【実施例】
【0143】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0144】
以下の参考例および実施例において、人工ビリルビン標準液(単にビリルビン標準液と記載する場合もある)には、株式会社アローズ製のビリルビン標準液を用いた。新生児血清には、神戸大学病院の新生児特定集中治療室に入院した新生児において、黄疸評価目的に行った血液検査の中で発生した余剰検体であり、神戸大学病院の倫理委員会の承認を受け、かつ、余剰検体の基礎研究への使用について患児の代諾者の了承を得たものを用いた。
【0145】
UnaGおよびUnaG−HisFLAGには、独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターより提供された、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛍光性ポリペプチドを用いた。
【0146】
GOD−POD酵素液には、乾燥凍結品のグルコースオキシダーゼ3.2単位と凍結乾燥品のペルオキシダーゼ3.2単位とを、リン酸二水素カリウム0.0068mgとリン酸水素二ナトリウム12水和物0.720mgと精製水に溶解させて25μLとした液剤中に溶解させたものを用いた。溶媒、希釈液、および酵素希釈液に用いたBufferとしては、リン酸緩衝液(pH7.4)を用いた。
【0147】
マイクロプレートリーダには、コロナ電気株式会社製SH−9000を用いた。総ビリルビンTBおよびアンバウンドビリルビンUBは、UBアナライザ(株式会社アローズ製の専用測定器ユービーアナライザ)を用いた。総ビリルビンT−bilおよび抱合型ビリルビンD−bilは、それぞれ、酵素法を用いたイアトロQ T−BILIIおよびイアトロQ D−BBIL(A)(いずれも株式会社LSIメディエンス製)によって測定し、非抱合型ビリルビンiD−bilはそれらの差分を求めることにより導出した。
【0148】
[参考例1:UnaGを用いたUnaG法と酵素法とによる新生児血清中の非抱合型ビリルビン濃度の比較(1)]
図4に、本参考例1で行ったUnaG法のプロトコルを模式的に示す。
(検量線の作成)
まず、人工ビリルビン標準液を段階希釈し、コントロールとともに、ビリルビン濃度が0.0mg/dLから33.6mg/dLまでの段階希釈系列を調製した。
人工ビリルビン標準液の段階希釈系列それぞれ50μLと、UnaG溶液150μLとを混和し、総量200μLの混合溶液を作成した。混合溶液中のUnaGの最終濃度は2μMであった。
【0149】
混合溶液の蛍光強度は、混和後10分経過時に最大となった。したがって、混和後10分経過時に、マイクロプレートリーダを用い、励起波長498nmに対する蛍光波長527nmの蛍光強度を測定した。非抱合型ビリルビン(iD−Bil)濃度に対する蛍光強度をプロットし、検量線を作成した。得られた検量線を
図5に示す。
【0150】
(検体)
新生児28例より採取した48検体を入手した。28例の症例背景を表1に、48検体の血清採取日齢および酵素法に基づく非抱合型ビリルビンの値を表2に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
(非抱合型ビリルビン濃度の測定)
図4に示すように、上述の新生児血清をそれぞれPBSで200倍希釈した。希釈した各新生児血清50μLとUnaG溶液150μL(400mol)とを混和し、10反応分後、同様に蛍光強度を測定した。上記の検量線に基づいて、測定値から非抱合型ビリルビン濃度(UnaG法による非抱合型ビリルビン濃度)を求めた。
【0154】
48検体について、UnaG法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度と、酵素法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度(総ビリルビン測定値と抱合型ビリルビン値との差分として導出)との相関を調べた。その結果、両方法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=1.04x+0.18、R=0.954、P<0.001)。
【0155】
(光線療法の影響の検証)
さらに、上述の相関について、光線治療中の新生児の検体(11検体)と、光線治療を行っていない新生児の検体(37検体)との間で相違はなかった。したがって、光線療法の測定系への悪影響は確認されなかった。
【0156】
なお、さらに症例数および検体数を増やした例を後述の参考例3に示す。
【0157】
[参考例2:UnaG−HisFLAGを用いたUnaG法と酵素法とによる新生児血清中の非抱合型ビリルビン濃度の比較(1)]
(検体)
新生児29例より採取した53検体を入手した。29例の症例背景を表3に、53検体の血清採取日齢および酵素法に基づく非抱合型ビリルビンの値を表4に示す。
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
(非抱合型ビリルビンの測定)
上記の検体を用い、UnaG法に用いる蛍光性タンパク質としてUnaG−HisFLAGを用いたことを除いて、参考例1と同じように、検量線を作成し、UnaG法と酵素法とで測定された非抱合型ビリルビン測定値の相関を調べた。その結果、両方法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=1.02x−0.08、R=0.954、P<0.001)。
なお、UnaG−HisFLAGは、参考例1で用いたUnaGにヒスチジンタグを介してFLAGタグが付された、UnaGの変形例である。
【0161】
(光線療法の影響の検証)
さらに、上述の相関について、光線治療中の新生児の検体(19検体)と、光線治療を行っていない新生児の検体(34検体)との間で相違はなかった。したがって、光線療法の測定系への悪影響は確認されなかった。
【0162】
なお、さらに症例数および検体数を増やした例を後述の参考例3に示す。
【0163】
