるフィラメントワインディング法である。一方、シングルフィラメントワインディング法とは、1つの繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法である。
【0028】
繊維束は、通常、千本から数万本のフィラメントを有する。繊維束は、繊維糸とも称される。この繊維束として、東レ社製の商品名「トレカ糸」が例示される。なお「トレカ」は登録商標である。好ましい繊維束は、1000本から70000本程度のフィラメントの束である。典型的には、繊維束のフィラメント本数として、1000本(1K)、3000本(3K)、6000本(6K)、12000本(12K)、18000本(18K)及び24000本(24K)が挙げられる。
【0029】
上記樹脂含浸強化繊維は、長繊維を含む。上記フィラメントは、長繊維を意味する。この繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維及び炭化ケイ素繊維が例示される。これらの繊維の2種以上が併用されてもよい。シャフトの強度の観点から、好ましい繊維は、炭素繊維である。
【0030】
この炭素繊維として、PAN系、ピッチ系及びレーヨン系の炭素繊維が例示される。引張強度の観点から、PAN系の炭素繊維が好ましい。炭素繊維の形態としては、前駆体繊維に撚りをかけて焼成して得られる炭素繊維(いわゆる有撚糸)、その有撚糸の撚りを解いた炭素繊維(いわゆる解撚糸)、前駆体繊維に実質的に撚りをかけずに熱処理を行う無撚糸などが挙げられる。繊維束の取扱性の観点からは、無撚糸が好ましい。また、炭素繊維は、黒鉛繊維を含んでいてもよい。
【0031】
成形品の強度及び剛性の観点から、繊維の引張弾性率は、10t/mm以上が好ましく、23.5t/mm以上がより好ましく、70t/mm以下が好ましく、50t/mm以下がより好ましい。この引張弾性率は、JIS R 7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定される。
【0032】
軽量化と強度とのバランスの観点から、シャフトにおける強化繊維の含有率は、65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0033】
上述の通り、繊維束には、樹脂組成物が含浸される。この樹脂組成物として、エポキシ樹脂組成物が好ましい。エポキシ樹脂組成物の基材樹脂は、エポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂成分は、分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。換言すれば、このエポキシ樹脂成分は、2官能のエポキシ樹脂を含有するのが好ましい。2官能のエポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびその水素添加物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびその水素添加物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、単独で用いられても良く、2種以上を混合して用いられても良い。
【0034】
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含有することが好ましい。典型的な硬化剤として、ジシアンジアミドが挙げられる。この硬化剤には、硬化活性を高めるための硬化助剤を組み合わせることができる。硬化助剤としては、尿素に結合する水素の少なくとも1つが、炭化水素基で置換された尿素誘導体が好ましい。エポキシ樹脂組成物は、さらに、オリゴマー、高分子化合物、有機粒子、は無機粒子等を含んでいてもよい。
【0035】
フィラメントが巻き付けられたマンドレルには、ラッピングテープが巻かれ、加熱される。この加熱により上記樹脂組成物は硬化する。その後、マンドレルが抜き取られ、ラッピングテープが除去される。必要に応じて、表面が研磨される。最終的に、成形品としてのシャフトが得られる。
【0036】
図2は、シャフト6の一部切欠図である。図2の円内には、拡大されたシャフト断面が示されている。シャフト6は、複数の層を有する。図2の実施形態では、シャフト6は、4つの層を有する。シャフト6は、層S1、層S2、層S3及び層S4を有する。半径方向内側から順に、層S1、層S2、層S3、層S4の順で積層されている。層S1は最内層である。層S4は最外層である。
