特許第6716561号(P6716561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6716561マルチクラッチトランスミッションを制御する方法、コンピュータで実行するコンピュータプログラム、
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716561
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】マルチクラッチトランスミッションを制御する方法、コンピュータで実行するコンピュータプログラム、
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/091 20060101AFI20200622BHJP
   F16H 3/12 20060101ALI20200622BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   F16H3/091
   F16H3/12
   F16H61/688
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-527354(P2017-527354)
(86)(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公表番号】特表2017-535732(P2017-535732A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2014025017
(87)【国際公開番号】WO2016078680
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】カーペンマン,フレドリック
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−280948(JP,A)
【文献】 特開2012−237347(JP,A)
【文献】 特表2013−513765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/00−3/78
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)のマルチクラッチトランスミッション(200)を制御する方法であって、
前記マルチクラッチトランスミッション(200)は、
第1のインプットシャフト(12)、第2のインプットシャフト(13)、第1のシャフト(60)及び第2のシャフト(61)と、
前記第1のシャフト(60)及び前記第2のシャフト(61)のうち異なるシャフトに配置される、少なくとも第1の歯形クラッチ(22,23,24)及び第2の歯形クラッチ(20,21)と、
第1の作動状態(d2)及び第2の作動状態(d1)を有し、前記第1の作動状態(d2)及び前記第2の作動状態(d1)のどちらであるかに応じて、トルクを伝達していない前記第1及び前記第2のインプットシャフト(12,13)の一方の速度を増速又は減速する、セントラルシンクロナイザ(70)と、
を備え、
前記第1の歯形クラッチ(22,23,24)は、第1の部材及び第2の部材を有し、
前記第2の歯形クラッチ(20,21)は、第1の部材及び第2の部材を有し、
前記第1の歯形クラッチ(22,23,24)及び前記第2の歯形クラッチ(20,21)は、係合状態又は非係合状態となり、前記係合状態において、前記第1の歯形クラッチ(22,23,24)の前記第1の部材と前記第2の部材とが作動接続し、前記第2の歯形クラッチ(20,21)の前記第1の部材と前記第2の部材とが作動接続し、前記非係合状態において、前記作動接続が無効とされ、
一時的にトルクを伝達する作動ギヤから次に作動ギヤになると予測される予測ギヤへのギヤシフト進行中
合対象の前記第1の歯形クラッチ(22,23,24)の前記第1の部材の速度が当該第1の歯形クラッチ(22,23,24)の前記第2の部材の速度に同期するように、前記セントラルシンクロナイザ(70)を前記第1の作動状態(d2)へと作動させるステップと、
係合対象の前記歯形クラッチ(22,23,24;20,21)を係合させようと試みるステップと、を備え、
係合開始から所定期間、係合対象の前記歯形クラッチ(22,23,24;20,21)が完全に係合しないと判定されたとき、係合対象の前記歯形クラッチ(22,23,24;20,21)の前記2つの部材の速度がわずかに非同期となるように、前記セントラルシンクロナイザ(70)を前記第2の作動状態(d1)へと作動させるステップと、
係合対象の前記歯形クラッチ(22,23,24;20,21)を係合させるステップと、