[参考例3:UnaGを用いたUnaG法と酵素法とによる新生児血清中の非抱合型ビリルビン濃度の比較(2)、およびUnaG−HisFLAGを用いたUnaG法と酵素法とによる新生児血清中の非抱合型ビリルビン濃度の比較(2)]
(検体)
上述の参考例1および参考例2に、新生児の症例および血清検体をさらに増やし、参考例1および参考例2における症例および血清検体数を含めた合計93例より採取した血清140検体(抱合型ビリルビン<1.0mg/dL)について、症例背景をまとめて表5に、140検体の血清採取日齢および酵素法に基づく抱合型ビリルビンの値をまとめて表6に示す。
【0164】
【表5】
【0165】
【表6】
【0166】
(非抱合型ビリルビンの測定)
上記の140検体を用い、72検体についてはUnaGを使用して参考例1と同様の操作を行い、68検体についてはUnaG−HisFLAGを使用して参考例2と同様の操作を行うことで検量線を作成し、UnaG法(UnaG method)と酵素法(BOD method)とで測定された非抱合型ビリルビン測定値の相関を調べた。140検体の結果をまとめて
図6に示す。
図6に示すように両方法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=1.01x+0.17、r=0.943、P<0.001)。
【0167】
(非抱合型ビリルビンの測定−UnaG使用とUnaG−HisFLAG使用との比較)
図6に示された140検体のうち、UnaGを使用した72検体と、UnaG−HisFLAGを用いた68検体とを区別して
図7に示す。
【0168】
図7では、UnaGを用いた検体(72検体)を×ドットで、UnaG−HisFLAGを用いた検体(68検体)を○ドットで、区別可能にプロットしている。
図7に示すように、UnaGを用いた検体群(72検体、×ドット)では、両方法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=1.03x+0.18、r=0.956、p<0.001)。同様に、UnaG−HisFLAGを用いた検体群(68検体、○ドット)でも、両方法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=0.996x+0.11、r=0.935、p<0.001)。さらに、両検体群で相関の相違はみられなかった。
【0169】
さらに、同日同時間に採取した別の5種類の血清検体について、UnaGまたはUnaG−HisFLAGを用いたUnaG法の検証を行った。その結果を以下の表7に示す。表7に示すように、UnaGおよびUnaG−HisFLAGのいずれを用いた場合も、ほぼ同じ非抱合型ビリルビン濃度が導出されることを確認した。
【0170】
【表7】
【0171】
(光線療法の影響の検証)
上述の140検体について、光線療法を受けていない時間帯に採取した検体群(105検体、丸ドット)と、光線療法を受けている時間帯に採取した検体群(35検体、三角ドット)とを区別可能にプロットした。その結果を
図8に示す。
図8に示すように、両検体群で有意な差は見られなかった。したがって、光線療法の測定系への悪影響は確認されなかった。
【0172】
[参考例4:高濃度抱合型ビリルビン血清を用いた場合のUnaG法と酵素法とによる非抱合型ビリルビン濃度の比較]
抱合型ビリルビン濃度が高い14検体(抱合型ビリルビン≧1.0mg/dL)について、UnaG法(UnaG method)によって得られた非抱合型ビリルビン濃度と、酵素法(BOD method)によって得られた総ビリルビン(Total bilirubin)濃度、抱合型ビリルビン(Conjugated bilirubin)濃度、それらから導出された非抱合型ビリルビン(Unconjugated bilirubin)濃度と、の比較、ならびに、UnaG法(UnaG−HisFLAG使用)および酵素法によって得られたそれぞれの非抱合型ビリルビン濃度の差(Difference)を表8に示す。表8では、酵素法(BOD(bilirubin oxidase) method)によって得られた総ビリルビン(Total bilirubin)濃度、抱合型ビリルビン(Conjugated bilirubin)濃度、およびその差(Difference)について、平均値(Mean)および標準偏差(SD)も併せて示す。なお、酵素法による非抱合型ビリルビンの導出方法は、以下の式に従った。
[非抱合型ビリルビン]=[総ビリルビン]−[抱合型ビリルビン]
1mg/dL=17.1μM
【0173】
表8より、酵素法とUnaG法による抱合型ビリルビン濃度は同等であり有意差はなかった(p=0.31)。したがって、UnaG法は、抱合型ビリルビン濃度の高低に関わらず非抱合型ビリルビンを直接的に測定することができることが示された。
【0174】
【表8】
【0175】
[参考例5:ビリルビン測定値の安定性評価]
新生児血清5検体を用い、UnaG法による非抱合型ビリルビン測定値について、日中変動および日間変動を検証した。その結果を表9に示す。表9では、日中変動についての検証(A. Intra-day assay)と日間変動についての検証(B. Inter-day assay)を表し、それぞれ、UnaG法による非抱合型ビリルビン測定値(A:時刻を変えて測定、B:日を変えて測定)、その中央値(Median)、平均値(Mean)、標準偏差(SD)および変動係数(CV)を、酵素法(BOD method)による非抱合型ビリルビン測定値とともに示す。
なお、日中変動の検証では、調製された同一の血清から時間を異にして測定用試料を調製して得られるiDBの測定値が変化するかどうかを検証した。具体的には、血清を調製後、約20分毎に毎回測定用試料を調製し、合計6回測定した。
また、日間変動の検証では、調製された同一の血清から日を異にして測定用試料を調製して得られるiDBの測定値が変化するかどうかを検証した。具体的には、血清を調製後、毎日測定用試料を調製し、合計6日間に亘って測定を行った。
表9に示すように、日中および日間のいずれにおいても、UnaG法による非抱合型ビリルビン測定値が安定的に得られることが示された。
【0176】
【表9】
【0177】
[参考例1−参考例5まとめ]
