特許第6716623号(P6716623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6716623エリスロポエチン誘導作用を示す組成物及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6716623
(24)【登録日】2020年6月12日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】エリスロポエチン誘導作用を示す組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/068 20060101AFI20200622BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20200622BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20200622BHJP
【FI】
   A61K36/068
   C12N1/14 F
   C12N1/14 H
   A23L33/10
   C12N1/14 G
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-58380(P2018-58380)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-167326(P2019-167326A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】506208757
【氏名又は名称】小 林 文 男
(74)【代理人】
【識別番号】100107799
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 希子
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 文男
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 正好
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−116522(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102614226(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103652865(CN,A)
【文献】 High Altitude Medicine & Biology, 2014, Vol.15, No.3, pp.371-379
【文献】 BioMed Research International, 2013, Vol.2013, Article ID 569206, pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サナギタケ(Cordyceps militaris)の菌糸体培養物又はその培養物からの抽出物を含有する、エリスロポエチンを誘導するための医薬組成物。
【請求項2】
サナギタケ(Cordyceps militaris)菌糸体培養物又はその培養物からの抽出物を含有する、腎性貧血の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項3】
サナギタケ(Cordyceps militaris)の菌糸体培養物又はその培養物からの抽出物を含有する、エリスロポエチンを誘導するための食品組成物 。
【請求項4】
サナギタケ(Cordyceps militaris)の菌糸体培養物又はその培養物からの抽出物を含有する、腎性貧血の予防用食品組成物 。
【請求項5】
蛋白質及び穀類を含む固体培地にサナギタケ(Cordyceps militaris)の種菌を接種し、菌糸体を培養する工程(I)を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物の製造方法
【請求項6】
さらに、工程(I)を経て得られたサナギタケの固体培養物から、エリスロポエチン誘導作用を示す成分を含む抽出液を得る工程(II)を含む、請求項5に記載の医薬組成物の製造方法
【請求項7】
ブドウ糖、酵母エキス、米糠、酒粕、大豆粉、アスパラギン酸ナトリウム、無機質及び水を含む液体培地にサナギタケ(Cordyceps militaris)の種菌を接種し、菌糸体を培養する工程(1)を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物の製造方法
【請求項8】
さらに、工程(1)を経て得られたサナギタケの液体培養物から、エリスロポエチン誘導作用を示す成分を含む抽出液を得る工程(2)を含む、請求項7に記載の医薬組成物の製造方法
【請求項9】
蛋白質及び穀類を含む固体培地にサナギタケ(Cordyceps militaris)の種菌を接種し、菌糸体を培養する工程(I)を含む、請求項3又は4に記載の食品組成物の製造方法。
【請求項10】
さらに、工程(I)を経て得られたサナギタケの固体培養物から、エリスロポエチン誘導作用を示す成分を含む抽出液を得る工程(II)を含む、請求項9に記載の食品組成物の製造方法。