を実行することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、事前選択ギヤのギヤシフト進行中に使用される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測ギヤは3速ギヤであり、前記第1の歯形クラッチ(23)は、前記第1のシャフト(60)の1つの部材に設けられ、かつ、ギヤホイール(47)を前記第1のシャフト(60)に接続する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予測ギヤは6速ギヤであり、係合対象の前記歯形クラッチ(21)は、前記第2のシャフト(61)に配置されたギヤホイール(41)を接続し、かつ、その係合位置において、前記第2のシャフト(61)に回転可能に配置された2つのギヤホイール(40,41)を接続する第2の歯形クラッチである、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、作動ギヤの変更中に使用される、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のシャフトはメインシャフト(60)、前記第2のシャフトはカウンターシャフト(61)である、
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の全ステップを実行する、コンピュータで実行される、プログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項1に記載の全ステップを実行する、コンピュータで実行される、プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項9】
ユーティリティビークル(V)を制御する制御装置(CU)であって、
請求項1に記載の方法の全ステップを実行するように構成された制御装置(CU)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯と歯とが対面する状態(tooth-to-tooth situations)が容易に解決されるように、ユーティリティビークル(a utility vehicle)のデュアルクラッチトランスミッションのギヤを事前選択する方法に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス及び建設機械など、大型車両に適用することができる。本発明は、トラックに関して説明されるが、本発明は、この特定の車両に限定されず、バス、建設機械及び/又は乗用車など、他の車両に使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
デュアルクラッチトランスミッションは、近年、パーソナルカー及びユーティリティビークルにとって、ますます一般的になってきている。デュアルクラッチトランスミッションは、通常、ノーマルクローズ(係合)クラッチ及びノーマルオープン(開放)クラッチを備えている。スプリング機構がノーマルクローズクラッチに作用し、クラッチを解放状態に保持する作用力がなければ、クラッチが係合する。ノーマルオープンクラッチについては、スプリング機構がノーマルオープンクラッチに作用し、クラッチを係合状態に保持する作用力がなければ、クラッチが解放する。これらのクラッチは、通常、圧力媒体駆動アクチュエータ(a pressure medium driven actuator)によって操作される。このシステムにおける圧力はコンプレッサによって蓄積されるが、車両の停止中には、このシステムにおける圧力がクラッチを制御するには低すぎる可能性がある。ノーマルクローズクラッチが第1のインプットシャフトに接続され、ノーマルオープンクラッチが第2のインプットシャフトに接続される。
【0004】
ノーマルクローズクラッチ及びノーマルオープンクラッチは、両方とも入力クラッチである。各入力クラッチは、一組のギヤを選定する。入力クラッチは、インプットシャフトを車両の機械的エネルギ供給源(例えば、内燃機関)に接続する。デュアルクラッチトランスミッションでは、ギヤによって使用されるインプットシャフトが被駆動輪に駆動接続されているとき、ギヤが事前選択されたものとして参照されるが、関連したクラッチが解放されている。作動ギヤ(an active gear)は、車両が現在走行しているギヤである。
【0005】
今度のギヤシフトに備えるため、実際のギヤシフトの前に、事前選択ギヤが変更される。これは、パワーシフトを可能とし、又は、パワーカットオフシフト中のパワーカットオフ時間を短縮することができる。パワーシフトは、トランスミッションでギヤが変更され、内燃機関がドライブラインへの牽引力を維持するときである。パワーカットオフシフトは、シフト中に牽引源とドライブラインとの間で動力伝達が遮断されるとき、例えば、標準的な車両のマニュアルトランスミッションでの通常のシフトのときである。
【0006】
事前選択ギヤの変更は、一般的に、係合ギヤに対する歯形クラッチの係合を可能にする同期ステップを含む。同期ステップのために、係合部分の相対運動に応じて、一定時間、歯と歯とが対面する状態になる一定の可能性が常にある。