以上の参考例1から参考例3より、新生児合計93例からの血清合計140検体について、酵素法による非抱合型ビリルビン測定値とUnaG法による非抱合型ビリルビン測定値とはきわめて良好な相関関係を示した。
【0178】
参考例1から参考例3より、蛍光タンパク質のバリエーションに関し、蛍光タンパク質UnaGを用いたUnaG法および蛍光タンパク質UnaG−HisFLAGを用いたUnaG法いずれにおいても、ほぼ同等の非抱合型ビリルビン測定値を示した。
【0179】
参考例1から参考例3より、光線療法の影響に関し、蛍光タンパク質UnaGを用いたUnaG法および蛍光タンパク質UnaG−HisFLAGを用いたUnaG法いずれにおいても、光線療法の有無による明らかな影響は確認できなかった。
【0180】
参考例4より、抱合ビリルビン濃度の影響に関し、抱合ビリルビン濃度が高い14検体においても酵素法による非抱合型ビリルビン測定値とUnaG法による非抱合型ビリルビン測定値とはほぼ同値であった。
【0181】
さらに、参考例5より、血清調製後の24時間未満のいずれの時点であっても、かつ、1日以上(1日以上6日以下)経過後のいずれの時点であっても、安定した非抱合型ビリルビン測定値が得られた。
【0182】
したがって、検体は、抱合ビリルビンの高低、蛍光タンパク質のバリエーション、被験者の光線療法歴の有無、血清調製後の経過時間にかかわらず本発明へ適用可能であることが容易に推認される。
【0183】
[参考例6:UnaG法による溶血検体の非抱合型ビリルビン濃度測定]
本参考例では、UnaG法による非抱合型ビリルビン(iDB)測定における、検体中のヘモグロビン(溶血)の影響を検証した。
【0184】
(ヘモグロビン含有溶液の作成)
1.健常成人から全血5mLを採取した(血液ガス測定:Hb16g/dL)
2.遠心して上清成分を吸引破棄し、赤血球成分のみを残した。
3.血球成分2mLとdH
2O3mLとを加えて溶血させ、全量5mLとした。
4.十分混和したうえで、遠心して上済み液のみを新しいチューブに移した。
これにより、赤血球膜成分を除いた。結果、全量は約4mL程度となった。
5.SLS−ヘモグロビン法によるXN−series 9000(シスメックス株式会社製)を用いてHb濃度を測定した(Hb13.4)。
6.Bufferを用いて、Hb5g/dL、Hb2.5g/dL、Hb1g/dL、Hb0.5g/dLの希釈系列を作成した。
【0185】
(検量線の作成)
1.ビリルビン標準液(アンバウンドビリルビン標準物質,アローズ社)を用意した。このビリルビン標準液のUBアナライザでの測定値はTB17.1mg/dLであった。
2.ビリルビン標準液をBufferを用いて段階希釈し、ビリルビン濃度が1.71ng/μL、0.855ng/μL、0.4275ng/μLの希釈系列を作成した。また、コントロールとして、当該Bufferのみを用意した。
3.Bufferを用いてUnaG−His FLAGの400pmol/150μL溶液を作成した。
4.UnaG−His FLAG溶液150μLと、ビリルビン標準液の希釈系列50μLとを混合し、マイクロプレートリーダで測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後10分経過時の蛍光強度(最大蛍光強度)を測定した。測定値は、中央値を採用した。
5.ビリルビン濃度と最大蛍光強度とから検量線を作成した。
【0186】
(標準液および新生児検体を用いた検証)
1.2種類の新生児血清(血清225、血清227)をそれぞれ用意した。それぞれの検体について、酵素法で測定された総ビリルビン値(T−bil)、抱合型ビリルビン(D−bil)、およびそれらから導出された非抱合型ビリルビン(iD−bil)と、UBアナライザで測定された総ビリルビン値(TB)、アンバウンドビリルビン(UB)と、アルブミン値(Alb)とを、ビリルビン標準液のTBおよびUBと共に下記表10に示す。
【0187】
【表10】
【0188】
2.新生児血清10μlと、上記で段階希釈により調製した各ヘモグロビン含有溶液10μlと、Buffer1980μlとを混和し、新生児血清の200倍希釈液(ヘモグロビン含有)を作成した。それぞれの200倍希釈液(ヘモグロビン含有)におけるヘモグロビンの最終濃度は、25mg/dl、12.5mg/dl、5mg/dlおよび2.5mg/dlであった。
また、新生児血清10μlと、Buffer1990μlとを混和し、新生児血清の200倍希釈液(ヘモグロビン不含)も作成した。
3.同様に、ビリルビン標準液についても、200倍希釈液(ヘモグロビン含有)4種および200倍希釈液(ヘモグロビン不含)を作成した。
【0189】
4.検量線作成で用いたUnaG−His FLAG溶液150μLと、新生児血清またはビリルビン標準液の200倍希釈液50μLとを混和し、マイクロプレートリーダで蛍光強度を測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後10分経過時の蛍光強度(最大蛍光強度)を測定した。測定値は、中央値を採用した。
5.上述の検量線を用いて、UnaG法でのiD−bil値を算出した。
【0190】
(結果)
ビリルビン標準液では、いずれのヘモグロビン濃度であってもUnaG法によるiDB値はほとんど変化しなかった。
新生児血清でも、いずれのヘモグロビン濃度であってもUnaG法によるiDB値はほとんど変化しなかった。この結果を下記表11および
図9(四角ドット:血清225、丸ドット:血清227)に示す。
【0191】
【表11】
【0192】
[参考例7:UnaG法による乳び含有検体の非抱合型ビリルビン濃度測定]
本参考例では、UnaG法による非抱合型ビリルビン(iDB)測定における、乳びの影響を検証した。
【0193】
(乳び溶液の作成)
1.20%(20g/100mLつまり200mg/mL)イントラリポス輸液を用意した。
2.Bufferを用いて、20mg/mL、2mg/mLおよび0.2mg/mLのイントラリポス溶液を作成した。これによって、200mg/mL(20%)、20mg/mL(2%)、2mg/mL(0.2%)および0.2mg/mL(0.02%)のイントラリポス希釈系列を作成した。
