(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反射の距離に従って、前記1又は2以上の対象以外の1又は2以上の物体に関連づけられる前記複数の反射のうちの反射に対応する前記組み合わせ信号から少なくとも一部の信号成分を削除することが、送信される信号の複数の反射のうちのそれぞれの反射に関して、前記反射が静的マルチパス反射であるかどうかを判定することと、前記反射が静的マルチパス反射である場合に前記反射の信号成分を削除することとを含む請求項1に記載の方法。
前記1又は2以上の時変信号の各々を処理して前記時変信号の周期性の測定値を決定することと、前記時変信号の周期性の前記測定値が予め決められた閾値を超えない場合に前記時変信号を削除することをさらに含む請求項1に記載の方法。
前記対象の周期的な動きの基本周波数の推定値を決定することが、前記対象の周期的な動きに関する前記基本周波数の暫定的な推定値を決定することと、前記暫定的な推定値及び前記時変信号の回帰に基づいて前記周期的な動きに関する前記基本周波数の前記推定値を決定することとを含む請求項1に記載の方法。
前記対象の周期的な動きの基本周波数の推定値を決定することが、前記時変信号の周波数領域の表現の中の複数のスペクトルのピークを特定することであって、前記スペクトルのピークのうちの少なくとも一部が、前記基本周波数の前記推定値の調波周波数にある、特定することと、特定された1又は2以上のスペクトルのピークから前記基本周波数の前記推定値を決定することとを含む請求項1に記載の方法。
特定された1又は2以上のスペクトルのピークから基本周波数の推定値を決定することが、前記1又は2以上のスペクトルのピークを処理して、周期的な動きに関する複数の候補基本周波数を決定することを含む請求項10に記載の方法。
時変信号をフィルタリングして前記時変信号のフィルタリングされたバージョンを形成するステップであって、基本周波数の暫定的な推定値の周波数成分及び前記基本周波数の前記暫定的な推定値に隣接する周波数成分を時変信号の前記フィルタリングされたバージョン内に維持することと、実質的にすべてのその他の周波数を前記時変信号の前記フィルタリングされたバージョンから除外することとを含む、ステップと、
前記時変信号の前記フィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて周期的な動きの前記基本周波数の推定値を決定するステップとをさらに含む請求項14に記載の方法。
時変信号のフィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップが、前記時変信号の前記フィルタリングされたバージョンの位相角の傾きを決定することを含む請求項15に記載の方法。
複数の候補基本周波数を処理して、基本周波数の暫定的な推定値を決定するステップが、前記複数の候補基本周波数に票決アルゴリズムを適用することを含む請求項13に記載の方法。
1又は2以上の時変信号が、対象の心拍が原因である周期的な動きに関連する第1の複数のスペクトルのピークと、前記対象の呼吸が原因である周期的な動きに関連する第2の複数のスペクトルのピークとを含む請求項10に記載の方法。
時変信号の周波数領域の表現の中の複数のスペクトルのピークを特定することが、スペクトルのピークを周波数領域の表現のノイズフロアと区別するための正規化アルゴリズムを適用することを含む請求項10に記載の方法。
時変信号のフィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて周期的な動きの基本周波数の推定値を決定することが、前記時変信号の前記フィルタリングされたバージョンの位相角の傾きを決定することを含む請求項21に記載の方法。
1又は2以上の対象からの信号の反射を使用して前記対象の1又は2以上の周期的な動きを監視するためのコンピュータによって実装されるシステムであって、請求項1〜22のいずれかに記載のすべてのステップを実行するようにプログラミングされたプロセッサを含む、システム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において説明される手法は、環境内の動きの異なるソースを分けるためのメカニズムを含む。そのようにするために、手法は、デバイスと異なる動く物体との間の距離を特定し得る最新のワイヤレス位置特定技術に立脚する。手法は、必ず、実際の位置を推定するのではなく距離に基づいて到着する信号を区別するためにこれらの方法を用いる。そのようにすることによって、手法は、異なる体及び体の部位から反射された信号を区別することができる。それから、手法は、はっきりと異なる信号の動きを独立して解析して、1又は2以上の人の呼吸数及び心拍数を推定する。
【0010】
一部の実施形態においては、参照によって組み込まれる出願に記載の手法が、動かない物体(例えば、壁及び家具)からの反射を除去し、動く物体からの反射をデバイスとの相対的なそれらの動く物体の位置に基づいて(つまり、送信アンテナから受信アンテナまでの反射経路の距離に基づいて)ビン(例えば、TOFの範囲を表すFFTサンプル)にソートするために使用される。呼吸及び心拍に関連するわずかな動きを追跡するために異なる距離から反射された電力を追跡するのではなく、又は呼吸及び心拍に関連するわずかな動きを追跡するために異なる距離から反射された電力を追跡するのに加えて、1又は2以上の実施形態は、反射された電力と信号の位相との両方を捕捉するワイヤレス信号のモデルを用いる。
【0011】
一部の実施形態においては、例えば、位相に基づく処理を使用して決定された周期的な信号の調波の構造が、バイタルサイン、例えば、心拍数及び/又は呼吸数を決定するために使用される。
【0012】
一態様においては、概して、1又は2以上の対象からの信号の反射を使用して対象の1又は2以上の周期的な動きを監視するための方法が、送信アンテナから送信される信号パターンの繰り返しを含む送信される信号を発するステップと、送信される信号のいくつかの反射の組合せを含む受信される信号を1又は2以上の受信アンテナにおいて受信するステップであって、送信される信号のいくつかの反射のうちの少なくとも一部の反射が、1又は2以上の対象に関連付けられる、ステップと、受信される信号を処理して1又は2以上の対象からの送信される信号の反射の時間的に連続したパターンを形成するステップと、いくつかの反射のサブセットの各反射に関して、受信される信号内の送信される信号の反射に関する位相角の経時的変化を表す位相信号を形成することを含む、反射の時間的に連続したパターンを処理して1又は2以上の位相信号を形成するステップと、1又は2以上の位相信号のサブセットの各位相信号を処理して、1又は2以上の周期的な動きのうちのそれぞれの周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップとを含む。
【0013】
態様は、以下の特徴のうちの1又は2以上を含み得る。
【0014】
受信される信号を処理して1又は2以上の対象からの送信される信号の反射の時間的に連続したパターンを形成するステップは、反射の距離に従っていくつかの反射のうちの少なくとも一部の無関係な反射を削除することを含むいくつかの反射のサブセットを形成することを含む可能性がある。
【0015】
反射のサブセットを形成することは、送信される信号のいくつかの反射のうちのそれぞれの反射に関して、反射が静的マルチパス反射であるかどうかを判定することと、反射が静的マルチパス反射である場合に反射のサブセットから反射を除外することと、反射が静的マルチパス反射でない場合に反射のサブセットに反射を含めることとを含む可能性がある。反射が静的マルチパス反射であるかどうかを判定することは、時間差分(time differencing)手法を使用することを含む可能性がある。
【0016】
方法は、1又は2以上の位相信号の各々を処理して位相信号の周期性の測定値を決定することと、位相信号の周期性の測定値が予め決められた閾値を超える場合に1又は2以上の位相信号のサブセットに位相信号を含めることとを含む、1又は2以上の位相信号のサブセットを決定するステップを含む可能性がある。1又は2以上の周期的な動きのうちのそれぞれの周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップは、1又は2以上の周期的な動きのうちのそれぞれの周期的な動きに関して、周期的な動きに関する基本周波数の暫定的な推定値を決定することと、暫定的な推定値及び位相信号の回帰に基づいて周期的な動きに関する基本周波数の推定値を決定することとを含む可能性がある。