【0007】
このような歯と歯とが対面する状態は、ノーマルオープンクラッチをわずかに係合させ、歯形クラッチの2つの係合部分間の相対運動を生じさせることによって解決することができる。入力クラッチの作動は、相対的な時間を要する動作であり、実際のギヤシフトの遅れの原因にもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題を解決又は軽減する、車両のマルチクラッチトランスミッションを制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0010】
マルチクラッチトランスミッションに適合した方法を提供することによって、
第1のインプットシャフト、第2のインプットシャフト、第1のシャフト及び第2のシャフトと、
第1のインプットシャフト、第2のインプットシャフト、第1のシャフト及び第2のシャフトの中から選択された異なるシャフトに配置され、前記第1及び前記第2のインプットシャフトの一方に夫々駆動接続される第1及び第2の部材を有する、少なくとも第1及び第2の歯形クラッチと、
第1及び第2の作動状態(d1;d2)を有し、第1及び第2の作動状態(d1;d2)のどちらであるかに応じて、トルクを伝達していない第1及び第2のインプットシャフト(12,13)の一方の速度を増速又は減速する、セントラルシンクロナイザ(70)と、
を備える。
【0011】
駆動接続部は、相互に接続する2つの部分として定義され、駆動力/トルクが、1つ又はいくつかの中間部分を介して直接的又は間接的に2つの部分間で伝達される。駆動接続部は永久的である必要はなく、1つ若しくはいくつかのカップリング、又は、2つの部分間のクラッチを介して達成することができる。歯形クラッチは、シャフト及びギヤホイールに、又は、任意形状の接続部分を介して、直接配置することができる。また、歯形クラッチは、トランスミッションにおける2つの部分間の駆動接続を可能にするため、相互に係合するように配置される、少なくとも第1及び第2の部材を備えている。
【0012】
セントラルシンクロナイザは、トルクを伝達しているインプットシャフトの速度を使用することによって、トルクを伝達していないインプットシャフトの一方を増速又は減速するように配置される。各インプットシャフトは、どのシャフトが駆動されているかに応じて、また、セントラルシンクロナイザがどの駆動状態にあるかに応じて、他のインプットシャフトの速度と比較して、減速して同期するか増速して同期する。2つの作動状態を達成するため、セントラルシンクロナイザの異なる配置がある。セントラルシンクロナイザの1つの例示的な実施形態では、セントラルシンクロナイザの第1及び第2の作動状態方向は、相互に反対方向の第1及び第2の方向を向く。
【0013】
トルクを伝達していないインプットシャフトは、依然として、係合対象の歯形クラッチの部材と駆動接続することができるため、セントラルシンクロナイザを使用して、歯形クラッチの第1及び第2の部材を同期及び非同期とすることができる。
【0014】
ここで、第1及び第2の歯形クラッチは、係合位置及び非係合位置に配置することができ、これによって、係合位置において、第1及び第2の歯形クラッチは、その第1の部材が配置される部分とその第2の部材が配置される部分との間の駆動接続を可能にする。歯形クラッチにより係合される部分は、他のシャフトを有するシャフト、ギヤホイールを有するシャフト、他のギヤホイールを有するギヤホイール、又は、マルチクラッチトランスミッションの2つの回転部材の他の任意の組み合わせとすることができる。歯形クラッチの非係合位置では、歯形クラッチの各部材を備えたトランスミッションの2つの部分は、相互に切り離されている、即ち、駆動接続ではなく、これによって、駆動接続が無効にされている。ギヤホイールは、通常、ギヤステップ(a gear step)、ギヤホイール対(a gearwheel pair)、ギヤセット(a gear set)又はギヤステージ(a gear stage)の1つの部材である。
【0015】
この方法によれば、現在係合されているギヤから予測ギヤへのギヤシフト進行中に、この方法は、
係合対象の歯形クラッチの第1の部材の速度が、予測ギヤに応じた歯形クラッチの第2の部材の速度に同期するように、セントラルシンクロナイザを第1の作動状態へと作動させるステップと、
歯形クラッチを係合させるように試みるステップと、
係合開始から所定期間、歯形クラッチが完全に係合しないと判定されたとき、歯形クラッチの第1及び第2の部材の速度がわずかに非同期になるように、セントラルシンクロナイザを第2の作動状態へと作動させるステップと、
係合対象の歯形クラッチを再係合させるステップと、
を備える。
【0016】
通常、作用力は、全進行中、歯形クラッチに保持され、これによって、歯形クラッチの2つの部材が非同期になると、歯形クラッチが直ちに係合する。
【0017】
本発明による方法は、係合対象の歯形クラッチの部材の同期回転における速度差を達成することによって、歯形クラッチの係合を妨げる、歯と歯とが対面する状態を排除することを可能にする。
