【文献】
鈴木啓一、門脇 宏、他,茶添加飼料給与が豚の産肉能力と肉質に及ぼす影響,日本養豚学会誌,日本,日本養豚学会誌,2001年 9月17日,第39巻第2号,P59〜65
【文献】
Takahiro Hasumura、他,green tea extract suppresses adiposity and affects the expression of lipid metabolism genes in diet-induced obse zebrafish,Nutrition & Metabolism,米国,BMC,2012年 8月
【文献】
石原則幸、荒木利芳、他,緑茶ポリフェノール給与飼育によるブリ筋肉氷蔵中の酸化防止効果,日本食品科学工学会誌,日本,日本食品科学工学会誌,2000年10月,第47巻第10号,P767〜772
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1、2及び9のいずれか1項に記載の剤を魚類に投与又は摂取させる、魚類の生体内において、ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の高度不飽和脂肪酸量を増加させることで魚類の生体内脂肪酸の組成を改変する方法。
請求項3、4及び9のいずれか1項に記載の剤を魚類に投与又は摂取させる、魚類生体内での、ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の高度不飽和脂肪酸の生成を促進する方法。
請求項5、6及び9のいずれか1項に記載の剤を魚類に投与又は摂取させる、魚類生体内において、脂肪酸の総量に対する、ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の高度不飽和脂肪酸量の割合を増加させる方法。
請求項7〜9のいずれか1項に記載の剤を魚類に投与又は摂取させる、魚類生体内において、ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
また、本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
また、本明細書において、「生体内脂肪酸組成改変」とは、後述する高度不飽和脂肪酸の生体内における含有量を増加させ、生体内の全脂肪酸に対する高度不飽和脂肪酸の含有比率を上昇させることをいう。
さらに、本明細書において、「生体」とは高度不飽和脂肪酸が存在する任意の組織、器官も包含する。これらの組織及び器官としては、筋肉組織、母乳、脳・網膜などの神経組織、心筋、精子、脂肪組織、肝臓組織などが挙げられる。
【0015】
本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、茶抽出物を有効成分とする。
【0016】
「高度不飽和脂肪酸」は、不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪酸を指す。代表的な高度不飽和脂肪酸としては、リノール酸、γ-リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、カレンジン酸などのω−6脂肪酸、α-リノレン酸(以下、「ALA」ともいう)、ステアリドン酸(以下、「STD」ともいう)、エイコサトリエン酸(以下、「ETE」ともいう)、エイコサテトラエン酸(以下、「ETA」ともいう)、EPA、ドコサペンタエン酸(以下、「DPA」ともいう)、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸などのω−3脂肪酸、ミード酸などのω−9脂肪酸が知られている。
【0017】
生体内での高度不飽和脂肪酸の合成には、主に、脂肪酸伸長酵素と脂肪酸不飽和化酵素が関与する。ここで、「脂肪酸伸長酵素」とは炭素2個分の脂肪酸の伸長に関与する酵素であり、「脂肪酸不飽和化酵素」とは脂肪酸の二重結合の形成に関与する酵素である。
脂肪酸伸長酵素の例として、ELOVL5、ELOVL2、ELOVL6が知られている。また、脂肪酸不飽和化酵素の例として、FADS2、DEGS2、FAT1が知られている。
【0018】
後述の実施例で実証するように、本発明で用いる抽出物が、高度不飽和脂肪酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する。具体的には、ELOVL5をコードする
elovl5(ELOVL family member 5,elongation of long chain fatty acids)遺伝子の発現を促進する。
また、後述の実施例で実証するように、本発明によれば、生体内での高度不飽和脂肪酸の生成を促進し、生体内における高度不飽和脂肪酸量を増加させることで、生体内の脂肪酸組成を改変することができる。具体的には、炭素数が20以上のω−6又はω−3脂肪酸(好ましくは炭素数が20以上のω−3脂肪酸、より好ましくは炭素数が20以上で二重結合を4個以上有するω−3脂肪酸、さらに好ましくは炭素数が20以上で二重結合を5個又は6個有するω−3脂肪酸、特に好ましくはEPA及びDHA)の生成を促進し、生体内におけるこれら高度不飽和脂肪酸量を増加させることで、生体内の脂肪酸組成を改変することができる。