【0017】
1又は2以上の周期的な動きは、対象の1又は2以上のバイタルサインに関連する周期的な動きを含む可能性がある。1又は2以上の周期的な動きは、対象の心拍に関連する周期的な動きを含む可能性がある。1又は2以上の周期的な動きは、対象の呼吸に関連する周期的な動きを含む可能性がある。1又は2以上の周期的な動きは、対象の干渉する動作に関連する周期的な動きを含む可能性がある。1又は2以上の周期的な動きは、対象の呼吸に関連する周期的な動きを含む可能性があり、対象の心拍に関連する周期的な動きをさらに含む。
【0018】
1又は2以上の位相信号のサブセットの各位相信号を処理して、1又は2以上の周期的な動きのうちのそれぞれの周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップは、位相信号の周波数領域の表現の中のいくつかのスペクトルのピークを特定することであって、スペクトルのピークのうちの少なくとも一部が、基本周波数の推定値の調波周波数にある、特定することと、特定された1又は2以上のスペクトルのピークから基本周波数の推定値を決定することとを含む可能性がある。特定された1又は2以上のスペクトルのピークから基本周波数の推定値を決定することが、1又は2以上のスペクトルのピークを処理して、周期的な動きに関するいくつかの候補基本周波数を決定することを含む可能性がある。
【0019】
1又は2以上のスペクトルのピークを処理して、周期的な動きに関するいくつかの候補基本周波数を決定することは、それぞれのスペクトルのピークに関して、周期的な動きに関する基本周波数の期待される周波数範囲内にあるスペクトルのピークに関連する周波数の1又は2以上の因子を決定することと、周期的な動きに関するいくつかの候補基本周波数に決定された1又は2以上の因子を含めることとを含む可能性がある。方法は、いくつかの候補基本周波数を処理して、周期的な動きに関する基本周波数の暫定的な推定値を決定するステップを含む可能性がある。
【0020】
方法は、基本周波数の暫定的な推定値及び位相信号の回帰に基づいて基本周波数の推定値を決定するステップを含む可能性がある。方法は、位相信号をフィルタリングして位相信号のフィルタリングされたバージョンを形成するステップであって、基本周波数の暫定的な推定値の周波数成分及び基本周波数の暫定的な推定値に隣接する周波数成分を位相信号のフィルタリングされたバージョン内に維持することと、実質的にすべてのその他の周波数を位相信号のフィルタリングされたバージョンから除外することとを含む、ステップと、位相信号のフィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップとを含む可能性がある。
【0021】
位相信号のフィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップは、位相信号のフィルタリングされたバージョンの位相角の傾きを決定することを含む可能性がある。いくつかの候補基本周波数を処理して、基本周波数の暫定的な推定値を決定するステップは、いくつかの候補基本周波数に票決(voting)アルゴリズムを適用することを含む可能性がある。1又は2以上の位相信号のサブセットの各位相信号は、対象の心拍が原因である周期的な動きに関連する第1のいくつかのスペクトルのピークと、対象の呼吸が原因である周期的な動きに関連する第2のいくつかのスペクトルのピークとを含む可能性がある。
【0022】
位相信号の周波数領域の表現の中のいくつかのスペクトルのピークを特定することは、スペクトルのピークを周波数領域の表現のノイズフロアと区別するための正規化アルゴリズムを適用することを含む可能性がある。1又は2以上の位相信号のサブセットの位相信号を処理して、1又は2以上の周期的な動きのうちのそれぞれの周期的な動きの基本周波数の推定値を決定するステップは、位相信号を繰り返し処理することを含む可能性がある。対象の少なくとも一部は、人間である可能性がある。1又は2以上の位相信号のサブセットは、いくつかの位相信号を含む可能性がある。
【0023】
1又は2以上の位相信号のサブセットの各位相信号に関して、周期的な動きに関する基本周波数の推定値を決定するステップは、周期的な動きの基本周波数の暫定的な推定値を決定することと、周期的な動きの基本周波数の暫定的な推定値及び位相信号の回帰に基づいて周期的な動きの基本周波数の推定値を決定することとを含む可能性がある。周期的な動きの基本周波数の暫定的な推定値を決定することは、位相信号のスペクトル表現内の最も大きなピークに関連する周波数を特定することを含む可能性があり、周期的な動きの基本周波数の推定値を決定することは、暫定的な推定値の周波数成分及び暫定的な推定値に隣接する周波数成分を位相信号のフィルタリングされたバージョン内に維持し、実質的にすべてのその他の周波数を位相信号のフィルタリングされたバージョンから除外することを含む、位相信号をフィルタリングして位相信号のフィルタリングされたバージョンを形成することを含む可能性がある。周期的な動きの基本周波数の推定値は、位相信号のフィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて決定される可能性がある。位相信号のフィルタリングされたバージョンの回帰に基づいて周期的な動きの基本周波数の推定値を決定することは、位相信号のフィルタリングされたバージョンの位相角の傾きを決定することを含む可能性がある。
【0024】
無関係な反射のうちの1又は2以上は、環境内の1又は2以上の物体に対応する可能性がある。1又は2以上の物体は、動いている可能性がある。1又は2以上の物体は、周期的に動いている可能性がある。1又は2以上の物体は、ファンを含む可能性がある。1又は2以上の物体は、動かない可能性がある。1又は2以上の物体は、振動している可能性がある。1又は2以上の物体の振動は、周期的である可能性がある。反射の距離に従っていくつかの反射のうちの無関係な反射を削除することは、いくつかの対象の周期的な動作の抽出を同時に可能にする可能性がある。反射の距離に従っていくつかの反射のうちの無関係な反射を削除することは、人間の1又は2以上の異なる体の部位からの反射を除去することを可能にする可能性がある。
【0025】
1又は2以上の異なる体の部位は、四肢を含む可能性がある。反射の距離に従っていくつかの反射のうちの無関係な反射を削除することは、人間の体の上の1又は2以上の異なる物体からの反射を除去することを可能にする可能性がある。1又は2以上の異なる物体は、腕時計、携帯電話、及び宝飾品を含む身につけられる物体を含む可能性がある。処理された後、さまざまな人間の体の部位からの受信される信号は、より正確に1又は2以上の周期的な動きの基本周波数の推定値を得るために組み合わされる可能性がある。
【0026】
別の態様においては、概して、1又は2以上の対象からの信号の反射を使用して対象の1又は2以上の周期的な動きを監視するためのコンピュータによって実装されるシステムが、上述のステップの一部又はすべてを実行するようにプログラミングされたプロセッサを含む。
【0027】
態様は、以下の特徴のうちの1又は2以上を含み得る。
【0028】
システムは、送信される信号を発するための送信機及び受信される信号を受信するための受信機を含む可能性がある。
【0029】
別の態様においては、概して、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェアが、上述のステップの一部又はすべてをプロセッサに実行させるための命令を含む。
【0030】
態様は、以下の利点のうちの1又は2以上を含む可能性がある。
【0031】
