(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716172
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイの表示制御装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20200622BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20200622BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20200622BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/00 510A
G09G5/38 Z
G02B27/01
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-204872(P2016-204872)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-65444(P2018-65444A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧沢 昭彦
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−266925(JP,A)
【文献】
特開2016−145783(JP,A)
【文献】
特開2009−113710(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2016−0110725(KR,A)
【文献】
特開2013−112269(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/036363(WO,A1)
【文献】
特開2015−134521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
G09F 9/00
G09G 3/20
G09G 5/00− 5/36
G09G 5/377−5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントウィンドウに投影する画像を生成する画像処理手段と、
生成された前記画像を画像投影部により前記フロントウィンドウに投影させる画像制御手段と、
前記車両の走行状況等を検出する走行状況等検出手段と、
を有し、
前記画像処理手段は、前記走行状況等の検出結果に基づいて前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像を生成し、
前記走行状況等検出手段は、前記車両の走行する道路の種別を検出する道路種別検出手段を有し、
該道路種別検出手段が前記車両の走行する道路が高速道路以外の一般道路であると検出したときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成し、
該道路種別検出手段が前記車両の走行する道路が高速道路であると検出したときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の全域を前記画像の生成領域とする第2画像を生成するヘッドアップディスプレイの表示制御装置。
【請求項2】
前記走行状況等検出手段は、前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段により検出された前記走行速度が、所定走行速度以下であるか否かを判定する速度判定手段と、を有し、
該速度判定手段により前記走行速度が前記所定走行速度以下と判定されたときは、前記車両の走行する道路が高速道路であると検出された場合でも、前記画像処理手段は、前記第1画像を生成する請求項1に記載のヘッドアップディスプレイの表示制御装置。
【請求項3】
車両のフロントウィンドウに投影する画像を生成する画像処理手段と、
生成された前記画像を画像投影部により前記フロントウィンドウに投影させる画像制御手段と、
前記車両の走行状況等を検出する走行状況等検出手段と、
を有し、
前記画像処理手段は、前記走行状況等の検出結果に基づいて前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像を生成し、
前記走行状況等検出手段は、前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段により検出された前記走行速度が、所定走行速度以下であるか否かを判定する速度判定手段と、を有し、
前記速度判定手段により前記走行速度が前記所定速度以下と判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成し、
前記速度判定手段により前記走行速度が前記所定速度以下でないと判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の全域を前記画像の生成領域とする第2画像を生成するヘッドアップディスプレイの表示制御装置。
【請求項4】
車両のフロントウィンドウに投影する画像を生成する画像処理手段と、
生成された前記画像を画像投影部により前記フロントウィンドウに投影させる画像制御手段と、
前記車両の走行状況等を検出する走行状況等検出手段と、
を有し、
前記画像処理手段は、前記走行状況等の検出結果に基づいて前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像を生成し、
前記走行状況等検出手段は、前記車両の前方を走行する前方車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段により検出された車間距離が所定距離以下であるか否かを判定する車間距離判定手段と、を有し、
