(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2以上の接触部材を有し、試料保持面は多角形であり、前記接触部材が少なくとも異なる2辺の周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の試料移載システム。
試料移動装置は複数の試料保持装置を備え、隣接する試料保持装置の対向位置に隣接する試料保持装置に属する接触部材があり、隣接する試料保持装置の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置に属する接触部材は、互いに食い違いの位置関係となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料移載システム。
試料載置部材は複数の試料載置予定領域を有し、各試料載置予定領域に対応する凹部があり、隣接する試料載置予定領域に対応する凹部であって、対向位置にある凹部は、互いに食い違いの位置関係となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料移載システム。
試料載置部材は、板状であり、水平姿勢に設置した状態で試料を置き、その後に縦姿勢に変化させ、さらにその後に水平姿勢に戻されるものであり、試料載置予定領域の辺部またはその近傍に試料支持部材が設けられ、試料載置部材が縦姿勢となった際に試料の一部が前記試料支持部材に当接して落下が阻止されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の試料移載システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ベルヌーイチャックは吸着力が真空パット等に比べて劣り、特に面方向の保持力が弱いという欠点がある。そのためベルヌーイチャックは、保持した試料が面方向に移動しやすいという問題がある。
即ちベルヌーイチャックは、保持すべき試料と対向する試料保持面を有し、試料保持面と試料との間に気体を流すことによって負圧を生じさせ、大気圧との差によって試料を試料保持面側に吸着するものである。
ベルヌーイチャックでは、試料保持面と試料との間に空気流が必要であり、試料保持面と試料との間に空気が通過する空間が存在しなければならず、試料の全面を試料保持面に押しつけることができない。
また試料保持面と試料との間の空間に、試料の面方向の移動を阻止する係合部を作ることは困難である。
【0009】
そのためベルヌーイチャックで結晶系半導体基板等の試料を保持すると、保持中に試料が面方向に移動することがあり、基板ホルダー等の試料載置部材から試料を脱着する際の位置精度が悪くなり、ハンドリング精度を上げることができず、太陽電池の生産性の低下に繋がる。
また特許文献2に開示した太陽電池の製造方法を採用すると、基板ホルダーの姿勢を水平姿勢から縦姿勢に変化させたときに、結晶系半導体基板が傾斜姿勢となる。即ち結晶系半導体基板が当初の位置から動き、姿勢が変わる。さらには、結晶系半導体基板の下辺が把持される。
そのため試料を回収するべくベルヌーイチャックを試料に近づけた際、ベルヌーイチャックの姿勢(平面方向の回転姿勢)と試料の姿勢が合致せず、吸引に失敗する場合もある。さらには、試料が把持された状態で吸引した場合、試料が引っ掛かって、破損する場合もある。この問題は、特に試料として結晶シリコン基板を用いる場合に顕著である。
例えばヘテロ接合を有した結晶シリコン基板を備えた太陽電池であって、摂氏200度を超えない程度の低温プロセスで生産されるヘテロ接合太陽電池では、加熱工程におけるダメージ緩和効果があまり期待できないので、ベルヌーイチャックで保持する際のダメージが大きいという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記した問題を解決することを課題とするものであり、移載中に試料が面方向に移動することを阻止することが可能であり、且つ試料の姿勢を修正することができて吸引の失敗が少なく、且つ吸引時の破損をなくす試料移載システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための態様は、試料を載置する試料載置部材と、試料を持ち上げて当該試料を試料載置部材と他の場所との間で移動させる試料移動装置とを有する試料移載システムにおいて、前記試料移動装置は、持ち上げるべき試料と対向する試料保持面を有し、前記試料保持面と試料との間に気体を流すことによって負圧を生じさせ、当該負圧によって試料を試料保持面側に吸引し、試料を試料保持面に近接した位置に保持する試料保持装置を備え、当該試料保持装置は、試料の一部と接触させる接触部材と、接触部材を試料保持面に沿う方向に移動させる移動機構とを有し、前記試料載置部材には試料を載置する試料載置予定領域があり、当該試料載置予定領域の辺部またはその近傍に凹部が設けられ、前記試料保持装置を試料載置部材の試料載置予定領域に近接させた状態の際に試料保持装置の接触部材の一部が前記凹部に入り、移動機構を動作させることによって接触部材の一部が前記凹部内で移動
して、試料載置部材に傾斜姿勢で載置された試料の姿勢を修正することを特徴とする試料移載システムである。
【0012】
前記した凹部は、例えば長穴の様に、部分的に窪んだものであることが望ましいが、試料載置予定領域の周囲を環状に取り巻くものであってもよい。また試料載置予定領域が突出し、相対的に周辺が凹んだ状態となったものも「凹部」に含まれる。
【0013】
本態様で採用する試料保持装置は、ベルヌーイチャックの一種であり、試料を非接触で保持することができる。また本態様で採用する試料保持装置は、試料の一部と接触させる接触部材を有している。そのため移載中に試料が面方向に移動することを阻止することができる。
また本態様で採用する試料保持装置は、接触部材を試料保持面に沿う方向に移動させる移動機構を備えている。そのため試料載置部材に載置された試料を吸引する前に、接触部材を試料に接触させ、さらに接触部材を移動させて試料の姿勢を修正することができる。
また本態様で採用する試料載置部材では、試料載置予定領域の辺部またはその近傍に凹部が設けられている。そして試料保持装置を試料載置部材の試料載置予定領域に近接させた状態の際に試料保持装置の接触部材の一部が凹部に入る。そのため試料保持装置の試料保持面をより試料に近づけることができる。そのため、試料と試料保持装置との間隔が適正化され、両者の間に空気を流すことにより、負圧を発生させることができる。
