特許第6716516号(P6716516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716516
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20200622BHJP
【FI】
   H01H37/76 C
   H01H37/76 G
【請求項の数】22
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-172171(P2017-172171)
(22)【出願日】2017年9月7日
(65)【公開番号】特開2019-46767(P2019-46767A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】516119106
【氏名又は名称】Littelfuseジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】岩井 正明
(72)【発明者】
【氏名】内野 博介
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 剛
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−259569(JP,A)
【文献】 特表2014−507773(JP,A)
【文献】 特開2007−280758(JP,A)
【文献】 特開平11−329206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 − 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ターミナルと、
可動ターミナルと、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記固定ターミナルと前記可動ターミナルは、可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点部が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、この熱により前記接合材が溶融または軟化して、前記固定ターミナルと前記可動ターミナル間の接続が解除され、可動ターミナルが固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開き、
さらに第3ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルに電気的に接続され、さらに前記固定ターミナルまたは前記可動ターミナルに電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記固定ターミナルおよび/または前記可動ターミナルは、副ラインを構成し、
前記副ラインは、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルとの接点部を含み、可動ターミナルが動作することにより、主ラインと同時に副ラインも開く、保護素子。
【請求項2】
固定ターミナルと、
可動ターミナルと、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記固定ターミナルと前記可動ターミナルは、可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点部が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、この熱により前記接合材が溶融または軟化して、前記固定ターミナルと前記可動ターミナル間の接続が解除され、可動ターミナルが固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開き、
さらに第3ターミナルおよび第4ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルおよび前記第4ターミナルに電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記第4ターミナルは、副ラインを構成し、
前記可動ターミナルが、溝を有し、該溝に沿って折れ曲がることにより可動する、保護素子。
【請求項3】
さらに、圧縮バネ、引張りバネ、板バネおよびトーションバネから選択される1種またはそれ以上のバネを有し、
前記可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が、前記バネにより加えられている、請求項1または2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記バネが、トーションバネである、請求項に記載の保護素子。
【請求項5】
前記固定ターミナルおよび可動ターミナルは、少なくとも接点部が板状である、請求項1〜のいずれかに記載の保護素子。
【請求項6】
前記可動ターミナルが、溝を有し、該溝に沿って折れ曲がることにより可動する、請求項1、および3のいずれかに記載の保護素子。
【請求項7】
前記発熱体が、前記固定ターミナルの下に配置され、発熱体の上方において、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルが前記接合材により接続されている、請求項1〜のいずれかに記載の保護素子。
【請求項8】
一対の固定ターミナルと、
連結部材と、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記一対の固定ターミナルは、離隔して配置され、
前記一対の固定ターミナルの各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度が、0°以上150°以下であり、
前記連結部材は、前記一対の固定ターミナルを連結するように配置され、
前記連結部材と前記一対の固定ターミナルは、連結部材が一対の固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記連結部材と前記一対の固定ターミナルの接点が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、前記接合材が溶融または軟化して、前記連結部材と前記固定ターミナル間の接続が解除され、連結部材が固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開き、
さらに、絶縁性のスライダーを有し、
前記スライダーは、前記連結部材が前記一対の固定ターミナルから離隔した場合に、スライドし、連結部材と固定ターミナル間を物理的、電気的に離隔する、保護素子。
【請求項9】
さらに第3ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルに電気的に接続され、さらに前記固定ターミナルの少なくとも1つまたは前記連結部材に電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記固定ターミナル、または、前記第3ターミナル、前記発熱体、前記連結部材、および前記固定ターミナルは、副ラインを構成する、
請求項に記載の保護素子。
【請求項10】
前記発熱体は、前記連結部材に電気的に接続されて副ラインを構成しており、前記連結部材が前記一対の固定ターミナルから離隔することにより、主ラインと同時に副ラインも開く、請求項に記載の保護素子。
【請求項11】
さらに第3ターミナルおよび第4ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルおよび前記第4ターミナルに電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記第4ターミナルは、副ラインを構成する、
請求項に記載の保護素子。
【請求項12】
さらに、圧縮バネ、引張りバネ、板バネおよびトーションバネから選択される1種またはそれ以上のバネを有し、
前記連結部材が一対の固定ターミナルから離隔する方向の力が、前記バネにより加えられている、請求項11のいずれかに記載の保護素子。
【請求項13】
前記バネが、圧縮バネである、請求項12に記載の保護素子。
【請求項14】
前記スライダーは一対のスライダーであり、前記連結部材を挟んで対向して設置され、連結部材が前記一対の固定ターミナルから離隔した場合に、互いに他方のスライダーに向かってスライドする、請求項8〜13のいずれかに記載の保護素子。