【0194】
(検量線の作成)
1.ビリルビン標準液(アンバウンドビリルビン標準物質,アローズ社)を用意した。このビリルビン標準液のUBアナライザでの測定値はTB17.1mg/dLであった。
2.ビリルビン標準液をBufferを用いて段階希釈し、ビリルビン濃度が1.71ng/μL、0.855ng/μL、0.4275ng/μLの希釈系列を作成した。また、コントロールとして、当該Bufferのみを用意した。3.Bufferを用いてUnaGの400pmol/150μL溶液を作成した。
4.UnaG 150μLと、ビリルビン標準液の希釈系列50μLとを混合し、マイクロプレートリーダ測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後10分経過時の蛍光強度(最大蛍光強度)を測定した。測定値は、中央値を採用した。
5.ビリルビン濃度と最大蛍光強度とから検量線を作成した。
【0195】
(標準液および新生児検体を用いた検証)
1.2種類の新生児血清(血清173、血清200)をそれぞれ用意した。それぞれの検体について、酵素法で測定された総ビリルビン値(T−bil)、抱合型ビリルビン(D−bil)、およびそれらから導出された非抱合型ビリルビン(iD−bil)と、UBアナライザで測定された総ビリルビン値(TB)、アンバウンドビリルビン(UB)と、アルブミン値(Alb)とを、ビリルビン標準液のTBおよびUBと共に下記表12に示す。
【0196】
【表12】
【0197】
2.新生児血清10μlと、上記で調製した各乳び溶液10μlと、Buffer1980μlとを混和し、新生児血清の200倍希釈液(乳び含有)を作成した。それぞれの200倍希釈液(乳び含有)におけるイントラリポス最終濃度は、0.1%、0.01%、0.001%および0.0001%であった。
また、新生児血清10μlと、Buffer1990μlとを混和し、新生児血清の200倍希釈液(乳び不含)も作成した。
3.同様に、ビリルビン標準液についても、200倍希釈液(乳び含有)4種および200倍希釈液(乳び不含)を作成した。
【0198】
4.検量線作成で用いたUnaG溶液150μLと、新生児血清またはビリルビン標準液の200倍希釈液50μLとを混和し、マイクロプレートリーダで蛍光強度を測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後10分経過時の蛍光強度(最大蛍光強度)を測定した。測定値は、中央値を採用した。
5.上述の検量線を用いて、UnaG法でのiD−bil値を算出した。
【0199】
(結果)
ビリルビン標準液では、いずれのイントラリポス濃度であってもUnaG法によるiDB値はほとんど変化しなかった。
新生児血清でも、いずれのイントラリポス濃度であってもUnaG法によるiDB値はほとんど変化しなかった。この結果を下記表13および
図10(四角ドット:血清173、丸ドット:血清200)に示す。
【0200】
【表13】
【0201】
[参考例8:UnaG法によるアスコルビン酸含有検体の非抱合型ビリルビン濃度測定]
本参考例では、UnaG法による非抱合型ビリルビン(iDB)測定における、アルコルビン酸の影響を検証した。
【0202】
(アスコルビン酸溶液の作成)
1.アスコルビン酸 1000mgをBuffer 10mLに溶解し、100mg/mLのアスコルビン酸溶液を調製した。
2.Bufferを用いて、10mg/mL、1mg/mL、0.1mg/mLのアスコルビン酸溶液も調製した。これによって、100mg/mL(10%)、10mg/mL(1%)、1mg/mL(0.1%)および0.1mg/mL(0.01%)のアスコルビン酸希釈系列を作成した。
【0203】
(標準液および新生児検体を用いた検証)
1.参考例7と同じ新生児血清(血清173、血清200)を用意した。
2.新生児血清10μlと、上記で調製した各アスコルビン酸溶液200μlと、Buffer1790μlとを混和し、新生児血清の200倍希釈液(アスコルビン酸含有)を作成した。それぞれの200倍希釈液(アスコルビン酸含有)におけるアスコルビン酸最終濃度は、10mg/mL、1mg/mL、0.1mg/mLおよび0.01mg/mLであった。
また、新生児血清10μlと、Buffer1990μlとを混和し、新生児血清の200倍希釈液(アスコルビン酸不含)も作成した。
3.同様に、ビリルビン標準液についても、200倍希釈液(アスコルビン酸含有)4種および200倍希釈液(アスコルビン酸不含)を作成した。
【0204】
4.参考例7の検量線作成で用いたUnaG溶液150μLと、新生児血清またはビリルビン標準液の200倍希釈液50μLとを混和し、マイクロプレートリーダで蛍光強度を測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後10分経過時の蛍光強度(最大蛍光強度)を測定した。測定値は、中央値を採用した。
5.参考例7の検量線を用いて、UnaG法でのiD−bil値を算出した。
【0205】
(結果)
ビリルビン標準液では、いずれのアスコルビン酸濃度であってもUnaG法によるiDB値はほとんど変化しなかった。
新生児血清でも、いずれのアスコルビン酸濃度であってもUnaG法によるiDB値はほとんど変化しなかった。この結果を下記表14および
図11(四角ドット:血清173、丸ドット:血清200)に示す。
【表14】
【0206】
[参考例6−参考例8まとめ]
以上より、検体中にヘモグロビン、乳び、およびアルコルビン酸のいずれが含まれていても、UnaG法による非抱合型ビリルビン測定に悪影響がないことを確認した。したがって、検体中にヘモグロビン、乳び、およびアルコルビン酸のいずれが含まれていても、本発明へ適用可能であることが容易に推認される。
【0207】
[参考例9:全血を用いたUnaG法(1)]
本参考例から、新生児血液の一部から調製した血清試料と、他の一部である全血試料とを用いて、血球成分の影響を調べた。