即ちベルヌーイチャックは、試料保持面を試料の表面に近接させ、両者の間の空間に空気流を発生させて負圧を生成させ、この負圧を利用して試料を浮き上がらせる。そのため、ベルヌーイチャックでは、試料保持面を試料に対して数ミリ程度の間隔に近づけて対峙させる必要がある。
しかしながら、本態様で採用する試料保持装置の接触部材は、試料と当接させる必要から、試料保持面に対して垂直方向に垂下する部分がある。
そのため試料保持面を試料に近づけると、接触部材の先端が試料載置部材に当たり、試料保持面を試料に近づけることができなくなってしまう。
そこで本態様では、試料載置予定領域の辺部またはその近傍に凹部を設け、試料保持装置を試料載置部材の試料載置予定領域に近接させた状態の際に試料保持装置の接触部材の一部が前記凹部に入ることとした。また移動機構を動作させることによって接触部材の一部が前記凹部内で移動することができることとした。そのため本態様によると、試料保持面を試料に近づけて対峙させることが可能である。またその状態で接触部材を移動させ、試料の姿勢を変更することができる。
【0014】
上記した対応においては、2以上の接触部材を有し、試料保持面は多角形であり、前記接触部材が少なくとも異なる2辺の周部に設けられていることが望ましい。
【0015】
さらに接触部材は、4辺に設けられていることが推奨される。
【0016】
試料移動装置は複数の試料保持装置を備え、隣接する試料保持装置の対向位置に隣接する試料保持装置に属する接触部材があり、隣接する試料保持装置の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置に属する接触部材は、互いに食い違いの位置関係となっていることが望ましい。
【0017】
本態様の試料移載システムでは、隣接する試料保持装置の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置に属する接触部材が、互いに食い違いの位置関係となっている。ここで「食い違いの位置関係」とは、隣接する試料保持装置に属する接触部材が、直線上にならんでいないことを意味する。そのため試料保持装置同士の間隔を短くすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0018】
試料載置部材は複数の試料載置予定領域を有し、各試料載置予定領域に対応する凹部があり、隣接する試料載置予定領域に対応する凹部であって、対向位置にある凹部は、互いに食い違いの位置関係となっていることが望ましい。
【0019】
本態様の試料移載システムによると、試料載置部材により多くの試料を載置することができる。
【0020】
接触部材はピンであり、凹部は長穴であることが望ましい。
【0021】
試料載置部材は、板状であり、水平姿勢に設置した状態で試料を置き、その後に縦姿勢に変化させ、さらにその後に水平姿勢に戻されるものであり、試料載置予定領域の辺部またはその近傍に試料支持部材が設けられ、試料載置部材が縦姿勢となった際に試料の一部が前記試料支持部材に当接して落下が阻止されることが望ましい。
【0022】
試料支持部材は、試料の試料載置予定領域の面方向への移動と、試料載置予定領域から離反する方向への移動を阻止できるものであることが望ましい。
【0023】
本態様は、前記した特許文献2に開示した構成を本態様に応用したものである。
【0024】
試料は、半導体基板又は一部に半導体層を備えた太陽電池の仕掛品であってもよい。
【0025】
ここで「半導体基板又は一部に半導体層を備えた太陽電池の仕掛品」とは、シリコンウェハその他の半導体基板の単体、太陽電池の仕掛品たるシリコンウェハその他の半導体基板の単体、半導体基板に何らかの層が積層された基板、半導体基板に何らかの層が積層された基板であって太陽電池の仕掛品、ガラスその他に半導体層が設けられた基板であって太陽電池の仕掛品」を含む概念である。
なかでも、シリコンウェハ(結晶シリコン基板)が破損が生じやすい。近年、結晶シリコン基板の薄膜化が進む中、その厚さが50〜150μm程度の薄い結晶シリコン基板が使用されるようになってきており、この様な厚みの結晶シリコン基板を用いた場合、撓みやすく、より破損が生じやすいので、本態様のベルヌーイチャックを用いることが好ましい。
【0026】
試料は、結晶シリコン基板又は結晶シリコン基板を主体とする太陽電池の仕掛品であってもよい。
【0027】
結晶シリコンを使用する太陽電池としては、結晶系太陽電池(拡散型)やヘテロ接合太陽電池があるが、ヘテロ接合太陽電池はシリコン系薄膜層を製膜するため、より衝撃等に敏感であるので、本態様を用いることがより好ましい。
即ちヘテロ接合を有した結晶シリコン基板を備えた太陽電池であって、摂氏200度を超えない程度の低温プロセスで生産されるヘテロ接合太陽電池では、加熱工程におけるダメージ緩和効果があまり期待できない。この様にヘテロ接合太陽電池は、ベルヌーイチャックで保持する際のダメージが残りやすいという問題があったので、本態様を用いることがより好ましい。
【0028】
試料載置部材に試料の位置又は姿勢が変化することを阻止する位置決め部材が設けられていることが望ましい。
【0029】
一部に半導体層を備えた太陽電池の製造方法においては、太陽電池の仕掛品たる仕掛太陽電池基板を試料とし、前述した試料載置システムの試料保持装置で
前記試料を保持する基板保持工程を有する
ことが望ましい。
【0030】
本態様によると、太陽電池パネルの性能が向上し、且つ歩留りが向上する。
【0031】
仕掛太陽電池基板は
、結晶シリコン基板を主体とする仕掛太陽電池基板であってもよい。
【0032】
前述した太陽電池の製造方法においては、試料載置部材に載置された
前記試料を試料保持装置で保持して持ち上げる基板持ち上げ工程を含み、基板持ち上げ工程においては、前記試料移動装置の試料保持装置を
前記試料に近接させ、移動機構を動作させて
前記試料の姿勢を修正することが望ましい。
【0033】
本態様によると、試料の姿勢を修正して試料を吸い上げることができるので、吸引の失敗が少ない、且つ吸引時の破損がなくなる。また本態様によると、次工程の装置や器具に、正しい姿勢で試料を載せ代えることができる。
【0034】
前述した太陽電池の製造方法においては、基板保持工程の後に、
前記試料に透明導電膜を製膜する工程を有することが望ましい。
【0035】