【0037】
シャフトを構成する層として、ストレート層、バイアス層及びフープ層が例示される。好ましくは、シャフト6は、ストレート層及び/又はバイアス層を有する。シャフト6は、更にフープ層を有していてもよい。
【0038】
ストレート層は、繊維の方向がシャフト軸方向に対して実質的に0°とされた層である。通常、ストレート層では、繊維絶対角度が10°以下である。繊維絶対角度が10°以下とは、軸方向に対する繊維の配向角度が−10°以上10°以下であることを意味する。
【0039】
バイアス層は、繊維の向きがシャフト軸方向に対して傾斜した層である。このましくは、バイアス層は、繊維が互いに逆方向に傾斜した2つの層を有する。捻れ剛性の観点から、バイアス層の繊維絶対角度は、好ましくは15°以上であり、より好ましくは25°以上であり、更に好ましくは40°以上である。捻れ剛性及び曲げ剛性の観点から、バイアス層の繊維絶対角度は、好ましくは75°以下であり、より好ましくは65°以下であり、より好ましくは50°以下である。
【0040】
フープ層は、繊維の方向がシャフト軸方向に対して実質的に90°とされた層である。好ましくは、フープ層の繊維絶対角度は、80°以上90°以下である。
【0041】
図3は、シャフト6の製造装置10を示す概略図である。製造装置10は、フィラメントワインディング装置である。製造装置10は、複数のボビン12と、これらのボビン12を保持するためのボビンキャリア(図示省略)と、ボビン12から導出された糸14を巻き付け位置に導く糸ガイド16とを有する。糸ガイド16は、パイプである。図示されていないが、更に製造装置10は、マンドレル18を駆動するマンドレル駆動部を有している。なお、本実施形態において、糸14は、トウプレグである。
【0042】
この製造装置10は、複数の糸14を同時に巻き付けることができるマルチフィラメントワインディング装置である。製造装置10は、複数の糸14を並列させながら同時に巻き付けることができる。複数の糸14は、同一の軸方向位置において、同時に巻き付けられる。複数の糸14のそれぞれは、異なる周方向位置から巻き付けられる。複数の糸14は、複数の周方向位置から同時に巻き付けられる。
【0043】
製造装置10は、複数の繊維束(糸14)を、実質的に隙間がないように並列させつつ、螺旋状に巻きつけることができる。図3に示されている全ての糸14が、実質的に隙間がないように並列されつつ、螺旋状に巻きつけられる。
【0044】
図示されていないが、製造装置10は、糸14に作用する張力を調整しうる張力調整機構を有する。この張力調整機構は、張力を一定に保持しつつ、張力を所望の値に調整しうる。この張力調整機構は、通常のフィラメントワインディング法よりも大きな張力を糸14に付与しうる。
【0045】
上記マンドレル駆動部は、マンドレル18を軸回転させながら、マンドレル18を軸方向に移動させうる。このマンドレル18の動きに起因して、複数の糸14がマンドレルに巻き付けられる。
【0046】
製造装置10のような装置は、公知である。このような装置の一例は、特開2010−234529号に記載のフィラメントワインディング装置である。図3で示されているのは、特開2010−234529号に開示のフィラメントワインディング装置における、一つのブレイダーユニットに相当する。
【0047】
前述の特開平10−119138号公報では、1つの繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法が示されている。この場合、繊維束の交差に起因するうねりが生じやすい。特開平10−119138号公報の図3(a)が示すように、巻き付けられた繊維束同士は交差する。この交差部分では、先に巻き付けられた繊維束の上に、後から巻き付けられた繊維束が重なる。後から巻き付けられた繊維束は、先に巻き付けられた繊維束を乗り越えている。先に巻き付けられた繊維束が段差となり、この段差を、後から巻き付けられた繊維束が乗り越えている。このため、後から巻き付けられた繊維束は、半径方向位置が変動し、曲がった状態となる。この曲がりが、上述のうねりである。このうねりは、繊維の配向を乱し、強度及び剛性を低下させうる。また、上記交差部分には、繊維間の空隙が生じる。この空隙には、樹脂だまりが生成される。この樹脂だまりは、成形品の重量を増加させる。この樹脂だまりの重量は、シャフト強度に寄与しない。
【0048】