態様は、対象が監視デバイスと物理的に接触していることを必要とせずに呼吸数及び心拍数などのバイタルサインの連続的な監視を可能にする。デバイスが身につけられる必要がないので、年配の対象は、監視デバイスによって煩わされた又は恥ずかしい思いをさせられたと感じる可能性がより低い。さらに、一部の対象(例えば、認知症の対象)が、デバイスを身につけることを憶えている必要がない。子供が、デバイスを取り外し、置き忘れ得ない。幼児又は敏感な肌を持つ者が、デバイスのせいで皮膚がひりひりすることがない。
【0032】
バイタルサイン監視システムの非侵襲的性質のおかげで、対象は、(家にいる間でさえ)連続的に監視され、対象のバイタルサインがそれらの対象のストレスのレベルとどのように相関し、時間及び年齢とともにどのように発達するのかを健康管理の専門家が調査することを可能にすることができる。
【0033】
態様は、リストバンドなどの特定の通常の快適なテクノロジーよりも正確に心拍数などのバイタルサインを監視する。
【0034】
態様は、複数の対象のバイタルサインを同時に監視することができる。
【0035】
態様は、無関係な動きの存在下で対象のバイタルサインを監視することができる。
【0036】
態様は、対象がデバイスの方を向いてベッドの上にじっと横になることを必要としない。
【0037】
態様は、ユーザがデバイスから8メートル離れているか又は異なる部屋にいるときでさえも99%の中央値の正確さ(median accuracy)で対象の呼吸数及び心拍数を追跡することができる。
【0038】
態様は、対象がデバイスから1m離れているとき、99.3%の呼吸の中央値の正確さ及び98.5%の心拍数の中央値の正確さを有する。態様は、対象がデバイスから8m離れているとき、98.7%の呼吸の中央値の正確さ及び98.3%の心拍数の中央値の正確さを有する。
【0039】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の説明及び請求項から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
1 システムの概要
図1を参照すると、バイタルサイン監視システム100は、1又は2以上の対象とバイタルサイン監視システム100との間のいかなる物理的接触も必要とせずに1又は2以上の対象102a、102bのバイタルサイン(例えば、呼吸数及び心拍数)を監視する。バイタルサイン監視システム100は、送信アンテナ104、受信アンテナ106、及び信号処理サブシステム108を含む。一部の例においては、単一の受信アンテナ及び単一の送信アンテナを有するのではなく、システム100は複数の受信アンテナ及び/又は複数の受信アンテナを含むことに留意されたい。しかし、バイタルサイン監視システムの説明を簡単にするために、以下の説明は、単一の受信アンテナ/単一の送信アンテナの実施形態についてのみ述べる。
【0042】
概して、バイタルサイン監視システム100は、送信アンテナ104からシステム100の周囲の環境内に低電力ワイヤレス信号を送信する。送信された信号は、(環境内の壁及び家具などのその他の物体の中の)1又は2以上の対象102a、102bから反射し、それから、受信アンテナ106によって受信される。受信された反射された信号は、1又は2以上の対象102a、102bに関する呼吸数及び心拍数の解析結果110を決定するために信号処理サブシステム108によって処理される。
【0043】
システム100は、息を吸うこと及び息を吐くことによる胸の動作並びに心拍による皮膚の振動を含む環境内の動きによってワイヤレス信号の特徴が影響を受けるという事実を利用する。特に、対象が呼吸するとき、及びそれらの対象の心臓が脈動するとき、システム100のアンテナと対象102a、102b(例えば、対象の胸)との間の距離が変化する。一部の例において、システム100は、送信アンテナ104及び受信アンテナ106に関して導出された飛行時間(TOF,time-of-flight)(「往復時間」とも呼ばれる)情報を使用してシステムのアンテナと対象102a、102bとの間の距離を監視する。
【0044】
例えば、
図1においては、それぞれ、2つの代表的な対象102a及び102bから反射する送信アンテナ104と受信アンテナ106との間の2つの経路112a及び112bが、示される。不変の信号伝播速度c(すなわち、光速)を仮定して、座標(x
O,y
O,z
O)の対象から反射し、座標(x
r,y
r,z
r)の受信アンテナにおいて受信された座標(x
t,y
t,z
t)の送信アンテナからのTOFは、
【0046】
のように表され得る。この場合、アンテナの単一のペアによって、経路112a、112bの各々に関連するTOFは、それぞれの対象の位置を、経路の送信アンテナ及び受信アンテナの三次元座標とTOFから決定される経路の距離とによって画定される楕円体上にあるように拘束する。説明のために、経路112a、112bの各々に関する楕円体の一部が、楕円の線114a、114bを使用して描かれる。
【0047】
下でより詳細に説明されるように、異なる楕円体上にいる2つの異なる対象(すなわち、アンテナから異なる距離にいる2つの対象)に関連するすべての動作は、分離され、別々に解析され得る。
【0048】
上述のように、対象102a、102bの各々に関して、送信アンテナ及び受信アンテナのペアからの楕円体の距離は、息を吸うこと及び息を吐くことによる対象の胸の動作並びに心拍による皮膚の振動とともに変わる。アンテナ104、106と対象との間の変化する距離は、送信され、反射された信号から導出される信号の経時的な位相の変化として、反射された信号においてはっきりと示される。概して、バイタルサイン監視システム100は、送信され、反射された信号からこの位相の変化を表す信号を抽出し、位相の変化の信号を処理して1又は2以上の対象のバイタルサインを決定する。
【0049】
2 信号処理サブシステム
信号処理サブシステム108は、信号ジェネレータ116、コントローラ118、周波数シフトモジュール120、位相信号抽出モジュール122、及び位相信号解析モジュール124を含む。
【0050】
コントローラ118は、送信アンテナ104から発せられる信号パターンの繰り返しを生じさせるように信号ジェネレータ116を制御する。
図1の実施形態において、信号ジェネレータ116は、超広帯域周波数変調搬送波(FMCW,frequency modulated carrier wave)ジェネレータ116である。その他の実施形態においては、以下で説明される信号パターン及び帯域幅以外の信号パターン及び帯域幅が、説明される実施形態のその他の態様に従いながら使用され得ることを理解されたい。
【0051】
送信アンテナ104から発せられた信号パターンの繰り返しは、環境内の対象102a、102b及びその他の物体から反射し、受信アンテナ106において受信される。受信アンテナ106によって受信された反射された信号は、FMCWジェネレータ116によって生じさせられた送信された信号と一緒に周波数シフトモジュール120に提供される。周波数シフトモジュール120は、(例えば、信号を乗算することによって)送信された信号に応じて受信された信号を周波数シフト(例えば、「ダウンコンバート」又は「ダウンミックス」)し、(例えば、高速フーリエ変換(FFT,Fast Fourier Transform)によって)周波数シフトされた受信された信号を周波数領域の表現に変換し、周波数の離散的な組ωにおける周波数シフトされた受信された信号の周波数領域の表現S(ω)
iをもたらす。
【0052】
周波数シフトされた信号の周波数領域の表現S(ω)
iは、S(ω)
i)を処理してN個の位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)を抽出する位相信号抽出モジュール122に提供される。例えば、
図4に示されるN=2個の出力φ
A(t)、φ
B(t)を参照されたい。一部の例において、1又は2以上の位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)の各々は、位相抽出モジュール122が動き(例えば、対象のうちの1人の胸の動き)を検出した環境内の楕円体のうちの1つに対応する。
【0053】
1又は2以上の位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)は、1又は2以上の位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)の各々を処理して呼吸数及び心拍数解析結果110を決定する位相信号解析モジュール124に提供される。
