【文献】
大橋一男、他,インピーダンス変化を利用した排尿検知システム,電気化学および工業物理化学,2002年,70, No.7,pp. 536-542
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子が、インピーダンスの変化を測定し、測定したインピーダンスの変化を経時的に処理して、排尿動態を解析するための排尿解析部を含む排尿動態解析装置であって、
前記排尿解析部は、吸収量算定部と姿勢判定部とを含んで構成されており、
前記吸収量算定部は、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記姿勢判定部は、各々の測定時の着用者の姿勢を判定し、
前記吸収量算定部は、各々の測定時のインピーダンスが、直前の測定時のインピーダンスから所定量以上変化していない場合には、該直前の測定時に用いた尿量計算式を選択し、所定量以上変化した場合には、前記姿勢判定部によって判定された姿勢に対応する尿量計算式を選択して、各々の測定時のインピーダンスから、尿吸収量を算定する排尿動態解析装置。
前記姿勢判定部は、うつ伏せ、仰向け正面、仰向け横向き、座る正面、座る横向き、膝曲げ正面、及び膝曲げ横向きを含む各姿勢の何れであるかを判定する請求項2記載の排尿動態解析装置。
複数のセンサ素子が取り付けられた吸収性物品を着用した模擬着用者がとっている、うつ伏せ、仰向け正面、仰向け横向き、座る正面、座る横向き、膝曲げ正面、及び膝曲げ横向きを含む各姿勢における、吸収性物品に注入された尿を模した液体の注入量と、前記複数のセンサ素子によって測定された液体の広がりのセンサ出力との相関関係から、近似式による検量線を得て、各姿勢に対応する尿量計算式が予め求められており、前記吸収量算定部は、前記姿勢判定部によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を、予め求められた尿量計算式から選択して、尿吸収量を算定する請求項3記載の排尿動態解析装置。
排尿抽出部をさらに備えており、該排尿抽出部は、前記吸収量算定部で算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出する請求項1〜4のいずれか1項記載の排尿動態解析装置。
排尿選出部をさらに備えており、該排尿選出部は、前記排尿抽出部によって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出す請求項5又は6記載の排尿動態解析装置。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子によって測定された、インピーダンスの経時的な変化に基づく着用者の排尿データを処理して、排尿動態を解析する排尿動態解析方法であって、
少なくとも、吸収量算定ステップと姿勢判定ステップとを含み、
前記吸収量算定ステップでは、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、予め定められた尿量計算式を用いて、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記姿勢判定ステップでは、各々の測定時の着用者の姿勢を判定し、
前記吸収量算定ステップでは、各々の測定時のインピーダンスが、直前の測定時のインピーダンスから所定量以上変化していない場合に、該直前の測定時に前記姿勢判定ステップにおいて判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を選択して、各々の測定時のインピーダンスから、尿吸収量を算定する排尿動態解析方法。
排尿抽出ステップをさらに備えており、該排尿抽出ステップでは、前記吸収量算定ステップで算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出する請求項8記載の排尿動態解析方法。
排尿選出ステップをさらに備えており、該排尿選出ステップでは、前記排尿抽出ステップによって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出す請求項9又は10記載の排尿動態解析方法。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子が、インピーダンスの変化を測定し、測定したインピーダンスの変化を経時的に処理して、排尿動態を解析するための排尿解析部を含む排尿動態解析装置であって、
前記排尿解析部は、吸収量算定部と、排尿抽出部と、排尿選出部とを含んで構成されており、
前記吸収量算定部は、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記排尿抽出部は、前記吸収量算定部で算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出し、
前記排尿選出部は、前記排尿抽出部によって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出し、
前記排尿選出部は、前記排尿抽出部で抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する推定吸収量算定部を備えており、
該推定吸収量算定部は、排尿時排尿量算定時設定部を備えており、該排尿時排尿量算定時設定部では、前記排尿抽出部で抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する際に、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから推定排尿量を算定するかを設定できるようになっている排尿動態解析装置。
前記各々の排尿時の推定吸収量を、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから算定するかは、吸収性物品における尿の吸収のし易さ、及び複数のセンサ素子によるセンサ感度に応じて設定される請求項12又は13記載の排尿動態解析装置。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子が、インピーダンスの変化を測定し、測定したインピーダンスの変化を経時的に処理して、排尿動態を解析するための排尿解析部を含む排尿動態解析装置であって、
前記排尿解析部は、吸収量算定部と、排尿抽出部と、排尿選出部とを含んで構成されており、
前記吸収量算定部は、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記排尿抽出部は、前記吸収量算定部で算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出し、
前記排尿選出部は、前記排尿抽出部によって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出し、
前記排尿選出部は、前記排尿抽出部で抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する推定吸収量算定部を備えており、
該推定吸収量算定部は、アウター部材選択部を備えており、該アウター部材選択部において選択されたアウター部材の種類に応じて予め設定された所定の係数をかけ合わせて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する排尿動態解析装置。
前記アウター部材の種類に応じて予め設定された所定の係数は、基準アウター部材における係数を1として、該基準アウター部材を用いた場合の吸収量と各々のアウター部材を用いた場合の吸収量とを比較した相対値として設定されている請求項16記載の排尿動態解析装置。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子によって測定された、インピーダンスの経時的な変化に基づく着用者の排尿データを処理して、排尿動態を解析する排尿動態解析方法であって、
少なくとも、吸収量算定ステップと、排尿抽出ステップと、排尿選出ステップとを含み、
