(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出部は、前記血管に相当する部分とあらかじめ設定された径とを比較し、前記血管に相当する部分のうち、当該径より小径の部分を特定し、特定した当該部分の走行方向を求めること、
を特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜
図14を参照して、第1実施形態〜第4実施形態にかかる画像処理装置について説明する。
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる画像処理装置の構成につき、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、第1実施形態にかかる画像処理装置1の概略構成を示すブロック図である。第1実施形態にかかる画像処理装置1について、医用画像ワークステーションを一例として説明する。第1実施形態において、画像処理装置1は医用画像データにおける所定の部位(器官等)を同定する。以下の説明では、画像処理装置1が、医用画像データとしてのボリュームデータから、小径の血管を当該所定の部位として同定する例について説明する(下記、「同定部7A」参照)。また画像処理装置1は、小径の血管をボリュームデータにおける直交3断面に投影する。また画像処理装置1は血管が投影された直交3断面のうち、エネルギーが最小となる面を、小径の血管の走行方向に対応する断面として求める(下記、「算出部7B」参照)。また、画像処理装置1は、求めた面に沿うように、ボリュームデータに対してノイズ低減処理を行う(下記、「画像処理部8」参照)。
【0021】
なお、第1実施形態においては、あらかじめ医用画像診断装置20A〜医用画像診断装置20Cのいずれかにより生成され、画像保管装置30に保管されたボリュームデータが、画像処理装置1により取得される。ただし、画像処理装置の構成の他の例として、後述の第2実施形態のように、被検体の体内組織の情報の収集、再構成処理、ボリュームデータの生成を行う医用画像診断装置(
図6参照)に含まれるものであってもよい。
【0022】
(画像処理装置と外部装置の概略構成)
図1に示すように、第1実施形態の画像処理装置1は、主制御部2、送受信部3、表示部4、操作部5、記憶部6、断面特定部7および画像処理部8を有する。また、ネットワークを介して、画像処理装置1と複数の医用画像診断装置20A、医用画像診断装置20B、医用画像診断装置20C…医用画像診断装置20nが接続されている。さらに画像処理装置1は、ネットワークを介して画像保管装置30に接続されている。画像処理装置1は、主制御部2の指示信号により送受信部3を介して画像保管装置30等からボリュームデータを取得する。なお、
図1においては一例として医用画像診断装置20A、医用画像診断装置20B、医用画像診断装置20Cおよび画像保管装置30がネットワークに接続されているが、各装置の数は任意に設定することが可能である。なお、以下の例において、医用画像診断装置20A等は被検体の体内組織の情報の収集等を行う。医用画像診断装置は、例えば、X線画像診断装置、X線CT装置、MRI装置、超音波診断装置等である。
【0023】
また、画像保管装置30は、例えばPACS(Picture Archiving and Communication System)によるものである。例えば画像保管装置30は、画像データベースを有する画像管理装置である。画像管理装置はプログラムにより、画像データベースの医用画像データを管理する。他の例として画像保管装置30はネットワークアタッチドストレージ(NAS;Network Attached Storage)等の医用画像データを記憶するファイルサーバとしてもよい。
【0024】
<制御部>
主制御部2は、画像処理装置1の各部の制御を行う。例えば主制御部2は、ボリュームデータの解析用ソフトウェアと、ボリュームデータをメインメモリに送り、以下に説明するノイズ低減に関する一連の処理を各部に行わせる。また、主制御部2は操作部5からの操作信号を受け、画像保管装置30からボリュームデータの取得要求を実行する。また主制御部2は、表示部4による医用画像の表示にかかる制御を行う。
【0025】
<送受信部>
送受信部3は、医用画像診断装置20A、医用画像診断装置20B 、医用画像診断装置20Cまたは画像保管装置30との間で、ボリュームデータをやり取りするためのインターフェースである。
【0026】
<表示部>
表示部4は、任意の表示デバイス(CRT、LCD、OELD、FED等)によって構成される。表示部4は、主制御部2の制御を受けて各種の画面や画像(X線画像等)を表示する。
【0027】
<操作部>
操作部5は、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、コントロールパネル等の任意の形態の操作デバイスや入力デバイスによって構成される。実施された操作に基づいて操作部5が出力する操作信号は主制御部2に送られ、主制御部2はこの操作内容に対応する制御や演算を実行する。
【0028】
<記憶部>
記憶部6には、任意の記憶媒体(HDDやSSD等)が用いられる。記憶部6には上記の解析用のソフトウェアや画像保管装置30等から受けたボリュームデータ、その他、画像処理装置1の各機能を実行するためのプログラム等が記憶される。なお、記憶部6がボリュームデータを記憶せず、ボリュームデータが主制御部2のメインメモリ等に一時的に記憶される構成であってもよい。
【0029】
<断面特定部7>
断面特定部7は、注目対象となる部位(器官等)を同定する同定部7Aと、同定された部位が示す画素の走行方向に対応する断面を求める算出部7Bとを有する。次に、同定部7Aおよび算出部7Bについて説明する。
【0030】
<同定部7A>
《小径部位の特定−概要》
まず同定部7Aの一連の処理の概要を説明する。主制御部2によりメインメモリにボリュームデータと解析用ソフトウェアが送られると、同定部7Aは対象部位における狭い領域を特定する。対象部位が血管である場合、同定部7Aは血管の小径部分を特定する。一例として同定部7Aは、ボリュームデータを縮小し、その後拡大する。
【0031】
以下、断面特定処理の対象である、狭い領域を有する部位の同定にかかる処理につき、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、第1実施形態にかかる画像処理装置1の処理の概略を説明するための概念図である。
図3は、周辺画素の範囲の概念を示す概略図である。なお、当該処理の説明の前提として、
図2に示される各ボリュームデータ(V1〜V3)と、ボリュームデータに含まれる血管領域(R1、R2)について説明する。
【0032】
図2には、穿通枝等の小血管領域R1と、動静脈領域R2とを含む、処理前ボリュームデータV1が概念的に示されている。小血管領域R1は、複数の連結領域の集合である。また、通常、動脈領域と静脈領域とは、連結していないが、
図2においては説明の簡略化のため、まとめて1つの符号で表されている。
【0033】
また
図2には、縮小処理(例えばエロージョン;erosion)により小血管領域R1が除去された処理後ボリュームデータV2が概念的に示されている。また
図2には、処理前ボリュームデータV1と処理後ボリュームデータV2との差分を示す差分ボリュームデータV3が示されている。なお、
図2に示された同定部7Aによる小径の血管の同定処理は、一例である。
【0034】
《小径血管等の特定−縮小処理》
図2に示すように同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1について縮小処理を行うことにより、小径の血管が除去された縮小ボリュームデータV1eを生成する。すなわち、処理前ボリュームデータV1において、小血管領域R1を構成する複数の連結領域のそれぞれは、動静脈領域R2の径に比して微小である。したがって、同定部7Aが処理前ボリュームデータV1を縮小すると、微小なデータである小血管領域R1は、他の画素により除去される。
【0035】
具体例として、処理前ボリュームデータV1がX,Y,Z方向に512×512×512のボクセルで構成されている場合を挙げる。この例において、同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1における2×2×2のボクセル群を平均化した上で、縮小後のボリュームデータにおける1のボクセルとする。なお、この平均化処理は一例である。この処理によって、処理前ボリュームデータV1は、256×256×256に縮小される。このとき平均化するボクセル群の範囲は2×2×2に限らず、処理前ボリュームデータV1に含まれるボクセル数や、特定しようとする血管等のサイズに応じて設定することが可能である。上記解析用ソフトウェアあるいは操作者の指定により、ボリュームデータが示す被検体の領域に応じてこの範囲が変更されてもよい。