本実施形態では、繊維束(トウプレグ)の交差に起因する上記うねりが防止されている。即ち、当該うねりが生じないように、繊維束が巻かれている。具体的には、層S1、S2、S3及びS4のそれぞれにおいて、複数の繊維束が、実質的に隙間がないように並列されつつ、螺旋状に巻かれている。「実質的に隙間がない」とは、隙間が0.2mm以下であることを意味し、より好ましくは、0.1mm以下、更に好ましくは0.05mm以下である。
【0049】
上記製造装置10では、複数(N本)の繊維束が、互いに並列されつつ同時に巻き付けられる。Nは、2以上の自然数である。重なりがなく且つ実質的に隙間がないような巻回を達成するため、繊維束の幅W、上記本数N及び繊維角度θが考慮される。繊維角度θとは、シャフト(マンドレル)の軸方向に対する角度である。螺旋のピッチPは、繊維角度θに依存する。好ましくは、同時に巻かれる繊維束の合計幅がこのピッチPと略同じ幅になるように、繊維束の本数Nが決定される。
【0050】
1本の繊維束の幅がWとされ、互いに並列されつつ同時に巻き付けられる複数の繊維束の数がNとされ、螺旋のピッチがPとされるとき、次の式(1)を満たすように繊維角度θが決定されるのが好ましい。この場合、重なりがなく且つ実質的に隙間がないような巻回が達成されうる。なお、幅Wは、巻き付け前の幅ではなく、巻き付け後の幅とされるのが好ましい。
P = W × N ・・・ (1)
【0051】
図2が示すように、本実施形態のシャフト6は、複数(4つ)の層を有する。第1層S1において、複数のトウプレグは、実質的に隙間がないように並列されつつ、巻回されている。層S1は、上記複数の繊維束を実質的に隙間がないように並列させて螺旋状に巻きつけることにより形成されている。層S1の厚みは、トウプレグの厚みに等しい。トウプレグが重なることなく且つ隙間なく並列されることで、一つの層S1が形成されている。第2層S2、第3層S3及び第4層S4についても同様である。したがって、トウプレグが他のトウプレグを乗り越えるような交差は生じない。このシャフト6では、繊維のうねり及び樹脂だまりが抑制されている。このシャフト6は、軽量で且つ強度に優れる。
【0052】
シャフト6は、張力を付加しながら繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング法により製造されている。上述の通り、この繊維束は、複数のフィラメントを含む。
【0053】
本発明者は、上記張力を大きくすることで、最終的に得られる成形品の強度が高まるとの新たな知見を得た。従来、張力が強度と相関しうるとの技術思想は存在していなかった。従来のフィラメントワインディング法では、必要最小限の張力のみが付与されていた。
【0054】
大きな張力が強度を高める理由は、不明である。推測できる理由は、以下の(a)及び(b)である。しかし、これらの理由では、後述される実施例で示された強度向上効果を十分に説明できないと考えられる。
(a)高い張力により、繊維(フィラメント)の配向性が高まる。
(b)高い張力により、フィラメントを構成する分子の配向性が高まる。
【0055】
更に、本発明者は、上記張力を大きくすることで、最終的に得られる成形品の減衰比が高まるとの新たな知見を得た。従来、張力が振動特性と相関しうるとの技術思想は存在していなかった。
【0056】
大きな張力が減衰比を高める理由は、不明である。上述の(a)及び(b)を考慮しても、減衰比が高まる理由とはならないと考えられる。後述の実施例によるデータが示すように、張力によって減衰比が顕著に向上している。
【0057】
ゴルフクラブシャフトでは、打球時のフィーリングが重要視される。振動減衰性は、このフィーリングとの相関性が高い。高い振動減衰性により、打球時のフィーリングが良好となる。
【0058】
張力は、フィラメント1本当たりに換算される。例えば、24Kのトウプレグに1000gfの張力が付加された場合、フィラメント1本当たりの張力は、
1000/24000=0.0417(gf)
である。
【0059】
強度を高める観点から、上記フィラメント1本当たりの上記張力は、0.04(gf)以上が好ましく、0.13(gf)以上がより好ましく、0.30(gf)以上がより好ましい。振動減衰性を高める観点からも、この数値範囲が好ましい。繊維の切断を防止する観点から、上記フィラメント1本当たりの上記張力は、1.5(gf)以下が好ましく、1.0(gf)以下がより好ましい。
【0060】
上述の通り、シャフト6は、複数の繊維束を並列させながら同時に巻き付けるマルチフィラメントワインディング法により製造されている。このため、繊維のうねりが抑制され、シャフトの強度が向上しうる。また、並列される繊維束の本数を調整することで、繊維角度θの自由度を高めることができる。