前記吸収量算定ステップでは、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、予め定められた尿量計算式を用いて、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記排尿抽出ステップでは、前記吸収量算定ステップで算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出し、
前記排尿選出ステップでは、前記排尿抽出ステップによって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出し、
前記排尿選出ステップは、前記排尿抽出ステップで抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する推定吸収量算定ステップを含んでおり、
該推定吸収量算定ステップは、排尿時排尿量算定時設定ステップを含んでおり、該排尿時排尿量算定時設定ステップでは、前記排尿抽出ステップで抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する際に、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから推定排尿量を算定するかを設定できるようになっている排尿動態解析方法。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子によって測定された、インピーダンスの経時的な変化に基づく着用者の排尿データを処理して、排尿動態を解析する排尿動態解析方法であって、
少なくとも、吸収量算定ステップと、排尿抽出ステップと、排尿選出ステップとを含み、
前記吸収量算定ステップでは、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、予め定められた尿量計算式を用いて、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記排尿抽出ステップでは、前記吸収量算定ステップで算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出し、
前記排尿選出ステップでは、前記排尿抽出ステップによって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出し、
前記排尿選出ステップは、前記排尿抽出ステップで抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する推定吸収量算定ステップを含んでおり、
該推定吸収量算定ステップは、アウター部材選択ステップを含んでおり、該アウター部材選択ステップにおいて選択されたアウター部材の種類に応じて予め設定された所定の係数をかけ合わせて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する排尿動態解析方法。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子が、インピーダンスの変化を測定し、測定したインピーダンスの変化を経時的に処理して、排尿動態を解析するための排尿解析部を含む排尿動態解析装置であって、
前記排尿解析部は、吸収量算定部と、排尿抽出部と、排尿選出部と、姿勢判定部とを含んで構成されており、
前記吸収量算定部は、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記排尿抽出部は、前記吸収量算定部で算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出し、
前記排尿選出部は、前記排尿抽出部によって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出し、
前記姿勢判定部は、着用者に取り付けられた3軸加速度センサから送られる出力値から、着用者の姿勢を判定し、
前記排尿選出部は、吸収性物品交換判定部を備えており、該吸収性物品交換判定部は、前記複数のセンサ素子から送られる出力値が、吸収性物品が尿を吸収する前の初期設定値に戻った際に、前記3軸加速度センサから送られる出力値を確認して、前記3軸加速度センサからの出力値に変化があった場合にオムツ交換がなされたと判定し、前記3軸加速度センサからに出力値に変化がない場合にオムツ交換がなされていないと判定する排尿動態解析装置。
前記吸収性物品交換判定部は、前記3軸加速度センサから送られるZ軸方向の出力値を確認して、Z軸方向の出力値に変化があった場合にオムツ交換がなされたと判定し、Z軸方向の出力値に変化がない場合にオムツ交換がなされていないと判定する請求項23記載の排尿動態解析装置。
尿を吸収する吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子によって測定された、インピーダンスの経時的な変化に基づく着用者の排尿データを処理して、排尿動態を解析する排尿動態解析方法であって、
少なくとも、吸収量算定ステップと、排尿抽出ステップと、排尿選出ステップと、姿勢判定ステップとを含み、
前記吸収量算定ステップでは、前記複数のセンサ素子によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、予め定められた尿量計算式を用いて、各々の測定時の尿吸収量を算定し、
前記排尿抽出ステップでは、前記吸収量算定ステップで算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、排尿時における前記吸収性物品による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出し、
前記排尿選出ステップでは、前記排尿抽出ステップによって抽出された前記排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、前記吸収性物品を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出し、
前記姿勢判定ステップでは、着用者に取り付けられた3軸加速度センサから送られる出力値から、着用者の姿勢を判定するようになっており、
前記排尿選出ステップは、吸収性物品交換判定ステップを含んでおり、該吸収性物品交換判定ステップでは、前記複数のセンサ素子から送られる出力値が、吸収性物品が尿を吸収する前の初期設定値に戻った際に、前記3軸加速度センサから送られる出力値を確認して、前記3軸加速度センサからの出力値に変化があった場合にオムツ交換がなされたと判定し、前記3軸加速度センサからの出力値に変化がない場合にオムツ交換がなされていないと判定する排尿動態解析方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい一実施形態に係る排尿動態解析装置10(
図1、
図2参照)は、例えば病院や介護施設等において、寝たきりの被介護者の排尿を一括して管理して、看護士等の介護者の負担を軽減するための排尿管理支援システム50に組み込まれて用いられる。本実施形態の排尿動態解析装置10は、排尿管理支援システム50を構成する、例えばコンピュータからなる情報処理手段20において形成されており、おむつ等の吸収性物品30から、データ収集手段40を介して送られる、センサ素子31(
図3参照)によって測定された排尿に関するデータを処理して、被介護者(着用者)の排尿動態として、例えば排尿時における平均尿流率、最大尿流率、尿流率曲線等を、精度良く解析できるようにする機能を備えている。
【0022】
本実施形態の排尿動態解析装置10は、
図1及び
図2に示すように、例えばコンピュータからなる情報処理手段20において形成され、尿を吸収する吸収性物品30に取り付けられた複数のセンサ素子31(
図3参照)が、インピーダンスの変化を測定し、測定したインピーダンスの変化を経時的に処理して、排尿動態を解析するための排尿解析部11を含んでいる。排尿解析部11は、
