(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716285
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】化粧品用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20200622BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20200622BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20200622BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20200622BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20200622BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20200622BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/86
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-33579(P2016-33579)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-149673(P2017-149673A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176110
【氏名又は名称】三省製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】小宮 康夫
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/016236(WO,A1)
【文献】
特開2009−249306(JP,A)
【文献】
特開2004−210743(JP,A)
【文献】
特開2001−261520(JP,A)
【文献】
特表2013−520409(JP,A)
【文献】
特開2014−114234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルソール酸を20〜50重量%含有するローズマリー抽出物と、当該ローズマリー抽出物1重量部に対し多価アルコールを15〜200重量部及び非イオン性界面活性剤を5〜100重量部と、組成物の総重量(100重量%)に対して70〜95重量%の水とを含み、多価アルコールと非イオン性界面活性剤との配合比(重量)が、6:1〜1:2の範囲であることを特徴とする澄明な化粧水用組成物。
【請求項2】
多価アルコールが、2価又は3価の多価アルコールであることを特徴とする請求項1に記載した化粧水用組成物。
【請求項3】
多価アルコールが、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオールまたはペンチレングリコールのいずれかから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項2に記載した化粧水用組成物。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤が、PPG−6デシルテトラデセス−20、PPG−6デシルテトラデセス−12、PEG−50水添ヒマシ油またはPEG−60水添ヒマシ油のいずれかから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載した化粧水用組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの項に記載の化粧水用組成物を使用してなることを特徴とする化粧水。
【請求項6】
化粧水が、皮膚老化防止用化粧水であることを特徴とする請求項5に記載の化粧水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルソール酸を含有するエタノール由来のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を配合することを特徴とする化粧品用組成物であり、さらに詳しくは、澄明で経時的に安定なローズマリー抽出物配合の化粧品用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向は根強く、食生活に気を配りながら内面的に健康な肉体や精神を維持するライフスタイルが定着した感がある。健康食品や機能性食品の積極的な摂取等がその現われでもある。
【0003】
また、栄養補助食品等のいわゆるサプリメントは、病院治療における新しい食形態として専門領域を形成しつつある。
【0004】
一方、化粧品領域においては、いつまでも美しくありたいという人間の本質的な欲求を充足すべく素材の開発が希求されている。特にいわゆるアンチエイジングへの消費者の関心は高く、従来にも増して効果を実感できる素材の提供が求められるようになってきている。
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するために、シソ科の植物に着目し、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)に関する抽出技術につき検討し、特定の抽出分画に所望の皺予防効果を見出した。さらに、研究を続けたところ、当該皺予防効果の本質は、抽出物中に存在するウルソール酸であることがわかった。
【0006】
ところで、例えば特許文献1〜4に示すように、ウルソール酸類のアンチエイジングに関する効能は公知であり、その溶解技術についてもいくつかの試みがされている。
【0007】
しかしながら、ウルソール酸を高濃度で含むローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、これら公知の従来技術のいずれによっても十分な溶解が達成出来ず、依然として市場において耐えうる安定な製剤の提供ができないものであった。
【0008】