【0061】
シャフト6では、繊維強化樹脂層のそれぞれにおいて、複数の繊維束が、実質的に隙間がないように並列されつつ、螺旋状に巻かれている。繊維強化樹脂層のそれぞれが、上記複数の繊維束を実質的に隙間がないように並列させて螺旋状に巻きつけることにより形成されている。このため、層が複数であっても、繊維のうねりが抑制されている。
【0062】
本願に係る製造方法の発明は、フィラメントワインディング法であって、複数の繊維束を、実質的に隙間がないように並列させつつ、螺旋状に巻きつける製造方法である。好ましくは、この製造方法において、フィラメント1本当たり0.04(gf)以上の張力が付与されつつ、上記複数の繊維束が巻き付けられる。
【0063】
上述の通り、巻き付けの際の張力を大きくすることで、最終的に得られる成形品の強度が高まる。加えて、巻き付けの際の張力を大きくすることで、最終的に得られる成形品の減衰比が高まる。張力が大きければよく、巻き付け状態は限定されない。よって例えば、複数の繊維束同士が編まれてもよい。本願に係るシャフトは、繊維束同士が編まれて形成された編物層を有していても良い。公知のブレイダー装置では、繊維束同士を編みながら巻き付けるマルチフィラメントワインディング法が可能である。本発明に係る上記マルチフィラメント法において、繊維束同士が編まれながら巻き付けられてもよい。なお、この編物層は組物層とも称され、この編物層を構成する繊維束のそれぞれが組糸とも称される。
【0064】
上記編物層は、例えば、軸方向に対する角度が+θ°である第1の繊維束と、軸方向に対する角度が−θ°である第2の繊維束と、軸方向に対する角度が0°である第3の繊維束とを有する。この編物層では、繊維束同士が編まれているため、繊維束にうねりが生じる。このうねりに伴い、繊維束同士の間に隙間が生じる。更に、複数の編物層が積層される場合、上記うねりに起因して、編物層の層間にも隙間が生ずる。これらの観点から、繊維束同士が編まれていないのが好ましい。うねり及び隙間を抑制して強度を高める観点から、好ましくは、上記実施形態のように、複数の繊維束が並列して巻き付けられているのが好ましい。この観点から、好ましい製造方法は、複数の繊維束を並列させながら同時に巻き付けるマルチフィラメントワインディング法である。
【0065】
上記フィラメントワインディングにおいて、2種以上の繊維を混在させてもよい。2種以上の繊維を混在させて巻き付けることで、2種以上の繊維が混在した異種混合層が形成される。この異種混合層の物性は、複数の繊維の物性の総合的な値となる。各繊維の物性を変えることで、異種混合層の物性が調整されうる。また、複数の繊維の混合比率を変えることで、異種混合層の物性が調整されうる。したがって、最終的に得られる層の物性が、高い自由度で設定されうる。
【0066】
物性の自由度を高める観点から、上記繊維束が、第1繊維を含む第1繊維束と、第2繊維を含む第2繊維束とを含んでいるのが好ましい。物性の自由度を高める観点から、上記第1繊維の引張弾性率が、上記第2繊維の引張弾性率と相違するのが好ましい。
【0067】
第1繊維と第2繊維とが混合された場合、得られる物性は、これらの繊維の物性の平均値となる。この平均値は、混合比率(重量比)が考慮された加重平均値である。3種以上の繊維が混合されてもよい。
【0068】
例えば、第1繊維の引張弾性率がE1とされ、第2繊維に引張弾性率がE2とされる。第1繊維と第2繊維とを1:1の重量比で混合した場合、得られる層の全体における繊維の引張弾性率は、(E1+E2)/2である。
【0069】
マルチフィラメントワインディングは、複数の繊維束を並列させながら同時に巻き付ける製造方法である。よって、異種混合層の形成は容易である。即ち、種類の異なる複数の繊維束を並列させながら同時に巻き付けることで、異種混合層を容易に製造することができる。例えば、第1繊維束と第2繊維束とを並列させながら同時に巻き付ける製造方法が可能である。
【0070】
前述した製造装置10(図3)では、複数のボビン12が用いられている。よって、ボビン12毎に糸14の種類を変えることで、異種混合層が容易に製造されうる。
【0071】
均等な混合の観点から、種類の異なる複数の繊維束を交互に並列させることが可能である。例えば、第1繊維束(第1の糸14)と第2繊維束(第2の糸14)とを交互に並列させながら同時に巻き付けることができる。この場合、製造装置10において、第1繊維束(第1の糸14)が巻き付けられたボビン12と、第2繊維束(第2の糸14)が巻き付けられたボビン12とが交互に配置されてもよい。