本発明者らの経験によると、透明導電膜を製膜する工程で不具合が生じやすい。この経験則から透明導電膜を製膜する前の工程に基板保持工程がある場合、本発明の試料保持装置を使用することが望ましい。さらにその後にめっきをした際に、傷があると不所望の部分にめっきが析出されてしまうが、本発明の工程を経た後でめっきした場合は不所望の部分にめっきが析出されることが抑制できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の試料移載システムは、移載中に試料が面方向に移動することを阻止することができる効果がある。また本発明の試料移載システムは、試料の姿勢を修正することができて吸引の失敗が少なく、且つ吸引時の破損をなくすことができる。
また本発明の太陽電池の製造方法によれば、太陽電池の歩留りが向上する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の試料移載システム1は、
図1の様に、搬入コンベア2と、基板ホルダー(試料載置部材)3と、試料移動装置5によって構成されている。
本実施形態の試料移載システム1は、搬入コンベア2によって搬送されて来た試料たる仕掛太陽電池基板10(以下、単に基板と称する)を試料移動装置5によって移動して基板ホルダー3に載せ代え、さらに基板ホルダー3から基板10を外して他の装置に移載するシステムである。
以下、順次説明する。
【0039】
搬入コンベア2は、ウォーキングビームコンベアなどが公知である。搬入コンベア2は、基板10を載置してタクト送りすることができるものである。
【0040】
試料移動装置5は、
図1の様に保持装置群21と走行・昇降装置22によって構成されている。
保持装置群21は、後記する試料保持装置20を5連に連結したものである。走行・昇降装置22は、保持装置群21を保持して昇降及び走行させる装置である。
【0041】
走行・昇降装置22は、立体的に配置された4条の走行レール23a,b,c.dを有し、走行レール23a,b,c.dに昇降ガイド25a,bが取り付けられたものであるそして昇降ガイド25a,bに、前記した保持装置群21が取り付けられている。
走行・昇降装置22は、図示しない走行モータによって昇降ガイド25a,bを走行レール23a,b,c.dに沿って直線移動させることができる。
また走行・昇降装置22は、図示しない昇降モータによって保持装置群21を昇降移動させることができる。
【0042】
保持装置群21を構成する各試料保持装置20は、ベルヌーイチャックであり、
図2、
図3の様に、本体部30と、接触ピン(接触部材)31,32,33,34,35,36と、接触ピンを試料保持面47に沿う方向に直線移動させる移動機構41,42,43,44によって構成されている。
【0043】
本体部30は、略正方形の板であり、中心部に空気導入管46が接続されている。空気導入管46は、公知のベルヌーイチャックと同様、
図9乃至
図13の様に、図面上部側から下部側に連通している。
本体部30の図面下面側は、平坦面であり、試料保持面47として機能する。
試料保持面47の面積は、試料たる基板10の面積よりもやや小さい。なお基板10は、仕掛太陽電池基板であり、半導体基板である。基板10は、厚さが50μm乃至200μmであって外力を受けると撓む。なお基板10の一方又は双方にテクスチャがある場合は、前記した厚さは、テクスチャの突端を基準として測定したものである。
【0044】
本実施形態では、接触ピン31,32,33,34,35,36は、いずれも断面形状が円形のピンであり、本体部30の各辺にあって、本体部30の平面と直行する方向を向いている。そして接触ピン31,32,33,34,35,36の下端側は、試料保持面47よりも下側に至っている。即ち接触ピン31,32,33,34,35,36は試料保持面47の周部であってその外側にあり、試料保持面47に対して垂直方向に設けられている。
説明の便宜上、走行・昇降装置22の走行方向をY軸とし、これに直交する方向をX軸とする。また本体部30の各辺をX方向フロント側辺(以下XF辺)、X方向リヤ側辺(以下XR辺)、Y方向フロント側辺(以下YF辺)、F方向リヤ側辺(以下FR辺)とする。
本実施形態では、本体部30のX方向辺(XF辺,XR辺)には、
図3の様にそれぞれ一本ずつ接触ピン31,34が設けられている。即ち本体部30のXF辺に接触ピン31が設けられ、本体部30のXR辺には接触ピン34が設けられている。
【0045】
また本体部30のY方向辺(YF辺,YR辺)には、それぞれ2本ずつ接触ピン32,33,35,36が設けられている。即ち本体部30のYR辺に接触ピン32,33,が設けられ、本体部30のYF辺には接触ピン35,36が設けられている。
【0046】
各辺に設けられた各接触ピン31,32,33,34,35,36はいずれもピンホルダーによって支持され、本体部30の各辺の外側から下方向に向かって垂下されている。 即ち本体部30のXF辺に配された接触ピン31は、ピンホルダーxfによって支持され、本体部30のXF辺の外側から下方向に向かって垂下されている。
本体部30のXR辺に配された接触ピン34は、ピンホルダーxrによって支持され、本体部30のXR辺の外側から下方向に向かって垂下されている。
ここで、XF辺に配された接触ピン31と、XR辺に配された接触ピン34は、図面Y軸方向にずれた位置にある。
即ちXF辺に配された接触ピン31を通るX軸方向線XFxと、XR辺に配された接触ピン34を通るX軸方向線XRxは重ならない。
【0047】
また同様に、本体部30のYR辺に配された接触ピン32,33は、共通のピンホルダーyrによって支持され、本体部30のYR辺の外側から下方向に向かって垂下されている。
本体部30のYF辺に配された接触ピン35,36は、共通のピンホルダーyfによって支持され、本体部30のYF辺の外側から下方向に向かって垂下されている。
【0048】
ここで、YR辺に配された接触ピン32,33と、YF辺に配された接触ピン35,36は、図面X軸方向にずれた位置にある。
即ちYR辺に配された接触ピン32,33を通るY軸方向線YRya及びYRybと、YF辺に配された接触ピン35,36を通るY軸方向線YFya及びYFybは重ならない。
【0049】