【0036】
上記において、縮小処理は1回行われているが、同定部7Aは2回以上縮小処理を行ってもよい。すなわち同定部7Aは、512×512×512の処理前ボリュームデータV1を256×256×256に縮小した後、さらに128×128×128に縮小してもよい。このように複数回にわたり縮小処理が行われることにより、1回目の縮小処理により除去されなかった所定の径を有する血管を、2回目以降の縮小処理によって除去することが可能である。例えば縮小処理の回数の増加は操作によって行われる。このようにして、同定部7Aは、2回以上縮小処理を行うことにより、除去しようとする血管の太さを調整することができる。
【0037】
《小径血管等の特定−拡大処理》
同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1と縮小ボリュームデータV1eに基づいて小血管領域R1を含まない拡大処理後のボリュームデータV2を得る。具体例として、同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1のボクセルにおける血管レベル以上の値を示すボクセルについて、該当する縮小ボリュームデータV1eにおける対応位置を同定する。また縮小ボリュームデータV1eのうち、同定したボクセルあるいはその周囲の26近傍のボクセル(
図3参照)の中に一つも血管レベル以上の値を示すボクセルがなければ、同定部7Aは、縮小ボリュームデータV1eにおいて同定された位置のボクセルの値を処理後のボリュームデータV2のボクセルの値とする。血管レベル以上の値を示すボクセルが存在する場合は処理前ボリュームデータV1のボクセル値を処理後のボリュームデータV2のボクセル値とする。この処理を処理後のボリュームデータV2の全てのボクセルについて実行する。
【0038】
《小径血管等の特定−血管の同定》
同定部7Aは、縮小前の処理前ボリュームデータV1および処理後ボリュームデータV2に対し、閾値処理を行うことにより、これらのデータから血管をそれぞれ抽出する。
【0039】
《小径部位の特定−サブトラクション処理》
さらに同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1から抽出した小血管領域R1および動静脈領域R2と、処理後ボリュームデータV2から抽出した動静脈領域R2とのサブトラクション処理を行う。この処理により、小血管領域R1が抽出された差分ボリュームデータV3が生成される。以上のように、同定部7Aは、ボリュームデータから小径の血管を抽出する。上記ではボクセル値に閾値処理を行うことで血管を抽出する例を説明したが、血管の連続性及びボクセル値を元に血管を抽出する構成であってもよい。
【0040】
<算出部7B>
算出部7Bの一連の処理の概要について説明する。同定部7Aにより小径の血管等、狭い領域を有する部位の同定が行われると、算出部7Bは、次のようにノイズ低減処理を適用する断面を同定する。
【0041】
《所定断面に投影》
まず算出部7Bは、同定した小径の血管を、ボリュームデータにおいて互いに方向が異なる複数の断面に投影させる。この複数の断面としては、例えば直交3断面が挙げられる。算出部7Bが血管を投影する対象の複数の断面としては、直交3断面に限られないが、説明の便宜上、以下においては直交3断面の例において説明する。
【0042】
なお、直交3断面は、例えばアキシャル面、コロナル面、サジタル面である。人の組織を示すボリュームデータであれば、アキシャル面は体軸方向に直交する断面である。コロナル面は、体軸方向に平行であって、人体を前後方向に(背面側と正面側に)分割するような断面である。サジタル面は人体を左右方向に分割するような断面であって、アキシャル面およびコロナル面とそれぞれ直交する。
【0043】
《断面のエネルギーの算出》
次に、算出部7Bは直交3断面における小径の血管部分のエネルギーを求める。一例として、算出部7Bは、下記式(2)によりエネルギーを求める。なお、p(u,v)は小径の血管部分の各断面への投影を示し、(u,v)は断面上の位置を示す
【0045】
算出部7Bは、各断面におけるエネルギーを比較する。この比較により、断面のエネルギーの大小が求められる。ここで、当該比較の前段階において同定部7Aにより小径の血管が抽出されているので、直交3断面には小径の血管が投影されていることになる。また頭部を対象とするボリュームデータであれば、アキシャル面は、抽出された穿通枝のような小径の血管の走行方向に対し、実質的に直交する。したがって、アキシャル面に投影された小径の血管部分のエネルギーは大きくなる。
【0046】
そこで、小径の血管の走行方向と直交する断面にノイズ低減処理を行わないようにするため、この実施形態の算出部7Bは、エネルギーを求めた対象の各断面のうち、エネルギーが最小である断面を特定する。
【0047】
《断面の面積の算出》
画像処理装置1における算出部7Bは、上記のように複数断面それぞれのエネルギーを算出する構成に限られない。例えば算出部7Bは直交3断面に投影された小径の血管の面積をそれぞれ求める構成であってもよい。また頭部を対象とするボリュームデータであれば、アキシャル面は、抽出された穿通枝のような小径の血管の走行方向に対し、実質的に直交する。したがって、アキシャル面に投影された小径の血管部分の面積は小さい傾向にある。そこで、小径の血管の走行方向と直交する断面にノイズ低減処理を行わないようにするため、この変形例にかかる算出部7Bは、血管の面積を求めた対象の各断面のうち、面積が最大である断面を特定する。
【0048】
<画像処理部8>
画像処理部8は、算出部7Bが特定した断面(方向)をノイズ低減処理の対象として決定する。さらに画像処理部8は決定した断面に、上記数式(1)により説明した平滑化によるノイズ低減処理を行う。あるいは画像処理部8は、例えばコヒーレントフィルタを用いてノイズ低減処理として行う。コヒーレントフィルタの概要について次に記載する。
【0049】
画像処理部8は、対象の断面における画素(「対象画素」とする)ごとに、周辺画素と似ているかどうかの適合度を設定に応じて求める。さらに画像処理部8は、求めた適合度合いによりコヒーレントフィルタのフィルタ係数を変化させる。例えば画像処理部8は、求めた適合度合いが高くなればなるほど、フィルタ係数を大きくしていく。同様に画像処理部8は、求めた適合度合いが低ければ低いほどフィルタ係数を小さくしていく。なお、直交3断面それぞれが512×512の画素により構成されている場合、対象画素に対する周辺画素の範囲の例は11×11である。さらに以下において、本例におけるコヒーレントフィルタの概念について説明する。
【0050】
画像処理部8は、対象の断面を構成する画素ごとの画素値(ベクトル値またはスカラー値)と、他の画素の画素値(「周辺画素」とする)間の適合度を定量化する。また、画像処理部8は、定量化された対象画素と周辺画素の適合度の大小を、閾値処理により求める。あるいは当該適合度があらかじめ設定された複数段階の数値範囲に属するかの判断を行う。また、画像処理部8は、周辺画素の画素値を対象画素の画素値として利用する。このとき画像処理部8は、当該適合度が大きい場合には、当該周辺画素の寄与度を大きくする。同様に、当該適合度が小さい場合には、当該周辺画素の寄与度を小さくする。他の例において、画像処理部8は、適合度の属する範囲に応じて当該周辺画素の寄与度を決定する。
【0051】
具体例として画像処理部8は、対象画素と周辺画素の適合度の関数である重み関数を、各周辺画素の画素値のそれぞれについて求められた適合度に作用させる。画像処理部8は、それにより各周辺画素の画素値の重みを決定する。また画像処理部8は、この重みを用いた周辺画素について画素値の重み付き平均を算出する。それにより、画像処理部8は、対象画素と周辺画素との適合度が大きい場合には、周辺画素の重みを大きくする。このようにして画像処理部8は、周辺画素の画素値の重み付き平均における寄与度を大きくして対象画素の画素値を構成する。同様に適合度が小さい場合には重みを小さくすることで、画像処理部8は、周辺画素の画素値の重み付き平均における寄与を小さくして対象画素の画素値を構成する。このような処理によれば、対象画素と「類似する」と判定される周辺画素を重視して対象画素の画素値を構成することになる。その結果、空間分解能の低下が抑制される。なお、一例において重み関数は、適合度に関する非負の単調増加関数である。