なお、本明細書において「高度不飽和脂肪酸」とは、炭素数が20以上のω−6又はω−3脂肪酸(好ましくは炭素数が20以上のω−3脂肪酸(例えば、ETE、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸)、より好ましくは炭素数が20以上で二重結合を4個以上有するω−3脂肪酸(例えば、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸)、さらに好ましくは炭素数が20以上で二重結合を5個又は6個有するω−3脂肪酸(例えば、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸)、特に好ましくはEPA及びDHA)を好ましく指す。
【0019】
次に、本発明で用いる茶抽出物について説明する。
本明細書における「茶」は、ツバキ(Theaceae)科ツバキ(
Camellia)属の常緑樹である。
本発明で用いる茶抽出物の製造には、前記植物の任意の部分が使用可能であり、全草、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(成熟果実、未熟果実等)、種子等を用いることができる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。茶抽出物の製造には、茶葉を抽出することが好ましい。
【0020】
本発明に用いる茶抽出物は、植物抽出等に用いられる通常の抽出方法により得ることができる。抽出方法は適宜設定することができ、上記植物を常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることが好ましい。
本発明に用いる茶抽出物の調製には、前記植物をそのまま又は乾燥粉砕して用いることができる。また、前記植物の水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いることもでき、これらは精油等より精製したものを用いることもでき、また市販品を利用することもできる。前記植物、又はその水蒸気蒸留物若しくは圧搾物は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
茶抽出物の調製に用いる抽出溶媒は適宜選択することができ、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、水、エタノール、又はエタノール水溶液が好ましく、エタノール水溶液がより好ましく、アルコール含有率が30体積%以上のエタノール水溶液がさらに好ましく、アルコール含有率が40体積%以上のエタノール水溶液が特に好ましい。また、抽出に際して酸やアルカリなどを添加し、抽出溶媒のpHを調整してもよい。
【0022】
抽出条件も通常の条件を適用でき、例えば前記植物を0℃以上(好ましくは4℃以上)100℃以下(好ましくは80℃以下、より好ましくは40℃以下)で1分以上(好ましくは1時間以上、より好ましくは1日以上)50日以下(好ましくは30日以下)浸漬又は加熱還流すればよい。抽出効率を上げる為、併せて攪拌を行ったり、溶媒中でホモジナイズ処理を行ってもよい。用いる抽出溶媒の量は、前記植物の重量(乾燥物換算)に対して1倍量以上(好ましくは5倍量以上)100倍量以下(好ましくは50倍量以下、より好ましくは40倍量以下)である。
【0023】
本発明において、前記方法により得られる茶抽出物をそのまま用いてもよいし、さらに適当な分離手段、例えばゲル濾過、クロマトグラフィー、精密蒸留等により活性の高い画分を分画して用いることもできる。また、得られた抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、前記方法により得られた抽出物を、前記抽出溶媒とは異なる溶媒で転溶して用いることもできる。
本発明において抽出物とは、前記のような抽出方法で得られた各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液、その精製画分、その乾燥末又はその転溶液を含むものである。
【0024】
本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、茶抽出物を有効成分として1質量%未満含有する。
生体に対する薬剤応答性は通常、濃度依存性を示す。例えば、抗肥満などの生理活性に対する茶抽出物の効果について、濃度依存性が実証されている(例えば、Journal of Oleo Science,2013,vol.62(5),p.283-292;International Journal of Obesity and Related Metabolic Disorders,2002,vol.26(11),p.1459-1464;Nutrition & Metabolism,2012,9:105;Jpn.Pharmacol.Ther.,2008,vol.36(3),p.237-245など参照)。
これに対して本発明の剤では、有効成分とする茶抽出物の含有量を乾燥物換算で1質量%未満とする。後述の実施例でも示すように、生体内での高度不飽和脂肪酸の生成に関して言えば、茶抽出物を高濃度とするよりも、1質量%未満という低濃度とすることが効果的であり、総脂肪酸に対する高度不飽和脂肪酸の割合が有意に高まる。
【0025】
本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤における茶抽出物の濃度は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、0.6質量%以下が好ましい。あるいは、0.001質量%以上1質量%未満が好ましく、0.005質量%以上1質量%未満がより好ましく、0.01質量%以上1質量%未満がさらに好ましく、0.01質量%以上0.6質量%以下がよりさらに好ましい。
【0026】