【請求項11】
ブドウ糖、酵母エキス、米糠、酒粕、大豆粉、アスパラギン酸ナトリウム、無機質及び水を含む液体培地にサナギタケ(Cordyceps militaris)の種菌を接種し、菌糸体を培養する工程(1)を含む、請求項3又は4に記載の食品組成物の製造方法。
【請求項12】
さらに、工程(1)を経て得られたサナギタケの液体培養物から、エリスロポエチン誘導作用を示す成分を含む抽出液を得る工程(2)を含む、請求項11に記載の食品組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリスロポエチン誘導作用を示すサナギタケ培養物又はその培養物からの抽出物を含有する組成物、及びその組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第二次世界大戦後、日本は高度成長期を経て所得水準が上がり、食生活の改善がなされたが、同時に高カロリー摂取による糖尿病の発症率も上昇し、これによる余病の発生率も年々増加している。そのような余病の中でも、腎臓疾患の発生は特に顕著であり、腎性貧血や透析患者数は年々増加傾向にある。
【0003】
腎機能の低下は、造血因子の一種であり、主として腎臓で産生されているエリスロポエチンの不足を来し、その結果として腎性貧血をもたらす。また、近年は、各種スポーツの普及に伴い、プロスポーツ選手はもとよりアマチュアのスポーツ選手も各種場面で活躍する時代となった。種々のスポーツは楽しさもあるが、記録や勝敗の世界では身体の鍛え方や練習も年々ハードになり、スポーツマンといえども貧血者が続出しているのが実情といわれている。
【0004】
ところで、中医学の分野においては、従来より虫草類のキノコ(中草菌)、中でも冬虫夏草(Cordyceps sinensis (Berkeley) Saccardo)という菌が使用されてきたが、その天然ものは絶滅状態に近くなった。そのため、その他の虫草類が、冬虫夏草の代用品としての有用性を探るべく、培養方法、生理活性及びその生理活性を示す有効成分等について研究されてきている。
【0005】
特許文献1には、サナギタケ(Cordyceps militaris (Vuill.))子実体の人工培養方法と、その子実体には、その生理活性物質として、アデノシン及び抗腫瘍活性を示すコルジセピンが含有されていることが開示されている。特許文献1には、サナギタケ菌糸体(培養種菌)の培養液として、グルコース、ペプトン、ポテトエキス、KHPO、MgSO・7HO及び蒸留水を含むものが、また、サナギタケ子実体の培養培地として、おから、米糠及び大豆かすを含むものが開示されている。
【0006】
特許文献2には、虫草類のハナサナギタケ(Isaria japonica Yasuda)又はツクツクボウシタケ(Isaria sinclairii (Berk.) Lloyd)からの培養物乾燥粉末の製造方法と、これらのキノコの培養物もしくは抽出物、又は処理物には、サイトカイン産生増強剤が含有されていることが記載されている。特許文献2には、ハナサナギタケやツクツクボウシタケの培養物は、サイトカイン中、GM−CSFの産生増強効果を示し、GM−CSFは、白血球の造血機能を上昇する働きがあることも記載されている。また、特許文献2には、ハナサナギタケやツクツクボウシタケの大量培養液体培地として、グルコース及び乾燥酵母を含む液体培地が開示されている。
【0007】
特許文献3には、コルジセプス・ミリタリス(Cordyceps militaris)の培養菌糸体の培養濾液及び/又はその菌糸体の溶媒抽出物を含有してなることを特徴とする組成物が開示されている。特許文献3には、この組成物は、おだやかな強心作用及び気管支拡張作用ないし鎮咳作用を併有する旨が記載されている。また、特許文献3には、コルジセプス・ミリタリスの液体培養培地として、M20Y2培地(100mL中の組成:麦芽エキス2g、酵母エキス0.2g;pH5.5)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5800211号公報
【特許文献2】特開2005−104848号公報
【特許文献3】特開平8−12588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
虫草類には様々な生理活性物質が含有されている可能性がある。したがって、本発明の目的は、虫草類中、サナギタケ(Cordyceps militaris)の培養方法を検討するとともに、その培養物からの生理活性物質の抽出方法、及びその培養物又は抽出物中に含まれる物質の生理活性を検討することにより、サナギタケの新たな有用性を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、サナギタケ(Cordyceps militaris)について、その培養方法を検討するとともに、その培養物からの生理活性物質の抽出方法、及びその培養物又は抽出物中に含まれる物質の生理活性を検討し、その結果として本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、以下の組成物に関する:
(1)サナギタケ(Cordyceps militaris)培養物又はその培養物からの抽出物を含有する、エリスロポエチン誘導作用を示す組成物;