また各ピンホルダーxf,yr,xr,yfは、移動機構41,42,43,44によって直線的に移動する。移動機構41,42,43,44は、直線ガイド80,81,82,83と、図示しないエアシリンダー(駆動アクチェータ)及び図示しないリンク機構によって構成されている。そして前記した各ピンホルダーxf,yr,xr,yfがそれぞれ直線ガイド80,81,82,83に支持されている。各ピンホルダーxf,yr,xr,yfには図示しないリンク機構が係合している。そのため各ピンホルダーxf,yr,xr,yfは、図示しないエアシリンダーを動作させることにより、本体部30の各辺(XF辺,XR辺,YF辺,YR辺)に対して直交する方向に移動する。
即ち図示しない駆動機構を動作させることにより、本体部30の各辺(XF辺,XR辺,YF辺,YR辺)に設けられた各接触ピン31,32,33,34,35,36は試料保持面47に沿う方向であって且つ各辺(XF辺,XR辺,YF辺,YR辺)に対して直交する方向に移動する。即ち各接触ピン31,32,33,34,35,36は各辺(XF辺,XR辺,YF辺,YR辺)に対して近接・離反する方向に移動する。試料保持面47が仮に水平であるならば、接触ピン31,32,33,34,35,36は、水平かつ直線的に移動する。
【0050】
また本実施形態では、対向する辺に設けられたピンホルダーxf,yr,xr,yfは連動する。仮にXF辺にあるピンホルダーxfが、本体部30のXF辺に近接する方向に移動すると、対向するXRにあるピンホルダーxrも本体部30のXR辺に近接する方向に移動する。仮にXF辺にあるピンホルダーxfが、本体部30のXF辺から離れる方向に移動すると、対向するXRにあるピンホルダーxrも本体部30のXR辺から離れる方向に移動する。
そのため仮にXF辺にある接触ピン31が、本体部30のXF辺に近接する方向に移動すると、対向するXRにある接触ピン34も本体部30のXR辺に近接する方向に移動する。仮にXF辺にある接触ピン31が、本体部30のXF辺から離れる方向に移動すると、対向するXRにある接触ピン34も本体部30のXR辺から離れる方向に移動する。
【0051】
同様にYR辺にあるピンホルダーyrが、本体部30のYR辺に近接する方向に移動してYR辺にある接触ピン32,33をYR辺に近接する方向に移動させると、対向するYFにあるピンホルダーyfも本体部30のYF辺に近接する方向に移動して接触ピン35,36をYF辺に近接する方向に移動させる。
YR辺にあるピンホルダーyrが、本体部30のYR辺から離れる方向に移動してYR辺にある接触ピン32,33をYR辺から離れる方向に移動させると、対向するYFにあるピンホルダーyfも本体部30のYF辺から離れる方向に移動して接触ピン35,36をYF辺から離れる方向に移動させる。
【0052】
保持装置群21は、前記した様に試料保持装置20が5連に連結されたものである。本実施形態では、試料保持装置20はX軸方向に直列に並べられている。
従って、各試料保持装置20のXF辺とX軸方向に隣接する試料保持装置20のXR辺が対向する。そして本実施形態の保持装置群21では、
図2の様に、隣接する試料保持装置20の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する接触ピン31,34が互いに食い違いの位置関係となっている。
即ち各試料保持装置20のXF辺に配された接触ピン31と、XR辺に配された接触ピン34は、図面Y軸方向にずれた位置にあり、且つ各試料保持装置20は、直列的に配置されているから、隣接する試料保持装置20の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する接触ピン31,34もずれた位置となる。言い換えれば、一個の試料保持装置20のXF辺に配された接触ピン31を通るX軸方向線XFxと、隣接する試料保持装置20のXR辺に配された接触ピン34を通るX軸方向線XRxは重ならない。
【0053】
また本実施形態では、試料保持装置20のXF辺とXR辺に設けられた接触ピン31,34がそれぞれのXF辺とXR辺から最も離れた位置に移動した状態においては、自己のXF辺とXR辺と接触ピン31,34との距離よりも、隣接する試料保持装置20のYF辺とYR辺との距離の方が近い位置関係となる。
しかしながら、隣接する試料保持装置20の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する接触ピン31,34が互いに食い違いの位置関係となっているから、試料保持装置20のXF辺とXR辺に設けられた接触ピン31,34が最もそれぞれのXF辺とXR辺から離れた位置に移動した状態においては、各接触ピン31,34は行き違いの状態となり、衝突しない。
【0054】
次に、基板ホルダー(試料載置部材)3について説明する。基板ホルダー3は、CVD装置内に基板10を設置するための部材であり、特許文献2に開示された基板ホルダーと同様に縦置きされる。
基板ホルダー3は、略正方形の金属板または黒鉛(グラファイト)等であり、本実施形態では、基板10を縦横5列ずつ設置することができる。即ち基板10を碁盤の目の如くに並べて25枚載置することができる。
【0055】
基板ホルダー3には、基板10を載置する試料載置予定領域50が決められている。本実施形態では、
図4の様に縦横5列ずつ試料載置予定領域50がある。試料載置予定領域50は、基板ホルダー3から基板10を着脱する際、試料保持装置20の試料保持面47が対向する部分であるとも言える。
試料載置予定領域50は、試料保持装置20の試料保持面47が対向する部分であるから、仮想的には四角形である。即ち基板10を設置したとき、基板10の各辺が合致する辺がある。基板10の各辺が合致する辺は、試料保持装置20の試料保持面47の各辺が対向する部分であるから(厳密には少し外側にずれている)、説明の便宜上、XF対応辺、XR対応辺、YF対応辺、YR対応辺と称する。
そして各試料載置予定領域50の辺部に、長穴状の凹部51,52,53,54,55,56が設けられている。長穴状の凹部51,52,53,54,55,56は、前記した試料保持装置20の接触ピン31,32,33,34,35,36に対応する位置にある。
【0056】
即ち試料保持装置20のXF辺に設けられた接触ピン31に対応して、XF対応辺に凹部51が設けられている。試料保持装置20のYR辺に設けられた接触ピン32に対応して、YR辺対応辺に凹部52が設けられている。試料保持装置20のYR辺に設けられた接触ピン33に対応して、YR辺対応辺に凹部53が設けられている。試料保持装置20のXR辺に設けられた接触ピン34に対応して、XR対応辺に凹部54が設けられている。試料保持装置20のYF辺に設けられた接触ピン35に対応して、YF辺対応辺に凹部55が設けられている。試料保持装置20のYF辺に設けられた接触ピン36に対応して、YR辺対応辺に凹部56が設けられている。
