(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0012】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0014】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0016】
(実施の形態1)
<改善の検討>
半導体装置の高集積化を実現するために、電界効果トランジスタは、スケーリング則に基づいて微細化されてきている。ところが、微細化された電界効果トランジスタでは、短チャネル効果やしきい値電圧のばらつきが顕在化することから、半導体装置の性能低下を招くことになる。この点に関し、SOI基板に形成された電界効果トランジスタは、半導体基板(バルク基板)に形成された電界効果トランジスタに比べて、短チャネル効果やしきい値電圧のばらつきが顕在化しにくいため、半導体装置の性能が優れている。このことから、例えば、回路線幅が90nm程度の世代以降の半導体装置では、電界効果トランジスタをSOI基板上に形成する技術を採用することもある。
【0017】
特に、SOI基板上に形成される電界効果トランジスタとして、完全空乏型トランジスタを採用すると、完全空乏型トランジスタは、短チャネル効果を抑制する観点から非常に優れているとともに、チャネル領域に不純物を導入しないことから、不純物のばらつきに起因するしきい値電圧のばらつきも充分に抑制することができる。このため、完全空乏型トランジスタを採用することにより、優れた性能の半導体装置を提供することができる。
【0018】
ところが、完全空乏型トランジスタでは、半導体層(シリコン層)を完全に空乏化させる必要があることから、SOI基板の半導体層の厚さを非常に薄くする必要がある。
【0019】
この場合、本発明者が検討したところ、SOI基板の半導体層の厚さが薄いことに起因して、半導体層に接続するプラグが、半導体層および埋め込み絶縁層を突き抜けて、支持基板にまで達してしまうことを見出した。以下に、この点について説明する。
【0020】
まず、
図1に示すように、支持基板SUBと埋め込み絶縁層BOXと半導体層SLとからなるSOI基板1Sの表面には、素子分離部STIが形成されている。そして、支持基板SUBには、ウェルWLが形成されている。さらに、素子分離部STIが形成されたSOI基板1S上には、例えば、酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILが形成されている。
【0021】
次に、
図2に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜ILを貫通して、SOI基板1Sの半導体層SLに達するコンタクトホールCNTを形成する。
【0022】
このとき、層間絶縁膜ILが、酸化シリコン膜から形成され、かつ、SOI基板1Sの半導体層SLがシリコン層から形成されていることから、半導体層SLがエッチングストッパとなって、層間絶縁膜ILに形成されたコンタクトホールCNTは、半導体層SLが露出した時点で停止すると考えられる。
【0023】
ところが、本発明者の検討によると、例えば、SOI基板1Sに完全空乏型の電界効果トランジスタを形成する場合、半導体層SLの厚さを非常に薄くする必要がある。この場合、半導体層SLの厚さが非常に薄いと、半導体層SLがエッチングストッパとしての機能を充分に発揮することができず、
図2に示すように、コンタクトホールCNTが、シリコン層SLを突き抜けてしまうのである。そして、半導体層SLの下層に形成されている埋め込み絶縁層BOXは、層間絶縁膜ILと同じ材料の酸化シリコンから形成されていることから、半導体層SLを貫通してしまったコンタクトホールCNTは、埋め込み絶縁層BOXも貫通してしまうことになる。
【0024】
特に、ゲート電極に印加するゲート電位だけでなく、SOI基板1SのウェルWLに加えるバックゲート電位によっても、SOI基板1Sの半導体層SLに形成された電界効果トランジスタのしきい値電圧を調整する構成を採用する場合には、埋め込み絶縁層BOXの厚さを薄くする必要があるため、コンタクトホールCNTが埋め込み絶縁層BOXを貫通しやすくなる。この後、コンタクトホールCNTに導電性材料(例えば、タングステン膜)を埋め込むことによって、プラグPLGを形成することになるが、
図2に示すように、コンタクトホールCNTが支持基板SUBにまで達していると、プラグPLGを介して、半導体層SLと支持基板SUB(ウェルWL)とが導通してしまうことになる。このことは、半導体層SLに形成されている電界効果トランジスタと支持基板SUBとが導通することを意味し、これによって、電界効果トランジスタが正常に動作しなくなる。
【0025】
つまり、特に、完全空乏型の電界効果トランジスタをSOI基板1Sに形成する構成では、SOI基板1Sの半導体層SLの厚さが薄くなる。この結果、層間絶縁膜ILを貫通するコンタクトホールCNTが、さらに、SOI基板1Sの半導体層SLと埋め込み絶縁層BOXとを貫通してしまうのである。これにより、半導体層SLと支持基板SUBとを導通するプラグPLGが形成されてしまうことになり、これによって、半導体層SLに形成される電界効果トランジスタの動作不良が顕在化してしまうのである。
【0026】
この点に関し、
図3に示すように、SOI基板1Sの半導体層SL上に、シリコン層からなるエピタキシャル層EPIを積み上げる技術がある。すなわち、
図3は、SOI基板1Sの半導体層SL上にエピタキシャル層EPIを形成する構造を示す断面図である。
図3に示すように、SOI基板1Sの半導体層SL上には、エピタキシャル層EPIが形成されているため、
図3に示す構造では、半導体層SLとエピタキシャル層EPIとを合わせたSOI層の厚さを厚くすることができる。この結果、
図3に示すように、シリコンからなるSOI層(半導体層SL+エピタキシャル層EPI)の厚さが充分に厚いことから、SOI層がエッチングストッパとして充分に機能する。このことから、シリコンからなる層間絶縁膜ILにコンタクトホールCNTを形成するためのエッチングは、SOI層の表面で停止することになる。すなわち、
図3に示すように、SOI基板1Sの半導体層SL上に、シリコン層からなるエピタキシャル層EPIを積み上げることによって、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができるのである。
【0027】
ただし、半導体層SL上にだけエピタキシャル層EPIを形成した
図3に示す構造では、以下に示す改善の余地が存在する。例えば、
図4に示すように、層間絶縁膜ILに形成されるプラグPLGが、素子分離部STI側にずれる場合を考える。
【0028】
まず、
図4に示すように、SOI基板1Sの半導体層SL上に形成されたエピタキシャル層EPIの端部には、エピタキシャル成長法に起因して、テーパ形状の「ファセット構造」が形成される。この結果、
図4に示すように、エピタキシャル層EPIの端部に形成されている「ファセット構造」では、素子分離部STIに近づくにつれて、エピタキシャル層EPIの厚さが薄くなる。したがって、例えば、
図4に示すように、層間絶縁膜ILに形成されるコンタクトホールCNTが、素子分離武部STI側にずれると、エピタキシャル層EPIの厚さの薄い「ファセット構造」の部位にコンタクトホールCNTが形成されることになる。このとき、「ファセット構造」の部位では、エピタキシャル層EPIの厚さが薄くなることから、素子分離部STIに近いエピタキシャル層EPIの端部においては。エピタキシャル層EPIと半導体層SLとを合わせたSOI層が、コンタクトホールCNTを形成する際のエッチングに対するエッチングストッパとして充分に機能しなくなる。このことから、
図4に示すように、コンタクトホールCNTが素子分離武部STI側にずれると、素子分離部STIに近い「ファセット構造」の部位で、半導体層SLと埋め込み絶縁層BOXとにわたるコンタクトホールCNTの突き抜けが生じるのである。
【0029】
したがって、半導体層SL上にだけエピタキシャル層EPIを形成する
図3(
図4)に示す構造では、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれた場合、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXにわたるコンタクトホールCNTの突き抜けが生じるのである。これにより、
図4に示すように、プラグPLGを介して、半導体層SLと支持基板SUBとが導通してしまうことになるのである。
【0030】
以上のように、半導体層SL上にだけエピタキシャル層EPIを形成する構造では、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合、エピタキシャル層EPIの端部に形成される「ファセット構造」に起因して、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を抑制することができないのである。
【0031】
この点に関して、例えば、
図5に示す工夫が考えられる。
図5は、エピタキシャル層EPIを半導体層SL上だけでなく、素子分離部STIの一部上も覆うように形成する構造を示す断面図である。
図5に示す構造では、SOI基板1Sの半導体層SL上だけでなく、半導体層SLと素子分離部STIとの境界を超えて、素子分離部STIの一部上にもエピタキシャル層EPIが形成されている。つまり、
図5に示す構造では、エピタキシャル層EPIの端部に形成される「ファセット構造」が、半導体層SL上にではなく、素子分離部STI上に形成されている。この結果、
図5に示す構造では、素子分離部STIに近い半導体層SLの端部においても、半導体層SLとエピタキシャル層EPIとを合わせたSOI層の厚さを充分に確保することができる。このことから、