そこで、本発明者らは、ウルソール酸を最高濃度で50%含有するエタノール由来のローズマリー抽出物を特定の高級アルコールと多価アルコール共存下において溶解させることにより安定な皮膚外用剤を提供する技術を開発した(特許文献5)。
【0009】
しかし、上記特許文献5記載の技術は、特定の高級アルコール及び多価アルコールとの共存下において溶解させた調製溶液を使用することで所望のスキンケア製剤を提供することが出来るようになったものの、この調製液には高級アルコールを含有しているため澄明な化粧水には使用できないという課題があり、さらに化粧水に配合した場合に経時的にローズマリー抽出物由来の沈殿物が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−57307号公報
【特許文献2】特開2006−36716号公報
【特許文献3】特開2007−308381号公報
【特許文献4】特開2007−332066号公報
【特許文献5】特開2009−249306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物を多価アルコール及び非イオン性界面活性剤並びに水と配合してなる澄明な化粧品用組成物を提供するものである。また、本発明は、かかる化粧品用組成物を使用してなる澄明かつ安定な化粧水を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく多価アルコールに溶解させたウルソール酸を含有するローズマリー抽出物を精製水に析出することなく配合する方法およびそれらの組成物につき鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ウルソール酸を
20〜50重量%含有するローズマリー抽出物と、当該ローズマリー抽出物1重量部に対し多価アルコールを15〜200重量部及び非イオン性界面活性剤を5〜100重量部と、組成物の総重量(100重量%)に対して70〜95重量%の水とを含
み、多価アルコールと非イオン性界面活性剤との配合比(重量)が、6:1〜1:2の範囲である澄明な化粧
水用組成物。
<
2> 多価アルコールが、2価又は3価の多価アルコールである前記<1
>に記載した化粧
水用組成物。
<
3> 多価アルコールが、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオールまたはペンチレングリコールのいずれかから選ばれた1種以上である前記<
2>に記載した化粧
水用組成物。
<
4> 非イオン性界面活性剤が、PPG−6デシルテトラデセス−20、PPG−6デシルテトラデセス−12、PEG−50水添ヒマシ油またはPEG−60水添ヒマシ油のいずれかから選ばれた1種以上である前記<1
>に記載した化粧
水用組成物。
<
5> 前記<1>から<
4>のいずれかに記載の化粧
水用組成物を使用してなる化粧水。
<
6> 化粧水が、皮膚老化防止用化粧水である前記<
5>に記載の化粧水。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウルソール酸を含有するローズマリー抽出物含有化粧品用組成物は、澄明かつ安定であり、特に皮膚老化防止用化粧水として有効に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0016】
本発明の化粧品用組成物は、ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物と、ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物1重量部に対し多価アルコールを15〜200重量部及び非イオン性界面活性剤を5〜100重量部と、組成物の総重量(100重量%)に対して70〜95重量%の水とを含む澄明な化粧品用組成物に関するものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
先ず、本発明の必須構成要件の一つであるローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)とは、前処理を行ったローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)を一定条件下、溶媒で抽出することによって得られる抽出物である。ここでローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)とは、独特の芳香を持つシソ科の常緑低木であり、地中海沿岸に自生し、ヨーロッパ中部をはじめ世界各地で一般に栽培されているものである。
【0018】
次に、本発明の有効成分であるローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)抽出物の製造方法を具体的に述べる。
【0019】
本発明では通常、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の葉を原料とする。当該使用する原料の処理工程としては、先ずはローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)100gに対して精製水1kgを加え、121〜125℃で60分加熱後、30℃以下に冷却する。
さらにローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)を回収し、精製水で洗浄、水切り後に熱風(約80℃)で15時間以上乾燥させる。十分に乾燥させたローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)をパワーミルで粉砕し、後の抽出処理工程用の原料として冷暗所(−20℃)で保管する。
【0020】
前項の条件で前処理したローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)に低級アルコールを1:10〜1:1000の重量割合で添加し、約40℃の温度条件で、2〜3時間攪拌して抽出する。その抽出液をろ過または遠心分離等の精製工程を経て得たろ液に、その液量の半分から倍量の精製水を添加攪拌し、しばらく静置後に析出した成分を遠心分離して沈渣を回収する。当該残渣を80℃で乾燥させると本発明のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を得ることができる。