【0054】
2.1 周波数シフト
図2Aを参照すると、周波数シフトモジュール120によって受信される送信信号は、継続時間Tの一連の繰り返し時間間隔212を含む。時間間隔の各々に関して、送信周波数が、実線210によって示されるように、周波数範囲にわたって掃引される。一部の実施形態において、周波数範囲は、2.5ミリ秒の掃引継続時間及び繰り返しレートで5.46〜7.25GHz(つまり、約1.8GHzの周波数範囲)である。周波数シフトモジュール120が受信アンテナ106から受け取る受信信号は、信号のTOF222だけ遅延され(つまり、単一の物体から反射されたときの)、破線220に示される周波数を有する送信信号のバージョンである。TOF222は、TOFと、送信アンテナに関する掃引される搬送波の周波数の変化の率との積である、送信周波数及び受信周波数の差224に対応することに留意されたい。
【0055】
図2Bを参照すると、受信された反射された信号(
図2Aの破線220)が送信された信号(
図2Aの実線210)に応じてシフトされた周波数である場合、結果は、TOFに対応する周波数差224に集中されたエネルギーを有する。(我々は、図において誇張されている間隔212のエッジを無視していることに留意されたい)。
図1の周波数シフトモジュール120(「ダウンコンバータ」又は「ミキサ」とも呼ばれる)は、周波数シフトを実施し、例えば、送信された信号によって受信された信号を変調する変調器を含み、環境の物理的な寸法にふさわしいTOFの継続時間を表す低い周波数範囲を維持する。
【0056】
周波数シフタの出力は、それぞれが異なるTOFに関連する周波数成分を分けるためにスペクトル解析(例えば、フーリエ変換)にかけられる。この実施形態においては、周波数シフタの出力が、サンプリングされ、高速フーリエ変換(FFT)として実装される離散時間フーリエ変換が、各間隔212に関して計算される。FFTのそれぞれの複素数値が、周波数解像度Δf = 1/T
sweepの周波数サンプルを与え、ここで、T
sweepは、掃引継続時間(例えば、2.5ミリ秒)である。
【0057】
引き続き
図2Bを参照して、周波数上の(及びTOF上の等価な)エネルギーの分散は図に示されるように概して集中されていないことを認識されたい。むしろ、環境内の反射物体からの反射の重ね合わせから生じるエネルギーの分散が存在する。
【0058】
2.2 位相信号の抽出
図3を参照すると、各時間間隔に関するFFT出力S(ω)
iが、位相信号抽出モジュール122に提供される。位相信号抽出モジュール122は、各FFT出力S(ω)
iを処理して、対象102a、102bの呼吸及び心拍が原因であるシステム100の環境内の動作にそれぞれが対応するN個の位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)を抽出する。
【0059】
概して、位相信号抽出モジュール122によって受け取られる各FFT出力S(ω)
iは、集中されたエネルギーの1又は2以上の領域を含む。集中されたエネルギーのそれぞれの個々の領域は、受信アンテナ106において受信される信号内の反射に対応するので「反射」と呼ばれることがある。一部の反射は、直接的であり、経路が、反射する物体と送信アンテナ及び受信アンテナとの間で直接的である。その他の反射は、特定の反射する物体を経由して送信アンテナから受信アンテナに至る複数の経路が存在するマルチパス効果を呈する。一部のマルチパス効果は、送信された信号が環境内の壁、家具、及びその他の動かない物体から反射されることが原因である。これらの種類のマルチパス効果は、静的マルチパス効果(static multipath effect)と呼ばれる。
【0060】
位相信号抽出モジュール122は、静的マルチパス削除モジュール334、バッファ333、位相信号決定モジュール336、及び周期的位相信号特定モジュール338を含む。
【0061】
2.2.1 静的マルチパスの削除
一部の例において、FFT出力S(ω)
iは、まず、FFT出力の1又は2以上の既に受信された値335(例えば、j時間間隔又は掃引前に受信されたS(ω)の値、S(ω)
i−j)と一緒に静的マルチパス削除モジュール334に提供される。静的マルチパス削除モジュール334は、時間差分手法を使用して、S(ω)
i及びS(ω)
iの1又は2以上の既に受信された値335を処理して、静的マルチパス効果を削除する。静的マルチパス削除モジュール334によって使用される時間差分手法は、動く物体の反射を、家具及び壁のような、環境内の動かない物体からの反射と区別する。特に、壁及び家具からの反射は、特に人間が壁の後ろにいる場合、人間からの反射よりもずっと強い。これらの反射は、削除されないと、人間から来る信号を隠し、その人間の動きを感知することを妨げる。この挙動は、「フラッシュ効果(Flash Effect)」と呼ばれる。
【0062】
動かない物体(壁、家具)からの反射を削除するために、静的マルチパス削除モジュール334は、これらの反射体が動かないためにアンテナアレイまでのこれらの反射体の距離が経時的に変化せず、したがって、これらの反射体の引き起こされる周波数シフトが時間が経っても一定であるという事実を利用する。各掃引窓(sweep window)S(ω)
iに関して、静的マルチパス削除モジュール334は、1又は2以上の以前の掃引の出力(例えば、S(ω)
i−j)から所与の掃引のS(ω)
iの(複素)出力を差し引くことによって静的な反射体からの電力を除去する。このプロセスは、背景のすべての静的な反射体を除去するので、背景除去(background subtraction)と呼ばれる。一部の実施形態においては、j=1であり、直前の掃引のFFT出力S(ω)
i−1が、現在のFFT出力S(ω)
iから差し引かれる。その他の例においては、jが、以前のFFT出力が小さな時間遅延(すなわち、2.5ミリ秒前)を使用して選択されるように選択され、一方、その他の実施形態においては、より大きな時間遅延が、使用される可能性がある(例えば、12.5ミリ秒、又は2.5秒のように1秒を超えることさえあり得る)。
【0063】
静的マルチパス削除モジュール334によって実行された背景除去プロセスの結果は、実質的に環境内の動く物体に対応する反射のみを含む、静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
iである。
【0064】
2.2.2 位相信号の抽出
それから、静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
iは、いくつか(すなわち、M個)の以前の静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i、S’(ω)
i−1、S’(ω)
i−2、...、S’(ω)
i−Mを記憶するバッファ333に提供される。一部の例において、Mの値は、バッファ333が受信アンテナ106によって受信された信号の予め決められた量の時間(例えば、30秒)を表すように選択される。一部の例において、バッファ333は、新しい結果S’(ω)
iを受け取ると、新しい結果S’(ω)
iをバッファ333の頭にプッシュし、最も古い結果S’(ω)
i−Mをバッファ333の末尾から追い出す先入れ先出し(FIFO,first-in-first-out)バッファである。
【0065】
バッファ333内のM個の静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i、S’(ω)
i−1、S’(ω)
i−2、...、S’(ω)
i−Mは、M個の静的マルチパスのないFFT出力(の実質的にすべて)内に存在するK個の反射を特定する位相信号決定モジュール336に提供される。例えば、
図4のK=3個の反射A、B、及びCを参照されたい。そして、位相信号決定モジュール336は、特定された反射の各々に関する「位相信号」
【0068】
概して、K個の特定された反射の各々は、M個の静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i、S’(ω)