【請求項15】
前記スライダーの推力は、バネにより得られる、請求項8〜14のいずれかに記載の保護素子。
【請求項16】
前記一対の固定ターミナルは、少なくとも接点部が平面形状を有する、請求項15のいずれかに記載の保護素子。
【請求項17】
前記発熱体は、前記一対の固定ターミナルと連結部材の接点部の下に配置されている、請求項16のいずれかに記載の保護素子。
【請求項18】
さらに、磁石を有し、
該磁石は、その磁界範囲内に前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点が含まれ、かつ、該接点における電流の向きと磁束の向きが平行とならないように設置される、請求項1〜のいずれかに記載の保護素子。
【請求項19】
さらに、磁石を有し、
該磁石は、その磁界範囲内に前記一対の固定ターミナルと前記連結部材の接点部が含まれ、かつ、該接点部における電流の向きと磁束の向きが平行とならないように設置される、請求項8〜17のいずれかに記載の保護素子。
【請求項20】
前記磁石が一対の磁石であり、該一対の磁石が、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点が該一対の磁石の間に位置するように配置されている、請求項18に記載の保護素子。
【請求項21】
前記磁石が一対の磁石であり、該一対の磁石が、前記一対の固定ターミナルと前記連結部材の接点部が該一対の磁石の間に位置するように配置されている、請求項19に記載の保護素子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の保護素子を有する電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電気回路において、定格電流より大きい電流が流れた場合および/または定格電圧より大きい電圧が印加された場合、回路に組み込まれた電気または電子装置および/または電気または電子部品、あるいは電気または電子回路を保護するために保護素子が回路に組み込まれている。
【0003】
そのような保護素子として、温度ヒューズと抵抗体とを含んで成り、異常時に抵抗体に通電することにより抵抗体を発熱させ、その熱で温度ヒューズを動作せしめる保護素子、いわゆるヒュージングレジスタが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、他の保護素子として、バイメタルスイッチとPTC(positive temperature coefficient)素子とを並列に接続して用いることが提案されている(特許文献2)。このような保護素子では、過電流条件となった時に、バイメタルスイッチのバイメタル部分が高温となってその接点が離間して開き、電流がPTC素子に転流される。その結果、PTC素子は過電流によって高温高抵抗状態にトリップしてPTC素子を流れる電流を実質的に遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−295567号公報
【特許文献2】国際公開第2008/114650号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような保護素子は、一対の固定電極がその端において可動電極より電気的に接続されており、この接続箇所が低融点金属により接合されている。従って、固定電極と可動電極の接続箇所が直列に2箇所存在することから、素子全体での抵抗値が大きくなる傾向にある。また、固定電極と可動電極の接続箇所の面積が、最大で固定電極の断面積に制限される。従って、定格電圧および定格電流を高めることが困難である。
【0007】
一方、特許文献2に記載のような保護素子により、多くの場合において、十分な保護を達成することができるが、条件によっては、特に比較的高い電圧で用いる場合には、遮断時に発生するアークを必ずしも十分に抑制できない場合があることが見出された。また、PTC素子がトリップして高抵抗状態になることによって実質的に電流の流れを遮断した場合であっても、実際には微小電流(リーク電流)が流れる。微小電流であるといえども、その流れを遮断するのが好ましい場合がある。また、微小電流が通電され続けると、異常を取り除くまでの時間が長くなった場合に、PTC素子が動作し続けることになり不具合が生じ得る。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、抵抗値が比較的小さく、定格電圧および定格電流が比較的大きく、動作時のアークの発生を抑制できる保護素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の要旨において、
固定ターミナルと、
可動ターミナルと、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記固定ターミナルと前記可動ターミナルは、可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点部が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、この熱により前記接合材が溶融または軟化して、前記固定ターミナルと前記可動ターミナル間の接続が解除され、可動ターミナルが固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開く、保護素子
を提供する。
【0010】
本発明は、第2の要旨において、
一対の固定ターミナルと、
連結部材と、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記一対の固定ターミナルは、離隔して配置され、
前記一対の固定ターミナルの各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度が、0°以上150°以下であり、
前記連結部材は、前記一対の固定ターミナルを連結するように配置され、
前記連結部材と前記一対の固定ターミナルは、連結部材が一対の固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記連結部材と前記一対の固定ターミナルの接点が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、前記接合材が溶融または軟化して、前記連結部材と前記固定ターミナル間の接続が解除され、連結部材が固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開く、保護素子
を提供する。
【0011】
本発明は、第3の要旨において、上記の本発明の保護素子を有する電気装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定ターミナルと可動ターミナルを用いることにより、保護素子内の直列に存在する接合部分を一つにすることができることから、抵抗を比較的小さくすることができ、また、定格電圧および定格電流が比較的大きい保護素子が提供される。さらに、固定ターミナルと可動ターミナルは、可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で接続されていることから、保護素子が動作し、両者が離れる際には、上記の力が作用し、短時間に絶縁距離を確保することができ、アークの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一の態様における保護素子1の回路が閉じた状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1の保護素子1の状態におけるA−A断面図である。
図3図3は、図1の保護素子1の回路が開いた状態を示す斜視図である。
図4図4は、図3の保護素子1の状態におけるB−B断面図である。
図5図5は、本発明の別の態様における保護素子21の回路が閉じた状態を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の別の態様における保護素子31の回路が閉じた状態を示す斜視図である。
図7図7は、本発明の一の態様における保護素子51の回路が閉じた状態を示す斜視図である。
図8図8は、図7の保護素子51の状態におけるA−A断面図である。
図9図9は、図7の保護素子51の回路が開いた状態を示す斜視図である。
図10図10は、図9の保護素子51の状態におけるB−B断面図である。