【0072】
異種混合層の具体例は次の通りである。例えば、上記第1繊維束として引張弾性率が24tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられ、上記第2繊維束として引張弾性率が40tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられる。これら第1繊維束と第2繊維束とを1:1の重量比で混合した場合、32tf/mmの炭素繊維を用いた場合と同等の層が得られる。
【0073】
市販のプリプレグとして、繊維弾性率が24tf/mmのもの(例えば三菱レイヨン社製の「TR350C−100S」)、繊維弾性率が30tf/mmのもの(例えば三菱レイヨン社製の「MRX350C−100S」)、及び、繊維弾性率が40tf/mmのもの(例えば三菱レイヨン社製の「HRX350C−100S」)が知られている。しかし、繊維弾性率が32tf/mmのプリプレグは市販されていない。種類の異なる複数の繊維束を混合することで、市販されていない繊維弾性率に相当する層を形成することができる。加えて、フィラメントワインディング製法により、継ぎ目及び隙間のない層が形成できる。短冊状にカットされたプリプレグを巻き付けるシートワインディング製法と比べて、この継ぎ目及び隙間のない層は強度に優れる。更に、巻き付けの際に高い張力を付加することで、この強度がより一層向上する。
【0074】
異種混合層の他の具体例は次の通りである。上記第1繊維束として引張弾性率が24tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられ、上記第2繊維束として引張弾性率が35tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられる。これら第1繊維束と第2繊維束とを1:1の重量比で混合した場合、29.5tf/mmの炭素繊維を用いた場合と同等の層が得られる。
【0075】
異種混合層の更に他の具体例は次の通りである。上記第1繊維束として引張弾性率が30tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられ、上記第2繊維束として引張弾性率が35tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられる。これら第1繊維束と第2繊維束とを1:1の重量比で混合した場合、32.5tf/mmの炭素繊維を用いた場合と同等の層が得られる。
【0076】
異種混合層の更に他の具体例は次の通りである。上記第1繊維束として引張弾性率が35tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられ、上記第2繊維束として引張弾性率が40tf/mmの炭素繊維を含むトウプレグが用いられる。これら第1繊維束と第2繊維束とを1:1の重量比で混合した場合、37.5tf/mmの炭素繊維を用いた場合と同等の層が得られる。
【0077】
このように、種類の異なる繊維束を混合することで、物性の自由度が高まる。なお、引張弾性率が24tf/mmの炭素繊維として、例えば、三菱レイヨン社製の商品名「PYROFIL TR 30S」が挙げられる。引張弾性率が30tf/mmの炭素繊維として、例えば、三菱レイヨン社製の商品名「PYROFIL MR 60H 24P」が挙げられる。引張弾性率が35tf/mmの炭素繊維として、例えば、三菱レイヨン社製の商品名「PYROFIL MS 40 12M」が挙げられる。引張弾性率が40tf/mmの炭素繊維として、例えば、三菱レイヨン社製の商品名「PYROFIL HR 40 12M」が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
[評価方法]
シャフトの強度を評価するため、以下の方法で3点曲げ強度及びねじり強度を測定した。また、振動減衰性を評価するため、以下の方法で減衰比を測定した。
【0080】
[3点曲げ強度]
