特許第6716510号(P6716510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716510
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20200622BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20200622BHJP
   G05G 1/44 20080401ALI20200622BHJP
   B60K 23/02 20060101ALN20200622BHJP
【FI】
   G05G1/30 A
   B60T7/06 D
   G05G1/44
   !B60K23/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-150883(P2017-150883)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-28938(P2019-28938A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】嘉悦 祐一郎
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−078817(JP,A)
【文献】 特開平06−190479(JP,A)
【文献】 特開平10−181630(JP,A)
【文献】 特開平11−029014(JP,A)
【文献】 特開昭53−055469(JP,A)
【文献】 特開平11−139346(JP,A)
【文献】 実開平02−080215(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
B60T 7/06
G05G 1/44
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルアームと、
前記ペダルアームにバルジ成形で固定されたボスと、
前記ボスに圧入された圧入カラーと、
前記圧入カラーの内周面に摺接するブッシュとを備えたことを特徴とする車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記圧入カラーに嵌入され、該圧入カラーとの間で前記ブッシュを装着する嵌入カラーと、
前記嵌入カラーを挟持するサポート部材とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記ボスの軸方向長さは、前記圧入カラーの軸方向長さより短いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用操作ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルアームをボスとブッシュで回動可能に支持する車両用操作ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペダルアームをボスとブッシュで回動可能に支持する車両用操作ペダル装置に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の車両用操作ペダルの支持構造では、操作ペダルはスリーブに溶接等の手段によって固着されており、このスリーブは2つのスペーサを介して支軸に回転自在に嵌合されている。この支軸の両端部にはカシメ部が形成されている。これにより、操作ペダルをブラケットに取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−123727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶接熱によってスリーブに歪みが生じることを回避するため、スリーブをバルジ成形することによって、操作ペダルにスリーブを固着させると、スリーブの内周面では、バルジ成形で形作られた凹部によって、スペーサに摺接する面積が不足するので、スペーサの面圧が均一にならない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、バルジ成形でペダルアームに固定されたボスの回動時において、ブッシュの面圧が均一である車両用操作ペダル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、車両用操作ペダル装置であって、ペダルアームと、ペダルアームにバルジ成形で固定されたボスと、ボスに圧入された圧入カラーと、圧入カラーの内周面に摺接するブッシュとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両用操作ペダル装置であって、圧入カラーに嵌入され、圧入カラーとの間でブッシュを装着する嵌入カラーと、嵌入カラーを挟持するサポート部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用操作ペダル装置であって、ボスの軸方向長さは、圧入カラーの軸方向長さより短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の車両用操作ペダル装置では、バルジ成形でペダルアームにボスが固定され、ボスに圧入カラーが圧入され、圧入カラーの内周面にブッシュが摺接する。このような構成によって、ペダルアーム、ボス、及び圧入カラーは、一体的に回動可能に支持される。圧入カラーの内周面は滑らかであることから、ペダルアーム、ボス、及び圧入カラーが一体的に回動する際は、圧入カラーの内周面に対してブッシュが一様に摺接する。そのため、請求項1に係る発明の車両用操作ペダル装置は、バルジ成形でペダルアームに固定されたボスの回動時において、ブッシュの面圧が均一である。
【0011】
請求項2に係る発明の車両用操作ペダル装置では、嵌入カラーが圧入カラーに嵌入されることによって、嵌入カラーと圧入カラーとの間にブッシュが装着される。そのような状態にある嵌入カラーをサポート部材が挟持することによって、ペダルアーム、ボス、及び圧入カラーが一体的に回動可能に支持された箇所の長さが、嵌入カラーの軸方向で一定に保持される。
【0012】