図11図11は、図7の保護素子51における、連結部材54とスライダー58の断面図である。
図12図12は、本発明の別の態様における保護素子81の回路が閉じた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明の保護素子を詳細に説明する。但し、本発明の保護素子は、図示する態様に限定されないことに留意されたい。
【0015】
(第1実施形態)
図1および図2に、本発明の保護素子1の回路が閉じた状態の斜視図および断面図を示す。また、図3および図4に、本発明の保護素子1の回路が開いた状態の斜視図および断面図を示す。尚、図1および図3において、保護素子1の筐体カバーは、点線で表している。
【0016】
図1および図2に示されるように、本発明の保護素子1は、固定ターミナル2、可動ターミナル3、第3ターミナル17、第4ターミナル18、接合材4、発熱体5、およびバネ6を有して成る。固定ターミナル2と可動ターミナル3は、バネ6により可動ターミナル3が固定ターミナル2から離隔する方向の力が負荷された状態で、接合材4により電気的に接続されて、主ラインを構成している。発熱体5は、固定ターミナル2と可動ターミナル3の接点部、即ち接合材4が存在する箇所の下方に配置されている。発熱体5には、第3ターミナル17および第4ターミナル18が接続されており、これらは副ラインを構成している。上記固定ターミナル2、可動ターミナル3、第3ターミナル17、第4ターミナル18、接合材4、発熱体5、およびバネ6は、各ターミナルの他の電子部品への接続部分以外は、筐体ベース15および筐体カバー16からなる筐体14中に収容されている。
【0017】
正常時、即ち動作前の本発明の保護素子1を、図1および図2に示す。この状態において、保護素子1の接点は閉じており、電流は、主ラインを固定ターミナル2、接点部8(即ち、接合材4)、可動ターミナル3の順(またはその逆)に流れる。副ラインには電流は実質的に流れない。
【0018】
異常時、即ち動作後の本発明の保護素子1を、図3および図4に示す。異常時には、発熱体5に通電がなされ、発熱体5は熱を生じる。発熱体5で生じた熱は、接合材4に伝わる。即ち、本発明の保護素子1において、接合材4は、発熱体5の熱影響下にあるように配置される。この熱により接合材4が溶融または軟化し、固定ターミナル2と可動ターミナル3間の接続が解除され、可動ターミナル3は、固定ターミナル2から電気的に離隔する。その結果、主ラインが開く。この固定ターミナル2の離隔において、可動ターミナル3には固定ターミナル2から離隔する方向の力が負荷された状態にあるので、短時間に固定ターミナル2と可動ターミナル3間の距離は絶縁距離に達し、アークの発生が抑制される。従って、本発明の保護素子1は、高い定格電圧を有し得る。
【0019】
また、本発明の保護素子1において、主ラインには、直列に配置される接点部8が1つのみしか存在しない。従って、保護素子の主ラインの抵抗値を、比較的小さくすることができる。また、接点部8において、固定ターミナル2と可動ターミナル3を面接続することができるので、接点部の面積(即ち、接合材4が存在する面積)を大きくすることが容易であるので、さらに抵抗値を小さくすることができる。従って、本発明の保護素子1は、高い定格電流を有し得る。
【0020】
ここに、本明細書において「定格電流」および「定格電圧」とは、定常的にその電流および電圧を加えた場合に保護素子が所定の機能を発揮し得、かつ安全に使用することができる最大電流および最大電圧をそれぞれ意味する。
【0021】
上記固定ターミナル2を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば銅、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、ベリリウム、コバルト、マンガン、クロムならびにこれらの合金が挙げられ、好ましくは銅である。
【0022】
上記固定ターミナル2の形状は、特に限定されないが、好ましくは、接点部において平面形状を有する。一の態様において、固定ターミナル2の形状は、全体として矩形である。尚、「全体として矩形」とは、貫通孔、くびれ部分、爪等が存在した場合にはこれらを無視する、あるいはこれらが存在しないと仮定した場合に、矩形であることを意味する。
【0023】
上記可動ターミナル3を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば銅、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、ベリリウム、コバルト、マンガン、クロムならびにこれらの合金が挙げられ、好ましくは銅である。
【0024】
好ましい態様において、固定ターミナル2を構成する材料と可動ターミナル3を構成する材料は、同じである。
【0025】
上記保護素子1に用いられる可動ターミナル3の形状は、動作時に固定ターミナル2から離隔できる形状であれば、特に限定されない。
【0026】
本実施形態においては、可動ターミナル3は、溝9を有する。溝9の部分では、可動ターミナル3の厚みが小さくなることから、下記するように、可動ターミナル3が折れ曲がる箇所となる。
【0027】
上記溝9が存在する箇所における可動ターミナル3の厚みは、他の部分の厚みよりも小さく、優先的に折れ曲がる厚みであれば特に限定されず、例えば下記する可動部10に作用する力の大きさ、可動部10の長さなどに応じて適宜設定することができる。
【0028】
可動ターミナル3は、上記溝9を境に接点部8側に位置する可動部10および固定部11を有する。固定部11は、ネジ12により筐体ベース15に固定されている。可動部10は、固定部11よりも幅が狭く、その先端部である接点部8において固定ターミナル2に接合されており、またその先端部には両側に向かって延在する腕13を有している。尚、固定部11を筐体ベース15に固定する方法は、ネジを用いる方法に限定されない。例えば、別の方法として、熱溶着(いわゆる熱かしめ)が挙げられる。また、さらに別の方法として、筐体ベース15から立ち上げた突起を固定部に設けた開口部に通し、この突起に熱を加えて変形させることにより、固定部をかしめて固定してもよい。
【0029】
好ましい態様において、可動ターミナル3は、接点部において平面形状を有する。特に好ましくは、固定ターミナル2および可動ターミナル3は、接点部において平面形状を有する。固定ターミナル2および可動ターミナル3の接点部を平面形状とすることにより、接合が容易になり、さらに接点部の面積の調整が容易になり、要求に応じた電気的特性および切断特性をより容易に得ることができる。
【0030】
正常時、固定ターミナル2と可動ターミナル3の可動部10は、可動ターミナル3に固定ターミナル2から離隔させる方向の力を作用させた状態で、接合材4により接合されている。上記の可動ターミナル3を固定ターミナル2から離隔させる方向の力は、可動ターミナル3の腕13に、圧縮状態のトーションバネ6のアームを引っかけることにより与えられる。
【0031】
異常時、発熱体5が発熱し、接合材4が溶融または軟化すると、バネ6の作用により、可動ターミナル3は溝9で折れ曲がり、可動部10が上方に持ち上がり、固定ターミナル2と可動ターミナル3は速やかに離隔する。
【0032】
上記接合材4は、所定の温度以上で溶融または軟化する。接合材4を構成する材料は、導電性であり、かつ所定の温度以上で溶融または軟化する材料であれば特に限定されず、好ましくは低融点金属が用いられる。
【0033】
上記低融点金属としては、特に限定されないが、例えば、Sn、Bi−Cd合金、Bi−Pb合金、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Bi−In合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag−Cu−Bi合金、Sn−Ag−Cu−Bi−In合金、Sn−Ag−Cu−Co−Ni合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Ni−Co合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−Ag合金、Sn−Bi−Cd合金、Sn−Bi−In合金、Sn−Bi−Pb合金、Sn−Bi−Pb−Cd合金、Sn−Bi−Pb−Cd−In合金、Sn−Bi−Pb−In合金、Sn−Bi−Zn合金、Sn−Cu合金、Sn−Cu−Ni合金、Sn−Cu−Ni−P−Ge合金、Sn−Cd合金、Sn−In合金、Sn−Pb合金、Sn−Pb−Cd合金、Sn−Zn合金およびSn−Sb合金、Sn−Bi−Zn合金、Sn−Bi−In−Zn合金、Sn−In−Zn合金、In−Bi合金、In−Zn合金、In−Ag合金等が挙げられる。好ましくは、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag−Bi−In合金が用いられる。