図2に示すように、吸収量算定部12と、排尿抽出部13と、排尿選出部14と、排尿動態解析部15とを含んで構成されている。吸収量算定部12は、複数のセンサ素子31によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、予め定められた尿量計算式を用いて、各々の測定時の尿吸収量を算定する。排尿抽出部13は、吸収量算定部12で算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、ノイズを除去して、各排尿時における吸収性物品30による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出する。排尿選出部14は、排尿抽出部13によって抽出された各排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、吸収性物品30を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出す。排尿動態解析部15は、排尿選出部14によって選び出された、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータから、各々の排尿時における排尿動態を解析する。
【0023】
また、本実施形態では、排尿解析部11は、姿勢判定部16を含んでおり、姿勢判定部16は、各々の測定時における着用者の姿勢を判定する。吸収量算定部12は、予め定められた複数の計算式から、姿勢判定手段16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を選択して、複数のセンサ素子31によって経時的に連続して測定された各々の測定時のインピーダンスから、尿吸収量を算定するようになっている。
【0024】
さらに、本実施形態では、排尿解析部11は、お知らせ判定部17を備えている。お知らせ判定部17は、例えば吸収量算定部12による尿吸収量の算定結果を監視して、吸収性物品30に吸収された尿吸収量が所定の設定値を超えたことを判定し、尿吸収量が所定の設定値を超えた際に、排尿後の残尿量を測定するタイミングであることを通知する。
【0025】
本実施形態では、排尿動態解析装置10が組み込まれた排尿管理支援システム50は、
図1に示すように、インピーダンスの変化に基づいて尿の広がりを測定する複数のセンサ素子31が取り付けられた吸収性物品30(
図3(a)〜(c)参照)と、センサ素子31に電流を供給する電源を収容し、センサ素子31によって測定されたインピーダンスの変化をデータとして収集するデータ収集手段40と、排尿動態解析装置10を構成する情報処理手段20と、情報処理手段20からの通知を看護士等の介護者に通知する通知手段25とを具備している。尚、情報処理手段20はスイッチ27と一体でも良く、直接通知を行っても良い。
【0026】
排尿管理支援システム50を構成する吸収性物品30は、
図1及び
図3(a)〜(c)に示すように、例えば特開2013−39158号公報に記載の尿取りパッドと同様の構成を備える尿取りパッド33が、当該吸収性物品30の吸収部として、アウター部材であるテープおむつの内側に装着された、使い捨て用のおむつとなっている。尿取りパッド33には、例えば着用者の肌に触れる側とは反対側の外側表面に、縦長のフィルム基材の一方の面に複数の電極によるセンサ素子31を配設して形成される静電容量センサシート32が、取り付けられている。複数のセンサ素子31は、静電容量センサシート32の縦長方向に2列に配置されて設けられている。尿取りパッド33が、吸収性物品30であるおむつに吸収部として装着されることで、吸収性物品30には、インピーダンスの変化に基づいて尿の広がりを測定することが可能な、複数のセンサ素子31が取り付けられることになる。センサ素子31を構成する複数の電極は、それぞれが導線により結線されており、コネクター部34を介して、吸収性物品30に取り付けられるデータ収集手段40と接続される(
図1参照)。吸収性物品30の尿取りパッド33は、正常な成人の1回の排尿量が約150gであるのに対して、これの数倍程度の排尿量として、例えば350g以上の排尿量を吸収することが可能なように、該尿取りパッド33に含まれるポリマーの量が調整されている。
【0027】
データ収集手段40は、センサ素子31に電圧を印加する電源を有し、各々の測定時にセンサ素子31によって測定されたインピーダンスを排尿データとして収集する機能を備える。具体的には、本実施形態におけるデータ収集手段40は、
図4に示すように、電源である電池(図示せず)やタイマー45を収容するハウジング41を有している。ハウジング41は、例えば吸収性物品30に設けられた金属製のスナップ60(
図1参照)を介して、吸収性物品30の腹側領域に着脱可能に固定される。データ収集手段40は、スナップ60から取り外して再利用可能となっている。データ収集手段40は、インピーダンス検出回路42や、加速度センサ43や、データロガー44等を備えている。
【0028】
インピーダンス検出回路42は、吸収性物品30の尿取りパッド33に取り付けられた静電容量センサシート32の複数のセンサ素子31による回路全体に、ハウジング31内の電池および回路によって生成される、例えば400kHz〜700kHz程度の矩形波の電圧を印加して、複数のセンサ素子31の間のインピーダンスを測定する。またインピーダンス検出回路42は、静電容量センサシート32によって測定されたインピーダンスを、タイマー45から出力される時刻データと共に、データロガー44に保存する。ここで、センサ素子31によって測定されるインピーダンスの各々の測定時の時間間隔、すなわち排尿データの測定間隔は、例えば0.1秒〜3分の間で適宜調整することができる。排尿データの測定間隔は、0.1秒〜3分であることが好ましく、0.1〜60秒であることが更に好ましく、0.2〜20秒であることが特に好ましい。
【0029】
加速度センサ43は、好ましくは3軸加速度センサからなり、吸収性物品30を着用している着用者の姿勢の変位によるXYZ軸の3方向の出力値(加速度)をそれぞれ測定(収集)して、タイマー45から出力される時刻データと共に、測定結果をデータロガー44に保存する。
【0030】
データロガー44は、インピーダンス検出回路42及び加速度センサ43から取得したデータを保存する。データロガー44は、情報処理手段20からの要求に応じて、または、情報処理手段20に接続されたことを検知すると、保存しているデータを情報処理手段20に転送する。
【0031】
排尿管理支援システム50を構成する情報処理手段20は、例えばコンピュータとして公知のものであって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、表示手段21、入力手段22、出力手段23等を備えている。情報処理手段20は、所定のプログラムが組み込まれていることで、
図2に示すように、排尿動態を解析するための排尿解析部11を含む、後述する排尿動態解析装置10を構成している。排尿動態解析装置10は、後述する吸収量算定部12、排尿抽出部13、排尿選出部14、排尿動態解析部15等を備える排尿解析部11の他に、データ収集手段40から排尿データを取得するデータ取得部19を備えている。また、排尿動態解析装置10は、データ取得部19を介して取得した、データ収集手段40から送られる排尿データや、吸収量算定部12、排尿抽出部13、排尿選出部14、排尿動態解析部15等において算定されたり解析された、各種のデータを蓄積するデータベース部24を備えている。データベース部24は、例えば入力手段22を介して取り込まれた、着用者の飲水量、排便、入浴等を記載した排尿日誌に関するデータ等も、蓄積することができるようになっている。
【0032】
表示手段21は、LCD(Liquid Crystal Display)、ELディスプレイ(Electroluminescence display)等によって構成されている。入力手段22は、例えばタッチパネルやキーボード等によって構成されている。出力手段23は、例えば有線であるケーブル又は無線のLANシステムを介して、通知手段25と接続している。
【0033】
通知手段25は、病院や介護施設等がインフラとして有するネットワークを用いて、情報処理手段20からの情報を、末端機器26へ通知するものであり、例えば病院内の院内ナースコールシステムを用いて構成することができる。通知手段25は、吸収性物品30を着用した着用者(被介護者)の病室毎に設置されるスイッチ27や、各々のスイッチ27と接続された中継器28を備えている。中継器28は、複数のスイッチ27の情報を集約する。また、通知手段25は、中継器28に接続された院内交換器29や、院内交換器29に接続された、看護士等の介護者が携帯する末端機器26を備えている。これらによって、例えば後述する排尿動態解析装置10の排尿解析部11のお知らせ判定部17において、例えば吸収性物品30によって吸収された尿吸収量が所定の設定値を超えたと判定された際に、通知手段25を介して、判定結果を看護士等の介護者に速やかに通知することで、排尿後の残尿量を測定するタイミングや、吸収性物品30であるおむつを交換するタイミングを、効率良く知らせることができるようになっている。