i−1、S’(ω)
i−2、...、S’(ω)
i−Mのすべての中の同じFFTビン内にある。一部の例においては、K個の特定された反射のうちの第kの反射に関して、位相信号決定モジュール336が、M個の静的マルチパスのないFFT出力すべてに繰り返し適用され、それぞれの静的マルチパスのないFFT出力に関して、第kの反射に関連するFFTビンにおける位相角を決定する。まとめると、第kの反射に関する結果として得られるM個の位相角が、反射に関する位相の時間進行、又は位相信号
【0071】
第kの反射に関する位相信号は、以下、すなわち、
【0073】
のように、送信アンテナ104から信号が反射される動く物体に行き、受信アンテナに返ってくるまでの距離に関連付けられ、ここで、λは、送信された信号の波長(例えば、4.5cm)であり、d(t)は、デバイスから反射体に行き、デバイスに戻ってくるまでの移動距離である。つまり、息を吸うこと、息を吐くこと、及び心拍が原因である信号によって移動される距離の変化が、反射された信号の位相の結果として生じる変化を測定することによって特定され得る。
【0074】
2.2.3 非周期的反射の削除
一部の例においては、静的マルチパスの削除後に残っているあらゆる反射が、対象の呼吸数及び心拍数に対応するとは限らない。例えば、特定の反射が、対象がタイピングすること、それらの対象の足を動かすこと、又は歩くことなどの四肢の動きに対応する可能性がある。周期的信号特定モジュール338は、対象の呼吸数及び心拍数に対応する反射とその他の種類の動作に対応する反射とを区別する。そのような区別をするために、周期的信号特定モジュール338は、バイタルサインに対応する反射の位相信号が周期的である一方、その他の種類の動作に対応する反射の位相信号は概して非周期的であるという事実を利用する。
【0075】
この目的で、周期的信号特定モジュール338は、位相信号決定モジュール336から出力されたK個の位相信号
【0077】
を受け取り、K個の位相信号を処理して、非周期的であるK個の位相信号のいずれかを削除する。周期的信号特定モジュール338の出力は、N個の周期的な位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)を含む。
【0078】
一部の例においては、N個の周期的な位相信号を特定するために、周期的信号特定モジュール338が、K個の位相信号の各々を処理して、位相信号の周期性の測定値を決定する。所与の位相信号の測定された周期性が予め決められた閾値を超えている場合、周期的信号特定モジュール338は、N個の周期的な位相信号の組に所与の位相信号を含め、そうでない場合、所与の位相信号は、N個の周期的な位相信号の組に含まれない。
【0079】
一部の例においては、所与の位相信号の周期性を測定するために、周期的信号特定モジュール338が、位相信号のフーリエ変換(例えば、FFT)を計算し、それから、信号のFFTの鮮明さ(sharpness)を評価する。位相信号のFFTの鮮明さを評価するために、周期的信号特定モジュール338は、まず、位相信号のFFTのピーク値を特定する。特定されたピーク値に関連する電力が残りのピークでない周波数における平均電力よりも十分に大きい(つまり、予め決められた閾値を超えている)場合、所与の位相信号が、周期的な信号として特定される。そうでない場合、所与の位相信号は、非周期的な信号として特定される。周期的であると特定される任意の位相信号のスペクトル表現が、周期的信号特定モジュール338によって出力されるN個の周期的な位相信号に含まれる。
【0080】
一部の例において、上述のように位相信号の周期性を測定することは、対象が大きな四肢の動作を行う時間間隔がバイタルサインの解析から除外されることをさらに保証する。しかし、対象がラップトップコンピュータでタイピングすること又は携帯電話を使用することなどの小さな動作を実行している時間間隔は、引き続きバイタルサインの解析のために解析され得る。特に、そのような小さな動作は非周期的である可能性があるが、それらの小さな動作の電力は対象のバイタルサインが原因である反復的動作を埋没させないので、それらの小さな動作は呼吸数又は心拍数を隠さない。
【0081】
それから、N個の周期的な位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)は、位相信号抽出モジュール122から出力される。例えば、
図4に示されるN=2個の出力φ
A(t)、φ
B(t)を参照されたい。
【0082】
2.2.4 例
図4を参照すると、位相信号抽出モジュール122の動作の例が、集中されたエネルギーのいくつかの領域490(すなわち、反射)を含む例示的なFFT出力S(ω)
i488に関して示される。概して、集中されたエネルギーの領域332の各々は、受信アンテナ106において受信される信号内の反射に対応する。例示的なFFT出力S(ω)
i488においては、(A、B、及びCとラベル付けされた)集中されたエネルギーの領域のうちの3つが、環境内に存在する動く物体が原因である反射に対応する。この例において、反射A及びBは、環境内の対象102a、102bの周期的なバイタルサインの動作が原因であり、反射Cは、環境内の非周期的な動作が原因である。
【0083】
例示的なFFT出力S(ω)
iは、始めに、例示的なFFT出力S(ω)
iの1又は2以上の以前の値(例えば、S(ω)
i−j)と一緒に静的マルチパス削除モジュール334に提供される。静的マルチパス削除モジュール333は、上述の背景除去技術を用いて、例示的なFFT出力S(ω)
iから静的マルチパス効果が原因であるすべての反射を削除し、静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i492をもたらす。この例において、静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i492は、環境内の動く物体に対応するA、B、及びCとラベル付けされた反射のみを含む。
【0084】
静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i492は、静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i492を、静的マルチパス削除モジュール334のM-1個の以前の出力と一緒に記憶するバッファ333に提供される。バッファリングされた静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i、S’(ω)
i−1、S’(ω)
i−2、...、S’(ω)
i−M494は、バッファリングされた静的マルチパスのないFFT出力S’(ω)
i、S’(ω)
i−1、S’(ω)
i−2、...、S’(ω)
i−M494内の反射の各々に関する位相信号を抽出する位相信号決定モジュール336に提供される。バッファリングされた静的マルチパスのないFFT出力494内に3つの反射(すなわち、A、B、及びC)が存在するので、位相信号決定モジュール336の出力は、3つの位相信号
【0088】
のグラフ496は、呼吸動作が原因である位相信号の実質的に正弦曲線状の変化を示す。対象の心拍動作が原因である位相信号内の小さな乱れが、呼吸動作の実質的に正弦曲線状の変化によって変調される。
【0091】
は、位相信号の各々を解析して、その位相信号が周期的であるかを判定し、それから、周期的な位相信号のみを出力する非周期的信号削除モジュール338に提供される。上述のように、Cは非周期的な信号であるので、非周期的信号削除モジュール338の出力は、φ
A(t)、φ
B(t)のみを含む。
【0092】
2.3 位相信号の解析
図4に示されるように、対象の呼吸及び心拍が原因で変わる位相信号は、対象の息を吸う動き及び息を吐く動きにそれぞれ対応する位相の大きなピーク及び谷を含む。また、位相信号は、対象の心拍が原因である大きなピーク及び谷に変調されたより小さな乱れを含む。
【0093】
図5を参照すると、N個の周期的な位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)は、N個の周期的な位相信号を処理して、N個の周期的な位相信号の各々に関する推定された呼吸数464及び推定された心拍数466を決定する(