該車間距離判定手段により前記車間距離が所定距離以下と判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成し、
前記車間距離判定手段により前記車間距離が所定距離以下でないと判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の全域を前記画像の生成領域とする第2画像を生成するヘッドアップディスプレイの表示制御装置。
【請求項5】
前記画像投影部は、遠方位置と近方位置との双方に前記画像の表示領域を投影形成する請求項1乃至4のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイの表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を画像投影部によりフロントウィンドウに投影させるヘッドアップディスプレイの表示制御装置及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウィンドウで反射させた速度計、燃料計等の画像を車両前方の虚像として運転者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置(以下、適宜「HUD」という)が用いられている。HUDの表示画像の視認では、走行中の運転者が視線移動を極力少なくして情報を取得することができ、車両前方の安全確認に寄与するものである。
【0003】
上記したHUDは、視線移動を少なくするという利点があるものの、HUDでの表示が前方の視界認識の妨げ(ドライバーディストラクション)となる場合がある。例えば、一般道路を走行中は高速道路の走行と比べて速度が低いことから、前方を走行する車との車間距離が小さく、このような場合にはHUDの表示が走行時の前方視界の認識の妨げとなる。
【0004】
HUDの技術開発においては、車両前方の視認性と情報表示の視認性の両立を目的とする車両情報制御装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1に記載の車両情報制御装置によれば、走行中の走行速度が高いほどHUDの表示領域を狭くする等の対応が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−134521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、走行速度が低く、前方の車両との車間距離が小さい一般道路では、運転者の目の前の中央領域にHUDによる情報の表示があると前方視界の妨げとなるのに対し、走行速度の高い高速道路では周囲に視線を向けづらく、中央領域での表示が好ましいという点については、上記特許文献1に記載の装置では考慮されていない。
【0007】
本発明は、HUD表示において、走行道路等の走行状況に応じた最適な表示形態とすることができるヘッドアップディスプレイの表示制御装置及び制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置は、車両のフロントウィンドウに投影する画像を生成する画像処理手段と、生成された前記画像を画像投影部により前記フロントウィンドウに投影させる画像制御手段と、前記車両の走行状況等を検出する走行状況等検出手段と、を有し、前記画像処理手段は、前記走行状況等の検出結果に基づいて前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像を生成
し、前記走行状況等検出手段は、前記車両の走行する道路の種別を検出する道路種別検出手段を有し、該道路種別検出手段が前記車両の走行する道路が高速道路以外の一般道路であると検出したときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成し、該道路種別検出手段が前記車両の走行する道路が高速道路であると検出したときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の全域を前記画像の生成領域とする第2画像を生成する構成である。
【0009】
このような構成によれば、車両の走行状況等の検出結果に基づいて投影する画像を生成するので、走行状況等である、車両の走行速度、前方車両との車間距離、走行する道路の種別、天候状況、道路面状況等の走行状況等に対応する画像を提供することができる。例えば、車間距離が短いときは、前方車両の視認に支障のない画像の提供をすることができる。なお、上記したように、車両の走行状況等とは、速度等の車両自体の状況のほか、走行する道路、車両周囲等の環境の状況も含むものとする。
そして、車両の走行する道路が一般道路であると検出されたときは、フロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成するので、前方車両の視認の支障とならないようにできる。また、高速道路であると検出されたときには、前方車両との車間を一般道路よりも長くとるので、表示領域の全体を画像の生成領域とする第2画像とすることができる。
【0010】
本発明に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置において、
前記走行状況等検出手段は、前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段により検出された前記走行速度が、所定走行速度以下であるか否かを判定する速度判定手段と、を有し、該速度判定手段により前記走行速度が前記所定走行速度以下と判定されたときは、前記車両の走行する道路が高速道路であると検出された場合でも、前記画像処理手段は、前記第1画像を生成する構成とすることができる。
【0011】
このような構成によれば、
走行する道路が高速道路である時にも、検出された車両の走行速度が所定走行速度以下であるときは、画像の表示領域のうち中央領域に画像を生成しない第1画像を投影することで、高速道路での渋滞時の前方視認を可能とするものである。