【0018】
この方法は、好ましくは、ギヤの新しい事前選択が行われたとき、例えば、作動駆動ギヤ(active drive gear)が変更された直後、又は、他の事前選択が所望されるときに、事前選択ギヤのギヤシフト進行中に使用することができる。
【0019】
本出願では、作動ギヤ、予測ギヤ及び事前選択ギヤという用語が使用される。これらの用語はすべて、ギヤの異なる状態を表し、いずれのギヤもこれらの状態のいずれかにあることができるが、任意の時点で各状態に1つのギヤのみだけが存在することができる。作動ギヤは、トランスミッション入力からトランスミッション出力へと一時的に(momentarily)トルクを伝達するギヤである。予測ギヤは、次に作動ギヤになると予測されるギヤであり、事前選択ギヤは、トランスミッションの非作動部分において事前選択されたギヤである。
【0020】
1つの例示的な実施形態では、この方法は、第1及び第2のインプットシャフトを備えたデュアルクラッチトランスミッションに適用され、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフト、歯形クラッチはメインシャフト及びカウンターシャフトに夫々配置される。デュアルクラッチトランスミッションは、第1及び第2の作動状態に応じた、2つの反対方向に変位可能なセントラルシンクロナイザを更に備えている。この例示的な実施形態では、予測ギヤは3速ギヤ(a third gear)であり、第1の歯形クラッチが第1のシャフトに配置され、ギヤホイールを第1のシャフトに接続しており、これによって、歯形クラッチの第1及び第2の部材が第1のシャフト及びギヤホイールのいずれかに夫々関連付けられている。通常、加速段階中、3速ギヤが予測されると、二速ギヤ(a second gear)が作動し、1速ギヤ(a first gear)が事前選択されるか又はまさに事前選択されている。3速ギヤが予測されると、事前選択ギヤは、1速ギヤから3速ギヤに変更されるべきである。
【0021】
この方法は、第1及び第2のインプットシャフトを備えたデュアルクラッチトランスミッションに依然として適用される方法の他の例示的な実施形態として、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフト、歯形クラッチはメインシャフト及びカウンターシャフトに夫々配置される。デュアルクラッチトランスミッションは、第1及び第2の作動状態に応じた、2つの反対方向に変位可能なセントラルシンクロナイザを更に備えている。この方法のこの例示的な実施形態では、予測ギヤは6速ギヤ(a sixth gear)であり、第1の歯形クラッチは、第2のシャフトに相互に隣接して回転可能に配置された2つのギヤホイールを接続するように配置される。これによって、作動ギヤは通常5速ギヤ(a fifth gear)であり、5速ギヤで車両が走行している間に、予測ギヤは4速ギヤ(a fourth gear)から6速ギヤへと変更される。
【0022】
この方法はまた、作動ギヤを変更するギヤシフト進行中、例えば、車両が1速ギヤで走行しており、2速ギヤで走行するように変更されたときに適用することができる。
【0023】
この方法は、第1及び第2のインプットシャフトを備えたデュアルトランスミッションに依然として適用される方法の他の例示的な実施形態として、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフト、歯形クラッチはメインシャフト及びカウンターシャフトに夫々配置される。デュアルクラッチトランスミッションは、第1及び第2の作動状態に応じた、2つの反対方向に変位可能なセントラルシンクロナイザを更に備えている。この例示的な実施形態では、1つの作動ギヤから他の作動ギヤ(事前選択されていない作動ギヤ)へと直接変更するギヤシフト進行中、この方法を使用する一例が与えられる。一時的な作動ギヤは2速ギヤであり、事前選択ギヤは3速ギヤであり、一時的な作動ギヤから5速ギヤへのギヤシフト進行中に、
2速ギヤを非係合とするために、第1のシャフトの第1の歯形クラッチを中立位置に制御するステップと、
係合対象の歯形クラッチの第1の部材の速度が係合対象の歯形クラッチの第2の部材の速度に同期するように、セントラルシンクロナイザを第1の方向へと作動させ、これによって、第1及び第2の部材が予測ギヤに応じた隣接ギヤホイールに配置させるステップと、
(5速ギヤを作動させるため、)係合対象の歯形クラッチをギヤホイールに係合させようと試みるステップと、
係合開始から所定期間、歯形クラッチが完全に係合しないと判定されれば、係合対象の歯形クラッチの2つの部材の速度がわずかに非同期となるように、セントラルシンクロナイザを第2の方向へと作動させるステップと、
係合対象の歯形クラッチを再係合させるステップと、
を実行する。
【0024】