【0034】
そして、本実施形態の排尿動態解析装置10は、
図2に示すように、吸収量算定部12、排尿抽出部13、排尿選出部14、排尿動態解析部15等を含む排尿解析部11を有しており、また吸収性物品30に取り付けられたデータ収集手段40から排尿データを取得するデータ取得部19や、各種のデータを蓄積するデータベース部24を備えている。
【0035】
吸収量算定部12では、本実施形態の排尿動態解析方法の吸収量算定ステップが行われる。本実施形態の排尿動態解析方法は、吸収性物品30に取り付けられた複数のセンサ素子31によって経時的に連続して測定された、吸収性物品30に尿が吸収された際の各々の測定時のインピーダンスから、インピーダンスの変化を経時的に処理して、排尿動態を解析する。排尿抽出部13では、本実施形態の排尿動態解析方法の排尿抽出ステップが行なわれる。排尿選出部14では、本実施形態の排尿動態解析方法の排尿選出ステップが行なわれる。排尿動態解析部15では、本実施形態の排尿動態解析方法の排尿動態解析ステップが行なわれる。
【0036】
本実施形態では、データ取得部19は、吸収性物品30に取り付けられたデータ収集手段40と、有線であるケーブル又は無線のLANシステムを介して接続されている。データ取得部19は、データ収集手段40のデータロガー44に保存されている排尿データを取得して、データベース部24に蓄積すると共に、取得した排尿データを、排尿動態解析装置10の排尿解析部11において、尿吸収量を算定したり、排尿時における排尿動態を解析したりするためのデータとして提供する機能を備えている。
【0037】
吸収量算定部12では、吸収量算定ステップとして、吸収性物品30に取り付けられた静電容量センサシート32の複数のセンサ素子31により経時的に連続して測定されて、データ取得部19によって取得された、吸収性物品30が吸収した尿の広がりに関する排尿データ(インピーダンスないしその変化量のデ−タ)から、好ましくは予め定められた尿量計算式を用いて、各々の測定時の尿吸収量を算定する(
図10参照)。すなわち、吸収量算定部12は、実験室等において予め検証されてデータベース部24に蓄積されている、規格の異なるパット種の、種々の吸収性物品30に関する尿の広がり面積に対応した、吸収した尿の量である尿吸収量をインピーダンスで表す複数の相関式から、着用者が着用している吸収性物品30のパッド種に応じた相関式を選び出す。ここで、相関式は、全インピーダンスの範囲にわたって同一の計算式を用いても、インピーダンスの範囲に応じて異なる計算式を用いてもよいが、計算結果である尿吸収量の精度を上げるには、インピーダンスの範囲に応じて異なる計算式を用いるのが好ましい。また、各計算式は多項式であることが好ましく、その次数は1次から4次であることが好ましい。吸収量算定部は、複数のセンサ素子31によって経時的に連続して測定されたインピーダンスから、予め定められた所定の測定時間間隔毎に、各々の測定時の尿吸収量を各々算定する。吸収量算定部は、吸収量算定ステップのデータ平滑ステップを行うデータ平滑部を備えている。尿吸収量の算定時には、継時的に変化するインピーダンスを、データ平滑部におけるデータ平滑ステップによって、例えば、ピークホールド、ローパスフィルター、移動平均等で予め平滑化した後に、各々の測定時の尿吸収量を算定してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、排尿解析部11は、データ取得部19によって取得された、排尿データと共にデータ収集手段40から転送される、加速度センサ43によって測定された姿勢に関するデータから、着用者の姿勢を判定する姿勢判定部16を備えている。姿勢判定部16では、上述の排尿動態解析方法の姿勢判定ステップが行なわれる。姿勢判定部16は、姿勢判定ステップとして、加速度センサ43による着用者の姿勢に関するデータから、着用者が、例えばうつ伏せ、仰向け正面、仰向け横向き、座る正面、座る横向き、膝曲げ正面、及び膝曲げ横向きを含む各姿勢のうちの、いずれの状態にあるかを判定することができる。吸収量算定部12は、吸収量算定ステップにおいて、データベース部24に蓄積されている、各々の姿勢について予め検証された複数の計算式から、姿勢判定手段16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を選択して、複数のセンサ素子31による各々の測定時の尿吸収量を算定する(
図10参照)。これによって、測定時の尿吸収量を、さらに精度良く算定することが可能になる。
【0039】
ここで、着用者の姿勢に関するデータを測定する加速度センサ43として、好ましくは公知の3軸加速度センサを用いることができる。すなわち、着用者に取り付けられた3軸加速度センサから送れられるXYZ軸の3方向の出力値から、着用者の姿勢を判定する。このような3軸加速度センサとして、例えば商品名「ADXL362」(ANALOG DEVICES社製)、マイクロパワー、3軸、デジタル出力MEMS加速度センサを用いることができる。加速度センサ43として3軸加速度センサを用いることで、着用者の姿勢の傾きによりXYZ軸の3方向の出力値が変化することを利用して、着用者の姿勢を容易に且つ精度良く判定することが可能になる。
【0040】
例えば、
図5(a)〜(c)に示すように、着用者の腰幅方向にX軸が、身長方向にY軸が、前後方向にZ軸が沿うように加速度センサ43を配置して、加速度センサ43を内部に備えるデータ収取手段40を吸収性物品30に取り付けた場合に、例えば座った姿勢(
図5(a)参照)、仰向けの姿勢(
図5(b)参照)、及び仰向けで横を向いた姿勢(
図5(c)参照)では、これらの軸方向の傾きが異なり、加速度センサ43による各軸の出力値が変化する。これによって、例えば試験室において、加速度センサ43が取り付けられた吸収性物品30を着用した被験者の、目視による姿勢と、その時の加速度センサ43による3軸の出力値との関係を検証して、例えば表1に示す姿勢判定テーブルを作成しておくことにより、例えば後述する姿勢判定フローに従って、着用者の姿勢を容易に判定することができる。
【0042】
すなわち、姿勢判定フローでは、例えば
図6に示すように、Z軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比し、218以上である場合には、うつ伏せの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式1)を採用する。Z軸の出力値が217以下である場合に、Y軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比し、160以下である場合には、座る姿勢と判断して、さらにX軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比する。この結果、X軸の出力値が150以下である場合には、座る横向きで且つ右向きの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式5)を採用し、X軸の出力値が180以上である場合には、座る横向きで且つ左向きの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式5)を採用する。X軸の出力値が150以下でも、180以上でもない場合には、座る正面の姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式4)を採用する。
【0043】