血清試料と全血試料とのそれぞれについて、参考例1と同様にしてマイクロプレートリーダでUnaGの蛍光を検出し、非抱合ビリルビン値を3回測定した。下記表15に示すように、ヘマトクリット値Htで補正することによって、全血でも非抱合ビリルビン値を測定することができた。
【0208】
【表15】
【0209】
したがって、検体が全血であっても本発明へ適用可能であることが推認される。
【0210】
[参考例10:全血を用いたUnaG法(2)]
新生児18例から採取した全血26検体について、参考例1と同様に検量線を作成し、UnaG法によって非抱合型ビリルビン濃度を得た。また、当該全血26検体それぞれから血清検体を調製し、血清検体について、参考例1と同様にUnaG法および酵素法によって非抱合型ビリルビン濃度を得た。
【0211】
得られた非抱合型ビリルビン濃度について、UnaG法による全血中の濃度(Concentration in whole blood by the UnaG method)の、酵素法による血清中の濃度(Concentration in serum by BOD method)との相関を調べた。その結果を
図12に示す。
図12に示すように、両検体/両方法によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=0.76x+0.30、r=0.962、p<0.001)。
また、得られた非抱合型ビリルビン濃度について、UnaG法による全血中の濃度(Concentration in whole blood by the UnaG method)の、UnaG法による血清中の濃度(Concentration in serum by UnaG method)との相関を調べた。その結果を
図13に示す。
図13に示すように、両検体によって得られた非抱合型ビリルビン濃度には良好な相関が認められた(y=0.73x+0.77、r=0.962、p<0.001)。
【0212】
[参考例11:UBアナライザで測定した新生児血清のUB/TB比の統計]
抱合型ビリルビン濃度が高い65検体(高DB)の新生児血清と、通常の抱合型ビリルビン濃度である245検体(通常DB)の新生児血清とを入手した。それぞれの検体を酵素法によって総ビリルビン濃度および抱合型ビリルビン濃度を測定した。それらの比(抱合型ビリルビン濃度/総ビリルビン濃度)の分布を以下の表16に示す。
【0213】
【表16】
【0214】
それぞれの検体について、UBアナライザを用いてアンバウンドビリルビン濃度を測定し、総ビリルビン濃度との相関を調べた。その結果を
図14に示す。
図14に示すように、抱合型ビリルビン濃度/総ビリルビン濃度比が5%未満および5%以上10%未満であればおおよそTBとUBとの関係は相関が取れている。しかしながら、当該比が10%以上20%未満となると相関は大きく崩れ、当該比が20%以上となると相関の崩れはさらに顕著になる。
【0215】
[実施例1:GOD−POD−UnaG法によるアンバウンドビリルビンの測定]
本実施例では、新生児血清を用いて、本発明の方法によってアンバウンドビリルビンの測定を行った。
【0216】
(UnaG法の検量線の作成)
1.ビリルビン標準液(アンバウンドビリルビン標準物質, アローズ社)を用意した。このビリルビン標準液のUBアナライザでの測定値はTB17.8mg/dLであった。
2.ビリルビン標準液をBufferで段階希釈し、ビリルビン濃度が17.8ng/μL、8.9ng/μLおよび4.45ng/μLの希釈系列を作成した。また、コントロールとしてBufferのみを用意した。
3.Bufferを用いてUnaG−His FLAGの400pmol/195μL溶液を作成した。(His FLAGは、量産用に付されたアフィニティ精製タグ)
4.UnaG−HisFLAG溶液195μLと、ビリルビン標準液の希釈系列5μLとを混和し、マイクロプレートリーダで測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後15分までの蛍光強度を測定した。測定値(最大蛍光強度)は、中央値を採用した。
5.ビリルビン濃度と最大蛍光強度とから検量線を作成した。
【0217】
(標準液および新生児検体)
1.ビリルビン標準液および3種類の新生児血清(血清172、血清211、血清215)をそれぞれ用意した。それぞれの検体について、酵素法で測定された総ビリルビン値(T−bil)、抱合型ビリルビン(D−bil)、およびそれらから導出された非抱合型ビリルビン(iD−bil)と、UBアナライザで測定された総ビリルビン値(TB)、アンバウンドビリルビン(UB)と、アルブミン値(Alb)とを、ビリルビン標準液のTBおよびUBと共に下記表17に示す。
【0218】
【表17】
【0219】
(各試薬の作成)
1.アスコルビン酸1600mgをBuffer10mLに溶解し、16%(160mg/mL)アスコルビン酸含有Bufferを作成した。
2.GOD−POD酵素液50μLを酵素液希釈液950μLに溶解し、20倍希釈GOD−POD溶液を作成した。
3.Buffer10mLにGlucose500mgを加え、50mg/mlGlucose含有Bufferを作成した。
4.上述のUnaG法の検量線の作成に用いたUnaG−HisFLAGの400pmol/195μL溶液(UnaG−HisFLAG溶液)を用意した。
【0220】
(GOD−POD−UnaG法の検量線の作成)
1.50mg/mLGlucose含有Buffer25μLにビリルビン標準液25μL(TB17.8mg/dL)を加え、標準液−Glucose混合溶液を作成した。
2.標準液−Glucose混合溶液のうち20μLを別のチューブに移し、Buffer80μLを加え、さらに16%アスコルビン酸含有Buffer100μLを加えた。これによって、合計200μLの20倍希釈0秒時点サンプルが得られた。
3.標準液−Glucose混合溶液のうち別の20μLに20倍希釈GOD−POD溶液80μLを加え、30秒後に16%アスコルビン酸含有Buffer100μLを加えた。これによって、合計200μLの20倍希釈30秒時点サンプルが得られた。