図5に示す構造では、たとえ、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合であっても、半導体層SLの端部におけるSOI層(半導体層SL+エピタキシャル層EPI)の厚さが充分に厚く、半導体層SLの端部においても、SOI層がコンタクトホールCNTを形成する際のエッチングに対するエッチングストッパとして充分に機能する。
【0032】
このことから、
図5に示すように、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれても、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができる。すなわち、
図5に示す構造では、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合を考慮しても、半導体層SLおよび埋め込み層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを効果的に防止することができるのである。このため、
図5に示す構造では、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通に起因する電界効果トランジスタの動作不良を効果的に抑制することができる。
【0033】
<本発明者が見出した新たな知見>
上述したように、基本的に、エピタキシャル層EPIを半導体層SL上だけでなく、素子分離部STIの一部上も覆うように形成するという
図5に示す構造を採用することによって、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合も含めて、プラグPLGの支持基板SUBへの突き抜けを防止できると考えられる。すなわち、
図5に示す構造によって、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通に起因する電界効果トランジスタの動作不良を効果的に抑制することができると考えられる。
【0034】
ところが、本発明者は、
図5に示す構造を採用したとしても、必ずしも、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合に、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができない事態が生じるという知見を新たに見出した。以下では、本発明者が見出した新たな知見について説明する。
【0035】
まず、本発明者が見出した新たな知見を説明する前提として、SOI基板には、素子分離領域STIによって区画された様々なサイズの活性領域が存在する。すなわち、半導体チップにSRAMやロジック回路やI/O回路などが形成されるが、これらの回路を形成する活性領域のサイズは、回路の種類によって異なる。したがって、半導体チップには、様々な回路に対応した様々なサイズの活性領域が存在する。以下では、このことを前提として、本発明者が新たに見出した知見について説明することにする。
【0036】
図6は、本発明者が新たに見出した知見を説明する図である。
図6に示すように、支持基板SUBと埋め込み絶縁層BOXと半導体層SLとからなるSOI基板1Sに素子分離部STIとウェルWLとが形成されている。そして、半導体層SL上から素子分離部STIの一部上にわたってエピタキシャル層EPIが形成されている。ここまでの
図6の構成は、上述した
図5の構成と同様であるが、
図6に示す構成では、エピタキシャル層EPIの端部の構造が「裾引き構造」となっている。すなわち、
図5に示す構造では、エピタキシャル層EPIの端部の構造が「ファセット構造」となるのに対し、
図6に示す構造では、エピタキシャル層EPIの端部の構造が「裾引き構造」となる点で相違する。
【0037】
ここで、
図5に示す「ファセット構造」とは、テーパ形状を意味し、特に、急な傾きの傾斜線から構成される端部形状を意味する。一方、
図6に示す「裾引き構造」とは、急な傾きの傾斜線と緩やかな傾きの傾斜線との組み合わせから構成される端部形状を意味する。つまり、
図6に示す「裾引き構造」とは、傾きの異なる傾斜線の組み合わせから構成される端部形状である点で、一定の傾きの傾斜線から構成される端部形状である
図5に示す「ファセット構造」とは相違することになる。特に、「裾引き構造」の特徴としては、「裾引き構造」の幅(ゲート幅方向)が「ファセット構造」の幅(ゲート幅方向)に比べて長くなる点を挙げることができる。
【0038】
「ファセット構造」では、
図5に示す構造を採用することによって、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合であっても、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができる。一方、「裾引き構造」では、上述した「裾引き構造」の特徴に起因して、
図5に示す構造を採用しても、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれると、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができなくなるのである。
【0039】
以下に、この点について説明する。上述したように、半導体チップには、様々な回路に対応した様々なサイズの活性領域が存在することを前提として、本発明者は、素子分離部STIで囲まれた活性領域の幅(W)に依存して、活性領域の半導体層SL上に形成されるエピタキシャル層EPIの端部形状が異なることを見出した点が新規な知見である。
【0040】
具体的に、本発明者が見出した新たな知見は、以下に示すものである。すなわち、この知見は、活性領域の幅(ゲート幅方向の幅)が小さい場合、
図5に示すように、活性領域の半導体層SL上に形成されるエピタキシャル層EPIの端部形状は、「ファセット構造」となる一方、活性領域の幅が大きい場合、
図6に示すように、活性領域の半導体層SL上に形成されるエピタキシャル層EPIの端部形状は、「裾引き構造」となるというものである。
【0041】
そして、この知見を考慮すると、
図5に示すように、活性領域の幅が小さい場合には、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれても、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けが防止される結果、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通が回避されることになる。
【0042】
ところが、
図6および
図7に示すように、活性領域の幅(ゲート幅方向の幅)が大きい場合には、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれると、「裾引き構造」をしたエピタキシャル層EPIの端部にコンタクトホールCNTが形成されることになる。そして、「裾引き構造」の場所では、半導体層SLとエピタキシャル層EPIとを合わせたSOI層の厚さが薄くなることから、SOI層が、コンタクトホールCNTを形成するエッチングの際のエッチングストッパとして充分に機能しなくなる。これにより、
図7に示すように、たとえ、エピタキシャル層EPIを半導体層SL上から素子分離部STIの一部上にわたって形成しても、「裾引き構造」の幅が大きくなるという特徴から、半導体層SL上にも厚さの薄い「裾引き構造」が形成されることになる。このことから、エピタキシャル層EPIの端部に「裾引き構造」が形成される場合、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれると、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けが発生してしまうのである。したがって、「裾引き構造」が形成される
図7に示す構造では、エピタキシャル層EPIを半導体層SL上から素子分離部STIの一部上にわたって形成しても、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通が生じてしまうことになるのである。
【0043】
<知見の詳細>
本発明者が見出した新たな知見は、素子分離部STIで囲まれた活性領域の幅(W)に依存して、活性領域の半導体層SL上に形成されるエピタキシャル層EPIの端部形状が異なるというものである。定性的に、本発明者が見出した新たな知見というのは、活性領域の幅が小さい場合には、エピタキシャル層EPIの端部形状は、「ファセット構造」となる一方、活性領域の幅が大きい場合には、エピタキシャル層EPIの端部形状は、「裾引き構造」となるというものである。
【0044】
以下に、具体的に、本発明者が見出した新たな知見の詳細について説明することにする。
図8(a)は、活性領域の幅(ゲート幅方向)を変化させた場合のSOI層(半導体層SL+エピタキシャル層EPI)の形状の変化を模式的に示す図であり、
図8(b)は、活性領域の幅(W)とSOI層の厚さ(半導体層SL+エピタキシャル層EPIの厚さ)の関係を示すグラフである。
【0045】
まず、
図8(a)において、活性領域の幅が0.2μm以下の場合、SOI層の端部形状は、「ファセット構造」をしていることがわかる。そして、活性領域の幅が0.25μmとなると、SOI層の端部形状は、活性領域の幅が0.2μmのときの「ファセット構造」よりも緩やかな「ファセット構造」となっていることがわかる。さらに、活性領域の幅が0.5μmになると、SOI層の端部形状は、「裾引き構造」となり、活性領域の幅が1.0μmになると、SOI層の端部形状は、さらなる「裾引き構造」となることがかる。したがって、