茶抽出物の主成分はカテキン類であり、その含有量は約80質量%であることが知られている(Hasumura T.et al.,Nutrition & Metabolism,2012,9:73;Nagao T.et al.,Am.J.Clin.Nutr.,2005,vol.81(1),p.122-129参照)。
そこで、本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、茶抽出物に代えて茶カテキンを有効成分とし、その含有量を0.8質量%未満とすることもできる。
【0027】
茶カテキンと有効成分とする場合、本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤における茶カテキンの濃度は、0.0008質量%以上が好ましく、0.004質量%以上がより好ましく、0.008質量%以上がさらに好ましく、0.48質量%以下が好ましい。あるいは、0.0008質量%以上0.8%未満が好ましく、0.004質量%以上0.8%未満がより好ましく、0.008質量%以上0.8質量%未満がさらに好ましく、0.008質量%以上0.48質量%以下がよりさらに好ましい。
【0028】
茶カテキンは常法により調製することができる。例えば、茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された緑茶抽出物を濃縮、精製等を行うことによって得ることができる。また、市販緑茶抽出物(三井農林社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」など)の濃縮物を用いて成分調整を行い、本発明の目的に適う茶カテキンを得ることができる。
【0029】
本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤の形態は適宜選択することができる。例えば、飲料や液体飼料などの液状の形態であってもよいし、錠剤、固形食品、固形飼料等の固形物又は半固形物の形態であってもよいし、粉末状の形態であってもよい。さらに本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、医薬組成物、食品組成物若しくは飼料とするか、又はこれらに含有させることができる。
【0030】
医薬組成物を調製する場合は、通常、前記有効成分と好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体又は液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコール等)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒又は分散媒体などが挙げられる。
【0031】
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、及び鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤並びに軟膏、クリーム剤、ゲル剤、制御放出パッチ剤及び貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。医薬組成物は、徐放性皮下インプラントの形態で、又は標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
【0032】
医薬組成物はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0033】
前記医薬組成物は、口腔用組成物、外用組成物、内服組成物などの形態で適用することができ、内服組成物の形態で用いることが好ましい。内服組成物には、前記有効成分の他、その形態に応じて通常の内服組成物に用いられる種々の成分を配合することができる。
【0034】
食品組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、飲料も包含される。一般食品の他に、生体内の脂肪酸組成改変、高度不飽和脂肪酸の生成促進、及び/又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現促進により治療、予防又は改善しうる疾患又は状態の治療、予防又は改善等をコンセプトとしてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品なども包含される。健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品は、具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができ、これら製剤のために使用することができる。製剤形態の食品組成物は、医薬製剤と同様に製造することができ、前記有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、食品組成物は、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等の形態もとりうる。
【0035】
食品組成物には、種々の食品添加物、例えば、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合してもよい。
【0036】
飼料としては、牛、豚、鶏、羊、馬、山羊等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等の形態が挙げられる。