(2)サナギタケ培養物が菌糸体培養物である、(1)に記載の組成物;
(3)サナギタケ培養物が、固体培地で培養された培養物を含む、(1)又は(2)に記載の組成物;
(4)固体培地が虫体を含む、(3)に記載の組成物;
(5)さらに白血球数増加作用を示す、(1)乃至(4)のいずれかに記載の組成物;及び
(6)医薬品又は飲食品である、(1)乃至(5)のいずれかに記載の組成物。
【0012】
また、本発明は、以下のエリスロポエチン誘導作用を示す組成物の製造方法に関する:
(7)蛋白質及び穀類を含む固体培地にサナギタケ(Cordyceps militaris)の種菌を接種し、菌糸体を培養する工程(I)を含む、エリスロポエチン誘導作用を示す組成物の製造方法;
(8)さらに、工程(I)を経て得られたサナギタケの固体培養物から、エリスロポエチン誘導作用を示す成分を含む抽出液を得る工程(II)を含む、(7)に記載の製造方法;
(9)工程(II)が、濃度が20乃至50重量%のエタノールを用い、加温抽出及び加熱抽出を行う工程を含む、(7)又は(8)に記載の製造方法;及び
(10)蛋白質が、虫体由来の蛋白質を含む、(7)乃至(9)のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
さらに、本発明は、以下のエリスロポエチン誘導作用を示す組成物の製造方法に関する:
(11)ブドウ糖、酵母エキス、米糠、酒粕、大豆粉、アスパラギン酸ナトリウム、無機質及び水を含む液体培地にサナギタケ(Cordyceps militaris)の種菌を接種し、菌糸体を培養する工程(1)を含む、エリスロポエチン誘導作用を示す組成物の製造方法;
(12)さらに、工程(1)を経て得られたサナギタケの液体培養物から、エリスロポエチン誘導作用を示す成分を含む抽出液を得る工程(2)を含む、(11)に記載の製造方法;及び
(13)工程(2)が、工程(1)を経て得られたサナギタケの液体培養物にエタノールを添加し、加温抽出及び加熱抽出を行う工程を含み、ここで、液体培養物とエタノールとを含む液体中のエタノール濃度が20乃至50重量%である、(12)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、エリスロポエチン誘導作用を示し、且つ安全性が高いので、飲食品又は医薬品として、腎性貧血の予防又は治療に有効である。
【0015】
白血球数増加作用をも示す本発明の組成物においては、エリスロポエチン誘導作用と相俟って、さらに優れた造血効果が期待できる。
【0016】
本発明の組成物は、サナギタケ菌糸体の培養物から調製することができ、また、サナギタケ菌糸体は人工培養できるので、原材料を安定的に供給できる。
【0017】
サナギタケ培養物からの有効成分の抽出は、比較的穏やかな条件下で実施可能であるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1−1乃至1−4は、Cordyceps militaris FT26K3のITS-5.8S rDNAの解析結果報告書である。
図2図2−1乃至2−7は、Cordyceps militaris KT16514のITS-5.8S rDNAの解析結果報告書である。
図3図3は、CM−A投与マウスのへパリン加血漿エリスロポエチン濃度を示すグラフである。
図4図4は、CM−B投与マウスのへパリン加血漿エリスロポエチン濃度を示すグラフである。
図5図5は、CM−A投与マウスのへパリン加血漿エリスロポエチン濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の組成物は、虫草類のサナギタケ(Cordyceps militaris)の培養物又はその培養物からの抽出物を含有する。サナギタケには、図1−2及び1−3並びに図2−4及び2−5に記載されているもの等、多くの株が知られているが、いずれを使用してもよい。また、図1−1乃至1−4に示すように、これらの公知の株と遺伝子的に高い相同率を有するCordyceps militaris FT26K3や、図2−1乃至2−7に示すように、これらの公知の株と遺伝子的に高い相同率を有するCordyceps militaris KT16514も使用することができる。なお、これらの菌株名は、本発明者らが命名したものである。
【0020】
Cordyceps militaris FT26K3は、福島県内の山林に自生したサナギタケ子実体より、菌糸体の純粋分離に成功した菌株である。また、Cordyceps militaris KT16514は、栃木県内の山林に自生したサナギタケ子実体より、菌糸体の純粋分離に成功した菌株である。
【0021】
本発明においては、サナギタケの菌糸体又は子実体培養物を使用する。サナギタケの菌株は、保存用菌株を調製することで維持する。例えば、ポテトデキストロース寒天培地、麦芽エキス寒天培地、バレイショーブドウ糖寒天培地等を使用して、試験管内で殺菌済みの斜面培地を調製し、それに菌糸塊を接種し、培養することにより、保存用菌株を調製する。培養条件は、例えば20乃至30℃で2乃至6週間、好ましくは24乃至27℃で3乃至5週間である。培養後の菌株は、室温で又は冷蔵庫内で保存する。
【0022】