図8(a)の結果を考慮すると、活性領域の幅が0.25μm以下の場合には、SOI層の端部形状は、概ね「ファセット構造」となり、活性領域の幅が0.25μmを超える場合には、SOI層の端部形状は、「裾引き構造」となることがわかる。つまり、
図8(a)の結果、本発明者が見出した新たな知見を定量的に評価すると、概ね活性領域の幅が0.25μmである場合を境界として、「ファセット構造」から「裾引き構造」に変化するということができる。したがって、活性領域の幅が0.25μm以下の場合には、
図5に示す構造を採用することによって、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれたとしても、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを抑制することができ、これによって、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができる。
【0046】
一方、活性領域の幅が0.25μmよりも大きくなると、たとえ、
図5に示す構造を採用しても、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれた場合、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを効果的に防止することが困難となり、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通が生じるおそれがある。このため、活性領域の幅が0.25μmよりも大きくなると、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを防止する観点から、
図5に示す構造に替わる工夫が必要とされることがわかる。
【0047】
次に、
図8(b)において、横軸は、活性領域の幅(ゲート幅方向:Wμm)を示しており、縦軸は、SOI層の厚さの比率を示している。なお、ここで説明するSOI層の厚さとは、半導体層SLの厚さとエピタキシャル層EPIの厚さを足した値である。そして、
図8(b)において、「丸印」は、エピタキシャル層EPIの中心でのSOI層の厚さを示しており、「四角印」は、支持基板SUBと素子分離部STIとの境界から90nmだけ離れた位置におけるSOI層の厚さを示している。また、「菱形印」は、支持基板SUBと素子分離部STIとの境界から60nmだけ離れた位置におけるSOI層の厚さを示しており、「三角印」は、支持基板SUBと素子分離部STIとの境界から30nmだけ離れた位置におけるSOI層の厚さを示している。
【0048】
図8(b)からわかるように、活性領域の幅が、0.25μmよりも小さい場合、「丸印」と「四角印」と「菱形印」と「三角印」とがほぼ重なっており、これは、SOI層の中心の厚さと、支持基板SUBと素子分離部STIとの境界から30nm〜90nmだけ離れた位置におけるSOI層の厚さとが概ね等しいことを意味している。
【0049】
一方、活性領域の幅が0.25μmから大きくなるにつれて、「丸印」と「四角印」と「菱形印」と「三角印」とがばらつくようになる。これは、エピタキシャル層の中心位置から、支持基板SUBと素子分離部STIとの境界位置に近づくにつれて、SOI層の厚さが小さくなることを意味し、言い換えれば、活性領域の幅が0.25μmを超えると、「裾引き構造」が顕在化してくることを意味している。特に、活性領域の幅が、1.0μmに達すると、支持基板SUBと素子分離部STIとの境界から30nmだけ離れた位置におけるSOI層の厚さは、エピタキシャル層の中心位置の厚さの半分の厚さ程度まで小さくなってしまうことがわかる。このことから、活性領域の幅が大きくなればなるほど、「裾引き構造」が顕在化することがわかる。したがって、
図8(b)に示すグラフは、活性領域の幅が大きくなるほど、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれた場合、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けが生じやすくなることを示しているということができる。
【0050】
それでは、活性領域の幅が大きくなると、なぜ、エピタキシャル層の端部形状が「ファセット構造」から「裾引き構造」に変化することになるのかが疑問となる。この点に関し、本発明者が鋭意検討して解析した結果、以下に示すメカニズムによって、「裾引き構造」が形成されると推測されることを突き止めたので、このメカニズムについて説明する。
【0051】
<「裾引き構造」が形成されるメカニズム>
図9は、エピタキシャル成長法を使用して、SOI基板1Sの半導体層SL上にエピタキシャル層を成長させる際の成長面を示す図である。
図9に示すように、半導体層SLの中央部近傍の上方では、(100)面に沿ってエピタキシャル層が成長する。これは、エピタキシャル層の下地である半導体層SLの表面が(100)面であり、この半導体層SLの(100)面上にエピタキシャル層が成長するからである。
【0052】
一方、半導体層SLの端部近傍の上方では、例えば(111)面に代表される高指数面に沿ってエピタキシャル層が成長する。これは、例えば、
図9に模式的に示すように、半導体層SLの端部は、その膜厚が薄くなるように丸みを帯びている、または、傾斜しており、(100)面とは異なる高指数面が傾斜面として露出しているため、半導体層SLの端部近傍においては、この高指数面上にエピタキシャル層が成長するからである。
【0053】
なお、半導体層SLの端部が丸い形状や傾斜した形状となるのは、エピタキシャル層を形成する以前に、半導体層SLを酸化する工程や、その酸化膜を除去する工程において、半導体層SLの端部の形状が変わりやすいからである。例えば、素子分離部STIが半導体層SLの表面よりも落ち込んだ場合には、半導体層SLの側面が露出するため、半導体層SLの端部の形状は、このような工程の影響をより受けやすい。すなわち、半導体層SLの端部の形状は、中心部と比較して、このような工程(酸化工程や酸化膜除去工程)の影響を受けやすいことに起因して、丸い形状や傾斜した形状となるのである。
【0054】
このように、半導体層SLの中央部近傍と端部近傍では、エピタキシャル成長の下地である半導体層SLの露出面の面方位が異なる。そして、本発明者は、半導体層SLの中央部近傍におけるエピタキシャル層の成長面の面方位と、半導体層SLの端部近傍におけるエピタキシャル層の成長面の面方位とが相違することに起因して、「裾引き構造」が形成されることを新たに見出したのである。
【0055】
具体的に、(100)面を成長面とするエピタキシャル層には、「ステップ」と呼ばれる部位や「キンク」と呼ばれる部位が多数存在する。これらは主に、シリコンの未結合手からなる。これに対し、高指数面を成長面とするエピタキシャル層には、「ステップ」と呼ばれる部位や「キンク」と呼ばれる部位が少ない。そして、(100)面には、「ステップ」と呼ばれる部位や「キンク」と呼ばれる部位が多い一方、高指数面には、「ステップ」と呼ばれる部位や「キンク」と呼ばれる部位が少ないことに起因して、「裾引き構造」が生じるのである。
【0056】
以下では、「ステップ」と呼ばれる部位や「キンク」と呼ばれる部位の数の相違によって、「裾引き構造」が形成されるメカニズムについて説明する。
【0057】
図10は、「ステップ」の形状を模式的に示す図であり、
図10では、この「ステップ」にシリコン元素が捕獲されている状態が示されている。また、
図11は、「キンク」の形状を模式的に示す図であり、
図11では、この「キンク」にシリコン元素が捕獲されている状態が示されている。すなわち、
図10および
図11からわかるように、「ステップ」や「キンク」には、エピタキシャル成長の核となるシリコン元素が捕獲されやすいのである。このことは、「ステップ」や「キンク」の多い(100)面では、シリコン元素が捕獲されやすく、このことは、エピタキシャル成長の核が多く存在することを意味する。これにより、(100)面でのエピタキシャル成長の速度は早くなると考えられる。一方、「ステップ」や「キンク」の少ない高指数面では、シリコン元素が捕獲されにくく、高指数面では、エピタキシャル成長の核が少ないことを意味する。これにより、高指数面でのエピタキシャル成長の速度は遅くなると考えられる。
【0058】
さらに、
図12に示すように、高指数面では、「ステップ」や「キンク」が少ないため、高指数面に付着したシリコン元素がマイグレーションしやすい。一方、(100)面では、高指数面からマイグレーションしてきたシリコン元素が、(100)面に多数存在する「ステップ」や「キンク」に捕獲されやすい。この結果、(100)面に沿ってエピタキシャル層が成長する中央部近傍の領域では、エピタキシャル成長の速度が速くなるため、エピタキシャル層の厚さが厚くなる。これに対し、高指数面に沿ってエピタキシャル層が成長する端部近傍の領域では、シリコン元素の捕獲部位である「ステップ」や「キンク」が少ない結果、端部近傍から中央部近傍へのシリコン元素のマイグレーションが生じやすいため、エピタキシャル成長の速度が遅くなり、エピタキシャル層の厚さが薄くなる。
【0059】
以上のようなメカニズムによって、エピタキシャル層の端部近傍には、「裾引き構造」が形成されることになる。特に、活性領域の幅が大きくなると、高指数面に対する(100)面の割合が大きくなることから、必然的に、(100)面に存在する「ステップ」や「キンク」の数が多くなる。このため、高指数面からマイグレーションしてきたシリコン元素は、(100)面に存在する「ステップ」や「キンク」で確実に捕獲されてしまうため、再び、(100)面から高指数面にシリコン元素がマイグレーションして戻ることは少ないと考えられる。したがって、活性領域の幅が大きくなると、エピタキシャル層の端部近傍には、「裾引き構造」が形成されやすくなると考えられる。一方、活性領域の幅が小さくなると、高指数面に対する(100)面の割合が小さくなることから、必然的に、(100)面に存在する「ステップ」や「キンク」の数が少なくなる。このため、