4.0秒時点サンプルと30秒時点サンプルとから5μLずつ採取し、UnaG−HisFLAG溶液195μLを入れたウェル内に注入し、蛍光強度を測定した。この場合、各サンプルにつき3回ずつ、注入開始後15分までの蛍光強度を測定し、最大蛍光強度の中央値を採用した(表18参照)。
5.0秒時点サンプルの最大蛍光強度から検量線を作成した。
6.検量線を用いて、0秒時点サンプルおよび30秒時点サンプルのiD−bilを算出した(表18参照)。
【0221】
【表18】
【0222】
上記の情報を下記式(I)にあてはめることによりK値を求めた。
ΔiD-bil / ΔTime = K × [POD] × [U-bil] (I)
その結果、K値は4.77と算出された。
【0223】
(GOD−POD−UnaG法による血清のアンバウンドビリルビンの測定)
1.50mg/mLGlucose含有Buffer25μLに血清25μLを加え、血清−Glucose混合溶液を作成した。このとき、血清は2倍希釈相当であった。
2.血清−Glucose混合溶液のうち20μLに、Buffer 80μLを加え(この時点で、血清は10倍希釈相当)、さらに16%アスコルビン酸含有Buffer 100μLを加えた(この時点で、血清は20倍希釈相当、アスコルビン酸は8%)。これによって、合計200μLの0秒時点サンプルが得られた。
【0224】
3.血清−Glucose混合溶液のうち他の20μLに20倍希釈GOD−POD溶液80μLを加え(この時点で、血清は10倍希釈相当)、30秒後に16%アスコルビン酸含有Buffer100μLを加えた(この時点で、血清は20倍希釈相当、アスコルビン酸は8%)。これによって、合計200μLの30秒時点サンプルが得られた。
なお、分解反応時(つまりGOD−POD溶液80μLを加えた時)において、血清10μLに対し原液(GOD−POD酵素液)GOD−POD4μLの量関係となった。また、分解反応液200μLあたりのGOD−PODの量は0.52Uとなった。
【0225】
4.上記項目2および項目3で作成された0秒時点サンプルおよび30秒時点サンプル200μLのうち5μLずつ採取し、UnaG溶液195μLを入れたウェルに注入し(この時点で、血清は800倍相当、アスコルビン酸は0.2%、pHは7.1から7.2)、マイクロプレートリーダで蛍光強度を測定した。
【0226】
5.各検体につき3回ずつ、注入開始後15分までの蛍光強度を測定し、最大蛍光強度の中央値を採用した(表19参照)。
6.検量線を用いて、最大蛍光強度から、0秒時点サンプルおよび30秒時点サンプルのiD−bilを算出した(表19参照)。
【0227】
【表19】
【0228】
ビリルビン標準液を用いて算出されたK値(4.77)を用い、上記式(I)から、GOD−POD−UnaG法によるアンバウンドビリルビン値([U-bil])を求めた。その結果、それぞれの血清のアンバウンドビリルビン値は、血清172の場合で0.51、血清211の場合で0.75、血清215の場合で0.32であった。
【0229】
[実施例2:GOD−POD−UnaG法によるアンバウンドビリルビンの測定]
本実施例では、新生児血清を用いて、本発明の方法によってアンバウンドビリルビンの測定を行った。
【0230】
(UnaG法の検量線の作成)
1.ビリルビン標準液(アンバウンドビリルビン標準物質, アローズ社)を用意した。このビリルビン標準液のUBアナライザでの測定値はTB17.7mg/dLであった。
2.ビリルビン標準液をBufferで段階希釈し、ビリルビン濃度が4.435ng/μL、2.2175ng/μLおよび1.10875ng/μLの希釈系列を作成した。また、コントロールとしてBufferのみを用意した。
3.Bufferを用いてUnaG−His FLAGの132.4pmol/μL溶液を作成した。
4.UnaG−HisFLAG溶液180μLと、ビリルビン標準液の希釈系列20μLとを混和し、マイクロプレートリーダで測定した。この場合、測定感度は×1とし、各希釈系列につき3回ずつ、注入開始後15分までの蛍光強度を測定した。測定値(最大蛍光強度)は、中央値を採用した。
5.ビリルビン濃度と最大蛍光強度とから検量線を作成した。
【0231】
(標準液および新生児検体)
1.ビリルビン標準液および4種類の新生児血清(血清179、血清180、血清181、血清185)をそれぞれ用意した。それぞれの検体について、酵素法で測定された総ビリルビン値(T−bil)、抱合型ビリルビン(D−bil)、およびそれらから導出された非抱合型ビリルビン(iD−bil)と、UBアナライザで測定された総ビリルビン値(TB)およびアンバウンドビリルビン(UB)と、アルブミン値(Alb)とを、ビリルビン標準液のTBおよびUBと共に下記表20に示す。
【0232】
【表20】
【0233】
(各試薬の用意)
1.アスコルビン酸400mgをBuffer40mLに溶解し、1%(10mg/mL)アスコルビン酸含有Bufferを作成した。
2.アローズ社UBアナライザ用試薬であるGOD−POD溶液を用意した(下記表21参照)。
3.アローズ社UBアナライザ用試薬である1mg/mlGlucose含有Buffer(下記表21参照)を用意した。
4.上述のUnaG法の検量線の作成に用いたUnaG−HisFLAGの132.4pmol/μL溶液(UnaG−HisFLAG溶液)を用意した。
【0234】
【表21】
【0235】
(GOD−POD−UnaG法の検量線の作成)
1.1mg/mLGlucose含有Buffer1000μLにビリルビン標準液20μL(iD−bil17.7mg/dL)を加え、標準液−Glucose混合溶液を作成した。
2.標準液−Glucose混合溶液に、Buffer25μLを加え、さらに1%アスコルビン酸含有Buffer555μLを加えた。これによって、合計1600μLの80倍希釈サンプルが得られた。
3.80倍希釈サンプルを20μL採取し、UnaG溶液180μlをセットしたUBアナライザ内のウェルに加え、蛍光強度を測定した。
4.上記項目3の操作を3回行い、UnaG溶液注入開始後10分までの蛍光強度を測定した。
5.最大蛍光強度とiD−bil濃度とから検量線を作成した。この場合、最大蛍光強度としては注入開始後10分までの蛍光強度のうちの最大値であって、かつ中央値を採用した。