飼料には、肉類(牛、豚、羊(マトン又はラム)、ウサギ、カンガルー等の畜肉、獣肉又はその副生物、加工品(ミートボール、ミートボーンミール、チキンミール等の上記原料のレンダリング物)、マグロ、カツオ、アジ、イワシ、ホタテ、サザエ、魚粉(フィッシュミール)等の魚介類等)、タンパク質(カゼイン、ホエー等の乳タンパク質や卵タンパク質等の動物性タンパク質、大豆タンパク質等の植物性タンパク質など)、穀物類(小麦、大麦、ライ麦、マイロ、トウモロコシ等)、ぬか類(米ぬか、ふすま等)、粕類(大豆粕等)、糖類(ぶどう糖、オリゴ糖、砂糖、糖蜜、澱粉、液糖等)、野菜類(野菜エキス等)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸、カロチン等)、ミネラル類(カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、亜鉛等)等、飼料原料として一般に用いられる成分を配合してもよい。この他、一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等も必要に応じて配合することができる。
【0037】
本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤の投与又は摂取対象は、好ましくは温血脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物又は魚類である。本明細書において哺乳動物は、例えば、ヒト、並びにサル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。また、魚類としては、ウナギ、ナマズ、コイ、フナ、ウグイ、ワカサギ、オイカワ、タイ、ハマチ、ブリ、ヒラメ、トラフグ、カツオ、マグロ、カンパチ、サケ、マス、タラ、ティラピア、ターボットなどが挙げられる。本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、ヒト又は魚類への投与に好適である。
本発明に用いる茶抽出物、並びに本発明の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、血栓性疾患、動脈硬化性疾患、高脂血症、高血圧、アトピー性皮膚炎、老人性痴呆症、抗アレルギー作用、抗炎症作用などの予防若しくは改善、学習能力若しくは記憶力の向上、視力低下の抑制、又は運動能力の向上を所望する対象者に適用することができる。
【0038】
また、本発明の生体内脂肪酸組成を改変する方法、生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、及び生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法は、茶抽出物又は茶カテキンを有効量投与又は摂取する。
【0039】
本発明の生体内脂肪酸組成を改変する方法、生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、及び生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法において、投与又は摂取する前記有効成分の投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、投与又は摂取経路、投与又は摂取スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。ただし本発明では、前記有効成分はより低用量での使用が好ましい。
例えば、前記有効成分の有効量は、茶抽出物の場合、1日あたり、204mg/kg体重未満とする。有効量をこの範囲に設定することにより、前述した課題を達成することができる(後述の実施例参照)。茶抽出物の場合の有効量は、1日あたり、0.204mg/kg体重以上が好ましく、1.02mg/kg体重以上がより好ましく、2.04mg/kg体重以上がさらに好ましく、122.4mg/kg体重以下が好ましい。あるいは、1日あたり、0.204mg/kg体重以上204mg/kg体重未満が好ましく、1.02mg/kg体重以上204mg/kg体重未満がより好ましく、2.04mg/kg体重以上204mg/kg体重未満がさらに好ましく、2.04mg/kg体重以上122.4mg/kg体重以下がよりさらに好ましい。
また前述のように、茶抽出物の主成分はカテキン類であり、その含有量は約80質量%である。よって、茶カテキンの場合の有効量は、1日あたり、(204mg/kg体重×0.8=163mg/kg体重)未満とする。茶カテキンの場合の有効量は、1日あたり、0.163mg/kg体重以上が好ましく、0.816mg/kg体重以上がより好ましく、1.63mg/kg体重以上がさらに好ましく、97.3mg/kg体重以下が好ましい。あるいは、0.163mg/kg体重以上163mg/kg体重未満が好ましく、0.816mg/kg体重以上163mg/kg体重未満がより好ましく、1.63mg/kg体重以上163mg/kg体重未満がさらに好ましく、1.63mg/kg体重以上97.3mg/kg体重以下がよりさらに好ましい。
前記有効成分は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
【0040】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤、製造方法、方法及び使用を開示する。
【0041】
<1>茶抽出物を有効成分として1質量%未満、又は茶カテキンを有効成分として0.8質量%未満含有する、生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤。
【0042】