通常、圧力は、全進行中、歯形クラッチに保持され、これによって、歯形クラッチ及びギヤホイールが非同期になると、歯形クラッチが直ちに係合する。
【0025】
例示的な実施形態では、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフトである。
【0026】
この方法の他の例示的な実施形態では、この方法は、インプットシャフトの一方又は両方に設けられた歯形クラッチを備えたトランスミッションに適用される。インプットシャフトに備えられた歯形クラッチは、開示された方法に従って、同期又は非同期となることができる。
【0027】
この方法の他の例示的な実施形態では、この方法は、第1部分及び第2部分のセントラルシンクロナイザとして提供される、セントラルシンクロナイザを備えたトランスミッションに適用され、第1部分のセントラルシンクロナイザはセントラルシンクロナイザの第1の作動状態を表し、第2部分のセントラルシンクロナイザはセントラルシンクロナイザの第2の作動状態を表す。
【0028】
説明したように、この方法は、セントラルシンクロナイザの特定のレイアウト、又は、歯形クラッチが配置されるシャフトとは関係なく、異なる構成を持つデュアルクラッチトランスミッションに適用することができる。
【0029】
この方法は、好ましくは、プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムによって実行され、このプログラムはコンピュータで実行される。
【0030】
このコンピュータプログラムは、好ましくは、コンピュータ読み取り可能な媒体に保持され、このプログラムはコンピュータで実行される。
【0031】
制御装置は、好ましくは、ユーティリティビークルを制御するように設けられ、本方法のステップを実行するように構成される。
【0032】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0033】
添付図面を参照し、以下に一例として挙げられた、本方法の例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】車両の概略図を示す。
図2】トランスミッションの概略図を示す。
図3】方法の概略的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、ドライブトレーン50を有する、トラックなどの車両Vの模式図を開示する。ドライブトレーン50は、内燃機関CE、トランスミッション200、ドライブトレーン50を制御する制御装置CU、車両Vの異なる部品を備えている。
【0036】
図2は、本方法によって制御することができる、デュアルクラッチトランスミッション200の一例を開示する。開示された一例のように、本方法で制御するのに適したトランスミッションは、2つの入力クラッチ10,11の少なくとも一方に駆動接続されるか又は駆動接続可能な、歯形クラッチ20,21,22,23,24を備えている。この説明においては、歯形クラッチ20,21,22,23,24への参照がなされ、すべての歯形クラッチ20,21,22,23,24は、第1及び第2の部材を備えている。歯形クラッチ20,21,22,23,24の第1及び第2の部材を係合することによって、歯形クラッチ20,21,22,23,24が係合し、歯形クラッチ20,21,22,23,24の第1の部材が配置される部分と、歯形クラッチ20,21,22,23,24の第2の部材が配置される部分と、の間の駆動接続が確立される。
【0037】
デュアルクラッチトランスミッション200は、例えば、内燃機関CE(図1に開示)に接続されるように配置される、ノーマルクローズ式の入力クラッチ10(a normally closed input clutch)及びノーマルオープン式の入力クラッチ(a normally open input clutch)11を備えることができる。デュアルクラッチトランスミッション200は、ノーマルクローズ式の入力クラッチ10に接続される第1のインプットシャフト12と、ノーマルオープン式の入力クラッチ11に接続される第2のインプットシャフト13と、を備えている。両方のクラッチ10及び11がノーマルクローズ式、両方のクラッチ10及び11がノーマルオープン式、又は、クラッチ10がノーマルオープン式でクラッチ11がノーマルクローズ式のように、他のクラッチ構成を有するデュアルクラッチトランスミッションに本発明を実装できることに留意されたい。トランスミッション200は、メインシャフト60と、カウンターシャフト61と、トランスミッション200のシャフト12,13,60,61に回転可能又は固定的(fixedly)に配置された複数のギヤホイール40〜48と、を更に備えている。シャフト60,61とギヤホイール40,45,46,47との間の駆動接続を確立するために、あるいは、歯形クラッチ21が2つのギヤホイール40及び41の間の駆動接続を確立し、歯形クラッチ22がメインシャフト60と第2のインプットシャフト13/ギヤホイール48との間の駆動接続を確立するために、歯形クラッチ20〜24は、回転可能に配置されたギヤホイール40,45,46,47をシャフト60,61に接続するように設けられている。