【0236】
結果、非抱合型ビリルビン濃度iDB=最大蛍光強度/255.9 という関係が導出された。つまり、
図5の検量線と同等であることを確認した。
【0237】
(0秒時点のiD−bil測定)
1. 1mg/mLGlucose含有Buffer1000μLにビリルビン標準液または血清20μL(iD−bil17.7mg/dL)を加え、標準液−Glucose混合溶液を作成した。
2.標準液−Glucose混合溶液に、Buffer25μLと1%アスコルビン酸含有Buffer555μLとを同時に加えた。これによって、合計1600μLの80倍希釈0秒時点サンプルが得られた。
3.血清、Buffer、アスコルビン酸混和前のサンプルおよびアスコルビン酸混和後のサンプルのTB値をUBアナライザで測定し記録した。
【0238】
(20秒時点のiD−bil測定)
1. 1mg/mLGlucose含有Buffer1000μLにビリルビン標準液または血清20μL(iD−bil17.7mg/dL)を加え、標準液−Glucose混合溶液を作成した。
2.標準液−Glucose混合溶液にGOD−POD溶液25μLを加え、20秒後に1%アスコルビン酸含有Buffer555μLを加えた。これによって、合計1600μLの80倍希釈20秒時点サンプルが得られた。
3.血清、Buffer、アスコルビン酸混和前のサンプルおよびアスコルビン酸混和後のサンプルのTB値をUBアナライザで測定し記録した。
なお、血清10μlあたり原液GOD−POD12.5μlとなり、1600μLの20秒時点サンプルあたりGOD−POD3.2Uとなり、アスコルビン酸含有Bufferを加えた後のアスコルビン酸の終濃度は0.35%となった。
【0239】
(検討方法)
1.上記の0秒時点サンプル(以下、単に0秒サンプルと記載)および20秒時点サンプル(以下、単に20秒サンプルと記載)それぞれ1600μlのうち20μlずつを採取し、UnaG溶液180μlを入れたウェルに注入し、蛍光強度を測定した。この場合、80倍希釈血清20μlを採取したこととなり、アスコルビン酸の終濃度は0.035重量%となり、pHは7.30以上7.35以下の範囲となった。
【0240】
2.各サンプルについて3回ずつ、注入開始後10分までの蛍光強度を測定した。
3.最大蛍光強度から、0秒時点のiD−bil(0秒値)および20秒時点のiD−bil(20秒値)を算出した。
4.標準液の0秒値および20秒値と、下記式(I)とから、K値を求めた。
ΔiD-bil / ΔTime = K × [POD] × [U-bil] (I)
5.新生児血清の0秒値および20秒値と、上記項目4で得られたK値と、上記式(I)とを用いて、U-bil値を求めた。
6.上記項目5で得られたU-bil値と、UBアナライザで測定したU-bil値の相関関係を調べた。
【0241】
(参考)
まず、上記と同様に30秒時点サンプル(つまり20秒後に1%アスコルビン酸含有Bufferを加えた場合のサンプル)を作成し、分解反応時間が20秒(表22参照)である場合と30秒(表23参照)である場合とでどちらがよりΔTB%が安定するか検討した。
【0242】
【表22】
【表23】
【0243】
上記表22および表23より、分解反応時間が20秒である20秒サンプルを採用した。
【0244】
(結果)
1.標準液
標準液のTB値とUB値とを下記表24に示す。
【0245】
【表24】
【0246】
記録した測定値を下記表25に示す。なお、表25において換算値とは、容量変化をもとに1600/1045を乗じて算出した値である(以下の表において同様)。
【0247】
【表25】
【0248】
UnaG溶液添加後の各測定値を下記表26に示す。表26が示すように、UBアナライザによるTB値およびUnaGによるiDB値について、いずれもΔ%が20%前後で安定していることを確認した。
【0249】
【表26】
【0250】
以下のようにK値を算出した。
ΔTB/Δt=Kx[POD]x[UB]
K=ΔTB/Δt/[POD]/[UB]
Δtおよび[POD]はこの実験系では一定であることから1とすると
K=ΔTB/0.71と算出された。
なお、GOD−POD−UnaG法では、iDB値とTB値として使用した。
【0251】
【表27】
【0252】
2.血清179
血清179のTB値とUB値とを下記表28に示す。
【0253】
【表28】
【0254】
記録した測定値を下記表29に示す。
【0255】
【表29】
【0256】
UnaG溶液添加後の各測定値を下記表30に示す。
【0257】
【表30】
【0258】
3.血清181
血清181のTB値とUB値とを下記表31に示す。
【0259】
【表31】
【0260】
記録した測定値を下記表32に示す。
【0261】
【表32】
【0262】
UnaG溶液添加後の各測定値を下記表33に示す。
【0263】
【表33】
【0264】
4.血清185
血清185のTB値とUB値とを下記表34に示す。
【0265】
【表34】
【0266】
記録した測定値を下記表35に示す。
【0267】
【表35】
【0268】
UnaG溶液添加後の各測定値を下記表36に示す。
【0269】
【表36】
【0270】
5.血清180
血清180のTB値とUB値とを下記表37に示す。
【0271】
【表37】
【0272】
記録した測定値を下記表38に示す。
【0273】
【表38】
【0274】
UnaG溶液添加後の各測定値を下記表39に示す。
【0275】
【表39】
【0276】
(UB値の導出)
1.下記表40に、従来の測定方法(GOD−POD法)によるUBアナライザのUB値と、20秒時点のTB値を基にしたUB値(ΔTB/4.65)とを示す。
【0277】
【表40】
【0278】
さらに、
図15に、従来の測定方法によるUBアナライザのUB値(UB analyzer UB)と、TB値を基にしたUB値(UB analyzer−0-20s)との相関を示す。
図15に示すように、両者は良好な相関を示した。したがって、GOD−POD液を混和した後の、UBアナライザを用いて測定されたTB値の推移(0秒値と20秒値とのΔTB)に基づいてUB値を算出できることが示された。