【0057】
そして各凹部51,52,53,54,55,56の長穴の長さ及び方向は、試料保持装置20の接触ピン31,32,33,34,35,36の移動しろを包含する長さ及び方向である。
即ち各凹部51,52,53,54,55,56の長穴は、XF対応辺、XR対応辺、YF対応辺、YR対応辺に対して直交する方向にのびている。またその長さは、接触ピン31,32,33,34,35,36の移動距離よりも長い、さらに長穴の幅は、接触ピン31,32,33,34,35,36の直径よりも広い。
【0058】
試料載置予定領域50は、前記した様に碁盤の目の様に縦横に配されている。各試料載置予定領域50は、X方向には、XF対応辺と隣接する試料保持装置20のXR対応辺が対向する。X方向の対向位置にある凹部51,54は、互いに食い違いの位置関係となっている。
即ち試料載置予定領域50のXF対応辺に配された凹部51と、XR対応辺に配された凹部54は、図面Y軸方向にずれた位置にあり、且つ試料載置予定領域50は、直列的に配置されているから、隣接する試料載置予定領域50の対向位置に設けられた隣接する試料載置予定領域50に属する凹部51,54もずれた位置となる。
また長穴(凹部51,54)の自己のXF対応辺から最も離れた位置は、自己のXF対応辺からの距離よりも隣接する試料載置予定領域50のXR対応辺からの距離の方が近い位置関係となる。
しかしながら、X方向に隣接する試料載置予定領域50の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する凹部51,54が互いに食い違いの位置関係となっているから、凹部51,54は行き違いの状態となり、つながらない。
【0059】
Y方向の隣接する試料載置予定領域50の関係についても同様であり、料載置予定領域50のYF対応辺に配された凹部55,56と、YR対応辺に配された凹部52,53は、図面X軸方向にずれた位置にあり、且つ試料載置予定領域50は、Y方向に直列的に配置されているから、隣接する試料載置予定領域50の対向位置に設けられた隣接する試料載置予定領域50に属する凹部52,53,55,56もずれた位置となる。
Y方向に隣接する試料載置予定領域50の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する凹部52,53,55,56が互いに食い違いの位置関係となっているから、凹部52と隣接する試料載置予定領域50の凹部56、凹部53と隣接する試料載置予定領域50の凹部55は行き違いの状態となり、つながらない。
【0060】
また
図5の様に、各試料載置予定領域50の近傍には、試料支持部材60,61,62が設けられている。3個の試料支持部材60,61,62の内、2個の試料支持部材61,62は、XR対応辺の近傍にある。ただし、一方の試料支持部材61は、XR対応辺よりもX方向に離れた位置にある。
残る試料支持部材60は、YR対応辺の近傍であり、YR対応辺よりも外側に離れた位置にある。
【0061】
本実施形態では、試料支持部材60は
図8の様に皿ネジであり、頭部70と軸部71がある。試料支持部材60の頭部70は、裏面側がテーパー状である。そのため試料支持部材60の先端部分(頭部70)は、他の部分(軸部71)よりも断面積が大きく、かつ先端部分(頭部70)は、基板ホルダー3の本体部分から離れるにつれて断面積が大きい。
【0062】
次に本実施形態の試料移載システム1の動作について説明する。本実施形態の試料移載システム1は、前記した様に、搬入コンベア2によって搬送されて来た基板10を試料移動装置5によって移動し、基板ホルダー(試料載置部材)3に載せ代え、さらに基板ホルダー3から基板10を外して他の装置に移載するシステムである。
【0063】
本実施形態では、基板ホルダー3は当初、水平姿勢に設置される。本実施形態では、搬入コンベア2によって基板10が順次搬送されてくる。そして5枚の基板10を試料保持装置20で吸着し、走行・昇降装置22で試料保持装置群21を移動させ、基板10を基板ホルダー3に載置する。本実施形態の基板ホルダー3は、縦横5列ずつ設置するものであるから、試料保持装置群21は5往復して、基板ホルダー3の全ての試料載置予定領域50に基板10を設置する。
【0064】
ここで試料載置予定領域50に設置された基板10の姿勢は、
図5の通りであり、基板ホルダー3の辺72,73と、全ての基板10の辺は平行であり、長穴状の凹部51,52.53.54,55,56を、基板10の各辺が跨いでいる。
また3個の試料支持部材60,61,62の軸部71は、
図5の様にいずれも基板10に接していない。即ち基板10の各辺は、試料支持部材60,61,62の頭部70と係合していない。
【0065】
全ての試料載置予定領域50に基板10を設置し終えると、図示しない起立装置によって基板ホルダー3を縦姿勢に変える。
その結果、基板10の天地方向が変わり、基板10のXF対応辺側が上となり、XR対応辺側が下となる。そのため基板10に掛かる重力の方向が変わり、自重によって基板10がずれる。
しかしながら、基板10の下辺側には、2個の試料支持部材61,62があるから、基板10は落下を免れる。ここで本実施形態では、2個の試料支持部材61,62は基板10を縦姿勢としたときの高さが異なる。また基板10のYR対応辺の近傍に設けられた試料支持部材60は、YR対応辺よりも外側に離れた位置にあり、基板ホルダー3が水平姿勢である際には基板10の辺から離れていた。そのため基板ホルダー3が水平姿勢から縦置き姿勢に変化させると、基板10は、下方向に移動すると共に、試料支持部材62を支点として回動し、
図14の様に基板10は全体的に傾斜した姿勢となる。
また試料支持部材61,62は、皿ネジであり頭部70の内面側がテーパー状であるから、
図8の様に、ネジの頭部70の内側に、基板10の端辺が係合する。
そのため基板10は、基板ホルダー3から離反する方向の動きも阻止される。即ち試料支持部材61,62は、
図8の様に基板10と当接している部位よりも外側(試料載置予定領域50から離れる方向)に、天地方向上向きに立ち上がった部位がある。そのため基板10は、基板ホルダー3から離反しにくい。
【0066】
この状態で、基板ホルダー3がCVD装置内に搬入され、非晶質半導体膜等が成膜される。成膜を終えた基板ホルダー3はCVD装置から取り出され、再び水平姿勢に設置される。そして本実施形態の試料移載システム1によって、基板ホルダー3から基板10が取り外され、次工程の装置に送られる。