また、Z軸の出力値が217以下である場合に、Y軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比し、181以上である場合には、膝曲げ姿勢と判断して、さらにX軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比する。この結果、X軸の出力値が150以下である場合には、膝曲げ横向きで且つ右向きの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式6)を採用し、X軸の出力値が180以上である場合には、膝曲げ横向きで且つ左向きの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式6)を採用する。X軸の出力値が150以下でも、180以上でもない場合には、膝曲げ正面の姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式7)を採用する。
【0044】
さらに、Z軸の出力値が217以下である場合に、Y軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比し、160以下でも、181以上でもない場合には、仰向け姿勢と判断して、さらにX軸の出力値を表1の姿勢判定テーブルと対比する。この結果、X軸の出力値が150以下である場合には、仰向け横向きで且つ右向きの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式3)を採用し、X軸の出力値が180以上である場合には、仰向け横向きで且つ左向きの姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式3)を採用する。X軸の出力値が150以下でも、180以上でもない場合には、仰向け正面の姿勢と判断して、この姿勢に対応する尿量計算式(式2)を採用する。
【0045】
さらにまた、本実施形態では、上述のうつ伏せ、仰向け正面、仰向け横向き、座る正面、座る横向き、膝曲げ正面、及び膝曲げ横向きを含む各姿勢に対応する尿量計算式(式1〜式7)は、以下のようにして、予め求められておくことができる。すなわち、本実施形態では、例えば
図7に示すように、複数のセンサ素子31及び加速度センサ43が取り付けられた吸収性物品30を、着用者を模した人形に着用させ、各々の姿勢をとらせた状態で、尿を模した液体として、好ましくは生理食塩水を、着用した吸収性物品30中に物品内チューブを介して注入する。これと同時に、複数のセンサ素子31によって、その時のインピーダンスを経時的に連続して測定して、センサ出力として出力する。例えば注入した液体、例えば生理食塩水の注入量を縦軸に、センサ出力の初期値からの変化量を横軸にとって測定結果をプロットし、生理食塩水の注入量と、センサ素子31によって測定された生理食塩水の広がりに応じたセンサ出力の変化量との相関関係から、近似式による検量線を得る。これによって、各姿勢に対応する尿量計算式を、予め求めることができる。吸収量算定部12は、姿勢判定部16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を、これらの予め求められた計算式から選択して、複数のセンサ素子31によって経時的に連続して測定された各々の測定時のインピーダンスから、尿吸収量を算定するようになっている。
【0046】
そして、本実施形態では、吸収量算定部12は、各々の測定時に測定されたインピーダンスが、直前の測定時に測定されたインピーダンスから変化していない場合に、直前の測定時に姿勢判定部16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を選択して、各々の測定時に測定されたインピーダンスから、尿吸収量を算定するようになっている。
【0047】
すなわち、本実施形態では、吸収量算定部12は、各々の測定時に測定されたインピーダンスから尿吸収量を算出する際に、今回のセンサ素子31によるセンサ出力の、直前の測定時におけるセンサ出力に対する変化量を確認する。
図8に示すように、センサ出力に変化量があった場合には、排尿されているとして、今回の測定時に姿勢判定部16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量検量線から得られる尿量計算式を選択して、尿吸収量を算定する。センサ出力に変化量がなかった場合には、排尿されておらず姿勢のみが変化したとして、直前(前回)の測定時に姿勢判定部16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量検量線から得られる尿量計算式を選択して、尿吸収量を算定する。
【0048】
これによって、本実施形態によれば、排尿解析部11に、着用者の姿勢を判定する姿勢判定部16を設け、姿勢判定部16によって判定された着用者の姿勢に対応する尿量計算式を選択して、複数のセンサ素子31による各々のインピーダンスの測定時の尿吸収量を算定できるようにする場合に、実際には排尿が無くても、着用者の姿勢の変化によって選択される尿量計算式が入れ替わることで、算定される尿吸収量に変化が生じるのを効果的に回避して、精度の良い測定時のデータを得ることが可能になる。
【0049】
特に、例えば着用者の姿勢が、姿勢判定部により異なる姿勢と判定される閾値近辺の姿勢となっていて、着用者の姿勢の僅かな変化によって、選択される尿量計算式が頻繁に入れ替わることで、実際には排尿が無い場合でも、計算式の相違によりインピーダンスの出力値から算定される尿吸収量に、例えば
図9(a)に示すような変動が生じることになるのを、効果的に回避して、例えば
図9(b)に示すような、排尿が無い場合には変動の無い、より精度の良い測定時のデータを得ることが可能になる。
【0050】
なお、
図8のチャートにおいて「変化量あり」とする、すなわち本実施形態でセンサ出力に変化量があったと判定するのは、センサ出力、すなわちインピーダンス値に例えば3%以上の所定の変化があった場合であり、所定の変化以下の変化量の場合は、ノイズとみなして無視するように構成されている。
【0051】
排尿抽出部13では、排尿抽出ステップとして、吸収量算定部12で算定された、複数のセンサ素子31による各々の測定時の尿吸収量のデータから、ノイズを除去して、排尿時における吸収性物品30による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出する。すなわち、排尿抽出部13では、
図10に示すように、予め定められた所定の測定間隔毎に、経時的に連続して各々測定された尿吸収量のデータについて、例えば算定された尿吸収量の計算値が0以下となる場合に、このデータは排尿時のデータではないノイズと判断してカットする。また、今回の測定時の尿吸収量の計算値と、直前(前回)の測定時の尿吸収量の計算値との差が、所定の値として、例えば5g以下である場合に、今回のデータは排尿時のデータではないノイズと判断してカットする。さらに、次の測定時の尿吸収量の計算値が、今回の測定時の尿吸収量の計算値よりも減っている場合に、今回のデータは排尿時のデータではないノイズと判断してカットする。
【0052】
本実施形態では、排尿解析部11は、微分波形判定部18(
図2参照)を備えている。微分波形判定部18では、上述の排尿動態解析方法の微分波形判定ステップが行なわれる。微分波形判定部18は、排尿抽出ステップにおける微分波形判定ステップとして、吸収量算定部12で算定された複数のセンサ素子31による各々の測定時の尿吸収量の経時的変化のデータから、微分波形を求めて、排尿抽出部13において、得られた微分波形に基づいて、ノイズを判定して除去する。すなわち、微分波形判定部18は、吸収量算定部12で算定された、所定の測定間隔で各々測定された排尿データに基づく尿吸収量の経時的変化のデータに対して、微分演算を施す。これによって、例えば
図11(a)、(b)に示すような、好ましくは微分値を移動平均した値による、微分波形のグラフを得ることができる。
【0053】
微分波形判定部18は、得られた微分波形のグラフから、例えば微分値が連続してプラスとマイナスに大きなピークを有しているか否かを判定する。微分波形判定部18は、例えば
図11(a)に示すように、微分値がプラスのみに大きなピークを有している場合には、排尿時における、吸収性物品30による尿吸収量の経時的変化のデータであると判定することができる。例えば