図13に示すように、高指数面から(100)面にマイグレーションしてきたシリコン元素は、(100)面に存在する「ステップ」や「キンク」で捕獲しきれずに溢れ出ることになると考えられる。そして、捕獲されずに溢れ出たシリコン元素は、再び、(100)面から高指数面にマイグレーションして戻ることになると考えられる。したがって、活性領域の幅が小さくなると、高指数面においても、成長の核となるシリコン元素が多数存在することになり、エピタキシャル層の端部近傍には、「裾引き構造」が形成されにくくなるのである。このようなメカニズムによって、例えば、活性領域の幅が小さい場合には、「裾引き構造」が形成されにくい一方、活性領域の幅が大きくなればなるほど、「裾引き構造」が顕在化するという傾向(
図8(a)参照)を説明することができる。
【0060】
以上のようにして、活性領域の幅が大きくなると、エピタキシャル層の端部近傍の領域に「裾引き構造」が形成されることになる。例えば、活性領域の幅が小さくて、「裾引き構造」が形成されない場合には、
図5に示す構造を採用することによって、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合であっても、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができる。
【0061】
一方、活性領域の幅が大きくて、エピタキシャル層の端部近傍の領域に「裾引き構造」が形成されると、
図5に示す構造を採用しても、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれると、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができなくなる。つまり、エピタキシャル層EPIの端部近傍の領域に「裾引き構造」が形成される場合、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれると、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けが発生してしまうのである。
【0062】
そこで、本実施の形態1では、活性領域の幅が大きくて、エピタキシャル層の端部近傍の領域に「裾引き構造」が形成され、かつ、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれる場合であっても、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを防止できる工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について図面を参照しながら説明する。
【0063】
<半導体装置の構成>
<<平面構成>>
図14は、本実施の形態1における半導体装置の構成を模式的に示す平面図である。
図14に示すように、本実施の形態1における半導体装置は、例えば、電界効果トランジスタQ1と、電界効果トランジスタQ2とを有している。例えば、
図14に示すように、電界効果トランジスタQ1と電界効果トランジスタQ2は、y方向に並ぶように配置されている。まず、電界効果トランジスタQ1は、y方向(ゲート幅方向)の幅が小さい活性領域ACT1に形成されており、この活性領域ACT1を跨いでy方向に延在するゲート電極GE1を有している。さらに、電界効果トランジスタQ1は、ゲート電極GE1を挟む活性領域ACT1上に形成されたエピタキシャル層EPI1を有している。そして、エピタキシャル層EPIは、層間絶縁膜(図示せず)に形成されたプラグPLG1と電気的に接続されている。
【0064】
次に、電界効果トランジスタQ2は、ゲート幅方向(y方向)において、電界効果トランジスタQ1の活性領域ACT1の幅よりも大きい幅を有する活性領域ACT2に形成されている。そして、電界効果トランジスタQ2は、活性領域ACT2を跨いでy方向に延在するゲート電極GE2を有している。さらに、電界効果トランジスタQ2は、ゲート電極GE2を挟む活性領域ACT2上に形成されたエピタキシャル層EPI2を有しており、このエピタキシャル層EPI2は、層間絶縁膜(図示せず)に形成されたプラグPLG2と電気的に接続されている。
【0065】
このように、本実施の形態1における半導体装置は、互いにゲート幅方向(y方向)の幅が異なる複数の活性領域(ACT1、ACT2)を有している。このとき、例えば、
図14において、電界効果トランジスタQ1が形成されている活性領域ACT1のy方向の幅は、250nmよりも小さく、かつ、電界効果トランジスタQ2が形成されている活性領域ACT2のy方向の幅は、250nmよりも大きくなっている。ここで、活性領域ACT1上には、エピタキシャル層EPI1が形成され、かつ、活性領域ACT2上には、エピタキシャル層EPI2が形成されていることから、活性領域ACT1と活性領域ACT2とのゲート幅方向(y方向)の幅の大小関係は、エピタキシャル層EPI1とエピタキシャル層EPI2とのゲート幅方向(y方向)の大小関係として表現することもできる。すなわち、本実施の形態1における半導体装置において、エピタキシャル層EPI1のゲート幅方向(y方向)の幅は、エピタキシャル層EPI2のゲート幅方向(y方向)の幅よりも大きくなっている。以上のようにして、電界効果トランジスタQ1と電界効果トランジスタQ2とを含む半導体装置が平面構成されていることになる。
【0066】
<<断面構成(ゲート長方向)>>
続いて、本実施の形態1における半導体装置の断面構成について説明する。特に、本実施の形態1における半導体装置は、
図14に示すように、電界効果トランジスタQ1と電界効果トランジスタQ2を含んでいるが、電界効果トランジスタQ1のゲート長方向の断面構成と電界効果トランジスタQ2のゲート長方向の断面構成とは、基本的に同じ構成なので、ここでは、電界効果トランジスタQ1を取り上げて説明することにする。
【0067】
図15は、本実施の形態1に含まれる電界効果トランジスタQ1のゲート長方向の模式的な断面構成を示す断面図であり、
図14のA−A線で切断した断面図である。
図15に示すように、本実施の形態1における電界効果トランジスタQ1は、支持基板SUBと、支持基板SUB上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成された半導体層SLとからなり、かつ、素子分離部STIとウェルWL1とを有するSOI基板1Sに形成されている。具体的に、電界効果トランジスタQ1は、素子分離部STIで囲まれた活性領域の半導体層SL上に形成されたゲート絶縁膜GOXと、このゲート絶縁膜GOX上に形成されたゲート電極GE1とを有している。そして、ゲート電極GE1の両側の側壁には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。さらに、活性領域の半導体層SLには、ゲート電極GE1に整合するようにエクステンション領域EXが形成され、エクステンション領域EXの外側にサイドウォールスペーサSWに整合した半導体領域NRが形成されている。また、半導体層SLに形成された半導体領域NR上には、エピタキシャル層EPI1が形成されており、このエピタキシャル層EPI1の表面には、シリサイド膜SFが形成されている。このようにして、電界効果トランジスタQ1には、例えば、エクステンション領域EXと、半導体領域NRと、エピタキシャル層EPI1と、シリサイド膜SFとからなるソース領域SRが形成されている。同様に、電界効果トランジスタQ1には、例えば、エクステンション領域EXと、半導体領域NRと、エピタキシャル層EPI1と、シリサイド膜SFとからなるドレイン領域DRが形成されている。
【0068】
続いて、上述したように構成されている電界効果トランジスタQ1を覆うように、層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILには、層間絶縁膜ILを貫通して、ソース領域SRに達するプラグPLG1が形成されている。同様に、層間絶縁膜ILには、層間絶縁膜ILを貫通して、ドレイン領域DRに達するプラグPLG1も形成されている。特に、プラグPLG1は、層間絶縁膜ILを貫通して、エピタキシャル層EPI1の表面に形成されたシリサイド膜SFを露出するコンタクトホールCNT1に導電性材料(タングステン)を埋め込むことにより形成されている。以上のようにして、本実施の形態1における電界効果トランジスタQ1が構成されていることになる。
【0069】
特に、本実施の形態1では、SOI基板1S上に形成される電界効果トランジスタQ1として、完全空乏型トランジスタを採用すること想定している。この完全空乏型トランジスタは、短チャネル効果を抑制する観点から非常に優れているとともに、チャネル領域(ゲート電極GE1の直下の半導体層SL)に不純物を導入しないことから、不純物のばらつきに起因するしきい値電圧のばらつきも充分に抑制することができる。このため、完全空乏型トランジスタを採用することにより、優れた性能の半導体装置を提供することができる。このとき、完全空乏型トランジスタでは、半導体層(シリコン層)SLを完全に空乏化させる必要があることから、SOI基板1Sの半導体層SLの厚さを非常に薄くする必要がある。また、ゲート電極GE1に印加するゲート電位だけでなく、SOI基板1SのウェルWL1に加えるバックゲート電位によっても、SOI基板1Sの半導体層SLに形成された電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧を調整する構成を採用する場合には、埋め込み絶縁層BOXの厚さを薄くする必要がある。
【0070】