通常は、大量培養に先立ち、保存用菌株から接種用種菌を調製する。キノコの接種用種菌の培養には、従来はおがくず等を主成分とする固体培地が使用されていたが、近年は液体培地も使用されるようになってきた。種菌の培養に使用される液体培地の例としては、SMY培地(ショ糖1重量%、麦芽エキス1重量%、酵母エキス0.4重量%、残部水)、MY培地(ブドウ糖0.4重量%、麦芽エキス1重量%、酵母エキス0.4重量%、残部水)、PD培地(バレイショ20重量%、ブドウ糖2重量%、残部水)、M培地(麦芽エキス2重量%、残部水)、及びこれらの培地にさらに他の栄養成分を添加したものが挙げられる。種菌の培養に使用される液体培地の具体例としては、ブドウ糖、酵母エキス、米糠、酒粕、大豆粉、アスパラギン酸ナトリウム及び水を含む水溶液、並びにブドウ糖、赤糠、大豆粉、酵母エキス、アスパラギン酸ナトリウム及び水を含む水溶液が挙げられる。また、液体培地を使用する場合の種菌の培養条件は、攪拌下において、例えば20乃至30℃で3乃至10日間、好ましくは24乃至27℃で6乃至8日間である。
【0023】
本発明の組成物に使用する培養物の大量培養は、固体培養でも液体培養でもよい。例えば菌糸体の固体培養は、大豆等を含む高蛋白培地(例えば大豆培地;大豆(ひき割りでも粉末であってもよい)、米(玄米でも白米でもよい)及び水を含む)で培養することができる。また、サナギタケは虫草類であり、天然においては天蚕(ヤママユガ)蛹等を宿主として成長するので、蛋白質として虫体、例えば天蚕や白色蚕(家蚕)等の蚕のサナギ(粉末であってもよい)を含有する固体培地(例えばサナギ培地;蚕のサナギ(粉末であってもよい)、大豆(ひき割りでも粉末であってもよい)、米(玄米でも白米でもよい)及び水を含む)を使用することもできる。上記の固体培養培地では、米の代わりに大麦、小麦、フスマ又は赤糠を使用することもできる。固体培養は、殺菌された多量(培地全量の40乃至60%程度)の水分を含む固体培地に接種用種菌を接種し、例えば20乃至30℃で20乃至40日間、好ましくは24℃前後で30日間程度培養すればよい。
【0024】
菌糸体は、液体培養によって大量培養することもできる。大量培養に使用される液体培地の具体例としては、ブドウ糖、酵母エキス、米糠、酒粕、大豆粉、アスパラギン酸ナトリウム、無機質及び水を含む水溶液、並びにブドウ糖、赤糠、大豆粉、酵母エキス、アスパラギン酸ナトリウム及び水を含む水溶液が挙げられる。また、液体培地を使用する大量培養では、常法による殺菌及び冷却後、種菌を接種し、例えば20乃至30℃で10乃至30日間、好ましくは25℃前後で21日間程度、通気量0.5乃至5VVM(1分あたり、単位体積当たりの通気用量)で通気培養をすればよい。
【0025】
菌糸体が培養培地全体に蔓延したら、菌糸体を子実体培養用固体培地に移し、光刺激や二酸化炭素刺激によって子実体を形成させる。子実体培養用固体培地の具体例としては、蛹又は蛹粉、米糠、小麦麩及び水を含み、水分量は60乃至65重量%であるもの、並びにコーヒー抽出粕、チップダスト、玄米、大豆、大豆粉、籾殻及び水を含むものが挙げられる。
【0026】
大量培養後、分取したサナギタケ菌糸体もしくは子実体を、又は固体培養物もしくは液体培養物そのものを、凍結乾燥や噴霧乾燥に供する。このようにして得られる乾燥体は、そのまま、本発明の組成物又はその一部として使用することができる。また、分取した菌糸体もしくは子実体、又は固体培養物もしくは液体培養物から溶媒抽出を行い、固液を分離して抽出液体を得、その抽出液体を、そのまま、濃縮して、又は凍結乾燥もしくは噴霧乾燥に供して、得られたものを本発明の組成物又はその一部として使用することができる。必要に応じ、抽出液体に、例えばpH調整剤や粉末化基剤を添加することができる。
【0027】
抽出溶媒は、例えば水や有機溶媒である。有機溶媒を用いる場合、飲食品又は医薬品に使用可能なものが好ましく、その例として、アセトン、ヘキサン、ブタノール、エタノール等が挙げられる。中でも、適宜の濃度となるように水で希釈したエタノールが好ましい。また、抽出条件は、抽出溶媒が水の場合は、95乃至100℃、30乃至120分間の熱水抽出とする。抽出溶媒が希釈エタノールの場合、エタノールとして濃度20乃至50重量%のものを使用することが好ましく、30乃至40重量%のものを使用することがさらに好ましく、50乃至65℃程度の加温抽出と、90乃至96℃程度での沸騰抽出の併用が好ましい。
【0028】
本発明の組成物は、エリスロポエチン誘導作用を示すので、その赤血球系の造血作用を期待して、腎性貧血等の貧血の予防や治療のための医薬品として使用することができる。また、本発明の組成物は、貧血の予防を目的として、特定保健用食品、機能性表示食品、特別用途食品及びサプリメント等の食品において使用することができる。
【0029】
本発明の組成物の形態は特に限定されない。飲食品の場合は、その形態は、固体(粉末、顆粒や錠剤を含む)、ペースト、液体等であり、医薬品やサプリメントの場合は、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等である。
【0030】
本発明の組成物は、サナギタケの培養物又はその培養物からの抽出物に加えて、エリスロポエチン誘導作用に悪影響を与えない限り、任意の成分を含有していてもよい。そのような任意成分の例は、甘味剤、酸味剤、矯味矯臭剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、賦形剤、溶解補助剤及び懸濁化剤である。