図11(b)に示すように、微分値が連続してプラスとマイナスにピークを有している場合には、吸収時のデータではないノイズと判断して、カットすることができる。排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータであるか否かの判定は、例えば
図11(a)で得られた微分波形のグラフでは、横軸の測定点数の30から60の間におけるピーク値の和をとって、ピーク値の和がプラスの値となっており、且つ閾値として例えば10を超えていたら、排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータであると判定することもできる。
【0054】
これらによって、排尿抽出部13では、排尿抽出ステップにより、汗等の排尿以外のものの影響や、吸収性物品30の尿取りパッド33に含まれる吸収性ポリマーによる影響や、その他の要因による影響をノイズとして適正に除去した、精度の良い排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを抽出することが可能になる。
【0055】
排尿選出部14では、排尿選出ステップとして、排尿抽出部13によって抽出された、排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、吸収性物品30を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータであるかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出す。また、本実施形態では、排尿選出部14は、推定吸収量算定部14aを備えている(
図2参照)。推定吸収量算定部14aでは、推定吸収量算定ステップとして、
図12に示すように、排尿抽出部13で排尿抽出ステップにより抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定するようになっている。推定吸収量は、例えば尿取りパッド33に含まれる吸収性ポリマーが尿を吸収して安定するまで(広がりが終わるまで)の時間以降の尿吸収量を選択して計算することが好ましい。
【0056】
このため、本実施形態では、推定吸収量算定部14aは、排尿時排尿量算定時設定部14bを備えており(
図2参照)、排尿時排尿量算定時設定部14bでは、排尿時排尿量算定時設定ステップとして、排尿抽出部13で排尿抽出ステップにより抽出された各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータに基づいて、各々の排尿時の推定吸収量を算定する際に、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから推定排尿量を算定するかを設定できるようになっている。
【0057】
すなわち、本実施形態では、各々の排尿時における尿吸収量(排尿量)を推定する際に、1回の排尿が複数回の排尿として判定されないようにして、各々の1回毎の排尿時における尿吸収量を精度良く推定できるようにする必要があることから、例えば吸収性物品30における尿の吸収のし易さ、及び複数のセンサ素子31によるセンサ感度に応じて、1回の排尿時における尿吸収量を精度良く推定できるように、各々の排尿時において、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから推定排尿量を算定するかを設定できるようになっている。
【0058】
例えば、
図13(a)に示すように、尿取りパッド33に含まれる吸収性ポリマーが尿を吸収し始めてから安定するまで(広がりが終わるまで)の時間が、排尿の開始から10分以上かかる場合に、排尿の開始から推定排尿量を算定すべき測定時までの時間(排尿量判定時間)が、例えば5分後に設定されていると、
図13(b)に示すように、1回の排尿が2回以上の排尿として判定されて、推定排尿量を精度良く算出して推定することができなくなる。このようなことを考慮して、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから推定排尿量を算定するかを、例えば吸収性物品における尿の吸収のし易さや、複数のセンサ素子31によるセンサ感度に応じて設定できるようにする。例えば排尿量判定時間を、5分後からこれの2倍の10分後に設定することにより、
図13(c)に示すように、1回の排尿時の推定排尿量を、精度良く算定することが可能になる。
【0059】
これによって、各々の排尿時における尿吸収量(排尿量)を推定する際に、1回の排尿が複数回の排尿として判定されないようにして、各々の1回毎の排尿時における尿吸収量を、精度良く推定することが可能になる。
【0060】
ここで、排尿の開始から推定排尿量を算定すべき測定時までの時間(排尿量判定時間)は、例えば吸収性物品30における尿の吸収のし易さ及び複数のセンサ素子31によるセンサ感度に応じて、表2に示すような時間設定テーブルを予め作成しておき、作成した時間設定テーブルから対応するものを選択して、適宜設定することができる。例えば吸収性物品30による吸収が良く、センサ素子31によるセンサ感度が良い場合は、排尿量判定時間を1分と設定することができ、吸収性物品30による吸収が良く、センサ素子31によるセンサ感度が普通の場合は、排尿量判定時間を3分と設定することができる。吸収性物品30による吸収が良く、センサ素子31によるセンサ感度が劣る場合は、排尿量判定時間を15分と設定することができ、吸収性物品30による吸収がゆっくり広がり、センサ素子31によるセンサ感度が普通の場合は、排尿量判定時間を15分と設定することができる。
【0062】
時間設定テーブルを作成するには、例えば異なる尿取りパッド33及び異なるセンサ素子31を取り付けた、異なる種類の吸収性物品30を、例えば
図7に示す方法と同様に、着用者を模した人形に各々着用させて、仰向け正面の姿勢をとらせた状態で、尿を模した液体として、好ましくは生理食塩水を、着用した吸収性物品30中に物品内チューブを介して注入する。これと同時に、複数のセンサ素子31によって、その時のインピーダンスを経時的に連続して測定し、センサ出力として出力する。センサ出力の経過時間による変化を観察して、注入した生理食塩水が飽和する時間から、排尿量判定時間を算出して、時間設定テーブルを作成する。すなわち、1回の生理食塩水の注入量でセンサ素子31によるセンサ出力が飽和する時間を予め把握して、吸収性物品30による尿の吸収のし易さと、複数のセンサ素子31によるセンサ感度との組みあわせから、排尿量判定時間を算出して、時間設定テーブルを作成することができる。
【0063】
また、各々の排尿時の推定吸収量を、排尿の開始から何秒又は何分後の測定時におけるデータから算定するか(排尿の開始から推定排尿量を算定すべき測定時までの排尿量判定時間)は、短すぎると1回の推定排尿量を複数回と検出することなり、長すぎると各々の排尿時の推定排尿量を算定するのに時間がかかり過ぎることになるため、排尿の開始から30秒〜15分後の測定時であることが好ましく、排尿の開始から30秒〜3分後の測定時であることがさらに好ましい。排尿量判定時間を排尿の開始から30秒〜3分後とすることにより、排尿直後に排尿のお知らせを行うことが出来、残尿量の測定精度を高めることが可能になる。
【0064】
さらに、各々の排尿時の推定排尿量は、推定排尿量を算定すべき測定時から例えば10点での平均値とすると、尿吸収量をより精度良く推定することが可能になる。ここで、推定吸収量の計算値は、着用者の姿勢に対応する尿量計算式で計算した値とすることができる。また、排尿の開始から30秒〜15分後とは、排尿抽出部13で排尿を検出した時からの時間であり、推定吸収量は、計算の便宜から、例えば平均値を1の桁で四捨五入することが好ましい。
【0065】
また、本実施形態では、推定吸収量算定部14aは、アウター部材選択ステップを行うアウター部材選択部14c備えており(
図2参照)、このアウター部材選択部14cでアウター部材選択ステップにより選択されたアウター部材の種類に応じて予め設定された所定の係数をかけ合わせて、各々の排尿時の推定吸収量を算定するようになっている。
【0066】
