【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0010】
マルチクラッチトランスミッションに適合した方法を提供することによって、
第1のインプットシャフト、第2のインプットシャフト、第1のシャフト及び第2のシャフトと、
第1のインプットシャフト、第2のインプットシャフト、第1のシャフト及び第2のシャフトの中から選択された異なるシャフトに配置され、前記第1及び前記第2のインプットシャフトの一方に夫々駆動接続される第1及び第2の部材を有する、少なくとも第1及び第2の歯形クラッチと、
第1及び第2の作動状態(d1;d2)を有し、第1及び第2の作動状態(d1;d2)のどちらであるかに応じて、トルクを伝達していない第1及び第2のインプットシャフト(12,13)の一方の速度を増速又は減速する、セントラルシンクロナイザ(70)と、
を備える。
【0011】
駆動接続部は、相互に接続する2つの部分として定義され、駆動力/トルクが、1つ又はいくつかの中間部分を介して直接的又は間接的に2つの部分間で伝達される。駆動接続部は永久的である必要はなく、1つ若しくはいくつかのカップリング、又は、2つの部分間のクラッチを介して達成することができる。歯形クラッチは、シャフト及びギヤホイールに、又は、任意形状の接続部分を介して、直接配置することができる。また、歯形クラッチは、トランスミッションにおける2つの部分間の駆動接続を可能にするため、相互に係合するように配置される、少なくとも第1及び第2の部材を備えている。
【0012】
セントラルシンクロナイザは、トルクを伝達しているインプットシャフトの速度を使用することによって、トルクを伝達していないインプットシャフトの一方を増速又は減速するように配置される。各インプットシャフトは、どのシャフトが駆動されているかに応じて、また、セントラルシンクロナイザがどの駆動状態にあるかに応じて、他のインプットシャフトの速度と比較して、減速して同期するか増速して同期する。2つの作動状態を達成するため、セントラルシンクロナイザの異なる配置がある。セントラルシンクロナイザの1つの例示的な実施形態では、セントラルシンクロナイザの第1及び第2の作動状態方向は、相互に反対方向の第1及び第2の方向を向く。
【0013】
トルクを伝達していないインプットシャフトは、依然として、係合対象の歯形クラッチの部材と駆動接続することができるため、セントラルシンクロナイザを使用して、歯形クラッチの第1及び第2の部材を同期及び非同期とすることができる。
【0014】
ここで、第1及び第2の歯形クラッチは、係合位置及び非係合位置に配置することができ、これによって、係合位置において、第1及び第2の歯形クラッチは、その第1の部材が配置される部分とその第2の部材が配置される部分との間の駆動接続を可能にする。歯形クラッチにより係合される部分は、他のシャフトを有するシャフト、ギヤホイールを有するシャフト、他のギヤホイールを有するギヤホイール、又は、マルチクラッチトランスミッションの2つの回転部材の他の任意の組み合わせとすることができる。歯形クラッチの非係合位置では、歯形クラッチの各部材を備えたトランスミッションの2つの部分は、相互に切り離されている、即ち、駆動接続ではなく、これによって、駆動接続が無効にされている。ギヤホイールは、通常、ギヤステップ(a gear step)、ギヤホイール対(a gearwheel pair)、ギヤセット(a gear set)又はギヤステージ(a gear stage)の1つの部材である。
【0015】
この方法によれば、現在係合されているギヤから予測ギヤへのギヤシフト進行中に、この方法は、
係合対象の歯形クラッチの第1の部材の速度が、予測ギヤに応じた歯形クラッチの第2の部材の速度に同期するように、セントラルシンクロナイザを第1の作動状態へと作動させるステップと、
歯形クラッチを係合させるように試みるステップと、
係合開始から所定期間、歯形クラッチが完全に係合しないと判定されたとき、歯形クラッチの第1及び第2の部材の速度がわずかに非同期になるように、セントラルシンクロナイザを第2の作動状態へと作動させるステップと、
係合対象の歯形クラッチを再係合させるステップと、
を備える。
【0016】
通常、作用力は、全進行中、歯形クラッチに保持され、これによって、歯形クラッチの2つの部材が非同期になると、歯形クラッチが直ちに係合する。
【0017】
本発明による方法は、係合対象の歯形クラッチの部材の同期回転における速度差を達成することによって、歯形クラッチの係合を妨げる、歯と歯とが対面する状態を排除することを可能にする。
【0018】
この方法は、好ましくは、ギヤの新しい事前選択が行われたとき、例えば、作動駆動ギヤ(active drive gear)が変更された直後、又は、他の事前選択が所望されるときに、事前選択ギヤのギヤシフト進行中に使用することができる。
【0019】
本出願では、作動ギヤ、予測ギヤ及び事前選択ギヤという用語が使用される。これらの用語はすべて、ギヤの異なる状態を表し、いずれのギヤもこれらの状態のいずれかにあることができるが、任意の時点で各状態に1つのギヤのみだけが存在することができる。作動ギヤは、トランスミッション入力からトランスミッション出力へと一時的に(momentarily)トルクを伝達するギヤである。予測ギヤは、次に作動ギヤになると予測されるギヤであり、事前選択ギヤは、トランスミッションの非作動部分において事前選択されたギヤである。
【0020】