【0052】
本実施形態においては、一の画素値および他の画素値をそれぞれ構成するスカラー値に対し、統計的検定を適用した結果求められる危険率に基づいて、適合度を定量化し得るように構成されてもよい。なお、ここにいう「統計的検定」としては、例えば、「χ二乗検定(Chi-squared test)」等を考えることができる。また一般に、ここで導入された危険率と適合度との関係は、特に、一方が増えれば他方が減るという場合を含む。すなわち、新たな画素値を構成する際に、危険率が大きく(適合度が小さく)なれば、他の画素に対する重みが小さくなる(構成すべき新たな画素値に対する寄与が小さくなる)。また危険率が小さく(適合度が大きく)なれば、他の画素に対する重みが大きくなる(構成すべき新たな画素値に対する寄与が大きくなる)、という場合である。
【0053】
また、統計的検定において「統計的に有意な差がない(=適合度が大きい)」と判断された場合は、類似である可能性が高いと判断される。これに対し、統計的検定において「統計的に有意な差がある(=適合度が小さい)」と判断された場合は、類似度が低いと判断される。
【0054】
上記においてはコヒーレントフィルタの例を説明したが、画像処理部8としては、非等方性拡散フィルタ(Anisotropic Diffusion Filter)によるノイズ低減処理を行う構成とすることも可能である。非等方性拡散フィルタとしては、例えば適応加重非等方拡散(Adaptively Weighted Anisotropic Diffusion;AWAD)処理を用いることが可能である。適応加重非等方拡散処理は、様々なサイズの関連性のある生体組織の構造、またはこの構造の周囲のエッジを維持し、かつノイズを低減する点で有効である。
【0055】
(動作)
次に
図4および
図5を参照して第1実施形態の画像処理装置1の動作の概要について説明する。
図4および
図5は、第1実施形態の画像処理装置1におけるノイズ低減処理の一連の動作を表すフローチャートである。
【0056】
<ステップ01>
医師等の操作者は、画像処理装置1の操作部5により、ボリュームデータを識別するための識別情報等を入力する。識別情報は、画像ID、患者ID、検査ID等である。主制御部2は、送受信部3を介し、対象のボリュームデータを記憶する外部装置(画像保管装置30等)に、入力された識別情報等を送る。画像保管装置30等の外部装置は、識別情報を受けて対応するボリュームデータを画像処理装置1に送る。画像処理装置1の主制御部2は、当該ボリュームデータを記憶部6等に一旦記憶させる。
【0057】
<ステップ02>
主制御部2により、S01で一旦記憶させたボリュームデータおよび解析用ソフトウェアがメインメモリに送られる。解析用ソフトウェアにより、同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1について縮小処理を行い、小径の血管が除去された処理前ボリュームデータV1を生成する。
【0058】
<ステップ03>
さらに同定部7Aは、縮小された処理前ボリュームデータV1について拡大処理を行い、小血管領域R1が除去された状態の処理後ボリュームデータV2を生成する(
図2参照)。
【0059】
<ステップ04>
処理後ボリュームデータV2が生成されると(S03)、同定部7Aは、例えば画素値等に基づく閾値処理を行うことにより、各ボリュームデータ(V1,V2)における血管等を同定する。血管を示すボクセルが同定されることにより、処理前ボリュームデータV1および処理後ボリュームデータV2における血管が特定される。
【0060】
<ステップ05>
さらに同定部7Aは、縮小前の処理前ボリュームデータV1から抽出した小血管領域R1および動静脈領域R2と、処理後ボリュームデータV2から抽出した動静脈領域R2とのサブトラクション処理を行う。この処理により、差分ボリュームデータV3が生成される。同定部7Aは、この処理によりボリュームデータから小径の血管を抽出する。
【0061】
<ステップ06>
同定部7Aにより小径の血管の抽出が行われると(S05)、算出部7Bは、当該小径の血管を、ボリュームデータにおけるアキシャル面、コロナル面およびサジタル面に投影させる。
【0062】
<ステップ07>
直交3断面に小径の血管が投影されると(S06)、算出部7Bは当該各断面小径の血管部分のエネルギーを求める。
【0063】
<ステップ08>
次に、算出部7Bは、各断面における小径の血管部分それぞれのエネルギーを比較する。この処理により算出部7Bは、エネルギーを求めた対象の各断面のうち、エネルギーが最小である断面を特定する。
【0064】
<ステップ09>
画像処理部8は、算出部7Bが特定した断面をノイズ低減処理の対象として決定する。さらに画像処理部8は、決定した断面に上記ノイズ低減処理を行う。
【0065】
なお、上記動作に限らず、同定部7Aにより複数回にわたり縮小処理が行われる構成でもよい。この処理により、1回目の縮小処理で除去されなかった所定の径を有する血管を、2回目以降の縮小処理によって除去することで、除去しようとする血管の太さを調整することができる。
【0066】
また、S02およびS03の処理と、S04の処理の順序は逆であってもよい。すなわち、処理前ボリュームデータV1に対して、閾値処理により血管等が同定された後、S02およびS03の処理が行われてもよい。
【0067】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかる画像処理装置1の作用および効果について説明する。
【0068】
本実施形態にかかる画像処理装置1は、狭小な領域を有する注目対象(小径の血管等)を含むボリュームデータにおいて、当該注目対象を特定する。また画像処理装置1は、その注目対象をボリュームデータにおいて方向が異なる複数の断面に投影させる。また画像処理装置1は血管が投影された断面のうち、エネルギーが最小となる面(または対象部分の面積が最大となる面)を求める。また、画像処理装置1は、その面を、小径の血管の走行方向に対応する断面として求める。また、画像処理装置1は、その面に沿ってノイズ低減処理を行う。
【0069】
このような構成によれば、周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。その結果、当該ノイズ低減処理後のボリュームデータに基づく画像において、注目対象の視認性が低下する事態を防止することが可能である。
【0070】
また、第1実施形態にかかる画像処理装置1は、医用画像データの縮小処理によって、小径の血管等、狭小な領域を特定する構成である。このような構成によれば、当該特定に要する演算処理を簡易化し、CPU等の演算処理装置へのロードが高くなることを防止することができる。CPU等の演算処理装置へのロードを抑制することにより、緊急時において、注目領域の画像の表示が遅くなる事態を回避することが可能である。例えば緊急時に医用画像診断装置を操作する操作者が撮影部位の選択のための時間、または部位ごとの検査プログラム等を設定する時間を確保できない場合がある。その場合にも、画像処理装置1は迅速に医用画像データにノイズ低減処理を行いつつ、医用画像データにおける小径部位の視認性の低下を防止することが可能である。
【0071】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる画像処理装置1について説明する。
図6は、第2実施形態にかかるX線診断装置100の構成の概要を示す概略ブロック図である。
図7Aおよび
図7Bは、時間変化にともなって取得されたフレームt
1〜t
nの関係を示す概略図である。
図7Aは、頭部を対象とした画像群であり、
図7Bは、腹部を対象とした画像群である。
【0072】
上記第1実施形態においては、画像処理装置1は、医用画像データとしてボリュームデータにおける対象部位に含まれた小径領域を特定する構成である。これに対し、第2実施形態によれば、ノイズ低減処理を行う対象が動画像であってもよい。なお、第2実施形態にかかる画像処理装置1において、主制御部2、送受信部3、表示部4、操作部5および記憶部6の構成については、第1実施形態と同様であるため説明を割愛する。
【0073】
<概要>
第2実施形態の概要について説明する。画像処理装置1の同定部7Aは、時間変化に応じて生成された複数のフレーム群(X線動画像等)の各フレームにおける小径領域をそれぞれ特定する。複数のフレーム群については、
図7Aおよび
図7Bのt
1〜t
nに概略を例示する。
【0074】
この第2実施形態の医用画像データは、例えば被検体の同一部位を連続的、または断続的にスキャンすることにより取得されたものである。また、医用画像データにおけるフレームt