すなわち、本実施形態では、センサ素子31が配置された吸収部である尿取りパッド33は、アウター部材の内側に装着されて用いられるのが一般的であり、アウター部材の種類によって、着用者の肌への尿取りパッド33の押付けによる密着具合が異なって、尿の広がり具合も変化するため、センサ素子31によるセンサ感度も異なることになる。このようなアウター部材による影響を考慮して、各々の排尿時における尿吸収量を精度良く推定できるようにする必要がある。このため、本実施形態では、アウター部材の種類によって尿取りパッド33の着用者の肌への密着具合が異なっても、各々の排尿時における尿吸収量を精度良く推定できるように、アウター部材の種類に応じて予め設定された所定の係数をかけ合わせて、尿吸収量を算出するようになっている。
【0067】
ここで、アウター部材の種類に応じて設定される所定の係数は、例えば
図7に示す、着用者の各姿勢に対応する尿量計算式を、検量線から得て求める方法と同様の方法によって、容易に算出することができる。すなわち、異なるアウター部材を用いた吸収性物品30を、着用者を模した人形に着用させて、これらのアウター部材毎に、検量線や尿量計算式を求める。求めたこれらのアウター部材毎の検量線や尿量計算式を比較して算出することによって、例えば表3に示すような係数テーブルとして、アウター部材の種類に応じて設定される所定の係数を得ることができる。
【0069】
表3に示す係数テーブルでは、尿取りパッド33が内側に装着されるアウター部材として、例えばテープおむつ、リハビリパンツ、布パンツの3種類のアウター部材を用いたものを例示している。 表3に示す3種類のアウター部材に応じて予め設定された所定の係数は、テープおむつを基準アウター部材とし、この基準アウター部材における係数を1として、基準アウター部材を用いた場合の尿の吸収量と、その他の各々のアウター部材を用いた場合の尿の吸収量とを比較した、相対値として設定することが好ましい。これによって、基準アウター部材を用いた場合の計算式を用いて、その他の各々のアウター部材を用いた場合の精度の良い尿吸収量の算出が可能になる。本実施形態では、例えば基準おむつであるテープおむつの係数は、「1」となっており、リハビリパンツの係数は「0.7」となっており、布パンツの係数は「0.7」となっている。
【0070】
また、吸収性物品30によっては、アウター部材の内側に装着された尿取りパッド33のさらに内側(肌側)に追加して、安心パットが装着されていて、尿量が多い場合に対応できるようになっているものがある。尿取りパッド33の肌側に安心パットが追加されると、着用者の肌への尿取りパッド33の押付けによる密着具合が抑制されると共に、安心パッドによる尿の吸収によって、尿の広がり具合も変化するため、安心パットを追加した場合の係数も、予め求めておくことが好ましい。本実施形態では、安心パットを追加した場合の係数は、「1.4」として算出されている。
【0071】
本実施形態によれば、上述のように推定吸収量算定部14aがアウター部材選択部14cを備えていることにより、センサ素子31が配置された尿取りパッド33が装着されるアウター部材の種類に応じて、各々の排尿時における尿吸収量を精度良く推定することが可能になる。
【0072】
各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、推定吸収量を算定したら、
図12に示すように、算定された推定吸収量から、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータが、吸収性物品30であるおむつを交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータであるかを判定する。すなわち、まず、例えばデータベース部24に蓄積されている、おむつの交換時の時刻データ等と照合することで、排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータが、おむつを交換した後、最初の排尿時のデータであるか否かを判定する。これによって、おむつ交換の影響をなくすことが可能になる。おむつを交換した後、最初の排尿時のデータではないと判定された場合には、今回の排尿時の推定吸収量が、前回の排尿時の推定吸収量よりも多いか否かを判定して、前回の排尿時の推定吸収量よりも多くない場合には、ノイズと判断してカットする。また、今回の排尿時の推定吸収量が、前回の排尿時の推定吸収量よりも多い場合には、今回の排尿時の推定吸収量から、前回の排尿時の推定吸収量を差し引いて、今回の排尿時のみの1回分の推定吸収量を算出する。算出された今回の排尿時のみの1回分の推定排尿量が、判定値として例えば25gを下回るか否かを判定して、判定値を下回る場合には、排尿動態解析部15で排尿動態を解析するのに有効な経時的変化のデータではない、ノイズと判断してカットする。さらに、算出された今回の排尿時のみの1回分の推定吸収量が、判定値以上である場合には、今回の排尿時のデータを、排尿動態を解析するのに有効な尿吸収量のデータとして採用する。
【0073】
一方、おむつを交換した後、最初の排尿時のデータであると判定された場合には、推定吸収量が0よりも多いか否かを判定して、0よりも多くない場合には、ノイズと判断してカットする。また、最初の排尿時の推定吸収量が、0よりも多い場合には、その時の推定吸収量が、判定値として例えば25gを下回るか否かを判定して、判定値を下回る場合には、排尿動態解析部15で排尿動態を解析するのに有効な経時的変化のデータではない、ノイズと判断してカットする。最初の排尿時の推定吸収量が、判定値以上である場合には、その時の排尿時のデータを、最初の排尿時の排尿動態を解析するのに有効な尿吸収量のデータとして採用する。
【0074】
これらによって、排尿選出部14では、排尿動態解析部15で排尿動態を解析するのに有効な、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを、精度良く選び出すことが可能になる。
【0075】
また、本実施形態では、排尿解析部11は、上述のように、姿勢判定部16を備えており、姿勢判定部16は、姿勢判定ステップとして、着用者に取り付けられた3軸加速度センサ43から送られる出力値から、着用者の姿勢を判定するようになっている。また排尿選出部14は、吸収性物品交換判定部14dを備えており(
図2参照)、吸収性物品交換判定部14dは、吸収性物品交換判定ステップとして、複数のセンサ素子31から送られる出力値が、吸収性物品30が尿を吸収する前の初期設定値に戻った際に、3軸加速度センサ43から送られる出力値を確認して、3軸加速度センサ43からの出力値に変化があった場合にオムツ交換がなされたと判定し、3軸加速度センサ43からの出力値に変化がない場合にオムツ交換がなされていないと判定するようになっている。
【0076】
すなわち、本実施形態では、複数のセンサ素子31によって測定されるインピーダンスの出力は、上述のように、センサ素子31と接続して吸収性物品30に着脱可能に取り付けられた、インピーダンス検出回路42等を備えるデータ収集手段40を介して、排尿動態解析装置10を構成する例えば情報処理手段20に送られるようになっている。着用者の姿勢の変化等によって、故意に或いは誤って、データ収集手段40が吸収性物品30から外れること等により、データ収集手段40のセンサ素子31との接続が切断されると、複数のセンサ素子31から送られる出力値が、吸収性物品30が尿を吸収する前の初期設定値に戻ることで、排尿動態解析装置10は、おむつ交換がなされたと誤って認識するおそれがある。このようなおむつ交換の誤認識を回避できるようにするために、本実施形態では、着用者に取り付けられた3軸加速度センサ43から送られる出力値を確認することで、おむつ交換がなされたと誤認識されるのを、効果的に回避できるようになっている。
【0077】
例えば、複数のセンサ素子31から送られる出力値は、吸収性物品30が尿を吸収する前の初期設定値として、例えば247となるように設定されていると共に、データ収集手段40とセンサ素子31との接続が切断されると、複数のセンサ素子31から送られる出力値は、例えば250となるように設定されている。このため、例えば
図14(a)、(b)に示すように、複数のセンサ素子31から送られる出力値が、尿を吸収している状態である例えば200前後の値から、初期設定値である247以上の値に戻ると、例えばデータ収集手段40を吸収性物品30から取り外しておむつ交換したことで、データ収集手段40とセンサ素子31との接続が切断されたと誤って判定されやすくなる。