【0031】
本発明の組成物は、天然物に由来し、後記する実施例において示されているように安全性が高いので、多量に摂取しても特に問題は生じないものと思われる。しかし、摂取量の例を挙げると、成人1日当たり、組成物中に含まれる培養物の量で、例えば1乃至50g、好ましくは6乃至30gであり、組成物中に含まれる抽出物の量で、例えば0.1乃至5.0g、好ましくは0.5乃至2.0gである。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0033】
[実施例1] サナギタケ菌糸体の培養方法
サナギタケ菌糸体の培養方法は、以下のとおりである。
1.サナギタケの菌株の保存方法
試験管(18mmφ)に、常法通りに調製したポテトデキストロース寒天培地を充填し、寒天を固化させて斜面培地とした。接種用鈎を用い、サナギタケの約5乃至8mm長の菌糸塊を斜面培地中央部に接種した。その後、24乃至27℃にて3乃至5週間、培養した。培養後の菌株を、室温又は10℃の冷蔵庫内で保存した。
【0034】
なお、菌糸塊は、天然のサナギタケ(Cordyceps militaris FT26K3及びCordyceps militaris KT16514)の各々から純粋分離したものに由来する保存用菌株であり、これらがサナギタケであることは、それぞれ、図1−1乃至1−4及び図2−1乃至2−7に示すとおりである。
【0035】
2.接種用種菌の培養方法
500mL容の三角フラスコに、下記組成の溶液150mLを入れ、常法通り、121℃にて15分間殺菌した。溶液温度が25℃以下となった後、Cordyceps militaris FT26K3の保存用菌株から約5乃至8mm長の菌糸塊をこの溶液に接種した。別に、同様に準備したフラスコ内の溶液に、Cordyceps militaris KT16514の保存用菌株から約5乃至8mm長の菌糸塊を接種した。培養液を120rpmで攪拌しながら、24乃至27℃で7日間培養し、一次接種用種菌を得た。さらに、一次接種用種菌の培養に使用したものと同じ溶液1500mLを5L容の三角フラスコに入れ、常法通り殺菌した。冷却後に、この溶液に一次接種用種菌二種を全量接種した。24乃至27℃で7乃至10日間培養し、液体培養用及び固体培養用種菌を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
3.大量培養方法
3−1.液体培養方法
500L容の発酵槽に、下記組成の溶液400Lを入れ、常法通り殺菌した。溶液温度が25℃以下となった後、2.と同様の方法で調製した接種用種菌3Lを接種した。25℃、通気量0.5VVM(1分あたり、単位体積当たりの通気用量)で21日間培養し、液体培養物を得た。
【0038】
【表2】
【0039】
3−2.固体培養方法
(1)サナギ培地を使用する方法
下記組成の培地800gを培養器に入れ、常法通り殺菌した。培地温度が25℃以下となった後、2.と同様の方法で調製した接種用種菌10mlを接種し、24℃で30日間培養し、固体培養物(A)を得た。
【0040】
【表3】
【0041】
(2)大豆培地を使用する方法
下記組成の培地1000gを培養器に入れ、常法通り殺菌した。培地温度が25℃以下となった後、2.と同様の方法で調製した接種用種菌10mlを接種し、24℃で30日間培養し、固体培養物(B)を得た。
【0042】
【表4】
【0043】
[実施例2] マウスへの投与用試料の調製方法
マウスへの投与用試料は、次のようにして調製した。
1.サナギタケ菌糸体培養エキス末(マウス投与試験記号:CM−A)の調製方法
固体培養物(A)70kg、85%エタノール90L、液体培養物70L及び水道水50Lを抽出用容器に入れ、55乃至58℃に60分間保持し、その後92〜95℃に60分間保持した。抽出用容器の内容物が60℃以下となったら、その内容物を圧搾濾過に供した。濾液を、固形分濃度が13重量%となるまで濃縮し、得られた濃縮液に、クエン酸1kgを添加し、マルトデキストリン6kgを添加溶解し、全量120Lの凍結乾燥用原料を得た。この原料を、常法通り凍結乾燥し、得られた凍結乾燥品を粉砕した。その後、防湿のためにマルトデキストリン粉末を添加し、以下の表に示す分析値のサナギタケ菌糸体培養エキス末(マウス投与試験記号:CM−A)を得た。
【0044】
【表5】
【0045】
2.サナギタケ菌糸体培養蛋白粉末(マウス投与試験記号:CM−B)の調製方法
固体培養物(B)を、121℃にて20分間殺菌し、凍結乾燥用原料を得た。この原料を、常法通り凍結乾燥し、得られた凍結乾燥品を粉砕した。以下の表に示す分析値のサナギタケ菌糸体培養蛋白粉末(マウス投与試験記号:CM−B)を得た。
【0046】
【表6】
【0047】
[実施例3] マウスへのサナギタケ菌糸体培養エキス末(CM−A)及びサナギタケ菌糸体培養蛋白粉末(CM−B)の投与試験(その1)
マウスにCM−A又はCM−Bを投与し、これらの安全性を調べるとともに、血中成分及びエリスロポエチンの濃度等への影響を調べた。
【0048】
1.実験条件
(1)使用動物:ICR雄マウス
60匹のICR雄マウスを7週令にて購入し、1週間の予備飼育後に42匹を実験に使用した。