1〜t
nはそれぞれ2次元画像である。第1実施形態で説明したようにボリュームデータの場合は、ある時点における方向が異なる複数の断面を定義することができる。これに対し、時間変化に応じて取得された複数の2次元画像を含んで構成される動画像等においては、方向が異なる複数の断面を定義できない。したがって、この第2実施形態においては、フレーム面、フレーム横軸(
図7Aおよび
図7BのX方向)と時間軸、およびフレーム縦軸(
図7Aおよび
図7BのY方向)と時間軸を3断面と考える。
【0075】
第2実施形態における画像処理装置1は、フレームt
1〜t
nにおける小径領域を有する注目対象(小径の血管あるいはガイドワイヤーなどのデバイス等)を抽出する。さらに、画像処理装置1は、注目対象等をフレーム横軸、縦軸に投影し、投影データのエネルギー(または対象部分の面積)を求める。画像処理装置1は、求めた値の対比の結果に基づいてノイズ低減処理の制御を行う。例えば、画像処理装置1は、複数断面にノイズ低減処理を行う場合、ノイズ低減処理を行う断面及びその順番を決定する。
【0076】
なお第2実施形態の画像処理装置1は、例えばX線診断装置のような医用画像診断装置に含まれていてもよい。以下、
図6を参照して、画像処理装置1がX線診断装置100に含まれたものとして説明する。X線診断装置100において例えば被検体の観察対象部位を固定して透視が行われる。透視の結果、被検体の観察対象を透過したX線が検出され、生成部102により、所定の時間軸において異なる時相のX線動画像を構成するフレームt
1〜t
nが生成される。
【0077】
生成部102は、生成したフレームを送受信部3に送る。主制御部2は送受信部3に送られたフレームを断面特定部7に送る。
【0078】
<同定部7A>
《小径部位の特定》
図7Aおよび
図7Bに示すように、第2実施形態では、対象がボリュームデータでなく、時間変化に応じて取得された複数のフレーム群(t
1〜t
n)である。したがって、同定部7Aは、フレームt
1〜t
nそれぞれにおいて小径部位(小径の血管あるいはガイドワイヤーなどのデバイス等)の特定にかかる処理を行う。例えば同定部7Aは、フレームが生成されることに対応してこの処理を行う。なお、第2実施形態における小径部位の特定にかかる処理は、第1実施形態における処理が2次元的に行われるものとする(縮小処理等)。
【0079】
《血管の抽出》
第2実施形態において、同定部7Aは第1実施形態と同様に閾値処理を行うことにより、血管を抽出する。ただし、第2実施形態において必ずしも第1実施形態と同様の処理によって血管の抽出を行う必要はない。例えば、同定部7Aは、DSA(Digital Subtraction Angiography)を用いて血管の抽出を行ってもよい。
【0080】
例えば同定部7Aは、非造影のX線画像(マスク像)と造影後のX線画像(コントラスト像)とのサブトラクション処理を行なう。これによって、DSA(血管造影)画像が生成される。観察対象部位が心臓部位であれば、X線診断装置100は外部装置(心電計)等から心電波形を取得し、その心電波形に基づき所定の心時相で心電同期スキャンを行う。その結果、X線動画像を構成する複数のX線画像のフレームt
1〜t
nが生成される。なお、マスク画像がない心臓のX線動画像の場合、同定部7Aは、ぼけ画像をマスク画像としてサブトラクション処理してもよい。すなわち、同定部7Aは、生成部102により生成されたX線画像のフレームに対し、例えば5×5で平均化し、X線画像のぼけ画像を作成する。さらに同定部7Aは、ぼけ画像と元の画像をサブトラクション処理する。これにより同定部7Aは、血管が抽出された画像を生成する。
【0081】
このように第2実施形態では、同定部7Aによるサブトラクション処理の結果、血管の抽出が行われてもよい。
【0082】
《エネルギーの算出》
X線画像のフレームについて小径の血管が抽出されると、算出部7Bは、小径の血管を3断面に投影し、投影データにおける小径の血管部分のエネルギーを求める。エネルギーの求め方は第1実施形態と同様である。
【0083】
《面積の算出》
第2実施形態における算出部7Bは、上記のように投影データのエネルギーを算出する構成に限られない。すなわち、第1実施形態と同様に、算出部7Bにより投影データにおける小径の血管の面積を求める構成であってもよい。面積の求め方は第1実施形態と同様である。
【0084】
<画像処理部8>
画像処理部8は、X線画像のフレームについて求めたエネルギーに基づき、当該フレームに対するノイズ低減処理にかかる制御を行う。例えば画像処理部8は、3断面への投影方向において、それぞれ求められたエネルギーまたは求められた面積を対比する。画像処理部8は、対比の結果に応じてノイズ低減処理にかかる制御を行う。画像処理部8は、対比の結果に基づいて3断面の順番を特定する。
【0085】
《制御例1》
画像処理部8は、先ずはエネルギーが最も低い断面に対しノイズ低減処理を行う。なお、ノイズ低減処理は、第1実施形態と同様であってもよい。
【0086】
《制御例2》
画像処理部8は、求められたエネルギーまたは面積の値に応じて、次にノイズ低減処理を行う断面を決定し、その断面にしたがってノイズ低減処理を行う。
【0087】
《リアルタイム画像のノイズ低減処理》
次に、第2実施形態におけるリアルタイム画像に対するノイズ低減処理ついて
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
【0088】
後処理におけるノイズ低減処理では予め生成された異なる時相のX線画像の複数のフレームt
1〜t
10についてノイズ低減処理が適用される。この適用においては、時間軸をボリュームデータの3軸における1軸であるように仮定する以外は第1実施形態と全く同じ処理が行われる。
【0089】
一方、リアルタイム画像に対するノイズ低減処理を、時間軸を含む断面に適用する処理について、
図7Aおよび
図7Bの例において説明すると次のようになる。すなわち、t
11のフレームに対して適合度の探索範囲を11×11としてノイズ低減処理が行われる場合は、処理対象のフレーム及びそれより前に取得されたフレームt
1〜t
11を用いてノイズ低減処理が行われる。
【0090】
ここでリアルタイム画像に対するノイズ低減処理とリアルタイム画像以外に対するノイズ低減処理の違いを明確にするため、適合度を算出する領域と適合度の探索範囲について比較する。リアルタイムで表示するX線画像以外へノイズ低減処理を適用する場合、適合度は、時系列順に取得された各フレームにおける対象のピクセルあるいはボクセルを中心とする、例えば3×3の領域について算出される。適合度の探索範囲は、対象のピクセルあるいはボクセルを中心とする、例えば11×11の領域である。これに対し、リアルタイムで表示するX線画像に対して時間軸を含む断面にノイズ低減処理が適用される場合は次のとおりである。すなわち対象のピクセルとその隣接するピクセル(フレーム縦軸方向へのノイズ低減処理の場合は上下のピクセル)とを、t
9〜t
11まで集めた3X3の領域について、適合度が算出される。適合度の探索範囲は、対象のピクセルを中心とした隣接する5ピクセル(フレーム縦軸方向へのノイズ低減処理の場合は上下の5ピクセル)をt
1〜t
11まで集めた11X11の領域となる。
【0091】
(動作)
次に
図8を参照して第2実施形態の画像処理装置1の動作の概要について説明する。
図8は、第2実施形態の画像処理装置1におけるノイズ低減処理の一連の動作を表すフローチャートである。
【0092】
<ステップ11>
X線診断装置100において被検体の同一部位を連続的、または断続的にスキャンすることにより、生成部102はX線動画像を構成するフレームを生成する。生成部102は生成したフレームを送受信部3に送る。主制御部2は送受信部3に送られたフレームを断面特定部7に送る。
【0093】
<ステップ12〜14>
第1実施形態のS02〜S04と同様に、同定部7Aは、小径部位(小径の血管等)の特定にかかる処理を行う。なお、次のS15において、DSAにより血管が抽出される場合は、S14の血管の特定処理は行われなくてもよい。
【0094】
<ステップ15>
同定部7Aは、第1実施形態のS02と同様の閾値処理またはDSAを用いて血管の抽出を行う。
【0095】
<ステップ16>
同定部7Aにより小径の血管の抽出が行われると、算出部7Bは小径の血管を3断面に投影し、その投影データのエネルギーまたは面積を求める。
【0096】
<ステップ17>
次に、算出部7Bにより算出された投影データのエネルギーまたは面積に基づいて、画像処理部8は、上記制御例1〜2、あるいは1〜3のいずれかによるノイズ低減処理を行う。