以下、この工程について説明する。
【0067】
基板ホルダー3はCVD装置から取り出され、再び水平姿勢に設置されるが、基板10の姿勢は、
図14の様に傾斜したままの状態である。また試料支持部材61,62たる皿ネジの頭部70の内側に、基板10の辺が係合している。そのため、基板10を真上に引き上げると、基板10の辺がネジの頭部70に引っ掛かり、基板10を損傷してしまう。
【0068】
これに対して、本実施形態で採用する試料保持装置20は、特有の動作を実施し、基板10と試料支持部材61,62との係合を解除する。
即ち走行・昇降装置22の走行モータを駆動し、試料保持装置20をY方向に移動し、
図9の様に試料保持装置20を基板10の真上の位置に移動させる。なおこのとき、接触ピン31,32,33,34,35,36は、
図9の様に互いに離反する方向に移動させておく。即ち接触ピン31,32,33,34,35,36は、それぞれが設けられた辺から最も離れる様に移動させておく。
そして走行・昇降装置22の昇降モータを駆動して試料保持装置20を降下し、
図10の様に、試料保持装置20の本体部30を、基板10の上に被せる。即ち試料保持装置20の試料保持面47を基板10に対峙させる。ただし、基板10は傾斜姿勢であり、且つ試料支持部材61,62側にずれているから、試料保持面47と基板10とは正面から対峙した状態とはならない(
図15(a))。
【0069】
ここで、本体部30の周部から、接触ピン31,32,33,34,35,36が垂下しているが、接触ピン31,32,33,34,35,36の位置に対応して、基板ホルダー3に凹部51,52,53,54,55,56が設けられている。そのため接触ピン31,32,33,34,35,36は、それぞれ対応する凹部51,52,53,54,55,56内に入る。そのため、接触ピン31,32,33,34,35,36の高さが、凹部51,52,53,54,55,56の深さによって相殺され、試料保持装置20の試料保持面47を、基板10のごく近くまで近接することができる。
【0070】
本実施形態では、この状態で、各接触ピン31,32,33,34,35,36をそれぞれの辺方向に水平移動させる。なお、本実施形態では、凹部51,52,53,54,55,56は長穴であり、各接触ピン31,32,33,34,35,36の移動方向に長いから、各接触ピン31,32,33,34,35,36の先端は、凹部51,52,53,54,55,56内で水平移動することができる。そのため各接触ピン31,32,33,34,35,36は、障害なく水平移動する。
【0071】
その結果、基板10は、
図15(a)で示す矢印の様に各接触ピン31,32,33,34,35,36で辺部を押され、
図15(a)の様に水平移動および回転移動し、基板10と試料支持部材61,62との係合が解消する。
また基板10の姿勢が、傾斜姿勢から真っ直ぐの姿勢に修正される。即ち傾斜姿勢であった基板10が、真っ直ぐの姿勢に修正され、基板10の各辺が、基板ホルダー3の辺72,73と平行になる。そのため、基板10の平面姿勢と、試料保持装置20の試料保持面47の平面姿勢が合致する。即ち試料保持装置20の各辺と、基板10の各辺とが平行になる。
そして
図11の矢印の様に空気導入管46に空気を送り、試料保持面47と基板10との間の空間75を通風状態とし、空間75に負圧を発生させる。その結果、
図12の様に、基板10が試料保持面47側に吸引される。なお実際には、
図12(b)の様に試料保持面47と基板10の間に空気が通過する隙間があり、試料保持面47と基板10とは非接触であるが、作図及び説明の関係上、全体図たる
図12(a)には両者が接触した様に図示している。
図13についても同様である。
【0072】
その後に、走行・昇降装置22の昇降モータを駆動して試料保持装置20を上昇させる。さらに走行・昇降装置22の走行モータを駆動して試料保持装置20を水平移動し、基板10を所望の位置に搬送する。
ここで本実施形態では、試料保持面47の周囲に接触ピン31,32,33,34,35,36があり、各接触ピン31,32,33,34,35,36によって基板の側面が緩く保持されているから、移送中に基板10が面方向に移動することはない。
【0073】
続いて、本発明の製造方法で製造される太陽電池100について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
太陽電池100は、結晶シリコン基板を支持基板とした結晶シリコン太陽電池であり、具体的には、ヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、「ヘテロ接合太陽電池」ともいう)である。
太陽電池100は、
図16に示されるように、光電変換基板102の片側主面(第1主面)上に集電極105を備えている。また太陽電池100は、光電変換基板102の他方の主面(第2主面)上に裏面電極層106を備えている。
【0075】
光電変換基板102は、光エネルギーを電気エネルギーに変換可能な光電変換部であり、面状に広がりを持った板状の基板である。
光電変換基板102は、結晶シリコン基板110の両面上に複数の層が積層されて形成されるものであり、全体としてPIN接合又はPN接合を備えている。
具体的には、光電変換基板102は、
図16に示されるように、n型単結晶シリコン基板110の一方の主面(光入射側の面)上に、i型非晶質シリコン系薄膜111、p型非晶質シリコン系薄膜112、及び第1透明電極層113(透明導電性酸化物層)が積層されている。
また光電変換基板102は、n型単結晶シリコン基板110の他方の主面(裏面側の面)上に、i型非晶質シリコン系薄膜115、n型非晶質シリコン系薄膜116、及び第2透明電極層117が積層されている。
【0076】
光電変換基板102は、
図16に示されるように、n型単結晶シリコン基板110の両面にテクスチャ構造が形成されており、そのテクスチャ構造がその外側の層に反映されて、全体として光電変換基板102の両面にテクスチャ構造が形成されている。
【0077】
n型単結晶シリコン基板110は、半導体基板であって、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えば、リン)を含有させた単結晶シリコン基板である。
【0078】