【0049】
(2)試料の投与量及び投与方法
試料(CM−A又はCM−B)を0.3mLの蒸留水に分散、溶解させ、マウス用の胃ゾンデを用いて経口投与した。対照群には、蒸留水0.3mLを同様に経口投与した。投与回数は、1日1回で連続した6日間とした。試料の投与量は、1回につき、マウスの体重1kg当たり200mg、400mg又は800mgとした。即ち、表7に示す投与群について実験を行った。
【0050】
【表7】
【0051】
(3)マウスの解剖及び血液試料の採取
試料の最終投与の24時間後に、動物用吸入麻酔剤「イソフル」(イソフルラン:DSファーマアニマルヘルス(株)製)の過剰吸入による安楽死を実施した。安楽死後直ちに、腹部大静脈よりへパリン加採血を実施した。得られたヘパリン加全血の一部を遠心分離に供し、ヘパリン加血漿を得た。この血漿は、分離後直ちに−30℃にて凍結保存した。
【0052】
(4)検討方法及びその結果
(4−1)安全性試験
(4−1−1)マウス体重の変動(試験期間中の体重測定)
試験期間中、試料投与前の空腹時(午後2時〜4時)に、マウスの体重を測定した。結果を表8に示す。
6日目体重は、試験開始前に比べ、対照群では約3.5重量%増加していた。CM−A投与群では、投与量によって異なるが、4.0乃至5.8重量%増加していた。CM−B投与群では、投与量によって異なるが、1.6乃至4.8重量%増加していた。しかし、体重に関し、試験期間中を通じて、いずれの投与群についても、対照群に対して統計上の有意差はなかった。
【0053】
【表8】
【0054】
(4−1−2)試験期間中のマウスの運動性及び食欲の観察と、解剖前のマウス外観の検査
試験期間中、マウスの運動性及び食欲を観察したが、全てのマウスについて異常は見られなかった。安楽死後にマウス外観を検査したが、全てのマウスについて、体毛の汚れや下痢などの異常は見られなかった。
【0055】
(4−1−3)解剖時における臓器の目視検査
安楽死後に開腹を行い、各臓器の位置、形状、出血の有無、癒着の有無を目視検査したが、全てのマウスについて、これらの検査項目に異常は見られなかった。
【0056】
(4−1−4)解剖直前の体重及び解剖時の臓器重量の測定
解剖直前に、マウスの体重を測定した。また、摘出した肝臓、腎臓、脾臓、胸腺及び精巣の各々について、重量を測定した。結果を表9に示す。
【0057】
体重: いずれの投与群も、対照群に対して統計上の有意差はなかった。
肝臓重量: いずれの投与群も、対照群に対して統計上の有意差はなかった。
腎臓重量: 各群の平均値を比較すると、いずれの投与群も対照群よりも重かった。しかし、個体差が大きく、対照群に対して有意に重いと判定できたのは、CM−A200mg/kg−体重/回投与群(危険率:1%未満)及びCM−A800mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)のみであった。
脾臓重量: 対照群に対して、重量が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられなかった。但し、CM−B800mg/kg−体重/回投与群については、危険率5%未満で重量が増加していた。
胸腺重量: 対照群に対して、重量が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられず、また、統計的な有意差のある投与群もなかった。
精巣重量: 対照群に対して、重量が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられず、また、統計的な有意差のある投与群もなかった。
以上より、CM−A投与群及びCM−B投与群のいずれも、腎臓重量については増加傾向が見られたが、安全性が危惧されるような異常は見られなかったといえる。
【0058】
【表9】
【0059】
(4−2)血液検査
安楽死後直ちに採血したヘパリン加全血を使用して、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び血小板数を、自動血球測定装置(シスメックス(株)製、pocH−100i)を用いて測定した。結果を表10に示す。
【0060】
白血球数: 各群の平均値を比較すると、いずれの投与群も対照群よりも多かった。対照群に対して有意に多いと判定できたのは、CM−A200mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)、並びにCM−B200mg/kg−体重/回投与群(危険率:1%未満)、CM−B400mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)及びCM−B800mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)であった。
赤血球数: 対照群に対して、赤血球数が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられなかった。但し、CM−A800mg/kg−体重/回投与群については、危険率5%未満で赤血球数が増加していた。
ヘモグロビン濃度: ヘモグロビン濃度は、対照群と同等又は対照群より若干増加している傾向にあった。但し、CM−A800mg/kg−体重/回投与群については、危険率5%未満でヘモグロビン濃度が増加していた。