【0021】
出発原料のローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)は、熱水で溶出される成分を予め除去したものを使用し、使用部位としては葉が好適に使用される。
【0022】
抽出工程において使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の低級アルコールがいずれも使用可能であるが、特にその中でもエタノールが本発明の目的とする有効性との関係上もっとも好ましい。エタノールの場合には少量の水との混液でも使用に供することができる。
【0023】
抽出温度と時間は、有効成分の抽出効率を考えて、少なくとも40℃に維持しつつ、2時間以上攪拌抽出するのが好適である。抽出の際のpH調整は特には要しない。
【0024】
低級アルコールで抽出した液は、後の処理工程で不要な成分を除去し、ウルソール酸を高濃度で分取しやすくできるよう一旦少なくとも30℃以下に冷却し、当該溶液に容積比で少なくとも半分量の精製水を添加する。
【0025】
析出した沈殿物について遠心と洗浄を繰り返し、沈渣を回収することで本発明のウルソール酸を含有するローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を得る。
ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)中のウルソール酸の含有量は、好ましくは20〜50重量%である。20重量%未満では、ウルソール酸の最終化粧品としての機能性発現効果が乏しくなり、一方50重量%を超えるウルソール酸の抽出は、抽出コストが嵩み効率的ではない。
【0026】
なお、ウルソール酸は、Na等の金属塩とすることなく酸の状態で使用する。ウルソール酸ナトリウム等の金属塩は、水に対する溶解性は向上するものの、pHが低い製剤においてはウルソール酸の結晶が析出し、化粧水を調製する上での制約が出てくるためである。
【0027】
このようにして得た本発明のローズマリー抽出物は、当該抽出物の溶解性の観点から、澄明な化粧品用組成物とするためには多価アルコールと非イオン性界面活性剤の共存が不可欠であり、これらにより安定な製品の提供と有効成分に係る機能性の効果的発現が可能となる。
なお、本発明において澄明とは、化粧品用組成物が澄んでおり、濁りが無いことをいう。
【0028】
本発明の他の必須構成要件の一つである多価アルコールは、2価以上であればいずれも選択し得るが、好ましくは2価又は3価の多価アルコールであり、具体的には1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソペンチルジオール、エリスルロース、グリセリン、ジグリセリン、1,10−デカンジオール、フィタントリオール、1,2−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコールが挙げられ、好適には1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、ペンチレングリコールが挙げられる。
なかでも、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオールまたはペンチレングリコールのいずれかから選ばれた1種以上の2価又は3価アルコールが好適に使用される。
【0029】
また、本発明の他の必須構成要件の一つである非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン化(1〜40EO)及びポリオキシエチレン化(1〜30PO)アルキル(C16〜C24)エーテル、ポリオキシエチレン化(30〜100EO)水添ヒマシ油からなる群が挙げられる。
ポリオキシエチレン化(1〜40EO)及びポリオキシエチレン化(1〜30PO)アルキル(C16〜C24)エーテルとしては、PPG−6デシルテトラデセス−20、PPG−6デシルテトラデセス−12からなる群から選択されることが好ましい。
また、ポリオキシエチレン化(30〜100EO)水添ヒマシ油としては、PEG−30水添ヒマシ油、PEG−40水添ヒマシ油、PEG−50水添ヒマシ油、PEG−60水添ヒマシ油、PEG−80水添ヒマシ油、PEG−100水添ヒマシ油からなる群から選ばれるのが好ましい。
なかでも、PPG−6デシルテトラデセス−20、PPG−6デシルテトラデセス−12、PEG−50水添ヒマシ油またはPEG−60水添ヒマシ油のいずれかから選ばれた1種以上である非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0030】
これら多価アルコールと非イオン性界面活性剤をローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)とそれぞれ単独で混合しても、澄明なローションを得ることはできないため、必ず共存させながら混合しなければならない。
【0031】
多価アルコールは、ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物1重量部に対し、15〜200重量部、好ましくは20〜140重量部である。15重量部未満ではウルソール酸の溶解が難しく、沈殿物が生じたり、澄明な組成物が得られない虞がある。一方、200重量部を超えても澄明性、安定性にそれ以上の効果は発現されない。
また、非イオン性界面活性剤は、ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物1重量部に対し、5〜100重量部、好ましくは7.5〜40重量部である。5重量部未満ではウルソール酸の溶解が難しく、沈殿物が生じたり、澄明な組成物が得られない虞がある。一方、100重量部を超えても澄明性、安定性にそれ以上の効果は発現されない。
【0032】
多価アルコールと非イオン性界面活性剤との配合比(重量)は、通常10:1〜1:5の範囲であり、好ましくは6:1〜1:2である。多価アルコールと非イオン性界面活性剤の配合比率が10:1を超えると、沈殿物が生じる虞がある。一方、多価アルコールと非イオン性界面活性剤の配合比率1:5を超えても澄明性、安定性にそれ以上の効果は発現されない。
【0033】
ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)と多価アルコールおよび非イオン性界面活性剤のそれぞれの添加順序は任意であるが、溶解スピード等工程面での有利性を考慮すると、好適には多価アルコールとローズマリー抽出物を先に混合し、その後で非イオン性界面活性剤を加え加温する方が好ましい。なお、溶解させる際に適宜加温することで相溶性を向上する等の一般的な措置は任意である。
【0034】
次に、上記ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物、多価アルコール及び非イオン性界面活性剤からなる溶解物に、組成物の総重量(100重量%)に対して70〜95重量%の水を加えることにより澄明な化粧品用組成物を得る。水としては精製水が通常用いられ、また、上記組成物中の水の量は、化粧水として一般的な割合であり、化粧水の用途・仕様等に合わせ適宜決定される。
【0035】
以上のようにして調製した化粧品用組成物は長期間低温で保管し、その後再度加温しても結晶の析出はなく安定であり、当該化粧品用組成物を用いて製剤化した各種の化粧水についても安定であることが確認できた。すなわち本発明によれば、分離やざらつき感の発生等もなく長期にわたって澄明な化粧水が提供される。
【0036】
本化粧品組成物は溶液の形態であることが特徴である。この化粧品組成物は、皮膚用化粧品、唇等の粘膜に使用するための化粧品等のいずれでもよいが、皮膚用化粧品が好ましい。本発明の製剤は、前述のように澄明でありスキンケア用製剤、特に、皮膚老化防止用化粧水として好適に使用される。
【0037】
なお、本発明においては、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、老化防止剤として公知のレチノール、レチノイン酸、美白剤として公知のコウジ酸、クエルセチン、グルタチオン、ハイドロキノン及びこれらの誘導体、縮合型タンニン類、カフェー酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、消炎剤としては副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の各種化合物、その他にも胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の効果を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
【0038】
また更に、本発明の化粧料にはこれら公知の有効成分に加え、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【実施例】
【0039】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0040】
1.ローズマリー抽出物の製造例
<製造例1>
乾燥したローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の葉100gに水2000gを加え、121℃で60分間加熱した。ろ過してローズマリーを回収し、80℃で一晩乾燥させ、あらかじめ水で抽出される成分を除いたローズマリー約60gを得た。この前処理したローズマリー60gに95%エタノール600gを加え、40℃で2時間抽出した。これをろ過したろ液に1重量%の活性炭を加え脱色し、活性炭をろ過して除き、ろ液に水をろ液/水(2:1)の割合で加えて撹拌し、析出した成分を遠心分離して分け、沈渣を80℃で乾燥させ、約3gのローズマリー抽出物を得た。本抽出物におけるウルソール酸含有量は、40〜50重量%であった。
【0041】
<試験例1>ローズマリー抽出物の溶解性試験
a) 試験方法
本試験は、澄明な化粧水を得るためにローズマリー抽出物に対し多価アルコールと非イオン性界面活性剤の併用が効果的であることを確認するために行うものの一例である。
製造例1で得た抽出物0.2g対し、表1、2にあげた多価アルコールおよび非イオン性界面活性剤を同表1の割合(重量:g)で添加した。そして、徐々に温度を上げ、最大80℃まで加熱して精製水を添加し、そのときの澄明性を確認した。
【0042】
b)試験結果と考察
表1、2に結果を示すとおり、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、多価アルコール又は非イオン性界面活性剤のいずれかのみでは、澄明な化粧品用組成物を得ることはできなかったが、多価アルコールと非イオン性界面活性剤とを組み合せることにより澄明な化粧品用組成物を得ることができた。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
実際に本発明に基づき構成される成分を使用して、化粧水の処方例を以下にあげる。各処方例ともに、均一に溶解、均質に分散した澄明で安定な化粧水を得ることが出来た。また得られた化粧水においては抽出物の影響による分離等は全く認められなかった。
【0046】
(処方例1) 皮膚老化防止用化粧水
(重量%)
ローズマリー抽出物(製造例1) 0.2
PEG−50水添ヒマシ油 2.0
ペンチレングリコール 5.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.1
防腐剤 適量
精製水 残部
【0047】
(処方例2) 皮膚老化防止用化粧水
(重量%)
ローズマリー抽出物(製造例1) 0.2
PPG−6デシルテトラデセス−20 2.0
ペンチレングリコール 3.0
ブチレングリコール 4.0
ジプロピレングリコール 5.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
キサンタンガム 0.1
中和剤 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
【0048】
これら処方例1、2はいずれも、試験例で確認されたと同様、本発明の目的を達成する効果を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ウルソール酸を含有するローズマリー抽出物を有効成分とする澄明かつ安定な化粧品用組成物を提供するものである。また、本発明は、かかる化粧品用組成物を使用して化粧水、特に、皮膚の老化を防止する皮膚老化防止用化粧水として有用である。