請求項3に係る発明の車両用操作ペダル装置では、ボスの軸方向長さが圧入カラーの軸方向長さより短いので、圧入カラーをボスに圧入する際に、圧入カラーとボスの相対位置を調整することによって、ペダルアームの位置をボス及び圧入カラーの軸方向で変更することが可能である。そのため、請求項3に係る発明の車両用操作ペダル装置は、車両搭載要件に対して柔軟に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の車両用操作ペダル装置の構成が表された側面図である。
図2】同車両用操作ペダル装置の支持部を図1の線A−Aで切断した断面が表された図である。
図3】同車両用操作ペダル装置の構成が表された正面図であって、支持部については図1の線A−Aで切断した断面で表された図である。
図4】同車両用操作ペダル装置の支持部の変更例を図1の線A−Aで切断した断面が表された図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用操作ペダル装置について、具体化した本実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0015】
各図において、前後方向、上下方向、及び左右方向は、各図に記載された通りである。但し、図1の側面図では、図の紙面の奥側が右方向であり、図の紙面の手前側が左方向である。図2及び図3では、各図の紙面の奥側が前方向であり、各図の紙面の手前側が後方向である。
【0016】
(1)車両用操作ペダル装置の概要
図1に表されたように、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、サポート部材12及びペダルアーム14等が備えられたものであって、不図示の車両に搭載されている。
【0017】
サポート部材12は、一対の側板等から構成されており、車両(例えば、ダッシュパネル等)に固定されている。サポート部材12には、支持部12Aが設けられている。支持部12Aでは、ボルトB及びナットN等によって、ペダルアーム14の上端部が回動可能に支持されている。尚、支持部12Aの詳細については、後述する。
【0018】
ペダルアーム14の下端部には、踏部16が設けられている。ペダルアーム14の上端部と下端部との中間においては、連結ピンP及びクレビスCを介して、後述するオペレーティングロッドRの先端部がペダルアーム14に対して回動可能に支持されている。
【0019】
(2)支持部の概要
図2に表されたように、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、サポート部材12を構成する一対の側板間において、支持部12Aが設けられている。支持部12Aでは、ボス18の一部がバルジ成形されたバルジ成形部20によって、ペダルアーム14の上端部が挟まれている。これによって、ボス18は、ペダルアーム14の上端部を貫通した状態で固定されている。
【0020】
バルジ成形部20は、ボス18の外周面ではボス18の外側へ突出しており、ボス18の内周面では凹んでいる。
【0021】
ボス18には、第1カラー22が圧入されている。これによって、ペダルアーム14、ボス18、及び第1カラー22は、一体である。第1カラー22は、その内周面が滑らかなものが使用される。
【0022】
ボス18の両端からは、第1カラー22が左右方向へ突き出ている。従って、第1カラー22は、その左右方向(つまり、軸方向)の長さがボス18よりも長い。つまり、ボス18の軸方向長さは、第1カラー22の軸方向長さよりも短い。
【0023】
第1カラー22には、その左右端から一対のブッシュBUが嵌装された状態で、第2カラー24が嵌入されている。これによって、各ブッシュBUの円筒部が、第1カラー22と第2カラー24との間に備え付けられている。
【0024】
サポート部材12を構成する一対の側板には、支持穴12Bが設けられている。各支持穴12Bは、側面視で円形状であり、第2カラー24を介して左右方向で連通した状態にある。このような状態において、ボルトBがサポート部材12の右側側板の支持穴12Bからサポート部材12の左側側板の支持穴12Bまで通される。
【0025】
サポート部材12の右側側板では、ボルトBの頭部が当接される。これに対して、サポート部材12の左側側板では、ボルトBの先端部が左方向へ突き出しており、その突き出し部分にナットNがねじ込まれる。これによって、第2カラー24の両端がサポート部材12の両側板で挟まれるので、支持部12Aの左右方向の長さが一定に保持される。更に、第1カラー22の左右端では、各ブッシュBUの円形フランジ部が、第1カラー22とサポート部材12の側板との間に備え付けられる。
【0026】
このようにして、支持部12Aでは、ペダルアーム14の上端部が回動可能に支持されており、ペダルアーム14の下端部にある踏部16に対する踏込み操作が行われると、第2カラー24(及びボルトB)を中心にしてペダルアーム14が回動する。
【0027】
つまり、通常時において、車両の運転者がペダルアーム14の踏部16を前方側へ踏み込むことによって、ペダルアーム14の踏部16に対する踏込み操作が行われると、ペダルアーム14の踏部16が支持部12A(の第2カラー24及びボルトB)を中心にして前方側へ円運動する。これに対して、ペダルアーム14の踏部16に対する踏込み操作が解除されると、不図示の付勢部材の付勢力によって、ペダルアーム14の踏部16が支持部12A(の第2カラー24及びボルトB)を中心にして後方側へ円運動する。
【0028】
このようにして、ペダルアーム14の踏部16が支持部12A(の第2カラー24及びボルトB)を中心にして円運動すると、ペダルアーム14の上端部と一体であるボス18及び第1カラー22もペダルアーム14と一緒に円運動(つまり、回動)するので、第1カラー22と第2カラー24との間に備え付けられた各ブッシュBUの円筒部は、第1カラー22の内周面に摺接する。
【0029】
尚、オペレーティングロッドRは、車両を構成するダッシュパネルの挿通穴(不図示)から後方側へ突き出しており、ペダルアーム14の踏部16に対する踏込み操作に伴って前方側へ変位すると、その踏込み操作時の操作力を、油圧回路又は電子回路等を通して、車両の運転状態を制御する制動装置又は制御装置に伝達する。
【0030】
(3)まとめ