【0038】
ギヤチェンジ進行中、作動駆動ギヤが変更又は事前選択ギヤが変更されたかとは関係なく、歯形クラッチ20〜24の第1の部材と歯形クラッチ20〜24の第2の部材との間が同期速度となったとき、歯形クラッチ20〜24は、歯と歯とが対面した状態で動くことができなくなる可能性がある。そこで、本発明は、セントラルシンクロナイザ70を制御することによって、これらの状態を解決する。
【0039】
セントラルシンクロナイザ70は、図示の実施形態では、カウンターシャフト61に本質的に配置される。しかしながら、セントラルシンクロナイザの他のデザインも、本方法と互換性がある。開示されたセントラルシンクロナイザは、第1の摩擦部71と、第2の摩擦部72と、接続部73と、第2のインプットシャフト13に配置されるギヤホイール74と、を備えている。第1の摩擦部71は、ギヤホイール41の一部であるか、ギヤホイール41に固定的に配置されている。第2の摩擦部72は、ギヤホイール74のギヤ歯と噛み合うギヤ歯を備えている。接続部73は、カウンターシャフト61に回転可能に固定され、かつ、軸方向に移動可能に配置される。接続部73は、右及び左方向d1,d2(左右は図2の左右を参照)に変位することができる。
【0040】
接続部73を右方向d1に変位させることによって、接続部73が第1の摩擦部71に係合し、これによって、接続部73が第1の摩擦部71と同期してギヤホイール41と同期する。ここで、第1及び第2のインプットシャフト12,13は、第1のインプットシャフト12の入力ギヤホイール49及びカウンターシャフト61の入力ギヤホイール44を介して、並びに、第2のインプットシャフト13の入力ギヤホイール48及びカウンターシャフト61の第1の入力ギヤホイール41を介して接続される。
【0041】
接続部73を左方向d2に変位させることによって、接続部73が第2の摩擦部72に係合し、これによって、接続部73が第2の摩擦部72と同期する。ここで、第1及び第2のインプットシャフト12,13は、第1のインプットシャフト12の入力ギヤホイール49、カウンターシャフト61の第2の入力ギヤホイール44及びセントラルシンクロナイザ70を介して、並びに、第2のインプットシャフト13のギヤホイール74を介して接続される。
【0042】
接続部73の変位方向に応じて、第2のインプットシャフト13のギヤホイール74と第2の摩擦部72とのギヤステップと、第1のインプットシャフト12の入力ギヤホイール48と第1の摩擦部71(即ち、カウンターシャフト61の第1の入力ギヤホイール41)とのギヤステップと、の間の変速比の違いのために、第1及び第2のインプットシャフト12,13の間で異なる変速比が達成される。それは、ギヤチェンジ進行中に発生する、歯と歯とが対面する状態を解決するために、提示の方法で使用されるこの変速比差である。
【0043】
ここで、図3において、マルチクラッチトランスミッション200を制御する提案方法を説明する。歯形クラッチ20,21,22,23,24のいずれかが係合される段階にギヤシフト進行があるとき、この方法がスタートする(100)。係合対象の歯形クラッチ20,21,22,23,24の2つの部材間の同期を達成するために、セントラルシンクロナイザ70は、第1の方向d1,d2に作動される(110)。
【0044】
ここで、トランスミッション200を備えた車両Vが1速ギヤで走行していた後、2速ギヤで走行すると、ノーマルクローズクラッチ10、第1のインプットシャフト12、ギヤステップ49−44を介して、内燃機関CEからカウンターシャフト61へとトルクが伝達され、ギヤステップ42−46を介して、トルクが出力されるメインシャフト60にトルクが伝達される。2速ギヤを達成するために、歯形クラッチ24が図中左に係合しなければならず、これによって、ギヤホイール46をメインシャフト60に駆動接続する。1速ギヤが事前選択されると、歯形クラッチ20及び21は、同様に係合される必要がある。
【0045】
3速ギヤが予測ギヤになると、事前選択ギヤが、1速ギヤから3速ギヤへと変更される。3速ギヤを事前選択するために、歯形クラッチ23が係合してギヤホイール47をメインシャフト60に接続する。しかしながら、事前選択された1速ギヤがないため、第1のステップは歯形クラッチ20の係合を解く。この方法がスタートすると、セントラルシンクロナイザ70は、ギヤホイール47の速度を低下させて歯形クラッチ23の部材を同期させるために、このケースでは方向d2である第1の方向に作動される。歯形クラッチ23の部材が同期速度に到達すると、歯形クラッチ23のギヤホイール47への係合が試みられる(120)。ここで、歯形クラッチ23が理想的に係合し(130)、これによって、この方法が終了する(160)。しかしながら、歯形クラッチ23を係合させようとの試みを開始してから所定期間、歯形クラッチ23が完全に係合しないと判定すれば(130)、歯形クラッチ23の部材の結合歯が歯と歯とが対面して動かなくなったと考えられる。