i型非晶質シリコン系薄膜111は、半導体層であって、リンやボロン等の不純物が添加されていない真性シリコン層であり、例えば、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコン層が採用できる。
【0079】
i型非晶質シリコン系薄膜115は、半導体層であって、リンやボロン等の不純物が添加されていない真性シリコン層であり、例えば、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコン層が採用できる。
【0080】
p型非晶質シリコン系薄膜112は、半導体層であって、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えば、ボロン)を含有させたシリコン層であり、例えば、p型水素化非晶質シリコン層やp型非晶質シリコンカーバイド層、p型非晶質シリコンオキサイド層などが採用できる。
【0081】
n型非晶質シリコン系薄膜116は、半導体層であって、シリコン原子に電子を導入する原子(例えば、リン)を含有させたシリコン層であり、例えば、n型非晶質シリコン層などが採用できる。
【0082】
第1透明電極層113は、透明導電膜であり、透光性と導電性を有した層である。
第1透明電極層113の構成材料としては、透光性と導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2 )、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物で形成されている。
なお、第1透明電極層113は、上記した透明導電性酸化物にドーピング剤を添加したものであってもよい。
【0083】
第2透明電極層117は、透明導電膜であり、透光性と導電性を有した層である。
第2透明電極層117は、透光性と導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2 )、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物で形成できる。
なお、第2透明電極層117は、上記した透明導電性酸化物にドーピング剤を添加したものであってもよい。
【0084】
続いて、第1実施形態の太陽電池100の製造方法の概要について説明する。
太陽電池100は、図示しないスパッタ装置、CVD装置、めっき装置等を使用して製造され、これらの間に試料たる基板を移載する際に本実施形態の試料移載システム1が活用される。
図示しない工程によって、テクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコン基板110(以下、n型単結晶シリコン基板110が加工されたもの及びn型単結晶シリコン基板110上の積層体を含めて、仕掛太陽電池基板101という)を製造する。そして当該仕掛太陽電池基板101を本実施形態の試料移載システム1の試料保持装置20で保持し、直接的に、又は他の搬送装置を併用して仕掛太陽電池基板101を図示しないCVD装置に装着する。即ち製造工程中に、試料保持装置20で仕掛太陽電池基板101を保持する基板保持工程がある。
【0085】
そしてCVD装置内で、
図17(a)に示されるように、n型単結晶シリコン基板110の表裏面に、プラズマCVD法によって、シリコン系薄膜111,112,115,116を製膜する。
すなわち、n型単結晶シリコン基板110の一方の主面側の面上にi型非晶質シリコン系薄膜111及びp型非晶質シリコン系薄膜112を形成し、他方の主面側の面上にi型非晶質シリコン系薄膜115及びn型非晶質シリコン系薄膜116を形成する(シリコン層形成工程)。
【0086】
そして、n型単結晶シリコン基板110にシリコン系薄膜111,112,115,116が製膜されると、仕掛太陽電池基板101がスパッタ装置に移載される。
この場合にも仕掛太陽電池基板101を本実施形態の試料保持装置20で保持し、直接的に、又は他の搬送装置を併用して仕掛太陽電池基板101を図示しないスパッタ装置に装着する。スパッタ装置内で、
図17(b)に示されるように、仕掛太陽電池基板101の表裏面に、透明電極層113,117を製膜する。
すなわち、光電変換基板102のp型非晶質シリコン系薄膜112上に第1透明電極層113を製膜し、仕掛太陽電池基板101のn型非晶質シリコン系薄膜116上に第2透明電極層117を製膜する(透明電極層形成工程)。
【0087】
仕掛太陽電池基板101は、その後にスパッタ装置から印刷装置に搬送される。この場合においても、仕掛太陽電池基板101を本実施形態の試料保持装置20で保持する基板保持工程を伴う。
そして、印刷装置内で、
図17(c)に示されるように、仕掛太陽電池基板101の表面に、スクリーン印刷法によって下地電極層107が製膜される。その後に、仕掛太陽電池基板101上に図示しない絶縁層を設け、(下地電極層上に開口部がある)、下地電極層上にめっき層を形成して集電極105が形成される。
なお集電極や裏面電極層としてはペーストを印刷しても良いし、めっき法によりめっき層を形成しても良い。例えば集電極として、下地電極層107を形成後にめっき層を形成してもよい。その場合、本発明の保持装置を用いた場合は不所望箇所へのめっきの析出を抑制できるため、より好ましい。裏面電極層として、
図16では裏面全面に製膜した図を用いたが表面側の集電極のようにパターン状でもよい。
【0088】
上記した様に仕掛太陽電池基板101を移動させる際に、本実施形態の試料移載システム1が使用されるが、もちろん他の構造のシステムを併用してもよい。
しかしながら、スパッタ法によって透明電極層113,117を製膜する直前においては、本実施形態の試料移載システム1を使用することが望ましい。
即ちn型単結晶シリコン基板110にシリコン系薄膜111,112,115,116が製膜されるが、経験則上、この状態の仕掛太陽電池基板101を保持する際には試料移載システム1を使用することが望ましい。
【0089】
また透明電極層113,117を成膜した後に仕掛太陽電池基板101を移動させる際にも、本実施形態の試料保持装置1を使用することが望ましい。特にヘテロ接合太陽電池は一般にシリコン基板110やシリコン系薄膜111,112,115,116が敏感であってダメージを受けやすく、ダメージを受けると、その後にメッキ等を施す場合に不具合が発生する場合があるので、本実施形態の試料保持装置1を使用することが望ましい。