【0097】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかるX線診断装置100および画像処理装置1の作用および効果について説明する。
【0098】
本実施形態にかかる画像処理装置1によれば、小径の血管等の狭小な領域を有する注目対象を含むX線動画像の各フレームにおいて、当該注目対象を特定する。また画像処理装置1は、小径の血管等の投影データのエネルギー(または対象部分の面積)を求める。画像処理装置1は、求めた値に基づいてノイズ低減処理の制御を行う。
【0099】
このような構成によれば、周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。その結果、当該ノイズ低減処理後のX線画像において、注目対象の視認性が低下する事態を防止することが可能である。
【0100】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる画像処理装置1について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、狭小な領域を有する注目対象を抽出するために、医用画像データの縮小処理が行われる。これに対し、第3実施形態において画像処理装置1は、注目領域の探索および細線化処理等により、血管をトラッキングしながら、血管の径を求める。さらに画像処理装置1は、求めた径を閾値と比較し、閾値以下である径を有する部分を特定する。このようにして第3実施形態では、小径の血管が特定される。
【0101】
<同定部7A>
《血管の同定》
同定部7Aは、ボリュームデータまたはX線動画像のフレーム画像に対し、閾値処理を行うことにより、これらのデータから血管を抽出する。この抽出は例えば次のように行われる。
【0102】
同定部7Aは、ボリュームデータを受け、例えば画素値や透明度等に基づいて、各ボリュームデータ内の血管等を同定する。具体例として、同定部7Aは、記憶部6等から、各ボリュームデータにおいて血管等に相当する画素値/透明度等の閾値や設定範囲を読み出す。また同定部7Aは、その情報を基準に当該同定を行ってもよい。同定部7Aによって、血管を示すボクセルが同定されることにより、ボリュームデータにおける血管の全体像が特定される。
【0103】
あるいは、同定部7Aは、X線動画像を構成するX線画像のフレームを受け、フレームにおいて血管等に相当する画素値や輝度等の閾値または設定範囲を記憶部6等から読み出す。また同定部7Aは、その情報を基準に、フレームにおける血管等を同定する。同定部7Aによる当該処理により、フレームにおける血管の全体像が特定される。同定部7AはDSAにより、フレームにおける血管の全体像を特定してもよい。
【0104】
《トラッキング》
同定部7Aは、血管領域の探索および細線化処理を行うことにより、特定した血管のツリー構造を求める。具体例として、操作者が血管のツリー構造の起点を指定するか、あるいは血管の全体のうちのいずれかの端部を同定部7Aが特定する。さらに同定部7Aは、当該起点または端部(根;ルート)を始点として、血管にあたる領域を段階的に拡張していきつつ細線化処理によって血管の芯線を求める。また同定部7Aは、血管にあたる領域を段階的に拡張していきつつ分岐(節;ノード)があるか判断する。分岐があると判断された場合、同定部7Aは、分岐点からそれぞれ派生する血管(枝;ブランチ)について同様の処理を行う。同定部7Aは血管にあたる領域の拡張をしていく過程で分岐がなく、拡張ができなくなった時点で、その血管を末端の血管(葉;リーフ)と判断する。同定部7Aは、末端の血管の先端まで領域を拡張したら、上記トラッキング処理を終了する。
【0105】
<算出部7B>
《血管径の算出》
算出部7Bは、同定部7Aが特定したボリュームデータ等における血管領域のツリー構造を拡張していく処理にともない、血管の径を求める。例えば算出部7Bは、細線化処理で求められた芯線に直交する方向の長さを血管径として求める。
【0106】
《小径部位の特定》
算出部7Bは、求めた血管径をあらかじめ設定された閾値と比較する。閾値は、ノイズ低減処理においてノイズとして除去される傾向のあるサイズ(ピクセル/ボクセルの範囲)を基準にあらかじめ設定される。さらに算出部7Bは閾値との比較において閾値以下となった血管を特定する。特定される範囲は、例えば血管のツリー構造における分岐から分岐までの間、あるいは分岐から末端までの間である。
【0107】
《ボリュームデータの場合》
上記処理の対象がボリュームデータである場合、算出部7Bは第1実施形態と同様の処理を行う。すなわち算出部7Bは、同定した小径の血管を、ボリュームデータにおいて互いに方向が異なる複数の断面(直交3断面等)に投影する。次に、算出部7Bは複数の断面における各投影画像のエネルギーまたは面積を求め、これら投影画像について求められた値を比較する。画像処理部8は、算出部7Bによる比較結果に基づいて、複数断面のうち、ノイズ低減処理を行う断面を特定する。画像処理部8は特定した断面にノイズ低減処理を行う。
【0108】
《X線動画像の場合》
上記処理の対象がX線動画像である場合、算出部7Bは第2実施形態と同様の処理を行う。すなわち算出部7Bは、フレームt
1〜t
nにおける投影データのエネルギーまたは面積を求める。算出部7Bは求められた値を比較する。画像処理部8は、算出部7Bによる比較結果に基づいて、ノイズ低減処理の制御を行う。
【0109】
(動作)
次に
図9および
図10を参照して第3実施形態の画像処理装置1の動作の概要について説明する。
図9および
図10は、第3実施形態の画像処理装置1におけるノイズ低減処理の一連の動作を表すフローチャートである。
【0110】
<ステップ21>
画像処理装置1は、画像保管装置30またはX線診断装置100等から医用画像データ(ボリュームデータまたはX線動画像等)を取得する。主制御部2は送受信部3に送られた医用画像データを断面特定部7に送る。なお、S22以降については、対象となる医用画像データがボリュームデータである場合について説明する。
【0111】
<ステップ22>
同定部7Aは、ボリュームデータを受け、例えば画素値や透明度等に基づいて、各ボリュームデータ内の血管等を同定する。血管に相当するボクセルが同定されることにより、ボリュームデータにおける血管の全体像が特定される。
【0112】
<ステップ23>
操作者が血管のツリー構造の起点を指定するか、あるいは血管の全体のうちのいずれかの端部を同定部7Aが特定すると、同定部7Aは、当該起点または端部を始点として、血管にあたる領域を段階的に拡張する。
【0113】
<ステップ24>
同定部7Aは、当該領域拡張にともない、細線化処理によって血管の芯線を求める。
【0114】
<ステップ25>
算出部7Bは、同定部7Aによる細線化処理で求められた芯線に直交する方向の長さを血管径として求める。
【0115】
<ステップ26>
算出部7Bは、血管のツリー構造における分岐から分岐までの間、あるいは分岐から末端までの間等、所定範囲において求めた血管径をあらかじめ設定された閾値と比較する。さらに算出部7Bは閾値との比較において閾値以下となった血管を小径部位として特定する。
【0116】
<ステップ27>
同定部7Aは、血管にあたる領域を段階的に拡張していきつつ、分岐があるかの判断および領域拡張の可否を判断する。分岐があるとの判断、または領域拡張が可能であると判断された場合(S27;No)、同定部7Aは、分岐点からそれぞれ派生する血管について同様の処理(S23〜S26)を行う。同定部7Aは血管にあたる領域の拡張をしていく過程で分岐がなく、かつ拡張ができなくなった時点(S27;Yes)で、トラッキング処理(S23〜S27)を終了し、S28に進む。
【0117】
<ステップ28>
同定部7Aにより小径の血管の特定(S26等)が行われトラッキング処理が終了すると(S27;Yes)、算出部7Bは、当該小径の血管を、ボリュームデータにおけるアキシャル面、コロナル面およびサジタル面に投影する。
【0118】
<ステップ29〜31>
S29における複数断面それぞれのエネルギーの算出は、第1実施形態のS07と同様である。S30における各断面のエネルギーの比較による、ノイズ低減処理の対象の断面の特定は、第1実施形態のS08と同様である。S31における、特定した断面へのノイズ低減処理については第1実施形態のS09と同様である。
【0119】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかる画像処理装置1の作用および効果について説明する。
【0120】