<2>前記高度不飽和脂肪酸が、炭素数が20以上のω−6又はω−3脂肪酸、好ましくは炭素数が20以上のω−3脂肪酸(具体的には、ETE、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、より好ましくは炭素数が20以上で二重結合を4個以上有するω−3脂肪酸(具体的には、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、さらに好ましくは炭素数が20以上で二重結合を5個又は6個有するω−3脂肪酸(具体的には、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、よりさらに好ましくはEPA及びDHAからなる群より選ばれる少なくとも1種、である、前記<1>項に記載の剤。
<3>前記高度不飽和脂肪酸合成遺伝子が、脂肪酸伸長遺伝子及び脂肪酸不飽和化遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくは脂肪酸伸長遺伝子、より好ましくは
elovl5遺伝子、である、前記<1>又は<2>項に記載の剤。
<4>前記茶抽出物が茶葉の抽出物である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の剤。
<5>前記剤における茶抽出物の濃度が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、好ましくは0.6質量%以下、である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の剤。
<6>前記剤における茶カテキンの濃度が、好ましくは0.0008質量%以上、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.008質量%以上、好ましくは0.48質量%以下、である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の剤。
<7>前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の剤を魚類に投与又は摂取させる、魚類の生体内脂肪酸組成を改変する方法、魚類生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、魚類生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、又は魚類生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法。
【0043】
<8>生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤としての、前記剤の総量に対して1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンの使用。
<9>生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤の製造のための、前記剤の総量に対して1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンの使用。
<10>1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンを、生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤として使用する方法。
<11>1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンを適用する、生体内脂肪酸組成を改変する方法、生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、又は生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法。
<12>前記茶抽出物又は茶カテキンを血栓性疾患、動脈硬化性疾患、高脂血症、高血圧、アトピー性皮膚炎、老人性痴呆症、抗アレルギー作用、抗炎症作用などの予防若しくは改善、学習能力若しくは記憶力の向上、視力低下の抑制、又は運動能力の向上を所望する対象者に適用する、前記<10>又は<12>項に記載の方法。
<13>前記高度不飽和脂肪酸が、炭素数が20以上のω−6又はω−3脂肪酸、好ましくは炭素数が20以上のω−3脂肪酸(具体的には、ETE、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、より好ましくは炭素数が20以上で二重結合を4個以上有するω−3脂肪酸(具体的には、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、さらに好ましくは炭素数が20以上で二重結合を5個又は6個有するω−3脂肪酸(具体的には、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、よりさらに好ましくはEPA及びDHAからなる群より選ばれる少なくとも1種、である、前記<8>〜<12>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<14>前記高度不飽和脂肪酸合成遺伝子が、脂肪酸伸長遺伝子及び脂肪酸不飽和化遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくは脂肪酸伸長遺伝子、より好ましくは