以上のことから、例えば、本実施の形態1では、半導体層SLの厚さを5nm以上20nm以下でするとともに、埋め込み絶縁層BOXの厚さも5nm以上20nm以下にしている。これにより、本実施の形態1によれば、完全空乏化トランジスタからなる電界効果トランジスタQ1を実現することができ、かつ、ウェルWL1に加えるバックゲート電位によっても、電界効果トランジスタQ1のしきい値電圧を調整することが容易となる。
【0071】
ただし、半導体層SLの厚さを薄くすると、電界効果トランジスタQ1のソース領域SRおよびドレイン領域DRのそれぞれの抵抗が高くなる。そこで、本実施の形態1では、
図15に示すように、半導体層SL上にエピタキシャル層EPI1を形成している。これにより、本実施の形態1における電界効果トランジスタQ1によれば、半導体層SLの厚さを薄くすることによって、完全空乏型トランジスタを実現する一方で、ソース領域SRおよびドレイン領域DRのそれぞれに積み上げ層として機能するエピタキシャル層EPI1を形成することにより、ソース領域SRおよびドレイン領域DRのそれぞれの抵抗値を低くすることができる。これにより、本実施の形態1によれば、高性能な電界効果トランジスタQ1を提供することができる。
【0072】
<<断面構成(ゲート幅方向)>>
次に、本実施の形態1における半導体装置のゲート幅方向(y方向)の断面構成について説明する。
図16は、
図14のB−B線で切断した断面図である。
図16において、
図16の左側に電界効果トランジスタQ1のゲート幅方向の断面構成が示されている一方、
図1の右側に電界効果トランジスタQ2のゲート幅方向の断面構成が示されている。すなわち、
図16では、電界効果トランジスタQ1のゲート幅方向の断面構成と、電界効果トランジスタQ2のゲート幅方向の断面構成とが並んで配置されていることになる。
【0073】
図16において、左側に図示されている電界効果トランジスタQ1のゲート幅方向の断面構成においては、SOI基板1Sに素子分離部STIとウェルWL1とが形成されている。そして、SOI基板1Sの半導体層上から素子分離部STIの一部上にわたってエピタキシャル層EPI1が形成されており、このエピタキシャル層EPI1の表面にシリサイド膜SFが形成されている。そして、表面にシリサイド膜SFが形成されたエピタキシャル層EPI1を覆うように層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILを貫通して、シリサイド膜SFが形成されたエピタキシャル層EPI1に達するプラグPLG1が形成されている。このプラグPLG1は、層間絶縁膜ILに形成されたコンタクトホールCNT1に導電性材料を埋め込むことにより形成されている。
【0074】
特に、本実施の形態1における電界効果トランジスタQ1においては、半導体層SLのゲート幅方向の幅(
図14の活性領域ACT1のy方向の幅)が250nmよりも小さいことを想定している。この場合、
図16の左側に示すように、エピタキシャル層EPI1の端部に「ファセット構造」が形成されることになる。
【0075】
続いて、
図16において、右側に図示されている電界効果トランジスタQ2のゲート幅方向の断面構成においては、SOI基板1Sに素子分離部STIとウェルWL2とが形成されている。そして、SOI基板1Sの半導体層上から素子分離部STIの一部上にわたってエピタキシャル層EPI2が形成されており、このエピタキシャル層EPI2の表面にシリサイド膜SFが形成されている。そして、表面にシリサイド膜SFが形成されたエピタキシャル層EPI2を覆うように層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILを貫通して、シリサイド膜SFが形成されたエピタキシャル層EPI1に達するプラグPLG2が形成されている。このプラグPLG2は、層間絶縁膜ILに形成されたコンタクトホールCNT2に導電性材料を埋め込むことにより形成されている。
【0076】
特に、本実施の形態1における電界効果トランジスタQ2においては、半導体層SLのゲート幅方向の幅(
図14の活性領域ACT2のy方向の幅)が250nmよりも大きいことを想定している。この場合、
図16の右側に示すように、エピタキシャル層EPI2の端部に「裾引き構造」が形成されることになる。
【0077】
ここで、
図16に示すように、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI1の端部の厚さは、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI2の端部の厚さよりも大きくなっている。言い換えれば、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI2の端部の厚さは、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI1の端部の厚さよりも小さくなっている。これは、エピタキシャル層EPI1の端部に「ファセット構造」が形成されるのに対し、エピタキシャル層EPI2の端部に「裾引き構造」が形成されるためである。つまり、半導体層SLのゲート幅方向の幅(
図14の活性領域ACT2のy方向の幅)が250nmよりも大きい場合には、「裾引き構造」が顕在化する結果、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI2の端部の厚さは、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI1の端部の厚さよりも小さくなるのである。
【0078】
続いて、
図16に示すように、本実施の形態1において、素子分離部STIとプラグPLG2との間のy方向における最短距離L2は、素子分離部STIとプラグPLG1との間のy方向における最短距離L1よりも大きくなっている。言い換えれば、素子分離部STIとプラグPLG1との間のy方向における最短距離L1は、素子分離部STIとプラグPLG2との間のy方向における最短距離L2よりも小さくなっている。このとき、例えば、最短距離L2は、60nm以上である。ただし、最短距離L2は、90nm以上である場合もある。特に、本実施の形態1では、平面視において、プラグPLG2と素子分離部STIとの間にエピタキシャル層EPI2が存在する。以上のようにして、本実施の形態1における電界効果トランジスタQ1と電界効果トランジスタQ2とが構成されていることになる。
【0079】
なお、本実施の形態1では、広い活性領域ACT2に一つのプラグPLG2を形成する場合を例示したが、プラグPLG2の数はこれに限られるものではない。例えば、活性領域ACT2の幅が前述の
図8(b)のように0.50μm以上である場合、複数のプラグPLG2を形成することもできる。その場合でも、素子分離部STIと、素子分離部STIに最も近いプラグPLG2との間のy方向における最短距離L2は、60nm以上とする。
【0080】
<半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における半導体装置は、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0081】
まず、
図17に示すように、本実施の形態1における半導体装置の製造方法では、支持基板SUBと、支持基板SUB上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成された半導体層SLとからなるSOI基板1Sを用意する。
【0082】
次に、SOI基板1Sに素子分離部STIを形成することにより、SOI基板1Sに、例えば、y方向における幅が第1幅である活性領域ACT1と、素子分離部STIで活性領域ACT1と分離され、かつ、y方向の幅が第1幅よりも大きい活性領域ACT2とを形成する、このとき、
図17に示すように、半導体層SLの表面の中央部を含む大部分においては、(100)面が露出している。一方、
図17に示すように、半導体層SLの表面の端部は、傾斜しており、(100)面とは異なる高指数面が傾斜面として露出する。
【0083】
続いて、SOI基板1Sの半導体層SL上にゲート絶縁膜を形成する(
図18のS1010)。その後、例えば、イオン注入法を使用することにより、SOI基板1Sの支持基板SUBに導電型不純物を導入することにより、ウェルを形成する(
図18のS102)。そして、ゲート絶縁膜上にポリシリコン膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、ポリシリコン膜をパターニングして、ゲート電極を形成する(
図18のS103)。次に、ゲート電極を覆うように絶縁膜を形成した後、この絶縁膜に対して、異方性エッチングを施すことにより、ゲート電極の両側の側壁にサイドウォールスペーサを形成する(
図18のS104)。
【0084】
前述したように、ここまでの工程で、例えば、素子分離部STIが半導体層SLの表面よりも落ち込んだ場合には、半導体層SLの側面が露出するため、半導体層SLの端部は中央部に比べて丸い形状となったり、傾斜した形状となりやすくなっている。
【0085】
次に、
図19に示すように、エピタキシャル成長法を使用することにより、活性領域ACT1の半導体層SL上にエピタキシャル層EPI1を形成し、かつ、活性領域ACT2の半導体層SL上にエピタキシャル層EPI2を形成する。このとき、本実施の形態1では、エピタキシャル層EPI1の端部に「ファセット構造」が形成される一方、エピタキシャル層EPI2の端部に「裾引き構造」が形成される。この結果、
図19に示すように、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI2の端部の厚さは、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI1の端部の厚さよりも小さくなる。なお、エピタキシャル層EPI1の厚さおよびエピタキシャル層EPI2の厚さは、例えば、10nm以上50nm以下とすることができる。