本実施形態にかかる画像処理装置1によれば、注目領域(以下、「小径の血管」と記載。)の探索とおよび細線化処理等により、血管をトラッキングしながら、血管の径を求める。さらに画像処理装置1は、求めた径を閾値と比較し、閾値以下である径を有する部分を特定する。このようにして第3実施形態では、小径の血管が特定される。
【0121】
また第3実施形態の画像処理装置1によれば小径の血管をボリュームデータにおいて方向が異なる複数の断面に投影する。また画像処理装置1は血管が投影された断面のうち、エネルギーが最小となる面または対象部分の面積が最大となる面を求める。また、画像処理装置1は、その面を、小径の血管の走行方向に対応する断面とし、その面に沿ってノイズ低減処理を行う。
【0122】
また第3実施形態の他の例における画像処理装置1は、小径の血管等の投影データのエネルギー(または対象部分の面積)を求め、比較する。画像処理装置1は、求めた値の対比の結果に基づいてノイズ低減処理の制御を行う。
【0123】
このような構成によれば、周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。その結果、当該ノイズ低減処理後のボリュームデータに基づく画像において、注目対象の視認性が低下する事態を防止することが可能である。
【0124】
また、第3実施形態にかかる画像処理装置1は、注目領域のトラッキングによって、小径の血管等、狭小な領域を特定する構成である。このような構成によれば、注目領域の特定の精度を向上させることが可能である。その結果、医用画像データにおいて注目対象の視認性が低下する事態をさらに防止することが可能である。
【0125】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる画像処理装置1について説明する。第1実施形態および第3実施形態では、ノイズ低減処理が適用されるボリュームデータの断面を定めるにあたり、小径の血管の抽出、互いに方向が異なる複数断面への投影、およびエネルギー(または面積)の算出が行われる。これに対し、第4実施形態において画像処理装置1は、抽出された小径の血管について、所定間隔ごとに単位ベクトルとして走行方向を求める。さらに画像処理装置1は、算出した単位ベクトルの総和を求める。画像処理装置1は、この総和に基づいて血管の走行方向を同定する。
【0126】
<同定部7A>
《小径部位の特定》
第1実施形態と同様に、同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1の縮小等により小血管領域R1を除去して処理後ボリュームデータV2を作成する(
図2参照)。また、同定部7Aは、縮小前の処理前ボリュームデータV1および処理後ボリュームデータV2に対し、第1実施形態と同様に閾値処理を行う。この閾値処理により、これらのデータから血管(小血管領域R1・動静脈領域R2)をそれぞれ抽出する。
【0127】
さらに同定部7Aは、処理前ボリュームデータV1から抽出した小血管領域R1および動静脈領域R2と、処理後ボリュームデータV2から抽出した動静脈領域R2とのサブトラクション処理を行う。この処理により、小血管領域R1が抽出される。以上のように、同定部7Aは、ボリュームデータから小径の血管を抽出する。
【0128】
ただし、第4実施形態は、上記構成に限られない。例えば、第3実施形態のように、注目領域のトラッキングによって、小径の血管等、狭小な領域が特定されてもよい。
【0129】
<算出部7B>
《所定区間のベクトルの算出》
算出部7Bは、抽出された小径の血管における所定区間ごとに、単位ベクトルを求める。所定区間とは、走行方向の算出として必要な複数ボクセル分に相当する。この複数ボクセルとは、例えば3〜5ボクセル程度である。なお、所定区間ごとにベクトルを求めるのは、次のような理由による。単位ベクトルの算出を1ボクセルごとに行うと、ノイズの影響により血管の走行方向の特定に支障をきたすおそれがあるためである。また、単位ベクトルとしたのは、走行方向の特定のためには血管の所定区間の方向の成分だけ求めればよいためである。単位ベクトルを算出する構成とすれば算出処理が簡易化される。算出部7Bは、血管の起点(例えばボリュームデータにおける動静脈の端部)から小径の血管の末端まで、所定区間の単位ベクトルの算出を繰り返す。
【0130】
《ベクトルの総和の算出》
算出部7Bは、特定された小径の血管の全域について単位ベクトルの算出が完了すると、それぞれの区間における単位ベクトルの総和を求める。
【0131】
《断面の特定》
算出部7Bは、単位ベクトルの総和を求めると、最大要素と2番目の要素を特定する。さらに算出部7Bは、(ux,uy,uz)で、最大要素と2番目の要素に対応した断面を同定する。例えば総和が、(ux,uy,uz)で|ux|>|uy|>|uz|とすると、ボリュームデータにおけるxy断面が同定される。
【0132】
なお、上述の第4実施形態では、所定区間ごとに単位ベクトルが単純に加算される構成であるが、例えば血管径に応じてベクトルの大きさが調整される構成であってもよい。第1の例として算出部7Bが、血管径の逆数を単位ベクトルにかける構成が挙げられる。このような構成によれば、より細い血管のベクトルが大きくなるため、より細い血管を重視した断面の同定が可能となる。
【0133】
第2の例として算出部7Bは、同定部7Aにより同定された血管に相当する画素に基づいて血管径をそれぞれ求める。算出部7Bは、さらに血管径に基づいてベクトルを求める区間の長さを変更してもよい。
【0134】
<画像処理部8>
画像処理部8は、同定した断面と最も近い角度を有するアキシャル面、コロナル面またはサジタル面を特定する。特定の例として、画像処理部8は、例えば特定した断面の法線単位ベクトル(a normal unit vector)と、アキシャル面、コロナル面またはサジタル面の法線単位ベクトルとの内積を計算する。また、画像処理部8は、アキシャル面、コロナル面またはサジタル面のうち、計算した内積が最も大きい面をノイズ低減処理にかかる対象とする。
【0135】
他の例として画像処理部8は、内積を計算する代わりに算出部7Bが同定した断面と、アキシャル面、コロナル面またはサジタル面のとのなす角を計算しても良い。この場合、画像処理部8は、アキシャル面、コロナル面またはサジタル面のうち、それぞれの面同士によってなされる角が最も小さい面をノイズ低減処理の対象とする。なお、これら角度は、それぞれ鋭角となる方が選択される。
【0136】
(動作)
次に
図11および
図12を参照して第4実施形態の画像処理装置1の動作の概要について説明する。
図11および
図12は、第4実施形態の画像処理装置1におけるノイズ低減処理の一連の動作を表すフローチャートである。
【0137】
<ステップ41〜45>
S41におけるボリュームデータの取得にかかる処理は、第1実施形態のS01と同様である。S42における縮小処理等による処理前ボリュームデータV1からの小血管領域R1の除去については、第1実施形態のS02と同様である。S43における処理後ボリュームデータV2の生成については、第1実施形態のS03と同様である。S44における血管部分の特定については、第1実施形態のS04と同様である。S45におけるサブトラクション処理による小径の血管の抽出については、第1実施形態のS05と同様である。
【0138】
<ステップ46>
算出部7Bは、ボリュームデータから抽出された小径の血管における所定区間ごとに、単位ベクトルを求める。
【0139】
<ステップ47>
算出部7Bは、抽出された血管の起点の位置から小径の血管の末端の位置まで、所定区間の単位ベクトルの算出を継続する。算出部7Bは、小径の血管の全てに対して単位ベクトルの算出が完了したかについて判断する。判断の結果、単位ベクトルの算出が完了していなければ(S47;No)、算出部7Bは、S46〜S47の処理を繰り返す。
【0140】
<ステップ48>
算出部7Bは、特定された小径の血管の全域について単位ベクトルの算出が完了すると(S47;Yes)、それぞれの区間における単位ベクトルの総和を求める。
【0141】
<ステップ49>
算出部7Bは、単位ベクトルの総和を求めると、最大要素と2番目の要素を特定する。さらに算出部7Bは、最大要素と2番目の要素に対応した断面を同定する。
【0142】
<ステップ50>
画像処理部8は、算出部7Bにより同定した断面(S49)と最も近い角度を有するアキシャル面、コロナル面またはサジタル面を特定する。
【0143】
<ステップ51>
画像処理部8は、S51で特定したアキシャル面、コロナル面またはサジタル面にノイズ低減処理を施す。