3点曲げ強度は、SG式3点曲げ強度試験に準拠して行った。SG式とは、日本の製品安全協会が定める試験方法である。計測装置として、島津製作所社製の島津オートグラフが用いられた。図4は、3点曲げ強度の測定方法を示す。図4が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト6を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって荷重Fを加えた。荷重Fは、圧子22により付加された。圧子22の先端には、シリコーンラバー24が装着された。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置とした。荷重点e3が、測定点である。荷重点e3の移動速度は、20mm/minとされた。シャフト6の長手方向中心位置が、測定点とされた。スパンSは、300mmとされた。シャフト6が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。この結果が、下記の表1及び表2に示される。
【0081】
[ねじり強度]
図5は、ねじり強度の測定方法の概略を示す。シャフト先端Tpから50mmまでの部分を第1治具M1で回転不能に固定し、この第1治具M1から500mmを隔てた位置を、第2治具M2で把持した。この第2治具M2を2.0rpmで回転させてシャフト6にトルクTrを与えた。破壊が始まったときのトルクTrの値を測定した。この結果が、下記の表2に示される。
【0082】
[減衰比(半値幅法)]
図6は、減衰比の測定方法を示す。この測定では、シャフト6のバット側端部に、紐50が取り付けられる。また、バット端から550mm(チップ端から10mm)の地点に、加速度ピックアップ計52が取り付けられる。紐50を用いて、シャフト6が吊り下げられる。この吊り下げられた状態で、シャフト6の長手方向における中心付近をインパクトハンマー54で叩くことで、加振がなされる。伝達関数のピーク(特に一次及び二次のピーク)が大きくなるように、叩く位置が調整される。インパクトハンマー54に取り付けられたフォースピックアップ計56により、入力振動Fが計測される。また、加速度ピックアップ計52により、応答振動αが計測される。応答振動αは、アンプ58を介して、周波数解析装置62に入力される。入力振動Fは、アンプ60を介して、周波数解析装置62に入力される。
【0083】
なお、加速度ピックアップ計52として、PCB社製のMODEL 352C22が用いられた。インパクトハンマー54として、PCB社製のMODEL 086C04が用いられた。アンプ58として、PCB社製のMODEL 482A18が用いられた。周波数解析装置62として、ヒューレットパッカード社製のダイナミックシングルアナライザー HP3562Aが用いられた。
【0084】
解析で得られた周波数領域での伝達関数を求め、シャフト6のピーク周波数fを得た。図7は、この伝達関数の一例を示すグラフである。このグラフの一次波形を用いて、下式により、一次振動の減衰比(ζ)を求めた。
ζ=(1/2)×(△f/f
To=Tn×21/2
なお、Tnは、伝達関数のピーク値(最大値)であり、Toは、このTnに√2を掛けた値であり、Δfは、伝達関数がToのときの周波数幅である(図7参照)。二次波形について同様の計算を行い、二次振動の減衰比が算出された。これらの値が下記の表3に示される。
【0085】
[テスト1](4層構造)
以下のように実施例1及び比較例1を作成して、強度の比較を行った。
【0086】
[実施例1]
上述のシャフト6と同じシャフトが製造された。製造方法及び製造装置は、上述の通りである。製造装置として、村田機械社製の「48キャリアブレイダー」が用いられた。トウプレグとして、JX日鉱日石エネルギー社製の「T800SC24K−SX3−RC30」が用いられた。このトウプレグは、24Kであった。即ち、このトウプレグの繊維束は、24000本のフィラメントを含んでいた。
【0087】
積層は4層とされた。全ての層が、フィラメントワインディング法により形成された。積層構成は、以下の通りとされた。全ての層がバイアス層であった。
・第1層S1:繊維角度θが+45°
・第2層S2:繊維角度θが−45°
・第3層S3:繊維角度θが+45°
・第4層S4:繊維角度θが−45°
【0088】
上記トウプレグが巻き付けられた8個のボビンが用意された。上述の「48キャリアブレイダー」に、これら8つのボビンが装着された。8本のトウプレグを並列させながら同時にマンドレルに巻き付けた。各トウプレグに付与された張力は、1000gfであった。よって、フィラメント1本当たりの張力は、0.042gfであった。
【0089】