【0046】
このため、セントラルシンクロナイザ70は、歯形クラッチ23の部材間の非同期を開始するために、このケースでは方向d1である第2の方向に作動され(140)、歯形クラッチ23の部材間のわずかな運動を達成して、歯と歯とが対面する状態を解決する。歯形クラッチ23は、その後、ただちに係合する(150)。通常、クラッチアクチュエータ(図示せず)が歯形クラッチ23への作用力を保持し、歯形クラッチ23の部材間で非同期が開始された直後に、歯形クラッチ23が係合する。第2の方向d1へのセントラルシンクロナイザ70の作動によって開始された歯形クラッチ23の2つの部材間のわずかな非同期により、係合が100%成功する。
【0047】
どのギヤチェンジが行われたかとは関係なく、この方法が同様に実装される。例えば、トランスミッション200を備えた車両Vが4速ギヤで走行していた後、5速ギヤで走行すると、ノーマルオープンクラッチ11及び第2のインプットシャフト13を介して、内燃機関CEから係合歯形クラッチ22を経てメインシャフト60に直接トルクが伝達され、これによって、メインシャフト60からドライブトレーンにトルクが出力される。
【0048】
ここで、4速ギヤが車両Vの最新の走行ギヤであるため、4速ギヤが事前選択される。4速ギヤを可能とするため、歯形クラッチ20及び歯形クラッチ23が係合する。車両の加速段階において、次の走行ギヤは6速ギヤとなる。ノーマルクローズクラッチ10、第1のインプットシャフト12、ギヤステップ49−44、歯形クラッチ20、ギヤホイール40、ギヤホイール40をギヤホイール41に接続する歯形クラッチ21、ギヤステップ41−48を介して、内燃機関CEから係合歯形クラッチ22を経てメインシャフト60へとトルクが伝達され、これによって、メインシャフト60からドライブトレーンにトルクが出力される、6速ギヤが実現される。
【0049】
4速ギヤから予測ギヤである6速ギヤへと事前選択されたギヤのギヤシフトを達成するため、歯形クラッチ23の係合が解かれ、ギヤホイール47がメインシャフト60から切り離され、このステップが4速ギヤの係合を解く。この方法によって、6速ギヤを事前選択するため、この方法は100でスタートし、セントラルシンクロナイザ70が、ギヤホイール41の速度を低下させ、ギヤホイール41及び40に夫々配置された、歯形クラッチ20の2つの部材を同期可能とするために、このケースでは方向d1である第1の方向に作動される(110)。歯形クラッチ20の部材が同期速度に到達すると、歯形クラッチ20の係合が試みられる(120)。
【0050】
ここで、理想的に歯形クラッチ20が係合し(130)、ギヤホイール40とカウンターシャフト61との間の駆動接続があると、これによって、この方法が終了する(160)。しかしながら、歯形クラッチ20を係合させようとの試みを開始してから所定期間、歯形クラッチ20が完全に係合しないと判定されれば(130)、歯形クラッチ20の2つの部材が歯と歯とが対面して動かなくなったと考えられる。
【0051】
このため、歯形クラッチ20の2つの部材間で非同期を開始するため、このケースでは方向d2である第2の方向に、セントラルシンクロナイザ70が作動される(140)。第2の方向d2にセントラルシンクロナイザ70を作動させることによって(140)、カウンターシャフト61の速度及び歯形クラッチ20の第1の部材の速度がわずかに上昇し、これによって、歯と歯とが対面する状態が解決される。歯形クラッチ20はその直後に係合し(150)、この方法が終了する(160)。歯と歯とが確実に妨げ合わない、第2の方向d2へのセントラルシンクロナイザ70の作動によって開始される歯形クラッチ20の2つの部材間のわずかな非同期のために、係合が100%成功する。
【0052】
上述した2つの実施例では、1つの事前選択ギヤから他の事前選択ギヤへと変更するとき、ギヤチェンジ進行においてこの方法が使用される。しかしながら、この方法もまた、1つの作動ギヤから他の作動ギヤへの直接変更のために使用することができる。例えば、トランスミッション200を備えた車両Vが4速ギヤで走行し、ギヤシフトを行うために、ノーマルクローズ式及びノーマルオープン式の入力クラッチ10,11の両方を同時に開放する点だけが異なる、上述した方法を使用することによって、6速ギヤへのパワーカットオフギヤチェンジ進行を直接的に行う。
【0053】
本発明は、上述及び図面に図示された実施形態に限定されないと理解されるべきであり、むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で、多様な変更及び修正がなされることを認識するであろう。特に、この方法は、同期/非同期対象の歯形クラッチがどのシャフトに配置されるか、セントラルシンクロナイザの特定レイアウトとは関係なく、デュアルクラッチトランスミッションに適用することができる。
図1
図2
図3