【0034】
上記低融点金属は、固定ターミナル2と可動ターミナル3の接合領域の全面にわたって存在していてもよく、一部のみに存在していてもよい。好ましい態様において、低融点金属は、接合領域の実質的に全面に存在する。
【0035】
上記発熱体5は、通電により熱を生じるものであれば特に限定されない。上記発熱体としては、例えば抵抗体(例えば、ニクロム線)を用いた素子、PTC素子などを用いることができる。
【0036】
上記発熱体の形状は、特に限定されないが、発熱体で生じた熱をより効率よく接合材に伝えるという観点からは、発熱体が熱を伝えるべき部材に対応する形状であることが好ましい。図示した例においては、発熱体が熱を伝えるべき部材は固定ターミナル2であるので、発熱体5の形状は、固定ターミナル2の下面の形状、即ち平面形状であることが好ましい。
【0037】
上記接合材4は、動作時において、可能な限り均一に溶融または軟化することが好ましい。接合材が均一に溶融または軟化することにより、アークの発生を抑制することができる。従って、発熱体は、接点部に均等に熱を伝えることができる位置に配置することが好ましい。
【0038】
一の態様において、発熱体は、固定ターミナルの下に配置され、発熱体の上方において、固定ターミナルと可動ターミナルが接続材により接続されている。即ち、発熱体の上方に接点部8が位置する。
【0039】
好ましい態様において、発熱体は、固定ターミナルに直接固定される。固定方法としては、特に限定されないが、ボルトによる固定、接着剤による固定、フック、爪などによる固定が挙げられる。好ましい態様において、上記固定は、伝熱セメントなどの熱伝導性の接着剤を用いて行われることが好ましい。
【0040】
保護素子1においては、発熱体5を固定ターミナル2の接点部8およびその近傍に広く接触させることにより、発熱体5で生じた熱を、均一かつ迅速に接合材4に伝えることができる。
【0041】
上記発熱体5への通電は、第3ターミナル17および第4ターミナル18を介して行われる。尚、第3ターミナル17と第4ターミナル18は、必須の構成ではなく、存在しなくてもよい。この場合、発熱体への通電は、別の手段、例えば固定ターミナルまたは可動ターミナルを発熱体への通電に用いてもよい。
【0042】
上記筐体ベース15および筐体カバー16を構成する材料は、特に限定されない。
【0043】
一の態様において、筐体ベース15および筐体カバー16は、樹脂、特に耐熱性樹脂、アークに耐性を有する樹脂により形成される。このような樹脂を用いることにより、アークが生じた場合でも不具合が生じにくい保護素子を得ることができる。また、高温環境に付された場合であっても、保護素子の変形を防止することができる。
【0044】
上記樹脂としては、例えば、LCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂、ポリアミド系樹脂、PPS(Poly Phenylene Sulfide)系樹脂、PLA(Polylactic acid)樹脂、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PE(Polyethylene)樹脂、PP(Polypropylene)樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0045】
上記のように、本発明の保護素子は、高い定格電流と高い定格電圧を有することから、種々の電気装置において好適に用いられる。従って、本発明は、本発明の保護素子を有して成ることを特徴とする電気装置をも提供する。
【0046】
(第2実施形態)
図5に、本発明の保護素子21の回路が閉じた状態の斜視図を示す。尚、図5において、保護素子21の筐体カバーは、省略している。
【0047】
図5に示すように、本実施形態の保護素子21は、第4ターミナル18を有しておらず、発熱体5と可動ターミナル3の可動部10とを電気的に接続する配線22を有している点で上記の保護素子1と異なる。即ち、保護素子21において、副ラインは、第3ターミナル17、発熱体5、および可動ターミナル3を含む。
【0048】
尚、本実施形態において、上記配線22は、可動ターミナル3に電気的に接続されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、配線22は、固定ターミナル2に電気的に接続されていてもよい。また、副ラインを流れる電流の経路は、第3ターミナル17、発熱体5、および可動ターミナル3;第3ターミナル17、発熱体5、および固定ターミナル2;第3ターミナル17、発熱体5、可動ターミナル3、および固定ターミナル2;または第3ターミナル17、発熱体5、固定ターミナル2および可動ターミナル3の順(またはその逆)であり得る。
【0049】
一の態様において、副ラインは、接点部8を含むように構成される。例えば、副ラインは、第3ターミナル17、発熱体5、可動ターミナル3、および固定ターミナル2の順で、あるいは第3ターミナル17、発熱体5、固定ターミナル2および可動ターミナル3の順で構成される。このような構成とすることによって、接点部8が開くことにより、主ラインと副ラインを同時に開くことができる。
【0050】
(第3実施形態)
さらに、図6に、本発明の保護素子31の回路が閉じた状態の斜視図を示す。尚、図6において、保護素子31の筐体カバーは、省略している。
【0051】
図6に示すように、本実施形態の保護素子31は、上記した保護素子1の構成に加え、さらに磁石32,33を有する。かかる磁石32,33は、その間に接点部8が位置するように、配置されている。
【0052】
これらの磁石32,33は、好ましくは、一方の磁石のS極と他方の磁石のN極が向かい合うように配置される。
【0053】
好ましい態様において、上記磁石32,33は、磁束の方向が、アークの方向(即ち、接点において電流の流れる方向)と平行にならないように、好ましくは45°以上になるように、より好ましくは実質的に直角になるように配置される。磁束の方向が、アークの方向を直角に近づけることによりアークを効率よく側面方向に引き延ばすことができる。
【0054】
接点部8が開く際、固定ターミナル2の接点と可動ターミナル3の接点間には、アークが生じ得る。接点部8で生じたアークは、磁石32,33により生じる磁場によるローレンツ力の作用により、側壁方向に引き延ばされる。これによりアークは、迅速に減衰し、アークによる筐体の損傷等の不具合を回避することができる。また、アークを迅速に減衰、消滅させることができるので、保護装置の定格電流および定格電圧をより大きくすることができる。
【0055】
上記磁石は、永久磁石であっても、電磁石であってもよい。好ましい態様において、磁石は、永久磁石である。
【0056】
上記永久磁石としては、特に限定されないが、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、フェライト磁石等が挙げられる。
【0057】
一の態様において、上記磁石は、アークが生じる箇所での磁束密度を高めるために、金属を含むヨークを有していてもよい。本実施形態の保護素子31のように磁石が2個存在する場合には、ヨークは、それらを接続するように設置される。
【0058】
上記ヨークに含まれる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、アルミニウム、シリコン、クロム、マンガン、ボロン、ニオブ、亜鉛等が挙げられる。
【0059】
一の態様において、筐体ベース15および筐体カバー16の少なくとも一方は、金属材料から形成されていてもよい。金属材料を用いることにより、上記磁石からの漏れ磁束による電磁気妨害を抑制することができる。
【0060】
筐体ベース15および筐体カバー16を構成する材料が金属材料である場合、筐体ベース15または筐体カバー16は上記ヨークとしても利用することができる。筐体ベース15および筐体カバー16をヨークとして用いることにより、保護装置のサイズを大きくすることなく、アークに作用する磁束の磁束密度を高めることができ、また、磁束の漏れをより低減することができる。