elovl5遺伝子、である、前記<8>〜<13>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<15>前記茶抽出物が茶葉の抽出物である、前記<8>〜<14>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<16>前記剤の総量中における茶抽出物の濃度が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、好ましくは0.6質量%以下、である、前記<8>〜<15>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<17>前記剤の総量中における茶カテキンの濃度が、好ましくは0.0008質量%以上、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.008質量%以上、好ましくは0.48質量%以下、である、前記<8>〜<14>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0044】
<18>生体内脂肪酸組成を改変する方法、生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、又は生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法のために用いる、1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンの抽出物。
<19>生体内脂肪酸組成の改変薬、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進薬、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加薬、又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進薬の製造のための、1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンの使用。
<20>生体内脂肪酸の組成、高度不飽和脂肪酸の生成、高度不飽和脂肪酸割合、又は高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現の非治療的な処置方法のために用いる、1質量%未満の茶抽出物又は0.8質量%未満の茶カテキンの使用。
<21>前記茶抽出物又は茶カテキンを医薬組成物の形態で適用する、前記<20>項記載の使用。
<22>前記茶抽出物又は茶カテキンを内服組成物の形態で適用する、前記<21>項記載の使用。
<23>前記茶抽出物又は茶カテキンを食品、飲料、又は飼料の形態で適用する、前記<20>項記載の使用。
<24>前記茶抽出物又は茶カテキンを血栓性疾患、動脈硬化性疾患、高脂血症、高血圧、アトピー性皮膚炎、老人性痴呆症、抗アレルギー作用、抗炎症作用などの予防若しくは改善、学習能力若しくは記憶力の向上、視力低下の抑制、又は運動能力の向上を所望する対象者に適用する、前記<19>〜<23>のいずれか1項に記載の使用。
<25>前記高度不飽和脂肪酸が、炭素数が20以上のω−6又はω−3脂肪酸、好ましくは炭素数が20以上のω−3脂肪酸(具体的には、ETE、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、より好ましくは炭素数が20以上で二重結合を4個以上有するω−3脂肪酸(具体的には、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、さらに好ましくは炭素数が20以上で二重結合を5個又は6個有するω−3脂肪酸(具体的には、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、よりさらに好ましくはEPA及びDHAからなる群より選ばれる少なくとも1種、である、前記<18>〜<24>のいずれか1項に記載の茶抽出物、茶カテキン又は使用。
<26>前記高度不飽和脂肪酸合成遺伝子が、脂肪酸伸長遺伝子及び脂肪酸不飽和化遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくは脂肪酸伸長遺伝子、より好ましくは
elovl5遺伝子、である、前記<18>〜<25>のいずれか1項に記載の茶抽出物、茶カテキン又は使用。
<27>前記茶抽出物が茶葉の抽出物である、前記<19>〜<26>のいずれか1項に記載の茶抽出物又は使用。
<28>前記茶抽出物の濃度が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、好ましくは0.6質量%以下、である、前記<18>項〜<27>のいずれか1項に記載の茶抽出物又は使用。
<29>前記茶カテキンの濃度が、好ましくは0.0008質量%以上、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.008質量%以上、好ましくは0.48質量%以下、である、前記<19>〜<26>のいずれか1項に記載の茶カテキン又は使用。
【0045】
<30>1日あたり、204mg/kg体重未満の茶(
Camellia sinensis)抽出物又は163mg/kg体重未満の茶カテキンを投与又は摂取させる、生体内脂肪酸組成を改変する方法、生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法、魚類の生体内脂肪酸組成を改変する方法、魚類生体内での高度不飽和脂肪酸生成を促進する方法、魚類生体内の高度不飽和脂肪酸割合を増加させる方法、又は魚類生体内での高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進する方法。