【0012】
本発明に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置において、
車両のフロントウィンドウに投影する画像を生成する画像処理手段と、生成された前記画像を画像投影部により前記フロントウィンドウに投影させる画像制御手段と、前記車両の走行状況等を検出する走行状況等検出手段と、を有し、前記画像処理手段は、前記走行状況等の検出結果に基づいて前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像を生成し、前記走行状況等検出手段は、前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段により検出された前記走行速度が、所定走行速度以下であるか否かを判定する速度判定手段と、を有し、前記速度判定手段により前記走行速度が前記所定速度以下と判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成し、前記速度判定手段により前記走行速度が前記所定速度以下でないと判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の全域を前記画像の生成領域とする第2画像を生成する構成とすることができる。
【0013】
このような構成によれば、走行道路の種類を問わずに、車両の走行速度が所定速度以下の場合と所定速度を超える場合とのように、走行速度に応じて画像の表示領域の範囲を異ならせるようにすることができるので、速度による視界範囲の変動に対応させた前方視認を確保することができる。
【0014】
本発明に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置において、
車両のフロントウィンドウに投影する画像を生成する画像処理手段と、生成された前記画像を画像投影部により前記フロントウィンドウに投影させる画像制御手段と、前記車両の走行状況等を検出する走行状況等検出手段と、を有し、前記画像処理手段は、前記走行状況等の検出結果に基づいて前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像を生成し、前記走行状況等検出手段は、前記車両の前方を走行する前方車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段により検出された車間距離が所定距離以下であるか否かを判定する車間距離判定手段と、を有し、該車間距離判定手段により前記車間距離が所定距離以下と判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の中央部を除く左右端部を前記画像の生成領域とする第1画像を生成し、前記車間距離判定手段により前記車間距離が所定距離以下でないと判定されたときは、前記画像処理手段は、前記車両のフロントウィンドウに投影する前記画像の表示領域の全域を前記画像の生成領域とする第2画像を生成する構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、
前方車両との車間距離が所定距離以下のときは、画像の表示領域のうち中央領域を除いた両端部に画像を生成する第1画像を投影表示し、所定距離以下でないときは中央領域にも画像を生成する第2画像を投影表示するので、近接する前方の走行車両の視認性を阻害することがない。
【0016】
本発明に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置において、
前記画像投影部は、遠方位置と近方位置との双方に前記画像の表示領域を投影形成する構成とすることができる。
【0017】
このような構成によれば、
遠方位置と近方位置との双方に投影画像を表示するので、画像の表示内容に応じて表示位置を選択することができ、前方の視認性と画像の視認性との双方の両立を図ることができる。例えば、前方車両との車間が短い一般道路等では、近方位置の投影画像の表示領域の中央部に画像を生成しない第1画像とし、遠方画像を第2画像とすることで、前方の視認性と画像の視認性との双方の両立を図ることができる。遠方位置に設けた画像の表示領域をFar画像表示領域、近方位置に設けた画像の表示領域をNear画像表示領域とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車両の走行状況等の検出結果に基づいてフロントウィンドウに投影する画像を生成するので、走行時の前方視認性を害することのないように、投影画像による情報の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置を構成するブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置の制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)による投影画像(2レイヤー)の表示原理の概略を示す断面概略図である。
【
図4】フロントウィンドウに投影されたHUDによる投影画像(2レイヤー)を示す概略図である。
【
図5A】HUDによる投影画像(2レイヤー)の一般道路用表示の表示領域を示す概略図である。
【
図5B】HUDによる投影画像(2レイヤー)の高速道路用表示の表示領域を示す概略図である。
【
図6A】HUDによる投影画像(2レイヤー)の高速道路用表示(D1)の表示領域を示す概略図である。
【
図6B】HUDによる投影画像(2レイヤー)の高速道路用表示(D2)の表示領域を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置は、
図1に示すように構成される。
【0025】