ヘマトクリット値: 対照群に対して、ヘマトクリット値が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられなかった。但し、CM−A800mg/kg−体重/回投与群については、危険率1%未満でヘマトクリット値が増加していた。
血小板数: CM−A投与群では、対照群と同等又は対照群より若干減少している傾向にあった。一方、CM−B投与群では、対照群より若干増加している傾向にあり、特にCM−B800mg/kg−体重/回投与群については、危険率5%未満で血小板数が増加していた。
以上より、CM−A及びCM−Bのいずれも、経口摂取されると白血球数を増加させる傾向にあったといえる。
【0061】
【表10】
【0062】
(4−3)血漿エリスロポエチン濃度の測定
Mouse Erythropoietin Quantikine ELISA Kit(R&D Systems, Cat. No. MEP00B, Lot. No. P144663)を使用して、解剖時に採取し、分離したマウスへパリン加血漿について、エリスロポエチン濃度を測定した。結果を表11並びに図3及び4に示す。
【0063】
いずれの投与群も、対照群に比べて高いエリスロポエチン濃度を示した。中でも、CM−A200mg/kg−体重/回投与群及びCM−B800mg/kg−体重/回投与群については、危険率1%未満で、対照群よりも有意に高いエリスロポエチン濃度を示した。
以上より、CM−A又はCM−Bが経口摂取されると、エリスロポエチン濃度が高まる傾向にあることが分かった。なお、念のためにCM−A及びCM−Bの各々についてエリスロポエチン濃度を測定したが、エリスロポエチンは検出されなかった。
【0064】
【表11】
【0065】
(4−4)マウス腎臓の組織学的検討
腎臓重量に有意な増加が認められたCM−A投与群(0mg/kg−体重/回(対照)、200mg/kg−体重/回、400mg/kg−体重/回及び800mg/kg−体重/回)の腎臓組織標本(各4個)を作製し、腎肥大の組織学的な検討を行なった。(株)新組織科学研究所に、マウス腎臓の病理組織学的検査を依頼した。HE染色によって作製した腎臓組織標本を顕微鏡下で観察した。
【0066】
400mg/kg−体重/回投与群及び800mg/kg−体重/回投与群については、各々、4標本中1標本について、近位尿細管に微細な空胞変性がみられた。空胞変性が、400mg/kg−体重/回投与群及び800mg/kg−体重/回投与群では200mg/kg−体重/回投与群ほどエリスロポエチン濃度が高くならなかった原因であるかもしれない。よって、より少量のCM−Aを投与した場合のエリスロポエチン濃度の変化について、追試を行う必要があると考えた。
【0067】
[実施例4] マウスへのCM−Aの投与試験(その2)
マウスにCM−Aを投与し、これらの安全性を調べるとともに、血中成分及びエリスロポエチンの濃度等への影響を調べた。
【0068】
1.実験条件
(1)使用動物:ICR雄マウス
36匹のICR雄マウスを8週令にて購入し、3日間の予備飼育後に実験に使用した。
【0069】
(2)試料の投与量及び投与方法
試料(CM−A)を0.2mLの蒸留水に分散、溶解させ、マウス用の胃ゾンデを用いて経口投与した。対照群には、蒸留水0.2mLを同様に経口投与した。投与回数は、1日1回で連続した6日間とした。但し、200mg/kg−体重での投与のみ、6日間の投与のほかに、1日1回で連続した3日間の投与も実施した。試料の投与量は、1回につき、マウスの体重1kg当たり25mg、50mg、100mg又は200mgとした。
即ち、表12に示す投与群について実験を行った。
【0070】
【表12】
【0071】
(3)マウスの解剖及び血液試料の採取
試料の最終投与の24時間後に、動物用吸入麻酔剤「イソフル」(イソフルラン:DSファーマアニマルヘルス(株)製)の過剰吸入による安楽死を実施した。安楽死後直ちに、腹部大静脈よりへパリン加採血を実施した。得られたヘパリン加全血の一部を遠心分離に供し、ヘパリン加血漿を得た。この血漿は、分離後直ちに−30℃にて凍結保存した。
【0072】
(4)検討方法及びその結果
検討方法は、実施例3に記載のものと同様のものについては記載を省略して結果のみを記載し、方法が異なるものについては以下に記載した。
【0073】
(4−1)安全性試験
(4−1−1)マウス体重の変動(投与期間中の体重測定)
結果を表13に示す。
6日目体重は、試験開始前に比べ、対照群では約5.3重量%増加していた。CM−A投与群では、投与量によって異なるが、3.9乃至5.6重量%増加していた。しかし、体重に関し、試験期間中を通じて、いずれの投与群についても、対照群に対して統計上の有意差はなかった。
【0074】
【表13】
【0075】
(4−1−2)試験期間中のマウスの運動性及び食欲の観察と、解剖前のマウス外観の検査
試験期間中のマウスの運動性及び食欲については、全てのマウスに異常は見られなかった。安楽死後のマウス外観の検査においても、全てのマウスについて、体毛の汚れや下痢などの異常は見られなかった。
【0076】
(4−1−3)解剖時における臓器の目視検査
全てのマウスについて、各臓器の位置、形状、出血の有無、癒着の有無の目視検査で異常は見られなかった。