【0144】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかる画像処理装置1の作用および効果について説明する。
【0145】
第4実施形態にかかる画像処理装置1によれば、抽出された小径の血管について、所定間隔ごとに単位ベクトルとして算出することにより走行方向を求める。さらに画像処理装置1は、算出した単位ベクトルの総和を求める。画像処理装置1は、この総和に基づいて血管の走行方向を同定する。
【0146】
また第4実施形態の画像処理装置1は、単位ベクトルの総和を求めると、最大要素と2番目の要素に対応した断面を同定する。また、画像処理装置1は、直交3断面のうち、当該同定した断面に最も近い面にノイズ低減処理を行う。
【0147】
このような構成によれば、周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。その結果、当該ノイズ低減処理後のボリュームデータに基づく画像において、注目対象の視認性が低下する事態を防止することが可能である。
【0148】
また、第4実施形態にかかる画像処理装置1は、抽出された狭小な領域(小径の血管等)において、所定区間ごとに単位ベクトルを求め、求めた結果に基づいて走行方向を算出する。構成である。このような構成によれば、注目領域の走行方向の特定の精度を向上させることが可能である。その結果、医用画像データにおいて注目対象の視認性が低下する事態をさらに防止することが可能である。
【0149】
[変形例]
上記説明した第1実施形態〜第4実施形態の変形例について説明する。
【0150】
(変形例1)
第3実施形態にかかる画像処理装置1によれば、小径の血管の探索とおよび細線化処理等により、血管をトラッキングしながら、血管の径を求める。さらに画像処理装置1は、求めた径を閾値と比較し、閾値以下である径を有する部分を特定する。しかしながら、画像処理装置1は例えば次のように小径の血管の走行方向を求めてもよい。
【0151】
同定部7Aは、第3実施形態と同様に、小径の血管の探索とおよび細線化処理を行う。これにより血管の芯線が特定される。算出部7Bは、同定部7Aが血管の芯線を特定することに応じて、特定された血管の芯線の単位ベクトルを求める。さらに算出部7Bは、第4実施形態と同様に、求めた単位ベクトルの例えば総和を求める。算出部7Bは、この総和に基づいて小径の血管の走行方向を求める。
【0152】
この変形例1においても周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。
【0153】
(変形例2)
第1実施形態、第3実施形態および第4実施形態では、画像処理装置1により、一断面にのみノイズ低減処理を適用する構成について説明している。ただし、これら実施形態において、ノイズ低減処理が複数断面に適用される構成であってもよい。例えば第1実施形態において、直交3断面に順番にノイズ低減処理をする構成が挙げられる。
【0154】
<第1実施形態、第3実施形態の場合>
算出部7Bは直交3断面における各投影画像のエネルギーを求める。さらに算出部7Bは、各断面における投影画像のエネルギーを比較する。算出部7Bによる比較の結果、画像処理部8は、直交3断面において、エネルギーが最小になる断面、2番目の断面、最大の断面をそれぞれ特定し、特定した順番にノイズ低減処理を施す。
【0155】
また、3断面でなく、2断面にノイズ低減処理をかける場合、画像処理部8は、エネルギーが最小になる断面、2番目の断面をそれぞれ特定し、特定した順番にノイズ低減処理を施す。
【0156】
<第4実施形態の場合>
算出部7Bは、抽出された小径の血管において所定区間ごとに単位ベクトルを求める。また算出部7Bは、区間ごとに求められた単位ベクトルの総和を求める。画像処理部8は、単位ベクトルの総和が求められたら、最大要素と2番目の要素を特定する。画像処理部8は、最大要素と2番目の要素に対応した断面に最初にノイズ低減処理を施す。次に、画像処理部8は、最大要素と3番目の要素に対応した断面にノイズ低減処理を施す。画像処理部8は最後に、2番目の要素と3番目の要素に対応した断面にノイズ低減処理を施す。
【0157】
また、3断面でなく、2断面にノイズ低減処理を施す場合、画像処理部8は、ノイズ低減処理を施す順番について、最大要素と2番目の要素に対応した断面を最初とし、最大要素と3番目の要素に対応した断面を2番目とする。
【0158】
この変形例2においても周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。
【0159】
(変形例3)
上記実施形態では、狭小な領域を有する注目対象を血管として説明した。しかしながら、上記実施形態の注目対象は、ガイドワイヤー、カテーテル、ステント、神経などでもよい。ここで、注目対象がガイドワイヤーである例について説明する。
【0160】
第2実施形態のように、同定部7Aは、リアルタイムに収集されたカテーテルやガイドワイヤーを含む画像と、一定期間前に収集された画像とのサブトラクションを行なう。これによって、カテーテルやガイドワイヤーの最新の動きを示す領域が連続的に抽出される。またカテーテルやガイドワイヤーの最新の動きを示す領域が注目されたデータに対し、第2実施形態のように、ノイズ低減処理にかかる制御を行う。このような構成によれば、画像処理装置1はガイドワイヤーの変位に応じてノイズ低減にかかる制御を実行可能である。例えば画像処理装置1は、被検体に挿入されたガイドワイヤーの向きに応じて、自動的にかつリアルタイムにノイズ低減処理フィルタを変更することが可能である。
【0161】
この変形例3においても周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。
【0162】
(変形例4)
上記実施形態では、画像処理装置1にあらかじめ記憶された解析プログラム等により、同定部7A、算出部7Bおよび画像処理部8が、ノイズ低減処理を施す断面を決めている。ただし、上記実施形態はこのような構成に限られない。例えば、あらかじめ設定された検査プログラムや検査プロトコルなどにおいて、予めノイズ低減処理を施す断面が定められていてもよい。検査プログラムは、例えば頭部検査、腹部検査、緊急時検査等、用途や検査部位に応じてあらかじめ設定される。
【0163】
同様に、変形例2においては、画像処理装置1にあらかじめ記憶された解析プログラム等により、同定部7A、算出部7Bおよび画像処理部8が、直交3断面に対し、ノイズ低減処理を施す順番を決めている。ただし、上記変形例2はこのような構成に限られない。例えば、あらかじめ設定された検査プログラムや検査プロトコルなどにおいて、あらかじめ直交3断面に対し、ノイズ低減処理を施す順番が定められていてもよい。
【0164】
変形例4における検査プログラムや検査プロトコルにおいて、ノイズ低減処理を施す断面およびその順番は、注目対象(血管等)の走行方向に基づいて設定される。
【0165】
この変形例4においても周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。
【0166】
(変形例5)
上記実施形態では、画像処理装置1が、画像データ全体における注目対象が示す画素群の走行方向を求め、ノイズ低減処理を施す断面を決めている。ただし、上記実施形態はこのような構成に限られない。例えば、画像処理装置1は、画像データ全体でなく、画像データの部分領域ごとに注目対象(管状構造等)の方向を求めてもよい。さらに画像処理装置1は、当該部分領域ごとに求められた走行方向に応じてノイズ低減処理を施す断面を定める。
【0167】
この変形例5について、
図13を参照して説明する。
図13は、変形例5の画像処理装置1におけるノイズ低減処理の一連の動作を表すフローチャートである。変形例5における画像処理装置1の概要としては、次の通りである。まずボクセルごとに血管に相当するか判断する。さらに画像処理装置1は、判断対象のボクセルが血管である場合は、そのボクセルを含む部分領域(例えば微小領域)において、血管を示すボクセルを3断面に投影する。さらに画像処理装置1は、3断面のうち、エネルギーが最低となる断面についてノイズ低減処理を行う。この変形例における画像処理装置1は、隣接ボクセルに移動し、これら一連の処理を繰り返す。
【0168】
<ステップ61>
S61におけるボリュームデータの取得にかかる処理は、第1実施形態のS01と同様である。
【0169】
<ステップ62>
同定部7Aは、ボリュームデータにおいて一連の処理の起点となる所定のボクセル位置をセットする。
【0170】
<ステップ63>
同定部7Aは、上記一連の処理の起点となる所定のボクセルから順番に各ボクセルについて、血管を示すボクセルであるか判断する。例えば、同定部7Aは、あらかじめ設定された起点のボクセル、i=0,j=0,k=0について、その画素値等を取得し、既定の閾値と比較する。