【0078】
一方、おむつ交換が実際になされた場合には、吸収性物品30が着用者から取り外されることで、吸収性物品30に取り付けられた3軸加速度センサ43は、ランダムな方向に不規則に傾くことによって、3軸加速度センサ43から送られる出力値は、不規則に乱れた状態で変化することになると考えられる。
【0079】
このようなことから、吸収性物品交換判定部14dは、複数のセンサ素子31から送られる出力値の経時的変化と共に、3軸加速度センサ43から送られる、好ましくはZ軸方向の出力値の経時的変化を見て、複数のセンサ素子31から送られる出力値が、吸収性物品30が尿を吸収する前の初期設定値に戻った際に、3軸加速度センサ43から送られるZ方向の出力値を確認して、
図14(a)に示すように、Z方向の出力値に変化がない場合に、オムツ交換がなされていないノイズと判定する。また、
図14(b)に示すように、吸収性物品30が尿を吸収する前の初期設定値に戻った際に、3軸加速度センサ43から送られるZ方向の出力値を確認して、Z軸方向の出力値に変化があった場合に、オムツ交換がなされたと判定する。
【0080】
これらによって、本実施形態によれば、おむつ交換がなされたと誤認識されるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0081】
またこれによって、例えば着用者が、吸収性物品30の腹側領域に、金属製のスナップ60(
図1参照)を介して着脱可能に固定されたデータ収集手段40の部分に、意識的にあるいは無意識に触れることで、スナップ60が外れることにより、おむつ交換がなされたと誤認識されるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0082】
本実施形態では、排尿解析部11は、さらに、お知らせ判定部17を備えている(
図2参照)。お知らせ判定部17では、排尿選出部14あるいは吸収量算定部12の出力を監視して、吸収性物品30に吸収された尿吸収量が所定の設定値を超えたことを判定できるようになっており、尿吸収量が所定の設定値を超えた際に、例えば排尿後の残尿量を測定するタイミングであることを通知するようになっている。本実施形態では、お知らせ判定部17は、
図15に示すように、お知らせ方法として、排尿抽出部13で抽出された今回の排尿時の尿吸収量の経時的変化のデータについて、今回の排尿時のみの1回の吸収量が判定値を超えたか否かを判定する方法と、今回の排尿後の吸収量の総量が判定値を超えたか否かを判定する方法との、いずれかを選択できるようになっている。すなわち、今回の排尿時のみの吸収量が選択された場合には、例えば排尿選出部14の出力を監視して、今回の排尿時のみの吸収量が判定値を超えたと判定された際に、外部への通知対象とする。今回の排尿後の吸収量の総量が選択された場合には、例えば吸収量算定部12の出力を監視して、今回の排尿後の吸収量の総量が判定値を超えたと判定された際に、外部への通知対象とする。外部への通知対象となった情報は、通知手段25(
図1参照)を介して、例えば看護士等の介護者が携帯する末端機器26に通知することで、排尿後の残尿量を測定するタイミングや、吸収性物品30であるおむつを交換するタイミング等を、効率良く知らせることができる。またこれによって、介護者による巡回の頻度を少なくして、介護者の負担を軽減することが可能になる。今回の排尿時のみの吸収量が判定値を超えていないと判定された場合や、今回の排尿後の吸収量の総量が判定値を超えていないと判定された場合は、引き続き計測が続けられる。
【0083】
排尿解析部11の排尿動態解析部15では、排尿動態解析ステップとして、排尿選出部14によって選び出された、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータから、各々の排尿時における排尿動態を解析するようになっている。すなわち、排尿動態解析部15では、
図16に示すように、排尿選出部14によって選び出された、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータから、各々の吸収時刻における1秒あたりの尿量(尿流率)を算定して、例えば
図17(a)、(b)に示すような、尿流率(g/sec)のグラフ(尿流率曲線)を、排尿動態として表示できるようになっている。
図17(a)、(b)のグラフ表示では、グラフを見やすくするために、尿流率を移動平均してプロットしており、好ましくは3〜7点移動平均で平滑化することが好ましい。また、グラフを図の中央付近に配置するために、横軸の測定点数を0から100とした場合は、30〜50の間の位置に排尿検出時刻を配置することが好ましい。
【0084】
また、排尿動態解析部15では、排尿時間を測定して、平均尿流率及び最大尿流率を算出するようになっている。すなわち、
図16に示すように、例えば
図17(a)、(b)に示す尿流率のグラフ表示(尿流率曲線)において、排尿検出時刻を横軸(測定点数)の40の位置に設定して排尿動態を表示し、横軸の値が設定値(20〜80)の範囲で、縦軸の値が0よりも大きい時のデータ点数をカウントする。このカウント数に測定間隔を掛けることによって、吸収開始から吸収の終わりまでの排尿時間を算出することができる。また算出した吸収開始から吸収の終わりまでの排尿時間で、排尿量を割ることによって、平均尿流率を算出することができる。さらに、例えば横軸(測定点数)の値が20から80の範囲で計測した尿流率の最大値を検出することによって(
図17(a)参照)、最大尿流率を算定することが可能になる。また、例えば
図17(a)、(b)に示す尿流率のグラフ表示(尿流率曲線)から、例えば尿の勢いや、広がりの様子を解析することが可能になると共に、尿取りパッド33に含まれる吸水性ポリマーによる影響を解析することも可能になる。例えば、
図11(b)の矢印の部分は、ポリマーの吸収が間に合わないことを示している。
【0085】
そして、上述の構成を備える本実施形態の排尿動態解析装置10もしくは該排尿動態解析装置10により実現される排尿動態解析方法によれば、吸収性物品30に取り付けられた複数のセンサ素子31によって測定されたデータから、排尿以外のものによる影響を除去して、平均尿流率、最大尿流率、尿流率曲線等の排尿動態を、精度良く解析することが可能になる。
【0086】
すなわち、本実施形態によれば、排尿動態解析装置10は、吸収量算定部12と、排尿抽出部13と、排尿選出部14と、排尿動態解析部15とを含んで構成される排尿解析部11を具備しており、排尿抽出部13は、吸収量算定部12で算定された各々の測定時の尿吸収量のデータから、ノイズを除去して、排尿時における吸収性物品30による尿吸収量の経時的変化のデータを抽出するようになっており、排尿選出部14は、排尿抽出部13によって抽出された排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータについて、吸収性物品30を交換した後、何回目の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータかを判定して、各々の排尿時における尿吸収量の経時的変化のデータを選び出すようになっている。
【0087】
したがって、本実施形態の排尿動態解析装置10もしくは該排尿動態解析装置10により実現される排尿動態解析方法によれば、吸収性物品に取り付けられた複数のセンサ素子によって測定された、インピーダンスの経時的な変化に基づく排尿データから、排尿以外の、汗等の他の体液による影響や、おむつ交換等によるその他の要因による影響を効果的に取り除くことができると共に、個々の排尿時における吸収性物品30による尿吸収量の経時的変化のデータを精度良く取り出すことができるので、取り出された精度の良い尿吸収量の経時的変化のデータを用いて、平均尿流率、最大尿流率、尿流率曲線等の排尿動態を、精度良く解析することが可能になる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の排尿動態解析装置10は、例えば病院や介護施設等において、被介護者の排尿を一括して管理する排尿管理支援システムに組み込んで用いる必要は必ずしも無く、排尿解析部は、お知らせ判定部や、微分波形判定部を備えていなくても良い。