図1に示された)位相信号解析モジュール124に提供される。
【0094】
一部の例において、位相信号解析モジュール124は、高速フーリエ変換(FFT)モジュール460、呼吸数推定モジュール462、及び心拍数推定モジュール463を含む。N個の周期的な位相信号φ
1(t)、φ
2(t)、...、φ
N(t)は、まず、N個の周期的な位相信号の各々に関する離散時間フーリエ変換を効率的に計算し、N個のFFT出力Φ
1(ω)、Φ
2(ω)、...、Φ
N(ω)をもたらすFFTモジュール460に提供される。一部の例においては、FFTモジュール460が位相信号のFFTを計算する前に、位相信号にハニング窓関数などの窓関数が適用される。そのような窓関数の適用は、位相信号に関するFFT出力内の隣接するビンへの強い周波数の望ましくない漏れを削減する。
【0095】
N個のFFT出力Φ
1(ω)、Φ
2(ω)、...、Φ
N(ω)は、呼吸数推定モジュール462及び心拍数推定モジュール463に提供される。
【0096】
2.3.1 呼吸数の推定
図6を参照すると、呼吸数推定モジュール462は、N個のFFT出力Φ
1(ω)、Φ
2(ω)、...、Φ
N(ω)を受け取り、N個のFFT出力を処理してN個の推定された呼吸数464を決定する。
【0097】
一部の例において、呼吸数推定モジュール462は、ピーク検出モジュール668、周波数領域フィルタリングモジュール670、逆高速フーリエ変換(FFT)モジュール672、位相傾き推定モジュール674、及び呼吸数推定値計算モジュール676を含む。
【0098】
所与のFFT出力Φ
m(ω)を処理するために、FFT出力は、まず、ピークエネルギー値を有するFFT出力Φ
m(ω)内のFFTビンを特定するピーク検出モジュール668に提供される。特定されたFFTビンは、対象の呼吸数の最初の粗い推定値である周波数に関連付けられる。しかし、単にFFT出力のピークに関連する周波数を選択することは、FFT出力の周波数解像度が1/窓サイズであるので、呼吸数の正確な推定値を与えない。窓サイズが例えば30秒である場合、対象の呼吸数の最初の推定値の解像度は≒0.033Hz(すなわち、2呼吸/分)である。もちろん、より細かい解像度が望ましい。
【0099】
単一の支配的な周波数がFFT出力Φ
m(ω)内に存在する(つまり、ピーク検出モジュール668によって特定されたピーク値に関連する周波数に)ので、より細かい解像度は、FFT出力Φ
m(ω)に関連する複素時間領域信号の位相に対して回帰(例えば、線形回帰)を実行することによって得られる可能性がある。そのようにするために、特定されたピークFFTビン及びFFT出力Φ
m(ω)は、特定されたピークFFTビン及び特定されたピークFFTビンに隣接する2つのFFTビンを除いてFFT出力Φ
m(ω)のすべてのビンを除去する周波数領域フィルタリングモジュール670に提供される。周波数領域フィルタリングモジュール670の出力は、フィルタリングされたFFT出力
【0101】
である。一部の例において、周波数領域フィルタリングモジュール670によって実行されるフィルタリングは、無関係で非周期的な動作によって引き起こされた雑音を除去する。
【0104】
は、逆FFTを実行して、フィルタリングされたFFT出力
【0108】
を得る逆FFTモジュール672に提供される。それから、複素時間領域信号
【0112】
の傾きを計算する位相傾き推定モジュール674に提供される。
【0118】
のように1分あたりの呼吸に換算して粒度の細かい推定された呼吸数464を決定する呼吸数推定値計算モジュール676に提供され、ここで、因子60は、周波数をHz(すなわち、1/秒)から呼吸/分に変換する。
【0119】
2.3.2 心拍数の推定
図7を参照すると、心拍数推定モジュール463は、N個のFFT出力Φ
1(ω)、Φ
2(ω)、...、Φ
N(ω)を受け取り、N個のFFT出力を処理してN個の推定された心拍数464を決定する。
【0120】
心拍数推定モジュール463の動作を理解するために、通常の呼吸数が8〜20呼吸/分の範囲内であり、通常の心拍数が40〜200心拍/分の範囲内であることを理解することが助けになる。したがって、FFT出力Φ
m(ω)のうちの所与の1つに関する心拍数の推定値を計算する1つの手法は、単純に、40〜200心拍/分の通過帯域を有する帯域通過フィルタを信号に(又は信号のスペクトル表現に)適用することである。しかし、そのようにする際の課題は、FFT出力Φ
m(ω)に関連する位相信号の呼吸の成分が位相信号の心拍数の成分よりも概してずっと強いことである。さらに、呼吸の成分は、単純な正弦曲線ではない。呼吸の成分は、単純な正弦曲線ではないので、基本周波数f
breathingの基本成分、及び調波周波数2×f
breathing、3×f
breathing、4×f
breathingなどのいくつかの調波を含む。
【0121】
調波の一部は、心拍数の40〜200心拍/分の周波数帯域に入り、概して、位相信号内の心拍数に関連する周波数成分よりもずっと大きな電力を有する。このため、位相信号の呼吸の成分の調波が、位相信号内の心拍数に関連する周波数成分と混同される可能性がある。
【0122】
この混同を避けるために、心拍数推定モジュール463は、基本周波数f
heartrateの心拍数の成分が調波(つまり、2×f
heartrate、3×f
heartrate、4×f
heartrateなどの)も有し、(すぐ後の調波の電力がすぐ前の調波よりも小さいので)心拍数の成分のより強い低次の調波が呼吸数の成分のより弱い高次の調波と周波数範囲内で併置されるという観察を利用する。大きな電力を有する心拍数の期待される周波数帯域(例えば、40〜200心拍/分)を超える周波数にあるすべての調波は、心拍数の成分の調波であると考えられ、下で詳細に説明されるように、心拍数の成分の基本周波数を決定するために使用され得る。
【0123】
例えば、15呼吸/分の呼吸数に関して、(大きな電力をやはり有する)位相信号内の呼吸の成分の第4次の調波は、60呼吸/分にあり、(例えば、75心拍/分の心拍数に関して)心拍数の基本成分と混同される可能性がある。しかし、位相信号内の心拍数の成分の第1次の調波(つまり、150心拍/分の)は、(呼吸の成分の第9次の調波が高次の調波であるので)非常に小さい電力である呼吸の成分の第9次の調波に近い。したがって、心拍数の調波(つまり、150心拍/分の)は、心拍数を決定するために使用され得る。
【0124】
しかし、150心拍/分がそれ自体あり得る人間の心拍数であるために、別の問題が生じる。このため、心拍数推定モジュール463は、心拍数が150心拍/分である(つまり、150心拍/分が心拍数の成分の基本周波数である)場合、又は心拍数が50心拍/分である(つまり、150心拍/分が心拍数の成分の第3次の調波である)場合でさえも、心拍数が75心拍/分である(つまり、150心拍/分が心拍数の成分の第1次の調波である)かどうかを判定する。
【0125】
そのようにするために、心拍数推定モジュール463は、心拍数の成分のより高次の(例えば、第3次の、第4次の、第5次の)調波も考慮に入れる。例えば、心拍数推定モジュール463は、心拍数の成分の高次の調波を含む位相信号の周波数帯域内のピークを特定し、特定されたピークを使用して心拍数を決定する。
【0126】
この目的で、心拍数推定モジュール463は、ピーク強調モジュール778、ピーク閾値処理モジュール780、候補基本周波数特定モジュール782、候補基本周波数クラスタリングモジュール784、及び心拍数推定値選択モジュール786を含む。
【0127】
所与のFFT出力Φ
m(ω)を処理するために、FFT出力は、まず、ピークを囲むFFTビン内に存在するすべての雑音と比較してFFT出力Φ
m(ω)の電力スペクトル内に存在するすべてのピークを強調するピーク強調モジュール778に提供される。一部の例において、ピーク強調モジュール778は、FFT出力Φ
m(ω)の各FFTビン内の電力をそのビンの隣接するFFTビンに対するそのビンの信号対雑音比(SNR)を表す値で置き換える。例えば、FFT出力Φ
m(ω)内の各FFTビンの値は、以下、すなわち、
【0129】