【0061】
上記上方プレートを構成する金属材料としては、好ましくは、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、スズ、チタン、あるいはこれら金属の合金等を用いることができる。好ましい態様において、筐体ベース15および筐体カバー16を構成する金属材料は、鉄、ニッケル、これら金属の合金等である。
【0062】
筐体ベース15および筐体カバー16は、好ましくは磁石に接するように設置される。これにより磁束の漏れをより低減することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態1〜3について説明したが、上記実施形態1〜3の保護素子は種々の改変が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、可動ターミナルに、可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力を負荷した状態とするために、トーションバネ6が用いられているが、本発明はこの態様に限定されない。
【0065】
例えば、一の態様において、トーションバネの代わりに圧縮バネ、引張りバネ、板バネ等を用いてもよい。
【0066】
別の態様において、トーションバネの代わりに、他の弾性体、例えばゴムを用いてもよい。
【0067】
別の態様において、トーションバネのように別途弾性体を用いずに、可動ターミナル自体に弾性を持たせてもよい。例えば、可動ターミナル自体を板バネとして用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態1〜3においては、動作時に曲がりやすいように、可動ターミナルに溝9が設けられているが、本発明はこの態様に限定されない。
【0069】
一の態様において、溝の代わりに、該溝に対応する箇所の両端に切欠きを設け、ターミナルの幅を小さくしてもよい。
【0070】
別の態様において、溝の代わりに、該溝に対応する箇所の一部に貫通孔を設けてもよい。
【0071】
尚、上記溝等は、必須の構成要素ではなく、存在しなくてもよい。
【0072】
また、上記実施形態1〜3においては、接点部8は一つのみであるが、本発明はこの態様に限定されない。
【0073】
例えば、一の態様において、接点部は並列に複数存在してもよい。具体的には、可動ターミナルにおいて可動部が2つに分かれその先端がそれぞれ接点部(いわゆるダブルメーク接点)であってもよい。接点部の数を増やすことにより、固定ターミナルと可動ターミナルとの接点の面積が大きくなることから、抵抗を低くするという観点から好ましい。一方、複数の接点部が開くタイミングのずれが生じにくく、アークの発生が抑制されるという観点からは、接点部を一つのみとする上記実施形態が好ましい。
【0074】
(第4実施形態)
図7および図8に、本発明の保護素子51の回路が閉じた状態の斜視図および断面図を示す。また、図9および図10に、本発明の保護素子51の回路が開いた状態の斜視図および断面図を示す。また、図11は、図7の保護素子51における、連結部材54とスライダー58の断面図を示す。尚、図7および図9において、保護素子51の筐体カバーは、点線で表している。
【0075】
図7および図8に示されるように、本発明の保護素子51は、主な構成要素として、第1固定ターミナル52、第2固定ターミナル53、連結部材54、第3ターミナル55、接合材56、発熱体57、スライダー58、磁石64、圧縮バネ59およびトーションバネ60を有して成る。第1固定ターミナル52および第2固定ターミナル53(以下、まとめて「固定ターミナル52,53」ともいう)と連結部材54は、連結部材54が固定ターミナル52,53から離隔する方向の力が負荷された状態で接合材56により電気的に接続されて、主ラインを構成している。発熱体57は、固定ターミナル52,53と連結部材54の接点部63、即ち接合材56が存在する箇所の下方に配置されている。発熱体57の一方の電極は、配線62を介して第3ターミナル55に接続され、他方の電極は、配線69およびガイド軸61を介して連結部材54に接続されている。第3ターミナル55、配線62、発熱体57、配線69、ガイド軸61、連結部材54および第1固定ターミナル52または第2固定ターミナル53は、副ラインを構成している。上記固定ターミナル52,53、連結部材54、第3ターミナル55、接合材56、発熱体57、スライダー58、磁石64、圧縮バネ59、トーションバネ60、ガイド軸61および配線62は、各ターミナルの一部以外は、筐体ベース66および筐体カバー67からなる筐体65中に収容されている。
【0076】
正常時、即ち動作前の本発明の保護素子51を、図7および図8に示す。この状態において、保護素子51の接点は閉じており、電流は、主ラインを第1固定ターミナル52、連結部材54、および第2固定ターミナル53の順(またはその逆)に流れる。副ラインには電流は実質的に流れない。
【0077】
異常時、即ち動作後の本発明の保護素子51を、図9および図10に示す。異常時には、副ラインに通電がなされ、発熱体57は熱を生じる。発熱体57で生じた熱により接合材56が溶融または軟化すると、連結部材54は上方に持ち上げられ、固定ターミナル52,53と連結部材54間の接続が解除され、主ラインの電流は遮断される。
【0078】
上記固定ターミナル52,53を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば銅、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、ベリリウム、コバルト、マンガン、クロムならびにこれらの合金が挙げられ、好ましくは銅である。
【0079】
本発明の保護素子に用いられる固定ターミナル52,53の形状は、特に限定されないが、好ましくは、接点部において平面形状を有する。一の態様において、固定ターミナル52,53の形状は、全体として矩形である。尚、「全体として矩形」とは、貫通孔、くびれ部分、爪等が存在した場合にはこれらを無視する、あるいはこれらが存在しないと仮定した場合に、矩形であることを意味する。
【0080】
上記一対の固定ターミナル52,53は、離隔して、各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度が0°以上150°以下となるように配置される。各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度は、好ましくは0°以上90°以下、より好ましくは0°以上60°以下、さらに好ましくは0°以上30°以下、さらにより好ましくは0°以上10°以下、特に好ましくは実質的に0°である。ここに、「ターミナルに流れる電流のベクトル」とは、ターミナルの向きを示すために用いられ、電流が流れる方向を意味する。例えば、固定ターミナル52、連結部材54、固定ターミナル53の順に電流が流れる場合には、固定ターミナル52に流れる電流のベクトルは、固定ターミナル52の長さ方向に平行で固定ターミナル52から連結部材54に向かう方向のベクトルであり、固定ターミナル53に流れる電流のベクトルは、固定ターミナル53の長さ方向に平行で連結部材54から固定ターミナル53に向かう方向のベクトルである。即ち、本実施形態においては、各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度は、実質的に0°である。
【0081】
上記のように各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度を0°以上150°以下とすることにより、固定ターミナル52,53と連結部材54を面接触させることが容易になり、接点における抵抗を低減することが容易になる。その結果、定格電流をより大きくすることができる。各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度を0°に近づけることにより、固定ターミナル52,53と連結部材54を面接触させることがより容易になる。
【0082】
好ましい態様において、固定ターミナル52,53は、互いの先端が空間的に重ならないように配置される。ここに、「互いの先端が空間的に重ならない」とは、一方の固定ターミナルの先端が、他方の固定ターミナルの側面からその面に垂直に伸びる空間にないことを意味する。なお、ここに言う側面とは、長さ方向に平行または略平行な面を意味する。
【0083】