図1において、ヘッドアップディスプレイの表示制御装置11は、コンピュータユニット(例えば、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース、バス等)によって構成される制御部12を有する。制御部12には、フロントウィンドウ(
図3参照)に映像を投影する投影装置であるヘッドアップディスプレイ装置(HUD)13が接続されている。制御部12には更に、HUD12により投影される画像を生成する画像処理部15、画像処理部により生成された画像や画像生成のための各種プログラム等を記憶する記憶部18、車両の走行速度、前方車両との車間距離等を検出するセンサー等で構成されるセンサー部16、ヘッドアップディスプレイの表示制御装置11を操作するためのタッチパネル形式の操作部17が接続されている。なお、操作部17としては、タッチパネル形式の他に、ボタン形式のハードキーを使用又は併用しても良い。上記した制御部12、画像処理部15、操作部17、記憶部18によりヘッドアップディスプレイの表示制御装置11が構成される。
【0026】
制御部12は、更に、車両31(
図3参照)の車載機器であるナビゲーション装置21に接続されており、ナビゲーション装置21を介して車両の位置情報、地図情報、道路情報等を取得することができる。センサー部16により検出された各種検出情報、ナビゲーション装置21からの各種情報により、制御部12が車両の走行情報等を検出する(走行状況等検出手段)。
【0027】
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)13は、車両31のインストルメントパネル32内に設けられ、画像投影部である画像投影機及び反射鏡等(不図示)で構成されている。なお、本実施形態のHUD13は、後述するようにフロントウィンドウ33の前方の遠方位置と近方位置とにそれぞれ画像の表示領域(Far画像表示領域35、Near画像表示領域36)を形成できるように、画像投影機及び反射鏡等が複数設けられている。画像処理部16で生成された画像は、制御部12による制御の下、画像投影機からフロントウィンドウ33に投影され、運転者38にはフロントウィンドウ33の前方である、Far画像表示領域35、Near画像表示領域36に表示された虚像として視認されるようになる。
【0028】
図4は車両31の運転席からフロントウィンドウ33を通して見た前方の景色であり、この景色中にFar画像表示領域35、Near画像表示領域36が破線で示す上下2段の横長長方形状の位置に設けられる。上段に設けられるFar画像表示領域35には、右端部に外部からの情報(プッシュ)が、左端部には制限速度の表示、現在の走行速度の表示等のインフラ情報が、中央部には路面上に生じた水溜まり等の存在を示す注意情報、走行ガイド等の画像が表示されている。下段に設けられるNear画像表示領域36には、右端部に着信表示、左端部に地図情報等が表示されている。上記したFar画像表示領域35及びNear画像表示領域36に表示される画像は、画像処理部15により生成され、制御部12による制御の下、HUD13からフロントウィンドウ33に投影することで表示される。
【0029】
上記した構成のヘッドアップディスプレイの表示制御装置11では、
図2に示すような手順にて処理がなされる。制御部12は、操作部17から作動開始の入力がされると、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)13を作動させる(S11)。操作部17からは、画像の濃淡、画像サイズ(Far画像表示領域35及びNear画像表示領域36)等の設定が可能である。また、Far画像表示領域35とNear画像表示領域36との2レイヤー表示の他に、Far画像表示領域35又はNear画像表示領域36の一方のみを表示するように設定することも可能である。通常、単独画像の場合には、Near画像表示領域36の表示のみとすることができる。
【0030】
制御部12は、車両31が高速道路を走行しているか否かをナビゲーション装置21による位置情報、地図情報等により検出する(S12:道路種別検出手段)。ナビゲーション装置21に含まれるナビゲーションユニット(GPS、ジャイロセンサ等)及び地図情報により車両31が高速道路上であるか、一般道路上であるかを把握することができる。また、搭載されるETC装置(不図示)からの情報取得により高速道路上の走行を検出することができる。
【0031】
制御部12は、高速道路上の走行を検出したときは(S12のYES)、センサー部16を通じて車両の走行速度を検出し、走行速度が所定速度(例えば、80km/h)以上であるか否かを判定する(S13:速度検出手段、速度判定手段)。高速道路上を走行する場合でも、常時高速で走行できるとは限らず、渋滞時、悪天候、工事中等においては、一般道路上と同程度の速度で走行する場合があることを考慮したものである。
【0032】
制御部12は、車両の走行速度が所定速度(80km/h)以上であると判定したときは(S13のYES)、画像処理部15により生成された高速道路用表示を画像の表示領域(Far画像表示領域35とNear画像表示領域36)に表示する(S14:画像処理手段、画像制御手段)。また、制御部12は、車両が高速道路上でないと判定したとき(S12のNO)、又は車両が高速道路上であると判定(S12のYES)したときでも、車両の走行速度が所定速度(例えば、80km/h)以上でないと判定したときには(S13のNO)、画像処理部15により生成された一般道路用表示を画像の表示領域(Far画像表示領域35とNear画像表示領域36)に表示する(S14:画像処理手段、画像制御手段)。高速道路を走行しているときでも、所定速度(例えば、80km/h)以下のときは、前方の先行車両との車間距離は一般道路走行と大差なく、前方の視界範囲も同様になることを考慮したものである。
【0033】
画像の表示領域(Far画像表示領域35とNear画像表示領域36)に表示する一般道路用表示と、高速道路用表示とを
図5A、
図5Bを参照して説明する。