【0086】
ここでのエピタキシャル成長法では、SiH
2Cl
2とHClとH
2とを含むガスを使用し、かつ、圧力が10Pa以上1000Pa以下であり、かつ、温度が700℃以上800℃以下の成膜条件が使用される。ただし、これに限らず、ここでのエピタキシャル成長法において、SiH
4とHClとH
2とを含むガスを使用し、かつ、圧力が10Pa以上1000Pa以下であり、かつ、温度が500℃以上700℃以下の成膜条件を使用することもできる。このとき、SiH
2Cl
2とSiH
4は、シリコン(Si)の原料ガスとして用いられる。一方、HClは、エピタキシャル成長法における選択性を確保するために用いられ、H
2は、ガス雰囲気中にできるだけ水分や酸素を含まないようにするために用いられている。なお、エピタシャル成長の安定化のため、エピタキシャル層EPI1およびエピタキシャル層EPI2を形成するエピタキシャル成長の直前に、真空状態を維持した状態で、700℃〜900℃程度の水素アニールを実施することもできる。
【0087】
さらに、ここでのエピタキシャル成長法では、複数のSOI基板1Sを同時に処理可能で、かつ、内壁には、シリコンがコーティングされた成膜装置(縦型炉)が使用される。
【0088】
続いて、
図20に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、活性領域ACT1に形成されている半導体層SLおよびエピタキシャル層EPI1に導電型不純物を導入するとともに、活性領域ACT2に形成されている半導体層SLおよびエピタキシャル層EPI2に導電型不純物を導入する。
【0089】
次に、サイドウォールスペーサを除去した後(
図21のS105)、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、エクステンション領域を形成する(
図21のS106)。そして、再び、ゲート電極の両側の側壁にサイドウォールスペーサを形成する(
図21のS107)。その後、ゲート電極の表面と、エピタキシャル層EPI1の表面と、エピタキシャル層EPI2の表面とにシリサイド膜を形成する(
図21のS108)。
【0090】
続いて、
図22に示すように、エピタキシャル層EPI1およびエピタキシャル層EPI2を覆うように、例えば、酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILを形成する。その後、
図23に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜ILにエピタキシャル層EPI1(シリサイド膜SF)に達するコンタクトホールCNT1を形成し、かつ、層間絶縁膜ILにエピタキシャル層EPI2(シリサイド膜SF)に達するコンタクトホールCNT2を形成する。
【0091】
このとき、コンタクトホール(CNT1、CNT2)を形成する工程では、
図23に示すように、素子分離部STIとコンタクトホールCNT2との間のy方向における最短距離L2が、素子分離部STIとコンタクトホールCNT1との間のy方向における最短距離L1よりも大きくなるように、層間絶縁膜ILにコンタクトホール(CNT1、CNT2)とを形成する。
【0092】
そして、コンタクトホールCNT1の内部を導電性材料で埋め込んだプラグPLG1を層間絶縁膜ILに形成するとともに、コンタクトホールCNT2の内部を導電性材料で埋め込んだプラグPLG2を層間絶縁膜ILに形成する。これにより、素子分離部STIとプラグPLG2との間のy方向における最短距離L2が、素子分離部STIとプラグPLG1との間のy方向における最短距離L1よりも大きくなる。
【0093】
以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。
【0094】
<実施の形態1における特徴>
次に、本実施の形態1における特徴点について説明する。本実施の形態1における第1特徴点は、複数の活性領域のうち、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域においては、この活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層と接続されるプラグの形成位置に制限を設ける点にある。これにより、エピタキシャル層の端部に「裾引き構造」が形成される場合であっても、コンタクトホールの位置ずれに起因するプラグの支持基板への突き抜けを防止することができる。
【0095】
具体的に、本実施の形態1における第1特徴点は、素子分離部とプラグとの間のゲート幅方向における最短距離が所定距離よりも大きくなるようにするという制限を設ける点にある。これにより、プラグの支持基板への突き抜けを防止できる。以下に、この理由について説明する。まず、活性領域のゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい場合、この活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層の端部には、「裾引き構造」が形成される。そして、このエピタキシャル層の端部に形成される「裾引き構造」に接続するようにプラグを形成する場合、「裾引き構造」では、エピタキシャル層の厚さが薄くなる。このことから、エピタキシャル層の「裾引き構造」が形成されている部位は、コンタクトホールを形成する際のエッチングストッパとして充分に機能しなくなる。このため、エピタキシャル層の端部に形成される「裾引き構造」に接続するようにコンタクトホールを形成すると、コンタクトホールが支持基板にまで達してしまい、プラグの支持基板への突き抜けが生じてしまうのである。そこで、本実施の形態1では、特に、素子分離部とプラグとの間のゲート幅方向における最短距離が所定距離よりも大きくなるようにプラグの形成位置に制限を設けているのである。言い換えれば、本実施の形態1における第1特徴点は、素子分離部とプラグとの間のゲート幅方向における最短距離が所定距離よりも小さくなる位置にプラグを形成することを禁止する思想である。すなわち、本実施の形態1における第1特徴点は、素子分離部から所定距離の範囲内に「裾引き構造」が形成されることを考慮して、素子分離部から所定距離よりも離れた位置にプラグを形成すれば、エピタキシャル層の膜厚の薄い部位にプラグが接続されることを防止することができるという基本思想に基づいている。これにより、本実施の形態1における第1特徴点によれば、プラグの支持基板への突き抜けを効果的に防止することができるのである。
【0096】
そして、本実施の形態1における第1特徴点は、半導体装置の良品の選別にも有効に活用することができるという副次的な効果も得ることができる。すなわち、プラグの形成位置に制限を設けることにより、この制限により許容される位置にプラグが形成されている場合は、プラグの支持基板への突き抜けが生じていない良品の半導体装置として出荷することができる。一方、例えば、設計位置は、制限により許容される位置であるが、実際の製造工程におけるフォトリソグラフィ技術の精度に依存して、プラグの形成位置が許容される位置からずれて禁止される位置に形成される場合がある。この場合、実際に製造される半導体装置から素子分離部とプラグとの間の最短距離を測定することによって、制限により禁止される位置にプラグが形成されていると判定することができる。これにより、設計位置は、制限により許容される位置であるが、実際の製造工程におけるフォトリソグラフィ技術の精度に依存して、プラグの形成位置が許容される位置からずれて禁止される位置に形成されている半導体装置を、本実施の形態1における第1特徴点を基準とする検査によって、出荷されてしまうことを未然に防止することができる。
【0097】
このように本実施の形態1における第1特徴点は、プラグの支持基板への突き抜けを防止するための設計基準として活用することにより、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域に形成された電界効果トランジスタを含む半導体装置の信頼性を向上することができる。さらに、本実施の形態1における第1特徴点は、検査工程の検査基準としても活用することができ、これによって、不良品の市場への流通を抑制することができる。このことから、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域に電界効果トランジスタを形成する半導体装置において、本実施の形態1における第1特徴点を設計思想として使用することによって、プラグの支持基板への突き抜けを効果的に防止することができる。そして、実際に製造された半導体装置が設計思想を満たしているか否かという検査工程における検査基準として、本実施の形態1における第1特徴点を使用することによって、不良品の市場への流通を防止できる。すなわち、本実施の形態1における第1特徴点は、プラグの支持基板への突き抜けを防止できるという性能に起因する要因(第1要因)によって、半導体装置の信頼性向上に貢献できるだけでなく、不良品の出荷を未然に防止することに起因する要因(第2要因)によっても、半導体装置の信頼性向上に貢献できる。このことから、本実施の形態1における第1特徴点は、上述した第1要因と第2要因との相乗効果によって、半導体装置の信頼性向上を図ることができる点で有用な技術的思想である。
【0098】
<<第1特徴点の具体的な表現1>>