1つの例示的な実施形態では、この方法は、第1及び第2のインプットシャフトを備えたデュアルクラッチトランスミッションに適用され、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフト、歯形クラッチはメインシャフト及びカウンターシャフトに夫々配置される。デュアルクラッチトランスミッションは、第1及び第2の作動状態に応じた、2つの反対方向に変位可能なセントラルシンクロナイザを更に備えている。この例示的な実施形態では、予測ギヤは3速ギヤ(a third gear)であり、第1の歯形クラッチが第1のシャフトに配置され、ギヤホイールを第1のシャフトに接続しており、これによって、歯形クラッチの第1及び第2の部材が第1のシャフト及びギヤホイールのいずれかに夫々関連付けられている。通常、加速段階中、3速ギヤが予測されると、二速ギヤ(a second gear)が作動し、1速ギヤ(a first gear)が事前選択されるか又はまさに事前選択されている。3速ギヤが予測されると、事前選択ギヤは、1速ギヤから3速ギヤに変更されるべきである。
【0021】
この方法は、第1及び第2のインプットシャフトを備えたデュアルクラッチトランスミッションに依然として適用される方法の他の例示的な実施形態として、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフト、歯形クラッチはメインシャフト及びカウンターシャフトに夫々配置される。デュアルクラッチトランスミッションは、第1及び第2の作動状態に応じた、2つの反対方向に変位可能なセントラルシンクロナイザを更に備えている。この方法のこの例示的な実施形態では、予測ギヤは6速ギヤ(a sixth gear)であり、第1の歯形クラッチは、第2のシャフトに相互に隣接して回転可能に配置された2つのギヤホイールを接続するように配置される。これによって、作動ギヤは通常5速ギヤ(a fifth gear)であり、5速ギヤで車両が走行している間に、予測ギヤは4速ギヤ(a fourth gear)から6速ギヤへと変更される。
【0022】
この方法はまた、作動ギヤを変更するギヤシフト進行中、例えば、車両が1速ギヤで走行しており、2速ギヤで走行するように変更されたときに適用することができる。
【0023】
この方法は、第1及び第2のインプットシャフトを備えたデュアルトランスミッションに依然として適用される方法の他の例示的な実施形態として、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフト、歯形クラッチはメインシャフト及びカウンターシャフトに夫々配置される。デュアルクラッチトランスミッションは、第1及び第2の作動状態に応じた、2つの反対方向に変位可能なセントラルシンクロナイザを更に備えている。この例示的な実施形態では、1つの作動ギヤから他の作動ギヤ(事前選択されていない作動ギヤ)へと直接変更するギヤシフト進行中、この方法を使用する一例が与えられる。一時的な作動ギヤは2速ギヤであり、事前選択ギヤは3速ギヤであり、一時的な作動ギヤから5速ギヤへのギヤシフト進行中に、
2速ギヤを非係合とするために、第1のシャフトの第1の歯形クラッチを中立位置に制御するステップと、
係合対象の歯形クラッチの第1の部材の速度が係合対象の歯形クラッチの第2の部材の速度に同期するように、セントラルシンクロナイザを第1の方向へと作動させ、これによって、第1及び第2の部材が予測ギヤに応じた隣接ギヤホイールに配置させるステップと、
(5速ギヤを作動させるため、)係合対象の歯形クラッチをギヤホイールに係合させようと試みるステップと、
係合開始から所定期間、歯形クラッチが完全に係合しないと判定されれば、係合対象の歯形クラッチの2つの部材の速度がわずかに非同期となるように、セントラルシンクロナイザを第2の方向へと作動させるステップと、
係合対象の歯形クラッチを再係合させるステップと、
を実行する。
【0024】
通常、圧力は、全進行中、歯形クラッチに保持され、これによって、歯形クラッチ及びギヤホイールが非同期になると、歯形クラッチが直ちに係合する。
【0025】
例示的な実施形態では、第1のシャフトはメインシャフト、第2のシャフトはカウンターシャフトである。
【0026】
この方法の他の例示的な実施形態では、この方法は、インプットシャフトの一方又は両方に設けられた歯形クラッチを備えたトランスミッションに適用される。インプットシャフトに備えられた歯形クラッチは、開示された方法に従って、同期又は非同期となることができる。
【0027】
この方法の他の例示的な実施形態では、この方法は、第1部分及び第2部分のセントラルシンクロナイザとして提供される、セントラルシンクロナイザを備えたトランスミッションに適用され、第1部分のセントラルシンクロナイザはセントラルシンクロナイザの第1の作動状態を表し、第2部分のセントラルシンクロナイザはセントラルシンクロナイザの第2の作動状態を表す。
【0028】
説明したように、この方法は、セントラルシンクロナイザの特定のレイアウト、又は、歯形クラッチが配置されるシャフトとは関係なく、異なる構成を持つデュアルクラッチトランスミッションに適用することができる。
【0029】
この方法は、好ましくは、プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムによって実行され、このプログラムはコンピュータで実行される。
【0030】
このコンピュータプログラムは、好ましくは、コンピュータ読み取り可能な媒体に保持され、このプログラムはコンピュータで実行される。
【0031】
制御装置は、好ましくは、ユーティリティビークルを制御するように設けられ、本方法のステップを実行するように構成される。
【0032】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0033】
添付図面を参照し、以下に一例として挙げられた、本方法の例示的な実施形態をより詳細に説明する。