のように置き換えられ、ここで、adjacentFFT_binsは、関心のあるビンFFT_binの両側のビンの範囲(例えば、10個、20個、50個のビン)である。
【0130】
ピーク強調モジュール778の出力は、ピークを強調されたFFT出力
【0132】
である。ピークを強調されたFFT出力
【0134】
は、ピークを強調されたFFT出力を処理して、心拍数の成分の期待される基本周波数の範囲を超える(例えば、200心拍/分を超える)周波数範囲内にあり、予め定義されたSNRの閾値を超えるピークを強調されたFFT出力内のピークP
1、P
2、...、P
Yを特定するピーク閾値処理モジュール780に提供される。例えば、
図8のP
1、P
2、...、P
5を参照されたい。ピーク閾値処理モジュール780によって特定されるすべてのピークは、心拍数の成分の基本周波数の候補である周波数に関連付けられる。
【0135】
特定されたピークP
1、P
2、...、P
Yは、特定されたピークの各々に関して、ピークに関連する周波数が心拍数の成分に関する40〜200心拍/分の周波数範囲の整数倍の中に入る場合、ピークに関連する周波数を整数の倍数によって除算し、除算の結果を心拍数の成分の基本周波数の候補として加える候補基本周波数特定モジュール782に提供される。例えば、220心拍/分の周波数に関連する例示的なピークに関して、周波数は、[2*40〜2*200]、[3*40〜3*200]、及び[4*40〜4*200]の周波数範囲内に入る。結果として、110心拍/分(すなわち、220心拍/分/2)、73.3心拍/分(すなわち、220心拍/分/3)、及び55心拍/分(すなわち、220心拍/分/4)が、心拍数の成分の基本周波数の候補として加えられる。候補基本周波数特定モジュール782の出力は、心拍数の成分に関するX個の候補基本周波数C
1、C
2、...、C
Xの組であり、組は、特定されたピークと、候補基本周波数特定モジュール782によって決定されたすべての候補とを含む。
【0136】
X個の候補基本周波数C
1、C
2、...、C
Xの組は、候補基本周波数の組を周波数でソートする候補基本周波数選択モジュール784に提供される。そして、窓(例えば、0.8*Xの幅の矩形窓)が、候補基本周波数のソートされた組に沿ってずらされる。窓が候補基本周波数のソートされた組に沿ってずれるときのその窓の各位置に関して、クラスタ内の周波数の半径が、
半径 = f
max - f
min
のように計算され、ここで、f
maxは、クラスタ内の最も高い周波数を有する候補基本周波数であり、f
minは、クラスタ内の最も低い周波数を有する候補基本周波数である。一部の例において、半径は、クラスタ内の候補基本周波数の組がどれだけ集中しているかの指示である。概して、小さな半径を有するクラスタ内の候補基本周波数の組は、大きな半径を有するクラスタ内の候補基本周波数の組よりも良いと考えられる。
【0137】
一部の例において、各クラスタ及びその関連する半径L
1R
1、L
2R
2、...、L
ZR
Z、は、クラスタ及びそれらの関係する半径を処理して、第mの位相信号に関する推定された心拍数を決定する心拍数推定値選択モジュール786に渡される。心拍数推定値選択モジュール786は、最も小さな半径を有するクラスタを選択し、クラスタ内の中央の周波数を推定された心拍数464として選択する。一部の例において、2又は3以上のクラスタが同じ最も小さな半径を有する場合、心拍数推定値選択モジュール786は、より小さな平均周波数を有するクラスタが心拍数の基本周波数の低調波に関連付けられるので、最も高い平均周波数を有する2又は3以上のクラスタのうちのクラスタを選択する。
【0138】
一部の例において、心拍数推定値選択モジュール786は、選択されたクラスタに関する信頼性の割合を、選択されたクラスタの半径と次に良いクラスタ(すなわち、選択されたクラスタの半径に最も近い半径を有するクラスタ)の半径との比として計算する。心拍数推定値選択モジュール786は、推定された心拍数及びその信頼性の割合を、後で使用するために記憶する。それから、心拍数推定モジュール463は、ピーク閾値処理モジュール780によって使用される信号対雑音比の閾値を下げ、ピークを強調されたFFT出力
【0140】
を再び処理して別の推定された心拍数及び信頼性の割合を決定する。このプロセスは、予め定義された最小の信号対雑音比が達せられるまで、又は予め定義された信頼性の割合が達せられるまで繰り返す。
【0141】
予め定義された最小の信号対雑音比又は予め定義された信頼性の割合が達せられると、最も高い信頼性の割合を有する推定された心拍数が、FFT出力Φ
m(ω)に関する推定された心拍数として選択される。一部の例において、推定された心拍数464は、心拍数推定モジュール463から出力される。
【0142】
その他の例において、選択された推定された心拍数は、心拍数の基本周波数の粗い推定値として扱われ、さらなる処置が粗い推定値から粒度の細かい推定値を決定するために使用される。
【0143】
特に、上の呼吸数の場合と同様に、心拍数の基本周波数のより細かい解像度の推定値が、FFT出力Φ
m(ω)に関連する複素時間領域信号の位相に対して回帰(例えば、線形回帰)を実行することによって得られる可能性がある。そのようにするために、特定された粗い基本周波数の推定値に関連するFFTビン及びFFT出力Φ
m(ω)は、特定されたFFTビン及び特定されたFFTビンに隣接する2つのFFTビンを除いてFFT出力Φ
m(ω)のすべてのビンを除去する周波数領域フィルタリングモジュール(図示せず)に提供される。周波数領域フィルタリングモジュールの出力は、フィルタリングされたFFT出力
【0145】
である。一部の例において、周波数領域フィルタリングモジュールによって実行されるフィルタリングは、無関係で非周期的な動作によって引き起こされた雑音を除去する。
【0148】
は、逆FFTを実行して、フィルタリングされたFFT出力
【0152】
を得る逆FFTモジュール(図示せず)に提供される。それから、複素時間領域信号
【0156】
の傾きを計算する位相傾き推定モジュール(図示せず)に提供される。
【0162】
のように1分あたりの心拍に換算して粒度の細かい推定された心拍数を決定するために使用され、ここで、因子60は、周波数をHz(すなわち、1/秒)から心拍/分に変換する。
【0163】
2.3.2.1 心拍数の推定の例
図8を参照すると、例示的なFFT出力Φ
m(ω)に関するピークを強調されたFFT出力
【0165】
のグラフが、20呼吸/分の基本的な呼吸数の周波数、及び20呼吸/分の整数倍のいくつかの調波の呼吸数の周波数(すなわち、40呼吸/分、60呼吸/分、80呼吸/分など)にピークを含む。また、グラフは、85心拍/分の基本的な心拍数の周波数、及び85心拍/分の整数倍のいくつかの調波の周波数(すなわち、170心拍/分、225心拍/分、340心拍/分など)にピークを含む。
【0168】
は、ピークを強調されたFFT出力に閾値898を適用して、心拍数の成分の期待される基本周波数の範囲を超える(つまり、200心拍/分を超える)周波数範囲内にあり、予め定義されたSNRの閾値898を超えるピークを強調されたFFT出力内のピークを特定する
図7のピーク閾値処理モジュール780に提供される。この例においては、心拍数の成分の期待される基本周波数の範囲を超える周波数範囲内にあり、予め定義されたSNRの閾値898を超える5つのピークP
1、P
2、...、P
5が存在する。P
1は、255心拍/分の周波数にある。P
2は、340心拍/分の周波数にある。P
3は、425心拍/分の周波数にある。P
4は、510心拍/分の周波数にある。P
5は、595心拍/分の周波数にある。
【0169】
5つの特定されたピークP
1、P
2、...、P
5は、特定されたピークの各々に関して、ピークに関連する周波数が心拍数の成分に関する40〜200心拍/分の周波数範囲の整数倍の中に入る場合、ピークに関連する周波数を整数の倍数によって除算し、除算の結果を心拍数の成分の基本周波数の候補として加える候補基本周波数特定モジュール784に提供される。この例においては、255心拍/分にあるP
1関して、候補周波数127.5、85、63.75、51、42.5が、心拍数の成分の基本周波数の候補として加えられる。340心拍/分の周波数にあるP