固定ターミナル52,53は、互いの先端が空間的に重ならないように配置することにより、固定ターミナル52,53と連結部材54を面接触させることが容易になる。また、固定ターミナル52,53間に重なりがないことから、固定ターミナル間の浮遊容量を低減することができる。
【0084】
上記連結部材54を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば銅、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、ベリリウム、コバルト、マンガン、クロムならびにこれらの合金が挙げられ、好ましくは銅である。
【0085】
好ましい態様において、連結部材54を構成する材料と固定ターミナル52,53を構成する材料は、同じである。
【0086】
本発明の保護素子に用いられる連結部材54の形状は、固定ターミナル52,53を連結し、動作時に固定ターミナル52,53から離隔できる形状であれば、特に限定されない。
【0087】
本実施形態においては、連結部材54は、中央に凸部71を有し、その両端に接続部72を有し、さらにその外側に斜め上方に向かって折れ曲がった羽部73を有する。凸部71の中央には貫通口74が設けられている。連結部材54は、ガイド軸61に挿通された状態で、固定ターミナル52,53に、接合材56により接合されている。
【0088】
好ましい態様において、連結部材54は、接点部において平面形状を有する。特に好ましくは、固定ターミナル52,53および連結部材54は、共に接点部において平面形状を有する。接点部において固定ターミナル52,53および連結部材54を平面形状とすることにより、接合が容易になり、さらに接点部の面積の調整が容易になり、要求に応じた電気的特性および切断特性をより容易に得ることができる。
【0089】
連結部材54の下方には、圧縮バネ59が、ガイド軸61に挿通され、圧縮された状態で配置されている。これにより、連結部材54には、連結部材が固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態となっている。
【0090】
上記スライダー58を構成する材料としては、絶縁材料、例えば絶縁性セラミック、例えばアルミナ、ジルコニア等、樹脂、例えば液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)等の耐熱性樹脂を用いることができる。強度および耐熱性が高いことから、上記材料は、絶縁性セラミックが好ましい。また、発熱体で生じた熱を奪わないように、上記材料は、熱伝導率の低い材料、例えばジルコニアが好ましい。
【0091】
本発明の保護素子に用いられるスライダー58の形状は、動作時に連結部材54の下方に潜り込むことができる形状であれば、特に限定されない。
【0092】
本実施形態においては、スライダー58は、一の側面が斜面75となっている。スライダー58は、斜面75が連結部材54の羽部73の下面に接触するように配置される。
【0093】
スライダー58は、トーションバネ60により連結部材54に押しつけられた状態にある。即ち、一対のスライダー58は、連結部材54に向かう方向、即ち互いに近づく方向の力が負荷された状態で配置されている。かかる力は水平方向(即ち、固定ターミナルの面に平行な方向)に作用するが、スライダー58の斜面75および連結部材54の羽部73は、斜めに接しているので、連結部材54に伝わる力は、上方向(即ち、固定ターミナルの面に垂直な方向)の力に変換される。これにより、連結部材54は、連結部材が固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態となっている。
【0094】
保護素子51が動作した場合、上記スライダーは、固定ターミナル52,53と連結部材54間の間に挿入された状態となり、両者を離隔する。従って、絶縁性の高いスライダーを用いることにより、動作後の固定ターミナル52,53と連結部材54間の距離を小さくすることができる。従って、保護素子全体の低背化も可能になる。
【0095】
上記接合材56は、所定の温度以上で溶融または軟化する。接合材56を構成する材料は、導電性であり、かつ所定の温度以上で溶融または軟化する材料であれば特に限定されず、好ましくは低融点金属が用いられる。具体的には、上記した第1実施態様における接合材6と同様のものがあげられる。
【0096】
上記低融点金属は、固定ターミナル52,53と連結部材54の接合領域の全面にわたって存在していてもよく、一部のみに存在していてもよい。好ましい態様において、低融点金属は、接合領域の実質的に全面に存在する。
【0097】
上記発熱体57は、通電により熱を生じるものであれば特に限定されない。上記発熱体としては、例えば抵抗体(例えば、ニクロム線)を用いた素子、PTC素子などを用いることができる。
【0098】
上記発熱体の形状は、特に限定されないが、発熱体で生じた熱をより効率よく接合材に伝えるという観点からは、発熱体が熱を伝えるべき部材に対応する形状であることが好ましい。図示した例においては、発熱体が熱を伝えるべき部材は固定ターミナル52,53であるので、発熱体57の形状は、固定ターミナル52,53の下面の形状、即ち平面形状であることが好ましい。
【0099】
上記発熱体57は、好ましくは主ラインとは別の副ライン中に接続され、連結部材と前記一対の固定ターミナルの接点部が発熱体の熱影響下にあるように配置される。
【0100】
また、発熱体は、接点部に均等に熱を伝えることができる位置に配置することが好ましい。発熱体をこのように配置することにより、動作時において、上記接合材56に可能な限り均一に熱が伝わり、均一に溶融または軟化することができる。接合材が均一に溶融または軟化することにより、アークの発生を抑制することができる。
【0101】
一の態様において、発熱体は、固定ターミナルの下に配置され、発熱体の上方において、固定ターミナルと可動ターミナルが接続材により接続されている。即ち、発熱体の上方に接点部63が位置する。
【0102】
好ましい態様において、発熱体は、固定ターミナルに直接固定される。固定方法としては、特に限定されないが、ボルトによる固定、接着剤による固定、フック、爪などによる固定が挙げられる。好ましい態様において、上記固定は、伝熱セメントなどの熱伝導性の接着剤を用いて行われる。
【0103】
保護素子51においては、発熱体57を接点部63およびその近傍に広く接触させることにより、発熱体57で生じた熱を、均一かつ迅速に接合材56に伝えることができる。
【0104】
保護素子51において、上記発熱体57への通電は、第1固定ターミナル52または第2固定ターミナル53および第3ターミナル55を介して行われる。第3ターミナル55は、配線62を介して発熱体57に電気的に接続されている。第1固定ターミナル52または第2固定ターミナル53は、連結部材54、ガイド軸61および配線69を介して発熱体57に電気的に接続されている。連結部材54とガイド軸61の接続は、両者直接接触するように配置してもよく、他のフレキシブルなワイヤー等を用いて行ってもよい。
【0105】
本実施形態において、保護素子51は、一対の磁石64を有する。かかる磁石64は、その間に接点部63が位置するように、配置されている。
【0106】
これらの磁石64は、好ましくは、一方の磁石のS極と他方の磁石のN極が向かい合うように配置される。
【0107】
好ましい態様において、上記磁石64は、磁束の方向が、アークの方向(即ち、接点において電流の流れる方向)と平行にならないように、好ましくは45°以上になるように、より好ましくは実質的に直角になるように配置される。磁束の方向が、アークの方向を直角に近づけることによりアークを効率よく側面方向に引き延ばすことができる。
【0108】
接点が開く際、固定ターミナル52,53と連結部材54の間には、アークが生じ得る。接点で生じたアークは、磁石64により生じる磁場によるローレンツ力の作用により、側壁方向に引き延ばされる。これによりアークは、迅速に減衰し、アークによる筐体の損傷等の不具合を回避することができる。また、アークを迅速に減衰、消滅させることができるので、保護装置の定格電流および定格電圧をより大きくすることができる。
【0109】
上記磁石は、永久磁石であっても、電磁石であってもよい。永久磁石を用いる場合には、電力を要しない点で有利である。また、電磁石を用いる場合には、磁場の極性を変更することが可能になり、アークに作用するローレンツ力の方向を制御できる点で有利である。好ましい態様において、磁石は、永久磁石である。