【0077】
(4−1−4)解剖直前の体重及び解剖時の臓器重量の測定
解剖時の臓器重量として、肝臓重量、腎臓重量、脾臓重量、胸腺重量及び精巣重量に加え、精巣周囲(腹腔内)脂肪重量も測定した。なお、この測定は、CM−Aを200mg/kg−体重/回で3回(連続した3日間)投与した群についても実施した。結果を表14及び表15に示す。表14は、臓器の測定された絶対重量を示し、表15は、体重10g当たりの臓器の相対重量を示す。
【0078】
体重: いずれの投与群も、また絶対重量も相対重量も、対照群に対して統計上の有意差はなかった。
肝臓重量: いずれの投与群も、また絶対重量も相対重量も、対照群よりも重かった。中でも、絶対重量については25mg/kg−体重/回投与群(危険率:1%未満)が、並びに相対重量については25mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)及び50mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)が、対照群に対して有意に重くなっていた。
腎臓重量: 25mg/kg−体重/回投与群を除き、いずれの投与群も対照群よりも重かった。しかし、対照群に対して有意に重いと判定できたのは、200mg/kg−体重/回投与群(3回)の相対重量(危険率:5%未満)のみであった。
脾臓重量: 200mg/kg−体重/回投与群(6回)は、絶対重量も相対重量も、対照群に対して有意に増加していた。これら以外は、対照群とほぼ同等であった。
胸腺重量: 対照群に対して、重量が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられず、また、統計的に有意差のある投与群もなかった。
精巣重量: 6回投与群はいずれも、また絶対重量も相対重量も、対照群に対して有意に減少していた。200mg/kg−体重/回投与群(3回)は、絶対重量も相対重量も、対照群とほぼ同等であった。
精巣周囲脂肪重量: 6回投与群はいずれも、また絶対重量も相対重量も、対照群に対して増加傾向にあったが、統計的に有意差のある投与群はなかった。また、200mg/kg−体重/回投与群(3回)は、絶対重量も相対重量も、最も増加量が大きかったが、対照群との間に有意差はなかった。
以上より、CM−Aを経口投与することで、肝臓重量については増加傾向が見られ、胸腺重量については減少傾向が見られたが、安全性が危惧されるような異常は見られなかったといえる。
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
(4−2)血液検査
結果を表16に示す。
白血球数: 各群の平均値を比較すると、いずれの投与群も対照群よりも多かった。対照群に対して有意に多いと判定できたのは、いずれも6回投与群で、25mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)、100mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)及び200mg/kg−体重/回投与群(危険率:5%未満)であった。
赤血球数: 各群の平均値を比較すると、いずれの投与群も対照群よりも多かった。しかし、対照群に対して有意に多いと判定できたのは、100mg/kg−体重/回投与群(6回)のみであった。
ヘモグロビン濃度: 各群の平均値を比較すると、ヘモグロビン濃度は、6回投与群ではいずれの投与群も、対照群よりも若干高い値を示した。200mg/kg−体重/回投与群(3回)は、対照群よりも若干低い値を示した。しかし、いずれの投与群も、対照群に対して有意差はなかった。
ヘマトクリット値: 対照群に対して、ヘマトクリット値が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられなかった。但し、100mg/kg−体重/回投与群(6回)については、危険率5%未満でヘマトクリット値が増加していた。
血小板数: 対照群に対して、ヘマトクリット値が増加している群と減少している群とがあり、特定の傾向はみられなかった。
以上より、CM−Aは、経口摂取されると白血球数を増加させる傾向にあったといえる。
【0082】
【表16】
【0083】
(4−3)血漿エリスロポエチン濃度の測定
結果を表17及び図5に示す。
6回投与群では、25mg/kg−体重/回投与群、50mg/kg−体重/回投与群及び100mg/kg−体重/回投与群について、並びに200mg/kg−体重/回投与群(3回)について、対照群よりも高いエリスロポエチン濃度を示した。200mg/kg−体重/回投与群(6回)は、対照群とほぼ同等のエリスロポエチン濃度であった。なお、対照群に対して有意に高いエリスロポエチン濃度を示したのは、25mg/kg−体重/回投与群(6回)及び200mg/kg−体重/回投与群(3回)のみであった。
以上より、CM−Aが経口摂取されると、エリスロポエチン濃度が高まる傾向にあることが分かった。なお、念のためにCM−Aについてエリスロポエチン濃度を測定したが、エリスロポエチンは検出されなかった。
【0084】
【表17】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図3
図4
図5