2関して、候補周波数170、113.3、85、68、56.7、48.6、42.5が、心拍数の成分の基本周波数の候補として加えられる。425心拍/分の周波数にあるP
3関して、候補周波数141.7、106.25、85、70.8、60.7、53.1、47.2、42.5が、心拍数の成分の基本周波数の候補として加えられる。510心拍/分の周波数にあるP
4関して、候補周波数170、127.5、102、85、72.9、63.8、56.7、51、46.3、42.5が、心拍数の成分の基本周波数の候補として加えられる。595心拍/分の周波数にあるP
5関して、候補周波数198.3、148.8、119、99.2、85、74.4、66.1、59.5、54.1、49.6、45.8、42.5が、心拍数の成分の基本周波数の候補として加えられる。
【0170】
図9を参照すると、決定された心拍数の成分の基本周波数の候補C
1、C
2、...、C
Xの組は、候補基本周波数の組を周波数でソートする候補基本周波数クラスタリングモジュール784に提供される。そして、窓(すなわち、4候補の幅の矩形窓)が、候補基本周波数のソートされた組に沿ってずらされる。窓の各位置に関して、窓(すなわち、クラスタ)内の周波数の半径が、
半径 = f
max - f
min
のように計算され、ここで、f
maxは、クラスタ内の最も高い周波数を有する候補基本周波数であり、f
minは、クラスタ内の最も低い周波数を有する候補基本周波数である。例えば、窓999が第1の位置951にあるとき、クラスタの半径はゼロに等しい。窓999が第2の位置953にあるとき、クラスタの半径は0に等しい。窓999が第3の位置955にあるとき、クラスタの半径は3.3に等しい。窓999が第4の位置957にあるとき、クラスタの半径は3.8に等しい。
【0171】
図10を参照すると、窓999が候補基本周波数のソートされた組に沿ってずれるときの半径のグラフ1061が、半径が最小である2つの周波数、すなわち、42.5心拍/分及び85心拍/分を含む。
【0172】
候補基本周波数クラスタリングモジュール784によって決定されたクラスタ及び関連する半径は、最も小さな半径を有するクラスタを、心拍数に関する基本周波数を含むクラスタであるものとして選択する心拍数推定値選択モジュール786に提供される。この場合、2又は3以上のクラスタが同じ最も小さな半径(すなわち、0)を有するので、心拍数推定値選択モジュール786は、最も小さな平均周波数を有するクラスタが心拍数の基本周波数の低調波に関連付けられるので、最も高い平均周波数を有する2又は3以上のクラスタのうちのクラスタを選択する。選択されたクラスタの中央の周波数(すなわち、85心拍/分)が、心拍数の基本周波数として選択され、Φ
m(ω)に関する推定された心拍数464として出力される。
【0173】
上述のように、一部の例において、心拍数推定値選択モジュール786は、選択されたクラスタに関する信頼性の割合を、選択されたクラスタの半径と次に良いクラスタの半径との比として計算する。心拍数推定値選択モジュール786は、推定された心拍数及びその信頼性の割合を、後で使用するために記憶する。それから、心拍数推定モジュール463は、ピーク閾値処理モジュール780によって使用される信号対雑音比の閾値を下げ、ピークを強調されたFFT出力
【0175】
を再び処理して別の推定された心拍数及び信頼性の割合を決定する。このプロセスは、予め定義された最小の信号対雑音比が達せられるまで、又は予め定義された信頼性の割合が達せられるまで繰り返す。
【0176】
3 代替形態
一部の例において、位相信号の心拍の成分の調波を解析するのではなく、心拍数推定モジュールは、フィルタに基づく手法を用いて心拍数に関する推定値を決定する。例えば、心拍数推定モジュールは、位相信号の心拍の成分が存在すると考えられる周波数範囲(例えば、40〜200心拍/分)内の通過帯域を有する帯域通過フィルタを使用して位相信号をフィルタリングする。フィルタリングされた位相信号のFFTが計算され、FFT出力内のピークが特定される。一部の例において、FFT出力の絶対的な最大は、位相信号の呼吸の成分からの漏れが原因であるので、特定されたピークとして選択されないことに留意されたい。そして、特定されたピークに対応するFFTビン及び特定されたピークに対応するFFTビンに隣接する2つのFFTビン内の信号の逆FFTが、計算される。そのとき、位相の回帰が、(呼吸数の推定値に関して行われたように)心拍数の推定値を決定するために使用される。
【0177】
上の説明は単一のアンテナペアがどのように使用されるかを説明するが、いくつかのアンテナペアがシステムの性能を改善するために使用され得ることが留意される。例えば、いくつかの受信アンテナにおいて受信された信号が、反射体の厳密な位置を決定するためにさまざまな方法で組み合わされる可能性があり、反射体に関するより鮮明で雑音の少ない位相信号を得るために組み合わされる可能性がある。一部の実施形態においては、別個の位相信号が、アンテナの各ペアから得られ、スペクトルのピークが、アンテナの各ペアに関して特定され、いくつかのペアのピークが、基本周波数を推定するために組み合わされ、例えば、すべてのペアが、一緒に票決する。その他の実施形態において、アンテナの異なるペアが、組み合わされる別個の基本周波数の推定値を決定するために別々に処理される。
【0178】
4 実施形態
上述の技術を実装するシステムは、ソフトウェア、ファームウェア、デジタル電子回路、若しくはコンピュータハードウェア、又はそれらの組合せで実装され得る。システムは、プログラミング可能なプロセッサによって実行するために機械可読ストレージデバイス内に有形で具現化されたコンピュータプログラム製品を含む可能性があり、方法のステップは、入力データに対して演算を行い、出力を生じさせることによって機能を実行する命令のプログラムをプログラミング可能なプロセッサが実行することによって実行される可能性がある。システムは、データストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらにデータ及び命令を送信するために接続された少なくとも1つのプログラミング可能なプロセッサを含むプログラミング可能なシステム上で実行可能な1又は2以上のコンピュータプログラムに実装される可能性がある。各コンピュータプログラムは、必要に応じて、高レベルの手続き型若しくはオブジェクト指向プログラミング言語、又はアセンブリ若しくは機械語で実装される可能性があり、いずれの場合も、言語は、コンパイラ型言語若しくはインタープリタ型言語である可能性がある。好適なプロセッサは、例として、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサとの両方を含む。概して、プロセッサは、読み出し専用メモリ及び/又はランダムアクセスメモリから命令及びデータを受け取る。概して、コンピュータは、データの記録を記憶するための1又は2以上の大容量ストレージデバイスを含み、そのようなデバイスは、内蔵ハードディスク及び取り外し可能なディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びに光ディスクを含む。コンピュータプログラム命令及びデータを有形で具現化するのに好適なストレージデバイスは、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスク及び取り外し可能なディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びにCD−ROMディスクを含むすべての形態の不揮発性メモリを含む。上記のいずれも、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC,application-specific integrated circuit)によって補完されるか、又はASICに組み込まれ得る。
【0179】
上記の説明は本発明の範囲を例示するように意図されており、限定するように意図されておらず、本発明の範囲は、添付の請求項の範囲によって画定されることを理解されたい。その他の実施形態は、添付の請求項の範囲内にある。