【0110】
上記永久磁石としては、特に限定されないが、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、フェライト磁石等が挙げられる。
【0111】
一の態様において、上記磁石は、アークが生じる箇所での磁束密度を高めるために、金属を含むヨークを有していてもよい。本実施形態の保護素子51のように磁石が2個存在する場合には、ヨークは、それらを接続するように設置される。
【0112】
上記ヨークに含まれる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、アルミニウム、シリコン、クロム、マンガン、ボロン、ニオブ、亜鉛等が挙げられる。
【0113】
上記筐体ベース66および筐体カバー67を構成する材料は、特に限定されない。
【0114】
一の態様において、筐体ベース66および筐体カバー67は、樹脂、特に耐熱性樹脂、アークに耐性を有する樹脂により形成される。このような樹脂を用いることにより、アークが生じた場合でも不具合が生じにくい保護素子を得ることができる。また、高温環境に付された場合であっても、保護素子の変形を防止することができる。かかる樹脂としては、上記第1実施形態で挙げた樹脂が挙げられる。
【0115】
図7および図8に示すように、正常時、一対の固定ターミナル52,53と連結部材54は、連結部材54に固定ターミナル52,53から離隔させる方向の力を作用させた状態で、接合材56により接合されている。上記の連結部材54を固定ターミナル52,53から離隔させる方向の力は、連結部材54の下方にある圧縮状態の圧縮バネ59により与えられる。さらに、該力は、スライダー58が連結部材54の羽部73の下面を押すことによっても与えられる。この状態において、保護素子51の接点は閉じており、電流は、主ラインを固定ターミナル52、連結部材54、および固定ターミナル53の順(またはその逆)に流れる。副ラインには電流は実質的に流れない。
【0116】
図7および図8に示すように、異常時、連結部材54は、上方に移動し、一対の固定ターミナル52,53との電気的接続は解除され、主ラインはオープン状態となり電流は遮断される。より詳細には、異常時、発熱体57を含む副ラインに通電がなされ、発熱体57は熱を生じる。発熱体57で生じた熱は、発熱体57の熱影響下にある接合材56に伝わる。この熱により接合材56が溶融または軟化すると、固定ターミナル52,53と連結部材54の接合力が低下または消失する。連結部材54には固定ターミナル52,53から離隔する方向の力が負荷された状態にあるので、連結部材54は上方に持ち上げられ、短時間に固定ターミナル52,53と連結部材54間の距離は絶縁距離に達し、アークの発生が抑制される。従って、本発明の保護素子51は、高い定格電圧を有し得る。さらに、一対のスライダー58は、トーションバネ60の力により、連結部材54の方向に移動し、連結部材54は、スライダー58の斜面に沿って上方に持ち上げられる。この効果により、さらに短時間に固定ターミナル52,53と連結部材54間の距離は絶縁距離に達することが可能になる。また、スライダー58は、連結部材54の下に潜り込むように移動し、固定ターミナル52,53と連結部材54の間を遮る。従って、アークの発生をより抑制することができる。
【0117】
また、本発明の保護素子51は、接点部63において、固定ターミナル52,53と連結部材54を面接続することができるので、接点部63の面積(即ち、接合材56が存在する面積)を大きくすることが容易になり、さらに抵抗値を小さくすることができる。従って、本発明の保護素子51は、高い定格電流を有し得る。
【0118】
上記のように、本発明の保護素子は、高い定格電流と高い定格電圧を有することから、種々の電気装置において好適に用いられる。従って、本発明は、本発明の保護素子を有して成ることを特徴とする電気装置をも提供する。
【0119】
(第5実施形態)
図12に、本発明の保護素子81の回路が閉じた状態の斜視図を示す。尚、図12において、保護素子81の筐体カバーは、点線で表している。
【0120】
図12に示すように、本実施形態の保護素子81は、スライダーのスライド方向が固定ターミナルの幅方向である点で、上記した保護素子51と異なる。また、スライダーを動かす動力として、保護素子51ではトーションバネを用いていたが、保護素子81では、磁石を用いている点で異なる。
【0121】
より詳細には、本実施形態の保護素子81において、一対のスライダー88は、斜面が互いに向き合い、かつ、固定ターミナル52,53の長さ方向に平行になるように配置される。スライダー88の後方(即ち、斜面と反対側の側面側)には、磁石64が配置される。一対のスライダー88間には、連結部材84が配置されている。保護素子81における連結部材84は、羽部がスライダー88の斜面に沿って伸びている。
【0122】
磁石64は、保持部材82に保持されており、保持部材82は、シャフト83に挿通されている。
【0123】
一の態様において、保持部材またはシャフト、あるいはその両方は、金属で形成される。保持部材およびシャフトを金属で形成することにより、これらはヨークとして機能し、アークが生じる箇所での磁束密度を高めることができる。
【0124】
一の態様において、シャフト83には、スライダー88がスライドする力を補助するために、バネ、例えば圧縮バネ、引張りバネ、板バネ、トーションバネ等が設けられていてもよい。例えば、図12に示す態様において、保持部材82と筐体ベース66間のシャフトに圧縮バネを設けてもよい。
【0125】
異常時、発熱体を含む副ラインに通電がなされ、発熱体で生じた熱により接合材が溶融または軟化し、固定ターミナル52,53と連結部材84の接合力が低下または消失する。その結果、一対の磁石64は、シャフト83に沿って互いに近づく方向に移動する。この磁石に押されるようにスライダー88は、互いに近づく方向に移動し、連結部材84を上方に押し上げる。この効果により、さらに短時間に固定ターミナル52,53と連結部材84間の距離が絶縁距離に達することが可能になる。また、スライダー88は、連結部材84の下に潜り込むように移動し、固定ターミナル52,53と連結部材84の間を遮る。従って、アークの発生をより抑制することができる。また、この態様においては、スライダーの移動と共に磁石間の距離も近づくため、接点における磁束密度が大きくなり、消弧効果が大きくなる。
【0126】
以上、本発明の第4および第5実施形態について説明したが、本発明の保護素子は種々の改変が可能である。
【0127】
例えば、上記第4および第5実施形態においては、連結部材の下に圧縮バネを配置することにより、連結部材に、一対の固定ターミナルから離隔する方向の力を作用させている。しかしながら、本発明はかかる態様に限定されず、かかる圧縮バネは設置しなくてもよい。この場合、スライダーによってのみ、連結部材を一対の固定ターミナルから離隔する方向の力が作用する。
【0128】
また、連結部材を一対の固定ターミナルから離隔する方向の力を得るために用いるバネは圧縮バネに限定されず、圧縮バネ、引張りバネ、板バネ、トーションバネ等の各種バネから選択される1種または2種以上を用いてもよい。
【0129】
別の態様において、バネの代わりに、他の弾性体、例えばゴムを用いてもよい。
【0130】
上記第4および第5実施形態においては、第1固定ターミナルと連結部材の接点部と、第2固定ターミナルと連結部材の接点部は、同じ1つの発熱体の熱影響下にある。しかしながら、本発明はかかる態様に限定されず、それぞれの接点部の加熱に別個の発熱体を用いてもよい。
【0131】
上記第4および第5実施形態においては、副ラインは、第3ターミナル55、配線62、発熱体57、配線69、ガイド軸61、連結部材54および第1固定ターミナル52または第2固定ターミナル53から構成されている。即ち、発熱体57の一方の電極は、配線62を介して第3ターミナル55に接続され、他方の電極は、配線69およびガイド軸61を介して連結部材54に接続されている。本発明は上記態様に限定されず、例えば、他方の電極は、連結部材54ではなく、固定ターミナル52または固定ターミナル53に接続してもよい。
【0132】
上記第4および第5実施形態においては、副ラインが主ラインに接続され、副ラインのターミナルとしても固定ターミナルが用いられている。しかしながら、本発明はかかる態様に限定されず、副ラインを主ラインと完全に別個の回路としてもよい。例えば、第3ターミナルに加え、第4ターミナルを設け、第3ターミナルおよび第4ターミナルのそれぞれに発熱体を接続して副ラインを構成してもよい。