マンドレルの1回目の片道移動で、層S1が形成された。この形成では、8本のトウプレグ(繊維束)が、実質的に隙間がないように並列されつつ、螺旋状に巻かれた。同様にして、層S2、層S3及び層S4が形成された。マンドレルが軸方向に2度往復移動することで、上記4つの層が順次形成された。その後、ラッピングテープを巻き付け、オーブンにて130℃で2時間加熱して、樹脂組成物を硬化させた。マンドレル及びラッピングテープを除去して、実施例1のシャフトを得た。シャフトの長さは400mmであり、シャフトの重量は25.5gであった。
【0090】
[比較例1]
上記張力が1000gfから500gfに変更された他は実施例1と同様にして、比較例1のシャフトを得た。当然ながら、シャフトの長さ及び重量は、実施例1と同じであった。
【0091】
実施例1及び比較例1の評価結果は、下記の表1の通りであった。実施例1の3点曲げ強度は、比較例1よりも12%高かった。
【0092】
【表1】
【0093】
[テスト2](7層構造)
以下のように実施例2から4及び比較例2を作成して、強度の比較を行った。
【0094】
[実施例2]
実施例2は、7層構造とされた。全ての層が、フィラメントワインディング法により形成された。積層構成は、以下の通りとされた。
・第1層(最内層):繊維角度θが+45°
・第2層 :繊維角度θが−45°
・第3層 :繊維角度θが0°
・第4層 :繊維角度θが+88°
・第5層 :繊維角度θが0°
・第6層 :繊維角度θが−88°
・第7層(最外層):繊維角度θが0°
【0095】
各層に用いられたトウプレグは、次の通りであった。「T800SC12K−SX3−RC30」(JX日鉱日石エネルギー社製)は、12Kのトウプレグであり、その樹脂含有率は30質量%であった。「T800SC6K−SX3−RC30」(JX日鉱日石エネルギー社製)は、6Kのトウプレグであり、その樹脂含有率は30質量%であった。
【0096】
・第1層(最内層):T800SC6K−SX3−RC30
・第2層 :T800SC6K−SX3−RC30
・第3層 :T800SC6K−SX3−RC30
・第4層 :T800SC6K−SX3−RC30
・第5層 :T800SC6K−SX3−RC30
・第6層 :T800SC6K−SX3−RC30
・第7層(最外層):T800SC12K−SX3−RC30
【0097】
製造装置として、村田機械社製の「48マルチフィラメントワインダー」を用いた。
【0098】
上記トウプレグが巻き付けられた15個のボビンが用意された。また、テーパーを有するマンドレルが用意された。上述の「48マルチフィラメントワインダー」に、これら15のボビンが装着された。第1層(+45°)及び第2層(−45°)の形成では、15本のトウプレグを並列させながら同時にマンドレルに巻き付けた。この巻き付けにおいて、各トウプレグに付与された張力は、フィラメント1本当たり、0.04gfであった。第3層から第7層の形成でも、フィラメント1本当たり0.04gfの張力が付与された。第7層(最外層)の外側にラッピングテープを巻き付け、オーブンにて130℃で2時間加熱して、樹脂組成物を硬化させた。マンドレル及びラッピングテープを除去して、実施例2のシャフトを得た。シャフトの長さは600mmであり、シャフトの重量は26.3gであった。
【0099】
[実施例3]
フィラメント1本当たりの上記張力が0.04gfから0.13gfに変更された他は実施例2と同様にして、実施例3のシャフトを得た。実施例3のシャフトの長さ及び重量は、実施例2と同じであった。
【0100】
[実施例4]
フィラメント1本当たりの上記張力が0.04gfから0.30gfに変更された他は実施例2と同様にして、実施例4のシャフトを得た。実施例4のシャフトの長さ及び重量は、実施例2と同じであった。
【0101】
[比較例2]
フィラメント1本当たりの上記張力が0.04gfから0.02gfに変更された他は実施例2と同様にして、比較例2のシャフトを得た。比較例2のシャフトの長さ及び重量は、実施例2と同じであった。
【0102】
実施例2から4及び比較例2のそれぞれについて、3点曲げ強度及びねじり強度を測定した。この結果が下記の表2に示される。
【0103】
【表2】
【0104】
実施例2の3点曲げ強度は、比較例2に対して12%向上していた。実施例2のねじり強度は、比較例2に対して10%向上していた。
【0105】
実施例3の3点曲げ強度は、比較例2に対して16%向上していた。実施例3のねじり強度は、比較例2に対して20%向上していた。
【0106】
実施例4の3点曲げ強度は、比較例2に対して21%向上していた。実施例4のねじり強度は、比較例2に対して25%向上していた。