続いて、本実施の形態1における第1特徴点を表す具体的に表現について説明する。まず、本実施の形態1では、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域の半導体層上にエピタキシャル層を形成することを前提とする。すなわち、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層の端部には、「裾引き構造」が形成される。一方、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも小さい活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層の端部には、「裾引き構造」ではなく、「ファセット構造」が形成される。そして、「ファセット構造」の場合には、
図5に示す構造を採用することにより、コンタクトホールの形成位置が素子分離部側にずれる場合であっても、プラグの支持基板への突き抜けを防止することができる。つまり、「ファセット構造」の場合には、「裾引き構造」とは異なり、素子分離部とプラグとの間のゲート幅方向における最短距離が所定距離よりも大きくなるようにするという制限を設ける必要はないのである。この結果、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも小さい活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層と接続されるプラグにおいては、素子分離部とプラグとの間のゲート幅方向における最短距離が所定距離よりも小さくなる場合が存在しても構わないのである。したがって、ゲート幅方向の幅が異なる複数の活性領域が存在することを前提として、以下に示す構成要素A〜Cの組み合わせによって、本実施の形態1における第1特徴点を表すことができるものと考えられる(
図16参照)。
【0099】
構成要素A:「ゲート幅方向(y方向)における活性領域ACT2の幅は、ゲート幅方向(y方向)における活性領域ACT1の幅よりも大きい」。
【0100】
構成要素B:「素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI2の端部の厚さは、素子分離部STIと接するエピタキシャル層EPI1の端部の厚さよりも小さい」。
【0101】
構成要素C:「素子分離部STIとプラグPLG2との間のゲート幅方向(y方向)における最短距離L2は、素子分離部STIとプラグPLG1との間のゲート幅方向(y方向)における最短距離L1よりも大きい、」。
【0102】
<<第1特徴点の具体的な表現2>>
さらに、本実施の形態1における第1特徴点を表す具体的に表現について説明する。ここでは、ゲート幅方向の幅が異なる複数の活性領域が存在することを前提とせず、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域にだけ着目して、本実施の形態1における第1特徴点を表現することを考える。すなわち、
図8(a)に示すように、概ね活性領域の幅が0.25μmである場合を境界として、「ファセット構造」から「裾引き構造」に変化するということができる。したがって、活性領域の幅が0.25μm以下の場合(「ファセット構造」が形成される場合)には、
図5に示す構造を採用することによって、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にすれたとしても、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを抑制することができる。これにより、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通を防止することができる。一方、活性領域の幅が0.25μmよりも大きくなると(「裾引き構造」が形成される場合)、たとえ、
図5に示す構造を採用しても、コンタクトホールCNTの形成位置が素子分離部STI側にずれた場合、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを効果的に防止することが困難となる。この結果、プラグPLGを介した半導体層SLと支持基板SUBとの導通が生じるおそれがある。このため、活性領域の幅が0.25μmよりも大きくなると、半導体層SLおよび埋め込み絶縁層BOXへのコンタクトホールCNTの突き抜けを防止する観点から、
図5に示す構造に替わって、本実施の形態1における第1特徴点を採用する必要がある。
【0103】
次に、
図8(b)に示すように、活性領域の幅が、0.25μmよりも小さい場合、「丸印」と「四角印」と「菱形印」と「三角印」とがほぼ重なっており、これは、SOI層の中心の厚さと、エピタキシャル層EPIと素子分離部STIとの境界から30nm〜90nmだけ離れた位置におけるSOI層の厚さとが概ね等しいことを意味している。一方、活性領域の幅が0.25μmから大きくなるにつれて、「丸印」と「四角印」と「菱形印」と「三角印」とがばらつくようになる。これは、エピタキシャル層の中心位置から、エピタキシャル層EPIと素子分離部STIとの境界位置に近づくにつれて(90nm以下、特に60nm以下)、SOI層の厚さが小さくなることを意味し、言い換えれば、活性領域の幅が0.25μmを超えると、「裾引き構造」が顕在化してくることを意味している。したがって、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域にだけ着目した場合において、以下に示す構成要素D〜Eの組み合わせによって、本実施の形態1における第1特徴点を表すことができるものと考えられる(
図8および
図16参照)。
【0104】
構成要素D:「活性領域ACT2のゲート幅方向の幅は、250nmよりも大きい」。
【0105】
構成要素E:「素子分離部STIとプラグPLG2との間のゲート幅方向(y方向)における最短距離L2は、60nmよりも大きい」。
【0106】
続いて、本実施の形態1における第2特徴点について説明する。本実施の形態1における第2特徴点は、本実施の形態1における技術的思想(第1特徴点)を、完全空乏型トランジスタを含む半導体装置に適用する点である。完全空乏型トランジスタは、短チャネル効果を抑制する観点から非常に優れているとともに、チャネル領域(ゲート電極の直下の半導体層)に不純物を導入しないことから、不純物のばらつきに起因するしきい値電圧のばらつきも充分に抑制することができる。このため、完全空乏型トランジスタを採用することにより、優れた性能の半導体装置を提供することができる。このとき、完全空乏型トランジスタでは、半導体層(シリコン層)を完全に空乏化させる必要があることから、SOI基板の半導体層の厚さを非常に薄くする必要がある。また、ゲート電極に印加するゲート電位だけでなく、SOI基板のウェルに加えるバックゲート電位によっても、SOI基板の半導体層SLに形成された電界効果トランジスタのしきい値電圧を調整する構成を採用する場合には、埋め込み絶縁層BOXの厚さを薄くする必要がある。
【0107】
この点に関し、例えば、本実施の形態1では、半導体層の厚さを10nm以上20nm以下でするとともに、埋め込み絶縁層BOXの厚さも10nm以上20nm以下にしている。これにより、本実施の形態1によれば、完全空乏化トランジスタからなる電界効果トランジスタを実現することができ、かつ、ウェルに加えるバックゲート電位によっても、電界効果トランジスタのしきい値電圧を調整することが容易となる。
【0108】
ただし、バックゲート電位によるしきい値電圧の調整も行なう完全空乏型トランジスタを含む半導体装置では、半導体層および埋め込み絶縁層の厚さを薄くする必要があるため、プラグの支持基板への突き抜けが問題点として顕在化しやすい。そこで、本実施の形態1における第2特徴点では、本実施の形態1における技術的思想(第1特徴点)を、完全空乏型トランジスタを含む半導体装置に適用している。これにより、本実施の形態1における第2特徴点によれば、プラグの支持基板への突き抜けを防止することによる半導体装置の信頼性向上を図りながら、高性能な完全空乏型トランジスタを提供することができる。
【0109】
次に、本実施の形態1における第3特徴点について説明する。本実施の形態1における第3特徴点は、エピタキシャル層を形成するエピタキシャル成長法を複数枚の半導体ウェハ(SOI基板)を同時に処理できる成膜装置で実施することを前提として、この成膜装置の内壁を構成する石英の表面にシリコンをコーティングする点にある。例えば、シリコンを堆積する本実施の形態1におけるエピタキシャル成長法では、原料ガスの他に、選択エピタキシャル成長を実現するために、HClを供給する。したがって、本来、成膜装置の内壁は、石英(酸化シリコン)から構成されているため、成膜装置の内壁には、シリコンが成長しないと考えられる。ところが、実際の成膜装置では、少なからず、石英の表面にもシリコンが堆積する。ここで、多数枚の半導体ウェハを同時に処理する成膜装置では、成膜されるエピタキシャル層の膜厚にばらつきが少ないことが要求される。そして、成膜装置におけるエピタキシャル成長は、露出するシリコンの表面積の大きさに応じて、堆積するシリコンの膜厚が変化する。したがって、成膜装置の内壁に石英が露出している場合、最初は、ほとんどの石英が露出しているため、シリコンで覆われる表面積は少ないが、成膜処理が進むに連れて、石英の表面にもシリコンが堆積するようになる。この場合、成膜装置の内壁にもシリコンが存在するため、シリコンで覆われる表面積が変化することになる。このように、シリコンで覆われる表面積が変化すると、半導体ウェハ上に形成されるエピタキシャル層の膜厚も変化することになる。このことは、エピタキシャル層の膜厚にばらつきが生じることを意味する。そして、エピタキシャル層の膜厚がばらつくと、特定の半導体ウェハにおいては、エピタキシャル層の膜厚が他の半導体ウェハに形成されるエピタキシャル層の膜厚よりも薄くなる場合があると考えられる。ところが、エピタキシャル層の膜厚が薄くなると、エピタキシャル層の端部に形成される「裾引き構造」のサイズ(長さ)が大きくなると考えられる。すると、上述した本実施の形態1における第1特徴点で規定した制限で許容される位置にプラグを形成する場合であっても、エピタキシャル層の膜厚のばらつきに起因して、特に、膜厚の薄いエピタキシャル層では、プラグの支持基板への突き抜けが生じてしまうおそれがある。