【0133】
本発明は、特に限定されないが、以下の態様を開示する。
1. 固定ターミナルと、
可動ターミナルと、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記固定ターミナルと前記可動ターミナルは、可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点部が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、この熱により前記接合材が溶融または軟化して、前記固定ターミナルと前記可動ターミナル間の接続が解除され、可動ターミナルが固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開く、保護素子。
2. さらに第3ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルに電気的に接続され、さらに前記固定ターミナルまたは前記可動ターミナルに電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記固定ターミナルおよび/または前記可動ターミナルは、副ラインを構成する、
態様1に記載の保護素子。
3. 前記副ラインは、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルとの接点部を含み、可動ターミナルが動作することにより、主ラインと同時に副ラインも開く、態様2に記載の保護素子。
4. さらに第3ターミナルおよび第4ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルおよび前記第4ターミナルに電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記第4ターミナルは、副ラインを構成する、
態様1に記載の保護素子。
5. さらに、圧縮バネ、引張りバネ、板バネおよびトーションバネから選択される1種またはそれ以上のバネを有し、
前記可動ターミナルが固定ターミナルから離隔する方向の力が、前記バネにより加えられている、態様1〜4のいずれかに記載の保護素子。
6. 前記バネが、トーションバネである、態様5に記載の保護素子。
7. 前記固定ターミナルおよび可動ターミナルは、少なくとも接点部が板状である、態様1〜6のいずれかに記載の保護素子。
8. 前記可動ターミナルが、溝を有し、該溝に沿って折れ曲がることにより可動する、態様1〜7のいずれかに記載の保護素子。
9. 前記発熱体が、前記固定ターミナルの下に配置され、発熱体の上方において、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルが前記接続材により接続されている、態様1〜8のいずれかに記載の保護素子。
10. さらに、磁石を有し、
該磁石は、その磁界範囲内に前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点が含まれ、かつ、該接点における電流の向きと磁束の向きが平行とならないように設置される、態様1〜9のいずれかに記載の保護素子。
10. 一対の固定ターミナルと、
連結部材と、
所定の温度以上で溶融または軟化する接合材と、
通電により発熱する発熱体と、
を有して成る保護素子であって、
前記一対の固定ターミナルは、離隔して配置され、
前記一対の固定ターミナルの各ターミナルに流れる電流のベクトルがなす角度が、0°以上150°以下であり、
前記連結部材は、前記一対の固定ターミナルを連結するように配置され、
前記連結部材と前記一対の固定ターミナルは、連結部材が一対の固定ターミナルから離隔する方向の力が負荷された状態で、前記接合材により電気的に接続されて、主ラインを構成し、
前記発熱体は、前記主ラインとは別の副ライン中に接続され、かつ、前記連結部材と前記一対の固定ターミナルの接点が発熱体の熱影響下にあるように配置され、
前記発熱体に通電することにより、発熱体が発熱し、前記接合材が溶融または軟化して、前記連結部材と前記固定ターミナル間の接続が解除され、連結部材が固定ターミナルから電気的に離隔され、主ラインが開く、保護素子。
11. さらに第3ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルに電気的に接続され、さらに前記固定ターミナルの少なくとも1つまたは前記連結部材に電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記固定ターミナル、または、前記第3ターミナル、前記発熱体、前記連結部材、および前記固定ターミナルは、副ラインを構成する、
態様10に記載の保護素子。
12. 前記発熱体は、前記連結部材に電気的に接続されて副ラインを構成しており、前記連結部材が前記一対の固定ターミナルから離隔することにより、主ラインと同時に副ラインも開く、態様11に記載の保護素子。
13. さらに第3ターミナルおよび第4ターミナルを有し、
前記発熱体は、前記第3ターミナルおよび前記第4ターミナルに電気的に接続され、
前記第3ターミナル、前記発熱体、および前記第4ターミナルは、副ラインを構成する、
態様10に記載の保護素子。
14. さらに、圧縮バネ、引張りバネ、板バネおよびトーションバネから選択される1種またはそれ以上のバネを有し、
前記連結部材が一対の固定ターミナルから離隔する方向の力が、前記バネにより加えられている、態様10〜13のいずれかに記載の保護素子。
15. 前記バネが、圧縮バネである、態様14に記載の保護素子。
16. さらに、絶縁性のスライダーを有し、
前記スライダーは、前記連結部材が前記一対の固定ターミナルから離隔した場合に、スライドし、連結部材と固定ターミナル間を物理的、電気的に離隔する、態様10〜15のいずれかに記載の保護素子。
17. 前記スライダーは一対のスライダーであり、前記連結部材を挟んで対向して設置され、連結部材が前記一対の固定ターミナルから離隔した場合に、互いに他方のスライダーに向かってスライドする、態様16に記載の保護素子。
18. 前記スライダーの推力は、バネにより得られる、態様16または17に記載の保護素子。
19. 前記一対の固定ターミナルは、少なくとも接点部が平面形状を有する、態様10〜18のいずれかに記載の保護素子。
20. 前記発熱体は、前記一対の固定ターミナルと連結部材の接点部の下に配置されている、態様10〜19のいずれかに記載の保護素子。
21. さらに、磁石を有し、
該磁石は、その磁界範囲内に前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点が含まれ、かつ、該接点における電流の向きと磁束の向きが平行とならないように設置される、態様1〜20のいずれかに記載の保護素子。
22. 前記磁石が一対の磁石であり、該一対の磁石が、前記固定ターミナルと前記可動ターミナルの接点が該一対の磁石の間に位置するように配置されている、態様21に記載の保護素子。
23. 態様1〜22のいずれかに記載の保護素子を有する電気装置。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の保護素子は、種々の電子装置および電気装置の保護装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0135】
1…保護素子、2…固定ターミナル、3…可動ターミナル、4…接合材、
5…発熱体、6…バネ、8…接点部、9…溝、10…可動部、11…固定部、
12…ネジ、13…腕、14…筐体、15…筐体ベース、16…筐体カバー、
17…第3ターミナル、18…第4ターミナル、
21…保護素子、22…配線、
31…保護素子、32…磁石、33…磁石、
51…保護素子、52…第1固定ターミナル、53…第2固定ターミナル、
54…連結部材、55…第3ターミナル、56…接合材、57…発熱体、
58…スライダー、59…圧縮バネ、60…トーションバネ、61…ガイド軸、
62…配線、63…接点部、64…磁石、15…筐体、
66…筐体ベース、67…筐体カバー、68…絶縁体、69…配線、
71…凸部、72…接続部、73…羽部、74…貫通口、75…斜面、
81…保護素子、82…保持部材、83…シャフト、84…連結部材、
88…スライダー
図1
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図12