以上詳細に説明した通り、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、ボス18の一部がバルジ成形されたバルジ成形部20でペダルアーム14の上端部にボス18が固定され、ボス18に第1カラー22が圧入され、第1カラー22の内周面に各ブッシュBUの円筒部が摺接する。このような構成によって、ペダルアーム14、ボス18、及び第1カラー22は、支持部12Aにおいて、一体的に回動可能に支持される。
【0031】
第1カラー22の内周面は滑らかであることから、ペダルアーム14、ボス18、及び第1カラー22が一体的に回動する際は、第1カラー22の内周面に対して各ブッシュBUの円筒部が一様に摺接する。そのため、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、バルジ成形でペダルアーム14に固定されたボス18の回動時において、各ブッシュBUの面圧が均一である。
【0032】
更に、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、各ブッシュBUの面圧が均一であることから、第1カラー22の左右端に嵌装される一対のブッシュBUには、円形フランジ部及び円筒部の外形寸法が同一の共通部品を使用することが可能である。
【0033】
また、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、支持部12Aにおいて、各ブッシュBUの円筒部が外接する曲面の内径精度を第1カラー22の内周面で確保しているので、ボス18の一部をバルジ成形する際の加工精度が緩和される。
【0034】
本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、第2カラー24が第1カラー22に嵌入されることによって、第2カラー24と第1カラー22の間に各ブッシュBUの円筒部が備え付けられている。そのような状態にある第2カラー24の両端は、サポート部材12の両側板で挟まれている。これによって、支持部12Aの左右方向(つまり、第2カラー24の軸方向)の長さは、一定に保持される。
【0035】
本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、ボス18の軸方向長さが第1カラー22の軸方向長さより短いので、第1カラー22をボス18に圧入する際に、第1カラー22とボス18の相対位置を調整することによって、ペダルアーム14の位置を左右方向(つまり、ボス18及び第1カラー22の軸方向)で変更することが可能である。そのため、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、車両搭載要件に対して柔軟に対応することが可能である。
【0036】
例えば、図3に表されたように、ペダルアーム14の位置を支持部12Aの端に寄せることが可能である。そのような場合には、図3の二点鎖線で表された場合(つまり、ペダルアーム14の位置が支持部12Aの中央にある場合)と比べると、ペダルアーム14のオフセット量が減り、ペダルアーム14に必要な強度が小さくなるので、ペダルアーム14の板厚・幅などを小さくすることが可能である。
【0037】
この点は、ボス18の軸方向長さと第1カラー22の軸方向長さとが、第2カラー24の軸方向長さ(つまり、支持部12Aの左右方向の長さ)と略同一の場合でも、同様である。但し、そのような場合には、ボス18にバルジ成形部20を設ける際に、ボス18におけるバルジ成形部20の位置を調整することによって、ペダルアーム14の位置を支持部12Aの左右方向(つまり、ボス18及び第1カラー22の軸方向)で変更する。
【0038】
ちなみに、本実施形態において、第1カラー22は、「圧入カラー」の一例である。第2カラー24は、「嵌入カラー」の一例である。
【0039】
(4)その他
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第2カラー24、ボルトB、及びナットNに代え、図4に表されたように、カシメピン30を使用してもよい。以下、そのような変更例について説明する。但し、以下の説明では、上記実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0040】
カシメピン30は、所定の金属材料によって軸状に形成されており、大径部32及び一対のカシメ変形部34を有している。大径部32は、カシメピン30の軸方向中央部分を構成し、円柱状に形成されている。各カシメ変形部34は、大径部32の軸方向端面から突出形成されており、カシメピン30の両端部を構成している。各カシメ変形部34は、大径部32の軸心と同軸を為している。各カシメ変形部34の軸径は、大径部32の軸径より小さい。
【0041】
カシメピン30の大径部32は、第1カラー22に嵌入される。これによって、各ブッシュBUの円筒部が、第1カラー22とカシメピン30の大径部32との間に備え付けられる。更に、カシメピン30の大径部32の軸方向端面が、サポート部材12の両側板に当接される。これに対して、カシメピン30の各カシメ変形部34は、サポート部材12の各支持穴12Bに通される。サポート部材12の両側板では、各カシメ変形部34の先端部が外側へ突き出しており、その突き出し部分がカシメ加工される。これによって、カシメピン30は、その両端でサポート部材12の両側板に固定されるので、支持部12Aの左右方向の長さが一定に保持される。
【0042】
また、本実施形態では、ブレーキペダルとして本発明が適用されているが、車両で使用される各ペダル(例えば、アクセルペダル又はクラッチペダル等)として本発明が適用されてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、ペダルアーム14に対して本発明が適用されているが、リンク式ブレーキペダルの中間レバー等に対して本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 車両用操作ペダル装置
12 サポート部材
14 ペダルアーム
18 ボス
20 バルジ成形部
22 第1カラー
24 第2カラー
BU ブッシュ
図1
図2
図3
図4