【0110】
そこで、本実施の形態1における第3特徴点では、予め、エピタキシャル層を形成するためのエピタキシャル成長法を実施する前に、成膜装置の内壁を構成する石英の表面にシリコンをコーティングしている。この場合、既に、成膜装置の内壁には、シリコンがコーティングされていることから、その後に、エピタキシャル成長法を実施しても、シリコンが露出する表面積が変化することはない。これにより、本実施の形態1における第3特徴点によれば、複数枚の半導体ウェハを同時に処理する成膜装置において、エピタキシャル層の膜厚のばらつきを抑制することができる。このことは、複数枚の半導体ウェハにおいて、エピタキシャル層の端部に形成される「裾引き構造」がほぼ均一に形成されることを意味し、これによって、上述した本実施の形態1における第1特徴点で規定した制限で許容される位置にプラグを形成することによって、複数枚の半導体ウェハのそれぞれにおいて、プラグの支持基板への突き抜けを防止することができる。言い換えれば、成膜装置で処理される複数枚の半導体ウェハのすべてにおいて、上述した本実施の形態1における第1特徴点で規定した制限によって、確実に、プラグの支持基板への突き抜けを抑制することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0111】
(実施の形態2)
<実施の形態2における基本思想>
続いて、本実施の形態2における基本思想について説明する。本実施の形態2における基本思想は、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層において、プラグと接続するエピタキシャル層の部位を櫛形形状にして、櫛型形状の個々の部位のゲート幅方向の幅を小さくする思想である。この場合、ゲート幅方向の幅が小さな櫛型形状の個々の部位の端部は、「裾引き構造」ではなく、「ファセット構造」となる。これにより、プラグと接続するエピタキシャル層の部位は、「裾引き構造」とならないため、プラグの支持基板への突き抜けを防止することができる。すなわち、前記実施の形態1における基本思想は、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層においては、エピタキシャル層の端部に「裾引き構造」が形成されることを考慮して、プラグの形成位置に制限を設けて、「裾引き構造」の部位にプラグを形成しないようにする思想である。これに対し、本実施の形態2における基本思想は、ゲート幅方向の幅が所定幅よりも大きい活性領域の半導体層上に形成されるエピタキシャル層の端部に「裾引き構造」自体が形成されることを防止するために、エピタキシャル層の端部を櫛型形状とする思想である。
【0112】
<具体的構成>
以下では、この本実施の形態2における基本思想を具現化する具体的構成について説明する。
図24は、本実施の形態2における半導体装置の模式的な平面構成を示す図である。
図24に示すように、本実施の形態2における半導体装置は、例えば、ゲート幅方向(y方向)の幅が所定幅よりも小さい活性領域に形成された電界効果トランジスタQ1と、ゲート幅方向(y方向)の幅が所定幅よりも大きい活性領域に形成された電界効果トランジスタQ2とを有している。
【0113】
このとき、本実施の形態2における特徴点は、ゲート幅方向(y方向)の幅が所定幅よりも大きい活性領域に形成された電界効果トランジスタQ2が存在することを前提とする。そして、本実施の形態2における特徴点は、活性領域の半導体層上に形成されたエピタキシャル層EPI2が、平面視において、y方向の幅が第1幅である幅広部と、平面視において、それぞれy方向の幅が第1幅よりも小さい第2幅であり、かつ、幅広部と一体的に形成され、かつ、y方向に並んで配置された複数の幅狭部とを有する点にある。そして、本実施の形態2において、プラグは、少なくとも、複数の幅狭部の1つと接続されている。言い換えれば、本実施の形態2における特徴点は、例えば、
図24に示すように、活性領域の半導体層上に形成されたエピタキシャル層EPI2の端部が、並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)に別れて、櫛型形状となっている点にあるともいうことができる。そして、本実施の形態2において、プラグは、少なくとも、エピタキシャル層EPI2の端部に形成されている櫛型形状の部位と接続されている。これにより、本実施の形態2によれば、プラグの支持基板への突き抜けを防止することができる。以下に、この点について説明する。
【0114】
まず、
図25は、ゲート幅方向(y方向)の幅が所定幅よりも大きい活性領域に形成された電界効果トランジスタQ2において、活性領域の半導体層上に形成されたエピタキシャル層EPI2の端部が櫛型形状をしていない場合の断面構成を模式的に示す図である。
図25に示すように、この場合、エピタキシャル層EPI2の端部に「裾引き構造」が形成される結果、エピタキシャル層EPI2の膜厚が薄くなるエピタキシャル層EPI2の端部において、プラグPLG2の支持基板SUB(ウェルWL2)への突き抜けが生じてしまうことがわかる。
【0115】
これに対し、
図26は、
図24のA−A線で切断した断面図である。
図26に示すように、本実施の形態2では、幅の小さい並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)からなる櫛型形状が形成されている。この結果、櫛型形状を構成する並列多数本の個々の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)のゲート幅方向における幅が小さくなるため、並列多数本の個々の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)の端部には、「裾引き構造」は形成されずに、「ファセット構造」が形成される。そして、
図26に示すように、プラグPLG2が、櫛型形状を構成する並列多数本の互いに離間する複数の部位に跨って形成される場合であっても、並列多数本の複数の部位の間には、膜厚の大きい素子分離部STIが形成されている結果、プラグPLG2の支持基板SUB(ウェルWL2)への突き抜けは防止されるのである。以上のようにして、本実施の形態2によれば、ゲート幅方向(y方向)の幅が所定幅よりも大きい活性領域に形成された電界効果トランジスタQ2を含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0116】
<変形例>
次に、本実施の形態2の変形例について説明する。
図27は、本変形例におけるエピタキシャル層の幅狭部を模式的に示す図である。
図27に示すように、本変形例においては、幅の小さい並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)が形成されている。この結果、並列多数本の個々の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)のゲート幅方向(y方向)における幅が小さくなるため、並列多数本の個々の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)の端部には、「裾引き構造」は形成されずに、「ファセット構造」が形成される。そして、
図27に示すように、並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)は、互いに連結されている。したがって、プラグPLG2が、並列多数本の複数の部位に跨って形成される場合であっても、プラグPLG2の支持基板SUB(ウェルWL2)への突き抜けは防止される。そして、特に、本変形例では、並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)が互いに連結されている結果、プラグPLG2とエピタキシャル層との接続抵抗を低減することができる利点が得られる。以上のようにして、本変形例によれば、幅の大きいエピタキシャル層の端部を幅の小さい並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)に分割し、かつ、並列多数本の部位(EPI2A、EPI2B、EPI2C)を互いに連結することにより、プラグPLG2とエピタキシャル層との接続抵抗を低減しながら、プラグPLG2の支持基板SUBへの突き抜けを防止できる。この結果、本変形例によれば、ゲート幅方向(y方向)の幅が所定幅よりも大きい活性領域に形成された電界効果トランジスタQ2を含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0117】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0118】
前記実施の形態は、以下の形態を含む。
【0119】
(付記1)
支持基板と、支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成された半導体層とからなり、かつ、素子分離部が形成され、かつ、平面視において、前記素子分離部で囲まれた活性領域を有するSOI基板と、
前記活性領域の前記半導体層上に形成されたエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層と接続されたプラグと、
を備える、半導体装置であって、
前記活性領域の第1方向の幅は、250nmよりも大きく、
前記素子分離部と前記プラグとの間の前記第1方向における最短距離は、60nmよりも大きい、半導体装置。