またその他にも、ヘテロ接合太陽電池は一般に透明電極層113,117を有し、且つその透明電極層113,117が10乃至140nm程度と薄いので、透明電極層113,117もダメージを受けやすい。そのような理由から、透明電極層113,117を成膜した後に仕掛太陽電池基板101を移動させる際にも、本実施形態の試料保持装置1を使用することが推奨される。
【0090】
前記した製造方法では、第1透明電極層113に下地電極層107を設け、さらに下地電極層107の上にめっき層を形成したが、第1透明電極層113に直接めっき層を設けてもよい。
また本実施形態においては受光面側に集電極を有する形態について説明したが、受光面側に集電極を有さず裏面電極層のみを有していてもよい。
【0091】
上記した実施形態は、ヘテロ接合結晶シリコン太陽電池を製造するものであったが、もちろんそれ以外の太陽電池を製造する場合にも本発明を採用することができる。即ち本発明は結晶シリコン基板を試料とする場合に特に有効であり、通常の拡散型の結晶シリコンなどでも使用できる。その場合、CVDで非晶質層を製膜しないので、CVD装置はあっても無くてもよい(ヘテロの場合は使用)。
また透明電極層113,117は、スパッタ法によるものに限定されず、イオンプレーディング法でも製膜でき、集電極も印刷やめっきだけでなく、いずれか一方だけだったり、スパッタ法でも作製できる。
【0092】
以上説明した実施形態では、接触部材の例として断面形状が円形のピンを使用したが、断面形状は円形である必要はなく、角形であってもよい。また接触部材は板状のものであってもよい。
以上説明した実施形態では、試料保持装置20の本体部30が四角形であったが、他の多角形であってもよい。また円形であってもよい。
【0093】
以上説明した実施形態では、試料支持部材として皿ネジを採用しているが、試料支持部材は皿ネジでなくてもよい。
以上説明した実施形態では、基板ホルダー(試料載置部材)3を水平姿勢に設置した状態で基板(試料)10を基板ホルダー3に置き、その後に基板ホルダー3を縦姿勢に変化させ、さらにその後に基板ホルダー3を水平姿勢に戻す工程を採用しているが、基板ホルダー3の姿勢を変更する工程は必須ではない。即ち基板ホルダー3を水平姿勢に設置した状態で基板10を基板ホルダー3に置き、そのまま他の装置に搬送してもよい。
【0094】
工程中に基板ホルダー3の姿勢変更を伴わない場合には、必ずしも基板ホルダー3に試料支持部材60を設ける必要はない。
しかしながら、例えば、基板10を基板ホルダー3に置き、そのままCVD装置やスパッタ装置に搬送する場合、装置内への基板搬送機構は、モータ駆動によるローラー搬送やロボットアームによる搬送などがある。これらの搬送機構による搬送では、隣接するローラー間の受け渡し時、または、モータ加減速時に、上下方向の振動や水平方向の慣性力により、基板10の位置や姿勢が変わってしまう懸念がある。このような場合は、基板10の姿勢や位置を保つ目的で、試料支持部材60と同様の位置決め部材65を設けることが望ましい。また位置決め部材65は、前記した実施形態の様に内側に傾斜を有した皿ネジ状のものであることが望ましい。即ち皿ネジ状の様に頭部70が逆テーパー状となっていると、基板10の辺部が頭部70と係合し、基板10の浮き上がりを防ぐことができる。また頭部70が平坦であるから、異常放電を起こしにくく、ブラズマ放電が均一になる。もちろん位置決め部材は、コーン状のものであってもよいし、円形平板状でもよい。コーン状の位置決め部材65を使用すると、基板10は基板ホルダー3と当接した姿勢が最も安定した姿勢となる。
【0095】
円形平板状の位置決め部材の例として、ワッシャ状のものが想定される。例えば、円形平板状であって外径の異なるものを準備し、これを貼り合わせて段状とし、逆テーパーに近い形状を形成し、これをもって位置決め部材とすることが考えられる。即ち外径の小さい円形平板物を基板ホルダー3側に配置し、外径の大きい円形平板物を基板ホルダー3から遠い側に向けて段部を形成させる。
【0096】
工程中に基板ホルダー3の姿勢変更を伴わない場合には、上記した実施形態の様に基板10の下辺を支持するものである必要はない。そのため位置決め部材65は、
図18の様に基板10の4辺に当接するか近接するものであることが望ましい。
また上記した実施形態では、基板ホルダー3を縦置きに姿勢変更し、その際に基板10を傾斜させる必要から、2個の試料支持部材61,62の位置をずらしているが、基板ホルダー3を水平姿勢に保ったままで他の装置に移動する際には、位置決め部材65の位置をずらす必要はない。
なお
図5に示す試料支持部材60、61,62は、位置決め部材65としての機能も有している。
【0097】
上記した実施形態では、
図2の様に、隣接する試料保持装置20の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する接触ピン31,34が互いに食い違いの位置関係となっている。基板ホルダー3についても同様であり、隣接する試料載置予定領域50に対応する凹部51,52,53,54,55,56であって、対向位置にある凹部51,52,53,54,55,56は、互いに食い違いの位置関係となっている。
この構成によると、より多くの基板10を基板ホルダー3に載置することができ、推奨される。しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、隣接する試料保持装置20の対向位置に設けられた隣接する試料保持装置20に属する接触ピン31,34が直線上に並んでいてもよい。基板ホルダー3についても同様であり、隣接する試料載置予定領域50に対応する凹部51,52,53,54,56であって、対向位置にある凹部51,52,53,54,55,56が、直線上に並んでいてもよい。さらに、凹部については、対向位置にある凹部51,52,53,54,55,56が繋がって一つの長い凹部となっていてもよい。
【0098】
また以上説明した実施形態では、凹部51,52,53,54,55,56の平面形状は、長円形であるが、凹部の平面形状は任意である。例えば、接触ピン31等が移動し得るだけの大きさを有する真円や四角形等であってもよい。また凹部が試料載置予定領域50の周囲を環状に覆ってしまう様な形状であってもよい。さらには、試料載置予定領域50部分が嵩上げされていて、その周囲が試料載置予定領域50部分よりも低くなり、凹部となっているものであってもよい。
【0099】
また試料載置部材は、基板ホルダー3に限定されるものではなく、他の装置の一部であってもよい。