【0279】
2.下記表41に、従来の測定方法(GOD−POD法)によるUBアナライザのUB値と、アスコルビン酸混和後の換算値を基にしたUB値(ΔTB/4.51)とを示す。
【0280】
【表41】
【0281】
さらに、
図16に、従来の測定方法によるUBアナライザのUB値(UB analyzer UB)と、アスコルビン酸混和後の換算値を基にしたUB値(UB analyzer−0-20s)との相関を示す。
図16に示すように、両者は良好な相関を示した。したがって、アスコルビン酸で反応停止後、UBアナライザを用いて0秒値と20秒値とのΔTBからUB値を算出できることが示された。
【0282】
上記項目1および項目2より、UBアナライザを用いた従来の測定方法(GOD−POD法)では、GOD−POD液を混和した後においてTB値が95%から76%まで低下するまでにかかる時間からUB値を算出していた(
図17(a)参照)が、本発明では、GOD−POD液の混和時点から20秒時点のΔTB(比色法で測定)からでも、GOD−POD液の混和時点から20秒時点のΔiDB(UnaG法で測定)からでも、UB値を算出できる(
図17(b)参照)ことが示された。
【0283】
3.下記表42に、従来の測定方法(GOD−POD法)によるUBアナライザのUB値と、GOD−POD−UnaG法のiDB値を基にしたUB値(ΔTB/5.49)とを示す。
【0284】
【表42】
【0285】
さらに、
図18に、従来の測定方法によるUBアナライザのUB値(UB analyzer UB)と、GOD−POD−UnaG法のiDB値を基にしたUB値(GOD-POD-UnaG-UB)との相関を示す。
図18に示すように、両者は良好な相関を示した。したがって、アスコルビン酸で反応停止させた後、UBアナライザを用いてUnaG法でのiDB値に基づいてUB値を算出できることが示された。
【0286】
[実施例3:GOD−POD−UnaG法によるアンバウンドビリルビンの測定(DB低値例)]
(検体)
新生児33例より採取した、DB低値(DB<1.0mg/dL)の血清45検体を検証した。33例の症例背景を表43に、45検体の血清採取日齢および酵素法に基づく非抱合型ビリルビンの値を表44に示す。
【0287】
【表43】
【0288】
【表44】
【0289】
(非抱合型ビリルビンの測定−GOD−POD法との比較)
上記の45検体を用い、実施例2と同様に、本発明のGOD−POD−UnaG法によりアンバウンドビリルビン(UB)の測定を行った。参考用に、上記の45検体を用い、UBアナライザ(GOD−POD法)によりUBの測定を行った。GOD−POD−UnaG法とGOD−POD法とで測定されたUB測定値の相関を調べた。その結果を
図19に示す。
図19に示すように両方法によって得られたUB濃度には良好な相関が認められた(y=0.876x+0.07、r=0.947、P<0.001)。
【0290】
[実施例4:GOD−POD−UnaG法によるアンバウンドビリルビンの測定(DB高値例)]
(検体)
新生児4例より採取した、DB高値(DB≧1.0mg/dL)の血清11検体を検証した。11検体の検体番号;症例番号(症例番号1はトリソミー18、症例番号2および3は先天性サイトメガロウイルス感染症、症例番号3はメチルマロン酸血症);在胎週数;出生体重(BW);血清採取日齢;酵素法で測定された総ビリルビン値(T-bil(mg/dL))、抱合型ビリルビン値(D-bil(mg/dL))、およびそれらから導出された非抱合型ビリルビン値(iD-bil(mg/dL))と総ビリルビンに対する抱合型ビリルビンの比率(DB/TB(%));UBアナライザで測定された総ビリルビン値(TB(mg/dL))およびアンバウンドビリルビン(非抱合型ビリルビン)値(UB(μg/dL));ならびにアルブミン値(Alb(g/dL))を、表45に示す。
【0291】
【表45】
【0292】
(非抱合型ビリルビンの測定−GOD−POD法との比較)
上記の11検体を用い、実施例2と同様に、本発明のGOD−POD−UnaG法によりアンバウンドビリルビン(UB)の測定を行った。従来の測定方法(GOD−POD法)によるUBアナライザのUB値(UB analyzer UB)と、本発明のGOD−POD−UnaG法によるiDB値を基にしたUB値(GOD-POD-UnaG-UB)との相関を調べた。その結果を
図20に示す。
図20においては、11検体の結果(Xドットでプロット)を実施例3の
図19に重ねて示している。
図20に示すように、DB高値例の本実施例では、DB低値例の実施例3とはプロットの分布が異なり、従来のGOD−POD法では比較的高値を示す傾向が明らかとなった。
【0293】
[iDB/Alb比とUBとの関係]
実施例3での低DB値(DB<1.0mg/dL)の検体と、実施例4での高DB値(DB≧1.0mg/dL)の検体とについて、iDB/Albモル比とUB値との関係を調べた。その結果を
図21および
図22に示す。
図21は、iDB/Albモル比と、従来の測定方法によるUBアナライザのUB値との関係を示し、
図22は、iDB/Albモル比と、本発明のGOD−POD−UnaG法によるUB値との関係を示す。なお、
図21および
図22では、iDB/Albモル比が0.6以下である検体、具体的には低DB値の40検体(●ドットでプロット)および高DB値の11検体(×ドットでプロット))について示している。
【0294】
図21に示すように、従来のGOD−POD法によると、低DB値の40検体では良好な相関関係(r=0.849、P<0.001)が認められたが、高DB値の11検体では相関関係は不良(r=0.375、p=0.255)であった。
一方、
図22に示すように、本発明のGOD−POD−UnaG法によると、低DB値の40検体で良好な相関関係(r=0.874、P<0.001)が認められた上に、高DB値の11検体でも良好な相関関係(r=0.895、p<0.001)が認められた。
【0295】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な変形がなされる。