図5Aに一般道路用表示(Far画像表示領域35及びNear画像表示領域36)の概略図が2段表示で示されている。下段のNear画像表示領域36では、中央部(中央領域)36aを画像の表示を行わない非表示領域とし、左端部36bに車両(自車)31の位置を示すマップ(地図)情報の画像をナビゲーション装置21から取得して表示し、右端部36cに所謂エンタメ・ステリモ等の各種情報に関する画像を表示する。一般道路又は低速時の高速道路上では、前方車両との車間距離が短く、安全確認のために前方視界を確保する必要から、中央部36aに画像表示を行わない、非表示領域としたものである。上段のFar画像表示領域35においても、中央部35aは非表示領域とし、下段のNear画像表示領域36の中央部36aよりも広く非表示領域とすることができる。左端部35bには、速度計や燃料計等のインフラ情報の画像を表示し、右端部35cにはプッシュ(外部情報)に関する画像を表示する。
【0034】
図5Bに高速道路用表示(Far画像表示領域35及びNear画像表示領域36)の概略図が2段表示で示されている。下段のNear画像表示領域36では、一般道路用表示と異なり、領域全体に画像の表示ができる。例えば、左側36dに車両(自車)31の位置を示すマップ(地図)情報やPA(駐車場)情報の画像をナビゲーション装置21から取得して表示し、右側36eに所謂エンタメ・ステリモ等の各種情報に関する画像を表示する。表示する情報量の多少に応じて、左側36d又は右側36eの領域を、中央を超えて拡張することができる。
図5Bでは、エンタメ・ステリモの情報量が多く中央を超えた領域まで拡張されている。高速道路上を高速で走行する場合には、前方車両との車間距離が比較的長く取られることから、下段のNear画像表示領域36の中央部も含めた全体を画像表示領域としたものである。
上記同様の理由から、上段のFar画像表示領域35においても、中央部35aには各種情報に関する画像の表示領域とし、例えばオンデマンドの走行ガイド等の画像を表示し、左端部35bには速度計画像等のインフラ情報を表示し、右端部35cにはプッシュ(メールの着信等を通知する通知表示)の画像を表示するものである。
【0035】
このように、本実施形態によれば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の画像表示において、一般道路の走行時、又は高速道路の低速走行時、駐停車時においては、画像表示領域(2レイヤー及び1レイヤー等)の左右端部に画像を表示し、中央部(中央領域)には画像表示しない非表示領域とするので、前方車両との車間距離が短い場合、飛び出し等のおそれがある場合等において、映像が視界を妨げることがなく、視界と画像の視認性の両方を確保することができる。高速道路での高速走行時には、前方車両との車間距離が比較的長く、飛び出し等の恐れが殆どないことから、画像表示領域(2レイヤー及び1レイヤー等)の全領域に画像を表示することができ、上述した一般道路と同様に、視界と画像の視認性の両方を確保することができる。
【0036】
ここで、高速道路と一般道路とで中央領域と非表示領域との表示を切り替えることとしているが、走行道路の種類に関係なく、車両の走行速度が所定速度以下の場合と所定速度を超える場合とのように、走行速度に応じて中央領域および非表示領域の範囲を異ならせるようにしても良い。例えば、所定速度を時速90km/時としたときに、高速道路を所定速度の90km/時以下である時速80km/時で走行中の場合には、
図6Aの高速道路用表示(D1)に示すように、Far画像表示領域35の中央部35aに非表示領域を残し、所定速度90km/時を超える時速100km/時で走行中の場合には、
図6Bの高速道路用表示(D2)に示すように、中央部35aの全面を表示領域とするようにしても良い。これにより、走行状況に応じて前方視界の妨げを防ぐことができる。また、Near画像表示領域36の左側36dおよび右側36eに表示される画像の範囲を走行状況に応じて異ならせることも好適である。上記同様に、一般道路においても走行速度に応じて中央領域および非表示領域の範囲を異ならせるようにすることができる。
【0037】
本実施形態では、高速道路、一般道路でのHUDによる画像の表示領域等について言及したが、これに限定するものでなく、例えば、前方車両との車間距離を計測し、所定距離以下の場合には、画像表示領域の中央部(中央領域)を画像表示の非表示領域として、視界と画像の視認性の両方を確保することができる。また、道路幅の狭小、周囲の混雑度、昼夜時間帯、天候状況、道路混雑度等に応じて、画像表示の非表示領域を設定することができる。画像の非表示領域を画像表示領域の中央部としたが、これに限定するものでなく、例えば、歩道が十分確保されていない道路と検出、判定したときは、歩道側の領域を画像表示の非表示領域と設定して、視界を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上、説明したように、本発明に係るヘッドアップディスプレイの表示制御装置及び表示制御方法によれば、車両の走行状況等の検出結果に基づいてフロントウィンドウに投影する画像を生成するので、走行時の前方視認性を害することのないように、投影画像による情報の視認性を向上させることができるという効果を奏するので、画像を画像投影部によりフロントウィンドウに投影させるヘッドアップディスプレイの表示制御装置及び表示制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0039】
11 ヘッドアップディスプレイの表示制御装置
12 制御部
13 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)
15 画像処理部
16 車両状況検出部
17 操作部
18 記憶部
21 ナビゲーション装置
31 車両
32 インストルメントパネル
33 フロントウィンドウ
35 Far画像表示領域35
36 Near画像表示領域36
38 運転者