<31>前記高度不飽和脂肪酸が、炭素数が20以上のω−6又はω−3脂肪酸、好ましくは炭素数が20以上のω−3脂肪酸(具体的には、ETE、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、より好ましくは炭素数が20以上で二重結合を4個以上有するω−3脂肪酸(具体的には、ETA、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、さらに好ましくは炭素数が20以上で二重結合を5個又は6個有するω−3脂肪酸(具体的には、EPA、DPA、DHA、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種)、よりさらに好ましくはEPA及びDHAからなる群より選ばれる少なくとも1種、である、前記<31>に記載の方法。
<32>前記高度不飽和脂肪酸合成遺伝子が、脂肪酸伸長遺伝子及び脂肪酸不飽和化遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくは脂肪酸伸長遺伝子、より好ましくは
elovl5遺伝子、である、前記<31>に記載の方法。
<33>前記茶抽出物が茶葉の抽出物である、前記<31>〜<33>のいずれか1項に記載の方法。
<34>前記茶抽出物の有効量が、1日あたり、好ましくは0.204mg/kg体重以上、より好ましくは1.02mg/kg体重以上、さらに好ましくは2.04mg/kg体重以上、好ましくは122.4mg/kg体重以下、である、前記<31>〜<34>のいずれか1項に記載の方法。
<35>前記茶カテキンの有効量が、1日あたり、好ましくは0.163mg/kg体重以上、より好ましくは0.816mg/kg体重以上、さらに好ましくは1.63mg/kg体重以上、好ましくは97.3mg/kg体重以下、である、前記<31>〜<33>のいずれか1項に記載の方法。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
調製例1 茶抽出物の調製
熱水で抽出した茶葉を噴霧乾燥し、これを熱水に溶解後、同量のクロロホルムと混和した。水層を回収し、3倍量のエタノールと混合した後、凍結乾燥にて茶抽出物を得た。得られた茶抽出物の主成分はカテキン類(含有量:約80質量%)であった(Hasumura T.et al.,Nutrition & Metabolism,2012,9:73参照)。
【0048】
試験例1 高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現量の分析
正常に受精し孵化したことを確認した受精後3日目のゼブラフィッシュ(
Danio rerio)仔魚を表面無処理6穴プレートに15〜18匹/ウェルずつ、仔魚用飼育水と共に移した。そして、各ウェル中の仔魚用飼育水を前記調製例1で調製した茶抽出物と置換し、さらに1.25日間飼育した。なお、前記調製例1で調製した茶抽出物の終濃度が表1に示す濃度となるよう、茶抽出物の濃度を適宜調整した。
飼育終了後、各ウェルの仔魚を1.5mLチューブに移し、仔魚を安楽殺した。チューブに入った溶液を出来うる限り取り除き、RNA later(商品名、Qiagen社製)1mLを加え、4℃で保存した。なお、これらの操作は速やかに、かつ仔魚を傷つけないよう細心の注意を払い行った。
【0049】
保存した各検体4匹を1サンプルとし、RNeasy Lipid Tissue Mini Kit(商品名、Qiagen社製)を用いて、添付プロトコルに従いTotal RNAの抽出を行った。得られたRNAサンプルは−80℃で保存した。
抽出した各サンプルのTotal RNAのRNA濃度をそろえ、65℃、10分間の熱処理後、High Capacity RNA-to-cDNA(商品名、Applied Biosystems社製)を用いて、添付プロトコルに従いcDNAの合成行った。得られたcDNAサンプルは−20℃で保存した。
【0050】
合成したcDNAを鋳型とし、TaqMan Fast Universal PCR Master Mix(商品名、Applied Biosystems社製)を用いて、ABI PRISM 7500(Applied Biosystems社製)により、
elovl5遺伝子及びEf1α遺伝子について定量的PCRを行った。なお、各遺伝子のPCR反応は下記に示すプライマープローブセットを用いた。
・Ef1α(elongation factor 1-alpha)Taqmanプライマープローブセット(Dr03432748_m1、Applied Biosystems社製)
・elovl5 taqmanプライマープローブセット(Dr03094288_m1、Applied Biosystems社製)
得られた
elovl5遺伝子の解析結果はEf1αの発現量を基準として補正し、
elovl5遺伝子の相対的mRNA発現量として示した。なお、茶抽出物を用いずにゼブラフィッシュを飼育した場合をコントロールとした。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなように、茶抽出物群では、脂肪酸伸長遺伝子の1種である
elovl5遺伝子の発現を亢進した。さらに、当該遺伝子の発現の亢進に対して濃度依存性も認められた。
【0053】
試験例2 高度不飽和脂肪酸の組成比と含有量の分析
明期14時間、暗期10時間を1サイクルとし、水温を26〜28℃に設定し、循環式水質浄化システムを用いて、雄のゼブラフィッシュの成魚を約6ヶ月齢となるまで飼育した。平均体重が等しくなるよう10匹を1群(1ケージ)とし、3群(コントロール群、0.5%茶抽出物群、1%茶抽出物群)のゼブラフィッシュを準備した(平均体重:765mg)。