【0171】
<ステップ64>
さらに同定部7Aは、当該判断対象のボクセルにより示される画素値等が血管レベルを超えているか判断する。
【0172】
<ステップ65>
同定部7Aは、当該各ボクセルにより示される画素値等が血管レベルを超えていると判断した場合(S64;Yes)、そのボクセルを含む部分領域(7X7X7)において互いに直交する3断面に投影する。直交3断面それぞれは、例えばボリュームデータにおけるアキシャル面、コロナル面およびサジタル面である。
【0173】
<ステップ66〜68−1>
S66における複数断面それぞれのエネルギーの算出は、第1実施形態のS07と概ね同様である。S67における各断面のエネルギーの比較による、ノイズ低減処理の対象の断面の特定は、第1実施形態のS08と概ね同様である。S68−1における、特定した断面へのノイズ低減処理については第1実施形態のS09と概ね同様である。ただし、これらS66〜68−1の処理は、ボリュームデータにおける処理対象の部分領域ごとにおいて行われる点で他の実施形態と異なる。
【0174】
<ステップ68−2>
同定部7Aは、当該各ボクセルにより示される画素値等が血管レベルを超えず、判断対象のボクセルが血管に相当するものでないと判断した場合(S64;No)、3次元的なノイズ低減処理のようなインテンシブノイズリダクションを行う。
【0175】
<ステップ69>
S68−1あるいはS68−2におけるノイズ低減処理が行われると、同定部7Aは、判断対象のボクセルに対す隣接するボクセルがあるか判断する。隣接するボクセルがあると判断された場合(S69;Yes)、同定部7Aは、その隣接するボクセルについてS63〜S68の処理を行う。
【0176】
隣接するボクセルがないと判断された場合(S69;No)、画像処理装置1は、ノイズ低減処理に関する上記一連の処理を終了する。
【0177】
上記変形例5によれば、ボリュームデータの部分領域ごとに注目対象(血管等)の有無を判定する。そして注目対象がある場合は、その走行方向を求める。したがって、より詳細に注目対象の走行方向に応じたノイズ低減処理を行うことになる。その結果、ノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失をより有効に回避することが可能である。
【0178】
また、変形例5において直交3断面におけるエネルギーが最小となる断面以外にも、ノイズ低減処理を行う構成であってもよい。このような構成の場合において、さらに直交3断面に対するノイズ低減処理の回数が求められる構成であってもよい。例として、直交3断面のうち、注目対象が示す画素群の走行方向に最も沿う断面としてxy断面が特定され、当該走行方向と概ね直交する断面としてxz断面が特定された場合を挙げる。この場合、画像処理装置1は、例えばノイズ低減処理の回数を、xy断面に対して2回と設定する。また画像処理装置1は、ノイズ低減処理の回数をyz断面に対して1回と設定する。さらに画像処理装置1は、xz断面に対してノイズ低減処理を行わない。
【0179】
(変形例6)
上記変形例5では、画像処理装置1が、画像データの部分領域ごとに、注目対象が示す画素群の走行方向を求めるにあたり、直交3断面のエネルギーを算出する構成であった。ただし、画像処理装置1はこのような構成に限られない。例えば、画像処理装置1は、部分領域におけるノイズ低減処理の適用断面をトラッキング(トレース)によって行う構成であってもよい。この変形例6について、
図14を参照して説明する。
図14は、変形例6の画像処理装置1におけるノイズ低減処理の一連の動作を表すフローチャートである。
【0180】
<ステップ71〜74>
S71におけるボリュームデータの取得にかかる処理は、第1実施形態のS01と同様である。S72におけるボクセル位置を起点にセットする処理は、変形例5のS62と同様である。S73における画素値等と閾値等の比較処理は、変形例5のS63と同様である。S74における血管を示すボクセルであるかの判断は、変形例5のS64と同様である。
【0181】
<ステップ75>
同定部7Aにより、当該起点のボクセルにより示される画素値等が血管レベルを超えていると判断された場合(S74;Yes)、算出部7Bは、そのボクセルを含む部分領域(7X7X7)において注目対象のトラッキングを行う。具体的には第3実施形態のS23,S24の処理と同様の処理を行う。
【0182】
<ステップ76>
算出部7Bは、血管等、注目対象のトラッキングにより求められた芯線の走行方向を求めることにより血管等、注目対象が示す画素群の走行方向を求める。具体例として、算出部7Bが第4実施形態のS46〜S48の処理と同様の処理を行う。
【0183】
<ステップ77>
算出部7Bは、上記トラッキングにより求められた走行方向に基づきノイズ低減処理を行う対象の断面を求める。具体例として、算出部7Bが第4実施形態のS49の処理と同様の処理を行う。例えば算出部7Bは、求められた走行方向と最も近い角度を有するアキシャル面、コロナル面またはサジタル面を特定する。
【0184】
<ステップ78−1>
画像処理部8は、ボリュームデータにおける部分領域に対し、S77で特定した断面(アキシャル面、コロナル面またはサジタル面等)にノイズ低減処理を施す。
【0185】
<ステップ78−2>
同定部7Aは、当該起点のボクセルにより示される画素値等が血管レベルを超えず、判断対象のボクセルが血管に相当するものでないと判断した場合(S74;No)、3次元的なノイズ低減処理のようなインテンシブノイズリダクションを行う。
【0186】
<ステップ79>
S78−1あるいはS78−2におけるノイズ低減処理が行われると、同定部7Aは、判断対象のボクセルに対す隣接するボクセルがあるか判断する。この処理は変形例5のS69と同様である。
【0187】
上記変形例6によれば、ボリュームデータの部分領域ごとに注目対象(血管等)の走行方向を求める。したがって、より詳細に注目対象の走行方向に応じたノイズ低減処理を行うことになる。その結果、ノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失をより有効に回避することが可能である。
【0188】
また、変形例6において直交3断面におけるエネルギーが最小となる断面以外にも、ノイズ低減処理を行う構成であってもよい。このような構成の場合において、さらに直交3断面に対するノイズ低減処理の回数が求められる構成であってもよい。例として、直交3断面のうち、注目対象が示す画素群の走行方向に最も沿う断面としてxy断面が特定され、当該走行方向と概ね直交する断面としてxz断面が特定された場合を挙げる。この場合、画像処理装置1は、例えばノイズ低減処理の回数を、xy断面に対して2回と設定する。また画像処理装置1は、ノイズ低減処理の回数をyz断面に対して1回と設定する。さらに画像処理装置1は、xz断面に対してノイズ低減処理を行わない。
【0189】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態〜第4実施形態およびその変形例によれば、注目対象の走行方向等に基づいて、ノイズ低減処理を施す断面またはノイズ低減処理を施す順番が設定される。したがって、周辺画素を用いたノイズ低減処理による、注目対象の分解能の低下や、注目対象の消失を回避することが可能である。その結果、当該ノイズ低減処理後のボリュームデータに基づく画像において、注目対象の視認性が低下する事態を防止することが可能である。
【0190】
一例として、頭部を対象とするボリュームデータに対しノイズ低減処理を行う場合がある。頭部の血管のうち、穿通枝等の小径の血管の走行方向は、おおよそ体軸方向に沿っている。したがって、頭部のボリュームデータにおいて、穿通枝等の血管を示すボクセルは、体軸方向に沿って隣接して類似する傾向がある。また、穿通枝等は径が小さいため、被検体の体幅方向または体前後方向(胸から背へ向かう方向)に沿って隣接するボクセルが互いに類似しない傾向がある。
【0191】
以上説明した第1実施形態〜第4実施形態およびその変形例によれば、穿通枝の走行方向等に基づいて、ノイズ低減処理を施す断面がサジタル方向またはコロナル方向に特定される。あるいはノイズ低減処理を施す順番としてサジタル方向およびコロナル方向のうち、一方が1番目、他方が2番目に設定される。したがって、周辺画素を用いたノイズ低減処理による、穿通枝の消失を回避することが可能である。
【0192】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。