【0107】
[テスト3](7層構造)
以下のように実施例5及び6及び比較例3を作成して、振動減衰性を比較した。
【0108】
[実施例5]
実施例5は、7層構造とされた。全ての層が、フィラメントワインディング法により形成された。積層構成は、以下の通りとされた。
・第1層(最内層):繊維角度θが+45°
・第2層 :繊維角度θが−45°
・第3層 :繊維角度θが0°
・第4層 :繊維角度θが+88°
・第5層 :繊維角度θが0°
・第6層 :繊維角度θが−88°
・第7層(最外層):繊維角度θが0°
【0109】
全ての層に、「T800SC6K−SX3−RC30」(JX日鉱日石エネルギー社製)が用いられた。これは6Kのトウプレグであり、その樹脂含有率は30質量%であった。
【0110】
製造装置として、村田機械社製の「48マルチフィラメントワインダー」を用いた。
【0111】
テーパーを有するマンドレルが用意された。第1層(+45°)及び第2層(−45°)の形成では、上記「48マルチフィラメントワインダー」に11個のボビンが装着され、これらのボビンからのトウプレグが巻き付けられた。第3層(0°)形成では、上記「48マルチフィラメントワインダー」に18個のボビンが装着され、これらのボビンからトウプレグが巻き付けられた。第4層(+88°)の形成では、上記「48マルチフィラメントワインダー」に1個のボビンが装着され、このボビンからのトウプレグが巻き付けられた。第5層(0°)形成では、上記「48マルチフィラメントワインダー」に18個のボビンが装着され、これらのボビンからトウプレグが巻き付けられた。第6層(−88°)の形成では、上記「48マルチフィラメントワインダー」に1個のボビンが装着され、このボビンからのトウプレグが巻き付けられた。第7層(0°)形成では、上記「48マルチフィラメントワインダー」に18個のボビンが装着され、これらのボビンからトウプレグが巻き付けられた。
【0112】
第1層(+45°)及び第2層(−45°)の形成では、11本のトウプレグが並列させながら同時に巻き付けられた。第3層(0°)、第5層(0°)及び第7層(0°)の形成では、18本のトウプレグが並列させながら同時に巻き付けられた。全ての層の巻き付けにおいて、各トウプレグに付与された張力は、フィラメント1本当たり、0.13gfであった。
【0113】
第7層(最外層)の外側にラッピングテープを巻き付け、オーブンにて130℃で2時間加熱して、樹脂組成物を硬化させた。マンドレル及びラッピングテープを除去して、実施例5のシャフトを得た。シャフトの長さは600mmであり、シャフトの重量は26.3gであった。
【0114】
[実施例6]
フィラメント1本当たりの上記張力が0.13gfから0.30gfに変更された他は実施例5と同様にして、実施例6のシャフトを得た。実施例6のシャフトの長さ及び重量は、実施例5と同じであった。
【0115】
[比較例3]
フィラメント1本当たりの上記張力が0.13gfから0.02gfに変更された他は実施例5と同様にして、比較例3のシャフトを得た。比較例3のシャフトの長さ及び重量は、実施例5と同じであった。
【0116】
実施例5,6及び比較例3のそれぞれについて、一次振動及び二次振動の減衰比を測定した。この結果が下記の表3に示される。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例5における一次振動の減衰比は、比較例3に対して2.5倍であった。実施例6における一次振動の減衰比は、比較例3に対して5倍であった。
【0119】
実施例5における二次振動の減衰比は、比較例3に対して2倍であった。実施例6における二次振動の減衰比は、比較例3に対して4倍であった。
【0120】
これらの結果は、高い張力によりシャフト強度及び振動減衰性が向上することを示している。本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明されたシャフトは、あらゆるゴルフクラブに適用されうる。
【符号の説明】
【0122】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
10・・・製造装置
12・・・ボビン
14・・・糸
16・・・糸ガイド
18・・・マンドレル
22・・・圧子
24・・・シリコーンラバー
Tp・・・シャフトのチップ端
Bt・・・シャフトのバット端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7