飼料としては、前記調製例1で調製した茶抽出物を含有するゼブラフィッシュ用飼料(ゼブラフィッシュ用標準飼料(商品名:おとひめB2、日進丸紅飼料社製)35%(w/w)、グルテン40%(w/w)、アマニ油20%(w/w)、茶抽出物0.5%(w/w)又は1%(w/w))を用いた。飼料の摂餌量は、コントロール群については5mg/匹/回、0.5%茶抽出群については5.025mg/匹/回、1%茶抽出群については5.05mg/匹/回とし、1日2回(朝・夕)給餌して1日平均で15.63mgの飼料をゼブラフィッシュに摂食させた。ここで、1%茶抽出群に摂食させた飼料を茶抽出物で換算すると0.1563mgである。また、ゼブラフィッシュの平均体重は765mgであるので、1%茶抽出群に摂食させた茶抽出物は、(0.1563mg/765mg=204mg/kg体重)となる。
ゼブラフィッシュの飼育には、1.7Lケージを用いた。ゼブラフィッシュの飼育は8週間行った。飼育最終日は、朝餌(9:00)を給餌したのち、午後(14:30)に過剰量の麻酔を投与して安楽死させた。開腹後、皮膚組織を除去した背側の半身(骨格筋)を採取し、これを−80℃にて凍結保存した。
【0054】
凍結保存したサンプルを15時間程度凍結乾燥した後、これを秤量した。これに脱イオン水0.4mL及びメタノール0.4mLを加え撹拌し、粉砕処理を2分間行った。懸濁液にクロロホルム0.8mLを加えて再度粉砕処理を2分間行い、20℃で10,000rpmの遠心分離を2分間行った。クロロホルムを用いたこの遠心分離操作を繰返し行い、クロロホルム層を回収した。得られた抽出液は脱水処理及び濾過処理後、−20℃で保存した。
【0055】
保存しておいた抽出液に、内標としてヘンエイコサン酸(C:21:0)のクロロホルム溶液(濃度1mg/mL)100μLを加えた。その後、窒素気流で乾固し、0.5N水酸化ナトリウム/メタノール溶液0.4mLを添加し、超音波等で分散後、三フッ化ホウ素/メタノール溶液0.4mLを添加しメチル化処理(80℃で2分間)した。ヘキサンと飽和食塩水をそれぞれ添加して激しく混和した。そして、20℃で5分間の遠心分離(1,000rpm)を行ってヘキサン層を回収し、回収したヘキサン層について脱水処理及び濾過処理を行った後、窒素気流で乾固し、これにクロロホルム1,000μLを加えて再溶し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析用サンプルを調製した。
【0056】
調製したGC分析用サンプルのうち100μLを用いて、下記の条件下でGC解析を行った。
GC Condition
Gas Chromatography:Shimadzu GC-17
a(商品名)
Column:HR-SS-10(商品名)25m×0.25mm
Column temp:150〜220℃
Program rate:3℃/min
Injection:250℃(sprit ratio:47:1)
Detector:FID(商品名)、250℃
Carrier gas:He(1.81mL/min)
Sample volume:1μL
GC解析で得られたスペクトルから、DHA、EPA及びα−リノレン酸等の各脂肪酸由来のピークの面積を算出した。そして、算出したピーク面積から、各脂肪酸の存在比(割合)を算出した。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2から明らかなように、高度不飽和脂肪酸の一種であるDHAとEPAの筋肉内の脂肪酸割合の合算は、コントロール群に対し、1%茶抽出物群で大きな変化がなかった。これに対し0.5%茶抽出物群では、DHAとEPAの筋肉内の脂肪酸割合の合算が有意傾向をもって増加した。
また、生体内においてDHAやEPAの合成の出発原料となるα−リノレン酸(LNA)の脂肪酸割合は、コントロール群に対し、0.5%茶抽出物群では有意に減少した。この結果は、0.5%茶抽出物群において、生体内での高度不飽和脂肪酸生成が促進されていることを示している。
【0059】
以上のように、所定量の茶抽出物は、高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の発現を促進して当該遺伝子の発現量を増加させる作用を有する。したがって、所定量の茶抽出物、及び茶抽出物の主成分である茶カテキンを高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤の有効成分とすることができる。
また、茶抽出物は、生体内での高度不飽和脂肪酸の生成を促進して生体内の高度不飽和脂肪酸量を増加させる作用を有する。したがって、茶抽出物及び茶カテキンをそれぞれ、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤の有効成分とすることができる。さらに、茶抽出物は、生体内での不飽和脂肪酸の含有量を増加させる作用を有する。したがって、茶抽出物及び茶カテキンをそれぞれ、不飽和脂肪酸量の割合を増加し生体内の脂肪酸組成を改変する、生体内脂肪酸組成の改変剤及び生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤の有効成分とすることができる。
さらには、生体内脂肪酸組成の改変剤、生体内での高度不飽和脂肪酸生成の促進剤、生体内の高度不飽和脂肪酸割合の増加剤、及び高度不飽和脂肪酸合成遺伝子発現の促進剤は、高度不飽和脂肪酸量の豊富な魚類などの飼育方法に好適に用いることができる。